『オズのトロット』
第四幕 オズマの育った家
恐竜達と会って楽しくお話した一行はさらに進んでいきます、その中で五人は黄色い煉瓦の道を進みながら楽しくお話をしていました。
「次はオズマ姫のお家だね」
「オズマ姫がチップだった頃だね」
「まだ男の子でね」
「ずっとモンビってお婆さんと住んでいた」
「その頃のお家よね」
「そうよ、オズマはずっと男の子だったの」
トロットもこう五人にお話します。
「チップって名前でね」
「いや、まさかですよね」
恵梨香も少し苦笑いになって言います。
「あのチップがオズマ姫なんて」
「あの時の物語を読んでいますと最初はです」
とてもとナターシャは言いました。
「あの子がオズマ姫なんて思いません」
「急にわかりますからね」
神宝もその時のお話を読んだことを思い出しつつ言います。
「とんとん拍子で」
「大騒動が重なって」
ジョージもあの時の物語のことを思い出しています。
「その最後にって感じでしたから」
「ええ、私もあの時最初オズマが女の子なんて思わなかったわ」
トロットにしてもでした。
「本当に急にだったから」
「チップがトロットだったなんてね」
その時にオズマと知り合った教授のお言葉です。
「私も思わなかったよ」
「あっ、教授はその時からでしたね」
「その時にオズマと知り合ったんだ」
実際にとカルロスにお話します。
「いい思い出だよ」
「あの時の冒険は」
「宮殿に立て籠もってガンプでお空に逃げたね」
「そうでしたね」
「ジンジャー将軍が叛乱を起こして」
「危なかったですよね」
「うん、あの時はどうなるかって思ったよ」
その時を思い出しながらです、教授はカルロス達にお話します。
「けれど今となってはね」
「いい思い出ですね」
「今私が言った通りにね」
「そうなんですね」
「オズマ姫と知り合ってかかし君や樵君、ジャック君ともね」
「知り合うことが出来て」
「今も仲よくしているからね」
そうしたこともあってというのです。
「私は幸せだよ」
「その幸せがあの時からはじまったんですね」
「そうだよ、そして今もこうして皆と一緒にいる」
カルロス達に他の皆も見てお話をします。
「最高に幸せだよ」
「そうですか」
「ただ、私はその時の冒険ではオズマ姫のお家は見ていないんだ」
オズマがチップだった頃のそのお家はというのです。
「あの時はね」
「そうでしたね」
「これまで何度か拝見させてもらっているけれど」
「その時はですね」
「なかったんだ」
そうだったというのです。
「けれど今はね」
「普通にですね」
「見られるよ」
そうだというのです。
「今からも見られるしね」
「オズマ姫にも歴史があるということだね」
モジャボロも笑顔でこう言いました。
「チップだった時、ジャックを作った時」
「そして冒険の時だね」
キャプテンはその最初の冒険のお話をしました。
「最初の冒険もそれからの冒険も」
「いなくなって大騒動にもなったわね」
トロットはここでもこのことを思い出しました。
「思えば」
「そうだったね」
「オズの国の国家元首としてのお仕事もあるし」
「何かとね」
「オズマにも歴史があるわね」
「そうだね、わし等にしてもね」
キャプテンも自分達のことをお話しました。
「ここに来てから色々あったしね」
「そうよね、最初に来た時も」
「オークに乗って飛んで来たよ」
「オズの国でかかしさん、樵さんと会ってね」
「ポリクロームもいて」
「最初から大冒険だったわ」
トロット達にも歴史があります。
「凄かったわね」
「全くだよ」
「僕達はまだ平和に来られましたけれど」
カルロス達は自分達のことを思いました。
「それで平和な冒険が続いていますけれど」
「けれど貴方達も一緒よ」
「歴史があるんですね」
「オズの国においての貴方達のね」
「沢山の冒険がそうですね」
「そうよ」
まさにそれがというのです。
「そして宮殿や他の場所で遊んでいることもね」
「歴史なんですね」
「楽しい歴史でしょ」
「はい、とても」
カルロスはトロットに笑顔で答えました。
「本当に、ただ」
「ただ?」
「何か時々これからどうなるのかって」
「わからなくなる時もあるのね」
「どうにも」
そうだというのです。
「そんな時もあります」
「そうね、私もそんな時はね」
「ありますよね」
「時々でもね」
それでも実際にというのです。
「あるわ」
「トロットさんも他の人達も」
「ベッツィもね」
トロットにとってオズマやドロシーと並ぶ親友である彼女もというのです。ベッツィも驢馬のハンクと一緒に大変な状況でオズの国に来ています。
「これからどうなるか」
「絶対絶命って時もですね」
「あるわ、けれどそうした時もね」
「いつもですよね」
「助かってきているから」
そうだというのです。
「最後は絶対にね」
「助かってますね」
「どんなピンチでも助かるのがオズの国だから」
「そうですね、確かに」
「絶望することはないのよ」
「そうですか」
「そうよ、じゃあね」
「今からですね」
「オズマのお家に行きましょう」
彼女がチップだったその時のお家にというのです。
「そうしましょう」
「わかりました」
ここでオズマのお家が見えてきました、彼女がチップだった頃のお家で今は記念館になっています。そこに入るとです。
色々と説明が書かれています、オズマが使っていた椅子やテーブル等に。そしてオズマがここでどういった暮らしをしていたのかも。
そうした文章を読んでです、カルロスは思うのでした。その小さな宮殿とは比べものにならない木造の一軒家の中で。
「オズの国の中では普通より小さなお家ですね」
「そうでしょ、元々はモンビさんが一人で住んでいてね」
「それで、ですか」
「そこにオズマが入れられたから」
チップにされてです。
「一人暮らし用のお家だったから」
「だからですね」
「これだけの大きさなのよ」
「そうなんですね」
「そしてね」
さらにお話するトロットでした、自分も記念館の中を見回しながら。・
「オズマはモンビさんからはあまりね」
「可愛がられていなかったですね」
「あまり一付き合いのいい人じゃなかったから」
モンビという人はです。
「だからね」
「それで、でしたね」
「オズマもあの時はあまり幸せじゃなかったわね」
「何か寂しい感じがしましたね」
「それがジャックを作ってね」
「ジャックと一緒に冒険に出て」
「変わったのよ」
そうなったというのです。
「本当にね」
「その時から」
「そう、もうここはオズマのお家じゃないしね」
「幸せな思い出もない」
「そうした場所だけれどオズマが言うにはね」
その彼女がです。
「懐かしい思い出の場所でね」
「こうして記念館になっていますね」
「そうなの」
まさにというのです。
「思い出の場所だから」
「それで今も残っていますか」
「そうなの」
「そしてここにいはモンビさんはね」
キャプテンはこの人のことをお話しました。
「今はもう別の場所に住んでいるよ」
「ええと、何処にでしょうか」
「ギリキンの山奥に一人でね」
「今はですか」
「住んでいるよ」
「そうなんですか」
「まあ元々一人暮らしでそちらが好きな人でね」
それでというのです。
「今は幸せだと言っているよ」
「モンビさんとしてはですか」
「そうみたいだよ」
「ずっとお一人でも幸せなんですね」
「あの人的にはね」
「じゃあ僕達が会いに行ったら」
「あの人はよく思わないよ」
お一人でいることが好きな人だからというのです。
「そうなるよ」
「そうした人もいるんですね」
「オズの国でもね、ちなみにわしはね」
キャプテンはといいますと。
「何といっても海にいる時がね」
「一番幸せですか」
「船長だからね」
それでとにこにこと笑って言うのでした。
「そうですか」
「だから今回の冒険でも海に出る予定があるからね」
「その時が楽しみですか」
「そうなんだ」
こうカルロス達にお話するのでした。
「本当にね」
「そう思いますと」
「海に行く時も楽しみですね」
「キャプテンさんのこともあって」
「だからですね」
「海に行くのも」
「うん、やっぱり海はいいよ」
キャプテンは五人にもお話しました。
「見ているだけでもね」
「幸せですか」
「キャプテンとしては」
「海を見ているだけでも」
「それでなんですね」
「幸せなんですね」
「そうだよ、そして船に乗られるなら」
このことも出来ればというのです。
「余計に幸せだよ」
「そうですか」
「それじゃあですね」
「その時のことも期待しながら」
「冒険をしていくんですね」
「海に行く時も考えながら」
「そうしていこう、そして船の上で」
そこでのお話もするのでした。
「ご馳走を食べよう」
「海で食べるのもいいものよ」
笑顔で言ったトロットでした。
「そちらもね」
「そうですよね」
「海でのディナーとかも素敵ですよね」
「船旅の醍醐味です」
「じゃあ海に出た時もですね」
「楽しめますね」
「そうよ、それでここはね」
トロットは記念館、オズマがかつて住んでいたそのお家のお話に戻しました。本当に質素なお家なのですが。
そのお家の中を見回してです、また言うのでした。
「今は誰も住んでいないの」
「だから記念館にもなっていますね」
「誰も住んでいないから」
「だから記念館にもなってますね」
「けれど奇麗ですね」
「よくお掃除がされていて」
「時々近くの人がお掃除をしてくれているの」
だから奇麗だというのです。
「皆オズマが大好きだから」
「オズの国の人だから」
「だからですか」
「オズマ姫が大好きで」
「好意で、ですね」
「お掃除をしてくれているんですね」
「そうよ、全部ね」
まさにというのです。
「オズマの人徳故よね」
「オズマ姫程好かれる人はそうそういないよ」
モジャボロもオズマのことをこう言います。
「こう言うとトロット達もだけれど」
「心根がとてもよくて明るいからね」
それは何故かと言ったのは教授でした。
「だからだよ」
「そしてそのオズマ達を見ているとね」
「我々もかくありたいと思って」
「自分の悪いところをなおしていく」
「そうなっていくね」
「そうだね」
その通りとです、キャプテンも二人に同意して頷きます。
「わし等にしても」
「私も以前はね」
教授は昔のご自身のことを思いました。
「知ったかぶりをしたりお話していて急にそっぽを向いて本を読む」
「よくそうしていたね」
「今思うと甚だ失礼なことをしていたよ」
こうキャプテンに言いました。
「けれどそれをね」
「あらためたね」
「そうしたよ」
「オズマ姫達を見てだね」
「そうしたよ」
まさにというのです。
「今はね」
「そう、悪いところを気付かせてくれるから」
オズマを見ているとというのです。
「余計にだよ」
「皆オズマが好きになるのよ」
こう言ったのはトロットでした。
「本当にね、私もね」
「そうだね、自分の悪いところをね」
「なおしていっていけてるわ」
「だからオズマ姫が好きだね」
「そのこともあってね、若し私がここの近くに住んでいたら」
宮殿でなくというのです。
「その時はね」
「奇麗にしていたね」
「ええ、お掃除に来てね」
「そうしていたね」
「絶対にね、ただ宮殿にいたら」
「お掃除はしてもね」
「それが遊びになっているわ」
オズの国ではあらゆることが遊びになってです。
「そうなっていたわ」
「そうだね」
「ここをお掃除するのも今思うと」
「それをしている人もね」
「オズマが好きでそしてお掃除を」
「遊びとしてね」
「しているのね、楽しく」
このことを思うのでした。
「そうなのね」
「絶対にそうだよ、隅から隅までお掃除するゲームをね」
「しているのね」
「オズの国のお掃除をしている筈だよ」
このことは間違いないというのです。
「本当にね」
「そういうことね」
「同じことをするにもね」
「楽しくするかどうかで全く違うわね」
「遊びですればべ」
つまり心から楽しんでというのです。
「それだけで全然違うね」
「オズの国ならではね」
「ジュリアみたいにね」
「あの娘になるとね」
それこそというのです。
「もう誰もお掃除や食器洗いでは勝てないわ」
「うん、あの娘にはね」
「速さも正確さも」
そのどちらでもというのです。
「誰も。けれど」
「それでもだね」
「何時かはね」
「勝ちたいね」
「そうも思うわ」102
遊び、ゲームとしてです。
「だからそちらも頑張らないとね」
「そう思うならね」
「宮殿に戻ったら」
その時はというのです。
「私もね」
「お掃除や食器洗いもだね」
「頑張るわ」
「その時も楽しみになってきたね」
「ええ、じゃあね」
それならとも言うのでした。
「王宮に帰ったらね」
「それを楽しもう」
「そうするわね、それでだけれど」
ここでこうも言ったトロットでした。
「この記念館の次はね」
「はい、何処でしょうか」
「何処に行きますか?」
「このまま海に出てですか」
「そうしてですか」
「訪問していきますか」
「それはまだ先よ、今回行くのはね」
その国々はといいますと。
「メリーランドにハイランドとローランド、ノーランドにね」
「そしてイックス王国ですね」
「合わせて五つの国に行くんですね」
「ギリキンの方にある国ですね、どれも」
「ハイランドとローランドは島にあって」
「途中海にも行きますか」
「そしてわしがだよ」
キャプテンが実に楽しそうに言ってきました。
「海に出る時は船長になるからね」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「その予定で行って」
「それまでにですね」
「次に行く場所に行くんですね」
「そう、次はね」
トロットが言う皆が次に行く場所はといいますと。
「ジャガイモ畑に行くわ」
「ジャガイモ畑ですか」
「じゃあそこに行ってですね」
「そうしてですね」
「ジャガイモを食べる」
「そうなります?」
「ええ、実はその畑を持っている人は私のお友達でね」
それでというのです。
「ギリキンに来たから挨拶に行くの」
「その人達はとても気前がいい人でね」
モジャボロはその人のお話もしました。
「来た人皆にジャガイモ料理を振舞ってくれるんだ」
「ジャガイモですか」
そう聞いてです、カルロスは笑顔になって言いました。
「いいですね、色々なお料理が出来ますから」
「そうだよ、だからね」
「皆でですか」
「ジャガイモ料理をご馳走になろうね」
「わかりました」
是非にと応えたかるろすでした。
「楽しみにして行かせてもらいます」
「ジャガイモならマッシュポテトだね」
ジョージはこのお料理を思うのでした。
「食べやすいからね、柔らかくて」
「ジャーマンポテトもいいね」
神宝はこのお料理を出します。
「ベーコンも入っていて」
「ポテトサラダも素敵よ」
ナターシャは笑ってこのお料理を言いました。
「量も他のサラダより沢山あって」
「ポテトシチューもいいわよね」
恵梨香はこのお料理がいいと言いました。
「温まるし」
「色々なお料理に入れられるしそのまま煮て食べてもいいし」
カルロスもジャガイモについて語ります。
「本当にジャガイモっていいんだよね」
「だから私も楽しみなの」
見ればトロットも今からにこにことしています。
「その人のところに行くのが」
「そうなんですね」
「トロットさんもなんですね」
「その人にお会いすることが楽しみなんですね」
「それでジャガイモを食べることが」
「そのことが」
「そうなの、それで私達はね」
お邪魔するトロット達はといいますと。
「プレゼントを渡すの」
「これだよ」
教授が笑顔で言って出したのは一冊の本でした、その本はといいますと。
「大学から発行されている本の一つでね」
「小説なの、その人小説が好きだから」
「この本を送るんだ」
「そうするのよ」
こう五人にお話するのでした。
「その人のところに行ったら」
「その小説はどんな内容ですか?」
カルロスは教授にその内容のことを尋ねました。
「一体」
「恋愛小説なの」
「恋愛小説ですか」
「そうなの、この小説をプレゼントするのよ」
「見れば分厚い本ですね」
「長編でね」
それでとです、教授がお話します。
「主人公とヒロインの青春の物語だよ」
「恋愛の」
「ハッピーエンドだよ」
結末のこともお話するのでした。
「大学にいる文学部の教授の人が書いたのだよ」
「そうなんですか」
「教授さんのうちの一人がね」
その人がというのです。
「書いたんだよ」
「面白いんですか、それで」
「面白いよ、ただね」
「ただ?」
「この作品はどちらかというと大人向けでね」
そうした作品でというのです。
「君達が読むには少し早いかな」
「そうした作品ですか」
「ただ、オズの国で出ている本は誰が読んでもいいから」
どんな本でもです。
「だから君達が読みたいならね」
「大人向けでもですか」
「読んでもいいよ、大学にあるからね」
「それで、ですか」
「その時はね」
「わかりました、じゃあ読みたくなったら大学にお邪魔させてもらいます」
そうして読ませてもらうとです、カルロスは教授に答えました。
「その時に」
「ではね、今からね」
「はい、記念館からですね」
「その人のところに行こうね」
こうお話してでした、皆で記念館を後にして次の場所に向かうのでした。そしてこの日の夕方にでした。
皆は辺り一面に広がる物凄く広いジャガイモ畑の中に入りました、黄色い煉瓦道の左右一面にこれでもかとです。
ジャガイモ畑があります、その茎や葉の色がです。
紫だけでなくです、赤や青それに黄色に緑とです、オズの国のそれぞれの色です。このことには五人も驚きました。
「うわ、凄いね」
「紫だけじゃないんだ」
「オズの国の色全部あるよ」
「五つの色の畑がチェスの盤みたいになってて」
「モザイクみたいね」
「オズの国ならではよね」
トロットは驚く五人に笑顔で言ってきました。
「こうした畑も」
「はい、この畑は」
カルロスがそのトロットに尋ねました。
「あえてオズのそれぞれの色にしたんですね」
「そうなの、ギリキンの国にあるけれど」
「紫だけじゃなくて」
「五つの色全部にしたの」
「そうなんですか」
「お陰でカラフルでしょ」
「はい、嘘みたいに」
「それがオズの国じゃ嘘じゃないの」
そうだというのです。
「こうしてね」
「そういうことですね」
「一面同じ色じゃ何か面白くないと思ってね」
この畑を耕している人がというのです。
「それでなのよ」
「この五色にされたんですね」
「それもチェスの盤みたいにね」
それぞれ細かく正方形に分けてというのです。
「こうしてるのよ」
「そのせいで余計に奇麗なんですね」
「そうよ、じゃあ今からね」
トロットは自分達から見て右手にあるジャガイモ畑の向こう側を見ました、すると遠くに木造のお家がありました。
「あのお家に行きましょう」
「あのお家がですね」
「そう、この畑を耕している人のお家よ」
「トロットさんのお友達の」
「そうなの」
その通りというのです。
「あそこがね」
「じゃ今から」
「一緒に行きましょう」
そのお家にと言ってでした、トロット達は五人を畑と畑の間、チェスで言うと目と目の間のそのラインになっているあぜ道に案内してそうしてでした。
お家の方に案内しました、五人はそれぞれの色の畑を左右に見ましたが。畑を見てそれでこう言ったのでした。
「ジャガイモが沢山あって」
「それだけじゃないね」
「あぜ道にも色々植えてあるね」
「トマトもあったりして」
「時々他の作物の畑もあるわね」
「そうだよ、この畑はジャガイモ畑だけれどね」
キャプテンが五人にお話します。
「他の作物もあるんだ」
「ジャガイモとジャガイモの間に」
「そうしてるんですね」
「それでジャガイモ以外のものも食べてるんですね」
「そうされてるんですね」
「トマトとかも」
「そうだよ、あとお家の向こうに牧場もあるから」
それでというのです。
「ジャガイモも飼料にしてね」
「そこからお肉や乳製品もですか」
「手に入れてですか
「食べられてるんですか」
「そうされてですか」
「ここで生活されてますか」
「そうだよ、けれど何といってもメインはね」
それで食べるものはといいますと。
「わかるね」
「ジャガイモですね」
笑顔で応えたカルロスでした。
「そうですよね」
「勿論だよ」
「やっぱりそうですか」
「とにかくジャガイモは色々なお料理に使えるからね」
ここに来るまでに五人がそれぞれ言った様にというのです。
「その人も食べているんだ」
「ジャガイモをメインで」
「そうしているんだ」
「さて、着いたわよ」
ここで笑顔で言ったトロットでした、もう皆はそのお家の前にいました。紫のとても大きなログハウスです。
そのログハウスの扉の前に来てです、トロットは扉をノックしました。するとすぐに大柄な金色の髪の毛を短く刈っている紫の服を着た青い目の男の人が出てきてです、トロット達を見て笑顔で挨拶をしました。
「こんにちは」
「ええ、お久し振りペーターさん」
「こちらこそね。暫く振りだね」
「近くを通ることになったからお邪魔したの」
「そうなんだ、キャプテン達と一緒のところを見ると」
その人ペーターさんはキャプテン達も見て言いました。
「冒険に出ているのかな」
「そうなの、これからイッソス王国に行くけれど」
「その前にだね」
「色々な国に行くの」
「ハイランドとかにかな」
「そうよ、使節団としてね」
このこともお話したトロットでした。
「行くのひょ」
「そうなんだ、それでその子達は」
ペーターさんは五人も見て言いました。
「噂のオズの国の名誉市民の」
「ええ、その子達よ」
トロットはペーターさんに笑顔で答えました。
「今回の冒険ではね」
「その子達も一緒なんだね」
「そうなの」
「はじめまして」
五人はペーターさんに礼儀正しく挨拶しました。
「宜しくお願いします」
「こちらこそね」
ペーターさんも五人に笑顔で挨拶を返しました。
「宜しくね」
「はい、これからも」
「それでだけれど」
トロットはペーターさんにあらためて言いました。
「これからね」
「うん、折角来てくれたからね」
それでとです、ペーターさんも応えます。
「これからね」
「ジャガイモ料理をね」
「ご馳走するよ、ここに来てくれた人には誰でもね」
分け隔てなくというのです。
「うちのジャガイモを食べてもらうから」
「それじゃあね」
「皆にご馳走するよ」
「それで我々からはね」
ここで教授があの本を出してペーターさんに言ってきました。
「この本をね」
「あっ、その本をなんだ」
「プレゼントさせてもらうよ」
「恋愛小説だね」
「そう、ピーターさんが好きなね」
まさにそれだというのです。
「それをプレゼントとして持って来たよ」
「悪いね、僕は恋愛小説が大好きでね」
その彫の深いお顔で言うのでした。
「持って来てくれるなんて嬉しいよ」
「ではね」
「うん、後で読ませてもらうよ」
「それじゃあ今からだね」
「ジャガイモ料理をご馳走するよ」
まさにそれをというのです、そしてでした。
ペーターさんは皆をお家の中に入れてくれました、お家の中はとても広くて立派なリビングやキッチンがあってしかも二階に行く立派な階段もありました。そしてお家の中から長い立派な金髪に青い大きな目をしたディアンドルを着たとても奇麗な女の人が出てきました。その人もトロット達に笑顔で挨拶をしてきました。
「今日はようこそ」
「お邪魔させてもらうわね」
「すぐにお料理作るわね」
「宜しくね」
「こちらこそね」
「あれっ、何か」
ここで、でした。カルロスはその女の人を見て首を傾げさせて言いました。
「ドイツみたいな感じが」
「妻のエヴァの服や僕達の外見からだね」
「はい、そう思いました」
見ればペーターさんの服もドイツのお百姓さんのものです。
「何か」
「そう、僕達はドイツ系だからね」
「それでなんですね」
「ドイツの雰囲気なんだよ」
「ジャガイモもそうですしね」
「何しろこの国はアメリカが反映されるからね」
外の世界にあってドロシーやモジャボロの祖国でもあるこの国のです、ボームさんにしましてもアメリカで長い間生きていました。
「アメリカにはドイツ系の人もいるからね」
「それでペーターさん達もですね」
「オズの国にいてね」
そしてというのです。
「ジャガイモ畑を持っているんだ」
「こんなに大きな」
「そうだよ、ただ僕と妻の趣味でね」
「五色のジャガイモをですね」
「栽培しているんだ」
「そうなんですね」
「そしてお家はね」
こちらはといいますと。
「ドイツのお家だよ」
「木造のですね」
「そうだよ、オズの他のログハウスとはまた違うね」
「はい、確かに」
このことは見ていてわかりました、造りとかがオズの国の他のログハウスとはまた違う感じになっていますので。
「ドイツのお家なんですね」
「これがね」
「煙突もあって」
「ははは、オズの国はいつも暖かいから使わないけれどね」
煙突はとです、ペーターさんは笑って答えました。
「それでもあるよ、お風呂もね」
「ありますか」
「一階にね、じゃあ妻のジャガイモ料理が出来たら」
「皆で、ですね」
「食べようね」
こう笑顔でお話してでした、皆はエヴァさんのジャガイモ料理が出来るまでは皆で王宮のことやこれまでの冒険のことをお話しました。
そうして楽しいお喋りの後で、でした。皆でテーブルに着いてそのジャガイモ料理をご馳走になりますが。
それぞれ五色のジャガイモで、でした。ポテトサラダにポテトシチュー、ジャーマンポテトにポテトフライ、マッシュポテトにポテトのパンケーキが出て来ました。そしてソーセージやザワークラフトもあります。
そうしたジャガイモ料理達を一口ずつ食べてからです、カルロスは作ってくれたエヴァさんに明るい笑顔で言いました。
「どれも凄く美味しいです」
「そう言ってくれるのね」
「はい、本当に」
「エヴァさんはオズの国でもかなりのジャガイモ料理名人なのよ」
トロットも笑顔でカルロスにお話します。
「だからね」
「こんなに美味しいんですね」
「ペーターさんはオズの国で一二を争うジャガイモ作りの名人だし」
それで素材もいいというのです。
「それで余計になのよ」
「美味しいんですね」
「そうなのよ」
「何ていいますか」
「本当にどのお料理も美味しくて」
「青いものも赤いものも」
「他の色のも」
四人もそれぞれ食べて言います。
「いや、凄いですね」
「幾らでも食べられそうです」
「ソーセージやザワークラフトも美味しくて」
「最高です」
「ははは、それにだよ」
ペーターさんはとても大きなジョッキでビールを飲みつつこうも言いました。
「これもあると余計にいいんだよ」
「あっ、ビールですね」
「それもあるんですね」
「ドイツだからですね」
「ジャガイモとビールは欠かせない」
「そうなんですね」
「そうだよ、僕はこれもないとね」
五人にその泡立つビールを飲みながらお話をします。
「駄目だね、勿論ソーセージもね」
「そしてデザートはケーキだね」
教授もビールをご馳走になりつつペーターさんにお話しました。
「そうだね」
「そうそう、デザートはね」
「それだね」
「ケーキもドイツだからね」
この国で生まれたお料理だというのです。
「デザートはそれだよ」
「そうだね」
「あとパンもあるからね」
皆にこちらも出すのでした。
「これも食べてね」
「はい、ただ」
カルロスはマッシュポテト、黄色いウィンキーの色のそれを食べながらペーターさんに応えました。
「ジャガイモがこんなにあって」
「そちらの方を食べてだね」
「申し訳ないですがパンは」
「食べられないから」
「少しだけ頂いていいですか?」
「いいよ、ドイツの主食といったらね」
このお話もするペーターさんでした。
「パンとビール、ジャガイモだからね」
「ビールもですか?」
「そうだよ」
エヴァさんにお替わりを入れてもらってそれを飲みつつ言うのでした。
「それもだよ」
「麦から作るからですか」
「それで飲むパンとも呼ばれているんだ」
ビールはというのです。
「だからこうしてね」
「飲まれているんですか」
「いつもそうしているよ」
「主人は朝も夜も飲んでるのよ」
エヴァさんもにこりと笑ってカルロスにお話します、見ればエヴァさんのところにもビールを並々と入れたとても大きなジョッキがあります。
「そして私もね」
「エヴァさんもですか」
「ジャガイモだけじゃなくてビールもないとね」
「駄目ですか」
「そうなのよ」
「ドイツはビールだからね」
見ればモジャボロもビールを飲んでいます、そしてキャプテンもです。子供達には葡萄のジュースが出されています。
「だからだよ」
「ジャガイモに加えて」
「ビールもないよね」
「ジャガイモを食べてビールも飲む」
今度はジャーマンポテトを食べるペーターさんでした。
「これでこそだよ」
「動けますか」
「そうなんだ」
「それであれだけの畑もですか」
「いつも耕したり世話をしているよ」
そうしているというのです。
「楽しくね」
「そうですか」
「毎日ね、いい畑だね」
「はい、とても」
「あの畑を作る為にはね」
「ジャガイモとビールですね」
「その二つが欠かせないんだ」
どうしてもというのです。
「やっぱりね」
「だからですね」
「今もビールもですね」
「飲まれてるんですね」
「それも美味しく」
「そういうことですね」
「そうだよ」
実際にと誤認に答えるのでした。
「僕にとってビールはそこまでのものだよ」
「私もなのよ」
エヴァさんも笑顔で言いつつ飲んでいます。
「ビールがないとね」
「しかし水みたいに飲むね」
キャプテンはお二人のそのことに言及しました。
「こんな大きなジョッキをごくごくとだから」
「うん、ドイツ系としてはね」
「ビールが欠かせないので」
「前に来た時もだしね、しかし確かにね」
キャプテンもビールを飲みつつ言います。
「美味しいね」
「そうだよね」
「うん、それとね」
「それと?」
「確かに栄養が補給されるんだよね」
ビールを飲むと、というのです。
「パンを食べた時みたいに」
「そうだね」
「うん、朝から飲むのもいいことだよ」
「オズの国においてはね」
「そうだね、ただペーターさんは時々生卵も入れるね」
ビールの中にです。
「そうして飲んでいるね」
「あの飲み方だね」
「あれはドイツ独特みたいだね」
「うん、実際にね」
その通りと答えるペーターさんでした。
「アメリカではそうそうないね」
「僕も知らなかったよ」
モジャボロがご自身の記憶から答えました。
「あの飲み方は」
「そうだね」
「あれは栄養を沢山摂る為だね」
「うん、卵も一緒になんだ」
「飲むんだね」
「一気にね、そうして朝食欲がない日もね」
そうした時でもというのです。
「栄養を摂ってね」
「一日をはじめるね」
「そうしているんだ」
実際にというのです。
「そうしているんだ」
「そうだね」
「どうしても朝はそうした時があるからね」
「そして働くんだね」
「ビールと生卵の力でね」
まさにその二つでというのですy。
「そうしているよ」
「そうした朝御飯もあるんですね」
カルロスはお話を聞いてしみじみとした口調で言いました。
「そうなんですね」
「そうだよ」
「僕も大人になったらそうして飲む時が来るかな」
「そうだね、外の世界ではね」
教授がカルロスに答えてくれました。
「君達が大人になればね」
「そうして朝御飯を口にすることもですね」
「あるかもね」
「特にドイツにいたら」
「そうなるかもね」
こうカルロスにお話しました、皆はペーターさんご夫婦のジャガイモを中心としたドイツ料理を楽しんででした。そうして食べ終わってからご夫婦と再会を約束してお別れをして冒険を再開したのでした。
オズマ姫の家へ。
美姫 「向かいながらオズマ姫の話で盛り上がったわね」
ああ。今回も美味しい物を食べているし。
美姫 「楽しい冒険を経験できているようね」
だな。次は何があるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。