『オズのアン王女』
第二幕 アン王女への進言
アン=アンヤコレヤ王女は今日もご自身の小さな王宮を出てまずは国の中を見回っていました、そのうえで満足して言うのでした。
「今日も皆よく働いてるわね」
「はい、作物もよく採れて」
「お水も奇麗ですよ」
「鶏も卵をよく産んでくれます」
「困ったことは何もありません」
国民の皆もアンにお話します。
「今日も問題なくです」
「皆幸せです」
「楽しく過ごせています」
「そうね、いつもこうして見回っているけれど」
アンの日課です、いつもお国の隅から隅まで見回って何かあると自分から動いて問題を解決する様にしているのです。
「奇麗で何よりよ」
「そうですね、ただ」
ここで、です。国民の一人がアンに言ってきました。
「さっきオークが国に来ました」
「あの速く飛ぶ鳥が?」
「そうです、チクタクさんと一緒に」
「あら、チクタクも一緒なの」
「そうです」
「何の用かしら」
チクタクも一緒と聞いてです、アンは首を傾げさせました。そのうえで知らせてくれた国民に尋ねました。
「一体」
「お会いになられますか?」
「ええ」
すぐにと答えました。
「そうさせてもらうわ」
「それでは」
こうしてです、アンはそのオークとチクタクに会うことになりました。
チクタクはお国の入口にいました、そしてまずは挨拶からでした。
「こんにちわ、チクタク」
「こんにーーちわーーーアン王女」
チクタクはいつもの口調でアンに挨拶を返します。
「お元気そうーーですね」
「この通りね、それでどうかしたの?」
「はいーーオズマ姫にーー言われまして」
それでというのです。
「お邪魔したーーのですが」
「オズマから?」
「この国にーー何かがーー起こります」
「いいこと?悪いこと?」
「そこまではーーわかりません」
こう答えたチクタクでした。
「オズマ姫はーーグリンダ女王からーー連絡をーー受けました」
「そういえばグリンダさん未来を予知出来る本も持ってたわね」
「それでーーお知りになりーーました」
「そうね、何かが起こるのね」
「このーー国に」
「そこまではわからない」
「そうーーです」
またアンに答えました。
「そしてそのことをーー知らせる為に」
「来てくれたのね」
「及ばずーーながら」
「貴方が助けてくれるのね」
「その為にもーー来ました」
「わかったわ」
「そしてーードロシー王女達も」
チクタクはアンに彼女達のこともお話しました。
「ここにーー来られます」
「わかったわ、ただね」
「ただ?」
「ドロシー王女達が来るなら」
それならというのです。
「都から来るならまだ時間がかかるから」
「だからーーですか」
「迎えに行きましょう、二人で」
アン王女も冒険好きです、それでこう考えたのです。
「そうしましょう」
「そうーーされますか」
「ええ、私待っていることは嫌いなのよ」
このことについてはオズの国でも指折りの人です、とにかくいつも動いてそれから何かを考える人なのです。
「だからね」
「迎えにーーですね」
「行きましょう」
「会えるーーでしょうか」
「数日行って会えないと引き返すだけよ」
あっさりと答えたアンでした。
「そうでしょ」
「そしてーーこの国でーーですね」
「待つのよ」
数日探しに迎えに行って見付からなくて引き返したならというのです。
「それだけよ」
「待っている方がーーいいのでは」
「だから私待つのは嫌いなの」
このことをチクタクにも言うのでした。
「だからよ」
「左様ーーですか」
「国政は今は大事がないけれど」
「何かーーあれば」
「携帯で連絡してもらうから」
アンはチクタクに自分の携帯も見せました。
「それですぐに戻るわ」
「王女としてーーですね」
「私はこの国の主よ」
そうなっています。
「ならその時はね」
「戻らーーれて」
「国政にあたるわ」
「その何かがーー起こっても」
「すぐに戻るわ」
「それーーでは」
「行きましょう」
アンはチクタクに誘いをかけました。
「二人でね」
「オークはーーどうしますか」
「都に帰ってもらうわ」
チクタクを乗せてきたオークを見つつ答えました。
「そうしてもらうわ」
「わかりーーました」
「では行きましょう」
こうチクタクに行ってです、国民の皆にも事情をお話しました。すると国民の人達も首を傾げさせて言うのでした。
「何かが起こるって」
「一体何でしょうか」
「いいことですか?」
「それとも悪いことですか?」
「それがわからないのよ」
まだ、というのです。
「けれどね」
「それでもですね」
「ドロシー王女達が来てくれてですか」
「何とかしてくれる」
「チクタクさんもそのことを伝えに来てくれた」
「そうなんですね」
「はい」
チクタクはウーガブーの人達にも答えました。
「そうーーです」
「わかりました」
「それじゃあ宜しくお願いします」
「一体何かわかりませんが」
「その何かが」
「じゃあ二人でドロシー王女を迎えに行って来るわね」
アンは自分のお国の国民の人達に告げました。
「今から」
「はい、道中お気をつけて」
「とりあえず旅支度はされて下さいね」
「着のみ着ままで行けるにしても」
オズの国ではそれでも大丈夫なのです。
「何かあってもいい様にです」
「オズマ姫から頂いたテーブル掛けや洗面道具等を持って」
「そのうえで」
「ええ、すぐに用意するわ」
自分のことは自分でするアンでした、そしてです。
すぐに身支度を整えました、アンは動きやすい黄色と紫の軍服に帽子、それに紫のブーツと黄色の鞄という格好になりました。
その格好でチクタクに言うのでした。
「身支度を整えてきたわ」
「その鞄の中にーーですね」
「旅道具を全部入れたわ」
「そうーーですね」
「では出発しましょう」
「合流出来たらーーいいですね」
「合流出来るわよ」
明るく言うアンでした。
「心配無用よ」
「そう言えるーー根拠は」
「私が思ったからよ」
やはり明るいアンでした。
「だからよ」
「そうーーですか」
「とにかくね」
「出発ーーですね」
「そうしましょう」
「それーーでは」
こうしてアンはチクタクと一緒に出発します、ですが。
出発してです、アンはすぐにこう言いました。
「お腹空いたわね」
「王女はーーですね」
「何か食べない?」
「それーーでは」
チクタクはアンの言葉を受けて言いました。
「どうーーぞ」
「あっ、そういえば貴方は」
「何もーー食べません」
チクタクはというのです。
「私ーーは」
「そうだったわね」
「時々背中のーーネジをーー巻いて下さい」
「ええ、貴方はそうして動いてるから」
「お願いーーします」
「わかったわ」
快諾で応えたアンでした。
「そうさせてもらうわ」
「それがーー私の食事ーーです」
そうなるというのです、そしてです。
アンはその場でテーブル掛けを出して食べるのでした、その前にちゃんとチクタクのネジを巻いてあげました。
そのうえで食べるものはといいますと。
「ステーキーーですね」
「ええ、サラダとね」
「スープーーに」
「あとお魚のムニエルとボイルドベジタブルもよ」
「そしてパン」
「デザートも忘れていないわ」
そのデザートはといいますと。
「林檎とね」
「アップルケーキにーーアップルティー」
「林檎お好きーーですね」
「我が国でよく作っててね」
それでというのです。
「私もいつも食べてるから」
「大好きーーですか」
「そうなの」
その通りというのです。
「紅茶もね」
「アップルティーーーですね」
「それよ」
「そうーーですか」
「ステーキのソースも」
それもでした。
「アップルソースよ」
「そういえばーーサラダにも」
「林檎を入れてるわ」
スライスしたそれもです。
「今回は林檎多いわよ」
「林檎は美味しいーーですか」
「とてもね」
「黄金の林檎もーーですね」
「そうそう、あれは特にね」
黄金の林檎には笑顔で言ったアンでした。
「美味しいわ」
「左様ーーですか」
「ええ、ただ私の国に何かが起こるとして」
「はい」
「若し林檎、特に黄金の林檎に悪いことが起こると」
「大変ーーですね」
「だって我が国の特産品の一つよ」
林檎、とりわけ黄金の林檎はというのです。
「だからね」
「何かーーあれば」
「悪いことでね」
そのこれから起こることがです。
「そうだったら大変よ」
「その通りーーですね」
「ええ、本当に何かしら」
「いいことならーーいいですが」
「そうよね」
「グリンダさんもーーそこまでは」
わからなかったというのです。
「残念ーーながら」
「そうよね」
大好きな林檎も入っているサラダを食べ終えてです、ボイルドベジタブルを食べながら応えたアンでした。
「流石にね」
「何かがーー起こることがーーです」
「わかって」
「そこからーーは」
「これからね」
「わかりーーます」
そうだというのです。
「お待ちーー下さい」
「だから私は待たないの」
とにかくアンはそうした娘です、だから今もドロシー達を迎えに行っているのです。待つよりもと思ったからこそ。
「そういうことが嫌いだから」
「待たれるーーよりもですね」
「動くのよ」
それがアンです。
「だからよ」
「そうーーですか」
「その起こることも待たないの」
とにかく動いていないと気が済まないのです、見れば食べるのも早いです。
スープも飲んでお魚も食べてです、アップルソースをかけたステーキも食べてからパンもデザートも食べました。
その食べる速さにもです、チクタクは言いました。
「お速いーーですね」
「だから何でもね」
「速くーーですね」
「そうよ、じゃあ出発しましょう」
「王女のところーーまで」
「ドロシー王女のね」
「ファイター大尉もーー来られます」
この人もというのです。
「五人の子供達ーートト君も」
「ドロシー王女といえばトトよね」
「いつもご一緒ーーですから」
「そうよね」
「そしてーーあの子達もーーです」
「五人のね」
「アン王女はーーあの子達とは」
チクタクはデザートの後のアップルティーを飲んでいるアンに尋ねました。
「最近ーーは」
「ああ、そういえばね」
「お会いしてーーないですね」
「そうだったわね」
このことは言われて気付きました。
「あの子達とは」
「そうーーでしたね」
「そのことも楽しみね」
アンはお茶を飲みつつ微笑んで言いました。
「あの子達それぞれ個性があって」
「いい子達ーーですね」
「皆ね」
「はい」
「性格もね」
五人共、というのです。
「とてもね」
「そしてーーあの子達もです」
「一緒になのね」
「ウーガブーのーー国に」
「それはおもてなししないとね」
にこりと笑って言うアンでした。
「あの子達もね」
「ウーガブーの国のーーですね」
「最高のね、林檎をね」
「黄金ーーの」
「あれも出すわ」
勿論というのです。
「そうするわね」
「わかりましーーた」
「そうね、このことも楽しみよ」
にこにことしたままのアンでした。
「それにファイター大尉も一緒なのよね」
「はいーーそうーーです」
「大尉さんとも久し振りね」
この人に会うことはです。
「とてもね」
「ではーー行きましょう」
「ええ、楽しみになってきたわ」
これから何があるかわからなくともです。
「さて、どうしておもてなしをしようかしら」
「まずはーー合流ですね」
飲み終わったアンに言うチクタクでした、二人はドロシー達に会う為に冒険に出ていました。そしてブリキの木樵のお城では。
ファイター大尉が到着していました、大尉は皆に会って笑顔で言いました。
「皆さんお久し振り」
「うん、よく来てくれたね」
かかしが大尉に応えます。
「これからドロシー達も来るからね」
「だからですね」
「ドロシー達が来たら」
その時にというのです。
「出発するといいよ」
「わかりました」
大尉は木樵に笑顔で答えました。
「そうさせてもらいます」
「じゃあそれまではくつろいでいてね」
「是非、それで」
ここで、です。大尉はジョージ達五人を見ました。そのうえで木樵に尋ねました。
「この子達が」
「うんそうだよ」
その通りとです、木樵は笑顔で答えました。
「外の世界から来た子達だよ」
「ドロシー王女達と同じく」
「丁度僕のお城に来てくれて遊んでいたんだ」
「それで今回の冒険にもですね」
「うん、同行することになっているよ」
「そうなんですね」
「この子達のことを宜しくね」
木樵は大尉に笑顔でお話しました。
「いい子達だよ」
「僕達は今回は冒険に行けないんだ」
かかしはこのことは少し残念なお顔になってお話しました、見れば木樵もかかしと同じく少し残念そうなお顔になっています。
「この国の政治のことがあるからね」
「ウィンキーのですね」
「そうなんだ、木樵君が橋を増やしたいって言ってるんだ」
その政治とはこちらのことでした。
「国民の皆が無事に川を渡れる様にね」
「橋を増やしてね」
木樵自身もお話します。
「皆が濡れずに橋が出来る状況にしたいんだ」
「成程、それはいいことですね」
「道路も歩きやすくしたいしね」
ウィンキーの皇帝としてです、木樵はいつもウィンキーの人達のことを考えています。そして素晴らしい政治を行っているのです。
「灌漑のこともね」
「そうしたことのお話をしないといけないから」
だからというのです。
「僕と木樵君は行けないんだ」
「では僕が」
「ドロシー達と一緒にね」
「行ってきます」
笑顔で応えた大尉でした、そのうえで。
大尉は五人の子供達にです、笑顔で挨拶をしました。
「はじめまして」
「はい、はじめまして」
「ファイター大尉ですね」
「宜しくお願いします」
「こちらこそね、君達のことは聞いていたけれど」
大尉は五人を笑顔で見ながらお話をします。
「いや、噂通りいい子達みたいだね」
「そのことは僕が保証するよ」
木樵が大尉に言います。
「ドロシー達とはまた個性が違うけれどね」
「それでもですね」
「同じ位いい子達だよ」
「そうですか」
「だから安心して楽しい冒険が出来るよ」
「わかりました」
また笑顔で応えた大尉でした。
「じゃあ今からこの子達とです」
「お話をするんだね」
「そうしていいですね」
「ドロシーとトトが来るまではね」
「はい、お願いします」
「お茶を用意してもらうよ」
子供達の分です、大尉も全身ブリキの身体なので何も食べる必要も飲む必要もないのです。寝ることも休むこともです。
それで大尉は五人分のお茶が出されている席に座ってそのうえでお話をはじめました、五人も席に着いています。
五人とお話をしてです、大尉はこう言いました。
「皆国が違うことも面白いね」
「日本の学校に通ってますけれど」
ジョージが大尉に答えます。
「生まれた国は違います」
「色の好みも違いますが」
神宝はこのことをお話しました。
「僕達それぞれ国が違います」
「暑い国もあれば寒い国もありますよ」
カルロスは大尉に明るくこう言いました。
「そこはオズの国とは違いますね」
「それぞれの国で服も食べものも違うんです」
ナターシャは紅茶、ロシアンティーも楽しんでいます。
「景色もです」
「外の世界は色だけじゃないです」
恵梨香はオズの国と外の世界の違いをお話しました。
「色々なものが違います」
「そのお話はドロシー達から聞いてるけれど」
大尉は五人ににこにことして応えました。
「何度聞いても面白いね」
「オズの国も素敵ですけれど」
「外の世界も面白いんですよ」
「それぞれ違いがありまして」
「色々なものがあって」
「景色も色々で」
「そうみたいだね、何か外の世界にもね」
五人のお話を聞いて言う大尉でした。
「行きたくなったね」
「あっ、そういえば」
大尉の今の言葉でジョージはあることを思い出しました。その思い出したことは一体何であるかといいますと。
「僕達がここに来た原因も」
「そうそう、学校でかかしさん達に会ってね」
「それからだったね」
神宝とカルロスが応えます。
「五人で渦の中に入ってね」
「そうした来たんだよね」
「あの時はまさかって思ったけれど」
「本当にオズの国に来たから」
ナターシャと恵梨香もお話します。
「不思議よね」
「本当にね」
「うん、そうなると僕が出ても」
外の世界にとです、大尉は言いました。
「目立つね」
「どうしましても」
「そうなりますね」
「かかしさんや木樵さんも目立ちました」
「だから私達も気付きましたし」
「仮装行列の中にいましても」
「上手に隠れたと思ってたけれどね」
ここでかかしがお話します、木樵と一緒に政治のお話の休みにとお部屋に来たのです、
「ジョージ達にはわかったんだよね」
「まあ僕達もです」
ジョージがお話します。
「まさかって思いました」
「上手に隠れていたんだね」
「そうでした」
「それは何よりだけれど」
「わかったことはですか」
「今思うと迂闊だったね」
かかしはこう言うのでした。
「やっぱり」
「そうだね、僕達はやっぱりね」
木樵も言います。
「外の世界にはね」
「出ない方がいいね」
「そうだね」
こう二人でお話します、そして。
大尉もです、こう言うのでした。
「僕も出ない様にします」
「いや、僕達もちょっと見に行ったからね」
「君も興味があったら外に出るといいよ」
かかしと木樵はこう大尉にお話しました。
「外の世界にね」
「そうしたらいいよ」
「八条学園という学校に出るから」
「面白い学校だよ」
「夜にでもこっそりと歩き回ったらね」
「面白いよ」
「じゃあ一度」
大尉はかかしと木樵のお話を聞いて言いました。
「行ってみます」
「うん、一度ね」
「外に出るといいよ」
こうしたことをお話してでした、そのうえで。
大尉は五人とです、あらためてお話しました。皆で楽しい時間を過ごしていました。そうして午前中を過ごしお昼にです。
ドロシーとトトがお城に来てでした、こう言ってきました。
「御免、待った?」
「今来たけれど」
「よく来てくれたね」
木樵はドロシーを大きく両手を広げて迎えました。
「全然遅くないよ」
「だといいけれど」
「うん、君も急いできたよね」
「わかるのかしら」
「だって昨日だよ、僕達のところに連絡が来たのは」
「おそらくお話が出て都を出発したね」
かかしも言います。
「そうだね」
「ええ、それはね」
「そして寝ている時以外はあまり休まずに来たね」
かかしはこのことも察して言いました。
「そうだね」
「わかるのね」
「時間的にね、だからね」
「流石かかしさんね、確かに急いで来たつもりだけれど」
「今回は僕達歩いてきたから」
トトもお話します。
「間に合ったかどうかね」
「不安だったの」
「安心していいよ、というか思ったより早かったけれど」
かかしはむしろこう言いました。
「ドロシー、君の靴に何かあるのかな」
「そういえば」
ここでドロシーは自分の靴を見ました、一見すると普通の靴ですが。
その靴を見てです、こう言いました。
「これは」
「普通の靴じゃないね」
「魔法の靴だわ」
ドロシーが今履いているその靴はです。
「普通よりもずっと速く歩ける」
「そうだね」
「気付かないうちにこの靴を履いていたのね」
「だからかなり早く着いたんだよ」
「そうなのね」
「むしろね」
「そういえば僕も」
トトも言われて気付きました。
「普段よりずっと速く歩いていたかな」
「気付かないうちに履いてたけれど」
ドロシーも言います。
「いや、早く着いたらよかったわ」
「それじゃあだね」
「ええ、合流したけれど」
「すぐに出発しますか?」
恵梨香がドロシーに尋ねました。
「そうしますか?」
「ウーガブーの国までね」
「はい、そうしますか?」
「ちょっと待って、皆お昼は食べた?」
ドロシーは恵梨香にこう尋ねました。
「そちらは」
「まだです」
ジョージが答えました。
「そちらは」
「ではお昼を食べてね」
「それからですか」
「出発しましょう」
こう言うのでした。
「まずはね」
「それじゃあ」
「テーブル掛け持って来たわよ」
「そこからお昼を出してですね」
「皆で食べて」
「それからですね」
「出発しましょう、旅道具は皆持って来たわ」
ドロシーはジョージ達ににこにことしてお話をします。
「テントも全部洗面道具もね」
「全部ですから」
「持って来たから安心してね」
「やっぱり慣れてますね」
神宝は恵梨香のこのことを言いました。
「冒険に」
「ええ、何しろいつもだから」
ドロシーもにこりと笑って答えます。
「私が冒険に出ることは」
「オズの国一の冒険家だからですね」
カルロスも言います。
「だからですね」
「少なくとも忘れものはないようにしているわ」
オズの国一と言われるとです、ドロシーも恥ずかしいのでそのことについてはあえて答えませんでした。少しシャイなところもあるのです。
「いつものことだからこそね」
「いつもだから油断しない、ですね」
ナターシャもドロシーに尋ねます。
「そういうことですか」
「ええ、いつものことだからこそ」
まさにそれ故にというのです。
「私も気をつけてるの」
「そういうことなんですね」
最後に恵梨香が言います。
「ドロシーさんの場合は」
「そうよ、それで全部あるから」
旅に必要なものはというのです。
「安心してね」
「ウーガブーの国までですね」
「行ってそしてですね」
「何があってもですね」
「防ぐんですね」
「そうしましょう、ただね」
ここでこうも言ったドロシーでした。
「一体何が起こるか」
「それは、ですか」
「どうにもですか」
「わからないんですね」
「そこまでは」
「グリンダさんでも」
「そうなの、一体何が起こるかは」
それはというのです。
「わからないの、けれどね」
「それでもですね」
「一体どうなるか」
「それは、ですね」
「わからないですが」
「それでも」
「何が起こってもね」
それでもというのです。
「驚かないことよ」
「いいことでも悪いことでも」
「向かう」
「びっくりして動きが止まることなく」
「対応する」
「このことが大事ですね」
「そうよ、何といってもね」
だからというのです。
「何が起こっても驚かないでね」
「わかりました」
五人は皆でドロシーに応えました、そしてでした。
ドロシー、トトと一緒に御飯を食べました。その御飯はです。
オムライスでしたがジョージはオムライスを食べて言いました。
「これアメリカにはなかったね」
「ロシアでもなかったわよ」
「ブラジルでもだよ」
「勿論中国にもね」
ナターシャ、カルロス、神宝も言います。
「こうした食べものはね」
「日本にしかなかったわ」
「最初大きなオムレツかと思ったよ」
「これは食べられるのかなってね」
「そうよね、まさかね」
ドロシーも言います、そのオムライスを食べながら。
「オレンジライスをオムレツで包むなんてね」
「日本だけって言われて」
その恵梨香の言葉です、見ればトト以外はスプーンを使っています。
「私驚きました」
「そうなのね」
「はい、本当に」
それこそというのです。
「フランス辺りから来たって思ってました」
「フランスでもないわよ」
ナターシャはすぐにです、恵梨香に答えました。
「こうしたお料理は」
「あっちはパンが主食だからね」
神宝も言います。
「中国でも北の方はそうだけれど」
「オムレツの中にオレンジライス入れるなんてね」
ジョージは言います。
「普通考えないよ」
「しかも美味しんだよね」
カルロスはこのことを言うのでした。
「これが」
「うん、凄くね」
実際にとです、トトも言います。
「これがね」
「昔はなかったわ、オズの国にも」
ドロシーの言葉です。
「日系人の人が作ってね」
「お寿司やおうどんと同じで」
「そう、こうしたお料理もね」
「日本からアメリカに来た人達がですか」
「作ってなの」
「オズの国でもですか」
「食べられる様になったのよ」
そうだとです、ドロシーはジョージにお話しました。
「そこは本当にお寿司と一緒ね」
「そうですね、何か日本に入りまして」
しみじみとして言うジョージでした。
「色々独特のお料理があるのに驚きました」
「パスタでもね」
「タラコスパとか」
「納豆スパとかね」
「本当に驚きました」
「ええ、こんなスパゲティあるのかって」
そうお話をしていたというのです、そしてです。
皆は楽しく食べてです、そのうえで。
皆で幸せに暮らしました、そしてなのでした。
ウーガブーの国に向けて出発しました、かかしと木樵はその皆に笑顔で手を振って一時のお別れの挨拶をしました。
そのウーガブーのアンはといいますと。
チクタクにです、お昼のスパゲティを食べている時に言われました。
「それはーー何ですか」
「スパゲティのソースね」
「はいーースパゲティなのはーーわかります」
食べないチクタクもです。
「そのことーーは」
「けれどなのね」
「その白いーーソースは」
「カルボナーラよ」
アンは食べつつ答えました。
「生クリームとベーコン、卵を使ったね」
「そうしたーーソースーーですか」
「そうなの、これが美味しいのよ」
「とてもーーですか」
「ええ、とても美味しいわ」
にこにことして答えるアンでした。
「ガーリックも入っているし」
「それにーーオリーブもですね」
「この二つは必須よ」
ガーリックとオリーブは、というのです。
「何といってもね」
「ないとーーですか」
「味が全然違うの」
スパゲティのそれがというのです。
「それこそね」
「美味しくなるーーのですね」
「そうよ」
その通りというのです。
「だからこの二つは欠かせないわ」
「カルボナーラ以外ーーでも」
「他のスパゲティ、パスタはね」
スパゲティに限らずというのです。
「ガーリックとオリーブオイルは絶対よ」
「他ーーには」
「他は調理方法で茹で具合ね」
それの問題だというのです。
「そうなるわ」
「そのーースパゲティは」
「アルデンテよ」
その茹で具合だというのです。
「丁度いいわ」
「だから美味ーーしいのですね」
「そうよ、これを食べて」
そしてというのです。
「また出発よ」
「このままーーですね」
「木樵さんのお城まで向かうわ」
「一直線ーーですね」
「そうよ」
まさにそうして進むというのです。
「多分ドロシーさんもそうして進んでいるから」
「最短距離ーーだから」
「人は急いでるとね」
「その道をーーですね」
「選ぶから」
そういうものだからというのです。
「だからよ」
「私達もーーですね」
「進むわ」
まさに一直線にというのです。
「そうしていきましょう」
「私もーーです」
チクタクは食べるアンの向かい側に座って答えました。
「それがいいとーーです」
「一直線に進むことがよね」
「思いーーます」
そうだというのです。
「ですーーから」
「このままね」
「一直線でーー行きましょ」
「それじゃあね、そしてまずは」
「スパゲティーーを」
「食べるわ」
カルボナーラをというのです。
「そしてデザートはね」
「林檎ーーですね」
「毎食これがないとね」
デザートの林檎も見て言うのでした、それももう出しています。飲みものは林檎ジュースを出しています。
「私は駄目よ」
「何とーーいっても」
「林檎がないと」
それこそというのです。
「本当によ」
「駄目ーーなのですね」
「そうなの」
こう言うのでした。
「だから食べるわ」
「デザートーーで」
「そう、今も食べるし」
「夜もーーですね」
「そうするわ、この夜もね」
「本当にーーお好きーーですね」
「大好きよ、身体にもいいし」
このこともあってというのです。
「いつも食べるわ」
「ではーーウーガーブーでーー起こることが」
チクタクはその為にドロシー達が来てくれることを思い出してそのうえでアンに対して尋ねました。心配になって。
「林檎にまつわるーーことなら」
「その時はね」
「絶対にーーですね」
「防ぐわ」
そうするというのです。
「何としてもね」
「そうーーなのですね」
「だって私の国だから」
それ故にというのです。
「そして私の大好物なのよ」
「その為ーーだから」
「絶対にやるわ」
カルボナーラを食べつつ意気込みを見せるのでした。
「林檎に起こるなら。林檎に起きなくても」
「それでもーーですね」
「絶対に防ぐわ」
「悪いーーことは」
「そうするわ、だから早くね」
「ドロシーさんーー達と」
「合流するわ」
こう言うのでした、そしてスパゲティとデザートの林檎を楽しんででした。アンもまた冒険を続けるのでした。
歩きつつです、アンはチクタクにこのことも言います。
「さあ、まずはドロシー王女達とね」
「五人のーー子供達とも大尉さんとも」
「トトともね、そういえば」
ここでふとです、アンは他の面々のことも思い出しました。
「トトはいつもドロシーと一緒に会ってるけれど」
「あの子達とーー大尉さんは」
「あの子達には会ったわね」
ここでアンは自分の記憶を辿りました。
「一度だったかしら」
「確かーーそうでした」
「けれど本格的に会うことになるわね」
「今回でーーですね」
「そのことも楽しみよ、それならね」
「はいーー何としてもですね」
「会いましょう」
ドロシー一行にというのです、こうしたこともお話してでした。
アンはチクタクと一緒に歩いていきます、ドロシー達と合流する為に。
何かが起こると言われた国の王女自ら、ドロシーたちを迎えに。
美姫 「行き違いにならなければ良いけれど」
確かにな。無事に合流できれば良いが。
美姫 「どうなるかしらね」
何が起こるのかも気になるし。
美姫 「良い事か悪い事かも分からないものね」
今回はどんな話になるのか楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。