『オズのアン王女』




                 第九幕  カリフ王の来訪

 カリフ王はこの時うきうきとしていました、そのうえで皆に言うのでした。
「では今から」
「はい、ウーガブーの国にですね」
「行かれますね」
「訪問という形で」
「そうしてくるよ、こうして他国と交流をするのも政治で」
 そしてというのです。
「友達とも会えるからね」
「アン王女もそうで」
「ドロシー王女達もそうですからね」
「そして何か外の世界から子供達もいますし」
「彼等にも会えますね」
「さて、一体ね」
 ここでこうも言ったカリフ王でした。
「どんな子達なのか詳しく知りたいね」
「地下には来ていますが」
「ダークエルフ族とは交流があったそうですが」
「それでもですね」
「我々とはです」
「まだじっくりとお話をしていません」
「というかまだ会ったことすら」
 その時点でというのです。
「ないですから」
「全てはこれからですね」
「外の世界から来ている子供達とのことも」
「我々の場合は」
「だからね」
 そのことが一番というのでした。
「楽しみにしているんだ」
「これからウーガブーの国に行かれることを」
「そうなのですね」
「そうだよ、ではウーガブーの国までは」
 地上にあるこの国に行くにはといいますと。
「車で行こう」
「あの車で、ですね」
「行かれますね」
「そうされますか」
「そうするよ、これからね」
 ノームの皆にこう答えてでした、カリフ王は姿見の鏡で自分の身なりもチェックしてでした。そのうえでなのでした。
 その車に乗りました、車はといいますと。
 黒いキャデラックです、少なくとも外見は。大きくて席も広いです。
 そのキャデラックの後部座席に入って座ってです、運転手の人に言いました。
「ウーガブーの国までね」
「わかりました」
「いや、こうした時の車はね」
「王様はキャデラックがお好きですね」
「他の車よりもね」
 キャデラックだというのです。
「好きだよ」
「左様ですね」
「それにね」
 さらに言うカリフ王でした。
「何といってもこの車はね」
「特別ですからね」
「だからね」
「こうした時はですね」
「この車だよ」
「それでは」
「ウーガブーの国まで頼むよ」
 こう運転手の人に告げてでした、車はウーガブーの国に向けて出発しました。この時ジョージ達はおもてなしの用意が終わって皆で敷きものを敷いてその上に座ってウーガブーの国の入口でドロシーに畑で採れた林檎や西瓜の木から採った西瓜を貰って食べていました。中には川にあった苺やパイナップル、掘って手に入れた無花果もあります。
 そうしたものの中から苺を食べてです、まずはナターシャが言いました。
「どのお野菜や果物も」
「美味しいわね」
 恵梨香がナターシャに応えました、恵梨香は西瓜を食べています。
「外の世界のものと一緒で」
「そうね」
「川にあったから水草みたいなものかな」
 カルロスは川から採れたパイナップルを食べています。
「このパイナップルは」
「この林檎はお野菜かな」
 神宝は林檎を食べながら考えています。
「畑で採れたから」
「じゃあ無花果は鉱産物?」
 ジョージはそれを食べています。
「この無花果は」
「そうなるわね」
 ドロシーは五人の言葉を否定しませんでした。
「言われてみれば」
「林檎がお野菜で」
「そして苺やパイナップルが水草」
「果物の西瓜もあって」
「無花果が資源」
「本当に不思議ですね」
「その不思議が起こる国だから」
 オズの国はというのです。
「だからね」
「こうしたものもあって」
「普通に食べられて、ですか」
「しかも美味しい」
「そうなんですね」
「こうして実際に」
「そうなの、だからね」
 そうだというのでした。
「こうしたものもあるってことは覚えておいてね」
「オズの国だからね」
 トトも言います、彼はドロシーのすぐ傍で無花果や苺を食べています。
「こうしたこともあるんだ」
「お水に沈む木の葉があってね」
 こんなことも言うドロシーでした。
「浮かぶ石もあるのよ」
「あべこべですね」 
 ジョージはドロシーの今の言葉を聞いて言いました。
「まさに」
「そうよ、オズの国ではね」
「そうしたことも起こる」
「そうした国ということよ」
「そうですか」
「他にも色々とあったでしょ」
「はい、これまで」
 ジョージはこれまでの冒険のことを思い出しました、言われてみると本当に色々な不思議なことがありました。
「オズの国のあちこちで」
「私はこの国のあちこちを巡ったけれど」
 それでもというのです。
「絶対にね、まだ見ていない不思議があるわ」
「そうですか」
「次から次に不思議が出て来るから」
 まさにそれがというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「冒険の度に楽しんでるわ」
「わかりました、それじゃあ」
「皆も楽しんでね」
「これからどんどん出て来る不思議をですね」
「オズの国のね」
 こうお話するのでした、そのうえで。
 皆で一緒にでした、そうしたお野菜や果物、水草に資源を食べていきました。そうして食べ終わってほっとしていますと。
 ここで、です。ふとでした。
 車がです、地面の中から出てきました。
「車が?」
「急に出て来たけれど」
「あれは一体」
「何かしら」
「ああ、あの車はね」
 ドロシーはこのことにも答えました。
「ノーム王の車よ」
「あっ、そうなんですか」
「急に出てきましたけれど」
「地上に」
「まるで浮かび上がるみたいに」 
 地面から出るのではなくすり抜けた感じで出て来たのです。
「それは、ですか」
「ノーム王の車で」
「じゃああの車にですね」
「カリフ王が乗っておられるんですか」
「そうよ」
「あの車はキャデラックでね」
 トトは車の種類についても言いました。
「高級車だね」
「あっ、そういえば」
 ここで気付いたのはジョージでした。
「あの車は」
「そうだね」
「うん、キャデラックだよ」
 まさにとです、ジョージはトトに答えました。
「あの車は」
「この世界にもあるんだ」
「それでノーム王も乗ってるんだ」
「ノーム王は他にも色々と立派な車を持ってるけれどね」
「あのキャデラックがなんだ」
「一番のお気に入りなんだよ」 
 トトもその車を見ながらジョージにお話しました。
「何しろ水上も水中も地中もね」
「何処でもだね」
「自由に動けるからね」
「へえ、凄い車だね」
「オズの国らしいね」
「うん、不思議だね」
「そうした車なんだ」
 まさにというのです。
「あの車は」
「何か乗ってみたいね」
「そう思うよね」
「うん、お話を聞いてるとね」
 ジョージにしてもです。
「乗りたくなったよ」
「そうだね」
「そう、それと」
「それと?」
「ノーム王はあの車に乗っておられるんだよね」
「そうだよ」 
 すぐにです、トトはジョージに答えました。この時もです。
「今来られたんだ」
「そうなんだ」
「すぐにアン王女を呼びましょう」
 ドロシーは皆に言いました。
「カリフ王が来られたから」
「それじゃあ」
 トトはドロシーにも応えました。
「僕が行って来るよ」
「それじゃあね」
 こうしてでした、トトが宮殿まで行ってでした。残りの皆でカリフ王を迎えるのでした。敷きものも畳んで収めて。
 そしてです、皆で車のところに行きますと。
 カリフ王は後部座席から出てきました、そのうえでまずはドロシーに笑顔で挨拶をしました。
「相変わらず元気そうだね」
「カリフ王もね」
「余もこの通りだ」
 明るい笑顔での返事でした。
「元気だよ」
「それは何よりね」
「それでだが」
「ええ、今回来た理由は聞いてるわ」
 既にと答えたドロシーでした。
「領土のことでね」
「そう、下まで来たからね」
「アン王女はいいって言ってるけれど」
「そういう訳にはいかないよ」
「そこは、なのね」
「そう、礼儀だよ」
 まさにそれが理由でなのです。
「こうしたことはしっかりしないと」
「カリフ王らしいわね」
「そう、だからだよ」
 またこう言ったカリフ王でした。
「来たんだ」
「アン王女にお話をしに」
「そうだよ」
「それじゃあ」
「今から案内してくれるかな」
「いえ、アン王女の方から来るわ」
「あっ、そうなんだね」
 カリフ王も言われて声をあげました。
「それじゃあ」
「他の人達も来るから」
 ドロシーはさらに言いました。
「ファイター大尉とチクタクもね」
「二人もいるんだ」
「そうなの」
「それは楽しみだね」
 カリフ王は二人の名前も聞いて笑顔で言いました。
「本当に、じゃあね」
「ええ、アン王女が来たら」
「それからだね」
「おもてなしをね」
 まさにそれをというのです。
「させてもらうわ」
「それじゃあね」
 こうしてでした、アン達も来てです。皆でなのでした。
 カリフ王をおもてなしします、宮殿に案内されてそこで皆で宴を開きますが。カリフ王はそのメニューを見ても笑顔になりました。
「これはいいね」
「確かノームの人達は」
「卵は」
「そう、駄目だよ」
 絶対にとです、カリフ王は五人の子供達に答えました。
「今もね」
「卵に触ると死ぬんでしたね」
 ジョージが尋ねました。
「確か」
「昔はそうだったよ」
「今はそこまでは、ですか」
 神宝も王様に尋ねました、皆でご馳走を食べながら。出されているご馳走は鯉のお刺身に揚げたものです。他にも川の幸がどっさりとあります。
「いかないですね」
「うん、けれどね」
「苦手は苦手なんですね」
 カルロスはこう理解しました。
「どうしても」
「そうだよ」
「卵アレルギーですね」
 ナターシャの言葉です。
「つまりは」
「そうそう、まさにね」
「それもかなり強い、ですね」
 恵梨香も言いました。
「アレルギーなんですね」
「そうだよ、だから卵はね」
 ノームにとってはです。
「禁物なんだ」
「そういうことですね」
「本当にね」
 カリフ王はまた皆に言いました、彼自身もそのお刺身を食べながら。和風のウーガブーの畑で採れたお野菜で作ったサラダに鯉のアラのお味噌汁もあります。
「だから我々は卵は無理なんだよ」
「お魚の卵はいいのよ」
 アンはそれは大丈夫だと言いました。
「そちらはね」
「そうなんですね」
「お魚の卵はいいんですね」
「そちらは食べられるんですね」
「大丈夫なんですね」
「鳥類の爬虫類の卵がね」
 そちらがというのです。
「駄目なんだよ」
「ノームの人達は」
「強いアレルギーがあってですね」
「触ることも出来ない」
「そういうことなんですか」
「体質のものでね」
 そこはというのです。
「難しいんだ」
「そうしたことは」
「どうしてもですか」
「身体のことで」
「どうにも出来ないですか」
「これがね、まあ仕方ないよ」
 身体のことだからというのです。
「我々もね、けれどね」
「けれど?」
「けれどといいますと」
「我々も本当の意味でオズの国の人間になったからね」
 ラゲドーの時とは違い今はです、ノーム族も完全にオズの国の人達になったのです。死ぬこともなく歳を取ることもない。
「そうなったんだ」
「卵に触ってもですね」
「死なない、ですね」
「そうなれたんですね」
「そうだよ、けれどね」
 本当にというのでした。92
「苦手なことはかわらないんだ」
「だからケーキとかのお菓子もね」
 アンがここでまた言いました。
「ノームの人達は卵は使わないの」
「ちゃんと代わりのものがあるんだ」
 カリフ王はこのこともお話しました。
「そっちを使ってね」
「卵を使わなくてもですね」
「困らないんですね」
「そうなんですね」
「そうだよ、他のものは食べられるしね」
 卵以外の食べものはです。
「問題はないよ」
「卵は色々使いますけれど」
「お料理といえば」
「それでもですね」
「例えばケーキもそうだし、ケーキの木になるケーキならね」
 卵を使うそれもというのです。
「普通に食べられるから」
「問題はないですか」
「そちらは」
「うん、他のお菓子もね」
 全く、というのです。
「ないよ、卵料理は駄目だがね」
「じゃあオムレツとかは」
「言うまでもないんじゃないかな」
「そうですね」
 ジョージも言われて頷きました。
「そうしたものは」
「どうしてもね、ただ何とかね」
「何とか?」
「このアレルギーが何とかなったらともね」
「思っておられるんですね」
「そうだよ、他の国の人達と同じくね」
「それがどうにか出来たら」
 カルロスもカリフ王のお話を聞いて言いました。
「もう卵は怖くないですね」
「卵料理も美味しいんですよね」
 神宝はその卵料理のことをお話しました。
「種類も多くて」
「その卵が食べられたら」
 ナターシャも言います。
「やっぱり食べられないよりずっといいですね」
「オズの国なら何とかなりそうですが」
 恵梨香はこの国が不思議の国であることから考えるのでした。
「どうなんでしょうか」
「そのことね」
 ドロシーもそのお話に首を傾げさせてです、五人に答えました。
「どうなるのかしら」
「グリンダさんか魔法使いさんか」
「オズマかね」
 ドロシーはジョージに答えました。
「魔法で解決出来るか」
「どうにかなりませんか」
「死ななくはなったから」
「そこからもですね」
「よくなるかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「私としてはね」
「何ともですか」
「悪いけれど言えないわ」
「そうですか」
「残念だけれどね」
「まあ卵を食べられなくても」
 カリフ王自身が言うにはです。
「他のものを楽しめるからね」
「だからですか」
「それでいい」
 こう言いつつお箸で鯉のお刺身を食べています。
「そう考えているよ」
「そうですか」
「カリフ王、そしてノームの人達がそうお考えならです」
 大尉が言います。
「いいのでは」
「そうなんだね」
「はい、仕方ないことを諦めることもです」
 それもまた、というのです。
「時として必要でしょうし」
「勿論ーー諦めないーーこともーーいいーーですが」
 チクタクが言うにはです。
「それもーーまたーーですーーね」
「はい、時と場合によっては」 
 大尉はチクタクにも答えました。
「いいと思いますので」
「この場合は大尉の言う通りかな」
「そうかも知れないですね」
 大尉はカリフ王に答えました。
「少なくともアレルギーならです」
「食べては駄目でね」
「そしてすぐに解決しないのなら」
「諦める」
「それしかないかと」
「そうなるな」
「私は食べることがないので自分自身のことからは言えませんが」
 それでもというのです。
「そうした考えに至ったので」
「余に話してくれたんだね」
「そうです」
「その考えを受け取らせてもらうよ、それにね」
「それにとは」
「この鯉は美味しい」
 今度は鯉の揚げものを食べています、見事な大きさの鯉を天麩羅にしています。それがとても美味しいのです。
「いいね」
「鯉も美味しいんだよね」
 トトは今はアラの部分のお味噌汁を楽しんでいます。
「このお魚もね」
「そう、鮭や鱒も美味しいけれどね」 
 アンがそのトトに微笑んで答えました。
「鯉も美味しいのよ」
「そうなんだよね」
「アメリカじゃ鯉はあまり食べないんだよね」
 ジョージは今のアメリカ人として言いました、とはいってもジョージ自身も鯉料理を心から楽しんでいます。
「というか殆ど」
「今もなのね」
「はい、そうなんです」
 ドロシーにも答えるのでした。
「お魚自体お肉と比べて」
「私がいた頃とあまり変わらないわね」
「そうですね」
「そこはね」
「だから五大湖では増えて困っています」
「食べてばいいよ」
「私もそう思うわ」
 神宝と恵梨香がすぐにこう言いました。
「増えて困ってるのなら」
「美味しいし」
「ううん、川のお魚に抵抗があるのかな」
 カルロスは不思議といったお顔です。
「アメリカ人は」
「何でも食べるイメージがあるけれど」
 ナターシャにしてみればです。
「そうでもないのかしら」
「ううん、色々な人がいるから」
 ジョージはアメリカのその事情から言うのでした。
「色々なものを食べることも事実だけれど」
「それでもなのね」
「はい、鯉を皆が食べる訳じゃないです」
 アメリカではとです、ジョージはアンにお話しました。
「これが」
「そうなのね」
「シカゴではそうです」
「やっぱりお肉メインなのね」
「どうしても」
「鯉も美味しいのに」
「考えてみたら」
 ジョージは今食べている鯉のお刺身を見ました、そうして言うことは。
「このお刺身も」
「元々和食ね」
「天麩羅にしても」
 こちらもというのです。
「和食ですね」
「日系人の人達のものね」
「はい、そうです」
 見れば主食も御飯です、とはいってもアンがいるのでデザートの中には蜜柑や柿の他に林檎もあります。
「日系人のお料理ですね」
「日系人の人がもっと多いと」
「お魚もですね」
「よく食べられると思うわ」
「中国系の人もお魚を食べるけれど」
 それでもというのです。
「中国系はお肉の方が多いかな」
「特に豚肉だね」
 その中国人の神宝が答えました。
「お肉の中でもね」
「そうだよね、中華料理だと」
「考えてみたら日本でもね」  
 日本人の恵梨香が言うには。
「鯉というか川魚あまり食べなくなったし」
「外の世界の川魚は虫がいるから」
 カルロスはこのことを指摘しました。
「怖いしね」
「それに海があるから」
 ナターシャはそちらのお話もしました、オズの国にしても大陸全体が海に囲まれています。この国も海と縁が深いのです。
「そこでのお魚を食べるから」
「アメリカのお魚もそうなんだよね」
 ジョージもこう言います。
「鮭も海にいるし平目とか鰻もね」
「海ね」
「はい、海にいます」
 鮭は川にも来るけれどとです、ジョージはドロシーに答えました。
「鱒にしても」
「鰻もね」
「やっぱり海のお魚ですね」
「アメリカで食べるお魚も」
「ですから鯉は」
 どうしてもというのです。
「あまり、です」
「それは残念なことだ」
 カリフ王はお味噌汁も食べつつ言いました、そのお味噌汁もとても美味しいです。
「こんな美味しいものをあまり食べないとは」
「そうですね」
「多過ぎるのなら食べればいい」
 カリフ王はアメリカのお話を聞いてです、神宝達と同じことを言いました。
「その時は」
「そうですね」
「アメリカ人は食べる量は少ないのかい?」
「いえいえ、凄く多いですよ」
 ジョージはカリフ王にすぐに答えました。
「皆食べ過ぎで困る位に」
「そこまで食べるのならだ」
「もう、ですね」
「五大湖という場所の鯉達もだ」
「アメリカ人が鯉を食べれば」
「問題はすぐに解決だ」
「そうなりますね」
 ジョージ自身カリフ王の言葉に頷きました。
「やっぱり」
「余はそう思う」
「確かに」
「ましてこの様な美味しい魚を食べなくてどうするか」
「しかも栄養が凄くあるのよ、鯉は」
 アンは鯉のこのことも言いました。
「鰻と同じで食べれば元気になれるお魚よ」
「そういえば日本の野球チームでもそうですね」
 ジョージはここでふと気付きました。
「カープ、鯉のチームがあります」
「あら、そうなの」
「はい、この前優勝してました」
「その鯉のチームね」
「広島のチームでして」
 神戸から西にあるチームです、チームカラーは赤です。
「鯉みたいに活力のあるチームになれ、とのことで」
「チームの名前になったのね」
「そうです、虎に強いですね」
「虎に強い鯉ね」
「そうなんです、阪神タイガースってチームがあるんですが」
 まさに虎です。
「そのチームに強いんです」
「虎に強い鯉ね」
「そうです」
「不思議なお話ね」
 アンは鯉が虎に強いと聞いて首を傾げさせています、そうしながらアン自身鯉のお刺身も天麩羅も楽しんでいます。
「外の世界もそうした不思議があるのね」
「本当に不思議ですよね」
「そうですね」
「腹ペコタイガーさんもこのお話には首を傾げてたね」
 トトもこう言います。
「何で鯉が虎に強いのか」
「そうだよね」
「うん、僕も聞いて変なお話だと思ったよ」
「そうだよね」
「どんな虎かってね」
「野球チームのことだけれど」
「というかその虎のチーム強いの?」
 トトはかなりダイレクトにです、ジョージに尋ねました。
「アメリカにも虎のチームがあるけれど」
「デトロイトにね」
「日本の方はどうなの?」
「いつも肝心な時に負けてるよ」
「じゃあ弱いの?」
「ここぞという時はね」
「ううん、そんなチームなんだね」
 トトはジョージのお話から阪神タイガースについてこう思いました。
「変なジンクスがあるのかな」
「あるね、どうも」
 ジョージも否定しませんでした。
「あのチームには」
「やっぱりそうなんだ」
「そこそこ勝ってもね」
「勝負時になると」
「信じらない負け方をするんだね」
「それも不思議だな」
「うん、見ていて不思議だよ」
 実際にというのです。
「アメリカ人の僕からもね」
「阪神が日本一になるには」
 日本人、そして地元だから阪神ファンでもある恵梨香の言葉は切実です。
「何が必要なのかしら」
「やっぱりいい選手を育てて獲得することかな」
 神宝はその恵梨香にアドバイスしました。
「地道にね」
「苦手なチームを研究することよ」
 ナターシャも親身です、実は五人共阪神を嫌いではないのです。
「そして攻略していくことね」
「チームが一つになって」
 カルロスも真剣に考えています。
「そしてやっていくことも大事だね」
「本当に何で大事な場面でいつも負けるのかな」
 ジョージはこのことが本当に残念です。
「阪神は」
「鯉に負ける虎はです」
 大尉もそのお話を聞いて言いました。
「はじめて聞きました」
「私もーーです」
 チクタクもでした。
「とてもーー不思議ーーです」
「それが阪神だからね」
「阪神タイガースですね」
「そのチームーーですーーね」
「だから」
 ジョージも首を傾げさせます。
「何とも言えないね」
「けれどその阪神ってチーム面白そうね」
 アンは阪神のお話を聞いて決して否定的ではありませんでした、むしろその逆でいsた。
「詳しく知りたいわ」
「じゃあ後でお話します」
「お願いね」
「実は我々も野球は好きだ」
 カリフ王はノーム族のスポーツの事情もお話しました。
「水泳、ボクシング、アメフト、バスケとしているが」
「野球もですか」
「好きなのだ」
 そうだというのです。
「地下にグラウンドを造ってだ」
「そのうえで、ですか」
「やっている」
「そうですか」
「結構なチームの数があってリーグもあるぞ」
「本格的ですね」
 ジョージもお話を聞いて言います。
「それはまた」
「他のスポーツもそうだがな」
「アメフトとかもですね」
「リーグまである、余はこちらとホッケーが好きだ」
「アメフトはいいですよね」
「君も好きか」
「はい」
 その通りという返事でした。
「ハードで」
「うん、身体と身体がぶつかり合ってな」
「ボールを巡って駆けて蹴って」
「確かに激しいスポーツだ」
「格闘技みたいに」
「しかしそれだけにいい運動になる」
 カリフ王はにこりと笑って言いました。
「あれはいいスポーツだ」
「そうですね」
「よくしている、水泳もしているな」
「地下にプールを造って」
「泳いでいるのだ」
「何かオズの国の地下って何でもありますね」
「いやいや、あるのではなくてな」
 そうではなく、というのです。
「築いたのだ」
「ノームの人達が」
「そうなのだ」
「そちらになりますか」
「うむ、ないのなら造り上げる」
「フロンティア=スピリッツですね」
「それを我々も持っているのだ」
 だからこそというのです。
「我々も築いたのだ」
「何もない場所に」
「住む場所、田畑に牧場にグラウンドにプールをな」
「何でもですか」
「そうしたのだ」
 まさにゼロからです。
「オズの国も最初は何もなかっただろうしな」
「最初は本当にです」
 大尉が答えました、カリフ王の今の言葉に。
「家も人もまばらで大昔はです」
「何もなかったな」
「そうした状況でした」
 まさにというのです。
「多分ドロシー王女が最初に来られた時も」
「そうそう、今よりもずっとよ」
「人も少なかったよ」
 ドロシーだけでなくトトも答えました。
「村も少なくて」
「ものもなくてね」
「あの時から何の不自由もなかったけれど」
「今とは全然違ったよ」
「テレビも携帯もなくて」
「飛行船なんてものもね」
「そうです、ヘリコプターなんてものもです」
 それこそとです、大尉はさらにお話しました。
「なかったですからね」
「最初は何もないものだ」
 カリフ王はしみじみとした口調になっていました。
「しかしその何もないところにだ」
「築いて造っていくんですね」
「そうしたものだ」
 まさにというのです。
「オズの国も然りだ」
「人が自分達の手で、ですね」
「そうしていくものだ、そしてノームの国もだよ」
「そうなっているんですね」
「今度また築こう」
「何をですか?」
「劇場をだ」
 今度築くのはそれだというのです。
「舞台も楽しんでいるからな」
「そちらもですか」
「楽しむ為にな」
「スポーツだけじゃないんですね」
「我々も色々楽しんでいるのだよ」
「音楽も劇もですね」
「そうなのだよ、だからこそ」
 その劇を楽しむ為にというのです。
「劇場も築く」
「そうされますか」
「君達が我々の国に来れば」
「その時はですね」
「劇場も楽しんでくれ給え」
「そうさせてもらっていいですか」
「遠慮は無用だよ」
 カリフ王はジョージに微笑んで答えました。
「是非共」
「それじゃあ」
「その時を楽しみにしている」
「さて、皆もう全部食べたわね」
 アンがこう言った時にはです、もうお刺身も天麩羅もお味噌汁もなくなっていました。サラダと御飯もです。
「ではデザートにしましょう」
「果物ですね」
「そうよ」
 言いながらです、アンはその手に好物の林檎を手に取りました。
「食べましょう」
「わかりました」
「皆好きな果物を食べてね」
「ふむ、では余もだ」
 カリフ王もでした。
「無花果にするか」
「それなのね」
「うむ、最初はな」
 実際に無花果を手に取って言うのでした。
「それにしよう」
「無花果もいいのよね」
「アン王女は果物は全て好きだな」
「お野菜もね、それでね」
「その中でもだな」
「特に林檎が好きなの」
 何といってもというのです。
「やっぱりね」
「そうだな」
「だから毎食後食べてるのよ」
 そこまで好きだというのです。
「本当にね」
「林檎を食べねば終わらない」
「そうした感じよ」
 アンの場合はというのです。
「それで林檎の中でもね」
「特に好きな種類はか」
「黄金の林檎よ」
 それになるというのです。
「あれが一番美味しいから」
「しかも一個食べると元気が出てな」
「もう仕方なくなるから」 
 そこまで凄いからだというのです。
「一番好きよ」
「前にも言っていたな」
「ええ、ただあまりね」
「食べないな」
「うちの特産品だけれど」
 それでもというのです。
「何しろ数が少ないから」
「だからだね」
「ええ、そうなの」
「成程な」
「滅多にないものだから」
「それだけに価値もある」
「そうでもあるのよ」
 黄金の林檎はというのです。
「オズの国でも実るのはね」
「この国だけでか」
「この国でも稀少なものよ」
「わかった、そのこともな」
「そしてこの国では国賓の人達にはね」
 にこりと笑ってです、アンはカリフ王にこうも言いました。
「その黄金の林檎をご馳走するわ」
「そうだったね」
「カリフ王にも以前ご馳走したわね」
「あれは最高だったね」
 前に国賓としてお邪魔した時のことをです、カリフ王は思い出して笑顔になりました。
「美味しかったよ」
「それでなのよ」
「今回もかい」
「ご馳走させてもらうわわ、そしてね」 
 ここで、です。アンはです。ドロシーもジョージ達も見回して言いました。
「貴方達にもね」
「えっ、僕達にもですか」
「言い遅れていたけれど」
 それでもというのです。
「ウーガブーの国ではそうした決まりだから」
「国賓には黄金の林檎をご馳走することが」
「だからね」
「僕達にもですか」
「ご馳走させてもらうわ」
「それじゃあ」
 こうしてでした、皆も黄金の林檎を食べられることがわかりました。皆そのことを聞いて飛び上がらんばかりに喜んでいます。
「まさかね」
「僕達も黄金の林檎を食べられるなんて」
「思わなかったよ」
 まずはジョージ、神宝、カルロスの三人が言いました。
「一体どんな味なのか」
「楽しみだね」
「そうだよね」
「神話や童話には出て来るけれど」
「オズの国にもあって」
 ナターシャと恵梨香も言います、次は女の子二人でした。
「その林檎が遂に」
「私達のお口にもなのね」
「本当に凄く美味しいから」
 ドロシーがその五人に言いました。
「楽しみにしていてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあです」
「その黄金の林檎を食べる時」
「その時を楽しみにしてます」
「そうしています」
「今晩よ」
 アンはその時間について皆に言いました。
「今晩楽しみにしていてね」
「わかりました」
「さて、では食べた後は遊ぼうか」
 カリフ王はあらためてです、皆ににこりと笑ってこうも言いました。
「そうしようか」
「それがいいね」 
 トトがカリフ王に応えました。
「食べた後は皆でね」
「そうして楽しもう」
 笑顔で応えてです、そのうえで。
 皆は黄金の林檎を食べる時を楽しみにしつつです、今の食事を楽しむのでした。デザートの果物までも。



カリフ王の訪問。
美姫 「まあ、普通は車がいきなり地面から出てきたら驚くわよね」
だよな。普通に考えれば、これも大事と言えるけれど。
美姫 「オズではそこまで不思議ではないようだしね」
うーん、本当に何かというのは王の訪問だったのか。
美姫 「この後どうなるのか待っていますね」
次回も待っています。



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