『オズのアン王女』




                 第八幕  ノーム王の楽しみ

 ノーム達はかつてはラゲドー王の下侵略や悪いことばかり行っていました、しかしカリフが王様になってからはです。
 他のオズの住人達と同じく善良で心優しい人達になりました、この人達は地下に王国を築いて暮らしていますが。
 そのカリフ王がです、家臣の人達にこんなことを言いました。
「最近何度入っても飽きない」
「お風呂にですね」
「そちらに」
「うん、そうだよ」
 まさにその通りだというのです、ノーム特有の太った小柄な身体で。勿論お髭は長く伸ばしていてお顔は土色です。服は王様だけあって立派です。
「二度三度と入ってもね」
「入りたい」
「そうですね」
「前から風呂好きでね」 
 カリフ王はそうでした。
「一日一回は入っていたけれど」
「最近はですね」
「二度三度とですね」
「入っておられますね」
「そのうえで楽しんでおられますね」
「身体が奇麗になってね」
 そしてというのです。
「心もすっきりするから」
「いいですね」
「お風呂は楽しめますね」
「私も好きです」
「私もです」
 家臣の人達もお風呂が好きであることは同じでした、ですがカリフ王はといいますと。
「ですが王様は」
「最近もう病みつきですね」
「一日のうち二時間はお入りですね」
「二度三度と」
「全くだね、本当にすっきりするからね」 
 またこう言ったカリフ王でした。ノーム王の間で玉座に座りつつ。
「楽しんでるよ」
「そうですね、ではです」
「これからもですね」
「お風呂に入られますか」
「そうするよ、今日は起きてからまだ入っていない」
だからというのです。
「お昼御飯の前にね」
「わかりました、それではです」
「浴室に向かわれて下さい」
「その様に」
「そうさせてもらうよ」
 こうしてです、カリフ王はお風呂に入りました。裸になってまずはかかり湯をして身体を石鹸で丁寧に洗って。
 サウナに入って水風呂から広い浴槽に身体を浸からせて言いました。
「ふう、すっきりするね」
「お楽しみですね」
「そうだよ」
 控えている侍従の人にも答えます。
「皆もね」
「後で、ですね」
「入るといいよ」
「それでは」
「うん、そうしてね」
「わかりました」
 侍従の人も答えます、カリフ王はお湯に浸かって温まってまた水風呂に入ってです。お湯に戻ってなのでした。
 今度はです、侍従の人にこんなことを言いました。
「しかしあれだね」
「あれとは」
「いや、我々には金銀に宝石もあってだよ」
 地下から幾らでも掘り出せます。
「そしてお風呂もある」
「何でもあるというのですね」
「そうだと思うけれどどうかな」
「その通りですね」
 侍従さんも否定しませんでした。
「地下にいますと」
「うん、我々に不足はないよ」
「何処を攻めなくとも」
「攻めることはないよ」
 それこそオズの国の何処もです。
「こうして平和にいられるんだから」
「問題ありませんね」
「食べるものもあるしね」
 こちらも困っていないというのです。
「地下の他の種族とも仲良くやっているし」
「ダークエルフ、ドワーフの各種族とも」
「だからね」
「今のままで充分ですね」
「今の生活を維持すると共に」
 そうしてというのです。
「いいものは取り入れていって」
「そうしてさらに豊かになる」
「それでいいと思うよ」
「その通りですね、では」
「これからもそうした政治を行っていくよ」
「それでは」
「後は」
 カリフ王は湯舟の中で腕を組んでです、こんなことも言いました。
「地上とのお付き合いだがね」
「エメラルドの都と、ですか」
「他の国々ともね」
「先日リンキティンク王と仲良く親睦会を開きましたが」
「あれは大成功だったよ」
「リンキティンク王とはいつも仲良く出来ますね」
「うん、いい感じでね」
 カリフ王にしても満足出来る状態で、です。ノームの国とリンキティング王の国は友好関係にあるのです。
「仲良くね」
「有り難いことですね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「リンキティンク王はいつも凄く元気だね」
「疲れることがありませんね」
「そうそう、遊んで歌って騒いで」
 それがリンキティンク王です。
「そうした人だからね」
「そのことも踏まえて」
「仲良くしていこう、これからも」
「是非、それとですが」
「それとは」
「近頃ウーガブーの国の下の方にまで領土を進出させていますが」
「ああ、そうだね」 
 カリフ王も知っていることでした。
「とはいっても地下深くだからね」
「何の影響もないです」
「そうだね、ただウーガブーの国とは」
 カリフ王はまた湯舟の中で腕を組んで考えるお顔になりました、そのうえで言うのでした。
「最近交流が乏しいですね」
「そういえばそうだね」
「では」
「このことを話そうか」
「それでは」
 こうしてでした、カリフ王はお風呂から出るとです。
 すぐにです、玉座から家臣の人達に言いました。
「ウーガブーの国との交流がね」
「そういえば最近ですね」
「あの国とのそれが乏しいですね」
「どうにもです」
「あの国とは」
「今現在あの国の下の方まで進出しているから」
 だからというのです。
「そのことをお話する為にもね」
「ウーガブーの国に行ってですか」
「お話をされますか」
「そうされますか」
「そうしよう、アン王女とは長い付き合いだしね」
 実はカリフ王が王様になってからのお付き合いです。
「だからね」
「はい、それではです」
「時間がある時に訪問ということで」
「それで、ですね」
「あちらの国に使者を送りますか」
「事前に」
「そうしよう、ではね」
 カリフ王はすぐにでした、決断を下しました。そしてそのうえで使者の人をウーガブーの国に送ることにしました。
 そしてお昼御飯を食べつつです、カリフ王は一緒に食べている人達にこんなことも言いました。
「アン王女といえば林檎だがね」
「はい、今もですね」
「林檎はお好きか」
「そのことですね」
「やっぱり毎食食べてるんだろうね」
 これまで通りというのです。
「あの人は」
「やはりそうでしょうね」
「とにかく林檎がお好きな方なので」
「ですから」
「今も」
「とにかく林檎がないとね」 
 アン王女の場合はです。
「あの人は気が済まないから」
「では贈りものはです」
「林檎ですか」
「それにしますか」
「そうだね」
 考えながらです、カリフ王は家臣の人達に答えました。
「若しくは林檎をモチーフとしたね」
「そうしたものですね」
「とにかく林檎か林檎にまつわるものですね」
「それを贈られてですね」
「アン王女に喜んで頂きますか」
「そうしよう、我が国にの林檎もあるし」
 地下ですが果樹園もあります、光る茸や蛍の光で照らしてそのうえで育てているのです。オズの国は地下でも明るいのです。
「それじゃあね」
「林檎そのものですか」
「それを贈られますか」
「あとはルビーを細工して」
 この宝石をというのです。
「林檎の形にした」
「そうしたものをですか」
「王女に贈られますか」
「そうされるのですか」
「これはどうかな」
 この装飾品をアン王女に贈ろうというのです。
「宝石はね」
「そうですね、アン王女は赤がお好きですし」
「黄色もお好きですが」
 ウィンキーの国にいるだけあってです。
「それではですね」
「その装飾品も造り」
「そのうえで」
「うん、贈ろう。そして」
 そのうえでというのです。
「私自身も訪問してね」
「そして、ですね」
「交流を深める」
「そうされますか」
「そうしよう、ではまずはとびきりの林檎を採って」
 林檎の木からです。
「そしてね」
「はい、そのうえで」
「ルビーで林檎を造り」
「その二つを持って」
「ウーガブーの国に使者を贈りましょう」
「よし、ではね」
 こうしてでした、カリフ王はそうする様にと命令を出しました。林檎と装飾品はすぐに用意されてそのうえで、でした。 
 ウーガブーの国に使者が送られました、これはドロシー達がアンと一緒にウーガブーの国に着いたその日のお話でした。
 その日の夜です、ドロシーと一緒に気持ちよくお風呂に入っていました。その総檜のとても奇麗なお風呂にです。
 ドロシーは檜のお風呂の中でアンに笑顔で言いました。二人一緒に入っています。
「こうしたお風呂もいいわね」
「そうでしょ」
「木の香りがしていてね」
「奇麗でもあるでしょ」
「ええ、くつろげるわ」
「エメラルドの都のお風呂もいいけれど」
 宝石や大理石、金銀で飾られたそのお風呂もです。
「こうしたお風呂も絶品で」
「アンはいつもよね」
「この国にいる時は入っているわ」
 このお風呂にというのです、浴槽は四角で幾つもあります。
「毎日ね」
「そうなの」
「それで薬膳湯はどうだったかしら」
 アンはドロシーに先程入ったお風呂について尋ねました。
「あちらは」
「ワイン風呂ね」
「そう、そちらはね」
「よかったわ、香りもね」
「そうでしょ、香りもよくて」
 ワイン風呂についてです、アンはドロシーに笑顔でお話しました。
「温まって」
「ええ、ワイン風呂は都の宮殿にもあるけれど」
「この国でもあってね」
「日によって入られるのね」
「薬膳湯はその日によって違うから」
「今日はワイン風呂で」
「柚やハーブもあってね」
 そうしたお風呂の時もあるというのです。
「楽しんでね」
「わかったわ、それじゃあね」
「この国にいる限りね」
「そうするわ、じゃあお風呂に入ったし」
「後はお話ね」
「色々起こり得ることはお話したから」
 もう皆それぞれ考えつく限りこれから起こりそうなことをお話しました、その数は相当なものになってしまっています。
「だからね」
「その対策をね」
「今度はお話していきましょう」
「それじゃあ」
 こうお話してでした、二人は今度はそのワイン風呂に入りました。赤いワインの色でしかも香りもそれのお風呂にです。
 そこにいてです、アンは言うのでした。
「色々出て」
「皆本当に色々出してくれたわね」
「じゃあ何があってもね」
「いい様にお話しましょう」
「何が起こるかわからないにしても」
「それでも」 
 こうお話してでした、二人でワイン風呂に入っていますが。
 ドロシーはワインの香りにです、アンに微笑んで言いました。
「凄くいい香りね」
「リラックスするわね」
「ええ」
 実際にというのです。
「ワイン風呂は香りもいいわ」
「そうよね」
「じゃあこの香りを感じて) 
 そして、でした。
「リラックスしていきましょう」
「今以上にね」
「リラックスしたらね」 
 まさにというのです。
「いい考えも出るし」
「そうなのよね」
「だからお風呂も入って」
「ワイン風呂の香りも楽しんで」
 そして、というのです。
「頭を最高にリラックスさせて」
「皆で対策をお話していきましょう」
「是非ね」
 ドロシーもアンも二人でお話します、そうしてその中でアンはドロシーににこりと笑って言いました。
「まさかドロシー王女とこうしてね」
「一緒に冒険したりお風呂に入ったり」
「そうなるなんてね」
 それこそというのです。
「思わなかったわ」
「私もよ、アン王女は最初征服者で」
「そうだったわね」
「そのアン王女とね」
「こうして仲良くお風呂に入るなんて」
「思わなかったわ」
 こうお話するのでした。
「本当に」
「そうよね」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「これがオズの国ね」
 ドロシーはにこりと笑ってアンに言いました。
「誰とでも仲良くなれる」
「そう言うのね」
「ええ、実際にそうでしょ」
「そうね、それはね」
 アンもドロシーの言葉に頷きました。
「その通りね」
「最初はいきなりの出会いでも」
「自然とね」
「仲良くなって」
「こうしてお風呂にも一緒に入る」
「そうした国でしょ」
「オズの国は」
 二人でお話します、そしてです。
 アンはドロシーとこのお話で、でした。あらためて言いました。
「じゃあこれからもね」
「一緒にね」
「お風呂に入りましょう」
「そして他の楽しいこともね」
「一緒に楽しみましょう」
 ドロシーと笑顔でお話するのでした、そのうえでお風呂からあがってこれから起こりそうなことそれぞれへの対策をお話していくのでした。
 そうしてこの日の十時にはお話を終えてでした、夜はぐっすりと寝て。
 朝になって朝御飯を食べ終えた時にでした、国民の一人が宮殿まで来てそのうえでアンに言ってきました。
「あの、お客様が」
「あら、誰かしら」
「はい、ノームの国からです」
「ノーム?」
「予想ーーしていましーーたね」
 チクタクが言ってきました。
「私ーーが」
「ええ、ノームが来ることもね」
 アンはチクタクに玉座から答えました。
「そうなることも」
「そちらーーですね」
「そうね」
「ではーーです」
「もうノームからの侵略はないから」
 このことはもうはっきりしています、ノーム族も変わったので。
「だからね」
「友好的ーーにーーです」
「会いましょう」
「それーーでは」
 こうしてでした、アンはノームの使者とお会いしました、まずは挨拶の後です。
 ノームの使者はアンにノームの国の林檎とルビーから造った林檎の形の装飾品を差し出してです、アンに言いました。
「これは我が王からの贈りものです」
「有り難う」
 アンは使者に微笑んで応えました。
「謹んで受け取らせて頂くわ」
「はい、贈りものを送らせて頂いてからになり恐縮ですか」
 あらたまってです、使者はアンに言いました。
「実はウーガブーの国の下にです」
「ノームの王国の領土が及んだのね」
「はい、五千メートル以上真下ですが」
「五千メートルなの」
「そうです」
「それ位なら」
 それだけ深いならとです、アンは答えました。
「別にね」
「宜しいですか」
「それ位深いのなら」
 それこそというのです。
「もうね」
「ウーガブー王国の領土とは」
「思わないし」
 五千メートル以上下ならというのです。
「だから断ることもなかったし、それに」
「それに?」
「贈りものはその謝罪ね」
「はい、領土の下に来ましたから」
「この国の領土はそこまで深くはないわ」
 五千メートルもというのです。
「私達の作物も資源もないから」
「だからですか」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「私の欲しいものは全部私達の国の木や田畑、お水にあるから」
「資源もまた」
「そう、だからそんな下までは」
 到底というのです。
「意識していないから」
「だからですか」
「贈りものもね」
 林檎や装飾品もというのです。
「別に」
「いえ、これは絶対にです」
「私に受け取って欲しいの」
「はい」
 使者はアンにはっきりと答えました。
「そちらは」
「それはどうしてなの?」
「ウーガブー王国に下にまで領土が及んだことは事実です」
 例え五千メートル以上下でアンがいいと言ってもです。
「ですから」
「林檎と装飾品はなの」
「受け取って下さい」
「どうしてもなのね」
「我が王からのお気持ちです」
「それじゃあね」
 アンも使者の人が強く言うので頷きました、そしてです。
 その贈りものを受け取ることにしました、使者はアンに贈りものを受け取ってもらったことを確認してからでした。 
 あらためてです、アンに言いました。
「そして後日我が王もです」
「この国に来られるのね」
「そうしたいのですが」
「このことも予想通りでしたね」 
 今度は大尉が言ってきました。
「ノーム王が訪問してくる」
「ええ、そうね」
「このことは私が予想していましたが」
「その通りになったわね」
「このことも」
「では」
 アンは昨夜お話した通りにです、使者に言いました。
「是非共」
「我が王が訪問してもですね」
「是非いらして欲しいとね」
 アンは使者に微笑んでです、また言いました。
「お伝えしてね」
「はい、それでは」
 使者はアンに礼儀正しく答えました。
「我が王にお伝えします」
「それじゃあね」
 こうしてでした、使者はアンに深々と一礼してそのうえで、でした。ノームの国に戻りました。この会見にはドロシーもジョージ達もいましたが。
 使者が帰ってからです、トトが最初に言いました。
「このことかな、これからこの国に起こることって」
「ノーム王の訪問ね」
「そうなのかな」
 こうアンに言うのでした。
「予想していたことだけれど」
「そうかしら」
「そうじゃないかな」
 トトはまたアンに言いました。
「やっぱり」
「そうかしら」
「僕はそう思うけれどね」
「その可能性はあるわね」
 アンも否定せずに言いました。
「確かに」
「そうですね、色々考えましたが」
 カルロスも腕を組んで考えるお顔で言います。
「ノーム王の訪問も」
「確かにこれから起こることですね」
 ナターシャもカルロスの言葉に頷いて言いました。
「チクタクも予想しましたし」
「じゃあトトの言う通りにですね」
 神宝も考えるお顔になっています。
「ノーム王の訪問がそれということで」
「何が起こるのかって思っていましたけれど」
 恵梨香もこのことは心配していました。
「ですがこうしたことなら」
「平和でよかったですね」
 最後にジョージが言いました、それも微笑んで。
「何が起こるかって思ってましたけれど」
「そうね、本当に」
 アンは五人の言葉も聞いて頷きました。
「これ位なら」
「じゃあノーム王が来られたら」
「おもてなしよ」
「そちらをですね」
「させてもらうわ、ではね」
 アンはウーガブーの国の主としても言いました。
「早速ノーム王訪問の時の用意をするわ」
「はい、わかりました」
「それではこれよりです」
 王宮にいる人達がアンにすぐに応じました。
「おもてなしの用意をします」
「国賓としてです」
「お迎えされますね」
「そうよ、国賓よ」
 カリフ王の待遇はというのです。
「ドロシー王女達と同じくね」
「わかりました」
 周りの人達も応えました、そして早速国全体でカリフ王をお迎えする準備に入りました、その中にはアンもいて。
 自分自身せっせと身体を動かして準備の作業をしています、ジョージ達五人も一緒ですがそのアンを見て言うのでした。
「アン王女もなんだね」
「自分から動かれて」
「それで準備するんだ」
「凄いわね」
「本当にね」
「だって小さな国だから」
 だからと答えるアンでした。
「これ位はね」
「ウーガブーの国ではですか」
「普通なんですか」
「そうよ、というか私自身ね」
 にこりとしてこうも言うアンでした。
「これ位はね」
「普通ですか」
「そうなんですか」
「ええ、そうよ」
 至ってというのです。
「私は自分で動かないと気が済まないのよ」
「何かそれって」
 そう聞いてジョージはこう言いました。
「オズの国の王女様らしいですね」
「そうよね」
 ドロシーも一緒に作業をしながら笑顔で言いました。
「私にしてもね」
「はい、オズマ姫もそうで」
「ベッツイやトロットもね」
「皆さんご自身から動かれますね」
「自分からね」
「そうされますね」
「命令することはね」
 オズの国の王女達はです。
「どうも性に合っていないの」
「まずは、ですね」
「そう、自分から動く」
「それが、ですね」
「オズの国の王女なのよ」
「そうなんですね」
「私やアン王女は特にそうね」
 せっせせっせとです、ドロシーは右に左に動いています。そのうえであらためてこんなことを言うのでした。
「動くタイプよ」
「そうなんですね」
「だから冒険に出ることも多いのよ」
「動かないと気が済まないからこそ」
「そうなの」
 まさにというのです。
「立ち止まっていると」
「どうしてもですか」
「我慢出来ないの、人にあれこれさせて自分は何もしないことは」
 そうしたこともというのです。
「私達には無理ね」
「そう、人にああしろこうしろとか言うからには」 
 アンもドロシーに負けない位動いています、王国の人達にああしてこうしてと言いますがまずは自分自身がです。
 動いていてです、こう言うのです。
「自分もしないとね」
「じゃあ偉いから走らないとかは」
「いつも走ってるでしょ」
「そうですね」
「だからいつも動きやすい格好なの」 
 ドロシーよりもさらにです。
「ドレスよりもね」
「動きやすい格好ですね」
「農作業だってするし」
「そちらもですか」
「よくするわ、あぜ道も掘るし」 
 こうしたこともするというのです。
「林檎採りも綿抜きもね」
「そちらもですか」
「するわよ、草刈機で草も刈るし」
「何か本当に」
 ここまで聞いてしみじみとして言うジョージでした、ジョージは活発に誰よりも真っ先に動いて神宝が動きつつ冷静に周りを見て何をやるべきか言ってカルロスは動きつつムードを作っています。ナターシャは自分も動きながら何をすべきか言って恵梨香は作業に必要なものを次から次に出してくれています。五人でそれぞれです。
「アン王女は村の娘さんみたいですね」
「だってこの国の規模はね」
「村とですか」
「同じだから」
 オズの国の中のです。
「私もなのよ」
「王女様、国家元首であって」
「そう、働き手の一人なのよ」
「そうなるんですね」
「そうなのよ」
「だから村全体で動いて」
 畑仕事にもカリフ王訪問の準備にもです。
「そうしているのよ」
「そうですか」
「そうなの、じゃあ動いていくわよ」
「わかりました、一緒に頑張りましょう」
「私達もいますから」
「頼りにーーしてーー下さい」
 大尉とチクタクもお掃除をしてあちこちに飾りものを付けています、この二人もしっかりと働いてくれています。
「寝る必要も休む必要もありません」
「そうしたーー身体ーーなので」
「ですから是非」
「何ーーなりーーと」
「ええ、貴方達にも勿論ね」
 アンは二人にも笑顔で応えました。
「頼りにさせてもらうわ」
「はい、それでは」
「共ーーに」
「頑張りましょう、けれどね」 
 首を傾げさせてこんなことも言ったアンでした。
「これがこれからこの国で起こることかしら」
「違うかもっていうんだ」
 トトも自分が出来ることをしつつアンに応えました。
「アン王女は」
「そうであればいいけれど」
「違うかも知れないんだね」
「だって何が起こるかはまだ言われていないから」
 だからだというのです。
「ノーム王の訪問かどうかは」
「そこまではだね」
「わからないでしょ」
「結局何が起こるかわからないとね」
「安心出来ないでしょ」
「そうだね」 
 トトもアンの言葉に頷きます。
「僕はこれかなって思ってるけれど」
「その可能性もあるけれど」
「違う可能性もある」
「そうでしょ」
「そのことは事実だね」
「それじゃあちょっと」
 また言うアンでした、荷物を運びながら。
「安心出来ないわ」
「そういうことだね」
「どうもね、まあ何が起こってもね」
「色々対策も考えてきたし」
「備えは出来ているわ」
「そうだね」
「この国だけのことなのは確かだし」
 このことは安心しているアンでした。
「まだましだよ」
「若しもね」
 ドロシーがここで言うことはといいますと。
「オズの国全体に関わる様な」
「そうしたことならね」
「もっと大変よね」
「そうしたこともあったでしょ」
「ええ、これまで何度かね」
 そしてドロシーはその騒動の度に冒険に出て騒動の解決に尽力してきました。このことからもドロシーはオズの国の皆から愛されているのです。
「そうなってきたわ」
「ノーム王が妖魔達と一緒に攻めようとしてきたり」
「オズマが当然いなくなったり」
「色々あったわね」
「これまでね、けれどね」
「今回はこの国だけのことだから」
「まだね」
 そうしたオズの国全体に関わることではないからというのです。
「これだけの心配で済むのかも」
「そうよね」
「この国のことも心配だけれど」
「オズの国全体となると」
「もっともっとよ」
 それこそというのです。
「それもそ皆が頑張らないとね」
「そうなっているし」
「またそういうことになったら」
 その時はというのです。
「そうなるわ」
「そういうことね」
「この国で起こることがこの国だけなら」
「本当に遥かにましね」
「アンもそう思うでしょ」
「私はウーガブーの国の王女でね」
 そしてというのです。
「同時にオズの国の住人よ」
「そうよね」
「オズの国なくしてウーガブーの国はないわ」
 言うまでもなくです、ウーガブーの国がオズの国の中にあるからです。もっと言えばウーガブーの国はオズの国の中のウィンキーの国にあります。
「絶対に」
「そういうことね」
「私にとってはどちらも大事だけれど」
 ウーガブーの国もオズの国もです。
「ウーガブーの国だけのことならね」
「まだね」
「ずっと気が楽よ、オズの国に何かあれば」
 その時はといいますと。
「ウーガブーの国だけが無事でも」
「若しそうでもね」
「何の意味もないわ」
 ウーガブーの国だけが残ってもというのです。
「それだけじゃね」
「そうよね」
「ええ、だからね」
「今回はね」
「まだ気が楽よ」
「悪いことでもなさそうだし」
「はっきりしないことは不安だけれど」
 このことは確かにそうです、アンにとっては。
「けれどね」
「ウーガブーの国だけのことなら」
「まだ何とか出来るわ、むしろね」
「何とかしないと」
「いけないわ」
 アンは動いています、そうしつつ目の光はしっかりとしています。
「絶対に」
「何があってもね」
「それこそね、それとね」
「それと?」
「いえ、ティータイムにはね」
 午前のその時にはというのです。
「さっきノームの使者さんから貰ったね」
「あの林檎をなの」
「頂きたいけれど」
「いいわね、ノームの人達の林檎もね」
「これが美味しいのよね」
「そうなのよね」
「だからね」
 大好物の林檎だからこそです、アンも微笑んでいます。
「今から楽しみよ」
「それは何よりね」
「まずは林檎を食べることよ」
 何といってもというのです。
「食べる時はね」
「まずはなの」
「そう、まずはね」
「林檎はデザートだから最後にならないかしら」
 くすりと笑ってです、ドロシーはアンに尋ねました。
「そちらにならないかしら」
「あっ、言われてみれば」
「そうでしょ」
「ええ、本当にね」
「サラダに入れたりソースにも使うけれど」
「カレーにも入れたりね」
「林檎は基本はデザートだから」
 それでというのです。
「まずは、じゃなくて」
「最後ね」
「そうなるわね」
「まして私は林檎か林檎のお菓子を絶対に食べるから」
 朝昼晩のお食事の時にはです。
「それならね」
「最後ね」
「そうなるわね、じゃあ最後にね」
「お食事の後に」
 まさにというのです。
「食べましょう」
「その林檎をね」
 ノーム族の林檎をです、こうしたお話をしてでした。
 アンはその林檎をデザートの時に食べました、そうして明るい笑顔で言うのでした。
「ノーム族の林檎もいいわね」
「地下で育てている林檎ですね」
「それですね」
「そうよ、この林檎は木に実るけれど」
 ジョージ達にその林檎を食べつつお話します。
「他には畑で作ったり掘って出たりお池や海で採れたりするわ」
「オズの国ではですか」
「そうした林檎もあるんですね」
「林檎の木に実るだけじゃなくて」
「そうしてですか」
「出て来るんですね」
「そうなの」
 オズの国のこの事情もお話しました。
「オズの国では果物は木に実るだけじゃないの」
「お野菜も一緒よ」
 ドロシーは五人にこちらの作物のお話もしました。
「こちらもね」
「そういえば人参の木があったり」
「トマトやパイナップルも」
「他にはジャガイモとか」
「色々と木に実ってますね」
「オズの国では」
「お弁当やお菓子の木もあるのよ」
 オズの国ではです。
「だからそうした場合もあるのよ」
「そうなんですね」
「オズの国は不思議の国ですから」
「だからですね」
「そうしたこともあるんですね」
「不思議じゃないですね」
「全然ね」
 オズの国では、というのです。
「そうした国ということよ」
「お空にお魚が飛んでいたりしますしね」
 ジョージはドロシー達と飛行船でお空の冒険をした時のことを思い出しました。
「この国では」
「そうでしょ、だからね」
「林檎fが掘ったら出ることも」
「あるのよ」
「畑で作ることも出来るんですね」
 恵梨香はそのことを微笑んで言いました。
「その場合も」
「そうなの」
「西瓜が実る木ですか」
 神宝は西瓜の木を想像して思わず笑顔になりました。
「面白いですね」
「海や川でも採れる」
 お野菜が果物がとです、ナターシャも想像してみました。
「面白いですね」
「ううん、やっぱりオズの国って面白いですね」
 カルロスもにこにことしています。
「そうした林檎も食べたいですね」
「そうでしょ、今度そうしたお野菜や果物もご馳走するわ」
 ドロシーが五人に言いました。
「そちらも美味しいから」
「はい、お願いします」
「一体どんな味が楽しみです」
「外の世界とは違うお野菜や果物も」
「是非です」
「食べてみたいです」
「そういうことでね、それじゃあ」
 ここまでお話してです、ドロシーはまた言いました。
「御飯の後でね」
「またですね」
「おもてなしの用意ですね」
「そう、カリフ王のね」
 その彼のというのです。
「そして大事なことは」
「卵はですね」
「絶対にですね」
「出したらいけないですね」
「それだけは」
「そうよ、だから卵は出さないわ」
 これだけはというのです。
「そのことは気をつけてね」
「はい、わかりました」
「そのことも覚えておきます」
「お料理にも出さないから」
 アンもこのことに言及します。
「わかったわね」
「わかりました」
 五人はアンの言葉にも頷きました、そうしてです。皆でカリフ王をもてなす用意を進めていきました。一緒に身体を動かして。



何かってのはノーム王の訪問。
美姫 「本当にそうなのかしら」
別の何かの可能性もまだありそうだよな。
美姫 「そうよね」
一体どうなのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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