『オズのジュリア=ジャム』




                 第三幕  青い国で

 草原の色が一気に変わりました、緑から青に。絨毯が代わる様に。そして木々の葉の色もそうなりました。
 神宝は色が変わったのを見てです、笑顔で言いました。
「マンチキンのl国ですね」
「ええ、今入ったわ」 
 ジュリアが神宝ににこりとして答えました。
「これでね」
「そうですよね」
「オズの国はこれでわかるわね」
「はい、色が変わって」
「どの国に入ったのか」
 まさにこのことがです。
「わかるのよ」
「もうすぐに」
「そしてこの国の海によ」
 そこにというのです。
「人魚の国があるのよ」
「もうずっと東ですね」
「東も東でね」
 まさにというのです。
「端にあるのよ」
「海ですから」
「オズの国は四方全て海に囲まれてるから」
「端になりますね」
「海にある国はね」
「それぞれの国のですね」
「そこにあるわ」
 まさにそこにというのです。
「人魚の国もね」
「わかりました、それじゃあ」
「もっと東に行くわよ」
 オズの東のマンチキンのさらにというのです。
「端までね」
「今回は長い旅になるね」
 ジャックは上機嫌で言いました。
「歩く距離が長いだけに」
「それまでにも色々あると思うけれど」
 かかしはマンチキンの青を見て故郷に帰ったと思ってです、そうしてあらためてにこにことして言ったのでした。
「皆で乗り越えて行こうね」
「僕達でね」
 木樵も言います。
「そうしていこうね」
「今度は何があるのかわからないけれど」 
 モジャボロも先のことを考えています。
「皆でやっていこうね」
「村でのことは無事に終わったけれど」 
 ジャックはディックのことを思い出していました、笑顔で別れた彼のことを。
「次もそうしていきたいね」
「ええ、皆でそうしていきましょう」
 ジュリアはジャックに笑顔で応えました。
「そうしていきましょう」
「そうだね、皆がいるからね」
「そうしていきましょう」
「さて、まずはね」
 モジャボロは青い世界を見回しつつ述べました。
「ジンジャー将軍のお家に行こうか」
「そうね、マンチキンの国に来たから」
 ジュリアもモジャボロに応えました。
「まずはね」
「そちらに挨拶に行こうね」
「あの人とも長いお付き合いだし」
「だからね」
 それ故にというのです。
「行きましょう」
「それじゃあね」
 そして実際にでした、皆でジンジャー将軍のお家にまで行きました。そのうえで挨拶をすると将軍はといいますと。
 ご主人と一緒にケーキの木の手入れをしていました、ですが将軍はジュリア達の挨拶を受けて笑顔で言いました。
「あら、今度の冒険はなの」
「ええ、マンチキンでだから」 
 それでというのです。
「挨拶に来させてもらったわ」
「そうなのね、それで何処に行くの?」
「人魚の国までだけれど」
「また随分と遠い国に行くわね」
 将軍はジュリアのお話を聞いて少し驚いた感じになって応えました。
「ここから随分あるわよ」
「ええ、それでもね」
「行くのね」
「そうするわ」
「そうなのね、ただね」
「ただ?」
「遠いからね」
 将軍はまたこのことを言うのでした。
「途中注意してね」
「ええ、旅道具は全部持っているから」
「それにかかしさんや木樵さんもいるし」
 将軍はかかし達も見て言いました。
「その顔触れならね」
「油断はしていないけれど」
「そうなのね、ただね」
「ただ?」
「冒険が長いとそれだけ何が起こるかわからないから」
「だからよね」
「そう、そこは注意してね」
 将軍はジュリアに親身になって言いました。
「いいわね」
「ええ、そこはね」
「貴女はしっかりしてるから大丈夫だと思うけれど」
 それでもというのです。
「注意してね」
「そうさせてもらうわ」
「さて、今はお仕事をしてるけれど」
 ここで将軍は笑顔になってこうも言いました。
「丁度お昼ね」
「だからっていうのね」
「そうよ、皆でお昼を食べない?」
 こう提案すえるのでした。
「これからね」
「いいの?」
「オズの国で遠慮は無用でしょ」
「そういうことね」
「そう、だからね」
 今からというのです。
「皆でお昼を食べましょう」
「奥さんが作ってくれた御飯は凄く美味しいからね」
 ご主人がにこにことして言ってきました。
「じゃあ今からね」
「さて、今日はビーフシチューにね」
 将軍はお昼のメニューのお話をしました。
「パン、チキンナゲットにポテトサラダとメロンよ」
「あっ、いいね」
 モジャボロはそのメニューを聞いて笑顔になりました。
「じゃあ今からね」
「ええ、お家に入って食べましょう」
「それじゃあね」
 モジャボロが応えてでした、そのうえで。
 皆でお家に入って将軍が作ったポテトサラダにチキンナゲットとビーフシチューにパンそしてデザートのメロンも食べてでした。
 食べられる人達は皆お腹一杯になりました、将軍は皆が食べ終わったところで笑顔で言うのでした。
「さて、お腹一杯になったからね」
「はい、これからの旅もですね」
「油断せずに進みながら」
「そうしてですね」
「行くのよ、貴方達もね」
 五人ににこりと笑って言うのでした。
「いいわね」
「はい、そうします」
「美味しいものをお腹一杯食べましたし」
「それじゃあ」
「やっぱり美味しいものをお腹一杯食べることがね」
 まさにこのことこそがというのです。
「大事なのよ」
「そうですよね」
「やっぱりそういうのを食べてこそですよね」
「冒険も出来ますね」
「そこからですよね」
「何といっても」
「そう、だから今からも行くのよ」
 暖かく送り出す言葉でした。
「これからね」
「そうさせてもらいます」
「是非」
 笑顔で応えた五人でした、そして将軍とご主人と笑顔で手を振り合ってまた会う時のことを楽しみにするのでした。
 そのうえで皆は先に先に進みますがティータイムを終えてさらに進んで五時位になるとです。道の真ん中にでした。
 大きな幹が転がっていました、ジュリアはそれを見て言いました。
「これはね」
「うん、近くの木が倒れたんだね」 
 木樵は道の左右を見ました、森は道のすぐ左右にあります。
「そうだね」
「そうね、じゃあ」
「うん、これをどけないとね」
 木樵はすぐに解決案を出しました。
「僕の斧でどけるよ」
「あっ、ちょっといい?」
 けれど、でした。ここでジュリアは斧を構えだした木樵に言いました。
「木を切ってどけるのはいいけれど」
「どうしたのかな」
「ええ、確かこの木のすぐ向こうは谷だったわね」
「あっ、そうだね」
 ジュリアは地図を取り出して現在地をチェックしましたが確かにそうでした。木樵も地図を見て頷きました。
「谷には橋がかけられているけれど」
「こうした場合はね」
「うん、トラブルは続くから」
「だからその橋が」
「落ちていたりするから」
「この木はただどけるのじゃなくて」
 それだけでなくというのだ。
「それ以外にもね」
「橋に使うとだね」
「いいんじゃないかしら」
 こう木樵に提案するのでした。
「そうしたらどうかしら」
「それは名案だよ、僕は木やブリキの細工は大得意だからね」 
 伊達にブリキの木樵ではありません、どちらの細工もオズの国一なのです。
「じゃあね」
「ええ、一応向こう側をチェックして」
「そうしてだね」
「どうするかを決めましょう」
「それじゃあね」
「よし、じゃあ僕を皆で上に放り投げてくれるかい?」
 かかしが皆に言ってきました。
「そして放り投げられた上から谷を見てね」
「どんな状況か確かめるのね」
「そうさせてもらうよ」
 かかしはジュリアにも答えました。
「だからね」
「わかったわ、それじゃあね」
「うん、皆でそうしてね」
 かかしの軽い身体をというのです、それで皆でかかしを胴上げするみたいに上に思いきり投げました、そしてです。
 かかしは上から木の向こうにある谷の状況をチェックしました、そうして着地してから皆に言いました。
「橋は落ちてたよ」
「やっぱりそうなのね」
「何があったか知らないけれど」
「じゃあ」
「うん、ここはね」
「この木を橋にすべきね」
 ジュリアは道を塞いでいるとても大きな倒れた木を見つつ言いました。
「そうすべきね」
「よし、じゃあ任せてね」
 木樵は斧を構えてでした、すぐにです。
 木を切ってです、かかしとジャック、モジャボロのアシスタントも受けてあっという間に頑丈な橋にしてしまってでした。その怪力で橋を担いで谷にかけてしまいました。
 そのうえで、です。皆で笑顔で言いました。
「これで大丈夫だね」
「うわ、端を作っちゃいましたね」
「あっという間に」
「それで担いでかけて」
「凄いですね」
「お力も」
「僕だから出来るんだ」 
 木樵は驚く五人ににこりと笑って答えました。
「僕は斧と手で木やブリキの細工なら何でも出来るからね」
「だから橋もですか」
「あっという間に出来たんですか」
「一時間も経っていないと思いますけれど」
「すぐにですね」
「出来たんですね」
「ただ出来ただけじゃないわ」
 今度はジュリアが五人にお話しました。
「木樵さんが作ったものはとてもしっかりしてるから」
「落ちたりしないんですね」
 ジョージがジュリアに応えました。
「そうなんですね」
「そういえば確かに頑丈そうですね」
 カルロスはその橋を見ています。
「何よりも」
「石の橋よりも頑丈そうね」
 ナターシャは橋の頑丈さを目でチェックしています。
「これなら」
「木樵さんにこんな技術があるなんて」
 恵梨香も言いました。
「かかしさん達もお手伝いしていたし」
「僕達もこうしたことは出来るんだ」
 ジャックが五人に答えました。
「木樵さんのお手伝いでね」
「流石に僕一人では無理だよ」
 木樵は斧を担いでお話しました。
「橋を一人で作ってかけることはね」
「皆で、ですね」
「皆がいるから出来るんですね」
「橋を作ってかけることも」
「そうなんですね」
「四人いてこそ」
「あくまで木樵さんがメインだけれど」
 ジュリアもあらためて五人にお話しました。
「この四人がいたらね」
「こうしたこともですね」
「出来るんですね」
「実はかかしさん達も手先が器用で力も強いの」
 それでというのです。
「こうしたことも出来るのよ」
「そうなんですね」
「橋を作れて持てる」
「そこまで出来るんですね」
「かかしさん達も」
「そうなんですね」
「流石にカリダ達には適わないけれどね」
 モジャボロは笑ってオズの国でかなり有名な猛獣の名前を出しました。
「これ位は出来るよ」
「こうして時々皆で橋を作っているんだ」
 ジャックもお話をしてくれました。
「今みたいにね」
「さて、これでいいね」
 木樵は自分達がかけた橋を見てにこにことしています。
「じゃあ橋を渡って」
「ええ、谷を越えましょう」
「ただこの橋は仮だから」
「オズマ姫にお話して」
「後で石のもっと頑丈な橋をかけようね」
「そうしましょう」
 こうしたこともお話してでした、そのうえで。
 皆は橋を渡ってさらに先に行ってです、そうしてこの日は橋を渡って暫く進んで晩御飯を食べて近くの湖で身体を奇麗にしてからテントで休みました。
 そしてです、朝起きるとすぐに御飯を食べて出発しますが。
 朝日を見つつです、ジャックが言いました。
「今日もいい天気だね」
「うん、冒険日和だね」
 モジャボロはジャックに笑顔で応えました。
「まさに」
「そうだよね」
「こうした朝に冒険をするとね」
「とても気分がいいよね」
「このまま人魚の国に行けたらいいね」
「途中蜂蜜も手に入れるんだよね」
「そうそう、それもあるからね」
 モジャボロはジャックに応えました。
「そちらも楽しみだよ」
「そうだよね」
「うん、ただ君は」
「かかしさんも木樵さんもだよ」
「何も食べる必要がないから」
「蜂蜜もだよ」
「口にしないね」
「うん、皆が舐めて笑顔になるのを見てね」
 そうしてというのです。
「楽しませてもらうよ」
「そうだよね」
「それが僕達の楽しみ方だから」
 食事やそうした時にです。
「楽しませてね」
「そうさせてもらうよ」
「そのことも待ってるんだ」
 ジャック達はというのです。
「今からね」
「そう言われると責任重大かな」
「いやいや、見せてもらうだけだから」
「そkまではなんだ」
「気にしなくていいよ」
 責任を感じるまではというのです。
「別にね」
「リラックスしてだね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「舐めるのを見せてね」
「じゃあいつも通りかな」
「そうだね」
 こうしたこともお話しました、そしてです。
 皆は谷を越えてさらに進んでいく中でお空にあるものを見ました、それは何かといいますと。
 凄く大きな生きものでした、それはムササビでしたが。
 そのムササビを見てです、ジュリアは目を瞬かせて言いました。
「あれっ、おかしいわね」
「おかしいっていいますと」
「ムササビは夜行性なのに」
「あっ、そういえばそうでしたね」
 神宝も言われてこのことを思い出しました。
「ムササビは夜行性でしたね」
「そうよ、今はお昼なのに」
「どうしてお昼に飛んでるんでしょうか」
「それが不思議ね」
「おおいムササビ君」
 モジャボロがムササビに尋ねました、その飛んでいる彼に。
「君はどうして飛んでるんだい?」
「あれっ、モジャボロさん?」
「そうだよ」
「かかしさん達もいるね」
 ムササビは下にいる皆も見ました。
「またどうしてここに」
「人魚の国まで向かっているんだ」
「ああ、そうなんだ」
「それで君はどうして今飛んでるんだい?」
 モジャボロは自分達の上を滑空するムササビにこうも尋ねました。
「君は夜行性だよね」
「うん、そうだよ」
「じゃあどうして今飛んでいるのかな」
「それはね」
 ここで、でした。ムササビは。
 皆の前に降りました、そして後ろ足で立ちつつ皆にお話しました。
「実は探しものをしていてね」
「探しもの?」
「うん、この辺りに凄く美味しい果物が実る木があるって聞いて」
「果物の?」
「最近寝る前に探しているんだ」
「そうだったんだ」
「うん、けれどね」
 ムササビは難しいお顔で言うのでした。
「その果物が何かわからないんだ」
「わからなくて探していたいんだ」
「そうなんだ」
「果物っていっても」
 ここでジュリアが言いました。
「色々あるから」
「そうなんだよね」
「具体的にどんな果物かわかっていないのね」
「どんな果物かな」
「この辺りの果物は」
 ジュリアは周りを見回しました、そのうえでムササビに言いました。
「ここは私も知っている場所よ」
「あっ、そうなんだ」
「この辺りは梨が実っているわ」
「梨?」
「そう、洋梨がね」
「じゃあ美味しい果物っていうのは」
「洋梨かしら」
 こうムササビに言うのでした。
「ここは他には桃も実るけれど」
「じゃあ桃なのかな」
「ううん、どうなのかしら」
「僕硫黄なしも桃も食べたよ」
 洋梨はジュリアに答えました。
「この辺りのね」
「そうだったの」
「美味しかったけれどそれなのかな」
「そうだったのかも知れないわね」
「うん、どうなのかな」
「けれどそれがわからなくてよね」
「寝る前だけれどね」
 それでもというのです。
「こうして飛んでその果物を探してるんだ」
「それで食べてなの」
「これかなって思ってね」
 この辺りの洋梨や桃をというのです。
「食べてるけれど」
「どうもなの」
「違うかなって思っているんだ」
「つまりそこまで美味しい果物を食べていないのね」
「うん」 
 その通りとです、ムササビはジュリアに答えました。
「実はそうなんだ」
「それじゃあ」
 今度は神宝が言いました。
「この辺りの洋梨とか桃食べてみる?」
「あっ、それいいね」
 ジョージは神宝のその提案に頷いて応えました。
「まずは食べてみてね」
「それで美味しいかどうか確かめるべきね」
 恵梨香も神宝の提案に賛成しました。
「実際に」
「食べてみないとわからないしね」
 カルロスは確かめるよりそちらを楽しみにしています。
「それじゃあ」
「この辺りの果物を摘み取って食べてみましょう」
 ナターシャは実際にどうするのかを言いました。
「これから皆でね」
「よし、じゃあ皆まずは何人かで一組になって解散しよう」
 かかしは右手の人差し指を立てて言いました。
「それで果物を摘み取って集めよう」
「そしてここに戻るんだね」
 木樵はかかしに集まる場所を聞きました」
「そうするんだね」
「うん、ここがいいね」
「じゃあムササビ君はここで待ってもらって」 
 ジャックはムササビを見て皆にお話しました。
「そして僕達はね」
「うん、ここで休みながら待ってるよ」
 ムササビは実際にそうすると答えました。
「それじゃあね」
「皆でこの辺りの果物を摘みましょう」
 こうしてでした、皆何人ずつで一組になってそうして道の左右の森の中に入りました。五人の子供達は一組になってジュリアとモジャボロ、そしてかかしと木樵とジャックの組になって。
 それぞれで探しました、そのうえで暫くしてムササビのところに戻りますと。 
 洋梨や桃以外にも色々な果物がありました、これにはジュリアも驚きました。
「こんなに色々あるなんて」
「あれっ、そうしたのも果物なんだ」
 ムササビは自分に出された果物達を見て目を丸くしました。この森で彼が見付けたものばかりでしたが。
「洋梨や桃だけじゃなくて」
「これ食べたことないの?」
 神宝はまずはライチを見せてムササビに尋ねました。
「ライチは」
「うん、見たことはあっても」
「食べるものとはなんだ」
「思っていなかったよ」
「じゃあこれも?」
 ジョージは柿を見せました。
「そうなんだ」
「何かなって思ってたよ」
「これもなの?」
 恵梨香はアケビを見せました。
「美味しいのに」
「何か気持ち悪いなって思って近寄らなかったんだ」
「どれも果物で食べられるから」
 カルロスはパッションフルーツを見せています。
「これだってそうだし」
「あの、これ凄く美味しいから」
 ナターシャは大好きなキーウィを見せています。
「キーウィも」
「というかこの辺りの果物の種類が増えてるわね」 
 ジュリアはこのことを知りました。
「前は洋梨や桃だけだったのに」
「うん、そうだね」
 かかしも頷きます。
「前はここまで多くなかったよ」
「ここも変わったってことだね」
 木樵の口調はしみじみとしたものでした。
「つまりは」
「オズの国も常に変わるから」
 ジャックもオズの国のこのことはよく知っています。
「それでだね」
「この辺りの果物の種類も増えたんだね」
 モジャボロは笑顔で果物達を見ています。
「そしてムササビ君はこういったものが食べられるのを知らなかったんだね」
「見ていても食べられるとはね」
 ムササビもその果物達を見て言いました。
「思ってもいなかったよ」
「全部食べられるから」
 ジュリアはムササビににこりと笑って告げました。
「どの果物もね」
「そして美味しいんだね」
「ええ、そうよ」
 実際にというのです。
「だから楽しんで」
「うん、それじゃあね」
 こうしてでした、ムササビは実際にそういった果物を食べてみました。そのうえで驚いてこう皆に言いました。
「どれも凄く美味しいよ」
「そうでしょ」
「アケビもキーウィもパッションフルーツも」
「そうよね」
「柿も、特にね」 
 ムササビが一番気に入った果物はといいますと。
「ライチがね」
「あっ、ライチがなんだ」
「一番美味しいよ」
 こう神宝に答えるのでした。
「本当にね」
「じゃあ君が探していた果物は」
「ライチだったみたいだね」
「そうなんだね」
「けれど他の果物もね」
 ライチ以外もというのです。
「美味しいよ」
「うん、柿とかもそうだよね」
「これはいいね」
「それじゃあこれからは」
「うん、どの果物も食べるよ」
「そうするんだね」
「特にライチをね」
 ライチの皮を前歯で破ってから中身を食べつつです、ムササビは神宝に答えました。
「そうするよ、そしてね」
「そして?」
「今日は寝るよ」
「その果物に出会えたからだね」
「自分の巣に戻ってね」
「それじゃあ今日からは」
「もうこうした時間には起きないよ」
 そうするというのです。
「本当は僕達ムササビはもう寝ている時間だしね」
「夜行性だからだね」
「朝更かしは止めるよ」
 夜更かしではなくこちらになるのです、夜行性ですから。
「ぐっすりと寝る様にするよ」
「睡眠不足はよくないから」
 ジュリアもそこは言うのでした。
「だからね」
「実は最近寝不足だったんだ」
 美味しい果物を寝るべき時間に探していてです。
「けれどもうね」
「それもよね」
「終わるから」
「それじゃあ」
「美味しい果物を一杯食べて」 
 勿論まずはライチです。
「そして毎日気持ちよく寝るよ」
「そうしてね」
「うん、そうするよ」
 ムササビはジュリアに笑顔で答えました、そしてでした。
 身体を広げて上に大きくジャンプをしてそのうえでお空に上がってです、皆に手を振って自分の巣の方に飛んで行きました。皆も手を振り返しました。
 その後でふとです、神宝は言いました。
「ムササビは木の上から飛ぶけれど」
「貴方達の世界ではそうなのね」
「この世界ではああしても飛べるんですね」
「そうよ」
「それは便利ですね」
 笑顔で頷いてです、神宝は応えました。
「ムササビさん達にとって」
「そうよね」
「それじゃあ忍者の人も」
「日本の?」
「忍者もああして空を飛べるんです」
 それが出来るというのです。
「風呂敷を両手に持って両足に縛ってバラシュートみたいにして」
「飛べるのね」
「ムササビの術っていいまして」
「そうそう、ドラマとかでそうするんだよね」
 ジョージは祖国アメリカのドラマで観た忍者を思い出しました。
「お空を飛ぶんだよね、その術で」
「あれ実際にしてたかわからないけれど」
 日本人の恵梨香の言葉です。
「漫画とかじゃそうして飛んでるわね」
「あの飛び方はまさにムササビね」
 ナターシャも忍者のことを思い出しました。
「じゃあオズの国では」
「空にジャンプして飛べるんだね」
 最後にカルロスが言いました。
「忍者の人なら」
「ううん、忍者ね」 
 ジュリアは五人のお話から首を傾げさせて述べました。
「オズの国にもいるわね」
「それじゃあ」
「そうして飛べるのかしら」
「凄いですね」
「やっぱりね、ただオズの国に最初は忍者はいなかったわ」
「何しろ同じ時代のアメリカの影響を受ける国だから」
 モジャボロはオズの国のこの特質からお話しました。
「だからね」
「アメリカに忍者が入って来たのは最近みたいだから」
 ジュリアはまた言いました。
「忍者はオズの国にもずっといなかったわ」
「面白いんですけれど、忍者って」
「面白くてもアメリカにいなかったから」
 ジュリアは神宝に答えました。
「だからね」
「それで、ですか」
「最近までいなかったのよ、オズの国には」
「わかりました」
「ただ忍者の人達って凄いよ」
 ジャックはにこにことしてです、その人達についてお話しました。
「神出鬼没で色々な術を使えて」
「あの格好良さは別格だね」
 木樵も忍者についてお話します。
「僕も好きだよ、忍者」
「ああした術ってどうして使えるのかってね」
 ジャックが思うのはこのことでした。
「不思議にさえ思うよ」
「あの術は魔法じゃないけれど」
 ジュリアは忍術について述べました。
「魔法と同じ位凄いわね」
「忍術はオズの国では禁止されていませんよね」
「ええ、ただ誰も使えるものではないでしょ」
「はい、あの術は」
 神宝も忍術についてはこう考えています。
「とても」
「だからオズマ姫グリンダさんみたいな人だけが使っていいものとはされていないの」
「誰でもですね」
「使っていいとはなっているわ」
「そうなんですね」
「けれど忍術は修行するだけでも大変でしょ」
「そのうえで忍術を身に着けるとなると」
 オズの国でもです、このことは。
「難しいから」
「それで、ですね」
「オズの国で忍者は少ないの」
「そういうことですか」
「そうなの、あと日系人の人が多いわね」
 忍者の人にはというのです。
「日本のものだけあって」
「やっぱりそうですか」
「というか忍者は日本からアメリカに入ったわね」
「はい」
 その通りだとです、神宝も答えます。
「紛れもなく」
「そうよね」
「それが何か」
「貴方達の世界でもそうね」
「そうですが」
「他の国ではないわね」
 何故かこのことが妙に気になったジュリアでした。
「忍者の起源がどうとか」
「日本起源ですよ」
「そうね、何か変な感じもしたから」
「変な感じ?」
「ええ、そんな気もしたわ」
「そうですか」
「まあ気のせいね」
 ジュリアはこのことについてはこう考えることにしました、そのうえで。
 忍者についてのお話を終えてでした、そうしてまた歩きはじめました。マンチキンの国での旅は普通に穏やかに進んでいましたが。
 お昼になってです、皆で御飯を食べますが。
 この時のメニューのハヤシライスを食べつつです、ジュリアは言いました。
「カレーと比べて食べる機会がないけれど」
「それでもですね」
「美味しいですよね」
「このハヤシライスにしても」
「お肉も玉葱も沢山入っていて」
「ソースの味もよくて」
「そう、普通にね」
 そうだというのです。
「美味しいわ、だからこうして食べていても」
「満足出来ますね」
「カレーと同じ位」
「こちらはこちらで」
「満足出来ますね」
「そうですよね」
「ええ、じゃあこれを食べて」
 そしてというのでした。
「また出発よ」
「ううん、何杯でも食べられるね」
 モジャボロは実際にハヤシライスをおかわりしています、スプーンがどんどん動いていてそれがリズミカルでもあります。
「ハヤシライスも」
「これがカレーに比べて人気がないことはね」
「少し不思議だね」
「こんな美味しいのに」
「カレーが強過ぎるのかな」
 モジャボロはこう考えました。
「やっぱり」
「そうなるのかしら」
「実際にカレーは強いね」
「何ていうか」
 ジュリアも王宮でそのカレーをよく食べるので言います。
「もうね」
「別格位にだね」
「存在感があるわね」
「味にしても」
「そう、強くて」
「だからハヤシライスはね」
「こんなに美味しいのに」
 カレーと比べるとです。
「存在感が出せないのね」
「そうだと思うよ」
「何ていうか」
「相手が強過ぎるんだよ」 
 ハヤシライスの悲しいところはです。
「カレーライスだからね」
「そうなるのね」
「というか今のアメリカではハヤシライスも食べられるんだね」
「そうみたいね」
 だからオズの国でも食べられるのです。
「カレーもそうで」
「アメリカのお料理も増えたよ」
「モジャボロさん達が来られた時よりも」
「遥かにね」
「そのこともあるわね」
「僕達が最初に来た時なんか」
 モジャボロはその時のことを思い出すのでした。
「こんなに色々なものを食べられなかったよ」
「うん、僕が見てもそうだね」
 かかしは食べていませんが皆が食べている時の笑顔を見て楽しんでいます、このことは木樵とジャックも同じです。
「オズの国のお料理は増えたね」
「そうだよね」
「ハヤシライスもそうだし」
 木樵も言います。
「他のお料理もね」
「中華料理とか和食とかね」
 ジャックは料理のジャンルからお話しました。
「色々食べられる様になったね」
「アメリカは移民の国ですからね」 
 そのアメリカ人のジョージの言葉です。
「このことが強く出ていますね」
「アメリカでもお寿司が食べられるから」
 日本人の恵梨香が言うことはといいますと。
「オズの国でもですね」
「カレーとかハヤシライスも」
 カルロスは今食べているものからお話しました。
「日本のお料理だからね」
「欧州にはないから」
 ナターシャも言います。
「日本に入ってそうなってアメリカにも渡ったのよ」
「それで僕達もこうして食べてるんだね」
 神宝はハヤシライスをおかわりしました。
「それも美味しく」
「アメリカは本当に色々なものが食べられる国で」
 神宝は考えるお顔になっています。
「オズの国もそうなんですね」
「そうなるわ、色々な人達もいるしね」
「アメリカがそうである様に」
「ええ、アフリカ系の人もアジア系の人もいるわね」
「国民の人達に」
「ヒスパニックの人達もね」
 本当に色々な人達がいます。
「沢山いるでしょ」
「そうした国なんですね」
「どんどん変わっていってるの」
 アメリカがそうなると共にです。
「オズの国もね」
「僕達もその変化の中にいるんですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「この国もね」
「変わらないってことはないんですね」
「全く変わらないものなんてこの世いはないわ」
 ジュリアは言い切りました。
「そうでしょ」
「はい、それは」
「何かを全く変わらないって言い切る人は何もわかっていない人よ」
「そうなるんですね」
「そうよ、人もものも国も変わるから」
「そういえば」
 ここで神宝が気付いたことはといいますと。
「木樵さん達も昔は橋を作れなかったですね」
「そうでしょ」
「変わったんですね、木樵さん達も」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そうなったのよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
「オズの国も変わって」
「これからもどんどん変わっていくのよ」
「そういうことですね」
「変わったから」
 ジュリアがここでにこりとして言うことはといいますと。
「テーブル掛けもあるのよ」
「僕達が冒険の時に使っている」
「食べものや飲みものなら何でも出せるあれですね」
「あのテーブル掛けもあるんですね」
「時代が変わったから」
「だからですね」
「そうよ、あのテーブル掛けもオズの国にはなかったわ」
 かつてのオズの国にはというのです。
「そこも変わったわ」
「そうなんですね」
「それも変わるってことですね」
「科学も魔法も変わっていって」
「アメリカが変わってオズの国も変わっていく」
「この国も」
「そうよ、じゃあ御飯の時はね」
 まさにその時はというのです。
「テーブル掛けでお料理を食べましょう」
「はい、それじゃあ」
「そうしましょう」
「そして美味しいものを出して」
「皆で食べましょう」
「その時は」
「是非ね」
 ジュリアは五人に言いました、そうして皆でなのでした。
 マンチキンの国を東に東に進んでいきます、人魚の国はまだまだ先ですが皆は陽気にその国に向かっていました。
 その中でかかしは町に入った時に左手にあった学校で野球をしているのを見て微笑んでこんなことを言いました。
「野球も変わったね」
「うん、僕達がはじめて観た時よりもね」
 木樵がそのかかしに応えました。
「随分とね」
「そうなったね」
「グローブは大きくなって」
「ユニフォームはスタイリッシュでカラフルになって」
「バットもよくなって」
「ボールもかなり飛ぶ様になったよ」
「確かかかしさん達がはじめて野球を観た頃は」
 何時だったかとです、ジョージが言いました。
「ドロシーさんとお会いする前で」
「ええと、もう野球がはじまった頃で」
 恵梨香も言います。
「日本にも伝わってきた」
「プロチームもなかったんじゃないかしら」
 ナターシャは腕を組んで考えるお顔になっています。
「確か」
「そんな昔だよね」
 カルロスも聞いている野球の歴史から考えました。
「それこそ」
「ベースも四角だったりしてね」
「ショートもいなかったりして」
「随分と違っていたよ」
「本当にそんな時代だったよ」
 かかしと木樵は子供達にその頃の野球のことをお話しました。
「もう今とは違うから」
「それも全くね」
「マウンドも違っていたね」
「もうボールが飛ばなくてね」
「ホームランも少なかったんですよね」
 神宝が二人に聞いたのはこのことでした。
「そうですよね」
「そうそう、もうね」
「殆ど出なかったね」
「ドロシーが来て暫く経ってからかな」
「この国にね」 
 その頃位からだというのです。
「ホームランが増えたのは」
「それも急に増えたんだよね」
「もうびっくりする位にね」
「皆ボールを飛ばす様になったよ」
「ベーブ=ルースさんかららしいですから」
 神宝はこの偉大な野球選手の名前を出しました。
「ホームランが増えたのは」
「そちらの世界の野球選手だよね」
「野球の神様って呼ばれていた」
「とにかくホームランを打ちまくった」
「偉大な選手だったらしいね」
「はい、この人が出てです」
 そうしてというのです。
「僕達の世界ではホームランが増えて」
「オズの国でも増えた」
「そうなったんだね」
「あとアフリカ系の選手もですね」
 見ればグラウンドで投げているピッチャーもバッターも褐色のお肌の少年です、それぞれのユニフォームがよく似合っています。
「出て来て」
「最近ではアジア系の選手も増えたし」
「勿論ヒスパニックの選手もね」
「そうしたことも変わってきてますね」
「オズの国の野球も」
「そうなっているんだよ」 
 まさにというのです、オズの国も実際に変わっていっています。それは果物や野球にも出ているのでした。



うーん。
美姫 「何を唸っているのよ」
いや、単に俺はカレーよりもハヤシ派なんだが。
美姫 「どうでも良い事ね」
言うと思ったよ。と、今回はオズの国の変化かな。
美姫 「悪くはないと思うけれどね」
だな。人魚の登場はもう少し先みたいだし。
美姫 「旅も問題なさそうだし、すぐに着きそうね」
どうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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