『オズのトロット』




               第七幕  ジンジャーブラッドの王様

 ハイランドとローランドの二つの国を治めるドウ一世の王宮を見てです、カルロスはトロットに言いました。
「何ていいますか」
「この国に相応しい王宮でしょ」
「はい、一方が山にありまして」
 そして段になって見事な建物やお庭があります。
「そうしてもう一方は」
「平地にあってね」
「そこにもお庭や宮殿があって」
「しかも分かれていなくてね」
「そうよね」 
 トロットもこう答えました。
「凄いよね」
「真ん中の宮殿が」
 そこが接点になっていますがその宮殿はです。
 平地の方は普通の高さですが山にある方は急に高くなっていてそこから段々になっています、その宮殿を見てです。 
 カルロスは唸ってです、トロットに言うのでした。
「僕こうした宮殿ははじめてです」
「これもまたオズの国の宮殿よね」
「はい、しかも一方が青で一方が紫ですね」
「実はハイランドとローランドは北がギリキン、南がマンチキンなのよ」
「だからですね」
「宮殿の色も二色に分かれているのよ」
「そしてだよ」
 教授がここでカルロスにお話しました。
「この二国もね」
「どっちもですね」
「そう、二色にね」
「上下で分かれているんですね」
「そうなのだよ」
「同じ奥にでも所属している国は違うことは」
 どうかと言うカルロスでした。
「このことも不思議ですね」
「こうしたことは外の世界にはないね」
 ジョージも言います。
「ちょっとね」
「うん、同じ国なのに所属している国が南北で違うとか」
 神宝も言いました。
「ないよね」
「しかもハイランドとローランドもオズの国の中にあるから」
 ナターシャも不思議そうな感じです。
「分かれていても同じなのね」
「何か少しわかりにくいけれど」
 恵梨香は考えるお顔になっています。
「これもオズの国なのかしら」
「そうだよ、この島には二国があって一人の王様に治められていてね」
 モジャボロも五人にお話します。
「それぞれ個性があって南北で所属する国が違っていて」
「オズの国の中にある」
「そうなんですね」
「二国共一人の王様が治めていて」
「南北で所属している国が違っていて」
「それでオズの国の中にあるんですね」
「そうだよ、こう考えるとね」
 実にと言うモジャボロでした。
「面白いよね」
「はい、オズの国らしいですね」
 カルロスは笑ってモジャボロに答えました。
「それもまた」
「そうだね、じゃあね」
「今からですね」
「オズの国に行こうね」
「そうしましょう」
 トロットが言ってでした、そしてです。
 皆は王宮の前まで来ました、するとすぐに背の高い痩せた軍人さんと小柄で太った軍人さんが来ました。
 そのうえで、です。こうトロット達に言ってきました。
「ようこそ、王宮に」
「お待ちしていました」
「案内させて頂きます」
「どうぞ王の御前に」
「それじゃあね」
 トロットが二人に応えてでした、そしてです。
 一行は高低の中にあって二色に分かれている宮殿の中に入りました、そうしてそのうえでなのでした。
 宮殿の中に入りました、するとです。
 カルロスは宮殿の中を見回してこう言いました。
「おもちゃ箱みたいですね」
「そう思った?」
「はい、あちこちに遊び場があって」
 そうしたお部屋があちこちにあります。
「おもちゃも一杯あって、あとお菓子も」
「多いわね」
「何かあちこちにお菓子の倉庫がありますね」
「ドウ一世はジンジャーブレッドの人でしょ」
「はい、身体が」
「ステッキは飴で砂糖布でボタンはドロップでね」
 そうした人だからというのです。
「宮殿の中もなのよ」
「おもちゃやお菓子で一杯なのよ、それにお菓子はね」
「王様がお菓子の服を着ておられたりして」
「それと大臣が好きなのよ」
 それでというのです。
「この国の道化大臣がね」
「あっ、チック=ザ=チェラブが」
「だからなのよ」
 それでというのです。
「一杯あるのよ、あの子は遊ぶのも好きだから」
「おもちゃもですね」
「一杯あるのよ」
「そうなんですね」
「オズの国の王宮らしいでしょ」
 トロットはにこりと笑ってカルロスに尋ねました。
「これもまた」
「はい、オズの国ならではですね」
「こうしてお菓子やおもちゃが一杯あるのもね」
「そうですよね」
「だからチックはいつも食べてるわよ」
 そのお菓子をというのです。
「それに遊んでもいるわ」
「そうしてるんですね」
「ドウ一世は食べないけれど」
「ジンジャーブレッドの身体だからですね」
「食べる必要がないの」
 それでおかし等を食べることもしないというのです。
「お菓子以外の何もね。飲むこともしないし」
「かかしさんや樵さんと一緒ですね」
「そうよ、オズの国の住人だからね」
「何も食べなくても飲まなくても平気ですね」
「あと寝ることもしないわ」
 こちらの必要もないというのです。
「一切ね」
「本当にかかしさんや樵さんと一緒ですね」
「だからずっと遊ぶことも出来るのよ、あとね」
「あと?」
「若しお腹が空いている人がいれば」
 ドウ一世がそうした人にお会いした時はといいますと。
「すぐにね」
「あっ、お身体や服やボタンをですね」
「そう、あげることも出来るのよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「沢山の人に美味しい思いをさせてもいるのよ」
「ご自身のお身体や持ちもので」
「そうした人でもあるのよ」
「偉大な人ですね」
 そのお話を聞いて思わずこう言ったカルロスでした、皆と一緒にそのおもちゃ箱の様な宮殿の中を歩きながら。見れば内装もそうした感じで賑やかです。
「ドウ一世は」
「そうなの、自分のお身体や服はまた作ればいいってね」
「そうお考えで、ですね」
「そうしているのよ」
 まさにというのです。
「今もね」
「そしてその偉大な方にですね」
「今からね」
 お会いするというのです、そうしてでした。
 一行は王の間に案内してもらいました、するとそこにはまずは全身がゴムで出来た熊と栗麻色の髪の毛に青い目を持っていてパジャマとサンダル姿の可愛らしい子供がいました。
 その二人がです、トロット達に笑って挨拶をしてきました。
「ようこそ」
「はじめて見る子もいるね」
「この人達がですね」
 カルロスは二人を見て言いました。
「パラ=ブルーインとチェック=ザ=チェラブですね」
「そうよ、ゴムの熊がパラ=ブルーインよ」
 トロットはカルロスににこりと笑って答えました。
「名前と外見は聞いてたわよね」
「はじめてお会いしましたが」
 その目がキラキラとしているガラスの熊を見つつ答えるカルロスでした。
「そうでした」
「そうよね」
「何時かお会いしたいと思っていました」
 このことはカルロスも他の子達もです。
「そして今です」
「会えたわね」
「ですからとても嬉しいです」
「それは何よりよ、そしてこの子がね」
 今度はパジャマの子を指し示して五人に紹介したトロットです。
「チェック=ザ=チェラブよ」
「この国の道化大臣さんですね」
「そうでしたね」
「この子のお話も聞いてました」
「男の子か女の子かわからない」
「とても不思議な子ですね」
「実は私は男の子かしらって思ってるけれど」
 自分の見立てもお話したトロットでした。
「その辺りはわからないの」
「男の子じゃないんですか?」
 ジョージはチェラブを見てからトロットに言いました。
「名前からして」
「僕もそう思います」
 神宝もジョージと同じ考えでした。
「パジャマは男の子のものだし髪型もそうですよ」
「あれっ、私は女の子だと思うけれど」
 ナターシャは女の子だと言うのでした。
「お顔が女の子のものだから」
「とても可愛いお顔をしてるから」
 恵梨香もこう思っていました。
「女の子じゃないかしら」
「男の子だよ、絶対に」
 カルロスもこちらだというのです。
「この子は」
「この辺り議論があってね」
「わからないままなんだよ」
 教授とモジャボロは答えを言いませんでした。
「私は男の子かなって思うんだがね」
「僕もだよ」
「けれどオズマ姫やドロシーは女の子じゃないかって言うんだ」
「あとベッツイやつぎはぎ娘やガラスの猫もね」
「グリンダやエリカやビリーナもそう言うし」
「かかし君や樵君達は男の子だと言ってね」
 オズの国の中でも議論があるというのです。
「この子が男の子か女の子か」
「今もわかっていないんだ」
「じゃあ本人に聞けば」
 ここでこう言ったカルロスでした。
「どうですか?」
「そう思うでしょ」
 そのカルロスにトロットが答えました。
「どうしてもわからないならって」
「はい、そうですよね」
「それが本人に聞いてもね」
「どうなのかな」
 そのチェラブの笑っての言葉です。
「僕の性別はね」
「こう答えるから」
 チェラブが言ってからまたお話したトロットでした。
「だからね」
「わからないんですね」
「そうなのよ」
 一行にというのです。
「これがね」
「そうなんですね、しかも声も」
 カルロスはチェラブの声を聞いて述べました。
「可愛い声ですが」
「わからないでしょ」
「男の子でも女の子でも通用する声ですね」
「だから余計にわかりにくいの」
 チェラブの性別はというのです。
「本当にね」
「それでずっと謎になっているんですね」
「そうなのよ」
「今まで当てた人は」
「いないわ、知っているのはチェラブ本人とこの子も含めたオズの世界のことを外の世界に紹介してくれてオズの国のことを最もよくご存じのボームさんだけだけれど」
 それでもというのです。
「この子もこうだしボームさんもね」
「お話してくれないんですね」
「笑って秘密は秘密のままでいい場合もあるってお話するだけよ」
 チェラブの性別についてはです。
「だから結局ね」
「わからないんですね」
「そうなのよ」
「それで今も議論になっているんですね」
「私達の間でね」
「そうしたことですね」
「ええ、ただこの子がとても楽しい子であることは変わりがないわ」
 このことは変わらないというのです、チェラブの性別に関わらず。
「見ていてね」
「そう、とてもいい子だよ」
 ブルーインもこうお話します、ゴムで出来ていて中には空気が詰まっているよく膨らんだお身体をコミカルな感じで動かしながら。
「一緒にいて悪い思いをしたことはないから」
「そうなんだ」
「そうだよ、だから今も一緒にいるんだ」
 彼等の最初の冒険で一緒になった時からです。
「そうなっているんだ」
「そうだよ、そしてね」
 ここで玉座の方を見たブルーインでした、そちらにはそのジンジャーブレッドの身体と砂糖衣の服とキャンディのステッキ、ドロップのボタンとシルクハットを身に着けた紳士がいました。その紳士こそがです。
「王様もここにいるよ」
「ドウ一世よ」
 トロットも五人に紹介しました。
「このハイランドとローランドの王様よ」
「この方が」
「この人のことも聞いてるわね」
「はい、そしてはじめてお会いしました」
「そうよね、五人共ね」
「本当に」
 カルロスは五人を代表してトロットに答えました。
「ですからとても嬉しいです」
「ははは、それはとても光栄なことだよ」
 そのジンジャーブレッドの紳士が玉座から笑って言ってきました。
「私に会えて嬉しいとはね」
「そうなんですか」
「うん、そう思ってくれることがね」 
 このこと自体がというのです、こう五人にお話してからです。ドウ一世は今度はトロットにお顔を向けて笑顔で言ってきました。
「それでだけれど」
「ええ、今回は使節としてお邪魔したの」
「そうだったわね」
「それでプレゼントもだね」
「持って来たわ」
「それは有り難いね」
 ドウ一世はトロットの言葉ににこりと笑って応えました。
「喜んで受け取らせてもらうよ」
「そう言ってくれて嬉しいわ」
「今回は使節団としてこの辺りの国々を回るんだね」
「それで最初にここにお邪魔したの」
 ハイランドとローランドにというのです。
「こうしてね」
「成程ね、ではね」
「ええ、今からオズマからの贈りものをお渡しするわ」
 プレゼント、それをというのです。
「そうさせてもらうわ」
「ではこちらもお礼をしないとね」
「お礼?」
「パーティーを開いてね」
 そうしてというのです。
「お菓子に果物、ジュースを楽しんでもらってね」
「そしておもちゃもプレゼントするよ」
「そうさせてもらうよ」 
 チェラブとブルーインもお話してきました。
「だからね」
「そちらも楽しみにしていてね」
「プレゼントまでくれるなんて」
 このことに目を丸くして言うカルロスでした。
「凄く気前がいいんだ」
「そうなの、この人達もね」
「気前がいいんですね」
「そうした人達なのよ」 
 トロットは笑顔でカルロスにお話しました。
「オズの国の人達だからね」
「オズの国の人達だからですか」
「皆とてもね」
「もの惜しみしないんですね」
「こうした時はね」
「それで、ですね」
「今から皆で食べて欲しいんだ」
 また言ってきたドウ一世でした。
「お菓子に果物にね」
「ジュースをですね」
「そして私達からもプレゼントを渡すからね」
「どんなプレゼントかな」
「楽しみだね」
 ジョージとカルロスが笑顔でお話しました、プレゼントのことについて。
「お菓子と果物があるけれど」
「それかな」
「これからのパーティーも楽しみだし」
「どんなパーティーか」
 ナターシャと恵梨香も二人でお話をしました。
「お菓子も果物もジュースも楽しみだし」
「そちらもどんなものかしら」
「私とブルーインは食べないし飲まないがね」 
 ここでこう言ったドウ一世でした。
「こうした身体だからね」
「ジンジャーブレッドやゴムの身体だから」
「そう、私達は食べないけれど」
 それでもというのです。
「君達は楽しんでね」
「パーティーの席にはいるからね」
 ブルーインが笑ってお話してきました。
「一緒に楽しむことは出来るよ」
「それじゃあ」
「今からね」
 こうお話してです、そしてでした。
 皆で笑顔でパーティーをはじめました、皆は食堂に移動してそうしてでした。そこでクッキーやチョコレート、ケーキにプリン、キャンディやアイスクリームやキャラメルとあらゆるお菓子が揃っているテーブルを前にして皆でパーティーを楽しみだしました。
 勿論果物やジュースもあります、モジャボロはその果物の中に青や紫の林檎があるのを見て言いました。
「林檎もあるんだね」
「勿論だよ」
 ドウ一世がモジャボロに笑顔で答えました。
「モジャボロ君が大好きなのは知ってるからね」
「だからだね」
「容易しておいたよ」
「アップルパイとアップルティーもあるし」
 そういったものも見て笑顔になるモジャボロでした。
「いいね」
「他のお菓子や果物も楽しんでくれれるね」
「そうさせてもらうよ」
 こう言うのでした、そしてです。
 教授もです、メロンと見て言うのでした。
「実にいいメロンだね」
「そうだよね」
 チェラブがその青や紫のメロンを見て教授に応えます。
「よく熟れていて大きくてね」
「このメロンの上にアイスクリームを乗せて」
 そうしてというのです、半分に切ったメロンを食べながら。
「ブランデーも入れて食べるんだ」
「ブランデー?」
「そう、ノンアルコールのブランデーもあるからね」
 オズの国にはというのです。
「そちらも楽しむといいよ」
「そんな食べ方もあるんだ」
「メロンにはね」
「じゃあ僕もやってみようかな」
「是非やってみるといいよ」
 実際にメロンの上にアイスクリームを乗せてブランデーも入れてそのうえで食べはじめる教授でした。
「本当に美味しいから」
「それじゃあ」
 チェラブもそうして食べてみました、そのうえで笑顔で言うのでした。
「うん、美味しいよ」
「そうだね」
「こんな食べ方もあるんだね」
「ちなみに私のブランデーにはアルコールが入っているよ」
「教授は大人だからだね」
「そうだよ」 
 そうしたブランデーだというのです。
「そしてこれもまたね」
「美味しいんだ」
「そうなんだ」
 こうお話しつつ食べる教授でした。
「本当に美味しいよ、そしてメロンの後は」
「何を食べるの?」
「実は今それを考えているけれど」
「チョコレートはどうかな」
 見ればチェラブはもうチョコートを見ています。
「これは」
「あっ、それだね」
「うん、チョコレートも美味しいからね」
 だからだというのです。
「食べればいいよ」
「チョコレートならね」
 トロットが言うことはちいいますと。
「チョコレートパイもあるわよ」
「そのパイもあるんだ」
「そう、これも美味しいわよ」
 見ればトロットはチョコレートパイを手に取ってです、そのうえでにこにことして食べています。
「あとホットケーキもね」
「あっ、それもあるから」
「どうかしら」
「そうだね、メロンの次はね」
 教授はトロットのお話を聞いて言いました。
「チョコレートパイを食べて」
「そしてよね」
「シロップをたっぷりかけたホットケーキを食べよう」
 そちらもというのです。
「そうするよ」
「そうするのね」
「うん、そしてね」
 さらにお話した教授でした。
「今は葡萄ジュースを飲んでるけれど」
「チョコレートパイやホットケーキの時は」
「コーヒーにするよ」
 それを飲むというのです。
「熱くてクリープやお砂糖をたっぷりと入れたね」
「甘いコーヒーを飲むのね」
「そうするよ」
「そちらも美味しそうね」
「そう、コーヒーはブラックもいいけれどね」
「甘くしたコーヒーもいいのね」
「そうなのだよ、だからね」
 それでというのです。
「今はそちらを飲むよ」
「それじゃあ私も」 
 トロットは教授のお話を聞いて言いました。
「是非ね」
「そちらのコーヒーを飲む」
「そうするわね」
「それもいいね、じゃあね」
「今から飲んでみるわね」
 こう言って実際にでした、トロットはチョコレートパイを食べた後でクリープとお砂糖を入れたホットコーヒーを飲みました。そうしてです。
 にこりと笑ってです、こう教授に言いました。
「美味しいわ」
「そうだね」
「とてもね」
「コーヒーって美味しいんだね」
 ブルーインはそんな二人を見つつ思うのでした。
「そうなんだね」
「飲みたいの?」
「いや、僕はそうしたことをする必要がないからね」
 ブルーインはこうチェラブに答えました。
「だから最初からね」
「飲もうとは思わないんだ」
「美味しいって思う飲んだ人の笑顔を見てね」
「そうしてなんだね」
「僕は栄耀にしているんだ」
「それは私もだよ」
 ドウ一世もそこは同じでした。
「皆が美味しいものを食べて飲んでね」
「その笑顔を見ることがだね」
「嬉しいよ、その嬉しさが私の栄養なのだよ」
「食べる必要がないのに栄養は必要なんだ」
「心のね」
 まさにそれのというのです。
「栄養なんだよ」
「そういうことなんだね」
「そう、そしてね」 
「今もだね」
「栄養を摂取しているんだ」
 このパーティーの場でもというのです。
「心のね」
「若し心栄養を摂れないと」
「沈んでしまうだろうね」
 その心がというのです。
「だからね」
「心にも栄養が必要なんだ」
「そうなんだ、そしてね」
「そして?」
「それは誰もがの筈だよ」
「心にも栄養が必要なんだ」
「そうだよ、だからチェラブも皆もね」
 彼等もというのです。
「楽しくね」
「食べて飲んで」
「栄養を摂るんだよ」
 心のそれもというのです。
「是非ね」
「そう言われると僕いつも栄養たっぷりだよね」
 笑顔で答えたチェラブでした。
「心の方も」
「いつも笑顔を見てるからだね」
「それでだよ、特に王様と会ってからね」
 それからというのです。
「笑顔になって見てばかりだからね」
「それでだね」
「いつも栄養満点だよ」
「それで元気なんだね」
「いつもね」
 そうだというのです。
「本当にね」
「それはいいことだね、じゃあね」
「これからもだね」
「そう、笑顔でね」
「いるべきだね」
「特にチェラブは道化大臣だし」
 だからというのです。
「笑顔でいようね」
「これまで通りだね」
「そうしていよう」
「ううん、何かチェラブを見ていると」
 カルロスはとても甘い苺やすぐりを沢山使ったケーキを食べながら思いました。その思うことはといいますと。
「男の子に見えるけれど」
「カルロスはよね」
「はい、けれどですね」
「それがね」
 どうかというのです。
「私もそう思うけれど」
「そうじゃないかもっていう子もいるんですね」
「そうなのよ」
 これがというのです。
「どうにもね」
「女の子じゃないかな」
 暫く沈黙していたキャプテンが言ってきました。
「わしはそう思うよ」
「キャプテンはですか」
「暫く考えていたけれど」
「チェラブが男の子か女の子か」
「わしは前から女の子じゃないかって思っていたけれど」
 それがというのです。
「暫く見ていてね」
「女の子だってですか」
「今はっきりと思ったよ」
 そうだというのです。
「そうね」
「それはどうしてですか?」
「声や仕草がね」
 そうしたものを見てというのです。
「思ったんだ」
「チェラブは女の子ですか」
「そう思ったよ」
「そうですか」
「そう思ったけれどね」
「いや、それは」
 トロットがキャプテンに言ってきました。
「どうかしら」
「トロットが見るとだね」
「男の子よ」
 こう思うというのです。
「仕草もね」
「そう見えるんだね」
「実際にそう思うけれど」
 女の子のトロットから見ればというのです。
「どうなのかしら」
「わしは女の子だと思うよ」
「いえ、男の子よ」
「違うのかしら」
「そこはね」
 どうにかというのです。
「わしはね」
「女の子に見えてなのね」
「仕方ないんだけれどね」
「その辺りがわからないわね」
「どうもね」
 困るというのでした。
「果たしてどうなのか」
「私もね」
 トロットもこうキャプテンに言いました。
「実際には」
「男の子だと思っていてもだね」
「確信はないのよ」
 そこまで強くはないというのです。
「そうじゃないかしらって思うだけで」
「その辺りはわしもだよ」
「女の子と思っていても」
「確信はないよ」
 キャプテンにしてもというのです。
「声や顔立ちから思うだけでね」
「仕草からも」
「そうだよ、けれどね」
「ひょっとしたら?」
「男の子かも知れないとも思うよ」
「そうなのね、私と一緒ね」
「本当にどちらなのかな」
 首を傾げさえもするキャプテンでした。
「チェラブは」
「どちらだろうね」
 このことは笑って言うチェラブでした。
「僕は本当に」
「自分ではこう言うし」
「余計にわからないのよ」
 キャプテンとトロットも言います。
「皆であれこれ考えてるけれど」
「君自身では言わないんだね」
「言わない方がいいってボームさんに言われてるんだ」
 他ならないその方にというのです。
「その方が不思議だからって」
「オズの国らしい」
「だからなのね」
「そうなんだ、だから言わないんだ」
「勿論私も知らないよ」
 チェラブの一番の親友であり主君でもあるドウ一世もというのです。
「チェラブが男の子か女の子か」
「それをもどかしいと思いませんか?」
「いや、面白いと思ってるよ」
 こうカルロスに答えるのでした。
「もどかしいんじゃなくてね」
「面白い、ですか」
「謎だからね、謎のことをあれこれ考えることがね」
「楽しいんですか」
「そう思っていてね」
 それでというのです。
「そうは思わないよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
 それでというのでした。
「もどかしくは思っていないよ」
「そうですか、それじゃあ」
「私はチェラブはこのままでいて欲しいんだ」
 男の子か女の子かわからないままでというのです、こう言ってでした。
 トロット達にあらためてです、こう言いました。
「じゃあお菓子や果物をどんどん食べてね」
「もっとなのね」
「そう、ジュースも飲んでね」
 そうしてというのです。
「楽しんでね」
「それじゃあね」
 トロットが笑顔で応えてでした、そしてです。
 トロット達はドウ一世達にプレゼントをお渡しして彼等もプレゼントを受け取りました。それはとても可愛らしいハイランドの山で採れた銀で造ったブローチとローランドの海で採れた珊瑚から造ったネックレスでした。



パーティーで色々な食べ物が。
美姫 「美味しそうね」
だな。良い冒険だな。
美姫 「プレゼント交換もして」
楽しんだようで何よりだな。
美姫 「ええ。次はどうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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