『オズのジュリア=ジャム』
第二幕 冒険の出発
モジャボロは朝にです、神宝達ににこにことして言いました。
「ジュリアからお話は聞いてるよ」
「はい、それじゃあですね」
「モジャボロさんもですね」
「僕でよかったらね」
皆に直食前ににこにことして言うのでした。
「ご一緒させてもらうよ」
「宜しくお願いします」
「皆で人魚の国に行きましょう」
「かかしさん達が来てくれたら」
「是非ね、それとね」
こうもです、モジャボロは皆にお話した。
「今日の朝御飯だけれど」
「はい、そのこともですね」
「楽しみですよね」
「うん、まずは朝御飯だからね」
これを食べてからだというのです。
「何事もはじまるからね」
「そうですよね、やっぱり」
「食べられる人はたべないと」
「本当に何もはじまらないですね」
「一切合切」
「本当に何でも」
「そう、だから皆で食べようね」
朝御飯をというのです。
「もうすぐはじまるそれをね」
「ええ、もうすぐですね」
「朝起きてお風呂も入りましたし」
「次は、ですね」
「朝御飯ですよね」
皆でにこにことして言います、そしてでした。
その朝御飯の時となりました、今日の王宮の朝御飯は王宮の果樹園や畑で採れた林檎やオレンジ、グレープフルーツ、葡萄、メロン、無花果、バナナ、パイナップル、苺等の盛り合わせがまずありました。どれも奇麗な緑色です。
そしてソーセージにハムに焼いたベーコン、ゆで卵とです。人参やセロリ、ジャガイモや玉葱が沢山入ったスープでした。それにトーストもあります。
その沢山の朝御飯をです、ジュリアは凄い勢いで食べていきます。五人はそのジュリアを見て言うのでした。
「凄いね、ジュリアさん」
「物凄く食べるね」
「僕達よりずっとね」
「ソーセージもフルーツも」
「トーストもスープも」
「やっぱりあれだね」
ジョージはスープを飲んで言いました、緑の野菜達の色が鮮やかでそして味もかなりいいです。
「毎朝泳いでおられるから」
「あっ、ジュリアさん毎日泳いでるんだったね」
カルロスもこのことをポもい出しました、トーストにバターを塗りつつ。
「だからだね」
「水泳はランニングと同じかそれ以上に身体を使うから」
ナターシャもこのことを言いました、茹でたソーセージがとても美味しいです。
「それでお腹も空くのね」
「しかも朝起きてすぐに泳いだから」
恵梨香はフルーツを食べています。
「余計によね」
「朝御飯の前に身体をよく動かすと」
最後に神宝が飲みものとして出されている牛乳を飲みながら言いました。
「朝御飯が美味しいんですね」
「そうなの、私大抵朝早く起きてね」
ジュリアは何でも沢山食べながら五人に答えました。
「まずは王宮のプールで一時間かけて五キロは泳ぐから」
「一時間で五キロですか」
「相当に速いんじゃ」
「水泳選手ですか?」
「それ位じゃないんですか?」
「それ位ですと」
「だからジュリアは王宮一のスイマーだから」
オズマが驚く五人ににこりとしてお話しました、勿論オズマも美味しく食べています。
「それ位泳げるのよ」
「一時間で五キロですか」
「それだけ泳げるんですか」
「泳ぐ距離も時間も凄いですが」
「そこまでなんですね」
「そうよ、それだけ出来るの」
水泳がというのです。
「そして泳いだ分だけね」
「召し上がられるんですね」
「そうなんですね」
「朝に沢山動いて沢山食べて」
ジュリアはまた五人にお話しました。
「それで一日をはじめるの」
「朝早く起きられて」
「そして、ですね」
「そのうえでメイドのお仕事もされるんですね」
「一日をはじめられますか」
「朝早くからのお仕事の時はそれが終わってからね」
お仕事がというのです。
「五キロ泳ぐの」
「やっぱり五キロですか」
「それだけ泳がれるんですか」
「朝早くのお仕事の時も」
「そして食べるの」
泳いだ後でというのだ。
「とにかく泳いだ後の御飯が凄く美味しいから」
「美味しく食べるにはまず身体を動かすことだからね」
モジャボロはフルーツの中にある大好物の林檎をにこにことして食べながらそのうえでジュリアに応えて五人に言いました・
「ジュリアは正しいよ」
「そうですよね」
「やっぱり美味しく食べるにはですよね」
「身体を動かすことですね」
「これが一番いいですね」
「そうだよ、だから冒険の時の御飯は美味しいんだ」
これから皆で行くこちらの時もというのです。
「いつも身体を動かしているからね」
「歩いてですよね」
「そしてオズの国では色々ありますから」
「その分も身体を動かしますし」
「それで、ですね」
「冒険の時は御飯が美味しいんですね」
「外で食べる開放感もあるしね」
モジャボロはこの要素もお話しました。
「だからいいんだよ」
「冒険の時の御飯は」
「そういうことですね」
「そうだよ、そろそろかかしさん達が来るだろうし」
モジャボロは彼等のお話もしました。
「お昼は冒険の時に食べることになるかな」
「テーブル掛けはもう用意してあるから」
ジュリアは食べながらこのこともです、皆にお話しました。
「だから安心してね」
「はい、冒険の時もですね」
「皆で楽しく食べられますね」
「それも楽しく」
「そうよ、オズの国はあちこちに果物が成る木があるけれど」
中にはお弁当そのものが成る木さえあります、それで旅をする人は実は何も食べるものを持って行かなくても困らないのです。
「テーブル掛けがあるとね」
「何時でも好きなものを食べられますね」
「しかも沢山」
「だから持って行くんですよ」
「冒険の時は」
「そうよ、それは今回も同じよ」
そうだというのです。
「ではいいわね」
「はい、今回の冒険でもですね」
「食事はテーブル掛けで楽しく」
「そうして食べますね」
「そうなるわ」
笑顔で応えたジュリアでした、そしてです。
皆で朝食を楽しく食べました、その朝御飯を食べ終えるとすぐにでした。待っていた人達が到着しました。
かかしとブリキの木樵、それにカボチャ頭のジャックです。三人は神宝達のところに来て笑顔で言ってきました。
「お話は聞いたよ」
「三人で朝も夜も歩いてきたんだ」
「一緒に冒険したくて楽しみでね」
それで食べる強雨も寝る必要もないことをオズの神々に感謝しつつそのうえでここまで来たというのです。
「じゃあ今からだね」
「いざ人魚の国へ」
「そうするんだね」
「はい、そうです」
神宝が三人に笑顔で応えました。
「宜しくお願いします」
「彼等がいると百人力だね」
ふとです、魔法使いが出て来て言ってきました。
「何といっても」
「はい、ただ魔法使いさんは」
「ああ、僕も実は用事があるんだ」
魔法使いは神宝に申し訳なさそうに答えました。
「カエルマン君達のところに呼ばれていてね」
「そちらに行かれるんですか」
「気球でね」
これを使ってというのです。
「行くから」
「だからですか」
「そう、僕もね」
今回の冒険はというのです。
「君達とは一緒に行けないんだ」
「そうですか」
「急に決まってね」
カエルマンのところに行くことがというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「また機会があればね」
「はい、一緒にですね」
「冒険をしようね」
「宜しくお願いします」
「私達ももうすぐ出発するわ」
ドロシーも言ってきました。
「だからね」
「はい、またですね」
「会いましょう」
「皆が王宮に戻って来た時に」
「宜しくね」
「では皆暫しのお別れをして」
そしてとです、オズマが皆に言いました。
「それぞれの冒険に出ましょう」
「今から行ってきます」
ジュリアはそのオズマににこにことして挨拶をしました。
「人魚の国まで」
「旅は王宮の鏡で見守っているから」
「はい、何かあればですね」
「任せてね」
「そのことも宜しくお願いします」
こうお話してです、皆はそれぞれの冒険に向けて出発しました。ジュリア達は都のマンチキンへの門、東門からです。
都を出てでした、マンチキンの国に向かって出発しました。そして緑の草原が左右にある黄色い煉瓦の道を歩きつつです。
皆で楽しくお喋りをしていました、かかしは神宝達ににこにことして言いました。
「故郷に戻るからね」
「だからですね」
「楽しみなんですね」
「そのことも」
「そうなんだ、やっぱり僕の故郷はね」
そこはといいますと。
「マンチキンだよ」
「それは僕もだよ」
木樵もにこにことして言います。
「故郷はマンチキンだよ」
「そうですね、木樵さんも」
「マンチキンで生まれられてでしたね」
「ドロシーさんとお会いするまでおられたんですね」
「そうでしたね」
「冒険ではよく行くけれど」
それでもというのです。
「実は最近は行ってなかったんだ」
「僕もなんだよね」
かかしもそうだとお話します。
「これがね」
「そう、僕だよ」
ジャックも言います。
「僕はギリキン生まれだけれどね」
「ああ、三人共最近の冒険では確かにね」
モジャボロも気付いて応えました。
「マンチキンには行っていないね」
「そうなんだ」
「それでそろそろ行けたらって思ってたんだ」
「そうね」
「それで丁度オズマからお誘いがあったから」
「まさに渡りに船だったよ」
「是非にって思ったよ」
三人共だったというのです、まさに。
「だからここまでうきうきとして来たんだ」
「暫くぶりにマンチキンに行けるって」
「そう思ってね」
「どの国にも何度も行ってるけれどね」
モジャボロはこれまでの冒険を思い出しつつ言いました。
「けれど最近行っていない国はね」
「どうしてもだよね」
「ついつい行きたくなるよね」
「どうしてもね」
「そうだよね、僕もそうだよ」
モジャボロにしてもというのです。
「本当にね、ではね」
「今からだね」
「そのマンチキンに入るね」
「皆で」
「そうなるよ、さて人魚の国はね」
モジャボロは目指すその国のこともお話しました。
「果たしてどうなっているかな」
「どうなってるか?」
「っていいますと」
「何かあったんですか?」
「人魚の国に」
「いや、特に聞いていないけれど」
モジャボロは五人に答えました。
「僕があの国に前に行ったのは随分前だからね」
「それで、ですか」
「今はどうなっているか」
「そのことからですね」
「そう言われたんですね」
「そうだよ」
その通りだというのです。
「だからこう行ったんだ」
「そうね、オズの国も変わっていってるから」
ジュリアも言います、着ているのはいつもと同じメイド服です。
「だからね」
「あの国もね」
「今は変わってるかしら」
「前にお邪魔した時よりもね」
「そうね、人魚の女王もどうされているかしら」
ジュリアはこの人のお話もしました。
「今は」
「お元気なのは間違いないけれどね」
「それでもね」
「うん、どうされているかまではね」
「わからないわね」
「そうだね、真珠を見せてもらうにしても」
それでもというのです。
「あの人は今はどうされているのか」
「このこともね」
「気になるわね」
「そうだね」
「人魚の国は女王様が治めておられるんですね」
神宝は二人のやり取りからこのことを尋ねました。
「そうなんですね」
「ええ、そうなの」
ジュリアが神宝に答えました。
「あの国はね」
「そうなんですか」
「そして女の人が強い国なの」
「男の人よりもですか」
「女の人魚の人はマーメイド、男の人はマーマンといって」
「そしてですね」
「女の人が強い国なの」
こう神宝にお話するのでした。
「そして国家元首は女王様なの」
「人魚姫は」
「ええ、いるわ」
「やっぱりそうですか」
「けれど消えたりはしないから」
そうしたことはないというのです。
「喋られなくなったりね」
「あのお話は可哀想ですね」
人魚姫のお話についてはです、ナターシャも知っていてです。悲しいお顔になって言うのでした。
「切なくて」
「幸せになれなかったから、人魚姫は」
ドロシーも人魚姫について悲しく言います。
「むしろ幸せから遠ざかったばかりで」
「何かを得て何かを失ってばかりだよね」
ジョージも言うのでした。
「脚の代わりに声とか」
「そして何も出来なくてね」
カルロスも今は悲しいお顔になっています。
「最後は消えてしまうから」
「ああしたことがオズではないんだったら」
神宝も他の皆と同じお顔です。
「凄くいいことだよ」
「悲しみは少ない方がいいわね」
ジュリアも五人に応えました。
「オズの国では殆どないものだから」
「そうですね、この国ではですね」
「悲しいことはないですね」
「誰も死ななくて幸せになれるから」
「悲しみはないですね」
「こうした国ですね」
「うん、本当に幸せな国で」
そしていうのです、モジャボロも。
「人魚姫みたいなことはないよ」
「僕は人魚姫のお話は知らないけれど」
ジャックはオズの国にいます、だから知っている筈がありません。このことは実は外の世界から来た魏五人とモジャボロ以外の人達は皆そうです。
「それでも幸せになれなかったんだ」
「そうなんだ」
「王子様と一緒になりたかったのに」
「なれなくてね」
「最後は消えてしまうの」
「泡となって」
五人はジャックにお話しました。
「そうしたお話だから」
「本当に悲しいの」
「幸せを求めたのに得られなくて」
「そして消えてしまうから」
「こんな悲しいお話はないわ」
「聞いていて胸が痛くなるよ、そしてね」
俯いて言うジャックでした。
「これが悲しいって気持ちなんだよね」
「オズの国では滅多に感じることはないけれど」
「とても辛い感情だよ」
かかしも木樵も言います。
「本当にね」
「こうした感情は出来るだけ感じたくないね」
「そうだね、オズの国にいてよかったよ」
しみじみとしてです、こう言ったモジャボロでした。
「この国の人魚の人達は声もなくさないし消えることもないから」
「だからだね」
「人魚姫はいないんだね」
「そうした悲しい人魚姫は」
「そのことが嬉しいよ」
モジャボロにしてもというのです。
「僕にしても」
「ええ、というか脚が人間のものになるのは」
ジュリアが言うにはです。
「この国では海草を食べればね」
「そうそう、すぐにだね」
かかしがジュリアに応えました。
「なるからね」
「そうした海草を食べれば」
「声を失うこともなく」
「それで人魚の人達も海の上に上がられるから」
「何の問題もないよ」
「そうなのよね」
このことをお話するのでした。
「そうしたお話になるなんてね」
「外の世界の人魚のお話は悲しいね」
木樵はその優しい心で心の底から悲しんでいました。
「そうした海草がないなんて」
「本当にそうよね」
「全くだよ」
「声も失うなんて」
「どうして告白出来るのか」
「それじゃあ何にもならないわ」
ジュリアはこうも言いました。
「本当にね」
「全くだよ」
「しかしです」
神宝がオズの国の人達に言いました。
「この国の人魚の人達がそうで何よりです」
「ええ、幸せじゃないと」
「このオズの国では」
「意味がないからね」
ジュリアはこう神宝に答えました。
「やっぱり」
「オズの国にいるのなら」
「そんな悲しいお話はあってはならないわ」
「あのお話をはじめて読んだのは子供の時だったよ」
モジャボロは悲しいお顔で言いました。
「いや、あの時は泣いたよ」
「そこまで悲しいお話だったんだね」
「うん」
ジャックにも答えます。
「本当にね」
「そうだったんだね」
「だからね」
「オズの国の人魚の人達でそんなことはなくて」
「本当に嬉しいよ」
そうだというのです。
「僕もね」
「モジャボロさんは笑顔が好きだしね」
「大好きだよ」
ただ好きでなく、というのです。
「本当にね」
「だからだね」
「うん、皆幸せでないと」
モジャボロにとってはです。
「僕は悲しいよ」
「それがモジャボロさんだね」
「そうなんだ」
「ええ、ただ最近ね」
ここでジュリアはこんなことを言いました。
「人魚の国がどうなっているか」
「そのことは?」
「ちょっとわからないから」
「長い間行っていないからだね」
「悪い風にはなっていないと思うけれど」
「そこまではわからないから」
「何とも言えないところはあるわね」
こうモジャボロにお話するのでした。
「女王さんもお元気だと思うけれど」
「そのことは間違いないにしても」
「ええ、具体的にはね」
「果たしてどうなのか」
「そこまでは言えないわ」
「じゃあそのことを確かめる為にも」
「ええ、人魚の国に行きましょう」
その目で確かめる為にもです。
「そうしましょう」
「そうだね、行こうね」
「ええ、皆で」
「それで、ですよね」
ジョージがここで言うことはといいますと。
「途中蜂蜜もですね
「そうそう、蜂蜜もね」
カルロスも言います。
「あれも食べないと」
「マンチキンにあるとても美味しい蜂蜜ね」
ナターシャも楽しみにしている感じです。
「それも楽しむことも目的だから」
「そちらにも行って」
恵梨香はナターシャに続きました。
「それからかしら、人魚の国は」
「蜂蜜は何処にあるんですか?」
神宝はジュリアにそちらのことを聞きました。
「それで」
「マンチキンの国の森があるでしょ」
「あっ、ひょっとして」
木樵はジュリアが森と言ったところではっとなりました。
「僕が昔仕事をしていた」
「そう、あそこなの」
「やっぱりそうなんだね」
「ええ、あそこに行ってね」
そしてというのです。
「蜂蜜作りの人からね」
「蜂蜜を頂くんだね」
「そのとても美味しい蜂蜜をね」
まさにというのです。
「そうなるわ」
「そうなんだね」
「木樵さんにとっては思い出深い場所よね」
「そうだね、今思うとね」
とてもとです、木樵は懐かしんでいるお顔でジュリアに答えました。
「ドロシーにも出会えたね」
「そうよね、それじゃあね」
「あの森に入って」
「蜂蜜を食べましょう」
「さて、蜂蜜がある場所はいいとして」
今度はかかしが言いました。
「問題は途中何があるかだね」
「オズの国だからですね」
「うん、何時何が起こるかわからない」
まさにとです、かかしは神宝にお話しました。
「それがオズの国だからね」
「だからですね」
「そう、そしてその時は」
「かかしさん達がですか」
「何とかさせてもらうよ」
「かかしさんの知恵と木樵さんの力とジャックのユーモアだね」
モジャボロは三人の能力をお話しました。
「これで解決出来ないものはないよ」
「そしてモジャボロさんの魅力もね」
ジュリアは微笑んでモジャボロに言いました。
「そういったものがあるから」
「僕もなんだ」
「そう、貴方もいてくれているから」
だからだというのです。
「何があっても大丈夫よ」
「では及ばずながらね」
「ええ、お願いね」
「その時はね」
皆で黄色い煉瓦の道を進みつつ明るくお話をしています、途御飯を食べたりして夜はテントの中で休んで。
都から離れた村に着きました、そこは。
緑の、エメラルドの都の村でした。お家も柵も何もかもが緑です。
その緑の村に入るとです、牧場のところででした。
一人の小さな男の子、緑の上着とズボンそれに靴の子が泣いていました。神宝はその子を見て言いました。
「あの子どうしたのかな」
「ううん、何かあったのは間違いないけれど」
「ちょっとわからないね」
「まずはあの子に聞いて」
「それから確かめないとね」
四人が神宝に応えました。
「まずはね」
「それからになるね」
「一体どうしたのか」
「そのことを聞いてから」
こうお話してでした、そのうえで。
五人は男の子にどうしたのか尋ねました、ですが。
男の子は泣くだけでお話が出来ません、するとです。
かかしはすぐに閃いてです、こう言いました。
「ここはジャックに任せよう」
「僕に?」
「そう、泣いている子には何がいいお薬かな」
「それは笑いだね」
「そう、笑いだからね」
だからというのです。
「ここは君のユーモアに期待したいけれど」
「うん、わかったよ」
ジャックはかかしの提案に笑顔で応えました、そしてでした。
男の子のところに来てです、にこにことしてでした。
おどけた踊りやカボチャの頭をコミカルに動かしたりピエロの様な芸を見せました。そうしたものを見ていますと。
自然とです、男の子はです。
泣き止んででした、そのうえで。
自然と笑顔になりました、ジャックは男の子が笑顔になったところで尋ねました。
「君はどうして泣いてたかな」
「うちの犬がいなくなったの」
「犬が?」
「うん、トニーがね」
男の子は犬の名前もお話しました。
「いなくなったの」
「トニーは君のお家の犬かな」
「うん」
そうだというのです。
「そうなの」
「それでトニーはどんな犬かな」
「緑の毛でね」
エメラルドの都の犬らしくというのです。
「とても大きいの」
「どれ位かな」
「僕と同じ位だよ」
小さな男の子と、というのです。
「大体ね」
「そう、君位だね」
「それで毛が長くて目が隠れているんだ」
「毛でだね」
「うん」
そうだというのです。
「そうした外見なんだ」
「わかったよ、名前はトニーでだね」
「大きくて毛が長くてね」
「緑色で目が隠れている」
「そうした犬なんだ」
「それじゃあ私達が探させてもらうわ」
ジュリアは困っている男の子を助けることをすぐに決めてです、その上で男の子に対して微笑んで言いました。
「そうさせてもらうわ」
「トニーを探してくれるの?」
「オズの国では皆そうでしょ」
法律で決まっていることですがそれ以前に誰もがすることです。
「困っている人は助ける」
「だからなんだ」
「ええ、そうさせてもらうわ」
是非にというのです。
「私達がね」
「有り難う、じゃあ一緒に探してくれる?」
「それじゃあね」
「それと君の名前だけれど」
ジャックは男の子のそれを尋ねました。
「何ていうのかな」
「ディックだよ」
「ディック君だね」
「うん、この牧場の子なんだ」
見ればかなり広い牧場です、その中には沢山の羊達がいてとてのどかに草を食べたり寝ていたりしています。
「トニーと一緒に牧場の番をしていたけれど」
「そのトニーがいなくなってだね」
「困っていたんだ」
「そうだったんだね」
「牧場の何処を探してもいなくて」
「そこに僕達が来て」
「うん、お話が出来たんだ」
そうだったというのです。
「今ね」
「よし、それじゃあ今から君のお友達を探し出してみせるよ」
かかしは確かなお顔でディックに約束しました。
「これからね」
「それじゃあ」
「今から探そうね」
こうしてでした、皆でディックの愛犬でありお友達でもあるトニーを探すことになりました。ですが探すにしてもです。
ジャックは首を少し傾げさせてです、かかしに尋ねました。
「トニーの外見は聞いたけれど」
「目立つと言っていいね」
「うん、大きくて毛が長くて目が隠れている」
「それだけでかなり目立つよ」
かかしも言います。
「それこそね」
「そうだよね」
「けれどね」
「けれどだよね」
「そう、ディックはこの村の子だけれど見付けられなかった」
ずっとこの村にいるその子でもです。
「この村のことは隅から隅まで知っている筈なのに」
「そんな子が見付けられないなんて」
「ちょっとやそっとじ見付けられないかもね」
「けれど絶対に見付けないと」
「僕達はディックに約束をしたからね」
「約束は絶対に守らないと」
「その通りだよ」
かかしもこう答えます。
「絶対に見付けるよ」
「具体的にはどうするの?」
「そう、ディックは村の隅から隅まで探したね」
このことをです、かかしはまた言いました。
「そうしたね」
「そうしたよ」
実際にとです、ディックも答えます。
「牧場も飼育小屋の中も倉庫も村のあちこちもね」
「そうだね」
「全部探したよ」
「じゃあお家の中はどうかな」
「お家の?」
「そう、お家の中はどうかな」
「あっ、そういえば」
言われてです、ディックもはっとなりました。
「お家の中は」
「探していないね」
「うん」
ディックは目を瞬かせながらかかしに答えました。
「そこまでは」
「そう、じゃあわかるね」
「トニーはお家の中にいるんだ」
「じゃあお家の中を探してみよう」
「今から行って来るよ」
そのお家の中にというのです、そしてです。
実際にお家の中に入っていきました、牧場の傍にあるそのお家にです。そうしてお家から出て来た時にはです。
ディックが言った通りの大きくて緑の長い毛を持っている目のところが毛で隠れた犬がディックと一緒に出てきました、そしてです。
ディックはその犬を連れて皆のところに来て言いました。
「いたよ、トニー」
「やっぱりね」
かかしはディックの言葉を受けて笑顔で応えました。
「犬はお家の中にいたね」
「まさかお家の中にいるなんて」
「いなくなった人、なくなったものはね」
「近くにいたりあったりするんだ」
「そうだよ、人は意外と手元や足元は見ないから」
それでというのです。
「気付かないからね」
「だからなんだ」
「そうだよ、だから君の犬もね」
そのトニーもというのです。
「近くにいたんだ」
「いや、実はお父さんとお母さんに呼ばれてね」
トニーがお話してきました。
「お家の中でおやつを食べてそのまま寝ちゃったんだ」
「それならそう言ってくれたらよかったのに」
ディックは口を尖らせてトニーに言いました。
「探したんだよ」
「御免ね」
「というかおやつって」
「うん、ちょっと早かったけれどね」
「それ食べていたんだ」
「そうだよ」
「けれど見付かってよかったよ」
ディックはこのことは心から喜んでいます。
「本当にね」
「かかしさんだからこそわかったことね」
ジュリアはかかしを見てうんうんと頷いています。
「その知恵で」
「いや、村のあちこちを探してもって聞いてね」
「それでなのね」
「いないとなるとね」
「身近かもって思ったのね」
「聞くところ目立つ外見だし」
実際にかなり目立つ外見でした、かかし達が見ても。
「本当にね」
「だからなのね」
「それで見付からないとなると」
「近くね」
「そこにいるかもって思ったんだ」
「そして実際にいたわね」
「本当に案外ね」
これがというのです。
「探している対象はね」
「近くにあったりするのね」
「ポケットに収めていても忘れているとか」
「あるから」
「そう、だからね」
「そこから考えてなの」
「そしてその通りだったね」
かかしはにこりとして述べました。
「トニーはいたわね」
「そうだったね」
「有り難う、じゃあ皆にお礼をしたいんだけれど」
ディックはにこにことして皆に言ってきました。
「いいかな」
「お礼というと」
「そう、おやつの時間だから」
それでというのです。
「今から皆に食べて欲しいけれど」
「そうしてくれるの」
「うん、いいかな」
こうジュリアにも言います。
「どうかな」
「是非そうして欲しいけれど」
ディックだけでなくトニーも言ってきました。
「僕のせいで迷惑をかけたし」
「今日はチョコレートケーキなんだ」
おやつはとです、ディックは皆にどうしたおやつなのかもお話しました。
「それをね」
「今からね」
「そう、食べてね」
「そこまで言ってくれるなら」
「うん、宜しくね」
こうしてです、皆は牧場の一隅に座ってでした、ディックが持って来たそのチョコレートケーキを食べました。
ケーキの色はエメラルドの都なので緑色です、そして味は。
「あっ、これは」
「美味しいね」
「うん、チョコレートの味がするね」
「それもとても甘くて」
「素敵な美味しさね」
五人はそれぞれケーキを食べてにこりとなりました。
「しかもたっぷりあるし」
「沢山食べられるね」
「このこともいいね」
「美味しくて沢山あるなんて」
「最高ね」
「うちはいつもこうなんだ」
ディックもにこにことしてケーキを食べつつ五人にお話しました。
「おやつも御飯もたっぷりなんだ」
「たっぷり食べないとだね」
「動けなくなって牧場のお仕事が出来ないからね」
だからとです、ディックはモジャボロに答えました。
「お父さんとお母さんがそう言ってなんだ」
「それでなんだね」
「いつもこうなんだ」
おやつはというのです。
「美味しいものをたっぷりなんだ」
「いいことだね」
「よく食べてよく働く」
「君のお家の決まりだね」
「そうだよ、ところで僕も皆のことは知ってるけれど」
ディックもというのです。
「冒険なのかな」
「ええ、そうなの」
ジュリアもケーキを食べています、そのうえでの返事でした。
「マンチキンの国まで行くの」
「ああ、マンチキンの」
「あそこに行くつもりなの」
「そうなんだね」
「そう、都からね」
「マンチキンの国は青だよね」
ディックはその色のお話をしました。
「そうだね」
「そうよ、あの国の色はね」
「そうだよね、この国は緑で」
「あの国の色は青よ」
「僕まだ他の国に行ったことがないから」
エメラルドの都以外の国にはというのです。
「だから聞いているだけだけれど」
「それなら何時かね」
「他の国に行ってみたらだね」
「いいわ」
ジュリアはディックにこりと笑って言いました。
「そうしたらね」
「うん、大きくなったらそうするよ」
「冒険もいいわよ」
ジュリアはディックにこのこともお話しました。
「行くと楽しいし色々なことを知ることが出来るし」
「だからなんだ」
「そう、行くといいわ」
「じゃあマンチキンの国にも他の国にも行って」
「色々見ていくのよ」
「そうさせてもらうね」
何時かはとです、ディックも笑顔で応えました。皆で食べていますが勿論かかしと木樵、ジャックは食べる必要がないので食べていません。一緒にいて楽しんでいるだけです。
そしておやつを食べ終わるとでした。皆で。
ディックとトニーに笑顔で別れました、そしてでした。
村を出てさらに東に進みます、そうしつつです。木樵が皆に言いました。
「明日はね」
「はい、マンチキンの国ですね」
「あの国に入りますね」
「そうなりますね」
「そうなるよ」
こう言うのでした。
「いよいよね」
「そうですね、本当に」
「明日はマンチキンですね」
「あの国に入りますね」
「うん、あの青さを見ると」
本当にとです、また言った木樵でした。
「ついつい笑顔になってしまうよ」
「僕もだよ」
かかしもお話に加わりました。
「あの国に入るとね」
「故郷に戻ってきた」
「だからね」
「そう思うからだよ」
うきうきとしている感じが出ています。
「本当にね」
「僕も一緒だよ、それじゃあね」
「一緒にマンチキンに入って」
「楽しくね」
「冒険をしようね」
「何ていいますか」
ここで神宝は自分の青い服を見てからこんなことを言いました。
「青っていいですよね」
「マンチキンの色だね」
「まさにその色だね」
「はい、僕は色では青が一番好きですから」
だからというのです。
「マンチキンの国も好きですよ」
「そういえば貴方達はそれぞれ好きな色が分かれてるわね」
ジュリアは神宝だけでなく他の子達も含めて述べました。
「そうよね」
「はい、僕は赤です」
ジョージは今もこの色の服を着ています。
「カドリングの国の色ですね」
「そして僕はウィンキーですね」
カルロスは黄色い服が大好きで他のものもそうです。
「そうなりますね」
「私は黒だからオズの国の色にはない色だけれど」
ナターシャの黒のゴスロリはオズの国でも変わりません。
「確かに私の色ね」
「私もナターシャと同じね、オズの国の色じゃないわ」
最後に恵梨香は自分のピンクの服を見ました。
「それでもピンクが色になってるわね」
「そうでしょ、それぞれの色があるわね」
ジュリアは五人も含めて言いました。
「それぞれで」
「そうなんですよね」
神宝がジュリアに応えました。
「それぞれの色があるんですよね、僕達は」
「オズの国に入る前からよね」
「はい、それぞれ好きな色がありまして」
「その色で服や持っているものを統一してるのね」
「大体そうです」
「それってオズの国向きよ」
ジュリアはにこりと笑ってこう神宝にお話しました。
「一つの色がイメージカラーになるのも」
「そうなんですね」
「そうよ、そういえば私もね」
「ジュリアさんもですね」
「ピンクが多いわ」
着ている服や持っているものはです。
「恵梨香と同じね」
「オズの国ではピンクの色の国はないけれど」
ジャックが言ってきました。
「その人ではいるよね」
「例えばオズマ姫は白ね」
「そう、オズマの着る服はね」
ジャックはジュリアに応えて述べました。
「白だよね」
「そうなのよね」
「その人それぞれの色はあるよね」
「それもまたオズの国よ」
「国それぞれ、人それぞれで色がある」
「それもまたね」
「僕の色は緑だね」
モジャボロが着ている服は実際にこの色でした。
「この色が一番好きだしね」
「僕は青でね」
「僕は銀色だね」
かかしと木樵は自分達の服や身体を見て確認しました。
「強いて言うのなら」
「そうなるね」
「僕はオレンジかな」
ジャックは自分のカボチャの頭とオレンジのズボンから言いました。
「上着はダークパープルだけれどね」
「本当にそれぞれの色があるのがね」
笑顔で、でした。ジュリアはこうも言いました。
「オズの国らしいわ」
「それで僕達もですね」
「ええ、オズの国らしいわ」
「じゃあ人魚の国の色は」
「海だからマリンブルーかしら」
笑顔になってです、ジュリアは神宝に答えました。
「そうなるかしら」
「あの国はそうですか」
「ええ、海にいてあの人達の脚もそうした色が多いから」
「だからですね」
「マリンブルーかしらね」
その色ではというのです、色のお話もしつつです。皆はエメラルドの都からマンチキンの国に入るのでした。
人魚の国へと。
美姫 「ちゃんと途中で蜂蜜は食べるみたいね」
まあ、最初の目的はそれだったしな。
美姫 「今度の冒険は何が待っているのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。