『オズのトロット』




               第九幕  ノーランドの海岸で

 メリーランドを後にした一行はさらに先に進んでいきます、今度の目的地はノーランドなのですが。
 そのノーランドについてです、カルロスはトロットに尋ねました。
「ノーランドはバド王とフラフ王女が治めていますよね」
「そうよ、バド王が弟さんでね」
「フラフ王女がお姉さんですね」
「そうなってるのよ」
「そうですね、そういえば」
 カルロスはここでこんなことを言いました、ノーランドに向かって続いているメリーランドの中の黄色い煉瓦の道を進みながら。
「オズの女の子で女王になってる人は少ないですね」
「イッソスの女王様は実は、だしね」
 ジョージが最後の目的地の人のお話をしました。
「実はかなりのご高齢だし」
「だから女の子かっていうとね」
 神宝もあの女王様についてお話をします。
「違うね」
「トロットさんやドロシーさんみたいな年齢だと王女様なのよね」
 ナターシャはそのトロットを見ています。
「アン王女だってそうだったし」
「オズマ姫もね」 
 恵梨香は他ならないオズの国の国家元首の名前を出しました。
「国家元首だけれど王女様なのよね」
「お姫様なのよ、皆」
 そのお姫様の一人であるトロットの言葉です。
「皆お姫様には憧れるでしょ」
「女の子ならですね」
「だから皆国家元首になってもね」
「お姫様なんですね」
「そう、王女になるのよ」
「だからフラフ王女もですか」
「お姉さんだけれどね」
 だから女王になろうと思えばなれたのです。
「それでもね」
「女王様にはならずに」
「王女様になったのよ」
 そちらにというのです。
「そうなったのよ」
「それで国家元首にもですか」
「そちらは弟さんがなることになったから」
 そのバド王がです。
「だからお姉さんでもね」
「王女様で」
「国家元首でもないのよ」
「そうしたお国なんですね」
「それで今はね」
「弟さんが国家元首で」
「二人で治めているのよ」
 姉弟でというのです。
「そうなっているのよ」
「そうしたお国ですね」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「考えてみたら姉弟で治めている国はオズの国では珍しいかしら」
「そうだね、その組み合わせではね」
 キャプテンも言ってきました。
「オズの国ではないね」
「そうよね、やっぱり」
「お兄さんがいる場合もね」
「そうしたお国はあったかしら」
「どうだったかな」
「男兄弟がいるお姫様がね」
「いないね」
 オズの国にはというのです。
「そもそも」
「少ないわね」
「トロット達も一人っ子だし」
 このことはドロシーもベッツイも同じです、もっと言えばオズマにしても一人っ子です。
「だからね」
「姉弟はね」
「珍しいね、そしてね」
「その珍しい王様と王女様のお国にね」
「今から行きましょう」
「それじゃあね」 
 こうしたお話をしつつ一行は煉瓦の道を進んでいきますがここで教授は右手を見ました、そこはです。
 海が見えます、教授はその海の海岸を見て言いました。
「今日は誰も泳いでいないね」
「そうね、よく泳いでいるのに」
 トロットもその海を見て言います。
「今日はね」
「泳いでいないね」
「誰もね」
「こうした日もあるのね」
「何かあるのかな」
 ここでこう考えた教授でした。
「ひょっとして」
「この辺りで」
「それで皆そっちに行ってるのかな」
 海で泳がずにです。
「そうなのかな」
「それじゃあ何かしら」
 トロットは今日は海で泳いでいる人がいないことについて考えました、奇麗な砂浜ですが本当に誰もいません。
「一体」
「それが気になりだしたね」
「ええ、この辺りに何かあるかしら」
「じゃあ近くを見てみようか」
「何か行われているか」
「それをね」
 それで皆で歩きながら周りを見てみました、するとです。
 キャプテンが煉瓦の道の左手、丘の方を指差して言いました。
「あそこに何か見えたよ」
「丘の方に?」
「うん、今ね」
「じゃあそっちに行ってみましょう」
 トロットはキャプテンの言葉を聞いて皆に言いました。
「そこに何かあるかも」
「それで今日どうして海に誰もいないかがわかるかもね」
「じゃあね」
「行ってみよう」
 キャプテンもこう言ってでした、皆は青の中に銀色がきらきらと輝いている海から視線を離してでした。 
 そのうえで紫のギリキンの色の丘の方に向かいました、そうして丘のところを登っていくとその頂上にでした。
 洞窟がありました、その洞窟の前まで来るとです。
 不意にです、一人のノームが出て来て言ってきました。
「おや、トロット王女じゃないか」
「ノームの人?」
「見ての通りだよ」
 そのノームは笑ってトロットに答えました。
「お祭りのお話聞いたのかな」
「お祭りしてるの」
「そうだよ、今日はこの辺りの人達を招いてね」
 そうしてというのです。
「お祭りをしているんだ」
「どういったお祭りなの?」
「うん、実は今度ノームも学校を作ってね」
「その学校の設立祝いの?」
「そう、お祭りをしていてね」
「それでこの辺りのご近所の人達も呼んで」
「学校はこの下に建設したから」
 そのせいでというのです。
「お招きしたんだよ」
「そうだったのね」
「カリフ王のお考えでね」
 ノームの国家元首であるこの人のです。
「それで今皆で賑やかにやってるんだ」
「洞窟の中で」
「この洞窟の入り口にあるエレベーターを下るとノームの国でね」
 ノームの国の領土は広いです、オズの国の地下広くに広がっていてドワーフやダークエルフの人達の国ともつながっています。
「やってるよ、僕は誰か来たのが洞窟の入り口の監視モニターに見えた来たんだ」
「そうしたら来たのが私達で」
「こうして会ったんだよ」
 本当にというのです。
「今ね」
「奇遇ね」
「奇遇なのはオズの国ね」
 まさにと笑って応えたトロットでした。
「いつもね」
「そうだね、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「皆もどうかな」
 ノームは笑顔で誘ってきました。
「お祭りにね」
「お邪魔していいの」
「勿論だよ」
 これがノームの返事でした。
「お祭りは参加者が多い方が嬉しいししかもトロット王女達が来てくれるなら」
「私達が」
「オズの国でも特に楽しい人達だからね」
 それ故にというのです。
「嬉しいよ、じゃあね」
「今からなのね」
「そう、お祭りに来てね」 
 こうお誘いをかけてでした、皆はノームのお祭りに参加することになりました。そうして洞窟に入ってすぐあったエレベーターに入ってです。
 そうしてそこを下ってなのでした、着いた場所はです。 
 地下の広い大空洞でその中に三階建ての学校がありました、カルロスはその学校を見て言いました。
「外の世界の学校と同じかな」
「外観はだね」
「そう思いました」
 こうノームに応えました。
「何か」
「そうかもね、しかしね」
「しかし?」
「教えることは外の世界とは違うよ」
「ノームのことをですね」
「学ぶんだ」
 そうした場所だというのです。
「ここは」
「そうですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「君達が知っている学問とはまた違うよ」
「ノームの学問ですか」
「算数とか理科は同じでもね」
「社会とか国語はまた違いますか」
「そうだよ、ノームのことを子供達が学ぶ為の場所なんだ」
 それがノームの学校だというのです。
「これまでも作ってきたけれどここにも作ったんだ」
「それで、ですね」
「今はね」
「出来たお祝いにですね」
「お祭りをしているんだ」
「グラウンドでやってるわね」
 トロットがそちらを見て言いました。
「あれね」
「そうだよ、じゃあ皆で行って」
「楽しませてもらっていいのね」
「遠慮はオズの国では駄目だよ」
 これがノームの返事で、です。そのうえで。
 皆は学校の校舎の中に入ってグラウンドに行きました、そしてです。 
 グラウンドの中に行くとそこで食べたり歌ったり踊ったりをしていました、ノームもギリキンの人達も一緒になってです。
 そうして楽しんでいます、するとです。
 楽しんでいる人達の中から何とカリフ王が出て来てトロット達に声をかけてきました。
「やあ、誰かと思ったら君達か」
「あっ、ノーム王も来てたの」
「我が国の祝いごとだからね」
 それでというのです。
「わしも来てね」
「そうしてなのね」
「そう、いるからね」
 こう言うのです。
「そして楽しんでいるんだよ」
「食べて歌って踊って」
「皆もそうしていいよ」
「それじゃあ」
「ご馳走を用意したからね」
「あっ、お店が一杯あるね」
 キャプテンはグラウンドに出ている沢山の出店を見ました、どのお店もノームの人達が陽気にお料理を作っています。
「スパゲティにホットドッグにソーセージに」
「そう、何でもあるからね」
 カリフ王はキャプテンにも答えました。
「食べてね」
「バンドもやってるね」
 見ればステージもあってそこでノームの人達がギターやベースを弾いてドラムやキーボードで演奏をしていてサックスも吹いています。そして中央ではヴォーカルの人がマイクを手にして歌っています。
「本当に楽しくやってるね」
「皆でね、これからはね」
「これからは?」
「地域の人達とも楽しくね」
 そうしてというのです。
「やっていくよ」
「上の人達ともなのね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうしていくよ」
「その為にもなのね」
「こうしてね」
「一緒にお祝いをしているのね」
「そう、これまでは地上とはね」
「ノームは関わってこなかったわね」
「ラゲドー王は攻めようとしていて」
 それで退位させられたのです。
「それはもうしなくなったけれど」
「それでもよね」
「そう、お互い不干渉でね」
「やっていたわね」
「地上は地上、地下は地下でね」
 それがこれまでのカリフ王の方針でした。
「オズの国の住人として暮らしていたけれど」
「これからはなのね」
「そう、仲良くね」
 種族は違っていてもというのです。
「そうしていくんだ」
「そうなのね」
「勿論ドワーフやダークエルフの人達とも親しくしていくよ」
 同じ地下の住人である彼等にもです。
「あの人達ともね」
「皆ともなのね」
「その方がずっといいからね」
「皆と仲良くしている方が」
「だからそちらを選んだんだ」
 これからのノームはというのです。
「勿論オズマ姫ともね」
「仲良くなのね」
「そうしていきたいよ」
「わかったわ、じゃあこのことはね」
「オズマ姫にもだね」
「伝えさせてもらうわ」
 にこりと笑ってです、トロットはカリフ王に答ました。
「携帯ですぐにもね」
「そうしてくれんだね」
「約束するわね」
 こう言って実際にです、トロットは携帯でオズマにカリフ王の今のお話を伝えました、するとオズマもです。
 笑顔のメールを送ってきました、トロットはそのメールを見てカリフ王ににこりと笑って言いました。
「わかってくれてるわ」
「それは嬉しいね」
「そうね、じゃあこれからは」
「オズの国のあらゆる人達と仲億していくよ」
「そうしていくのね」
「それも楽しくね」
「じゃあ今はその一歩ね」
 トロットはカリフ王にこうも尋ねました。
「そうなるわね」
「そうだね、そしてね」
「そして?」
「いや、君達も食べてくれるかな」
 笑ってトロットに言うのでした。
「そして歌って踊ってね」
「あっ、こうして一緒にいるからね」
「例えばこれとかね」 
 こう言ってバーベキューを出してきました、串に牛肉や玉葱、ピーマンが刺されていて炊かれています。
「食べてくれるかな」
「バーベキューもあるのね」
「他にも一杯あるからね」
「ハンバーガーもあるね」
 モジャボロはそのお料理の屋台を見ました。
「あとフランクフルトもね」
「そう、色々あるからね」
「そういうものをだね」
「是非食べてね」
「チキンナゲットが美味しそうだね」 
 キャプテンはそちらの屋台を見ました。
「あれを食べようかな」
「好きなのを食べていいからね」 
 キャプテンにも言ったカリフ王でした。
「それもどんどんね」
「それじゃあ皆でね」
「どんどん食べよう」
「本当に色々なものがあるし」
「それならね」
「皆で食べましょう」
 笑顔で言うカルロス達五人でした、そして実際に色々食べますがここでなのでした、カルロスはスパゲティを食べましたが。
 そのスパゲティについてこう言いました。
「ミートソースですね」
「そうだよ」
 カリフ王はそのバーベキューについてにこりと笑って答えました。
「他にも色々な種類のスパゲティがあるからね」
「どれもですね」
「食べていいからね」
「ミートソースもいいですし」 
 食べながら言うカルロスでした。
「他のスパゲティも食べたいです、ですが」
「スパゲティ以外もだね」
「食べたいね」
 カルロスに笑顔で尋ねました。
「君も他の子達も」
「正直どれを食べていいか迷います」
「それだけ美味しいものがある」
「そういうことですね」
「これは最高の幸せだね」
「ですね、美味しいものに囲まれている」
 今の様にです。
「それはいいことだね」
「本当に、あと」
「あと?」
「飲みものもあるからね」
 こちらも忘れていないカリフ王でした。
「お茶もジュースもね」
「飲んでいいですね」
「大人の人にはお酒もあるしね」
 このことはキャプテン達にお話しました。
「そっちも楽しんでね」
「ビールよさそうだね」
「ワインもあるね」
「ウイスキーもだよ」
 キャプテンと教授、モジャボロはそれぞれお酒のコーナーを見てお話しました。
「どれがいいかな」
「正直迷うね」
「どのお酒を飲むのかね」
「ノームのお酒もあるからね」
 そちらのお酒もというのです。
「我々のお手製のものがね」
「どういったお酒なの?」
 このことはトロットが尋ねました。
「それで」
「ウイスキーみたいなものでね」
「麦から造るの」
「そう、ビールを何度も蒸留してね」
 そうしてというのです。
「造ったお酒でね」
「それがノームのお酒なの」
「かなり強くてしかもね」
 カリフ王は笑ってトロットにお話しました。
「美味しいんだよ」
「そうなのね」
「そう、しかしね」
 ここでこう言ったカリフ王でした。
「君達は子供だからね」
「飲めないわね」
「君達の中ではキャプテンと教授、モジャボロさんは飲めるけれどね」
「ノームのお酒のことは聞いているよ」
 教授が興味深そうな目で出て来ました。
「非常に強くかつ美味しいと」
「聞いていてもだね」
「実は飲んだことがなくてね」
 それでというのです。
「飲ませて欲しいんだが」
「いいよ、それは学問としてかな」
「それもあるけれど」
「お酒を飲む楽しみとしてもだね」
「飲みたいのだよ」
 学者としてもお酒好きとしてもというのです。
「そう思ってね」
「是非にだね」
「飲みたいのだが」
「喜んで」
 これがカリフ王の返事でした。
「それでは飲んでね」
「そうさせてもらうよ」
「一体どんなお酒なのか」
「僕達も知りたいけれどね」
 キャプテンとモジャボロも出て来ました。
「飲ませてくれるかな」
「よかったら」
「是非共、ノームは気前がいい種族なのだから」 
 そうなったのです、かつての心が歪んだものはなくなっています。
「遠慮されたらかえって困るよ」
「それはオズの国の決まりでもあるしね」
「そのこともあるしね」
 こうキャプテンにも答えます。
「だからね」
「わし等もだね」
「是非飲んでもらうよ」
 こう言ってです、カリフ王は三人にコップに入った黒いお酒を差し出しました、カルロスはその黒い泡立っていないお酒を見て言いました。
「黒ビールから造ったのかな」
「そうだよ」
 カリフ王はカルロスに答えました。
「そして何度も蒸留していて泡もなくなったんだよ」
「そうなんですね」
「ビールはあまり強くないけれどね」
 お酒としてはです。
「けれどね」
「それでもですね」
「強くなったんだよ」
「蒸留してですか」
「そうなったんだよ」
 まさにというのです。
「そうして相当強いお酒になったんだよ」
「成程、そうですか」
「残念だけれど君達がどうしても飲みたいなら」
 その時はというのです。
「アルコールが入っていないものを飲んでもらうよ」
「そちらをですか」
「そちらもあるからね」
 だからだというのです。
「どうしても飲みたいならね」
「そちらをですね」
「飲んでもらうよ」
 こう言うのでした。
「いいね」
「それじゃあ」
 こうしてです、カルロス達五人とトロットはそちらのお酒を飲みました、そしてそのうえでなのでした。
 トロットは目を瞠ってです、こう言いました。
「濃い味ね」
「そうですね」
「甘くはないですし」
「かなり強い味で」
「コクがあります」
「そんな風ですね」
「そうよね、アルコールのないワインは飲んでいるけれど」
 それでお酒の味自体は知っているトロットです。
「けれどね」
「このお酒は」
「甘くなくて」
「濃い味で」
「コクが強くて」
「私達には」
「どうもね」
 合わないと言うトロットでした、そしてです。
 ここで、です。カリフ王はトロットに言いました。
「これは大人の味だからね」
「だからですか」
「そう、普通にね」
 こうした味はというのです。
「子供には合わないんだよ」
「大人には合う味なの」
「そうだよ」
「それじゃあ」
「そう、わし等だとね」
 大人ならというのです。
「美味しく飲めるよ」
「美味いよ」
 キャプテンはかなり美味しく飲んでいます。
「このお酒はね」
「凄く美味しいよ」
「僕もそう思うよ」
 教授とモジャボロも言います。
「このお酒は」
「かなりいけるよ」
「そうなのね、私達にしては」
 どうしてもと言うトロットでした。
「合わないけれど」
「お肉やナッツと一緒に飲むといいんだよ」
 それならというのです。
「それならね」
「それじゃあ」
 トロットは言われるままにバーベキューを食べてから飲んでみました、そのうえでお話することはといいますと。
「何かね」
「こうして飲んでみてもですね」
 ジョージはバーベキューを食べてからでした。
「あまり、ですね」
「合う感じしないですね」
 神宝もバーベキューを食べてから飲んでみました。
「どうにも」
「変わらない様な」
 ナターシャはナッツを食べています。
「そう思います」
「私もそう思います」
 恵梨香もナッツを食べてからでした。
「どうにも」
「何かですね」
 最後にカルロスが言いました。
「ワインとかに比べて合わないと思います」
「ワインも甘くないとね」
 トロットはノンアルコールのワインを食べて言いました。
「合わないし」
「ははは、子供は甘いのが好きだからね」
 それでと言ったカリフ王でした。
「そうなるかな」
「私達にはね」
 またお話したトロットでした。
「そうみたいね」
「それでいいしね」
「いいの?」
「わかる味とわからない味がある」
 笑って言うカリフ王でした。
「大人と子供で。そして人それぞれでね」
「そうした味があるから」
「いいんだよ、もっと言えば味の好き嫌いはあるね」
「ええ、他の人が美味しいと思うものでもね」
「食べられないものはあるね」
「私も最初は」
 トロットはここで恵梨香を見て言いました。
「お刺身は食べられなかったし」
「今じゃ平気だがね」 
 キャプテンがそのトロットに笑って応えました。
「トロットも」
「生もの自体がね、けれど今も食べられないものもあるし」
「そうだね」
「だからなのね」
「それはそれでいいのだよ」
 その黒いノームのお酒を飲みつつ陽気にお話するノーム王でした。
「口に合わないならね」
「特になのね」
「飲まないこともね」
「そして食べることも」
「どうしてもでないならね」
 絶対に飲んだり食べなくてはいけないものなら別でもというのです。
「いいんだよ」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
「そして?」
「このお酒はわし等が飲むからね」
 こう言ってまた飲むカリフ王でした。
「どんどんね」
「そうするのね」
「わし等にとっては美味しいからね」
「そういえば」
 ここであることに気付いたトロットでした、その気付いたことは一体何かといいますと。
「このお酒を飲んでいないノームの人もいるわね」
「ノームでも飲めない人がいてね」
「好きじゃない人も」
「だからね」
 それでというのです。
「飲んでいない人もいるよ」
「そうなのね」
「そう、そしてね」 
 そのうえでというのです。
「それぞれ好きなものを飲んでいるんだよ」
「そのお酒はどうしても飲まないといけないものじゃないのね
「ノームでもね」
「ノームの自慢のお酒でも」
「ワインやビールを飲むノームもいるよ」
 見ればそうしたお酒で楽しんでいるノーム達もいます。
「お酒自体を飲まないノームもいるしね」
「ノームといっても色々なのね」
「そうだよ」
「オズの国の人達がそうである様に」
「ノームもそうなのだよ」 
 オズの国の人達であるこの人達もです。
「皆ね」
「そういうことね」
「そうだよ、だからね」 
 それでというのです。
「お酒についてもそうなのだ」
「よくわかったわ、じゃあ私達はね」
「何を飲むのかな」
「私は今はサイダーを飲みたいわ」
 微笑んで、です。トロットはサイダーをと言いました。
「それをね」
「じゃあ僕は」
 カルロスがまず言いました。
「オレンジジュースを」
「僕は葡萄ジュースをお願いします」
「僕は林檎ジュースで」 
 ジョージと神宝も言いました。
「私は苺ジュースを」
「私はメロンジュースを」
 ナターシャと恵梨香はでした、五人共全く違いました。
 そしてです、トロットも言いました。
「こうしてそれぞれを飲むのが」
「個性でね」
「飲んでいいのね」
「そうだよ、好みのものを飲むのもね」
 それが個性で、です。
「飲んでいいんだ、そして」
「そうしてですね」
「このお祭りを楽しもう」
「皆で飲んで」
「そしてね」
「食べて楽しもう」
「それじゃあ」
 トロットはカリフ王の言葉に笑顔で頷いてでした、そのうえで。
 皆でそれぞれ飲みたいもの食べたいものを楽しんでそうして歌って踊って楽しく過ごしました、それからです。
 一行はカリフ王と別れて楽しい旅に戻りました、ですが。
 煉瓦の道に戻ったところで、です。カルロスは言いました。
「何かノームの人達も変わりましたね」
「そうでしょ、陽気になったでしょ」
「とても」
「ラゲドー王の時よりもね」
「もっと言えばあの人が別の名前だった時よりも」
 ロークワットといったその時です。
「ずっと明るいですね」
「そうでしょ、あの人達は変わったの」
 まさにというのです。
「今はね」
「そうなんですね」
「オズの国の住人になったのよ」
「明るくて陽気な」
「そうよ」
 こう言うのでした。
「あの人達もね」
「そうなんですね」
「だからね」
「今みたいにですね」
「そうよ、陽気にね」
「お祭りも開いてですね」
「人も招く様になったの」
 他の人達もというのです。
「ノーム以外のね」
「そうなったんですね」
「あの人達は変わったの」
「昔とは」
「そうよ、あの陰気で歪んだ人達とはね」
「違ったんですね」
「そうよ」
 こうカルロスにお話するのでした。
「あの人達もね」
「本当に変わっていて」
「びっくりしたかしら」
「前にもお会いしましたけれど」
 それでもというのです。
「あの時も陽気でしたし」
「今回はね」
「特に陽気でしたから」
「お祭りだったから」
 だからと言うトロットでした。
「ああしてね」
「陽気だったんですか」
「普段以上にね、ただね」
「ただ?」
「普段からああなったのよ」
 今のノームの人達はというのです。
「オズの国の住人になってね」
「そうなんですね」
「あのラゲドー王も今は楽しく暮らしてるし」
「オズの国の中で」
「そうしているから」
 だからというのです。
「ノームの人達皆がね」
「明るく楽しく暮らしていく」
「そうなったのよ」
「成程、ノーム王も最初は」
 ラゲドー王がロークワット王といった時です。
「あの時は」
「もうとんでもない人だったわね」
「ボームさんのお話ですと」
「あの時私はまだいなかったわ」
 トロットがオズの国に来たのは後でした。
「それでもね」
「ボームさんのお話を聞きますと」
「本当にね」
 実際にというのです。
「オズマ達がアクセサリーになったりしてね」
「それでビリーナが一つ一つ解いたりしていったりして」
「大変だったのよ」
「そうでしたね」
「それがね」
 今はです。
「ああした人達になったの」
「突然お会いしても」
「陽気に迎えてくれてね」
「楽しく一緒に遊べる人達になったんですね」
「そうなの」
「凄いですね、何か」
 こうも言ったカルロスでした。
「オズの国もどんどん変わっていってますね」
「そうでしょ、技術もだしね」
「人の心もですね」
「変わっていってるのよ」 
 そうだとです、トロットも言います。
「全てがね、こうしてね」
「形態もですね」
「今はあるしね」
 その携帯を出して言うトロットでした。
「こうしてね」
「そうですよね、オズの国でもトロットさんが来られた時は」
「なかったしね」
「潜水艦も飛行機もなかったよ」
 キャプテンが言ってきました。
「わし等はハイランドとローランドに行く時は潜水艦に乗ったけれどね」
「あの潜水艦もね」
「なかったよ」
「そうだったわね」
 こうお話したトロットでした。
「私達が最初に来た時は」
「潜水艦はなかったし」
「飛行機だってね」
「なかったよ」
「それが出て来てね」
「ラジオやテレビも出て来て」
 そうしたものもです。
「今じゃ携帯もスマホもね」
「あるからね」
「本当に変わったよ」
「全くよ」
 キャプテンに笑顔でお話しました。
「オズの国もね」
「そうよね、そして人の心もね」
「ノームの人達もね」
「変わったから」
 だからというのです。
「オズの国はね」
「本当に変わっていっているわ」
「いつもね、ただ変わらないものもあるのよね」
「そう、何でも買わっていっている訳でもないね」
「私達も変わってないし」
 トロット達はです。
「少し成長したけれど」
「それは自分で思ったからね」
 それで少し成長して大きくなっているのです。
「私達は」
「オズマもドロシーもベッツィもね」
「そうなってるけれど」
「それ以外は変わっていないし」
「わし等もね」
「オズの国に来たままで」
「変わってないわ」
 そうだというのです。
「そうよね」
「本当にね」
「そういえば」 
 カルロスも二人のお話を聞いて言います。
「グリンダさんも魔法使いさんも」
「いいものを持ったままよね」
「どんどん凄い魔法を身に着けられていきながらも」
「それでもね」
「お心は変わってないですね」
「いいものはそのままでね」
「変わっていないですね」
 この人達もというのです。
「そうですね」
「そうでしょ、いいものは残っていく」
「変わるものは変わっていって」
「それがオズの国なのよ、これもね」
 さらにお話するトロットでした。
「オズの国はお伽の国だから」
「だからですね」
「いいものはそのままで変わっていくの」
 そうしたお国だというのです、トロットはドロシーにその携帯からメールを送ってまた言いました。
「ドロシーにしてもね」
「ドロシーさんもそういえば」
「あの娘はずっと冒険家のままよ」
「オズの国一の」
「オズの国のあらゆるところを旅しているの」
「そうですね」
「あの冒険家ぶりはね」
 とてもというのです。
「私は勝てないわ」
「とてもですね」
「ドロシーのあの冒険心はね」
 ドロシーのいいところの一つです。
「変わらないわ、そしてね」
「そうしてですね」
「変わっていってるのよ」
「そういえばドロシーさんも」
「変わったでしょ」
「はい」
 実際にというのです。
「最初にオズの国から来た時から」
「変わったわね」
「そうなってますね」
「多くの冒険を経てね」
 そうしてなのです。
「変わったわね、ドロシーもそうだし」
「他のあらゆるものが」
「変わっていってるの」
 オズの国ではです。
「いいものはそのままで」
「そうなんですね」
「そうした国だから」
 それでというのです。
「ノームの人達もね」
「変わってですね」
「今に至るのよ」
「そういうことですね」
「じゃあね」
「はい、今からですね」
「ノーランドの国に行きましょう」
 こう皆に言うのでした。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「そしてね」
 ここでさらに言ったトロットでした。
「あちらでも楽しくね」
「過ごしますね」
「そうしましょう」
 トロットは皆をローランドに連れて行って行きます、夜はゆっくりと休みますがこの日のお食事はお鍋で。
 ブイヤベースでした。教授はそのブイヤベースを食べつつ言いました。
「あったまるね」
「うん、美味しいしね」
 モジャボロもこう言います。
「トマトとガーリックの味が利いててね」
「魚介類のダシも出ていてね」
 キャプテンはそのスープを飲んでいます、ブイヤベースを中心にシーフードサラダに固いパンといったメニューです。
「いいね」
「こうしてあったまって」
 そしてと言うトロットでした。
「皆で気持ちよく寝ましょう」
「オズの国は快適な気温だけれどね」
 キャプテンはそのトロットに応えて言いました。
「あったまっているとね」
「気持ちよく寝られるから」
「だからブイヤベースにしたんだね」
「そうなの、それに海を見ていたら」
 今は夜の闇の中にあって見えません、ですがそれでも波音だけが聞こえてきます。それが皆の音楽になっています。
「魚介類を食べたくなって」
「それでだね」
「出したの」
「海を見てるとね」
「食べたくなるでしょ、魚介類が」
「わかるよ、わしもね」
 他ならぬキャプテンもです。
「魚介類が好きなのはね」
「いつも海を見ていたからよね」
「そうだよ、ブイヤベースも好物だしね」
 今食べているこのお鍋もというのです。
「それでだよ」
「それじゃあね」
「たっぷり食べて」
「休みましょう」
「それじゃあね」
 こうしたお話をしてです、皆でです。
 楽しく食べてそうしてでした、近くの湖で歯を磨いて身体を奇麗にしてテントの中で寝ました。そうして朝の日の出と共に出発するのでした。



運良くお祭りの最中に。
美姫 「当然、お祭りに参加よね」
だな。飲んだり食べたりと楽しそう。
美姫 「ノーム王やカリフ王とかも居て」
大きな祭だな。
美姫 「皆も楽しめたようね」
次はどんな人たちと会うのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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