『オズのジュリア=ジャム』
第十幕 人魚の国
一行は海につながっている河のところまで来ました、するとその中にです。
大きなお魚みたいな生きものが見えました、神宝はそのお魚を見てすぐに言いました。
「カワイルカだよ」
「ああ、これがだね」
「ヨウスコウカワイルカなのね」
「そうだよ」
皆に目を輝かせて答えます。
「まさにね」
「まさか本当にいるなんてね」
カルロスもそのイルカを見て言いました。
「ピンク色じゃないからアマゾンカワイルカだってわかるよ」
「そういえば河のイルカって結構多いよね」
ジョージはこのことを指摘しました。
「アマゾンだけでなくガンジス河やアルゼンチンのラプラタ河にもいるし」
「大きな河にいるのよね」
ナターシャもこのことは知っています。
「アザラシも大きな湖にいたりするわよ」
「バイカルアザラシ?」
恵梨香はナターシャに尋ねました。
「確かそのアザラシよね」
「そのアザラシはここにもいるよ」
木樵が五人に言って河の向こう岸の方を指差すとです、実際に褐色の毛並みの丸々とした身体のアザラシ達がそこにいました。
「あそこにね」
「あれがバイカルアザラシだよ」
かかしも言います。
「オズの国にはあのアザラシもいるんだ」
「あのアザラシは外の世界にもいます」
神宝がかかし達にお話しました。
「ロシアのバイカル湖に」
「そしてオズの国にもいるんだね」
ジャックも言いました。
「この国にもね」
「象さん達と一緒ですか」
「そう、外の世界にいる生きものもいるんだ」
オズの国にはとです、ジャックはこう神宝にお話しました。
「オズの国はね」
「つまり色々な生きものがいる国ですね」
「そういうことだよ」
「外の世界にいる生きものがいてもういなくなった生きものもいて」
「オズの国にしかいない生きものもいてね」
「何でもいるってことだね」
「そうだよ」
その通りだというのです。
「オズの国はね」
「成程、そうしたことなんだ」
「不思議の国ならではだね」
あらゆる生きもの達がいることはです。
「僕は外の世界はそんなに知らないけれど」
「そうした世界ということで」
「覚えておいてね」
「うん、わかったよ」
実際にとです、神宝はジャックに答えました。そのうえで河の水面近くを泳いでいるヨウスコウカワイルカからバイカルアザラシを見てです。
傍の海辺を見ました、するとそこには黒と白の羽毛を持っていて二本足で立って歩いているペンギンみたいな鳥がいました。
その鳥を見てです、神宝だけでなく五人全員でその鳥を見て言いました。
「ペンギンだね」
「うん、そうだね」
「オズの国にもいるんだね」
「南極にしかいないんじゃなくて」
「オズの国では暖かい場所にもいるのね」
「あれはペンギンじゃないわよ」
ジュリアが笑顔で、です。五人にここでこう言いました。
「あの鳥はね」
「えっ、違うんですか?」
「ペンギンじゃないんですか?」
「じゃああの鳥何なんですか?」
「ペンギンじゃないとしたら」
「何なんですか?」
「オオウミガラスよ」
五人ににこりと笑ってこの名前を出しました。
「あの鳥はね」
「オオウミガラスっていいますと」
神宝はその鳥の名前を聞いてジュリアに言いました。
「確か欧州の北の方にいて今はもういない」
「そう、あのオオウミガラスよ」
「オズの国にはオオウミガラスもいるんですね」
「ペンギンだけでなくね」
「そうなのよ」
「ドードー鳥やモアやリョコウバトだけじゃなくて」
「あの鳥もいるのよ」
オオウミガラスもというのです。
「そうなのよ」
「そうですか」
「人懐っこい鳥だから」
「近くに寄ってもですか」
「何もないわよ」
「それじゃあ今から」
「どちらにしてもこれから海に入るわよ」
このこともです、ジュリアはお話しました。
「人魚の国に入るから」
「そうでしたね、それじゃあ」
「今からオオウミガラスのところに行きましょう」
「わかりました」
神宝が頷いて他の子達も続いてでした、皆でオオウミガラス達のいる岸辺に行きました。するとジュリアの言った通りにです。
オオウミガラス達が寄ってきました、五人はその彼等を見て思わず笑顔になりました。
「可愛いね」
「そうだよね」
「人懐っこくて愛嬌があって」
「見ていて和むわ」
「落ち着く感じよ」
「そうだよね、こうした人懐っこさもいいんだよね」
モジャボロはオオウミガラス達の頭を撫でつつ五人にお話しました。
「オオウミガラス達はね」
「ですね、ペンギンに似てますけれど」
「歩き方も外見も」
「雰囲気も」
「ですがペンギンとまた違った愛嬌がありますね」
「可愛さも」
「そうだよね、本当にね」
さらに言うモジャボロでした。
「オオウミガラスにはオオウミガラスのよさがあるね」
「そうですね、いい鳥ですね」
「マスコットみたいな感じがするね」
「本当に」
「それとね」
ここでモジャボロは五人にさらに言いました。
「ここにはもう一種類いい生きものがいるよ」
「いい生きもの?」
「といいますと」
「海を見て」
モジャボロはこう言って海の方を指差しました、するとです。
十程ぷかぷかと大きな転覆した船みたいなものが浮かんでいました、五人はその浮かんでいるものを見てまずは首を傾げさせました。
「あれ何かな」
「転覆した大きなボートみたいだね」
「けれど見た目ボートじゃないね」
「じゃあ何かしら」
「出ている部分はお肌みたいだけれど」
「あれはカイギュウでね」
ここでモジャボロは海にいる生きものが何であるかを言いました。
「ステラーカイギュウだよ」
「あれがですか」
「大きなボートが転覆して浮かんでるみたいですけれど」
「あれがステラーカイギュウですか」
「首も何も見えないですが」
「そうなんですね」
「そうだよ」
モジャボロは五人ににこりとしたお話しました。
「あれがね」
「見ておいてね」
ジュリアも五人に言います。
「確かに浮かんでいるけれど」
「これから何かが起こる」
「そうなんですね」
「そうよ」
まさにというのです。
「そうなるからね」
「それじゃあ」
神宝はジュリアの言葉を聞いて彼女に応えました。
「今から何かが起こるんですね」
「絶対にね」
ジュリアが神宝に約束するとです、そこででした。
ステラーカイギュウ達は一匹ずつです、お顔をあげました。するとマナティーやジュゴンのそのお顔がでした。
海面の上に出て来て呼吸をしました、五人はそれを見て目を瞠りました。
「あっ、ジュゴンやマナティーと同じで」
「そうしたお顔だね」
「大きいけれどね」
「ただ浮かんでるだけじゃないのね」
「ああして呼吸もするのね」
「そうよ、ステラーカイギュウはああして海面に身体を少しだけ出して浮かんでいてね」
ジュリアはまた五人にお話しました。
「それで時々ああして呼吸して海に生えている昆布とかを食べているのよ」
「海面の近くで」
「そうして暮らしているの」
「そうなんですか」
「それでお水は河口に言って淡水を飲むの」
そちらのお水をというのです。
「そうして静かに暮らしているの」
「あんなに大きいのね」
「そう、静かにね」
「大人しいんですね」
「凄くね、私達が寄ってね」
「オオウミガラスと一緒で」
オオウミガラスは今も皆の近くにいます、そうしてジャックと一緒に楽しくワルツを踊っています。そのワルツも可愛いです。
「何もしないの」
「そうですか」
「本当に凄く大人しくてしかもね」
それでというのです。
「仲間が困っていたらね」
「その時はですか」
「助けようと集まるの」
「仲間思いでもあるんですね」
「心優しいのよ」
そうした生きものだというのです。
「凄くね」
「そうなんですか」
「だからね」
さらにお話したジュリアでした。
「この生きものもこうしてオズの海に来れば見られるから」
「また海に来たら」
「見て楽しんでね」
「わかりました」
神宝はジュリアのその言葉に頷きました、そしてです。
ジュリアは皆にあるものを差し出しました、それは何かといいますと。
「水着ですね」
「それに着替えてですか」
「今から海に入るんですか」
「そうしましょう」
こう五人に言ってです、ジュリアはモジャボロにも言いました。
「モジャボロさんもね」
「水着に着替えてだね」
「一緒に行きましょう」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「お水の中に行くから」
つまり海の中にです、モジャボロはジュリアにお話しました。
「そのことはどうしようか」
「それが問題ね」
「けれどその問題も解決出来ているね」
「お口の中で舐めているとお水の中でも呼吸出来るキャンデーがあるわ」
「それを持ってきたんだね」
「これを舐めていればね」
そうすればというのです。
「普通にね」
「海の中でもだね」
「呼吸が出来るわ」
そうだというのです。
「だから安心して」
「それじゃあね」
「ええ、皆それぞれの場所で水着に着替えて」
「僕とジャックはどうすればいいのかな」
かかしは明るくです、ここでジュリアに尋ねました。
「それで」
「ええ、かかしさんとジャックはね」
ジュリアはそのかかしにも答えました。
「あらゆる水気を弾く防水スプレーでね」
「服を濡れないようにしてだね」
「そうして入ればね」
「大丈夫だね」
「そうよ」
「僕達はお水でも大丈夫だけれど」
それでもとです、かかしはこう言うのでした。
「服がお水を吸ってね」
「重くなるからよね」
「それが問題なんだ」
それでジュリアにも言ったのです。
「だからジュリアに聞いたけれど」
「そうよね」
「けれどそれで大丈夫だね」
「そうよ、お水を吸わないでそれで楽に動けるからね」
お水を吸うとどうしても動きが重くなるのです、かかしは特に服だけでなくその中にある藁までお水を吸って余計にです。
「だからね」
「それで、よね」
「出来る限りお水を吸わない方がいいからね」
「それじゃあね」
「うん、その防水スプレーを身体にも服にもかけさせてもらうよ」
「僕は服と頭にね」
ジャックも言ってきました。
「身体は木だから大丈夫だからね」
「僕はいらないよ」
木樵はこうジュリアに言いました。
「全身ブリキでしかも錆止めはしてあるから」
「だからよね」
「そう、普通にね」
それこそというのです。
「何もしなくていいよ」
「そうよね」
「だから僕に気遣いは無用だよ」
そうだというのです、見れば神宝達はモジャボロと一緒に着替えに物陰に行っています。ナターシャと恵梨香はジュリアと一緒に着替える為に彼女を待っています。
「そういうことでね」
「わかったわ、じゃあね」
「うん、じゃあジュリアもね」
「水着に着替えて来るわ」
「服はどうするのかな」
「念じれば幾らでも小さくな鞄に入れるわ」
そうした魔法の道具も持っているというのです。
「そこには幾らでもものが入るから」
「その鞄も持って来たからだね」
「ここで使うわ」
「とはいってもその鞄は」
「ええ、私が最初から持っている鞄よ」
まさにその鞄だというのです、今ジュリアが実際に持っている。
「これに入れるわ」
「わかったよ、それじゃあね」
「今からね」
こう言ってでした、そのうえで。
ジュリアはナターシャと恵梨香を連れて水着に着替えに行きました、ナターシャは黒の、恵梨香とジュリアはピンクの競泳水着でした。ナターシャはその二人を見て言ったのでした。
「二人共ピンクなのね」
「私ピンクが好きだから」
「私もよ」
「恵梨香だけでなくジュリアさんも」
ジュリアを見ての言葉です。
「そうなんですね」
「ええ、王宮のプールでもそうだったでしょ」
「その水着着ておられましたね」
「それでここにも持って来たの」
「そうだったんですね」
「じゃあ今からね」
ジュリアは皆に声をかけました。
「海に入るわよ」
「そうしようね」
男用の水着に着替えているモジャボロが応えました、この人は緑、神宝は青、ジョージは赤、カルロスは黄色のそれぞれトランクスタイプの水着を着ています。
「今からね、そしてお水の中に入るから」
「準備体操ね」
「それはしておかないとね」
「ええ、あとキャンデーを渡すわ」
お水の中で舐めると呼吸が出来るそれもというのです。
「皆にね」
「それじゃあね」
「準備体操の後でね」
「海に入りましょう」
人魚の国があるそこにというのです。
「それからね」
「じゃあね」
こうお話してでした、皆で準備体操をしてです。海に入りました。勿論キャンデーも忘れません。
キャンデーを舐めつつ海の中に潜りますと。
「あっ、何ともないや」
「普通に海の中でも息が出来るね」
「それに海の中なのに普通にものが見えるし」
「音も聞こえるわ」
「泳ぐのも楽ね」
「このキャンデーは魔法使いさんが作った魔法のキャンデーなの」
ジュリアが驚く五人にお話します。
「それで舐めると海の中でも普通に動けたりする様になるの」
「見えて聞こえて」
「それで動くことも出来るんですね」
「普通のお水の中にいる時と違って」
「楽に動けるんですね」
「陸地にいるみたいに」
「そうよ、凄いキャンデーでしょ」
五人ににこりとしてお話します。
「このキャンデーは」
「はい、本当に」
驚きを隠せないお顔で、です。神宝が答えました。
「素晴らしい魔法ですね」
「このキャンデーもね」
「本当にそう思います」
「そしてこのキャンデーを舐めながらね」
「人魚の国に行くんですね」
「そうよ」
そうするというのです。
「これからね」
「わかりました、それじゃあ」
「案内するわね」
「海の中でもですね」
「そうよ、行きましょう」
「それじゃあ」
「うわ、珊瑚がとても奇麗だよ」
ジョージは海の中に見える赤い珊瑚達を見て目を輝かせました。
「海の宝石だね」
「それに海面からカイギュウさん達が前足を振って行ってらっしゃいってしてくれているよ」
カルロスは自分達が入った方にまだいるステラーカイギュウ達を見ています。
「オオウミガラス達もね」
「お魚も沢山いるし」
ナターシャは海の中にいる沢山の彼等を見ています、本当に色々な種類のお魚がいて楽しく泳いでいます。
「賑やかな海ね」
「ええ、海の底には蛸やイソギンチャクもいて」
恵梨香はそちらを見ています。
「賑やかよね」
「これがオズの海なんだ」
モジャボロが海の中を見回してはしゃいでいる五人に言ってきました。
「奇麗で賑やかだね」
「はい、本当に」
「素晴らしい海ですね」
「自然が豊かで色々な生きものや種族がいて」
それでというのです。
「賑やかな海なんだ」
「人魚もいるしね」
かかしは今から行く国の人達のことをお話しました。
「それに魚人の人達もいるんだよ」
「あれっ、人魚じゃなくてですか」
「魚人って人達もいるんですか」
「そうなんですね」
「そうだよ、人魚は身体の下がお魚だけれどね」
それがというのです。
「魚人は頭がお魚で身体中に鱗が生えているんだ」
「ええと、それじゃあ半魚人ですか?」
「そんな感じですか?」
「半魚人みたいな人達ですか」
「そうなんですか?」
「魚人の人達は」
「ううん、まあそんなところかな」
かかしも五人にこう答えました、かかしにしてもジャックや木樵達も皆と一緒に快適に海の中を進んでいます。
「彼等はね」
「人魚の人達と仲がいいんだ」
木樵は魚人達に対してこう五人にお話しました。
「いつも一緒にいて楽しくやってるよ」
「へえ、そうなんですね」
「同じ海の種族同士で、ですか」
「仲良くしているんですか」
「そうだよ、とてもね」
実際にというのです。
「他の海の種族とも仲がいいけれど彼等は特にだよ」
「同じお魚だからですか?」
「お魚と人が合わさった姿だから」
「だからですか」
「そうだよ、海の種族も多いけれどね」
オズの国にはです。
「彼等は特に仲がいいね」
「オズの国は海も平和で仲がいいけれど」
ジャックも五人にお話してきます。
「あの人達は本当にいつもだよ」
「仲がいい」
「そうなのね」
「そうだよ、今も一緒かな」
これから人魚の国に行きますがそこでもというのです。
「あの人達は」
「そうかも知れないわね」
ジュリアはジャックの言葉を聞いてこう返しました。
「本当に仲がいい人達だから」
「そうだよね」
「ええ、若し一緒だったら」
「その時は魚人の人達ともだね」
「仲良く遊びましょう」
「そうしようね」
「ただ、いつもはドロシー王女達がいってるから」
ここでくすりと笑って言うジュリアでした。
「私がお邪魔したらね」
「驚くかな、皆」
「誰?とか言われるかしら」
「あっ、それはないよ」
ジュリアのlくすりとした言葉にです、ジャックは笑って返しました。
「ジュリアも有名人だから」
「オズの国で」
「うん、エメラルドの都の侍女さんとしてね」
「有名なのね、私も」
「だからね」
人魚の国に行ってもです。
「皆ジュリアを知ってるよ」
「だといいけれど」
「僕達はもう何度も行ってるし」
ジャック達はそうだというのです。
「お互いに顔見知りだしね」
「大丈夫ね」
「うん、よく考えたらジュリアも人魚の国に行ったことがあるから」
「あちらも私の顔も知ってるわね」
「そうだよ、安心していいよ」
「そのことについては」
「充分にね、それじゃあね」
ジャックはジュリアの横に泳いで来て言ってきました。
「人魚の国に行こうね」
「そうしましょう」
にこりと笑ってです、ジュリアは皆を人魚の国に案内しました。それはもうそこに行ったことがある人の動きでした。
そして人魚の国に着くとです、海の底に珊瑚や海草に囲まれて海の底の岩を細工して造られて貝殻や珊瑚、真珠で飾られたお家が並んでいる国がありました。
その国の珊瑚で奇麗に造られた正門のところに来てです、ジュリアは五人にお話しました。
「ここが人魚の国よ」
「そうなんですね」
「この国が人魚の国なんですね」
「遂に来たんですね」
「そうよ、じゃあ今からお邪魔しましょう」
にこりと笑ってです、ジュリアは五人にこうも言いました。
「そうしましょう」
「わかりました」
「じゃあ今からですね」
「お邪魔して」
「そうして」
「ええ、真珠を見せてもらいましょう」
五人にお話してからです、ジュリアは門を護っている三又の鉾を持っている男の人魚の人達に声をかけました。頭には見事な兜があって逞しい上半身と青い魚の下半身を持っています。
その人達にです、ジュリアは声をかけたのです。
「あの、お邪魔していいかしら」
「あっ、ジュリアさんじゃないか」
「かかしさん達もいるね」
その人魚の男の人達、門番の人達はジュリアにすぐに応えました。
「暫く振りだね」
「元気そうだね」
「ええ、この通りね。それでね」
ジュリアは人魚の門番の人達にさらにお話しました。
「実は今日は女王さんにお願いしたくて来たの」
「我が女王様に」
「そうなんだね」
「そう、この子達にもね」
神宝達を指し示してさらにお話しました。
「あの真珠を見せてあげたくて」
「女王様がお持ちの真珠を」
「あの特別に奇麗な真珠をだね」
「そう、それでお邪魔したいけれど」
「その子達はオズの名誉市民の子達かな」
「最近噂になっている」
門番の人達は五人も見て言いました。
「外の世界から来たという」
「その子達だね」
「オズマ暇ともドロシーともお友達っていう」
「その五人の子達だね」
「そうよ、この子達がね」
まさにというのです。
「オズの国の名誉市民の子達を」
「おお、何時か来てくれるかなって思ってたけれど」
「遂に我が国にも来てくれたか」
「オズの国のあちこちを冒険しているっていうけれど」
「来てくれたんだね」
「そうよ、来てくれたのよ」
まさにというのです。
「それでね」
「今からだね」
「この国にお邪魔したいんだね」
「そして女王様にお会いして」
「それでこの子達にあの真珠を見せてあげたいんだね」
「そうなの、じゃあね」
今からというのです。
「お国に入れてあげるかしら」
「勿論、ジュリアさん達ならフリーパスだけれど」
「その子達もそうだよ」
「最近話題のオズの国の名誉市民だからね」
「是非ね」
入って欲しいというのです、そしてです。
門番の人達は五人を含めた皆を笑顔で人魚の国に入れてくれました、人魚の国の中では老若男女の人魚の人達がです。
泳いで国の中を行き来していて真珠や珊瑚を細工したものや海草にお魚、そして貝類や蛸や烏賊を売っています。海のイルカに乗って移動している人達もいます。
その人達を見てです、神宝は言いました。
「何か人魚の国って」
「不思議かしら」
「はい、何か陸地の生活とです」
「大きな違いはないでしょ」
「ですから」
それでとです、皆と一緒に人魚の国の大通りを泳いで進みながらジュリアに答えるのでした。
「不思議です」
「人魚も国があってね」
「こうしてですね」
「生活してるのよ、お魚や海草の養殖もしてね」
「食べてるんですね」
「そうもしてるのよ、あと海の中だけれどね」
それでもというのです。
「火も使えるのよ」
「魔法で出した火ですか?」
ジョージはすぐにその火が何かを言いました。
「それですか?」
「そうよ、魔法で出した魔法の火を使ってね」
ジュリアも実際にそうだとお話しました。
「お料理をしたりしているのよ」
「だからフライや天麩羅もですね」
カルロスはそうしたお料理のことも言いました。
「食べられるんですね」
「衣もオズの国特製の海水にはふやけない小麦粉や油を使っているから」
それでというのです。
「ふやけないで食べられるのよ」
「だから今回の旅では海の幸は控えていこうとですね」
ナターシャはジュリアに言われたことを思い出していました。
「お話して実際にそうしていたんですね」
「そうよ、ここで一杯色々なものを食べられるからね」
まさにそれ故にというのです。
「あえて出さなかったの」
「そして今からですね」
恵梨香はお店で売られている活きのいい蛸を見ています。
「その海の幸達もですね」
「食べられるわよ」
「勿論たこ焼きもあるからね」
モジャボロも蛸を見て言います。
「楽しみにしていてね」
「はい、たこ焼き美味しいですよね」
「日本に来てから食べましたけれど」
「あんな食べ方もあるんですね」
「オズの国にもたこ焼きはあってね」
そしてというのです。
「この国でも食べられるんだ」
「あれも美味しいのよね」
「そうだよね」
モジャボロはジュリアともお話をしました。
「シンプルだけれどね」
「それだけに味わい深いのよ」
「味が深いっていうか」
ここでモジャボロが言ったことはといいますと。
「独特なね」
「面白い味よね」
「本当にね」
「癖になる味よね」
「蛸はずっとね」
それこそとです、モジャボロが言ったことはといいますと。
「食べられるなんて思っていなかったよ」
「そうよね」
「アメリカじゃ食べなかったからね」
「ずっとね」
それこそというのです。
「お肉は食べてもね」
「海の幸も食べても」
「蛸まではね」
「そうそう、日系人の人が来るまではね」
アメリカにです。
「蛸を食べることもね」
「なかったから」
「とてもだったよ」
「烏賊にしても食べるなんて想像さえしていなかったわ」
「全く以てね」
「けれど食べてみたら美味しくて」
そして、です。
「特にたこ焼きはね」
「面白くて独特の味で」
「幾らでも食べられて」
「癖になるね」
「本当にね」
実際にというのです、そしてです。
ジュリアはにこにことしてそうしてこう言ったのでした。
「まずは女王さんにお会いして」
「そしてですね」
「そうよ、もうお昼だから」
それだからというのです。
「皆で食べましょう」
「はい、それじゃあ」
「まずは王宮にね」
大路を進んでいくとです、その先に一際大きな建物がありました。白い岩で造られていてでした。そのうえで。
珊瑚や海の様々な宝石に真珠、奇麗な貝殻達でみらびやかに飾られた宮殿が見えてきました。左右対称の形でベルサイユ宮殿みたいな宮殿ですが。
五人はその宮殿を観てです、思わず目を瞠りました。
「凄いね」
「うん、とんでもなく奇麗だよ」
「海にこんな奇麗な宮殿があるなんて」
「やっぱりオズの国は違うわ」
「海にまでこんな宮殿があるのね」
「そうよ、それがオズの国なのよ」
ジュリアも五人にお話します。
「海もこうしてね」
「不思議なものがあるんですね」
「そして奇麗なものが」
「それがあるんですね」
「そうなの、そしてあの宮殿にね」
その見事な宮殿にというのです。
「人魚の女王さんがいるのよ」
「じゃあ今からですね」
「あの宮殿に行って」
「そうしてですね」
「そう、お会いしましょう」
こうお話してでした、そのうえで。
皆で宮殿に入りました、宮殿の中も珊瑚や貝殻、真珠で飾られていてとてもみらびやかです。そしてです。
その宮殿の中に入るとです、若くて奇麗なプラチナブロンドの長い髪の毛を持っている人魚の人が来てジュリア達に声をかけてきました。
「ようこそ、海の女王の宮殿に」
「ええ、お話は聞いているかしら」
「はい、門番の人達から」
人魚の美人さんはジュリアに笑顔で答えました。
「既に」
「そう、それじゃあ」
「今から女王陛下のところに案内します」
「宜しくね」
「ではどうぞ」
こう言ってくれてでした、そのうえで。
美人さんはその内装もみらびやかな宮殿の中を進んでいきます。宮殿の中の珊瑚や貝殻もとても奇麗なものばかりで。
五人共観ながらうっとりとしていました、そして。
女王の間に案内してもらいました、すると虹色に輝く大きな貝殻の上にです。エメラルドグリーンの豊かな髪と海の色の瞳を持った艶やかなまでに奇麗なお顔の人魚の人がいました。その左右には見事な男女の人達が並んでいます。
そしてその奇麗な人がです、こう言ってきました。
「既に来られたことのある方もはじめての方もようこそ」
「お久し振りです」
ジュリアはその人に恭しく一礼をして他の皆も続きました。
「この度はお邪魔した」
「堅苦しい挨拶は抜きで」
その人はジュリア達に優しい笑顔で言ってきました。
「そうしたことはせずにすぐに仲良くが人魚ですから」
「だから」
「砕けていきましょう」
「それでは」
「普段の口調でお願いします」
こうジュリアに言ってです、貝殻の上に座っている人魚の人はあらためて名乗りました。
「私がこの国の女王です」
「貴女がですね」
「人魚の国の女王様ですね」
「はい」
女王は五人ににこりと笑って答えました。
「そうです、そして貴方達がですね」
「はい、外の世界からお邪魔してです」
「よく冒険をさせてもらっています」
「オズの国の皆さんに案内してもらって」
「そうしています」
「そうですね、ではですね」
女王は五人にあらためて言ってきました。
「この国に来てくれたのは」
「実はです」
神宝が五人を代表して女王に言いました。
「この国にだけあるとても奇麗な真珠を見せて頂きたくて」
「だからですか」
「ここまで来ました」
「エメラルドの都からですね」
「そうです」
神宝は出発してきた場所についても答えました。
「歩いて泳いできました」
「よく遠い場所から来られました、それではです」
「それでは?」
「後でお見せしますが」
それでもというのです。
「まずはお昼ですから」
「そうです、お昼ですから」
ジュリアも言ってきました。
「実はお話しようと思っていました」
「お食事にしようとですね」
「そう思っていましたけれど」
「はい、いいお考えです」
女王はジュリアにもにこりと笑って応えました。
「それではです」
「これからですね」
「お食事にしましょう」
「それじゃあ」
「夫にも来てもらいます」
女王は優雅な笑顔でこうも言いました。
「そして皆で食べましょう」
「お昼をですね」
「実は夫は今はお客人とお話をしています」
「お客人とですか」
「はい、人魚の王として魚人の王とです」
「あっ、そういえば」
ここで神宝は先程かかし達から聞いたお話を思い出しました。
「人魚の人達は魚人の人達とですね」
「そうです、同じ海の種族の中でもです」
「特に仲がいいんですよね」
「親密に交流をしています」
そうだというのです。
「そして今もです」
「いや、いいですね」
「若しかして魚人の人達にもお会い出来るかって思ってましたけれど」
「お会い出来るんですね」
「あの人達とも」
ジョージとカルロス、ナターシャと恵梨香もそのお話に上機嫌になります。
「じゃあ今からですね」
「人魚の王様や魚人の人達ともですね」
「一緒にお昼を食べるんですね」
「そうするんですね」
「そうです、では食事の間へどうぞ」
王宮のそこにというのです。
「そこで食べましょう」
「わかりました」
「それじゃあ今から宜しくお願いします」
「人魚の国のお食事頂きます」
五人も他の皆も宮殿の食事の間に案内されました、そしてです。そこで若々しくて精悍な顔立ちの青い髪と緑の目の人魚の人とです、赤く輝く鱗と鯛の頭を持つ人の身体の立派な服を着た人が一行の前に並んで出て来ました、その若い人魚の人のところに寄り添ってです。女王は五人ににこりと笑って言ってきました。
「夫でこの国の王です」
「そう、私がね」
その人自身も五人にお話しました。
「この国の王だよ」
「そうなんですね」
「貴方がこの国の王様ですか」
「人魚の国の」
「そうだよ、そして妻がね」
王様は女王を抱き寄せてさらにお話しました、女王は少し気恥かしそうに王様に身体をそっと寄せて笑顔になりました。
「この国の女王になったんだ」
「そうだったんですね」
「女王様は王様に嫁がれてですか」
「女王様になられたんですか」
「親戚同士だったんだ」
最初はそうだったというのです。
「僕は前の王様の息子で妻は公爵家の長女だったんだけれど」
「その公爵家がですか」
「人魚の王家のご親戚だったんですか」
「そうだよ、僕から数えて三代前の王様の末っ子さんのお家でね」
「それで、ですか」
「ご親戚同士だったんですか」
「あまりにも奇麗だったんでね」
王様は女王様を抱き締めたままにこにことしてお話していきます。
「それで僕から是非にって言ってね」
「奥さんになってもらってですか」
「女王様になってもらったんですね」
「そうだよ、本当によかったよ」
「王様はとても積極的で」
女王様は王様に抱き締められてご自身の身体を寄り添わせながら気恥かしそうにです、五人にお話します。
「私もそれならとなりまして」
「プロポーズを受けてですか」
「嫁がれたんですか」
「そうなんです、もう本当に積極的で」
何かおのろけになっていますがさらに言うのでした。
「私も本当に」
「いいねえ、こういうのってね」
魚人の王様がここで言いました。
「私も妻とは恋愛結婚でね」
「魚人の王様もですか」
「そうなんですね」
「そうだよ、幸い子宝にも恵まれてね」
こう五人にお話するのでした。
「二十人いるんだ」
「うわ、それは多いですね」
「五十人ですか」
「それだけおられるんですか」
「うん、ちなみに私達魚人や人魚は卵を産まないよ」
魚人の王様は皆にこのこともお話しました。
「君達と同じで赤ちゃんを産むんだよ」
「あれっ、お魚でもですか」
「卵を産まないんですか」
「赤ちゃんを産むんですか」
「そうだよ、卵胎生といってね」
そうした体質だというのです。
「それでね」
「卵じゃなくてですか」
「赤ちゃんをそのまま産むんですか」
「身体の中で卵を産むけれど」
それでもというのです。
「身体の中で孵化するんだ」
「それでその赤ちゃんを産むんですね」
「身体の中で孵化させて」
「そうしてですか」
「そうだよ、海では鮫とかがそうだね」
このとても怖いお魚もというのです。
「あのお魚はいつも泳いでいないといけないけれどね」
「そうして赤ちゃんを産んで、ですか」
「泳ぎながら」
「そうするからですか」
「そうだよ、そして僕達もなんだ」
魚人も人魚もというのです。
「そうした身体の仕組みなんだ」
「卵胎生ですか」
「そのまま赤ちゃんを産むんですね」
「そうした体質ですね」
「私達は人間と魚の二つの特性を持っていってね」
そのこともあってというのです。
「こうしたことも出来るんだ」
「そうですか、わかりました」
「そうして赤ちゃんを産むことも」
「よくわかりました」
五人は魚人の王様の言葉に頷きました、そのうえで今度は人魚の人達もご馳走を食べるのでした。この時も皆で。
ようやく人魚の国に到着。
美姫 「海の中へと入るのも問題なくできたしね」
便利なキャンディがあるんだな。
美姫 「本当よね」
ともあれ、女王にも会えたし。
美姫 「後は真珠ね」
それは次回だな。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。