『オズのアン王女』
第五幕 カバキリンの平原
一行はカバキリン達がいる平原に向かいます、黄色い煉瓦の道を進みながらです。
その途中で、です。ドロシーはアンに尋ねました。
「ねえ、私達に会った時カバキリンさん達に乗ってたけれど」
「好意で乗せてもらってね」
「運んでもらってなのね」
「そうなの、カバキリンさん達の縄張りの限界までってことで」
「それでその途中でなのね」
「合流出来たのよ」
「そうだったのね」
ドロシーはここまで聞いてまた頷きました。
「最初道でカバキリンさん見た時はね」
「少し驚いた?」
「珍しいって思ったわ」
驚きはしませんでしたがそうだったというのです。
「カバキリンさんが煉瓦の道を歩くなんて」
「それでなのね」
「あらっ、と思ったのよ」
数々の冒険を経験しているドロシーは滅多なことでは驚きません。
「こんなこともあるのね、って」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
「私達がいて」
「これは面白いって思ったわ」
「そういうことね」
「ええ、そして合流出来て」
それでというのです。
「よかったわ」
「ええ、思ったより簡単にね」
「確実に合流出来るとは思ってたわ」
「オズマ姫にお互いの場所を教えてもらってるから」
「だからね」
まさにこのことからです。
「間違いなくって思ってたわ」
「そうだったのね」
「それでね」
合流出来て、というのです。
「ウーガブーの国にもね」
「行けるって思ってたのね」
「確実にね」
「そこはドロシーね」
いつも明るく前向きな彼女らしいというのです。
「まあ私もね」
「絶対にって思ってたでしょ」
「だって私も連絡受けたから」
「そうよね」
「それじゃあ今から」
「一緒にね」
「ウーガブーの国に行きましょう」
二人でお話するのでした、ドロシーの足元にはトトがいて二人の後ろにチクタクと五人の子供達それに大尉がいます。
大尉は穏やかな表情でチクタクにお話をしていました。
「お久し振りです」
「こちらーーこそ」
「お元気そうで何よりです」
「はいーー大尉も」
「私はこの通りです」
明るく応える大尉でした。
「いつも通りですよ」
「そうーーですか」
「チクタクさんもですね」
「ネジをーー巻いてーーくれれば」
その時はというのです。
「安心ーー出来ます」
「いつも通りですね」
「元気ーーです」
ネジを巻いてくれればというのです。
「このーー通り」
「それがチクタクさんですからね」
「はいーー食べることもーー寝ることもーー必要ありませんが」
このことは大尉と同じでもです。
「それでもーーです」
「ネジは、ですね」
「巻いてーー欲しいーーです」
「では私も」
「お願いーーします」
こうお話していました、そして。
チクタクにです、五人の子供達も言うのでした。
「チクタクさんもオズの国の人で」
「機械の人になりますね」
「食べることも寝ることも必要ない」
「そして寝る必要もない」
「けれど、なんですね」
「私はーーネジです」
身体のそれがというのです。
「必要ーーなのです」
「巻いてもらわないとですね」
「動けない」
「そこが木樵さんやかかしさんと違いますね」
「大尉さんとも」
「そうなんですね」
「そうーーなのです」
いつもというのです、そしてです。
その話を聞いてです、トトも言うのでした。
「ネジが止まるとチクタクも動かなくなるけれど」
「それがーー何か」
「その動かなくなる時が休憩かな」
チクタクにとってというのです。
「そうかな」
「そうかもーー知れませんね」
チクタクも否定しませんでした、トトのその言葉を。
「私にーーとっては」
「そう思うんだね、チクタクも」
「はいーーただ止まっているーー時は」
ネジが完全に止まってです。
「私はーーその間のことをーー覚えていません」
「一切だね」
「何もかもがーー動いていないので」
「完全に眠っている?」
「そうしたーー状態ーーでしょうか」
まさにそうだというのです。
「皆さんのーー睡眠とはーー違うかと」
「ああ、睡眠の時もね」
「夢を見るしね」
ジョージがトトに応えます。
「寝ている間に」
「動いたりもするし」
神宝は寝相のお話もします。
「寝相でね」
「いびきや寝言もあるし」
カルロスはこちらのことを思いだしました。
「途中おトイレに行きたくなって起きたり」
「普通にぱって起きる時もあるわね」
ナターシャも言います。
「寝ていても」
「起きたらお腹空いてて喉も渇いてて」
恵梨香は起きた時のことを思い出して言います。
「そうした風なのよね」
「寝ていても身体の全てが止まってる訳じゃないからね」
トトはムシノスケ教授や魔法使いといったオズの国の知恵者達から聞いたお話からジョージ達に応えます。
「心臓とかの内蔵はいつも動いてるから」
「寝相もあって」
「そう、夢も見るんだ」
「動いている部分があるからだよね」
ジョージはそのトトのお話に頷きます。
「そうしたことがあるのは」
「そうだよ、完全に止まっていないんだ」
「人は寝ていても」
「それが生身なんだけれど」
「私はーーです」
チクタクはといいますと。
「完全にーー止まります」
「そこが違いますね」
大尉も言います。
「チクタクさんのお身体は」
「そうーーですね」
「ネジがですね」
「止まればーー完全にーー止まります」
「そういうことですね」
「睡眠とはーーです」
チクタクが見てもです。
「またーー違いますーーね」
「そうなりますね」
「そこはね」
本当にと言うトトでした。
「チクタクの身体のことだね」
「私ーー独特ーーですね」
「うん、チクタクの身体だよ」
彼だけのというのです。
「まさに」
「そうなのーーですね」
「チクタクの個性だよ」
こうも言ったトトでした。
「まさにね」
「個性ーーですね」
「そうだよ、個性だよ」
「悪いことーーではなく」
「いいことでもないかも知れないけれど」
「個性ーーですね」
「そうだよ」
こんなことをお話するのでした、そして。
そうしたお話をしてカバキリン達のいる平原の前まで来たところで、でした。アンは皆にこう言ったのでした。
「いい時間よ」
「お昼ね」
「ええ、その時間になったわ」
こうドロシーに応えました。
「今ね」
「じゃあお昼にしましょう」
「さて、今日は何を食べようかしら」
「バーベキューはどうかしら」
ドロシーはアンにこのお料理を提案しました。
「テーブル掛けで出して」
「それで焼きながらよね」
「食べるのはどうかしら」
「いいわね」
にこりと笑ってです、アンはドロシーに答えました。
「皆で食べるのも」
「そうでしょ」
「それじゃあデザートも出して」
「林檎よね」
「やっぱり私は林檎がないとね」
林檎を言われて笑顔になったアンでした。
「駄目よ」
「一食一個ね」
「絶対にね」
「そこもわかってるわ」
既にと返すドロシーでした。
「少なくとも貴女の分は出すわ」
「楽しみにしてるわ」
「ええ、じゃあ今からね」
早速テーブル掛けを出すドロシーでした。
「皆で食べましょう」
「是非ね」
こうしてでした、ドロシーがテーブル掛けを出してでした。そこからバーベキューの道具にお肉やお野菜、飲みものにデザートも出しました。
牛肉が沢山あってソーセージやスパムもあります。そして人参やカボチャ、玉葱に茄子といったお野菜も一杯あります。どの食材ももう奇麗にスライスされています。
そしてその食材をです、皆で次から次にです。
バーベキュー焼き器の上に置いて焼いていきます、勿論お皿やコップも用意されていてコップにジュースも入れてです。
飲んで食べはじめます、アンは皆と一緒に食べながら言うのでした。
「こうして皆と食べると」
「いい気持ちよね」
「国ではいつもそうしてるの」
こうドロシーに答えます。
「ウーガブーの国ではね」
「そうなのね」
「そしてね」
それにというのです。
「楽しく過ごしてるの」
「そうなのね」
「国民の誰かとね」
「一緒に食べてるの」
「朝昼晩もティータイムも」
つまち本当に何時でもというのです。
「そうして食べてるわ」
「私と一緒ね」
「ドロシーもよね」
「本当にいつもね」
彼女にしてもというのです。
「いつも誰かと一緒に食べてるわ」
「そうなのね」
「ええ、トトもいてくれるし」
「僕は本当に何時でもだよ」
ドロシーの足元で彼女が自分のお皿に入れてくれたものを食べながら言うトトでした。
「ドロシーと一緒だからね」
「そう、トトはね」
ドロシーもトトににこりとして応えます。
「何時でもよね」
「ドロシーと一緒だよ」
「時々別の誰かと冒険をすることもあるけれど」
「基本はね」
「一緒よね」
「何時でもね」
王宮でも普通の冒険の時もです。
「そうだよね」
「トトは私の一番古いお友達だから」
「オズの国でもね」
「一緒よ」
「そういえばトトも」
ジョージがトトを見つつ言いました、五人共バーベキューのお肉やお野菜を沢山食べています。勿論ジュースも楽しんでいます。
「カンサスにいたんだね」
「うん、あのお家にね」
「それで楽しく過ごしていたね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「あの時も楽しかったよ」
「色々あったけれど」
ドロシーもカンサスにいた頃のことを思い出しています。
「あの時も楽しかったわ」
「おじさんおばさんと一緒に暮らしていてね」
「大平原の中のお家でね」
「そうだったね」
「おじさんとおばさんもオズの国に来てくれて」
ドロシーは育ててくれたヘンリーおじさんとエムおばさんのことも思い出しました。
「家族一緒にもなって」
「オズの国でもね」
「今の私はとても幸せだけれれど」
「あの頃もね」
「幸せだったわ」
確かに色々あって大変でもありましたが。
「トトもいてくれて」
「そうだったね」
「カンサスは今も広い農場がありますよ」
ジョージはドロシーに今のこの州のお話をしました。
「見渡す限りの大平原で」
「今もなのね」
「はい、僕は別の街で生まれ育ってますけれど」
「カンサスに行ったこともあって」
「今もです」
「私達がいた時と同じね」
「そうです、文明は進歩してますけれど」
ドロシーがいた頃よりもです、テレビもパソコンもあって自動車もあります。
「そこは一緒です」
「カンサスは」
「そうなんですよ」
「そうなのね」
「何かアメリカもそれぞれ違うんですね」
大尉は二人のお話を聞いて思いました、この人とチクタクは食べずに皆が美味しいものを食べてにこりとなる笑顔を見ています。
「そこは」
「ええ、そうなの」
ドロシーは大尉に答えました。
「私がいた頃からね」
「カンサスはそうで」
「東部と西部でも違うの」
そちらでもというのです。
「アラスカは寒くてフロリダは暑くて」
「寒暖の違いもあるんですね」
「それも相当にね」
「つまり同じ国でもですね」
「地域によって全然違うの」
アメリカという国はというのです。
「そうしたお国なの」
「そうですか」
「他の国もそうだったりしますよ」
ジョージはこのことはアメリカだけではないというのです。
「オズの国も地域によって全然違いますけれど」
「中国も河があれば砂漠もありまして」
神宝がお国のお話をします。
「東北は寒くて広州は暑いです」
「日本もです」
恵梨香も言います。
「北海道と沖縄じゃ全然違うんですよ」
「ちょっとブラジルは」
カルロスは少し苦笑いで言いました。
「大体暑いですね、特にアマゾンは」
「ロシアも寒い場所が殆どで」
ナターシャもカルロスと同じ表情です。
「あまり」
「そうしたお国もあるけれど」
それでもとです、ドロシーも大尉にお話します。
「アメリカとか中国とか日本みたいにね」
「地域によって違うお国もですね」
「あるの、暑かったり寒かったりするの」
「成程、外の世界も面白いですね」
「そうでしょ」
「私は暑いのも寒いのも平気ですが」
熱も氷もです、大尉の場合は。
「気候の寒暖の違いはオズの国では」
「ないでしょ」
「はい」
それはというのです。
「何処も快適です」
「その変わり寒暖がね」
「なくて」
「外の世界ではそれがあるの」
「そうなのですね」
「これが特徴の一つなの」
外の世界のというのです。
「これもまた面白いでしょ」
「はい、確かに」
「暑過ぎたり寒過ぎると大変だけれど」
それでもというのです。
「また面白いのよ」
「そうなんだよね」
トトも言います。
「外の世界のそうしたところもね」
「ええ、けれどね」
「オズの国はね」
「過ごしやすいわ」
「このことは事実だね」
「オズの国は何処でも凄く快適よ」
その気候がというのです、ドロシーはにこにことしてお話します。
「このことが有り難いわ」
「全くだよね」
「暑過ぎず寒過ぎないから」
「快適で結局のところは」
「どちらがいいかというと」
「言えないかな」
トトはドロシーとお話しました、そうしたお話をしつつです。バーベキューを食べていってその中でアンは皆に言いました。
「そうそう、林檎ってね」
「林檎が?」
「お料理にしてもいいのよね」
にこりとして言うのでした。
「パイやケーキやジャムにもして」
「それでなのね」
「そう、それにね」
ドロシーとやり取りをしつつ皆にお話します。
「芯を抜いてそこにバターやシロップを入れてオーブンで焼いても」
「あれいいわよね」
「美味しいのよ」
「そのお料理もなのね」
「身体にもいいし」
「じゃあ今度出すわね」
「私の方でも出せたらね」
出すというのです、そんなお話をしつつです。皆はデザートの林檎も食べるのでした。そしてそのうえでなのでした。
皆は食べ終わってからまた出発します、すると道の左右が平原になっていまして。
ウィjンキーの黄色の平原の上にカバキリン達が沢山いました、どのカバキリンも静かに草を食べたり寝たりしてくつろいでいます。
その彼等を見てです、ジョージは言いました。
「何かね」
「うん、そうだよね」
「カバキリンはね」
そのジョージに神宝とカルロスが応えます。
「怖いってイメージがね」
「あるんだよね」
「そうなんだよね」
ジョージは姿が見えない平原のことを思い出して言うのでした。
「今は大人しくても」
「あの時のお話を読むと」
「どうしてもね」
ナターシャと恵梨香も言います。
「凶暴っていうか獰猛で」
「身構えてしまうわね」
「そうだね」
ジョージは女の子達にも応えました。
「どうも」
「第一印象ですね」
大尉は五人のそれを見て言いました。
「つまりは」
「そうですか」
「うん、実際はね」
「別にですね」
「今のカバキリンはね」
それこそというのです。
「大人しいですよ」
「そうですか」
「怖がる必要はないです」
「だからですね」
「私達も乗せてくれたのよ」
アンも子供達にお話します。
「穏やかにね」
「そうなんですね」
「そう、このことはガーゴイル達だってそうでしょ」
「そういえば」
「そうよ、オズの国の生きものも種族達も」
「以前に比べてですね」
「遥かに穏やかになったのよ」
こうジョージにもお話します、ジョージにお話して他の四人にも説明します。
「昔に比べると」
「だからですか」
「カバキリン達もね」
「大人しいんですね」
「そうよ」
「そうですか」
「オズの国はね」
アンが見たこの国はといいますと。
「昔に比べて本当に穏やかになったわ」
「そうね、確かに」
ドロシーもアンのその言葉に頷きます。
「そうなったわね」
「そうよね」
「ええ、昔はね」
それこそとです、ドロシーも言うのでした。
「もっとね」
「カバキリン達についても」
「獰猛で」
「ドロシーも色々とね」
「ええ、危険な目にも遭ったわ」
数々の冒険の中で、です。ドロシーの最初の頃の幾つかの冒険は何度もピンチがあるといったものだったのです。
「それこそね」
「そうよね」
「アン王女もね」
「ええ、私も最初にドロシーに会った頃はね」
「色々とね」
「ピンチに遭ったわ」
それを何とか乗り越えていくといった冒険だったのです。
「そうよね」
「そのころと比べると」
「カバキリン達もね」
「穏やかね」
「そうなったわ」
そうしたお話になります、そしてです。
カバキリンの中の一匹がです、アンとチクタクに言ってきました。
「やあ、来たね」
「さっきは有り難う」
「お陰でーー助かりーーました」
アンとチクタクはそのカバキリンに笑顔で挨拶をしました。
「こうして今はね」
「楽しくーー旅をーーしています」
「それは何より、それにしても」
ここでカバキリンはこう言うのでした。
「皆でウーガブーの国に行くんだよね」
「ええ、そうよ」
その通りだとです、アンはカバキリンに答えました。
「今からね、私の場合は戻るということだけれど」
「ウーガブーの国で何かが起こるんだね」
「そう言われたから」
だからというのです。
「戻るけれど」
「ううん、いいことが起こるといいね」
「全くよ、けれどね」
「悪いことにはだね」
「何があってもね」
それこそというのですy。
「いい様に備えるわ」
「しっかりしてるね」
「だって私はウーガブーの国の国家元首よ」
だからだというのです。
「それならよ」
「そうしなければならないんだね」
「その義務があるから」
だからだというのです。
「どんな悪いことが起こってもよ」
「いい様にするんだね」
「そう、今のところ災害の心配はない様だけれど」
それでもというのです。
「対応出来る様にはね」
「するんだね」
「そうよ」
まさにというのです。
「私はね」
「成程ね」
「まあいいことが起こって欲しいけれど」
「世の中そうともばかり限らないからね」
オズの国でもこのことは同じです、やっぱりこの国でも悪いことは起こるのです。誰かが死んだり破産する様なことはなくても。
「どうしても」
「そうでしょ」
「僕達だってそうだしね」
「だからね」
「出来るだけだね」
「そう、戻って」
そしてというのです。
「備えをしていくわ」
「それでこそ国家元首だね」
カバキリンもアンの言葉に頷きます。
「見事だよ」
「いえ、これはね」
「当然だっていうんだね」
「だって私がウーガブーの国の国家元首よ」
こう言うのでした。
「だったらよ」
「こうしたこともなんだ」
「当然よ」
「そういうことなんだね」
「そう、それとね」
「それと?」
「これまではね」
アンはこれまでの自分の政策を振り返って言うのでした。
「私そうした備えの政策はね」
「してこなかったんだ」
「今気付いたわ」
カバキリンとお話をしてというのです。
「備えにはね」
「そうした政策はなんだ」
「してこなかったわ」
「あっ、そういえば」
ここでドロシーも言います。
「オズマはいつも万が一を考えてね」
「オズの国全体の政治をしているのね」
「そうよ」
アンにお話するのでした。
「この大陸全体のね」
「そうよね、けれどね」
「アン王女はっていうのね」
「そこまでしていなかったわ」
悔やむものをそのお顔にも見せています。
「迂闊だったわ」
「木樵さんもですね」
大尉は主君であるウィンキーの皇帝のことを思い出しました。
「災害、不測の事態はです」
「起こるものとよね」
「そう考えておられて」
「政治をしているのね」
「はい、かかしさんやジャックさんと相談しながら」
「三人共オズの国の政治にも関わってるわよ」
ドロシーは木樵を軸とした三人がウィンキーだけでなくオズの国の政治全体にも関わっていることをお話しました。
「あらゆる不測の事態を考えて」
「そうなのね」
「だからウーガブーの国も」
「オズの国の中にある国だから」
「何かあったらね」
その時はというのです。
「ちゃんと備えは出来ているわよ」
「いえ、それでもね」
「ウーガブーの国としてなの」
「ちゃんとしていくわ」
こうドロシーに言うアンでした。
「私もね」
「そうなのね」
「だって自分達で何とかしないと」
「駄目だから」
「やるわ」
こう強い決意をです、ドロシーにお話しました。
「そうしないと何もならないから」
「うん、その意気だよ」
トトはアンのその心意気を受けて彼女に言いました。
「やっぱりまずは自分でもね」
「そうよね」
「気付いたらすぐにね」
「気付くのが遅かったかしら」
「いや、何かあってから気付いたら遅いけれど」
「何もないうちにから気付いたら」
「いいんじゃないかな」
これがトトの考えでした。
「だからね」
「それでなのね」
「アン王女は遅くないと思うよ」
「だといいけれど」
「じゃあ政治頑張ってね」
カバキリンはまたアンに言いました。
「これから」
「そうするわね」
「是非ね、じゃあ僕達はね」
「ここでなのね」
「くつろいでいるよ」
そうするというのです。
「このままね」
「そうなのね」
「うん、のどかに食べて休んで」
「そうしてよね」
「暮らしていくよ」
こう言うのでした。
「のどかな中にいると」
「のどかになるわね」
「そうなっていくね」
自然にというのです。
「僕達も」
「ええ、それはあるわね」
「アン王女もだよね」
「私もね。ウーガブーの国にいたから」
のどかで平和なこの国にです。
「ずっとね」
「穏やかになったんだね」
「そうなったわ」
「最初からかな」
「今思うと」
かつてオズの国を征服しようとしたその時もです、この思いつきが結果としてアンをオズの国全体のデビューさせています。
「そうね」
「ええ、アン王女はね」
ドロシーもそのアンに言います。
「やっぱりね」
「穏やか?」
「基本ね」
「そうなのね」
「活発だけれど」
それでもというのです。
「怒ったりしないから」
「怒ることはね」
アンにしてもです。
「私も好きじゃないわ」
「そうよね」
「怒っても仕方ないし」
だからだというのです。
「私もね」
「怒らないのね」
「そうなの、ウーガブーは穏やかだし」
それで何か起こってもというのです。
「怒ることもないから」
「そうよね」
「それで私もなのね」
「穏やかだと思うわ」
活発かつ穏やか、それがアンなのです。それに加えて好奇心旺盛なものもあります。
「私はね」
「成程ね」
「やっぱりやたら怒ったりするよりもね」
カバキリンがまた言います。
「穏やかな方がいいよね」
「そうよね」
「うん、僕もそう思うよ」
カバキリンはドロシーにも言いました。
「ずっと穏やかに暮らしたいね」
「そうよね」
「じゃあ君達はこれからだね」
「ウーガブーの国に向かうわ」
「それじゃあまた会おうね」
別れの挨拶は彼からでした。
「ここに来た時はまた宜しくね」
「それじゃあね」
アンが笑顔でカバキリンに挨拶をしました、そしてです。
皆はカバキリン達と笑顔で別れて煉瓦の道を進んでいきます。平原から森の中に進んでいくとです。一行にです。
木の上から語りかける声がありました、その声の主は梟でした。
梟はアン達を見てです、こう言ってきたのです。
「ウーガブーのアン王女かな」
「ええ、何かしら」
アンはその梟に顔を向けて尋ね返しました。
「私に何か用?」
「要はないよ」
それはないと言う梟でした。
「別にね」
「そうなの」
「ただ、顔を見て気付いたんだ」
「私も?」
「僕顔の相がわかるけれど」
「じゃあ私の相も見て」
「うん、君はね」
アンはといいますと。
「これから大きなことが起こるね」
「大きなこと?」
「うん、そして最後にはね」
どうなるかといいますと。
「いい結果に終わるね」
「そうなの」
「そう出ているよ」
お顔にというのです。
「僕が見た限りだとね」
「いいことね」
「大きなことが起こってね」
そしてというのです。
「そうなるよ」
「じゃあ」
アンは梟の自分への話から思いました、今自分達がウーガブーの国へアンにとっては戻っているのかをです。
「やっぱり」
「そうかも知れないですね」
大尉がアンに応えました。
「やはり」
「これからウーガブーの国で起こることね」
「それが大きなことで」
「それが最後はいいことになる」
「そうかも知れないですね」
「そうね」
アンは大尉の言葉に考えるお顔になって言いました。
「話が合わさってるから」
「その可能性はありますね」
「僕は君達の事情は知らないけれど」
それでもとです、梟はまた言ってきました。
「アン王女のお顔には出てるよ」
「そういうことね」
「頑張ってね」
梟はアンにエールも送りました。
「そうしてね」
「うん、それじゃあね」
「是非ね、じゃあ僕は」
梟はここまで言ってそして今度はこう言いました。
「少し寝るよ」
「夜までなのね」
「梟だからね」
梟は夜行性です、それでなのです。本来は昼に寝て夜に起きるものです。だからもう寝るというのです。
「ちょっと目が覚めて君達を見掛けたけれど」
「会ったのも縁かしら」
「そうかも知れないね」
「この森は何度か通ってるけれど」
「僕に会ったのははじめてだね」
「そうだったわ」
見れば梟の羽毛は黄色いです、ウィンキーの梟だけあって。
「貴方にはじめて会ったわ」
「僕もアン王女の名前は知ってたけれど」
「それでもなのね」
「はじめて会ったよ」
「この森にいても」
「何度も通る場所でも会えない時もあるね」
「そうね」
「時と場合によるよ」
誰かと誰かが出会えるにはです。
「そういうものだよ」
「全く以てそうね」
「じゃあ会えたから」
「これからね」
「宜しくね」
二人で笑顔でお話するのでした、そしてです。
梟は何処かに消えました、梟の姿が見えなくなってでした。皆は再び出発しますがアンはその中で思うのでした。
「何かあるのは間違いないね」
「そうーーですね」
チクタクがアンに応えます。
「ウーガブーのーー国で」
「そうよね」
「だからーーです」
「あの梟も私にそう言ったのね」
「私もーーそうーー思います」
「やっぱりそうね」
「そしてーーです」
チクタクはさらに言いました。
「最後ーーは」
「いいっていうけれど」
「そうなるならーーです」
「安心していいかしら」
「いえ」
「いえ?」
「そうなるーー様にです」
チクタクはアンに言うのでした。
「励むーーべきかと」
「そういうことね」
「はい」
こうアンに言います。
「幸せなーー結末をーー目指して」
「そのうえで」
「努力していくーーべきです」
こうアンに言うのでした。
「そうーー思います」
「そうね、幸せな結末になるというのなら」
「それをーー目指して」
「やっぱりそうよね」
「いいーーニュースはーーです」
それはといいますと。
「励みにーーなります」
「その幸せな結末に向かうね」
「顔のーー相も」
「そうなるから」
「はいーー今のことーーは」
「励みにして頑張るわ」
「そうーーすべきーーです」
まさにと言うチクタクでした。
「それーーでは」
「ウーガブーの国に行ってね」
「ことにーー向かいーーましょう」
「それじゃあね」
アンは明るい顔で前を向いていました、そしてです。
ウーガブーの国に向かいます、皆と一緒に。その中でドロシーはアンに尋ねました。
「この速さで戻るのよね」
「急いだ方がいいかしら」
「いえ、この速さでいいと思うわ」
ドロシーはアンににこりと笑って答えました。
「今はね」
「まだ何も起こっていないから?」
「そう、確かに何かが起こるなら早いうちに戻って」
「準備を進めるにしても」
「それでもアンの歩く速さに合わせていたら」
皆がです。
「すぐに戻れそうだし」
「だからなのね」
「今の調子でいいと思うわ」
「私歩くの速いのよね」
「そうね、私よりもね」
ドロシーはアンににこりと笑って応えました。
「早いわね」
「せっかちだからかしら」
「せっかちというか元々歩くのが速い感じね」
アンの場合はというのです。
「そうだと思うわ」
「それでなの」
「歩くのが速いのよ」
「成程ね」
「本当にこの速さなら」
「すぐに戻れるっていうのね」
「ウーガブーの国までね」
ドロシー達の場合は今回の冒険の目的地になります、アンにとっては戻るべき場所が彼女達にはそうなるのです。
「順調にね」
「それじゃあこのままね」
「歩いていきましょう、それに」
「それに?」
「起こったら」
グリンダが予言されているそのことがです。
「前兆があったらその時点でよ」
「オズマ姫がなのね」
「連絡してくれるから」
携帯からです、何しろオズマはオズの国のことならいつも見ているからです。勿論お友達であるドロシー達のこともです。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、今の調子で行きましょう」
「わかったわ、じゃあ歩いていきましょう」
「はい、しかしアン王女が歩くことが速いのは」
大尉もここで言います。
「脚が長いせいもありますね」
「そんなに長いかしら」
アンは大尉の言葉を受けて自分の脚を見ました、ズボンに覆われているそれを。
「私の脚って」
「そう思いますが」
「そうかしら」
「長いと思うよ」
トトもアンに言います。
「王様の手は長いっていうけれどね」
「私の脚は長いのね」
「ウーガブーの王女さんの脚はね」
そうだというのです。
「長いよ」
「ううん、別に長いと思わないけれど」
「長いわよ」
ドロシーがまたアンに言いました、くすりと笑って。
「私がアン王女と同じ位の背でも」
「私程にはっていうの」
「アン王女程脚は長くないわ」
「そうなのね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「脚の長さもあってね」
「私は歩くのが速いのね」
「そうだと思うわ」
「成程ね」
「王様は手が長くて」
トトの言葉をです、ドロシーも言いました。
「アン王女は脚が長いのよ」
「そしてその脚を使って」
「歩いてね」
「ものを見て回って国政を行っている」
「そういうことかしらね」
「じゃあこの脚の長さを使っていくわ」
自分でもこう言ったアンでした。
「是非ね」
「ええ、そうすべきよ」
「やっぱりそうよね」
アンはドロシーの言葉ににこりと笑って頷きました、そしてそのうえでウーガブーの国に皆を案内するのでした。長い脚で歩きながら。
今の所は、特に問題もないな。
美姫 「そうね。順調と言えるわね」
何か起こるとしたら、これからか。
美姫 「一体、何が起こるのかしらね」
本当に気になる所だな。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。