『オズのアン王女』




                 第十一幕  グリンダが語ること

 グリンダが来る日の朝です、アンは朝御飯のデザートの林檎を食べながら同席している大佐に尋ねました。
「グリンダが来たらなのね」
「はい、あの方のお口からです」
 大佐はお食事の時もぴしっとしています、フォークとナイフを折り目正しく使っていて音一つ立てていません。
「お話されます」
「そうなのね」
「あの、ひょっとしてね」
 ここでトトが大佐に尋ねました。
「グリンダさんから語られることがね」
「この国で起こることかしら」
「そうかもね」
 こうアンに言うのでした。
「ひょっとしたら」
「そうかしら」
「今回のことはグリンダさんの予言だからね」
「だったらグリンダさんがわかる」
「ご自身の予言を調べてね」
 そうしてというのです。
「わかるものじゃないかな」
「そうね、言われてみればね」
「グリンダさんが来たらね」
「若しこの国で起こることがカリフ王の来訪でないとしたら」
「その場合はね」
 まさにというのです。
「グリンダさんが来たらわかるよ」
「それじゃあ」
「うん、グリンダさんを待とうね」
「そうするわね」
 アンはトトに林檎を齧りつつ答えました、林檎はこの時も美味しかったです。そして朝御飯を食べた後でした。
 アンは今王宮に来ている皆にです、強い声で言いました。
「では皆いいわね」
「ええ、今からね」
「グリンダさんが来られるから」
 ドロシーに応えて言いました。
「おもてなしをしましょう」
「そうね、何時来るかは」
「はい、九時です」
 大佐が時間のことをお話しました。
「その時間にです」
「カドリングの国からなのね」
「瞬間移動の魔法を使われて」
 所謂ワープの魔法をというのです。
「来られます」
「それはあのベルト?」
 ドロシーは最初にこの国に来た時のことを思い出しました、その時はグリンダがくれたそのベルトでカンサスに帰っています。
「あのベルトで来るの?」
「いえ、ご自身で呪文を唱えられて」
「それでなの」
「来られます」
 このウーガブーの国までというのです。
「そうされます」
「そうなのね」
「ですから」
 それでというのです。
「ベルトではないです」
「わかったわ」
 ドロシーも大佐の説明に納得して頷きました。
「それじゃあね」
「魔法も日進月歩ですからね」
 大尉は腕を組んでこうしたことを言いました。
「道具を使うだけでなく呪文を唱えるものも出来ていて」
「そうなのよね」
「グリンダさんやオズマ姫はそういした魔法も使われますね」
「最近はよくね」
「そうですね」
「魔法使いさんはそうした魔法よりもね」
 オズの国の偉大な魔法使いの一人でありかつては国家元首だったこの人はといいますと。
「道具を使ったり手品や器具からやっていく魔法が多いわね」
「あの方はーー今もーーですーーね」
 チクタクも言います。
「そうーーですーーね」
「ええ、あの人の個性ね」
「そしてグリンダさんがね」
 トトが言うことはといいますと。
「呪文を唱えてここに来るんだね」
「そうです」
 大佐はトトにも礼儀正しいです。
「もう暫くお待ち下さい」
「さて、ではね」
 アンは大佐の言葉を聞いて腕を組んでです、考えるお顔で言うのでした。
「九時には国の正門に行きましょう」
「いえ、八時五十五分です」
 大佐は九時と言ったアンに強い声で進言しました。
「その時間にはこの国の出入り口にです」
「皆でなの」
「行きましょう」
「五分前なの」
「はい」
 まさにというのです。
「その時間にはです」
「あの場所に皆で待っているべきなの」
「全て五分前です」
 大佐の強い声は変わりません。
「行動は」
「どうして五分前なの?」
「何かあってもすぐに対応出来ますので」 
 だからというのです。
「五分前なのです」
「そうなのね」
「何かそれって」
 恵梨香は大佐のその言葉を聞いて言いました。
「本当に軍人さんですね」
「そうね、五分前の精神は」
 ナターシャも恵梨香に応えて言います。
「まさに軍人さんね」
「ここまで軍人さんらしい人は」
 神宝も感嘆しています。
「オズの国にはいなかったから」
「そうそう、これまでね」
 カルロスは神宝に応えて言いました。
「何から何までって人は」
「外の世界じゃおられるにしても」
 それでもとです、ジョージもそうした大佐に尊敬の念を感じています。
「オズの国ではね」
「ええ、私も他に知らないわ」
 オズの国の隅から隅まで冒険をしてあらゆる人とお友達のドロシーも言います。
「大佐程軍人である人はね」
「そうだよね、僕も知らないよ」
 いつもそのドロシーと一緒にいるトトもです。
「ここまで生真面目な軍人さんはね」
「そうよね」
「あの、大佐はずっとそうなの?」
「はい、グリンダさんにお仕えしてから」
 そうだとです、大佐はドロシーに答えました。
「それ以前から真面目だと言われてきましたが」
「軍人としての訓練を受けて」
「この様になりました」
「そうなのね」
「はい、左様です」
「カドリングには他にも軍人さんがいるけれど」
 それでもと言うドロシーでした。
「大佐程軍人な人はね」
「おられないですね」
「そうよ」
 まさにとです、ドロシーはじょーじに言いました。
「本当にこの人は別格よ」
「まさに軍人の中の軍人ですか」
「そう思うわ」
 そこまでだというのです、そしてアンは大佐の五分前というお言葉に少し考えていましたが決断を下しました。
「わかったわ、八時五十五分よ」
「その時間にですね」
「王国の出入り口に行きましょう」
「それでは」
「ええ、そうしましょう」
 こうしてでした、皆はその八時五十五分に王国の正門である出入り口に集合しました。すると九時になるまでです。 
 皆は待ちました、その五分についてトトは言いました。
「この五分が大事なのね」
「そうなのね」
 ドロシーはそのトトに応えました。
「五分前に全部用意をしてね」
「その場所で備えておくんだね」
「これが軍人さんなのね」
「そうなんだね」
「はい、私はそう考えています」 
 腰のサーベル、金色の鞘と柄のそれに左手を添えつつです。大佐はドロシー達に答えました。
「その様に」
「それでなのね」
「今回も進言しました」
「五分前行動ね」
「それを」
「そうなのね」
「では、です」
「あと少しで」
「グリンダ様が来られます」
 こう皆に言うのでした、そして実際にです。
 グリンダが来ました、グリンダは赤い光に包まれて姿を現しました。そして自分の前にいる皆を見て言いました。
「あら、もう待っていてくれてるの」
「お待ちしていました」
 大佐が敬礼をしてグリンダに応えます。
「ようこそ来られました」
「ああ、貴女が進言したのね」
「はい」
 その通りとです、大佐はグリンダにもキビキビとした口調で答えます。
「五分前でお待ちしていようと」
「そうなのね」
「いけなかったでしょうか」
「いけなくはないけれど」
 少し苦笑いで答えたグリンダでした。
「また生真面目ね」
「そうですか」
「ええ、そこまで堅苦しくなくても」
 それでもというのです。
「いいけれど」
「いえ、これが職務なので」
 だからとです、大佐は言うのでした。
「この様にしていますし」
「これからもなのね」
「していきます」
「そうなのね」
「ではこれよりグリンダ様の警護をさせて頂きます」
「わかったわ、ではね」
「宜しくお願いします」
 大佐はグリンダのすぐ後ろに控えました、そのうえで警護に入ります。その警護を受けるグリンダはといいますと。
 アン達のところに来てです、アンに言いました。
「今日私がここに来たのはね」
「まさかと思うけれど」
「ええ、予言のことよ」
「それのことなのね、やっぱり」
「そうよ、流石アン王女ね」
 グリンダはアンに微笑んでこうも言いました。
「察しがいいわね」
「勘がいいっていうのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「相変わらずのよさね」
「カリフ王の来訪かって思ったけれど」
「それでもなのね」
「貴女が来ると聞いてね」
「若しやって思ったのね」
「そしてその通りだったわね」
「そうね」
 グリンダは微笑んだままです、アンに応えました。
「まさにね」
「そうね、それじゃあね」
「今からお話するわ」
 その予言のことをというのです。
「そうさせてもらうわ」
「ええ、それじゃあ」
 アンはここで場所を見回しました、そうしてからグリンダに言いました。
「ここでお話するのも何だから」
「それじゃあ」
「王宮の中に入って」
 そうしてというのです。
「お話をしましょう」
「それではね」
「そして十時には」 
 その時間にはといいますと。
「ティータイムにしましょう」
「九時五十五分にはですね」
 ここでまた言った大佐でした。
「準備を整えて」
「いえ、それはね」
「駄目ですか」
「ティータイムは十時ね」
 その時間にとです、アンは大佐に言いました。
「だからね」
「九時五十五分にはですか」
「ちょっとね」
 どうにもというのです。
「止めておきましょう」
「そうですか」
「十時でないとね」 
 ドロシーも大佐に言います。
「やっぱりティータイムはね」
「よくありませんか」
「九時五十五分にね」
 準備万端はというのです。
「それは早いわ」
「早過ぎますか」
「ティータイムとしてはね」
「では」
「ええ、十時にしましょう」
「ティータイムはその時間の方がいいわね」
 グリンダもこう言います。
「では王宮で予言のことをお話して」
「十時になればね」
「ティータイムにしましょう」
「そしてお茶も楽しみながらね」
「予言のお話をしましょう」
 こうお話してでした、アンはグリンダを王宮に迎えました。そうして皆でおもてなしをしてでした。そのうえで。
 予言のことを聞くとです、アンは驚いて言いました。
「突然なのね」
「ええ、一昨日予言について未来を見る魔法を特別に使って調べていたらね」
「わかったのね」
「その魔法は二日か三日先までしかわからないけれど」
「その魔法でわかったの」
「この国で何が起こるのかがね」
 まさにこのことがというのです。
「わかったのよ」
「そうなのね」
「そう、それでその起こることは」
「それはなのね」
「突然変異で」 
 まさにそれでというのです。
「林檎が出来るのよ」
「新種の林檎がなの」
「そうなの、そしてね」
 グリンダのお話は続きます。
「その林檎を食べたらね」
「どうなるの?」
「黄金の林檎は食べたらあらゆるアレルギーも無効化するわね」
 グリンダはここで黄金の林檎のお話もしました。
「そうね」
「ええ、そうよ」
「それがね」
「その林檎にもなの」
「あってね」
 それでというのです。
「実は黄金の林檎はノーム族の卵アレルギーも無効化するのよ」
「あっ」
 グリンダの今の言葉にです、アンとカリフ王はです。お互いのお顔を見合わせました。そしてなのでした。
 そしてです、二人でお話しました。
「そういえばそうね」
「そうだな」
「あらゆるアレルギーに効くから」
「我々の卵アレルギーにもだ」
「黄金の林檎にはこの効果もあるのよ」
 まさにというのです。
「そしてその林檎にもね」
「ノーム族の卵アレルギーもなの」
「無効化する効果があるの、ただ」
「ただ?」
「効果があるのはその食事だけよ」 
 このことは一ヶ月効果が続く黄金の林檎とは違います。
「あくまでね」
「そうなの」
「そこはそうなのか」
「ええ、けれどね」
 それでもというのです。
「その林檎を卵や卵を使うお料理の前に食べれば」
「我々も卵を楽しめる」
「怖くもなくなるわ」
「恐怖心もなくなるのか」
「ええ、アレルギーを持つものへのね」
「それは凄い」
 カリフ王もグリンダのそのお話に目をきらきらとさせています。
「それならだ」
「是非、ね」
「食べたいものだ」
 こう言うのでした。
「その林檎を」
「そう言うと思ったわ、ではね」
「それではだな」
「もうすぐその林檎が出て来るから」
「ではか」
「それからまたお話させてもらうわ」
「あの」
 アンはグリンダとカリフ王のお話が一段落したところで、です。グリンダに対して怪訝なお顔で尋ねました。
「黄金の林檎は確かに栽培しているけれど」
「それでもっていうのね」
「そんな林檎栽培していないわよ」
 こうグリンダに言うのでした。
「そうしたものは」
「そうね」
「それはグリンダさんも知ってるわよね」
「勿論よ、もうすぐ突然出来るの」
「突然?」
「そう、突然変異でね」
 それでというのです。
「ある林檎の木に実るの」
「その林檎の実が」
「五色のね」
「五色というと」
 このことからです、アンはグリンダにこうも言いました。
「オズの国の」
「そう、それぞれの色が入ったね」
「そうした林檎なの」
「それが出て来るの」
「ううん、そんなこともあるのね」
 アンはドロシーのお話にです、腕を組んで考えるお顔で言いました。
「突然にって」
「オズの国ではよくあることでしょ」
「そうね、言われてみれば」
「ウーガブーの国もオズの国の中にあるから」
「だからなのね」
「そうしたことも起こるのよ」
 まさにというのです。
「この国でもね」
「不思議の国だから」
「不思議なことも起こるのよ」
「成程ね」
「ただ、その林檎は一つしかないわ」
 ノーム族の卵アレルギーを無効にしてくれる林檎はです。
「だから一つ食べたら終わりだけれど」
「林檎の芯、こちらが本当の実だけれどね」
 実は皆が食べる場所は林檎の実ではないのです、実は皆が芯と呼んで食べていないその場所こそなのです。
「その中に種があるわ」
「その種をなの」
「撒いてなの」
「増やすから」
 だからだというのです。
「それで私はこの国にお邪魔したの」
「その林檎を増やす為に」
「そうなの」
「成程、そうだったの」
「これが予言よ」 
 その全てだというのです。
「私達のね」
「そうだったの」
「五色の林檎を増やすわ」
 たった一個のそれをです。
「実ったら」
「その林檎は何時実るの?」
「今日の十一時よ」
 その時間にというのです。
「だからティータイムの後でね」
「林檎園に行けば」
「その林檎があるから」
「中の種を取って」
「撒いてね」
 そうしてというのです。
「木にしてそこからまた新しい林檎の中からね」
「種を取って」
「またその種を撒いて木にして」
「増やしていくのよ」
「それならすぐに増えるわね」
 ドロシーはグリンダのお話を聞いて言いました。
「まさに」
「そうよ、私の魔法を使えば」
「たった一個の林檎から」
「一気に増えるわ」
 五色の林檎がというのです。
「まさにね」
「それじゃあ」
「十一時になったら林檎園に行きましょう」 
 グリンダはドロシーにも笑顔で言いました。
「是非ね」
「それじゃあね」
 ドロシーも笑顔で応えました、そしてです。
 皆はまずはティータイムを楽しみました、この日はカルロスのお国のブラジルのお菓子とコーヒーでした。ブラジル風だからコーヒーなのです。
 それからはお外に出て皆で軽く遊んでいると大佐が言ってきました。
「十時五十分です」
「あと十分ですね」
「はい」
 大尉に礼儀正しく答えます。
「そうです」
「それではですね」
「今からーー行きますーーと」
 チクタクも言います。
「丁度ーーいいーー時間ですーーね」
「ええ、ここから林檎園に行くと」
 アンも言います、今は皆で川辺で河の中にいるチョコレートやケーキ、クッキーを釣って遊んでいます。
「丁度いい時間よ」
「そうだね、ここから林檎園に行くとね」
 トトも言います。
「いい時間だね」
「そう、じゃあ皆で釣り道具を収めてから行きましょう」
「そうすればいい時間ですね」
 神宝はアンのその言葉に笑顔で応えました。
「十一時には」
「あちらに着きますね」
 カルロスも言います。
「ちゃんとなおしてから行けば」
「使ったものはちゃんと元に戻す」
  ナターシャは河のすぐ傍の物置、釣り道具があったその場所を見ました。
「それも大事ですね」
「使ったものをそのままにしておくことは」
 そのことはとです、恵梨香が言うには。
「駄目なことですね」
「何処かに行ったり野ざらしでいたんだりするから」
 ジョージも言うのでした。
「元の場所に戻す、ですね」
「そうよ」
 まさにとです、アンは五人に言いました。
「そうしないといけないから」
「そうですね、じゃあちゃんと拭いてなおして」
「そうして物置に入れて」
「それから林檎園に行きましょう」
「釣り道具は戻して」
「お菓子は袋に入れて」
 五人はアンに応えて笑顔でそれぞれ言いました。
「林檎園はすぐそこですし」
「十一時に着く様にしましょう」
「そしてその林檎をですね」
「手に入れるんですね」
「そうするんですね」
「そうしましょう」
「それではです」 
 大佐がここでまた言ってきました。
「早速なおしましょう」
「あれっ、そう言った瞬間に」
 ドロシーは大佐の動きを見て声をあげました、見れば大佐は言った瞬間に自ら進んで皆の釣り道具を素早くかつ的確に拭きはじめています。
「もうなおしてるの」
「はい、そうですが」
「ううん、自分から言った瞬間に動くなんて」
「それがこの娘なの」
 グリンダはお菓子を袋に収めています、そうしながら自分も釣り道具を拭いているドロシーにお話します。
「いつもね」
「言って、なのね」
「その瞬間に動きはじめるの」
「そうなのね」
「凄く真面目というか」
 グリンダが言うには。
「真面目過ぎるのよ」
「働き者過ぎるのね」
「他の娘がやる仕事も手伝うから」
「自分のお仕事だけじゃなくて」
「そこまでしなくていいってこともね」
 それもというのです。
「するの、十人分は動いてくれるわ」
「それが私の普通ですが」
「普通かしら」
 ドロシーは大佐のコメントを聞いて首を傾げさせました。
「果たして」
「違いますか」
「働き者過ぎよ、ただね」
「ただ?」
「大佐みたいな人もいてくれたら頼りになるわね」
「そうね、けれどそうした娘がいても」
 それでもと言うグリンダでした。
「皆が頼りにして怠けたりしたらね」
「駄目よね」
「私も皆に言ってるわ」
 それこそというのです。
「この娘に何でもさせない様に」
「注意してるのね」
「そうしているわ、あとこの娘は出来るだけね」
 今もせっせと働いてる大佐を見て言いました。
「休ませる様にしているの」
「働いてばかりはよくないからね」
「そうなの」
「けれどこうした人は」
 トトもお口を使って色々なおしたりしています、彼も自分は何もしないということはしないのです。ドロシーと一緒にそうしています。
「中々休まないよね」
「そうなの、けれどコツがあって」
「休んでもらう?」
「それをやっているの」
「そうなんだ」
「そうしているからね」 
 だからというのです。
「大丈夫よ」
「大佐も休んでいるんだね」
「そうなんだ」
「私は休む必要はないですが」
「私もーーです」
 大尉とチクタクは身体の構造上でそうなのです、かかしや木樵と同じく。
「そうしたことはです」
「必要ないーーですーーが」
「やはりです」
「人の身体ーーでは」
 休むことも必要だというのです、皆はグリンダに大佐を休ませるコツも聞こうとしましたがここで、でした。
 なおす作業が終わってです、皆で一緒に林檎園に行きました。そうしてある林檎の木の中に一つでした。
 赤と青、紫に黄色、緑のオズの国のそれぞれの色が斜めのラインで奇麗に入っている林檎がありました。その林檎を見てです。
 ジョージがです、目を見張って言いました。
「この林檎が」
「ええ、間違いないわね」
 グリンダはジョージの横から答えました。
「この林檎がね」
「ノーム族の卵アレルギーを消してくれる」
「その林檎よ」
「じゃあこの林檎を取ってですね」
「中の種を撒いて魔法をかければね」
「すぐにですね」
「林檎は増えるわ」
 それこそ瞬く間にというのです。
「そうなるわ」
「ふむ、ではだ」
 カリフ王も五色の林檎を見ています、そうしつつ言うのでした。
「まずはこの林檎を食べてだな」
「卵を食べてみるのね」
「そうしてみるか」
「あの、ひょっとして」
 ジョージはカリフ王の言葉を聞いてびっくりしてです、彼に問い返しました。
「カリフ王ご自身が」
「林檎と卵を食べてな」
「証明してみせるんですか」
「そうしないとわからないではないか」
「あの、ですが」
 ジョージはカリフ王に怪訝なお顔で言いました、彼の言葉を聞いて。
「そうしたら」
「余が、だな」
「若しも林檎の効果がなかったら」
「卵アレルギーに苦しめられるな」
「そうなりますけれど」
「王である余が自らそうしなくてどうする」
「率先してですか」
 ジョージも言います。
「証明してみせてこそ」
「民もわかる、そしてこうしたことは王の務めだ」
「ご自身で証明することは」
「そうだ、だから食べてみよう」
 林檎と卵をです。
「そうしよう、我々のアレルギーは食べた瞬間に出る」
「まさにですね」
「その瞬間にだ」
「そうだ、だからだ」
 それでというのです。
「今日のお昼にでもそうするか」
「ではこの林檎は取ってね、種はお昼に効果が証明されたうえで撒いて」
「そしてだな」
「増やしましょう」
 効果があるのかどうかがはっきりしてからというのです。
「そうしましょう」
「それがいいわね」
 グリンダもアンの提案に同意して頷きました。
「ではまずはね」
「お昼に食べて」
「それから見極めましょう」
「それではな」
 カリフ王も笑顔で応えました。
「お昼にこの林檎と卵を食べるとしよう」
「それじゃあ」
 アンは林檎に手を伸ばしてでした、そのうえで。
 林檎を摘み取りました、そうして自分の手の中の林檎を見てにこりと笑いました。
「まさにオズの国の林檎ね」
「オズの国のそれぞれの色が入った」
「そうした林檎ね」
 ジョージにも応えて言います。
「まさに」
「そうですよね」
「外の世界にはないわよね」
「林檎は赤か緑ですね」
「その二色しかないわね」
「二系統の色です」  
 赤か緑だというのです、林檎は。
「やっぱり」
「そうね、けれどね」
「オズの国ではですね」
「黄金の林檎もあればね」
「それぞれのお国のそれぞれの色の林檎もあって」
「こうした林檎も出来るのよ」
「不思議の国だから」
 まさにそれが為にです。
「あるんですね」
「そうなるわ」
「こうしたことでも不思議の国ですね」
「本当にそうよね」
「はい」
 ジョージはアンに笑顔で応えました、そして。
 皆で林檎を手にして王宮に戻ってお昼を食べることにしましたが。ジョージはふとグリンダにこのことを尋ねました。
「さっきのお話ですが」
「大佐のことね」
「休ませることがって」
「コツがあるって言ったわね」
「はい、それは」
「動物よ」
「動物?」
「実はこの娘はね」
 自分のすぐ後ろで警護をしてくれている大佐を手で指し示してです、グリンダはジョージにお話しました。
「動物が大好きなのよ」
「動物が?」
「そう、犬や猫、ハムスターや兎がね」
「そうした生きものがですか」
「蛙やインコも好きで」
「それじゃあ」
「そうした生きもの達のところに行ってもらうと」
 そうすると、というのです。
「ずっと見てにこにことして休むのよ」
「そういえば何か」
 ジョージはグリンダの言葉を聞いて大佐を見ますと。
 トトをちらちらと見ています、グリンダに言われて気付いたことです。
「ずっとトト見ていますね」
「無類の動物好きなの」
「はい、好きです」
 大佐も認めます。
「見ていると心が癒されます」
「実際にですね」
「可愛い生きもの、それにぬいぐるみが大好きです」
「そうなんですね」
「自室はぬいぐるみが沢山いまして」
 やはり大佐自身が言います。
「犬も猫も飼っています」
「そうしてですか」
「一緒に暮らしています」
「何匹位いるんですか?」
「犬で三匹、猫で五匹、ハムスターが十匹で」
 そしてというのです。
「兎は七羽、インコが四羽、カエルは六匹です」
「多いですね」
「兄も好きでして」
「お兄さんもおられるんですか」
「はい、両親とも一緒にです」
「住んでいてですか」
「生きもの達もです」
 それだけの数の彼等をというのです。
「飼っています」
「お一人じゃそこまでは」
「飼えないですね」 
 このことは大佐もわかっています、一人ではとてもそれだけの生きもの達の世話は出来ないです。だからご家族も一緒に暮らしているからです。
「やっぱり」
「両親が一番世話をしていますね」
「ご両親が」
「私以上に動物が好きなので」
「じゃあ大佐の動物好きは」
「両親の影響ですね」 
 口元と目元を綻ばさせてです、大佐は答えました。
「やはり」
「そしてお兄さんも」
「生きものが大好きです」
「じゃあお兄さんもお世話を」
「しています、実は家は牧場なんです」
「大佐は軍人さんで」
「そうです、ですがお家はそちらです」
 牧場をしているお家だというのです。
「カドリングの首都の郊外にあります、当直の日以外は馬で通っています」
「その乗馬が凄いのよ」 
 グリンダはジョージにこのこともお話しました。
「カドリングの国の中でもね」
「乗馬で有名ですか」
「そうなの」
 こうお話するのでした。
「この娘は、そして乗馬の時はズボンを穿いているわ」
「スカートですと素足が触れますので」
 大佐も乗馬についてお話します。
「擦れてしまうので」
「痛くなるからですね」
「その時はいつもズボンです」
 それを穿いているというのです。
「軍服の乗馬ズボンを穿いています」
「軍服の」
「昔の、私がカンサスにいた頃はまだあったの」
 ジョージは軍服の乗馬ズボンと聞いて首を傾げさせましたがドロシーがその彼にお話しました。
「軍人さんは馬に乗っていたでしょ」
「はい、昔は」
「だからよ」
「軍人さんもですか」
「乗馬ズボンを穿いて馬に乗っていたのよ」
「そうだったんですね」
「今は皆自動車でしょ」 
 軍隊でもです、もう馬に乗ることはスポーツか特別な儀礼の時だけです。
「だから軍隊でも乗る人は殆どいなくなったけれど」
「それでも昔は」
「そう、騎兵の人や将校の人は馬に乗っていて」
「乗馬ズボンだったんですね」
「そうよ」
「オズの国では今も乗っています」
 大佐がこのことをです、ジョージに言いました。
「ですから乗馬ズボンを穿いています」
「馬に乗られる時は」
「そうなのです」
「乗馬ズボンは」
「ちょっとね」
「僕達はね」
「穿いたことがないわ」
「お馬さんに乗ったこともないわ」 
 神宝とカルロス、ナターシャと恵梨香もそれぞれ言います。
「まだ小さいからね」
「馬に乗るのも危ないって言われるね」
「足がまだ短いから」
「だからって」
「そういえば大佐の脚は」
 ジョージが大佐の脚を見ますと。
「長いですね」
「そうでしょうか」
「乗馬は脚が長いことも大事なんですね」
「短いとどうしても」
「不便ですか」
「そうだと思います」
 脚の長さが乗馬に関係しているというのです。
「男の方もそうですし」
「そういえば脚の長い人は乗馬が得意ね」
 ドロシーも言います。
「そうね」
「そうですね、私もです」
「脚が長いから」
「幸いにして」
 それでというのです。
「乗馬が得意なのだと思います」
「それでなのね」
「はい、ただ結構足元が不安定になる時もあります」
 脚が長いとです。
「どうしても」
「そこは長所が短所ね」
「そうなっているかと」
「私なんかは」
 恵梨香は自分の脚を見てからです、皆の脚も見て言いました。
「乗馬は下手かしら」
「脚が短いっていうのかしら」
「そう思ったけれど」
「そうかしら」
 ナターシャは恵梨香のその自信なさげな言葉に目を瞬かせました。
「別にそうは思わないけれど」
「だといいけれど」
「恵梨香は別にね」
 神宝も恵梨香に言います。
「脚短くないよ」
「そうだよね、皆背とバランスいいよ」
 カルロスは皆の背と脚の長さを比較して見て言いました。
「恵梨香もそんなに短くないよ」
「皆脚はすらりとしてるしね」
 ジョージも皆の脚を見て言います。
「短くもないし」
「気にし過ぎかしら」
「ひょっとして日本人は脚が短くて曲がってるとか?」
 所謂O脚です。
「その言葉気にしてるの?」
「ちょっとね」
「今そうした日本人かなり少なくなったんじゃないから」
「そうかしら」
「少なくとも恵梨香は普通だよ」
 脚の長さも形もというのです。
「そんなに気にすることはないよ」
「そうだといいけれど」
「私もそう思います」
 大尉も言います、見れば大尉の脚が一番長い感じです。
「皆さん適度ですよ」
「そうですよね」
「はい、決して短くはないです。むしろ恵梨香さんもです」
 気にしている彼女もというのです。
「長い方かと」
「そうですか」
「はい、本当に」
「気にしなくていい位よ」
 グリンダも恵梨香に言いました、穏やかな声で。
「皆、恵梨香もね」
「それじゃあ」
「ええ、乗馬の時もそのままね」
「普通に乗れますね」
「そう出来るわ」
「それなら」
 恵梨香もようやくほっとしました、脚のことを言ってもらって。そうしたお話をしつつ皆で王宮に戻るのでした。
 そしてお昼御飯を待ちますがカリフ王はここでアンに言いました。
「そういえば王女は馬は」
「乗馬ね」
「されているか」
「ええ、牧場でよくね」
「そうなのか」
「身体を動かすことは好きだしこの国もお馬さんが増えたから」
 だからだというのです。
「乗馬も楽しめる様になったからね」
「それでか」
「最近は乗馬もしているわ」
「そうなのだな」
「これが楽しいのよ」
「そうか、我々にはないことだな」
 ノーム族にはというのです。
「乗馬は」
「ああ、そういえばそうね」
「馬には縁がない」
 とんと、というのです。
「我々はな」
「そうね」
「うむ、しかし機会があればな」
「ノーム族の人達もなのね」
「嗜んでみるか」
「何でもチャレンジね」
「その精神でな」
 そうしようかというのです。
「そう思った」
「いいことね」
「脚は短いがな」
 このことも笑って言うカリフ王でした、そうしたことをお話しながら今はお昼御飯を待つのでした。運命のその時を。



何かが起こるというのは、新種のリンゴか。
美姫 「突然変異で新しく出来るなんてね」
効果を聞けば、悪い事ではなかったか。
美姫 「そこは良かったわね」
だな。色は結構カラフルだけれど。
美姫 「確かにね。でも、本当にアレルギーがなくなるのかしら」
それは次回のお楽しみだな。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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