『オズのジュリア=ジャム』




                 第九幕  海が見えてきて

 ジャックはお空を見上げてです、その高くて青いお空を見上げ言いました。
「何か飛んで来そうだね」
「ロック鳥かな」
「それともポリクロームかな」 
 かかしと木樵がそのジャックに尋ねました。
「お空から飛んで来るとなると」
「お空にいる誰かかな」
「ううん、鳥さんかも知れないけれど」
 こうも言ったジャックでした。
「他の誰かかもね」
「オズの国のお空は色々なものが飛んでるから」
 ジュリアも言ってきました。
「鳥さんだけでなくお魚さんもね」
「そうなんだよね、オズの国のお空は」
「そう、不思議の国のお空だからね」
「色々なものが飛んでるよね」
「いつもね」
「島もあるしね」 
 空に浮かぶ島です。
「そこにお城があったり精霊さん達のお屋敷があったり」
「色々と賑やかなのよね」
「そのお空からね」
「何か飛んできそうなの」
「そうも思ったよ」
「じゃあ何が飛んで来るのかしら」
 飛んで来るとしたらです。
「一体」
「ううん、何だろうね」
「お魚さんの可能性もあるわね」
「そうだよね」
「とにかく何でもありそうね」
「オズの国だからね」
 こんなお話をしていました、するとです。
 神宝はそのお空を見てです、こう言いました。
「あれっ、ドラゴンかな」
「えっ、ドラゴンいるの?」
「何処に?」
「見えないわよ」
「別にね」
 他の四人はこう言いました、まずは。
 ですがお空をじっくりと見るとです。確かにです。
 西洋のドラゴンが一匹お空を飛んでいます、ですがどうしてよく見えないかといいますと。
「ブルードラゴンだね」
「青いドラゴンだね」
「だからよく見えなかったのね」
「青いドラゴンが青いお空に飛んでるから」
「僕も最初気付かなかったよ」 
 最初に見付けた神宝にしてもというのです。
「何かいるって思ってね」
「ブルードラゴンや青龍は確かに見付けにくいね」
 モジャボロもこう言います。
「お空を飛んでいたら」
「そうですよね」
「うん、身体が青いからね」
「青いお空にいますと」
「どうしてもね」
「そうなのよね、私も今わかったわ」
 ジュリアもそのブルードラゴンを見て言います。
「ドラゴンが飛んでいるわね」
「オズの国はドラゴンもいますからね」
「ええ、色々なドラゴンがね」
「そうですよね」
「ブルードラゴン以外にもクォックスがいてね」
 緑の大きなドラゴンです。
「機械のドラゴンや背中が座席になっているドラゴンに」
「青龍もですね」
「そう、東洋の龍もいるわよ」
 オズの国にはというのです。
「青龍以外にもね」
「今のオズの国はそうですよね」
「そうよ、あとドラゴンを色で言うと」
 この場合はどうなるかといいますと。
「ブルー以外にはレッド、グリーン、ブラック、ホワイト、イエロー、パープル、グレー、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、カッパー、ブラスといるのよ」
「多いですね」
「首が幾つもあるドラゴンもいるし」
 オズの国にはこうしたドラゴンもいるというのです。
「ヒドラとかね」
「あっ、ヒドラも」
「いるわよ、あとドラゴンは色で吐く息が違うのよ」
 この違いもあるというのです。
「レッドは炎でグリーンは塩素ガスでね。住んでいる地域も違うのよ」
「色々違うんですね」
「ドラゴンって一口に言ってもね」
 そうだというのです。
「また違うのよ」
「ドラゴンといっても多いんですね」
「種類はね」
「種類はですか」
「でも個体数は少ないの」
 ドラゴンのそれはというのです。
「それ自体はね」
「そういえば見ることが少ないですね」
 神宝もこのことに気付きました。
「オズの国でもドラゴンは」
「そうでしょ」
「数自体は少ないんですね」
「そうなの、私も久し振りに見たわ」
 そのドラゴンをというのです。
「運がいいかも知れないわね」
「数の少ないドラゴンを見られたから」
「だからよ」
「ドラゴンはオズの国でも少ないんですね」
 ジョージはこのことについて言いました。
「そうなんですね」
「まあドラゴンってそうだよね」 
 カルロスはドラゴンの数が少ないことに納得していました。
「産む卵も少ないみたいだし」
「それに住んでいる地域も限られてるみたいだし」 
 ナターシャはジュリアが言ったこのことから言いました。
「地下とかね」
「あっ、地下にいることが多いわね」
 恵梨香は自分達の冒険ではなくドロシー達の冒険のことからお話しました。
「そういえば」
「そうした場所にいて個体数も少ないからよ」
 ジュリアは四人にもお話しました。
「ドラゴンにはあまり会えないの」
「だから会ったり見られたらね」
 モジャボロが言うことはといいますと。
「運がいいと言えるよ」
「見られただけで、ですか」
「運がいいんですね」
「そうした生きものなんですね」
「オズの国でもドラゴンは少ないから」
「だからですか」
「そうだよ、いや本当にね」
 実際にとです、モジャボロが五人にお話しました。
「これは幸先いいかもね」
「そうよね、無事に人魚の国に着けるかしら」
 笑顔で、です。ジュリアはモジャボロに応えました。
「これは」
「そうだね、そうなればね」
「嬉しいわね」
「もうかなり進んでるけれどね」
「まだ何があるかわからないから」
 何時何があるかわからないのも冒険です、特にオズの国は何時何が起こるのか全くわからないのです。
 だからです、ジュリアもこう言ったのです。
「このまま行くことが出来ればね」
「いいよね」
「そうよね」
 こうしたお話をしつつ先に先に進んでいきます、そして。
 ふとです、ここでなのでした。
 煉瓦の道の左手の森の方にでした、かかしはある生きものを見て微笑みました。
「あっ、いい生きものがいたよ」
「あれっ、シマウマ?」
「シマウマじゃない?」
「一見するとシマウマに見えたけれど」
「違う?」
「前はシマウマだけれど」
 見れば後ろは茶色いです、そんな不思議なシマウマです。
 そのシマウマに見える不思議な生きものを見てです、五人共首を傾げさせました。
「あの生きものは」
「一体何?」
「シマウマに見えるけれど違うよね」
「オズの国の生きもの?」
「ひょっとして」
「あれはクァッガだよ」
 かかしは五人にこのことをお話しました。
「もう外の世界にはいないそうだよ」
「僕達の世界にはですか」
「もういないんですか」
「それでオズの国にいるんですか」
「そうした生きものですか」
「あの生きものは」
「そうだよ、オズの国にはああした生きものもいるんだ」
 実際にというのです。
「他にもそうした生きものが一杯いるんだ」
「リョコウバトもそうだね」
 木樵は五人がかつてオズの国のお空で見たこの鳥のことをお話に出しました。
「あの鳥も外の世界にはもういないね」
「はい、もう」
「あの鳥もいないですね」
「かつては凄くいたそうですか」
「今はいないです」
「私達もお話に聞くだけです」
「けれどオズの国にはいるんだ」
 木樵は優しい顔で五人にお話しました。
「そうした外の世界にはもういない生きもの達がね」
「あの森は確かそうした生きものが特に多いのよ」 
 ジュリアは五人にこのことをお話しました。
「マンチキンの国でもね」
「中に入ってみるかい?」
 モジャボロは五人に笑顔で誘いをかけました。
「そうする?」
「クァッガを見るんですね」
「今からそうするんですね」
「これから」
「そして他の生きもの達もですか」
「今から」
「そうしないかい?」
 こう誘いをかけます、そしてです。
 五人はモジャボロのお誘いから五人でお話しました。
「行く?」
「うん、そうする?」
「外の世界ではもう見られない生きものばかりだし」
「あのクァッガももっと見たいし」
「だったらね」
 それならとです、五人でお話してでした。五人で是非にと答えました。
「宜しくお願いします」
「うん、じゃあ行こうね」
「皆びっくりするわよ」
 ジュリアは五人ににこりと笑ってお話しました。
「見たことのない生きものばかりだからね」
「じゃあ是非」
「今からあの森に入って」
「そうして」
「見ましょう」 
 笑顔で応えてでした、そのうえで。
 五人は皆と一緒に森に入りました、するとそのクァッガもいてリョコウバトもいてでした。その他にもでした。
 地面をよちよちと歩く太った曲がった嘴の鳥もいました、神宝はその鳥を見てそのうえでこう言ったのでした。
「これはドードー鳥かな」
「うん、そうだよ」
 ジャックが答えました。
「僕も知ってるよ」
「この鳥もね」
「もう外の世界にはだね」
「いないんだ」
 そうなってしまったとです、神宝はジャックにお話しました。
「残念だけれど」
「そうなんだね」
「けれどこの目で見られるなんて」
 生きているドードー鳥をです。
「不思議な気分だよ」
「嬉しいんじゃなくて?」
「そんな気持ちだよ」
 実にというのです。
「本当にね」
「そうなんだね」
「あのライオンは」
 ジョージは身体の前の部分のかなりが鬣に覆われているライオンを見ました、このライオンも五人共見たことがありません。
「何かな」
「バーバリーライオンだよ」
 かかしがジョージに答えました。
「外の世界じゃアフリカの北の方にいたらしいね」
「アフリカのですか」
「うん、そうらしいよ」
「あの青い鹿は」
 カルロスはすらりとした身体の青い毛の鹿を見ました。
「あれは」
「ブルーバックスだよ」
 カルロスに答えたのは木樵でした。
「外の世界じゃアフリカにいたそうだね」
「あの生きものもアフリカにいたんですか」
「そう聞いてるよ」
「あれっ、あれは牛かしら」
 ナターシャは牛によく似た大きな角を持つ生きものを見付けました。
「似てるわね」
「オーロックスだね」
 ジャックがです、ナターシャにお話しました。
「ムシノスケ教授からあの生きものが牛になったと聞いてるよ」
「だから牛に似てるのね」
「そうみたいだよ」
「あれは確か」
 恵梨香が見付けた生きものは一匹の大きな鳥でした、駝鳥みたいな形をしています。
「モア?」
「そうだよ」
 モジャボロが恵梨香に答えました。
「あれはね」
「そうですよね」
「オズの国では森にもいるんだ」
「何か」
 ここで、です。神宝は森の中にです。
 オオナマケモノやオオアルマジロを見付けました。オオツノシカやマンモス、サーベルタイガーまでいました。
 そうした生きもの達を見てです、神宝もびっくりしました。
「こんなに沢山いるなんて」
「思わなかった?」
「はい」
 実際にとです、神宝はジュリアに答えました。
「凄い森ですね」
「海もそうよ」
「海でもですか」
「外の世界ではいなくなった生きものもね」
「いますか」
「そうよ、人魚の国の近くにね」
「いるんですか」
 神宝は目を輝かせてです、ジュリアに尋ねました。
「海のそうした生きるものが」
「近くの河にもね」
「河にも」
「そうよ」
 まさにというのです。
「オズの国の他の河にもね」
「あの、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「ヨウスコウカワイルカもですか」
 神宝は期待する目でジュリアに尋ねました。
「いるんですか」
「あっ、神宝のお国にいたイルカね」
「はい、あのイルカは」
「ええ、いるわよ」
 ジュリアの返事は一言でした。
「あの国の近くの大きな河にね」
「いるんですか」
「神宝はそのイルカを見たいのね」
「残念ですがもういなくなったんです」
 神宝のお国の中国ではです。
「ですから余計に」
「じゃあその時にね」
「はい、見ていいんですね」
「そうしましょう」 
 笑顔で、でした。ジュリアは神宝に言いました。そしてです。
 五人は森の中でさらにでした、外の世界ではいなくなった生きもの達を見ていました。そうした生きもの達の方でも皆のところに来ます。
 その彼等に囲まれてです、五人は笑顔でお話しました。
「いいよね」
「そうだよね、見たことのない生きもの達に囲まれてね」
「とても幸せな気分だよ」
「こんなことオズの国だけよね」
「外の世界じゃ絶対にないわ」
 五人でお話します、そして。
 ここで、です。ジュリアは五人にこうも言いました。
「これもまたオズの国だから」
「外の世界では有り得ないことが起こる」
「そうした国だから」
 それでというのです。
「こうしたこともあるのよ」
「そうなんですね」
「素敵でしょ」
「はい」
 神宝は目を輝かせてです、ジュリアに答えました。
「本当に」
「そうでしょ、だからね」
「今この時をね」
「楽しめばいいですか」
「そうしてね」
「そうしていいんですね」
「オズの国だから」
 ジュリアはにこりと笑ってです、神宝にお話しました。
「そうしてね」
「わかりました、それじゃあ」
「そうしてね、後ね」
「後?」
「オズの国にしかいない生きものもいるでしょ」
 ジュリアはこうした生きもののお話もするのでした。
「そうでしょ」
「あっ、ドラゴンもロック鳥も」
「言われてみれば」
「ガルーダもそうで」
「カバキリンもよね」
「他にも沢山いるわね」
「そうよ、そうした生きものと出会うこともね」
 そちらもというのです。
「楽しんでね」
「はい、わかりました」
「そうさせてもらいます」
「そちらの生きものと会った時も」
「今みたいに楽しませてもらいます」
「そうさせてもらいます」
「是非ね、オズの国だから」
 またこうしたことを言ったジュリアでした。
「楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
「夢みたいな気分ですから」
「外の世界では絶対に出会えない生きもの達と出会えて」
「それで一緒にいられますから」
「そうさせてもらいます」
 五人も笑顔で答えます、そしてクァッガやドードー鳥達との触れ合いを心から楽しむのでした。その後で、でした。 
 森の中でお食事にするのですがここでモジャボロがジュリアに言いました。
「今日は何を食べるのかな」
「お昼御飯ね」
「うん、何にするのかな」
「そうね、お弁当がいいかしら」
「お弁当なんだ」
「今日はね」
 こうモジャボロに言うのでした。
「森の中で楽しく皆で食べるのなら」
「それならだね」
「これが一番いいと思って」
 お弁当がというのです。
「それぞれね」
「それじゃあ」
「ええ、今からね」
「出すんだね」
「そうするわ」
 こう言ってでした、テーブル掛けからです。
 お弁当を出しました、サンドイッチやコールドチキン、無花果や林檎といったフルーツに果物ジュースのお弁当です。そのお弁当を食べてです。
 そのうえで、です。ジュリアは生きもの達を見て思うのでした。
「こうした生きもの達を観てるとね」
「どうしたのかな」
「ええ、外の世界にはもういないって聞いてね」
 こうかかしにお話するのでした、勿論かかしと木樵、ジャックは食べていません。何しろ食べる必要が全くないからです。
「信じられないわ」
「そうだね、僕もね」
「オズの国にいるとよね」
「信じられないね」
 外の世界にはもういないことがです。
「ドードー鳥もクァッガもね」
「そうよね」
「こうしてこの目で見ているとね」
「本当にね」
「僕やドロシーがオズの国に入った頃はね」
 モジャボロは二重世紀初頭のアメリカ人として言いました。
「もうリョコウバトはいなくなろうとしていたんだ」
「そうだったの」
「それで僕がオズの国に入った頃位にかな」
「リョコウバトはなのね」
「いなくなったみたいだよ」
 大体その頃にというのです。
「もういなくなろうとしていてね」
「いなくなったのね」
「何十億羽もいたのにね」
 それがというのです。
「一羽もいなくなったんだ」
「それは凄いわね」
「何十億羽もいてもね」
「いなくなったりするのね」
「生きものはね」
 そうなってしまうというのです。
「おかしなことをすればね」
「それだけ気をつけないといけないのね」
「外の世界ではね」
「そうなのね」
「そういえばドードー鳥はね」
 木樵はこの丸々として愛嬌のある鳥を見ています。
「飛べないし卵を地上に産んで動きも遅くて」
「すぐに捕まえられるわね」
「そうだね」
 木樵はジュリアにも答えました。
「この鳥はね」
「私達の方に自然に来るし」
「そうだね」
「オズの国のドードー鳥だけかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「この習性と動きじゃね」
「簡単に捕まるね」
「そうよね」
「あとオオツノシカやサーベルタイガーは」
 ジャックはこうした生きもの達を見て思うのでした。
「角や牙がかえって邪魔かな」
「あっ、特にオオツノシカはね」
「狭い森の中だと特にね」
「邪魔かも知れないわね」
「そうだよね」
「そう思うと住む場所も大事なのね」
「外の世界ではね」
 お伽の世界ではないこの国ではです。
「そうみたいだね」
「そのこともあるのね」
「何か色々な理由があるんですね」
 神宝もバーバリーライオンやブルーバックを見ています、外の世界ではいなくなってしまった彼等をです。
「生きものが」
「そうだね、そうしたことに気をつけないと」
 ジョージの口調はしんみりとしたものになっていました。
「他の生きものもいなくなってしまうわね」
「そうしたことを考えてこそかな」
 カルロスも考えるお顔になっています。
「人間の文明かな」
「そうだと思うわ、私も」
 ナターシャはマンモスを見ています、この生きものは外の世界にまだいるという噂がありますが。
「何かを気をつけないとね」
「どんな生きものもすぐにいなくなるわね」
 最後に恵梨香が言いました。
「リョコウバトみたいに」
「お空でリョコウバトを見てびっくりしたよ」
 ジョージは今のアメリカ人として言いました。
「オズの国にはまだいるんだってね」
「それわかるよ」
 カルロスはジョージのその言葉に同意して頷きました。
「オオナマケモノとかオオアルマジロを今見て余計にね」
「この国は本当に凄い国よね」
 クールなナターシャも驚きを隠せないでいます。
「外の世界ではいなくなった生きものまでいるんだから」
「ドラゴンやロック鳥だけでなくね」
 恵梨香はこうした生きものについても思うのでした。
「そうした生きもの達までいるんだから」
「ヨウスコウカワイルカまでいるみたいだし」
 神宝は自分のお国の生きものもことをここでも思いました。
「本当に凄い国だよね」
「外の世界から見れば。ただね」 
 ジュリアは五人の言葉を聞きつつ言いました。
「五人共お弁当他べていないわよ」
「あっ、すいません」
「ついつい生きもの達を見てて」
 五人はジュリアの指摘を受けてこのことに気付きました。
「それで」
「忘れてました」
「食べることも忘れないでね」
 ジュリアは五人ににこりと笑って言いました。
「いいわね」
「はい、そうします」
「折角のお昼ですしね」
「忘れずちゃんと食べます」
「そうします」
「サンドイッチもコールドチキンも」
「そうしてね。何といってもね」
 それこそというのです。
「お昼だからね」
「食べないと駄目ですよね」
「そこからですよね」
「そうよ、食べてこそね」
 まさにと言うジュリアでした。
「何もかもがはじまるから」
「しかも美味しいしね」
 モジャボロはもう食べています、サンドイッチやコールドチキンを。
「楽しめるよ」
「そうですね、それじゃあ」
 神宝がモジャボロに応えました。
「頂きます」
「是非ね」
「そうさせてもらいます」
「そしてね」
 モジャボロは神宝だけでなく他の子達にも言いました。
「ここの生きものも皆も食べてるしね」
「あっ、そうですね」
「皆そうしていますね」
「草や果物を食べて」
「そうしていますね」
「だから僕達もだよ」
 是非にというのです。
「食べないとね」
「そういうことですね」
「是非共ですね」
「そうだよ、他べてまた冒険を続けようね」
 モジャボロ自ら率先して食べて言うのでした。そして皆でお弁当のサンドイッチを他べてからでした。
 外の世界ではいなくなった生きもの達と別れを告げてそうしてです、森を後にして冒険を再開しました。
 黄色い煉瓦の道に戻ってそこを歩きつつです。かかしはこんなことを言いました。
「この国のよさがまた一つわかったかな」
「うん、そうだね」
 木樵はかかしのその言葉に同意して頷きました。
「外の世界ではいなくなった生きものがいることについてね」
「それがどれだけ素晴らしいことかね」
「わかってはいたけれど」
「再認識したね」
「そういうことだね」
「うん、とてもいいことだね」
「不思議の国ならではだね」
 まさにオズの国がそうした国だからだというのです。
「こうしたこともあってね」
「大切なものが残されているんだね」
「海にもね」
 ジュリアはそちらのお話もしました。
「そうした生きものがいてね」
「うん、河にはヨウスコウカワイルカがいてね」
「海にはステラーカイギュウやオオウミガラスがいるわ」
「そうだよね」 
 モジャボロはジュリアに応えました。
「海にもいるね」
「昔の鯨だったかしら」
「細長い鯨だね」
「あの鯨もいるしね」
「そうだね」
「海もなんですね」 
 神宝はジュリアとモジャボロのやり取りを聞いて二人のお話に入りました。
「そうした生きものがいるんですね」
「そうよ、ちゃんとね」
 海にもとです、ジュリアは神宝に答えました。
「いるのよ」
「ステラーカイギュウっていいますと」
「知ってるかしら」
「確かジュゴンとかマナティーの仲間で」
「そうよ、それでとても大きいの」
「そうした生きものですよね」
「この生きものも外の世界ではもういなくなったと聞いているわ」
 そのステラーカイギュウもというのです。
「そう聞いてるわ、けれどね」
「それでもですね」
「オズの国にはいるのよ」
「この不思議の国には」
「そう、いるのよ」
「そうですか」
「会いたくなったわね」
 ジュリアは神宝の表情が明るくなったのを見てまた聞きました。
「そうね」
「はい、そうした生きものも」
「そうね、それじゃね」
「次はですね」
「河と海よ」
「河口でヨウスコウカワイルカを見て」
「海の中でね」
 そこでもというのです。
「人魚の国に行くし」
「そこで、ですね」
「ステラーカイギュウやオオウミガラスに会いましょう」
「そして昔の鯨にもですね」
「ゼウグロドン、バシロサウルスともいうわ」
 その昔の鯨さんはというのです。
「今の鯨と大きさは同じ位だけれど」
「形が違うんですね」
「細長いの」
 今の鯨と比べてというのです。
「そうした外見なの」
「そうした鯨もいるんですね」
「オズの国は今もね」
「細長い鯨ですか」
「海のイルカよりもね」
「河のイルカはずんぐりしてますからね」
 海のイルカよりもです、神宝はこのことも知っています。
「それで海のイルカはスマートで」
「鰐に近いかしら」
 昔の鯨、ゼウグロドン達の外見はというのです。
「むしろね」
「鰐ですか」
「足が鰭で後ろは今の鯨と同じよ」
「大きな鰭ですね」
「そうなっているの」
「そうした外見ですか」
「そうなの」
 ジュリアは神宝にお話しました。
「ゼウグロドンはね」
「どんな外見か見たくなりました」
「そうね、それじゃあこれからね」
「海にですね」
「行きましょう」
 これまで通りというのです。
「そうしましょう」
「わかりました」
「それと今日もね」
 ジュリアは前を見つつこうも言いました。
「三時になったらね」
「ティータイムですね」
「それは忘れたらいけないわね」
「そうですよね」
「やっぱり三時はね」
 この時間にはというのです。
「お茶を飲まないとね」
「お菓子も食べて」
「そう、ティーセットだからね」 
 お茶と一緒にというのです。
「食べないとね」
「いけないですね」
「おやつでね」
「おやつは忘れたら駄目ですよね」
「忘れたらお腹が空くでしょ」
「はい」
 確かにとです、神宝も答えます。
「ずっと歩いていますと」
「そうよね、だからね」
「三時になったらですね」
「ティータイムよ」
 その時にというのです。
「皆で楽しみましょう」
「今日もですね」
「今日は神宝のお国のティータイムはどうかしら」
「中国の」
「そう、飲茶をね」
「されるんですね」
「中国のお茶を飲んで」
 そしてというのです。
「桃饅頭や杏仁豆腐を食べましょう」
「いいですね」
「マンゴープリンもね」
 このお菓子もというのです。
「食べましょう」
「わかりました」
「三時になったよ」
「その時まで歩いて」
「皆で楽しみましょう」
 中国のティーセット、飲茶をというのです。
「そうしましょう」
「わかりました」
「それとね」
 さらに言うジュリアでした。
「何か私も少しずつね」
「あっ、わかってきた?」
「ええ、海に近付いてきたってね」
 ジュリアは今度はジャックに応えました。
「わかってきたわ」
「そうだよね」
「何か感覚としてね」
「感じるよね」
「少しずつでもね」
「海に近付いてきているよね」
「そうなってきているわね」
 確かにというのです。
「そうなってきているわね」
「そうだよね」
「楽しみだわ」
 実際にです、ジュリアは目をきらきらと輝かせています、海が見られるという期待でそうなっていることは明らかです。
「本当にいよいよね」
「思えばね」
 ここで言ったのはモジャボロでした。
「エメラルドの都にいるとね」
「どうしてもね」
「うん、オズの国の真ん中にあるとね」
 つまり大陸の中央です。
「海とは縁が遠くなるからね」
「私は王宮で働いているから」
「余計にだね」
「海に行く機会がないから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「こうした時はだね」
「楽しみよ」
 実際にというのです。
「本当にね」
「そうだよね」
「だからね」
「今からだね」
「笑顔で行くわ」 
 そうするというのです。
「海が見られることを楽しみにして」
「そして実際に見てだね」
「余計にだね」
「楽しむと思うわ」
 そうなるというのです、流石にスキップまではしていませんがジュリアは本当に楽しそうにしています。
 そしてです、皆に言いました。
「確かもうすぐで海が見られるから」
「だからだね」
「ええ、このまま進みましょう」
「三時までだね」
「そうよ」
 かかしの手を取らんばかりの上機嫌さでの言葉でした。
「歩いてね」
「このまま行けば」
 木樵も言いました。
「三時には海が見られる場所に行けるかな」
「そうであって欲しいわね」
「三時だね」
「そうよ、三時はね」
「海を観ながらだね」
「ティータイムよ」
 飲茶だというのです。
「そうなるわ」
「そうなんだね」
「そう、だからね」
「三時まで歩いて」
「海を観ながらよ」
「ティータイムだね」
「そうしましょう、ただ急ぐ必要はないわ」
 焦らない、ジュリアはこうも言ったのでした。
「別にね」
「あれっ、急がないんだ」
「三時までに海が見られる場所には行かないんだ」
「そう、別にね」
 特にというのです。
「急ぐこともないわ」
「焦らず一歩ずつだね」
「進んでいくんだね」
「そうしましょう」
 かかしと木樵にお話しました。
「だって進んでいけば絶対に海は見られるから」
「そうだね、そこで焦らないことがね」
 ジャックはまた言いました。
「ジュリアだね」
「絶対に焦らない様にしてるの」
「そうだよね」
「だって焦ったらね」 
 それこそというのです。
「かえって失敗するでしょ」
「物事にね」
「だからね」
「ジュリアは焦らないんだね」
「そう気をつけているの」
 普段からというのです。
「いつもね」
「そこがらしいね、けれどね」
「けれど?」
「いつも焦らないで慎重だからだね」
 そうしているからというのです。
「ジュリアはお仕事が出来るんだね」
「そうだっていうのね」
「だって焦ったら周りが見えなくなるよね」
「ええ、そうなるからよ」
 だからこそというのです。
「私も焦らない様にしているの」
「周りが見えないとそこから来るものにどうも出来ないからね」
「だから失敗するでしょ」
「うん、そうだね」
「お父さんとお母さんに言われてきたの」
「失敗するから焦るな」
「ちゃんとしたいならね」
 お仕事を上手にしたいならです。
「もうね」
「最初からだね」
「焦らない様にしなさいって言われてきたの」
「尚且つ慎重にだね」
「そう言われていたから」
 だからだとです、ジュリアはジャックにお話しました。
「今もそうしているの」
「こうした時もだね」
「そうなの」
「いいことだよ」
 モジャボロはジュリアのその心掛けに笑顔で応えました。
「それはね」
「お仕事が上手に出来るから」
「だからね、ジュリアらしいね」
「けれどその割にはね」
「ジュリアさんお仕事早いよね」
「そうよね」
 ですが五人はその焦らないジュリアについてこうお話しました。
「むしろね」
「どうもね」
「お仕事早くて」
「次から次にテキパキって感じで」
「焦らず慎重にっていうけれど」
 本人はそう言っているけれど、というのです。
「早いよね」
「それもかなりで」
「何でもかんでも」
「オズの国で一番のメイドさんって言われてるし」
「焦っていないっていっても」
「それはずっとこのお仕事をしているからよ」 
 ジュリアは五人にこう答えました。
「だからよ」
「お仕事が早いんですか」
「そうなんですか」
「そうよ、お仕事は慣れたらね」
 そうなればというのです。
「自然に早くなるのよ」
「そうなんですか」
「メイドのお仕事もですか」
「そうしたものなんですね」
「魔法使いさんがオズの主だった時に言われたの」
 ドロシーが来る前です、ジュリアはこの時から王宮の侍女として仕えているのです。
「お仕事は身体で覚えるものだってね」
「何度もやってですか」
「そうしてですか」
「そう、慣れるまで何度も同じことをやる」
 それこそというのです。
「そして早く覚えろとか言ったり怒ったりはね」
「魔法使いさんはされなかったんですね」
「あの人はそうだったんですね」
「確かに本当のお姿は出していなかったけれど」
 大きなお顔や天使や火の玉を出したりなったりしてです。
「それでもね」
「急かしたり怒ったりはですか」
「あの人はしなかったんですか」
「そうだったんですね」
「あの人はそうしたところは今と変わっていないわ」
 オズの主だった時はです。
「何とか威厳を保とうとしていたけれど」
「それは違っていてもですね」
「やっぱり人を怒る人じゃなかったんですね」
「急かしたりすることもなかったんですね」
「だから私もね」
 ジュリアにしてもというのです。
「決してね」
「怒られたり急かされたりですね」
「そうしたことがなくて」
「お仕事に慣れるまで待ってもらったんですか」
「そうだったんですか」
「そうよ、あの時もあの人はそうした人でね」
 魔法使いはというのです。
「私も楽しくお仕事が出来てね」
「お仕事を覚えられたんですか」
「そうだったんですか」
「そうよ、よかったわ」
 そうしてお仕事を覚えられてというのです。
「本当に、それでお仕事を覚えたからよ」
「早いんですね」
「お仕事をすることは」
「覚えてさらにしていけばね」
 そのお仕事をいうのです。
「余計にいいのよ」
「そうなんですね」
「お仕事はやればやる程ですか」
「早くなるんですか」
「そのやることが」
「そうよ、だから私は出来るんじゃなくてね」
 お仕事がです。
「数多くやっているだけよ」
「それだけですか」
「そうだったんですか」
「そう、別に凄くはないのよ」
 ジュリアは五人ににこにことしてお話していきます。
「誰でもやっていけば出来る様になるのよ」
「自然にですか」
「ジュリアさんみたいに早く出来る様になる」
「そうなんですね」
「そうよ、誰でもね」
 それこそというのです。
「だから皆もどんなお仕事もよ」
「やっていけばですね」
「何度も何度も」
「そうしていけば」
「何時かは慣れて身体で覚えてね」
 そうなってというのです。
「早く出来る様になるわ」
「最初は中々出来なくてもね」
 モジャボロも笑顔でお話します。
「やっていれば出来る様になるよ」
「最初は駄目でもですか」
「それでもですか」
「そうだよ、誰でも最初は出来ないものだよ」
 それこそというのです。
「けれどね」
「やっていけばですね」
「出来る様になるんですね」
「そうだよ、だから失敗なんて気にしないでね」
 最初のそういったことはです。
「どんどんやっていけばいいんだよ」
「そうすれば出来る様になる」
「お仕事も他のことも」
「何でも」
「そして焦らず慎重にしていけばいいんだ」
 この要素もです、モジャボロは五人にお話しました。
「ジュリアみたいにね」
「そういうことですね」
「慣れればですね」
「経験を積んでいけば」
「そして焦らず慎重にいけば」
「ジュリアさんみたいに出来るんですね」
「君達もね」
 こうジュリアに言うのでした、そしてです。
 五人はそのジュリア達と一緒に海を目指して進んで行きます、すると遂にでした。まだ彼方の方にありますが。
 青い海が見えてきました、ジュリアはその海を見て言いました。
「海よ」
「はい、海ですね」
「オズの国の海ですね」
「あれが」
「そうよ、遂に見えてきたわね」
 ジュリアは五人に満面の笑顔で言いました。
「あそこによ」
「人魚の国があるんですね」
「あの中に」
「そうよ」
 まさにというのです。
「それじゃあいいわね」
「はい、あの海にですね」
「これから行くんですね」
「そうよ、行きましょう」
 ジュリアは一歩前に出ました、そしてです。 
 そのオズの国の海に向かうのでした、ようやく見えてきたその海に。



ようやく海が見えた。
美姫 「焦らずにゆっくりと歩いてね」
それでも、こうして無事に辿り着いたな。
美姫 「そうね」
いよいよ、人魚の国か。
美姫 「どうやって行くのかしら」
海の中だからな。
美姫 「どうするのしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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