『オズのトロット』




                第八幕  蝋人形とキャンディ

 ドウ一世から最高のおもてなしを受けた一行はハイラントとローランドから笑顔でお別れをしてでした、また海を渡って次の国に向かうことになりましたが。
 次の行く先についてです、トロットは皆にお話しました。
「今度はメリーランドに行くわよ」
「確かそのお国は」
「そう、蝋人形の女王様が治めていてね」
 トロットはカルロスにそのメリーランドのことをお話しました。
「そうしてね」
「確かキャンディマンさんがおられましたね」
「その人もいるわよ」
「そうでしたね」
「あの国も素敵な国よ」
 こうお話するのでした。
「だから楽しみにしていてね」
「はい、ただこうしてです」 
 カルロスはトロットのお話を聞いて言いました。
「今回は色々なお国を回ってますけれど」
「オズの国の北にあるね」
「本当にオズの国は中に色々なお国がありますね」
「そうだね、幾つあるのかわからない位にね」
 ジョージはカルロスのその言葉に応えて言いました。
「あるよね」
「うん、リンキティンク王やアン王女のお国もあるし」
 神宝はこうした素敵な人達のお国を思い出しました。
「大きく分けて五つの国があってね」
「エメラルドの都、マンチキン、ギリキン、ウィンキー、カドリングとね」
 ナターシャはその五つのお国を挙げました。
「あるしね」
「そのそれぞれの中に沢山のお国があって」
 ドロシーも言います。
「本当に沢山のお国があるわね」
「僕達これまで色々なお国を回ってきたけれど」
 そのオズの国の中のと言うカルロスでした。
「今回お邪魔してる国は」
「うん、まだね」
「一度も行ったことがないお国ばかりで」
「面白いわね」
「そうした国々を訪問出来て」
「そうでしょ、貴方達が一緒でよかったわ」
 にこりと笑ってです、トロットは五人に言いました。
「貴方達がそうして色々なお国を巡られてね」
「僕達がですか」
「トロットさん達がじゃなくて」
「色々なお国をはじめて巡られて」
「それで、ですか」
「よかったんですか」
「だって貴方達が色々なものを見られて笑顔になるから」
 だからだというのです。
「私も嬉しいわ」
「そうした理由で、ですか」
「ええ、本当にね。それじゃあね」
「次はメリーランドですね」
「あちらのお国に行きましょう」
 こうお話してです、キャプテンが動かす船に乗ってでした。
 一行は今度はメリーランドに来ました、そこは人形やおもちゃが人間と同じ様に動いているお国でした。建物はどれもおもちゃの組み立てのブロックです。
 そのブロックのお家、一つ一つに色があるそのお家を見てでした。カルロスは目を丸くさせて言いました。
「何か不思議ですね」
「この国もというのね」
「はい、お国自体がブロックの国みたいで」
「この国はおもちゃの国だから」
「メリーランドの女王が治めておられる」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「こうしてなの」
「建物はブロックなんですね」
「あと今は皆一日中動いてるけれど」
 それがというのです。
「昔はね」
「数時間だけでしたね」
「そうよ、メリーランドの女王がね」
「命を与えておられたんですね」
「そうだったの、それがね」
 まさにというのです。
「変わったのよ」
「そうですか」
「そう、オズマが女王とお話をして」
 そしてというのです。
「この国の皆を一日中動ける様にしたらって提案して」
「オズマ姫が」
「それで女王も納得してね」
 そうしてというのです。
「なったのよ」
「皆が一日動ける様になった」
「そうなったの」
「そうよ、まさにね」
 そうだというのです。
「一日中になったのよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 さらにお話したトロットでした。
「今こうしてね」
「おもちゃやお人形の人達もですね」
「一日中動いているのよ」
「そう変わったんですね」
「そして女王はね」
 その彼女もというのです。
「この国を一日中治めているのよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
「今からその女王のところに行くよ」
「そうするんだよ」
 教授とモジャボロも五人にお話します。
「プレゼントを届けにね」
「使節団として行くよ」
「メリーランドの女王とキャンディマンがいるよ」
 キャプテンも言います。
「その人達とお会いするからね」
「この国を治めている女王と」
「そしてね」
「キャンディマンさんがですね」
「そうよ」
 またトロットがお話します、大きなおもちゃのブロックで出来た建物が並んでいるその家々が並ぶ道を進みながらです。
 そうしつつです、こうお話したのでした。
「あの人達がいるのよ」
「今度はその人達とお会いしますか」
「そうよ」
 実際にというのです。
「楽しくお話しましょうね」
「その人達とも」
「お会いしてね」
「おもちゃと人形の国なんて」
 それこそと言ったカルロスでした、ここまでお話してです。
「オズの国ならではですね」
「そうでしょ、この国もね」
「オズの国なんですね」
「不思議の国だから」
「こうした国もあって」
「そうよ、私達は今ここにいるのよ」
 そうだというのです。
「おもちゃと人形の国にね」
「そしてですね」
「そして?」
「これから食べるわよ」
「お昼ですね」
「そうよ、この国は皆おもちゃとお人形でしょ」
 このことからお話したトロットでした。
「だから皆食べる必要がなくてね」
「だから食べるところがないですね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「私達で食べましょう」
「そういえば食べる様な場所は何処にもないですね」
 カルロスも他の子達も周りを見回しました、すると色々なお店があるのですがそれでもなのでした。
 食べもののお店はありません、それでなのでした。
 五人共気付いてです、そうして言いました。
「そういえばね」
「レストランとか食堂とかないね」
「ファーストフード店も」
「食べる必要のない国の人達だから」
「それでなのね」
「そうよ、何処か誰の邪魔にもならない場所に行って」
 そしてというのです。
「テーブル掛けから何か出しましょう」
「わかりました」
 こうしてです、皆はトロットの案内である場所に入りました、そこはやっぱりおもちゃで出来た木々の中でした。木々の中でおもちゃやぬいぐるみの鳥や獣達がいます。 
 その鳥や獣達を見つつ腰を下ろしてテーブル掛けを出してでした。
 皆で食べはじめます、トロットはこの日はサンドイッチとフルーツジュースを出したのですがこの時にでした。
 キャプテンはそのサンドイッチを食べながらこんなことを言ったのでした。
「不思議な気持ちになるね」
「そうよね、こうしておもちゃやぬいぐるみの中で食べてると」
「全くだよ」
 こうトロットに言うのでした。
「わし等は生身だしね」
「生身の生きものは私達だけで」
「食べたり飲んだりするのもね」
 このこともというのです。
「わし等だけで」
「不思議な気持ちになるわ」
「そうね、けれどね」
「食べることはね」
「しておかないと」
 このことは絶対にというのです。
「お腹が空いたら何も出来ないわ」
「本当にね、だからだね」
「食べて」 
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「ちゃんと動ける様になって」
「女王にもお会いしましょう」
 その蝋人形の女王にというのです。
「そうしましょう」
「そうだね、不思議な思いがしても」
「私達は私達だから」
「飲んで食べないといけないからね」
「だからだよ」
 それでというのです。
「食べよう」
「皆でね」
「このサンドイッチも美味しいですね」
 カルロスはサンドイッチの味自体のことを言いました、白い食パンに色々なものを挟んでいるそれを食べながら。
「ハムサンドも卵サンドも」
「そうでしょ、カルサンドもツナサダラもあるわよ」
「私は野菜サンドがいいね」
「僕はハンバーグサンドとステーキサンドだね」
 教授とモジャボロも笑顔で食べています。
「どれも美味しいけれど」
「第一はそれかな」
「どのサンドイッチも美味しいですね」
 カルロスは教授とモジャボロにも応えました。
「ですからどれを食べようか迷います」
「それだけ美味しいっていうのね」
「はい、どのサンドイッチも」
「このテーブル掛けから出した食べものはどれも美味しいけれど」 
 それでもと言うトロットでした。
「カルロスはサンドイッチが特に気に入ったみたいですね」
「そうなんですか」
「だからそう言うのかも知れないわ」
 サンドイッチが一番だとです。
「私はどれも美味しいと思うけれどね」
「どれもですか」
「そう、どれもね」
 テーブル掛けから出したどのお料理もです。
「美味しいと思うわ」
「トロットさんはそうですか」
「カルロスにはこの味が合ったのかしら」
 こうも言ったトロットでした。
「テーブル掛けから出したサンドイッチの味がね」
「だからこう思って」
「言ったのかも知れないわね」
「そうですか、それじゃあ」
 カルロスはトロットのその言葉を受けて言いました。
「どんどん食べていっていいですか?」
「いいわよ、食べものを残さない決まりがあるでしょ」
「はい、オズの国には」
「残したら駄目だし」
「全部食べてもまた出せるからですね」
「食べたいだけね」
 だからだというのです。
「どんどん食べてね」
「じゃあ迷っても」
「そうした場合はもう目を閉じてね」
 どうすればいいかもお話したトロットでした。
「そうして手を出して」
「手に持ったサンドイッチをですね」
「食べればいいから」
「そうすればいいんですね」
「そうよ、そうしてみてね」
「わかりました」 
 カルロスはトロットのアドバイスを受けてそうして実際に目を閉じて手に持ったサンドイッチを食べることにしました、そしてです。 
 手に取ったハンバーグサンドを食べて笑顔で言うのでした。
「ハンバーグサンド美味しいです」
「そうよね、それじゃあ」
「次もそうして選んでみます」
「美味しいものばかりで迷ったら」
 その時はというのです。
「こうして選べばいいから」
「わかりました」
 カルロスも頷きます、そしてでした。
 皆でお昼のサンドイッチを食べてフルーツジュースも飲んでデザートに果物を食べてお腹一杯になってからでした。
 皆でメリーランドの王宮に向かいます、そのお城もです。
 見ればブロックで出来ています、そのお城を見てまた言った五人でした。
「お城もだね」
「うん、ブロックだね」
「ブロックで組み立てて造ってるね」
「色々の色のブロックを使ってね」
「そうして造ってるのね」
「おもちゃの国だからよ」 
 ここでまたこうお話したトロットです。
「王宮もね」
「おもちゃ、ブロックなんですね」
「そうよ、何でも外の世界でもね」
 ここで五人に逆に言ったトロットでした。
「ブロックで築くお城があるわね」
「はい、おもちゃで」
「それがオズの国ではね」
「こうしてですね」
「本物のお城としてあるのよ」
「そういうことですね」
「それがこのお城よ」
 メリーランドの宮殿だというのです。
「ハイランドとローランドの王宮は中がおもちゃ箱みたいになっていたでしょ」
「けれどこの国では」
「そう、国自体がおもちゃだから」
 だからだというのです。
「宮殿もそれ自体がね」
「おもちゃなんですね」
「そしておもちゃや人形やぬいぐるみの人達がね」
 皆がというのです。
「衛兵や侍従としているわ」
「おもちゃのですね」
「おもちゃの兵隊さんよ」
 カルロスににこりと笑って言いました。
「文字通りのね」
「ううん、それもまさにお伽の国ですね」
「その通りよ、お伽の国だから」 
 だからこそというのです。
「おもちゃの兵隊さんが人間として動いているのよ」
「不思議なことが普通に起こる」
「それがオズの国だから、じゃあね」
「今からですね」
「王宮の中に入りましょう」
 まさにというのです。
「使節団としてね」
「わかりました」
 五人はトロットの言葉に頷いて皆でブロックの宮殿の中に入りました、その入り口には木人形の兵隊さん達がいました。 
 その兵隊さん達がです、トロット達を見て声をかけてきました。
「お久し振りですね」
「ようこそ」
「ええ、今日は使節団として来たわ」
 トロットは木人形の兵隊さん達に笑顔で答えました、どの兵隊さんも木の身体の上に紫の詰襟の軍服を着ています。
「女王さんからお話は聞いてるわね」
「はい、お聞きしています」
「来られたら是非お通しして欲しいと言われています」
 その通りだと答えた兵隊さん達です。
「ですからどうぞお入り下さい」
「そうさせてもらいます」
「それではね」
 トロットも笑顔で応えでした、そうしてです。
 皆は兵隊さん達に案内されて宮殿の建物の中に入りました、その途中にお庭を通ったのですがそのお庭もです。 
 おもちゃの草花でした、そうしておもちゃやぬいぐるみの蝶々や蜂、ハナアブやカナブン達が集まっていますが。
 ここでまたです、トロットが五人にお話しました。
「蜂は刺さないからね」
「蜂でもですか」
「刺したりしないんですか」
「そう、この国の蜂達もおもちゃだから」
 身体がそれで出来ているからだというのです、見れば木やプラスチックで出来ている身体をしています。
「だからね」
「それで、ですね」
「刺したりしないんですね」
「そうしたりは」
「そう、だから安心してね」
 刺される様なことはというのです。
「そうしたことは」
「じゃあああしてお花に集まっているところに行っても」
「一緒に観るだけでね」
「特に危なくはないんですね」
「そうよ、だから安心してね」
「おもちゃの身体で」
「針とかはないの」
 カルロスにまたこのことをお話しました。
「攻撃自体してこないから」
「蜂でもですね」
「だから後でお庭に出る機会があってもね」
「安心してですね」
「一緒に観ればいいわ」
 そうすればというのです。
「本当にね」
「わかりました」
 カルロスが五人を代表して頷きました、そうして皆で王宮の中に入りました、王宮の中の像も皆お人形かおもちゃかぬいぐるみで。
 飾られている武器もでした、それでキャプテンは言いました。
「平和でしかも楽しいね」
「そうですね、確かに」
「武器といっても使うものじゃなくてね」
「楽しむものだからね」
 それでとカルロスにお話するのでした。
「いいね、平和なオズの国だから」
「武器があってもですね」
「平和なんだね、おもちゃの国らしいしね」
 武器がおもちゃということもというのです。
「本当に、それとね」
「それと?」
「絵も見るといいよ」
「絵もですか」
「あれをね」
 壁にかけられてあるそれをというのです。
「見てみればいいよ」
「あっ、ジグソーパズルですね」
「あれもおもちゃだね」
「はい、おもちゃの国だからですか」
「絵もね」
 それもというのです。
「おもちゃなんだよ」
「そうなんですね」
「では今からね」
「はい、女王とキャンディマンにですね」
「会おうね」
「そうしましょう」
 そのジグゾーパズルの絵を観ながらお話をしてでした、一行は女王の間に案内してもらいました。そしてその間にです。メリーランドの女王とキャンディマンがいました。
 スパンコールで輝いている愛らしいフリルが沢山付いているドレスを着ています、子供位の大きさでお口と眉と頬は上品な色で描かれています。開かれている目はガラスでとてもきらきらと輝いています。
 そのすぐ傍には太った小柄な人がいます、見れば身体はキャンディで服は砂糖菓子で手に持っている砂糖ふるいから身体に粉砂糖をかけています。
 二人はそれぞれです、トロット達がお部屋に入るとすぐに行ってきました。
「待っていたわ」
「ようこそ」
「よく来てくれたわね」
「全力でもてなしてもらいますぞ」
「お久し振り」
 トロットが一行を代表してにこりと笑って挨拶をしました。
「お二人共元気そうね」
「この通りよ」
 玉座に座っている蝋人形がにこりと笑って言ってきました、この人がそのメリーランドの女王です、
「私はいつも元気よ」
「私もですぞ」
 次はキャンディの身体を持つキャンディマンが答えます。
「元気過ぎて困っている位です」
「自分でなのね」
「はい、この通り」
 見れば踊りそうになる位です。
「元気過ぎて困っています」
「それは何よりね」
「それでだけれど」
 女王はトロットにあらためて尋ねました。
「今日はオズマ姫からプレゼントを届けに来てくれたのよね」
「ええ、そうよ」 
 その通りとです、トロットは女王に答えました。
「私達はね」
「そうよね」
「今から渡すわね」
「そういえば」
 ここでカルロスがふと気付いて言いました。
「イッソスの女王にお渡しするものは僕達も知っていますけれど」
「他の人達に渡すプレゼントは何かな」 
 ジョージも言います。
「一体」
「そこまでは知らないよね、僕達は」
 神宝もこのことについて考えました。
「あまり」
「そうよね、何かしら」
 ナターシャもどうにも気になることでした。
「メリーランドの女王にお渡しるうものは」
「ドウ一世さんにもお渡ししたものも気になるし」
 恵梨香はその時のことを思い出して言いました。
「今の女王さんにもノーランドやイックスの国についても」
「全部同じものよ」
 トロットはどうなのかと考えた五人にすぐに答えました。
「それはね」
「同じですか」
「イッソスの女王様にお渡しるものと同じですか」
「あの宝石の時計ですね」
「とても奇麗な」
「あれをですか」
「だってどれか違ったら不公平だから」
 そう考えてというのです。
「今回はどの国にも同じものを贈らせてもらうの」
「それは何よりね」
 女王はトロット達のお話を聞いてにこりと笑いました。
「私達の国も皆オズの国の住人だから」
「公平にしないとってなってね」
「それでなのね」
「どの国にも同じものを贈らせてもらうの」
「宝石で造られた時計を」
「贈らせてもらうわ」
 メリーランドにもというのです。
「だからね」
「喜んで受け取らせてもらうわ」
 これが女王の返事でした。
「是非ね」
「それじゃあ」ね」
「受け取らせてもらうわ、それとね」
 女王からさらに言ってきました。
「プレゼントのお礼だけれど」
「こちらも用意しておりますぞ」
 女王とキャンディマンで言ってきました。
「プレゼントもあるしね」
「遊ぶ場所に案内致しますぞ」
「遊ぶ場所、そうか」
 言われてです、カルロスは気付きました。その気付いたことはといいますと。
「この国では食べる人はいないから」
「左様、ご馳走はありませんが」
 キャンディマンはそのカルロスに明るく笑って答えました。
「それでもです」
「遊ぶ場所があって」
「そちらで楽しんで頂きます」
「遊ぶ場所っていうと」
「ここは凄いテーマパークがあるんだ」
 キャプテンがここでカルロス達にお話しました。
「オズの国でも屈指のね」
「テーマパークですか」
「そうなんだ」 
 それがあるというのです。
「だからそこでね」
「遊んで、ですか」
「楽しもうね」
「とにかく凄いテーマパークでね」
「君達も絶対に楽しめるよ」
 教授とモジャボロもカルロス達にお話します。
「実は億達も楽しみだし」
「わくわくしている位だよ」
「私も行かせてもらうから」
 身えば女王もにこにことしています。
「今から夜まで、明日もね」
「楽しんでなのね」
「私達のおもてなしを受けてね、そしてでね」
 それでと言う女王でした。
「お食事は我が国にはないけれど」
「そこは心配無用よ」
 トロットが女王に笑顔で答えました。
「私が持っているから」
「あっ、そうね」
「だからね」
 それでというのです。
「そのことは心配しないで」
「それじゃあね」
「皆で楽しみながら」
「おもてなしを受けてね」
 こうお話してです、そのうえでなのでした。
 一行は女王とキャンディマンにテーマパークに案内してもらってです、そのうえで皆でテーマパークの色々な場所を巡って楽しみます。
 そのテーマパークの中で、です。トロットはカルロスに尋ねました。
「どうかしら、このテーマパークは」
「面白いですね、しかも普通のテーマパークでなく」
「全部おもちゃで出来てるわね」
「そこも面白いですね」
 見ればコーヒーカップもジェットコースターもバイキングもメリーゴーランドもです、全部おもちゃのものです。働いている人達もおもちゃやお人形、そしてぬいぐるみの人達です、一行の隣にはぬいぐるみの兎が楽しく踊っています。
「全部おもちゃというのも」
「そうでしょ、何しろおもちゃの国だから」
「全部がですね」
「そう、おもちゃなのよ」
 そうだというのです。
「このテーマパークもね」
「こんなテーマパークも」
「ないでしょ」
「はい、お池を見ても」
 そこを見てもでした。
「おもちゃの船が浮かんでいて」
「動いているわね」
「それも面白いですね」
「こうしたテーマパークなのよ」
「おもちゃの国の」
「おもちゃのテーマパークなのよ」
「何か不思議ですね」
 ここでこうも言ったテーマパークでした。
「オズの国にいるんだって思いました」
「このことでもね」
「はい、色々な不思議がある国ですね」
「私も不思議かしら」
 ここで女王が笑って言ってきました。
「それなら」
「はい、蝋人形の女王様ですから」
「そうよね、私だってね」
 笑顔で応えた女王でした。
「外の世界には絶対にいない人よね」
「とてもですよ」
「そうよね、蝋人形の身体の人間はね」
「本当にオズの国だけです」
 外緒世界には絶対にいないというのです。
「僕の知っている限り」
「私はドウ一世陛下と似ていますかな」
 キャンディマンはお身体にお砂糖をかけつつお話に入ってきました。
「あの方もキャンディのステッキを持っていますし」
「パンとキャンディの違いはあっても」
「それでもですね」
「言われて見れば似てるところありますね」
「お砂糖もありますし」
「そうですな、ですから仲もいいのです」
 こう四人にお話するのでした。
「私とドウ一世陛下は」
「私もよ」
 女王もにこりと笑って言ってきました。
「ドウ一世とは仲がいいの」
「同じオズの国の住人としてだけでなく」
「そうよ、変わった身体の持ち主同士でね」
「蝋人形、キャンディ、パンと」
「そうした身体だから」
「それじゃあ」 
 そのお話を聞いて言ったカルロスでした。
「かかしさんや樵さん達とも」
「はい、親しくして頂いております」
 キャンディマンがにこりと笑って答えました。
「非常に」
「やっぱりそうですか」
「左様、非常にです」
 さらにお話したキャンディマンでした。
「チクタク殿、つぎはぎ娘殿とも」
「じゃあお会いしたらお昼も夜も」
「親しくお話をして遊んでおりますぞ」
 その時はというのです。
「寝ることもありませぬし」
「だからですね」
「左様、何もかもが」
「じゃあキャンディマンさんも女王様も」
「いつも仲良くしてるわ」
 女王がカルロスに答えました。
「私達もね」
「このメリーランドで」
「そうしているわ」
 実際にというのです。
「毎日ね」
「このこともオズの国のいいところでね」
 教授もテーマパークの中でにこにことしています。
「色々な人達がいてね」
「その人達が皆ですね」
「仲がいいんだよ」
 そうだというのです。
「この国にしてもね」
「そのこともいいことですね」
 しみじみとして言うカルロスでした。
「いつも思うことですが」
「そうだね、それじゃあね」
 モジャボロも言ってきました。
「今度は何処に行こうか」
「テーマパークの」
「色々回ってるけれどね」
「そうね、観覧車はどうかしら」
 トロットはモジャボロの言葉を受けてこう言いました。
「今度はね」
「観覧車だね」
「そう、そこに行ってね」
 そうしてというのです。
「皆で景色を楽しみましょう」
「じゃあ何台かに分かれて」
 そしてというのです。
「入るんですね」
「そうしましょう、そしてね」
「景色を楽しむんですね」
「そうしましょう」
「夜はここのホテルに泊まってね」
 女王は皆にこうも言いました。
「そうして休んでね」
「ここは二十四時間動いていますが」
「朝も夜もですか」
「そうなのです」
 このことはキャンディマンがお話してくれました。
「遊ぼうと思えばずっと遊べます」
「そうですか」
「おもちゃの国では誰も寝ることも休む必要もありませんから」
 だからだというのです。
「このテーマパークもです」
「二十四時間で、ですか」
「動いています」
「夜も楽しめるんですね」
「朝早くからも」
「そうなんですね」
「よければ夜も楽しめますぞ」
 このことをお話してくれたキャンディマンでした。
「そしてです」
「そして?」
「ホテルにはお風呂もありますぞ」
「そこはお料理も出るわよ」
 女王も言ってきました。
「他のお国から来る人の為にね」
「各部屋に揃えております」
「最高級の美味しいお料理が出るし」
「素敵なお風呂ですぞ」
「あのホテルよ」
 そのホテルを指差して言うトロットでした、カルロスはそのホテルを見て少し考えてからこう言いました。
「ドールハウスみたいですね」
「ええ、実際にね」
「ドールハウスがですか」
「ホテルになったのよ」
 そうしたホテルだというのです。
「このテーマパークのホテルはね」
「そうですか」
「そう、そしてね」
「そうしてですか」
「そうしたホテルが幾つもあるのよ」
 そうだというのです。
「このテーマパークにはね」
「それでそのうちの一つにですね」
「入って休んでね」
「わかりました」
「ドールハウスみたいに何でもあるから」
 生活に使える場所はというのです。
「本当に」
「そうですか、ただ」
「ただ?」
「一つ思うことは」
 それはといいますと。
「日本でもありますね」
「ドールハウスが」
「はい、小さな女の子が遊んでいまして」
 日本人の恵梨香を見て言うのでした。
「リカちゃん人形とか」
「そうしたお人形のお家なの」
「お家だけじゃなくて車とかもあって」
「あら、この国にも車があるわよ」
 勿論おもちゃの車がです。
「似てるわね」
「そう思います、僕も」
「じゃあ貴方達はお人形のお家に入るのね」
「そうなんですね、人間のまま」
「そうよ、じゃあ夜はね」
「あちらのホテルで休ませてもらいます」
「ベッドはふかふかですぞ」
 キャンディマンはベッドのお話もしてくれました。
「おもちゃやお人形の栄養は笑顔なのですから」
「人の笑顔ですか」
「ですから笑顔になって頂く為に」
「ホテルの中もですか」
「最高のものです」
「おもてなしは最高のものですか」
「そうなのです」
 まさにというのです。
「テーマパーク全体にしても」
「成程、そうした場所ですか」
「そうなのです」 
 まさにというのです。
「この国は」
「私達は確かに何も食べたり飲んだりしないけれどね」
「お身体への栄養はですね」
「必要がないの、けれどね」 
 ドウ一世が皆にお話した通りにです。
「心の栄養は必要だから」
「それで、ですね」
「来てくれた人達に笑顔になってもらってね」
「その笑顔を見てですね」
「心の栄養にしてもらうの」
 そうしているというのです。
「いつもね」
「そうだったんですね」
「そう、だからね」
「僕達にも」
「笑顔になってもらう為に」
 是非にというのです。
「最高のおもてなしをさせてもらうのよ」
「おもちゃとして」
「おもちゃもお人形もぬいぐるみも何故あるのか」 
 このことからもお話する女王でした。
「人に笑顔になってもらう為よね」
「特に子供にね」
「だから本能として人に笑顔になって欲しいの」
「だからですね」
「そう、遊んでもらってね」
 おもちゃの国の中で、です。
「最高の気分で。そうしてね」
「その時の笑顔を見て」
「私達も笑顔になってもらうのよ」
「そうなんですね」
「だからここでも楽しんでもらいたいし」
 テーマパーク自体でもです。
「ホテルでもね」
「楽しんでもらうんですね」
「そうして欲しいの」
 こうカルロスにお話するのでした。
「是非ね」
「わかりました、それじゃあ」
「次は観覧車でね」
「楽しませてもらいます」
 笑顔で言ったカルロスでした。
「これからも」
「ええ、それじゃあね」
「今から」
 是非にと言うのでした。
「観覧車に」
「皆で行きましょう」
「そうしてその後もですね」
「夜まで楽しんでね」
「そして夜はホテルですね」
「そこで楽しんで」
 夜も寄るでというのです。
「是非ね」
「そうさせてもらいます」
 笑顔でお話したカルロスでした、そしてです。
 皆で笑顔で観覧車も他の場所も夜まで楽しんでホテルではドールハウスのその中でのことを楽しんででした。
 そうしてです、朝の日の出と共に起きてです。
 またテーマパークを楽しみます、カルロスはジェットコースターに乗ってそれが終わってから一緒に乗っていたトロットに言いました。
「凄い速さでしたね」
「そうだったでしょ」
「スリル満点で」
「ここはジェットコースターもね」
「こうしてですね」
「とても素敵なのよ」
 そうだというのです。
「この通りね」
「そうなんですね」
「そしてね」
 さらにお話してくれるトロットでした。
「次はね」
「はい、何処に行きますか?」
「ミラーハウスに行きましょう」
 次はこちらにというのです。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「そしてね」
 さらにお話するトロットでした。
「朝御飯は食べてるし」
「ホテルの朝御飯も美味しかったですね」
「だからお昼までここで楽しんで」
「そしてですね」
「次の国に行きましょう」
「次のお国は」
「ノーランドよ」
 こちらのお国だというのです。
「そこに行くわ」
「ノーランドですか」
「あちらにね」
「そうですか、あの国も僕達は」
「まだ行ったことがなかったわね」
「はい」
 そうだというのです。
「ですからあの国に行くのも楽しみです」
「楽しみから楽しみへ」
 キャプテンが言ってきました、ここで宮殿から女王とキャンディマンが来ました。お二人はホテルではなくそちらで夜を過ごしていたのです。
「旅をしていくね」
「楽しみを歩いていく旅ですか」
「そうなるね」
「それがオズの国の旅ですね」
「そうなるね」
 キャプテンはカルロスに笑顔で答えました。
「スリルもあるけれどね」
「僕達はスリルは」
「なかったかな、君達は」
「これといってないですね」
「そういえばそうだね」
 キャプテンんも五人に応えました。
「君達はね」
「キャプテンや皆さんは違いましたよね」
「オズの国で結構危険な目にも遭ってますね」
「どうなるのかっていう」
「そうしたこともありましたね」
「冒険の中で」
「オズの国は本当に誰も死なないけれど」
 トロットはオズの国における絶対のことをお話しました。
「ドロシーが最初襲われたカリダも生きてるし」
「あの怖い生きものもですね」
「谷に落ちても死んでないですね」
「実は」
「そうなんですね」
「あの東や西の魔女もですか」
「あの二人の魔女も実はね」
 オズの国の住人だからです。
「死んでないのよ」
「今は何処かで大人しくしているよ」
 彼女達のことについてはモジャボロがお話しました。
「身体が元に戻ってからね」
「そうなんですね」
「そう、もう魔法は使えないし」
 かつて悪いことをする為に使っていたそれはです。
「今はオズの国の端の方でね」
「大人しくですか」
「暮らしているよ」
 そうしているというのです。
「もう何の力もないしね」
「じゃあ安心ですね」
「そうだよ、ノームも実は卵を受けると死にそうな激痛に襲われるけれど」
 かつてのノーム達はそうだったのです。
「死ななかったしね、彼等もオズの国の住人だから」
「あのラゲドー王は困った人でしたが」
「性格が一旦真っ白になってから奇麗な心になったしね」
 オズの国の住人本来の心になったのです。
「あの人が死刑にするとか言った時も」
「実はですか」
「死刑にはなっていなかったんだよ」
 そうだったというのです。
「痛い目にあわせただけでね」
「誰も死なない世界ですね」
「そして誰もが楽しめる世界なのだよ」
 教授はここでもこのことを言いました。
「だからだよ」
「はい、今からもですね」
「思う存分楽しもう」
 メリーランドのテーマパークをというのです。
「そうしよう」
「それじゃあ」
 こうお話してでした、皆はこの日のお昼までメリーランドのテーマパークを楽しみました、そうしてお昼御飯を食べてから次の目的地に向かうのでした。



おもちゃの国か。
美姫 「見てみたいわね」
お昼からはテーマパークを楽しんだみたいだし。
美姫 「本当に羨ましいわね」
だよな。次はどうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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