『オズのトト』




           第十二幕  楽しいお祭り

 この日ドロシー達はまずは飛行船でオジョの家のところまで行きました、そしてオジョの家の前まで降りて彼のお家を訪問してでした。
 そしてです、昨日連絡したお祭りのことをお話するのでした。するとオジョは明るい笑顔で答えました。
「うん、じゃあね」
「ええ、貴方もね」
「お祭りに参加させてもらうよ」
 ドロシ―に笑顔で答えました。
「そうさせてもらうよ」
「わかったわ、それじゃあね」
「これから飛行船に乗ってだね」
「一緒に真ん中の山に行きましょう」
「そうしようね」
 笑顔でお話してでした、そのうえで。
 オジョも飛行船に乗りました、そしてまずは男女に別れてお風呂に入って身体を奇麗にしてです。
 浴衣に着替えます、まずはジョージはといいますと。トトが皆の浴衣を見てそのうえで聞きます。
「あっ、ジョージは赤なんだ」
「うん、僕の一番好きな色だからね」 
 赤地の着流しです、粋な着こなしです。模様は青いお星です。
「これにしたんだ」
「そうなんだ、そして神宝は青だね」
「そうだよ」
 神宝は青地で赤の胡弓の柄です。丁寧な着こなしをしています。
「僕の色って言ったら青だね」
「そうだね、カルロスは黄色で」
「僕は黄色だよね」
 黄色に黒のお魚です、その袖をめくっていてやんちゃな着方です。
「もうこの色しかないって思ったんだ」
「よくわかるよ、そしてナターシャは黒で」
「似合うかしら」
 黒地で黄色い向日葵が目立っています、可愛い帯の色も黄色です。おしとやかなでクールな着方です。
「浴衣は滅多に着ないけれど」
「似合ってるよ、そして恵梨香はやっぱりピンクなんだ」
「ピンクの浴衣を見てこれしかないって思ったの」
 ピンクの地で白い朝顔の柄です。帯の色も白です。
「それでなの」
「ううん、何というかね」
「日本人だからかしら」
 トトだけでなくドロシーも言います。
「恵梨香の着こなしがね」
「一番様になってるかな」
「そうよね」
「自然な感じで」
「聞慣れてる?」
「そうだよね」
「夏になったら絶対に何度か着るからかしら」
 恵梨香がドロシーとトトに応えました。
「それでかしら」
「きっとそうだね」
 トトは恵梨香ににこりと笑って答えました。
「やっぱりね」
「着慣れているから」
「着こなしもいいんだ」
「そうなのね」
「子供の頃から着てるんだよね」
「そうなの。まだ小さい立ったばかりの頃から」
 それこそ幼稚園に入る前からです。
「着ているの」
「だったらね」
「もう。なのね」
「聞慣れているのが当然だよ」
 トトはにこりと笑って恵梨香に言いました。
「やっぱりね」
「だといいけれど」
「そしてドロシーは」
 最後に彼女を見ますと。
 淡い緑の浴衣でとても奇麗な赤と青、紫と黄色の金魚達の柄の浴衣に鮮やかな緑の帯です。五人はドロシーのその浴衣を見て言いました。
「あっ、オズの国ですね」
「緑が都で金魚が四国」
「それを表しているんですね」
「帯も緑ですし」
「それは王宮ですね」
「そうなの。この浴衣はオズの国を表す浴衣だってことでね」
 ドロシーは五人ににこりと笑って答えました。
「オズマにプレゼントしてもらったの」
「そうなんですか」
「そうした浴衣ですか」
「何か奇麗ですね」
「一目見ただけでうっとりしました」
「凄くいい浴衣ですね」
「私のお気に入りの浴衣の一つなの」
 実際にと答えたドロシーでした。
「だからね」
「これからですね」
「その浴衣を着られて」
「お祭りに出て」
「そして皆で、ですね」
「楽しまれるんですね」
「そうよ、まさか今日この浴衣を着るとは思わなかったけれど」
 それでもというのです。
「私凄く楽しみだわ」
「そうですよね」
「じゃあ皆で行きましょう」
「今教授とカエルマンさんとボタンがお風呂ですけれど」
「皆の身だしなみが終わったら」
「それで」
「そうしましょう、ただね」
 ここでドロシーはオジョを見ました、見れば服はちゃんと奇麗にしてアイロンもかけて帽子は新品でブーツもピカピカでお風呂上がりのいい香りもしますが。
 いつものマンチキンの服なのでドロシーは少し残念なお顔でオジョに対してこう言うのでした。
「貴方もなのね」
「うん、やっぱり僕の服はね」
「マンチキンの服なの」
「この服が一番好きだし着やすいから」
 それでというのです。
「この服にしたんだ」
「いつものマンチキンの服ね」
「そうだよ」
 こう言うのでした。
「見ての通りね」
「そうなのね」
「うん、それとね」
「それと?」
「服、いい香りがするけれど」
「ええ、さっき香水をかけておいたの」
 ドロシーはオジョににこりと笑って答えました。
「貴方の服にアイロンをかけたけれど」
「有り難うね」
「その時にね」
「香水をかけてくれたんだ」
「糊も利かせて」
 それと一緒にというのです。
「薔薇の香水もかけて」
「それでなんだ」
「いい香りがするのよ」
「成程ね、そのことも有り難うね」
「どういたしまして」
「そういえばドロシ―さんいつもアイロンかけられますね」 
 恵梨香はドロシ―にそのアイロンのことを聞きました。
「靴も磨いて帽子も手入れして」
「ええ、そうしてるでしょ」
「凄く早い手順で」
「そうしたことは得意だし好きなの」
「そうなんですか」
「いつも誰が一番速く確かに出来るかってね」
 そのアイロンがけをというのです。
「トロットやベッツイ達と競争してるし」
「遊びで、ですか」
「オズマも入ってね」
 そしてというのです。
「やってるから。靴磨きもよ」
「王女様なのに」
「今は王女様でも元は違うでしょ」
 カンサスの女の子でした。
「そうだったでしょ」
「そう言われますと」
「だからね」
「普通に。ですか」
「そうしたことも出来るし得意なの」
 そしてすることも好きだというのです。
「そうなのよ」
「そうですか」
「好きだから」
 いつもゲームとして遊んでいるからというのです。
「別に気にもならないわ」
「王女様でも」
「王女だからしていい、したら駄目ってお仕事はね」
「オズの国ではですか」
「特にないのよ。悪いことはしたら駄目だけれど」
「アイロンがけとかは悪いことじゃないですからね」
「していいのよ」
 王女であってもというのです。
「別にね」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「オジョの服のアイロンがけもしたのよ」
「瞬間洗濯機で奇麗にして」
「それからね」
 飛行船の中にはそうした機械もあります、その中に服を入れると一瞬でとても奇麗にしてくれます。
「アイロンがけをしてね」
「靴もですね」
「磨いたのよ」
 そうしてピカピカにしたというのです。
「そうなのよ」
「成程、そうですか」
「恵梨香達もよかったらね」
「アイロンがけや靴磨きのゲームもですか」
「今度してみる?」
「そうですね、都に戻ったら」
 その時はです、恵梨香が答えますが他の四人も同じ考えです。
「是非」
「そうして遊びましょう」
「わかりました」
「ものが奇麗になっていくって凄く楽しいことよ」
 そうしたアイロンがけや靴磨き、それにお掃除はというのです。
「だからいつもしていいのよ」
「そういうことですね」
「遊びでしてもね」
「けれど僕の毛のブラッシングはね」
 見ればトトはお風呂に入って奇麗にブラッシングまでしてもらってふわふわとしています、首輪は奇麗なエメラルドで飾られています。
「ドロシーだけがするんだ」
「ドロシーが一番のお友達だから」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「だからね」
「私達は、なのね」
「してくれると嬉しいけれど」
「私の趣味の一つだから」
 それでとです、ドロシーも笑顔で言ってきました。
「だからね」
「ドロシーさん以外の人がですね」
「出来る限りね」
「ドロシーさんにさせて欲しい」
「そうなの」
「僕もドロシーにしてもらうのが一番いいから」
 トトもそうだというのです。
「そういうことなんだ」
「わかったわ、じゃあね」
「そういうことでね」
 こうお話するのでした、そしてです。
 ムシノスケ教授とカエルマン、ボタンもお風呂から出て奇麗な服を着ました。するとです。
 教授は自分のタキシードを見てです、笑顔で言いました。
「これでよしだね」
「僕もだよ」 
 カエルマンも言います。
「トロシ―王女がアイロンがけしてくれた服は最高だよ」
「全く以てね」
「タキシードでも何でもね」
「本当に最高だよ、では」
「うん、この服でね」
「いざお祭りへ」
「僕もだね」
 ボタンも奇麗な水兵さんの服です、ピカピカで薔薇の香りまでします。
「今からお祭りに」
「そうだよ、一緒に行こうね」 
 トトがそのボタンに応えます。
「皆で」
「うん、わかったよ」
「あっ、ボタンも今は」
 恵梨香がここで気付きました、その気付いたことはといいますと。
「わからない、じゃないわ」
「僕もそうした時があるよ」
「わかる時がなのね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「今みたいにね」
「そうなのね」
「僕はわからないことはわかるって言ってね」
「わかることはなのね」
「わかるって言うよ」
「正直になの」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうしているから」
「だからなのね」
「今はわかるって言ったんだ」
「よくわかったわ、私も」
 恵梨香はにこりと笑ってボタンに答えました。
「そのことは」
「それは何よりだよ」
「そうよね」
「うん、じゃあね」
「今からね」
「お祭りに行こう」
「そうしましょう」
 最後にドロシーが言ってでした、皆でお祭りに行く為に飛行船を真ん中の山へとやりました。
 そして山に入るとです、本土の生きものや妖怪、沖縄や北海道の彼等に鳥さん達もいました。
 その皆を見てです、トトは尻尾を横にぱたぱたと振って言いました。
「皆いるね」
「この通りね」
 鳥さんの代表が応えました。
「集まったよ」
「そうなんだね」
「他の皆もね」
「さて、今日は」
 ここで言ったのは赤鬼でした。
「皆で楽しくやろうか」
「歌って踊ってだね」
「その通りだよ」
 赤鬼は笑ってトトにも答えました。
「皆でな」
「踊りはどんなのかな」
「盆踊りだよ」
「日本のだね」
「そう、それを踊るのだよ」
「はじめて見るね」
 盆踊りはとです、トトは言いました。
「どんなのかな」
「それは視てのお楽しみだな、そして酒も料理もある」
「お料理も」
「そう、そちらも楽しめるぞ」
「色々あるぞ」
 青鬼も陽気に笑って言ってきました。
「焼き鳥にとうもろこし、焼きそばにたこ焼き、お好み焼きとな」
「あっ、全部出店の食べものね」
 恵梨香がそうしたお料理の名前を聞いて言いました。
「全部わかるね」
「おっ、日本人だからわかるか」
「あとたい焼きとりんご飴、水飴にベビーカステラ」
「クレープもあるぞ」
「何でもあるのね」
「そうだ、お嬢ちゃんが食べたいものは全部な」
 それこそというのです。
「あるぞ」
「それは何よりですね」
「そう、そしてお酒もあるしな」
 青鬼は満面の笑顔で言うのでした。
「そっちも楽しみだ」
「ううん、私はお酒は」
「子供だからか」
「別に」
「ははは、まあ飲めないなら仕方ない」
 青鬼も笑ってそれならいいと返しました。
「飲めるものを楽しんでな」
「冷やし飴はどうかな」
 ここで言ってきたのはツキノワグマでした、見れば北海道のヒグマよりも身体は小さいです。
「あの飲みものは」
「冷やし飴?」
 そう聞いてです、トトは言うのでした。
「それどんな飲みものかな」
「ううん、物凄く甘い日本のジュースっていうか」
「ジュースなんだ」
「そうなの、とんでもなく甘いの」
 そうしたものだというのです。
「これがね」
「じゃあそのジュースを飲んで」
「ええ、そしてね」 
 恵梨香はトトにお話しました。
「どんな味か楽しんでね」
「わかったよ。是非ね」
「ちんすこうもあるよ」
 シーザーは沖縄のお菓子をお話に出してきました。
「こっちも楽しんでね」
「茹でたジャガイモに塩辛を乗せて食べるんだ」
 コロボックルが言ってきました。
「信じられない位美味しいからね」
「そんなに色々出されたら」
 ドロシーは少し苦笑いで言うのでした。
「何を食べていいかわからないわ」
「多過ぎて?」
「ええ、本当にね」
 それこそというのです。
「そうなってるから」
「その時はあれかな」
 ここでコロボックルが言うことはといいますと。
「一つ一つを指差していってどれにしょうかなってね」
「選んでいって」
「そしてね」
 そうしていってというのです。
「選んだらどうかな」
「あっ、そうした選び方があるの」
「そうなんだ、日本ではね」
 コロボックルの中年の男の人がドロシーに紹介します。
「どれにしょうかなてんのかみさまのいうとおり」
「その言葉の順に」
「そうしていって」
 そのうえで、というのです。
「選ぶんだ」
「ううん、それじゃあ」
「それでいく?」
「そうね、いや日本の選び方ってね」
「どうかな」
「面白いわね」 
 こうコロボックルに答えました。
「それも」
「それじゃあ」
「それで選んでみるわ」
 実際にというのです。
「何を最初に食べるのかね」
「そうするといいよ。ジャガイモはいいよね」
「美味しいわよね」
「焼いても茹でてもね」
「それで茹でてなのね」
「上に塩辛を乗せて食べるんだよ」
「北海道の食べ方ね」
「僕達も楽しんでるね」
 それだというのです。
「そうだよ」
「よくわかったわ、じゃあ選んでみるわね」
「そしてジャガイモが最初に当たったら」
「食べてみるわね」
 ドロシーはコロボックルににこりと笑って応えました、そして実際にその選び方で最初に食べるものを決めました。
 トロシーはとうもろこしを最初に食べました、たれを付けて焼いたそれを食べてにこりとして言いました。
「バターコーンとはまた違った美味しさね」
「そうだね」
 トトもそのとうもろこしを食べつつドロシーに応えます。
「この料理の仕方をしても美味しいね」
「ええ、とうもろこしってたれも合うのね」
「そうなんだね」
「日本ではお祭りの時こうして食べるんです」
 恵梨香がドロシーに言ってきました。
「とうもろこしは」
「そうなのね」
「はい、あとこうしてです」 
 恵梨香はその手に焼きそばを持っています、その焼きそばを食べてにこにことして言うのでした。
「焼きそばとかも」
「それも美味しそうね」
「実際にかなり美味しいです」
「じゃあ次はそれを食べようかしら」
「それで立って食べるんです」
「今みたいに」
「お祭りの時は」
 こうドロシーにお話するのでした。
「屋台の中で」
「ううむ、そういえば」
 教授はお祭りの場を見回しました、確かに屋台が一杯並んでいてそこにそれぞれのお料理が出ています。
「風情があるね」
「そうだね、独特のね」
 カエルマンも言います、二人共お好み焼きや唐揚げを食べています。
「雰囲気があるね」
「賑やかで楽しくて」
「ハレだね」
「これが日本のお祭りなんです」
 恵梨香はにこにことして教授とカエルマンにもお話します。
「浴衣を着て屋台の食べものを食べて」
「それと踊り?」
 ボタンが恵梨香に言ってきました。
「それかな」
「そうなの、それも欠かせないの」
「成程ね、それとね」 
 ボタンはここで冷やし飴を飲んで言いました。
「この冷やし飴って実際に凄く甘いね」
「ええ、そうでしょ」
「日本のキャンディをそのまま飲みものにした感じね」
「それが冷やし飴なのよ」
「そうなんだね」
「飲みものも楽しんでね」
「そうさせてもらうね」 
 実際にと応えたボタンでした、そしてオジョはといいますと。
 苺のシロップをかけたかき氷を食べてです、こう言いました。
「不思議な食べものだね」
「僕もそう思います」
「ただの氷なんですけれどね」
「それがシロップをかけたらです」
「物凄く美味しくなるんです」
 ジョージと神宝、カルロス、ナターシャがオジョに言ってきました。四人もそれぞれのものを食べています。
「ただそれだけなのに」
「甘くて冷たくて美味しくて」
「アイスクリームにも負けないんです」
「そこまでの美味しさになるんです」
「こんなものまであるなんてね」 
 オジョは感心した様に言いました。
「面白いね」
「夏祭りには欠かせないです」
 恵梨香もオジョに言ってきました。
「何といっても」
「かき氷はなんだ」
「そうです、それは苺ですよね」
「うん、他にもあったね」
「レモンとかブルーハワイとか」
「そっちも美味しそうだったよ」
「あとメロンもあります」
 恵梨香はオジョににこにことしてお話しました、何時の間にかその手には団扇があります。
「そっちも美味しいですよ」
「あの緑のだね」
「はい、そうです」
「色々あるんだね」
「かき氷にも」
「それで色々楽しめるんだね」
「そうなんです、私も後で食べます」
 恵梨香もです、そうするというのです。
「みぞれで」
「それも美味しいんだ」
「そうなんです」
「ただの氷もこうして食べるとここまで美味しくなるんだね」
「面白いですね」
「本当にね」
「僕はブルーハワイがいいかな」
 神宝はお好み焼きを食べつつ言いました。
「そっちかな」
「僕はレモンがいいよ」
 カルロスはフランクフルトを食べながらそちらだと言いました。
「かき氷はね」
「私は普通に黒蜜ね」
 ナターシャは唐揚げを食べつつ微笑んで言いました。
「和風に」
「僕はオジョさんと同じ苺かな」
 ジョージは焼き鳥を食べながら言いました。
「かき氷は」
「ははは、好きなのを食べていいよ」
 四人に一つ目小僧が言ってきました、見れば一つ目小僧はアイスキャンデーをぺろぺろと舐めています。
「好きなものをね」
「そうしていいんだ」
「かき氷も好きなのを食べて」
「そうしても」
「それぞれで」
「うん、僕はどれも好きでね」
 一つ目小僧はその一つの大きな目をにこりとさせて四人に言います。
「特に最後のね」
「あっ、シロップが残って」
「氷も溶けてね」
「ジュースみたいになった」
「あの冷たいのがいいんだね」
「そうなんだ、最初のシャクシャクしたのもいいけれど」
 それだけでなくというのです。
「最後が一番好きなんだ」
「ううん、あの時になったら」
 恵梨香も一つ目小僧の言葉に頷いて言うのでした。
「確かに甘くてね」
「冷たくてね」
「最後の名残みたいなのもあって」
「美味しいよね」
「そうよね」
「だから好きなんだ」
 また言った一つ目小僧でした。
「僕はね」
「そうなのね」
「僕もかき氷の最後は大好きだよ」 
 から傘も言ってきました。
「あの最後の甘さがいいよね」
「から傘さんもなの」
「うん、かき氷はね」
「そうなのね」
「それとだけれど」
 ここでトトはから傘を見ながらこんなことを言いました。
「から傘さんの身体ってどうなってるの?」
「僕の身体かい?」
「うん、足があるけれど」 
 一つ目と口があって両手が出ている傘の柄の部分がそれです、下駄を履いた一本足がそれです。
「足のところに内臓とかがあるのかな」
「そうだと思うよ」
 から傘自身もこう答えます。
「僕もね」
「そうなんだね」
「うん、そうだってね」
「成程ね」
「まあ僕達妖怪って色々な身体だからね」
「そうだね、から傘さん以外にも」
 トトは一反木綿や塗り壁も見ています、そうした人達も屋台の食べものを美味しく食べています。
「色々な身体の人達がいるね」
「その皆がね」
「それぞれの身体の仕組みなんだね」
「そうだよ」
「いや、そうしたこともね」
 ここでまた言ったトトでした。
「学問になるんだろうね」
「その通りだよ」
 教授はビールを飲みつつトトに応えました、紙コップの中に泡立っているマンチキンの青いビールがあります。
「妖怪の諸君もまた学問だよ」
「やっぱりそうなんだ」
「それとね」
 さらに言う教授でした。
「動物の諸君もこのお祭りにもだよ」
「全部なんだ」
「そう、学問なんだよ」
「何でもなんだ」
「そうだ、民俗学になるんだ」
「妖怪やお祭りは」
「そう、歴史学にも似た学問でね」
 ビールを飲みながら陽気にです、教授はトトにお話します。
「これがまた実になんだ」
「面白いんだ」
「そうなのだよ」
「妖怪さんも学問だなんて」
「妖精もそうだしね」
「それで教授も学んでいるんだね」
 トトは唐揚げを食べつつ頷くのでした、そしてです。
 そのトトにです、狸が声をかけてきました。
「踊る?後で」
「盆踊りかな」
「うん、どうかな」
「ううん、僕の身体だとね」 
 どうしてもと答えたトトでした。
「皆みたいには踊れないからね」
「それでなんだ」
「うん、見ることは出来るけれど」
 それでもというのです。
「そうして楽しむことは無理だね」
「ああ、君は後ろ足で立てないんだったね」
「君もじゃないの?」
 トトは四本足で立っている狸に返しました。
「後ろ足で立って動けないんじゃ」
「いや、普段は四本足でもね」
 それでもとです、狸はトトに答えました。
「僕は立てるよ」
「そうなんだ」
「うん、後狐君や穴熊君達もそうだから」
「日本の狐君や狸君は」
「化けることも出来てね」
 それでというのです。
「そうしたことも出来るよ」
「そうなんだ」
「外の世界では普通の狐や狸は出来なくても」
 それでもというのです。
「オズの国だと誰でもだよ」
「出来るんだ」
「そうなんだよ」
「オズの国ならではだね」
「そこはね、狐や狸や穴熊は誰でもね」
 それこそというのです。
「後ろ足で立てて化けられるんだ」
「それで盆踊りもだね」
「踊れるよ」
「それで楽しむんだ」
「そのつもりだよ」
「じゃあ楽しんできてね」
「そうさせてもらうよ」
 笑顔で言った狸でした。
「僕達も」
「じゃあそうしてね。あと君達は」 
 トトは狸にこうも言いました。
「僕と同じイヌ科だったね」
「そうそう、親戚同士なんだよね」
「狐君達も」
「皆親戚同士だよ」
「それでも穴熊君達は」
 彼等はといいますと。
「違ったね」
「また別だよ」
「そうだよね」
「僕達と穴熊君は似ているけれど」
 狸達と、です。
「種類は別なんだ」
「穴熊君達は穴熊君達だね」
「そうだよ」
「本当にそっくりな位似てるけれどね」
「また違うんだよね、仲もいいけれど」
「同居してることも多いんだったね」
 トトは狸と穴熊のこのこともお話しました。
「そうだったね」
「うん、そうだよ」
「同じ穴のっていうね」
「僕達は穴を掘れないんだ」
 狸達はです、犬は出来ますが同じイヌ科でも出来ることと出来ないことがどうしてもあるのです。
「だから穴熊君達の堀った穴に住むんだ」
「そうして同居するんだったね」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「同居してて本当に仲もいいんだ」
「それは何よりだね」
「そして穴熊君達も化けられるんだ」
 日本の彼等はというのです。
「人間にもね」
「余計に一緒だね」
「そうだよね」
「それで盆踊りもだね」
「楽しむよ」
 そちらもというのです。
「皆でね」
「そうしてね」
「そういうことでね」 
 こうしたことをお話してでした。そのうえで。
 盆踊りがはじまると実際にでした、狐や狸達は人間に化けたり二本足で立ってそうしてなのでした。
 踊ります、ドロシーは太鼓がある台を囲んでの皆の踊りを見てトトにこんなことを言いました。
「面白い踊りね」
「うん、アメリカやオズの国の踊りとはまた違う」
「輪になって踊る」
「それぞれがね」
「本当に面白い踊りね」
「色々な踊りがあるんです」
 恵梨香ガドロシー達にその盆踊りのことをお話しました。
「踊りにも」
「そうなのね」
「今は佐渡おけさですね」
「その曲なの」
「さっきは河内音頭で」
 それでというのです。
「今はその曲です」
「ははは、どの踊りも楽しいな」
「全くだ」
 ナマハゲ達が恵梨香の後ろで笑って言ってきました。
「わし等も踊るか」
「後でな」
「あっ、貴方達も踊るのね」
「そうするぞ」
「後でな」
 こう恵梨香に答えるのでした。
「今は見ているがな」
「皆と一緒にそうするぞ」
「僕達も踊ろうか」
「いいね、踊ろう」
 ニホンザル達も乗り気で言っています。
「楽しもうね」
「お祭りだしね」
「こうしたお祭りがあるのなら」
 ペンギンはしみじみとして言いました。
「ずっとここに住みたいね」
「そうだね」
「山に入ってよかったね」
「いや、楽しい生活になりそうだね」
「ここでの生活は」
「この山で皆とも遊べるし」
「よかったわ、そう言ってくれて」
 ドロシーは鳥さん達の言葉ににこりと笑って応えました。
「私達もあの山を紹介してよかったわ」
「うん、あの山に住んで」
「そしてこの山で仲良くして」
「そうして楽しんでいくよ」
「そうしていくわね」
「何処に移住しようか困っていたけれど」
 ドードー鳥も言ってきました。
「いい山を紹介してくれて有り難う」
「そう言ってくれて何よりだわ」
「あの山で皆で楽しく過ごしてね」
「そうさせてもらうわ」
「お水もいいし」
 トキも上機嫌です、ドードー鳥の横でにこにことしています。
「とても快適な山だよ」
「全くだよ、こうした場所もあるし」
 アホウドリもすっかり馴染んでいる感じです。
「楽しく過ごせるよ」
「それじゃあね、あと私達はこのお祭りが終わったら」
「帰るんだ」
「エメラルドの都に」
「そうするんだ」
「ええ、そうするけれど」
 それでもというのです。
「機会があったらまた来させてもらうわ」
「待ってるわ」
 キツツキがドロシーに応えました。
「その時が来ることをね」
「ええ、また会う時があれば」
「一緒に楽しみましょう」
「そうしましょう」
「今回の冒険も楽しかったね」
 トトは目を輝かせてです、ドロシーに応えました。
「最初から最後までね」
「そうだったわね」
「色々な山を巡って美味しいものを食べて」
「最後はこのお祭りでね」
「本当に楽しかったよ」
「最高の冒険だったわ」
 今回もというのです。
「何ともね、ただ」
「ただ?」
「いえ、まさかね」
 ここで自分の浴衣を見てこんなことも言ったドロシーでした。
「浴衣を着ることはね」
「想像してなかったんだ」
「とてもね。ただ浴衣って」
 着てみたそれはといいますと。
「中々素敵ね」
「似合ってるよ、ドロシーも」
「なら嬉しいわ」
「あとね」
「あと?」
「ジャガイモは食べたかな」 
 トトはドロシーにこのことを聞いてきました。
「あの塩辛を乗せた」
「ええ、もう食べたわ」
 トトににこりと笑って答えました。
「それもね」
「美味しかった?」
「それが物凄く美味しかったのよ」
「そうだったんだ」
「よく茹でたジャガイモにはバターを乗せるわね」
「うん、そうだね」
「けれどこれがなのよ」
 塩辛を乗せてもというのです。
「美味しいのよ」
「何か僕も食べたくなったよ」
「ええ、今持って来るわね」
 早速です、ドロシーはその茹でたジャガイモの上に塩辛を乗せたものをトトの前にお皿の上に乗せて出しました。そのジャガイモを食べるとです。
 トトは目を輝かせてです、こう言いました。
「うん、確かに美味しいね」
「そうでしょ」
「こうした食べ方もあるんだね」
「よくこんなの思いついたわね」
「全くだよ」
 食べながら言うのでした。
「僕もそう思うよ」
「食べてみてね」
「本当にね」
「こうした食べ方もあるなんて」
「発想の外にあったけれど」
「美味しくて」
 ムシャムシャと食べるトトを見つつです、ドロシーもそのジャガイモを食べています。
「癖になりそうよ」
「幾らでも食べられる感じだよ」
「じゃあもう一個食べる?」
「そうしていい?」
「いいわよ」
 これが恵梨香の返事でした。
「私も食べてるしね」
「それじゃあもう一個ね」
「はい、どうぞ」
 差し出したそれも食べたトトでした、そしてまたドロシーに言いました。
「うん、お腹一杯になったよ」
「そうなのね」
「色々食べたしね」
 ジャガイモ以外にもというのです。
「すっかり満足よ」
「それは何よりだね」
「ええ、じゃあお祭りの後は」
「飛行船に乗って」
「そうして帰ろうね」
「そうしましょう」
 笑顔でお話するのでした、そしてです。
 ドロシーは盆踊りを見てです、恵梨香達にもオジョにも他の皆にも笑顔で誘いをかけました。
「ねえ、私達もね」
「盆踊りにですね」
「参加しましょう」 
 こう提案したのでした。
「そうしましょう」
「そうですね、折角ですし」
「そう、皆で入って」
 盆踊りの輪にです。
「そうしてね」
「皆で楽しく踊って」
「それどうかしら」
「はい、それじゃあ」
 恵梨香がにこりと笑って応えました。
「皆で踊りましょう」
「今からね」
「僕は四本足でしか立てないからいいよ」
 トトは笑ってこう言いました。
「だけれどね」
「ええ、私達の踊りを見ていてくれるわね」
「そうさせてもらうよ」
「わかったわ、じゃあ私達を見ていてね」
「そうさせてもらうね」
「それじゃあ私達は踊って」
 そしてというのです。
「最後までこのお祭りを楽しんで」
「そしてそのうえで」
「都に戻りましょう」
「都でもこうしたお祭り出来るかな」
「出来るわ、オズマにお話ををして」
 そしてというのです。
「都でも出店を一杯出して盆踊りを踊りましょう」
「浴衣もあるしね」
「全部あるから」
「あっ、じゃあ僕も都に行っていい?」
 ボタンはこう言ってきました。
「そうしていい?」
「ええ、いいわよ」
 笑顔で応えたドロシーでした。
「一緒に行きましょう」
「それじゃあね」
「僕はお家に帰るね」
 オジョはこう言うのでした。
「それでゆっくり休むよ」
「貴方はそうするのね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「皆が都でも盆踊りを楽しむお話を聞かせてもらうよ」
「そうするのね」
「うん、そうさせてもらうよ」
「わかったわ、それじゃあね」
「またね」
「ええ、また一緒に遊びましょう」
 笑顔でお話してでした、そのうえで。
 ドロシーは皆と一緒に盆踊りに入りました、浴衣姿で踊ったドロシ―達は本当に可愛かったです。


オズのトト   完


                2017・7・11



色んな出店が出ていたな。
美姫 「美味しそうだったわね」
だよな。皆で食べて踊って。
美姫 「お祭りを楽しんでいたわね」
本当に楽しそうだったな。
美姫 「今回の冒険もこれで終わりね」
今回も楽しく読ませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ありがとうございました。



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