『オズのアン王女』
第十二幕 林檎と卵
十二時まで時間があります、それでです。
アンは皆と十二時まで王宮のトレーニングルームで卓球をしようと言いました、皆もそれならと応えてです。
皆で卓球を楽しみます、その中で。
アンはカリフ王と卓球をしつつです、カリフ王に言いました。
「ノーム族は最初は卵はね」
「うむ、見るだけでな」
「駄目だったわね」
「卵を産む鳥さえな」
「ビリーナもそうだったわね」
「うむ、怖くて仕方がなかった」
それこそというのです。
「かつてはな」
「そこまでだったわね」
「怖くてだ」
それこそというのです。
「見たくもなかった」
「卵に触れただけで死んでいたし」
「それ程だったからな」
「じゃあ今は」
「そこまではいかなくなった」
「完全にオズの国の住人になってね」
「うむ、死ぬことはなくなった」
オズの国の住人は死にません、オズの国が大陸全土はおろか地下にまで至ったのでそうなったのです。
「卵に触ってもな」
「触っても平気よね」
「今ではな、だが」
「食べるとなのね」
「これが駄目だ」
「アレルギーね」
「かなり重度のな」
死ななくなってもというのです。
「そうなってしまうからだ」
「卵も卵料理も食べられなくて」
「料理に卵を使っていてもだ」
「駄目なのね」
「そうだ、だから我々の料理には卵を使わない」
それも一切です。
「そうだった、しかしな」
「それでもなのね」
「若しもあの林檎が卵アレルギーを無効化してくれるなら」
それならというのです。
「有り難いことだ」
「卵の味は好きなの?」
「いや、好きと言われてもだ」
それでもというのです。
「食べたことがないからな」
「それで、なのね」
「美味いかどうかはだ」
「知らないの」
「何しろ食べたことがないのだ」
昔は触れただけで死んで今は重度のアレルギーになってしまうからです、アレルギーになることはノーム族がオズの国の住人になった時にオズマに教えてもらって知っています。
「美味いというが」
「ええ、卵料理は実際にね」
「美味いのか」
「美味しいわよ」
アンは卓球のスマッシュを放ちつつカリフ王に言います、二人共相手のボールを左右に動きつつリズミカルに打ち返しています。
「オムレツも何でもね」
「そうなのか」
「そうよ、実際にね」
「では食べてみたいな」
「若しアレルギーになったら」
審判役のグリンダも言ってきます。
「お薬があるから」
「グリンダさんが持っているのか」
「若しもの時を考えてね」
「持って来たのか」
「そう、だからね」
それでというのです。
「安心してね」
「林檎に効果がなくてもだな」
「ええ、それでもね」
「わかった、ではな」
「備えはしてあるから」
「まずは卵料理を食べよう」
「食べてすぐによ」
それこそというのです。
「林檎を食べるのよ」
「そうすればいいのだな」
「それでアレルギーは無効化出来る筈よ」
「そして無効化出来なかった場合の備えもあるからか」
「安心して食べてね」
今はというのです。
「そうしてね」
「わかった、ではな」
「ただ、お薬だからとても苦くてまずいから」
だからというのです。
「アレルギーに効いてもね」
「今まで我々にも紹介しなかったのか」
「アレルギーが出てから飲むものだし」
「出ては意味がないからな」
「そうでしょ」
「うむ、そうだな」
「やっぱり林檎が効いてくれたらね」
それならというのです。
「それがベストよ」
「全くだな」
「ではね」
「うむ、是非な」
「林檎を食べてね」
「卵料理の後でな」
「それでどんなお料理なの?」
アンとカリフ王の試合を見ているドロシーはアンに尋ねました、得点も一進一退で見事に拮抗しています。
「卵料理は」
「オーソドックスにオムレツよ」
「それなの」
「それがメインで出るから」
「そうあのね」
「ゆで卵の入ったサラダにカルボナーラも出るわ」
このスパゲティもでした。
「卵が入っているわね」
「そういえばそうね」
「あえて卵尽くしにしてね」
「林檎が効くかどうか」
「確かめるのよ」
「喜んで食べよう」
カリフ王は毅然として言いました。
「卵料理も林檎もな」
「味も楽しんでね」
「そうさせてもらおう」
味についてもです、カリフ王はにこりと笑って答えました。
「是非な」
「美味しいわよ」
「そこまでか」
「ええ、オムレツもカルボナーラもね」
「そしてゆで卵もか」
「そうなの、あとね」
こうしたこともお話したアンでした。
「生卵をそのまま飲む人もいるわよ」
「あっ、ボクサーの人ですね」
ジョージがすぐに応えました、五人はドロシーと一緒に試合を観戦しています。
「朝御飯に何個も飲みますね」
「映画であったね」
カルロスも言います、その映画を知っているので。
「それからランニングに出るんだね」
「あれはびっくりしたよ」
神宝もその映画のお話に入ります。
「まさかああして食べるなんてね」
「飲むというか」
ナターシャも不思議な感じだと言います。
「一気にお腹の中に入れるから」
「御飯にかけて食べるのならわかるけれど」
恵梨香は卵かけ御飯のお話をします。
「ああした食べ方は普通はしないわね」
「けれどそうした人もいるのよね」
ドロシーは五人にあらためて言いました。
「世の中には」
「そうですね」
「映画のことですけれど」
「真似した人も多いっていいますし」
「ああした卵の食べ方もありますね」
「そうなんですね」
「僕は恵梨香の卵かけ御飯もびっくりだよ」
トトが言うにはです。
「そんな食べ方もあるんだってね」
「外国の人はよくそう言うのよね」
「実際にそうだから」
まさにというのです。
「僕も恵梨香が朝御飯で食べるの見てびっくりしたよ」
「そうそう、あの食べ方もね」
「凄いよね」
「そんな御飯の食べ方あるのかって」
「お話は聞いていたけれど驚いたわ」
ジョージ達四人も恵梨香に言うのでした。
「暖かい御飯に生卵をかけてね」
「お醤油をかけて生卵と御飯をかき混ぜて食べるなんてね」
「他の国にはないから」
「そう、とてもね」
「ううん、美味しいけれど」
恵梨香は微妙なお顔になって言います。
「皆あまり食べないのよね」
「だから生卵自体あまり食べないから」
「お料理にはしてもね」
「そうして御飯にかけるなんてとても」
「想像も出来なかったから」
日本以外の国ではと言う四人でした、このことはどうしてもでした。
そうしてそうしたお話をしてです、アンはカリフ王に打ち返してから言いました。カリフ王も見事に打ち返します。
「私もそれはね」
「卵かけ御飯はですか」
「食べたことがないわ」
「そうですか」
「生卵もね」
それ自体もというのです。
「食べないから」
「そうですか」
「やっぱりお料理をしてよ」
そうしてというのです。
「食べるから」
「映画であってもですか」
「そうしようとは思わないわ」
「私もそうね」
ドロシーもでした。
「オムレツも目玉焼きも好きだけれど」
「それでもですか」
「生では食べないわね」
「皆で是非一度は」
「卵かけ御飯をなの」
「食べてみれば」
「それもいいかも知れないわね」
アンが興味を持つとです、カリフ王はこう言いました。
「余はやってみたくなった」
「それじゃあ」
「このお昼にな」
「そうしてですか」
「食べてみるとしよう」
こう言うのでした。
「実際にな」
「そうされますか」
「御飯の上に生卵をかけるのだな」
「はい、お碗の中の御飯の上にです」
「そしてお醤油をかけてか」
「御飯も卵も一緒にかき混ぜて食べます」
「わかった、ではな」
カリフ王は恵梨香に確かなお顔で応えました、ただ目は今も勝負に向いています。相変わらず互角の勝負が続いています。
「お昼にそちらも食べよう」
「そうしてですね」
「味も楽しもう」
「是非そうされて下さい」
「ではな、しかし日本という国は」
こんなことも言ったカリフ王でした。
「実に変わった食文化の国だな」
「そのことよく言われます」
「生のお魚やお肉を食べるしな」
「すき焼きですね」
「他にも独特なお料理が多くてな」
それでというのです。
「実に変わっている、お味噌汁もな」
「あれもですか」
「最初見てこれはと思った」
「美味しいですよね」
「美味いがな」
それでいて、というのです。
「不思議なものだ」
「そうなんですね」
「あの調味料をあの様にして使うとはな」
そのことがというのです。
「独特だ、朝食べることも多い」
「朝に飲むと特に美味しいんですよね」
「そうだな、ではこのお昼はだ」
「卵かけ御飯もですね」
「食べるとしよう」
こう言ってアンに打ち返します、ですがアンはまた打ち返します。しかしここで大佐がご自身の時計を見ながら皆に言いました。
「時間です」
「十二時ですか」
「十一時五十五分です」
大尉に答えました。
「その時間です」
「わかりました」
「ではーー皆さん」
チクタクもここで言います。
「食堂にーー行きまーーしょう」
「そうしましょう」
アンはカリフ王のボールをラケットを持っていない左手で掴んで言いました、無意識のうちにやったそれは的確な動きでした。
「今からね」
「うむ、ではな」
「卵料理を食べましょう」
「そして林檎をな」
「その後で食べましょう」
卵料理の後で、です。カリフ王はあえて自分が試食をして効果を確かめようというのです。勇気を胸に持って。
そうしてまずはです、ゆで卵が入ったレタスとセロリ、ブロッコリーとキュロットのサラダを食べます。アンは隣の席の王様に尋ねました。
「怖くない?」
「食べるにあたってだな」
「昔は触るだけで死ぬ様なものだから」
「確かに怖い」
カリフ王もそれは否定しませんでした。
「実際にな」
「やっぱりそうよね」
「しかしだ」
それでもというのです。
「王には勇気が必要だ」
「だからだというのね」
「そうだ」
だからこそ、というのです。
「余は食べよう」
「恐怖に勝つのね」
「それはもう出来ている」
既にというのです。
「では食べよう」
「まずはサラダをね」
「そうするとしよう」
こう言ってです、カリフ王はオニオンドレッシングをかけたそのサラダを食べました。勿論ゆで卵もです。
そしてです、一口食べてから笑顔で言いました。
「美味いな」
「ゆで卵がなのね」
「うむ、美味い」
こうアンに言うのでした。
「これはいい」
「そう、それじゃあね」
「さらに食べさせてもらおう」
「美味しいと思うのならね」
「まずは合格だな」
「ええ、後はね」
「アレルギーがどうなるか」
「それ次第ね」
「そうだな、ではな」
「さらにね」
「食べるとしよう」
こう言って実際にでした、カリフ王はサラダを食べてでした。
それからカルボナーラも食べます、このスパゲティにはしっかりと卵が入っていますがこちらにもでした。
「美味い」
「こちらもなのね」
「スパゲティは元々好きだったが」
それでもというのです。
「これもな」
「実になのね」
「いいものだな」
「そう言ってくれるのね」
「これからも食べられればな」
林檎が効けばです。
「食べていきたい」
「カルボナーラも」
「そうしていきたいものだ」
こう言ってです、カルボナーラを食べるのでした。そしてです。
いよいよです、メインのオムレツですが。
ケチャップをlかけたそのオムレツを食べてです、カリフ王は笑顔で言いました。
「これもまた、だ」
「美味しいのね」
「うむ、出来ればだ」
アンにこう答えます。
「これは時々でもな」
「食べたいのね」
「そう思える」
そこまでのものだというのです。
「これはいい」
「そうなのね」
「むしろ卵を食べられるのならだな」
「そう、オムレツもね」
当然のこととです、アンも答えます。
「食べられるわ」
「それがどうなるか」
「これから次第ね」
「うむ、ではこのオムレツの後は」
カリフ王は今はオムレツを食べつつ言うのでした。
「卵かけ御飯だ」
「恵梨香の言ってたそれを食べるのね」
「そうする」
こうアンに断言するのでした。
「是非な」
「ではね」
「うむ、オムレツにだ」
それにでした。
「そちらも食べよう」
「ではね」
「楽しませてもらう」
こう言って実際にでした、オムレツの後で。
カリフ王はその卵かけ御飯も食べました、ジョージ達はカリフ王がお碗の中の御飯の上に生卵を入れてです。
上にお醤油をかけてからかき混ぜるのを見てです、真剣なお顔で言いました。
「これなんだよね」
「うん、日本人の食べ方でも独特の」
ジョージと神宝がまず言いました。
「卵の食べ方だよね」
「御飯でもそうだよね」
「他にカレーにもするよね」
「ええ、そうね」
カルロスとナターシャもお話します。
「やっぱりかき混ぜて」
「そうして食べるんだよね」
「本当にこの食べ方は」
ドロシーも言います。
「日本独特ね」
「美味しいの、よね」
アンもその卵かけ御飯を見ています。
「どうやら」
「はい、ですからカリフ王にもお勧めしました」
恵梨香はにこりとしています。
「是非にと」
「では食べてみよう」
そのカリフ王の言葉です。
「これからは」
「はい、それじゃあ」
「今から食べる」
こう宣言してでした、カリフ王はその卵かけ御飯を食べてみました。お箸を使ってそうして一口食べてです。
カリフ王はにこりと笑って言いました。
「美味い」
「そうですか」
「これはかなりいいな」
「美味しいですよね」
「新鮮な卵でないと無理そうだが」
それでもというのです。
「これもまた美味い」
「はい、ですからよかったら」
「これからもだな」
「召し上がられて下さい」
「アレルギーにならないならな」
それならと答えたカリフ王でした。
「これからも食べよう」
「それじゃあ」
「さて、卵かけ御飯まで食べるとだ」
いよいよという口調で言ったカリフ王でした。
「あの林檎を食べるか」
「そうしてね」
グリンダはカリフ王にパンを食べつつ言いました。
「是非」
「うむ、それではな」
「食べてね」
そうしてというのです。
「本当にすぐにわかるから」
「アレルギーが出ないのだな」
「そうよ、ノーム族の卵アレルギーは大体食べてすぐ、遅くとも一時間位で出るわね」
「それ位だな」
「それで出なかったらね」
林檎を食べた後で、です。
「大丈夫よ」
「うむ、ではすぐに食べよう」
カリフ王は卵かけ御飯をにこにことして食べます、そうしてからです。
その五色の林檎、皮はそのままで芯から切り取って六つに分けられたそれを一切れずつ食べます。それがカリフ王のデザートで。
食後一時間の間皆と談笑しつつ様子を見ていましたが。
何もありませんでした、湿疹等の身体の異常は出ませんでした。それで皆に笑顔でこう言いました。
「この通りだ」
「はい、すぐに出なくて」
「大丈夫ーーでしたーーね」
大尉とチクタクも見て応えます。
「よかったですね」
「これでーーノーム族もーーこれからーーは」
「うむ、卵を食べられる」
笑顔でです、カリフ王は二人に答えました。
「我々は卵を克服したのだ」
「そうなったわね、そしてね」
グリンダは小躍りせんばかりになっているカリフ王に言いました。
「これからね」
「うむ、林檎をだな」
「増やすわ」
「種を蒔いてか」
「その種に魔法をかけてね」
「一気に木にしてか」
「その林檎の木からまた実を取って」
そうしてというのです。
「その実の種を蒔く」
「それを続けると」
「あっという間に増えるわ」
その林檎がというのです。
「そうなるわ」
「そうだな」
「そしてその林檎と種を」
その二つをというのです。
「ノームの国に持って帰ってね」
「我々でもだな」
「栽培していくといいわ」
「わかった、ではな」
「そしてこの国でもなのね」
アンも言いました。
「五色の林檎をこれからも」
「ええ、育てていけばいいわ」
「わかったわ」
「新種の林檎としてね」
「そうなるわね」
「黄金の林檎は非常に少ないけれど」
とにかく育たず増えないのです、やはりこの林檎は特別です。オズの国でも極めて稀少なものなのです。
「それでもね」
「この林檎は増やせるのね」
「普通の林檎と同じ位にね」
「わかったわ、じゃあ五色の林檎も育てて食べていくわ」
「そうしてね」
こうしたお話をしてです、実際にです。
一行はウーガブーの国の林檎園の空いている場所に行ってです、そのうえで種を蒔いてそこにグリンダが杖から黄色い小さな無数の星をかけますと。
種達はあっという間に木になって実が実りました、種の数だけ木がなって食べられる人が一個ずつ林檎を取って食べてです。
その林檎の種を全て蒔いてまたグリンダが魔法をかけるとです。あっという間に五色の林檎の林檎園が出来ました。
もう一回それをするともう見事なものでした、アンはその林檎園を見てグリンダに明るい笑顔で言いました。
「もう後はね」
「ウーガブーの国で充分に育てられるわね」
「充分過ぎる程よ」
こうグリンダに答えました。
「だってウーガブーの国は優秀な農民揃いなのよ」
「貴女も含めてね」
「特に林檎は得意中の得意だから」
それでというのです。
「安心していいわ」
「それではね」
「ここから増やしていくわ」
「そして我々もだな」
カリフ王はその手にある林檎と種達を見つつ言いました。
「この実と種から」
「そうよ、林檎園が出来るわ」
「我々を卵の友達にしてくれる」
「その林檎をね」
グリンダはカリフ王にもお話します。
「だから育てていってね」
「そうさせてもらおう」
「是非ね」
「若しわからなかったり困ったことがあったら」
アンはカリフ王にこうも言いました。
「何時でもね」
「この国に来てか」
「相談しに来てね」
「わかった、ではこれからはな」
「これまで以上にね」
「ノームの国とウーガブーの国は親交を深めることになるな」
「友好国同士としてね」
これまで以上にというのです。
「やっていきましょう」
「それではな」
「仲良くね」
「林檎以外のことでもだ」
他の分野でもと言ったカリフ王でした。
「そうしていこう」
「じゃあお互いの国民の相互訪問とかもしていって」
「楽しく仲良くやっていこう」
「そうしていきましょう」
アンとカリフ王は握手もしました、両国との絆はこれまで以上に深まりました。そうしてカリフ王は数個の林檎と数えきれないだけの種を貰ってでした。
皆と笑顔で手を振り合って地下を進める車に乗って帰りました、そのカリフ王を見送ってからです。グリンダも言いました。
「では私もね」
「これでなのね」
「ええ、カドリングの国に帰るわ」
そうするというのです。
「やるべきことが終わったから」
「帰るのね」
「また会いましょう」
グリンダはアンに笑顔で言いました。
「機会があればその時代に」
「それではね」
「では私も」
大佐も言います。
「帰ります」
「ヘリコプターはそのままね」
「はい」
大佐はグリンダに毅然とした声で答えました。
「そうです」
「ではそのヘリコプターに乗ってね」
「そうしてですね」
「帰りましょう」
「操縦は私がします」
大佐がというのです。
「行きにそうした通りに」
「そういえば大佐はお一人で来られてましたね」
ジョージは大佐の言葉からこのことを思い出しました。
「ウーガブーの国まで」
「はい、ヘリコプターを操縦して」
「そうでしたね」
「ヘリコプターの操縦も出来ますので」
「馬術や剣術以外に」
「それで来ました」
「そうだったんですね」
「そして今度はグリンダ様をお乗せして」
そうしてというのです。
「カドリングの国に帰ります」
「そうしますか」
「はい、そうして」
そのうえでというのです。
「また機会があれば」
「お会いしましょう」
「是非」
「大佐と一緒にいられて楽しかったよ」
トトはドロシーの足元からにこにことして言いました。
「真面目で気配りが出来て」
「いえ、私は別に」
大佐はトトの言葉にお顔を気恥かしそうに赤くさせて応えました。
「そうしたことは」
「そうした人じゃないっていうのかな」
「はい」
そうだというのです。
「気配り等は」
「この娘はカドリングでも最も優しい娘の一人よ」
ここでグリンダが皆に大佐のそのことをお話しました。
「誰に対しても真面目で公平でね」
「礼儀正しくてね」
「凄くいい娘よ」
「そうだよね」
トトもその通りだと言います。
「大佐はね」
「だから私も頼りにしているわ」
「頼りなどと恐れ多い」
また言った大佐でした、今度はグリンダに。
「ですが操縦は」
「しっかりとね」
「王宮までさせて頂きます」
カドリングの、です。
「これからは」
「それじゃあね」
「今から乗りましょう」
「では皆また会いましょう」
笑顔でです、グリンダは皆に別れの挨拶を言いました、大佐も敬礼をしてそうしてまたお会い出来る日をと言ってです。
ヘリコプターに乗りました、皆は飛び立つヘリコプターに手を振って別れました。こうしてグリンダと大佐も帰って。
全てが終わってからです、アンは皆に言いました。
「これで全部ね」
「ええ、終わったわね」
ドロシーはアンに笑って応えました。
「予言のことも」
「いい予言だったわね」
「オズの国のね」
「悪いことは起きない国にしても」
「やっぱり気になっていたのね」
「そうならなくてよかったわ」
少なくとも悪い結果にはならない、それがオズの国なのです。それまでにどれだけ騒動やトラブルが起ころうとも。
「本当に」
「そうよね」
「外の世界の予言っていいますと」
ジョージが言うその予言はといいますと。
「悪い予言ばかりなんですよね」
「そうそう、戦争とか人類滅亡とかね」
カルロスはそのジョージに応えました。
「そんなのばかりだよね」
「宇宙人とか世界を影で操る組織とか」
神宝はその人類滅亡の担い手を具体的に挙げました。
「災害とかね」
「ノストラダムスとかエドガー=ケイシーとか」
ナターシャは予言者の名前を出します。
「そうした人達の予言ね」
「何か予言っていうと人類滅亡なのよね」
恵梨香も言います。
「私達の世界では」
「昔それこそスプーンが落ちたら人類滅亡って騒ぐ漫画があったらしいね」
ジョージはこんなこともお話しました。
「日本に」
「それどんな漫画なの?」
「はい、聞いたところではです」
ジョージはアンに応えてその漫画のお話をします。
「漫画雑誌の編集者の人達が主役で」
「その人達がなの」
「本当にそれこスプーンが落ちただけで」
そうしたレベルの些細なことで、です。
「人類滅亡の予言だ、宇宙人だ、世界の影の政府だ、ノストラダムスだって喚いていたらしいです」
「凄そうな漫画ね」
「前に言った話が次の話では無視されるのは普通で」
過去を振り返らないというのでしょうか。
「一九九九年七月に人類は何度も滅亡することになるっていう」
「そんな漫画なの」
「そうだったみたいです」
「今は二十一世紀だから」
アンはここまで聞いて言いました。
「その予言は外れたわね」
「そうですよね」
「人類は今も残っているわ」
「そうですよね」
「悪い予言ばかり言って」
そうしてです。
「全部外れたのね」
「そうしたことになりますね」
「悪い予言ばかり言う人は」
こうも言ったアンでした。
「それはそれでおかしいのね」
「ううん、おかしな人だから」
「あまり聞かなくていいわよ」
「そうなりますか」
「そんなすぐに滅亡だとか言っても何にもならないわ」
それこそというのです。
「だからそうした予言は気にしないでね」
「やっていくといいんですね」
「そもそもその人の言う予言って当たったことがあるの?」
「何か起こってから予言されていたっていうのがいつもだったとか」
「そういうものよ、悪い予言を言う人はね」
「悪いことが起こってからですか」
「言うものよ、いいことを言う人はね」
そうした予言をする人はといいますと。
「最初から言うものよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
「いい予言を聞いて」
「悪い予言は事前に対策を用意しておけばいいのよ」
「それだけですね」
「ええ、後から予言されていたとかいう人は気にしない」
起こってから言う人はです。
「それでいいのよ」
「成程」
「ただその漫画は一度読んでみたいわね」
興味も持ったアンでした。
「どんなものか」
「人によってはギャグ漫画だっていいます」
「笑える漫画なの」
「そうみたいです」
「そうした漫画なのね」
「僕も聞いてるだけですが」
「無責任に滅亡を煽ってるのなら」
そうした場合はといいますと。
「罪があるわね」
「そうですか」
「そうでなくて言ったらおかしな人だし」
「何でも滅亡滅亡だって言ってると」
「破滅願望っていうの?」
アンは首を傾げさせてこの言葉を出しました。
「オズの国にあるかしら」
「こうした言葉が」
「ええ、あるのかしら」
こう言うのでした。
「オズの国に、今言ったけれど」
「オズの国でそうした考えはないわね」
ドロシーがアンに答えました。
「皆前向きだから」
「そうよね」
「滅亡だ破滅だっていうよりは」
「前に進んでいるわね」
「そうした世界だから」
「そんな人もね」
「いないわ」
その漫画の主人公の人達みたいにスプーンが落ちただけで人類滅亡だと言う様な人はそれこそです。
「実際にね」
「そうよね、まあお話はこれ位にして」
「そうしてよね」
「遊びましょう」
「今から」
「そうしましょう」
こうお話してです、そしてでした。
皆は実際に午後の遊びに入りました、この日は野球をして遊びましたがその野球が終わってです。晩御飯の前にです。
ドロシーの携帯が鳴って出るとです、オズマからでした。オズマはドロシーに対して明るい声で言ってきました。
「無事に終わったわね」
「ええ、今日のお昼にね」
「何よりよ」
オズマは電話の向こうでにこにことしていました、声にそれが出ています。
「本当にね」
「いい予言でね」
「その予言がいい結果に終わって」
「ええ、私も今とても嬉しい気分よ」
「そうよね、それでだけれど」
「それで?」
「こちらには何時帰って来るの?」
オズマはドロシーにこのことを聞くのでした。
「それで」
「そのことね」
「ええ、何時になるのかしら」
「それはね」
オズマのその質問にです、ドロシーはこう答えました。
「多分だけれど」
「今日はそちらにまだお邪魔して」
「明日にね」
「帰るのね」
「そうなると思うわ」
これがオズマへの返事でした。
「途中大尉はウィンキーの国でお別れしてね」
「あの人のお家に帰って」
「そして私は他の皆と一緒にエメラルドの都に帰るわ」
「わかったわ」
オズマはドロシーの返事に笑顔で応えました。
「では待っているわね」
「ええ、そうしておいてね」
「貴女が帰ったら」
それからのこともです、オズマはお話しました。
「パーティーよ」
「それを開いてくれるのね」
「貴女達が帰って来たお祝いにね」
まさにそれでというのです。
「それを開くから」
「だからっていうのね」
「楽しみにしておいてね」
エメラルドに帰ってきたその時はというのです。
「是非ね」
「わかったわ、それじゃあね」
「その時のことを楽しみにして」
「帰るわね」
二人でお話をしてでした、そのうえで。
オズマはドロシーに再会を楽しみにする言葉を贈ってでした、電話を切りました。ドロシーはそのお話の後で、でした。
皆に電話でのやり取りのことをお話します、そうしてアンに言いました。
「そういうことでね」
「ええ、わかったわ」
「明日にね」
「ここを発つのね」
「そうさせてもらうわ」
こう言いました。
「そういうことでね」
「わかったわ、ただね」
「ただ?」
「明日までは遊びましょう」
「ええ、そうね」
ドロシーはアンのその言葉に笑顔で応えました。
「それじゃあね」
「仲良く遊んで」
「明日は笑顔でお別れしましょう」
「また会う時を楽しみにして、そして」
アンはドロシーにこうしたことも言いました。
「お別れの時のお土産、楽しみにしておいてね」
「お土産?」
「そう、今いいこと思いついたから」
こうドロシーに言うのでした。
「そうしておいてね」
「そのこともわかったわ、それじゃあね」
「そのこともなのね」
「楽しみして」
「そうしてなのね」
「今は遊びましょう」
「わかったわ、それじゃあね」
こうしてでした、皆はこの日は心から楽しく一緒に遊びました。そしてその遊んだ次の日の朝に皆は朝御飯を食べてお別れとなりますが。
その時にです、アンは皆に笑顔で言いました。
「お土産だけれど」
「それはといいますと」
「これよ」
皆にアップルパイを出すのでした。
「実はグリンダさんにも同じものを渡したの」
「そうだったんですか」
「ええ、実はね」
大尉にお話します。
「そうしていたの」
「そして私達にもですね」
「ええ、お土産よ」
「わかりました、それでは有り難くお受けします」
「とはいっても大尉とチクタクは食べないから」
アップルパイだけでなく他の全ての食べものをです。
「だから身体に差す油をプレゼントするわ」
「おお、有り難うございます」
「感謝ーーします」
大尉だけでなくチクタクも応えます。
「それではーーです」
「使わせて頂きます」
「そうしてね、そしてまたこの国に来た時は」
その時のこともです、アンはお話するのでした。
「今回みたいに一緒に楽しみましょう」
「うん、その時のことを楽しみにしながらね」
今度はトトが応えました。
「今は笑顔でお別れしようね」
「人は再会の時まで最後に見たその人の表情を覚えているから」
だからと言うドロシーでした。
「皆笑顔でね」
「お別れしましょう」
「また会いましょう」
ドロシーはアンににこりと笑って別れの挨拶をしました。
「その時を楽しみに」
「ええ、お互いにね」
「ではまた」
「またお会いしましょう」
「またこの国にお邪魔します」
「その時を楽しみにして」
「今はさようならです」
ジョージと神宝とカルロス、それにナターシャと恵梨香もアンに別れの挨拶をしました。そしてそのうえでなのでした。
笑顔で、です。アンに頭を下げました。そしてドロシーとアンが抱き合ってです。
皆はアンと別れてお互いに手を振り合ってエメラルドの都に戻るのでした。今回の楽しい冒険と出来事のことを胸に抱いたまま。
オズのアン=アンヤコレヤ 完
2016・11・11
予言の件も無事に終わったし。
美姫 「これでノーム族の卵アレルギーも」
実際にカリフ王には効果があったしな。
美姫 「上手に育てられると良いわね」
だな。今回の冒険もこれで終わりか。
美姫 「酷い事が起こらなくて良かったわ」
確かにな。
美姫 「今回も投稿ありがとうございました」
ありがとうございます。