『オズのビリーナ』
第九幕 地下の二つの国
列車は早速ノームの国にある駅から出発しました、するとすぐに土も岩も何もかもを通り抜けて光の様な速さで進んでいきます。
その列車、蒸気機関車そっくりの車両の運転室においてです。ナターシャ達五人は笑顔で運転しているロビンに言いました。
「うわ、凄いね」
「うん、土の中なのにね」
「どんどん進んでいくよ」
ジョージと神宝、カルロスがその運転室の中で驚いています。
「それで土も入って来ないし」
「透明な中を過ぎるみたいでね」
「また特別ね」
「そう、魔法で土の中をどんどん越えられるんだ」
ロビンは三人の男の子達ににこりと笑って答えました。
「この列車はね」
「僕達が土に触っても汚れないですし」
「感触もないです」
「透明な感じです」
三人共運転室の窓から手を出しても本当に感触がありませんでした。
「不思議ですね」
「線路がなくても進みますし」
「本当に魔法ですね」
「まさに魔法の列車だよ」
実際にと答えたロビンでした。
「面白いね」
「しかも土や岩の中でも」
恵梨香もこう言います。
「空気もあるし」
「魔法で大気も出来ているからね」
「だからなんですね」
「うん、呼吸も出来るんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ、凄い列車なんだよ」
ロビンは恵梨香にも笑顔でお話します。
「そうした面でもね」
「そうですよね」
「それでもうすぐなんですね」
ナターシャもロビンに尋ねました。
「ドワーフの国か闇エルフの国に着くんですね」
「先にドワーフの国に行くよ」
「あちらにですか」
「そう、まずはね」
そちらにというのです。
「あちらに行くよ」
「そうですか、ドワーフですか」
「僕達ノームとは兄弟みたいな種族なんだ」
「同じ地下に住んでいてですね」
「そう、向こうの方が大柄で力が強くて社交的だけれどね」
その関係は、というのです。
「兄弟みたいなものだよ」
「ノームさん達とドワーフさん達は」
「そうだよ、もうすぐに着くからね」
そのドワーフの国にです。
「楽しみにしていてね」
「わかりました」
ナターシャがロビンの言葉に頷くとすぐにでした、列車は停まってドワーフの人達の真ん中に来ました。そこはといいますと。
「さあ、ドワーフの国の入口だよ」
「ここが、ですか」
「そう、ドワーフの国だよ」
まさにそこだというのです。
「その首都なんだ、マンチキンのある大きな山の中にあるんだ
「山の中ですか」
「うん、この街はね」
ドワーフの首都、そこはというのです。
「そうした街なんだ」
「それじゃあ」
「僕はここにいるから」
列車の中にというのです、見れば列車は蒸気機関車の車両の後は客席の車両が八つ続いています。そしてです。
その車両の四番目からでした、トロット達が出ましたが。
ビリーナを見てです、ロビンはナターシャ達に苦笑いになって言うのでした。
「彼女とは一緒にいられないからね」
「ノームだからですね」
「そう、だからね」
まさにそれが理由でした。
「列車の中で寝ているよ」
「そうされますか」
「寝台車もあるからね」
列車の中にはです。
「一番目の車両ね、そこで寝て待っているから」
「それじゃあ」
「またね」
こう言って実際にでした、ロビンはその一両目の車両に入ってしまいました。その彼を見送ってからでした。
トロットがです、皆に言いました。
「じゃあ行きましょう」
「ドワーフ王のところにね」
「行くわよ」
ガラスの猫とトロットも言ってでした、そのうえで。
皆で宮殿に向かいます、その首都はといいますと。
巨大な山の中に街が幾段も重なっていました、一段一段は五十メートル位の高さでオズの国の五つのそれぞれの色の建物が並んでいました。
お家にお店にです、精錬所や発掘所が整然と並んでいます。そして上の市街地には階段で昇り降りする様になっています。
「街と街が階段でつながってるって」
「これも不思議ね」
「山の中にあるっていうけれど」
「これがドワーフの街なの」
「そうなの」
「そうだよ、これがドワーフの首都なんだ」
キャプテンは階段を昇りながら自分の後ろにいる五人にお話しました。
「山の中にあるね、そして一番上の段にね」
「宮殿があるのよ」
ビリーナも言います。
「王様のね」
「ドワーフの王様の」
「そうよ」
こうナターシャにお話しました。
「それがこの街の特徴なのよ」
「大きな山が何段にも何段にも分けられていて」
「その一番上の段によ」
「宮殿があるのね」
「そうなの、この山の頂きはね」
そこにはといいますと。
「黄金があるのよ」
「黄金が山の頂きなの」
「そうなの」
ビリーナはナターシャにこのこともお話しました。
「そしてその頂きの下になのよ」
「王宮があるのね」
「その王宮も黄金で造られるいるから」
「全部黄金なの」
「凄い宮殿よ」
「じゃあそれも見せてもらうわね」
「是非ね」
ナターシャはビリーナの言葉に頷きます、そのうえで街を一段一段さらに進んでいきます。そして遂に最上段まで着きますと。
そこは確かに黄金でした、黄金を素晴らしい装飾と彫刻でさらに美しく飾った宮殿がありました。その宮殿を観てです。
ナターシャ達五人は息を飲んでこう声を漏らしました。
「奇麗だね」
「うん、ここもね」
「オズの王宮と同じだけね」
「全部黄金で」
「驚く位だわ」
「そうでしょ、黄金で全てを造っているのがね」
まさにとです、ビリーナは五人に言いました。
「この宮殿なのよ」
「眩しい位よ」
それこそとです、ナターシャが答えました。
「これは」
「そう言うと思ったわ」
「そうなのね」
「エメラルドの都はエメラルドだったけれど」
「ここは黄金なの」
「それで眩しいのね」
「じゃあ王様のところに行きましょう」
またこう言ったビリーナでした。
「今からね」
「わかったわ、あとこの山は何処にあるの?」
「オズの国で一番高い山の中にあるけれど」
「それがどの国なの?」
「マンチキンよ、けれどドワーフ族はオズの地下の国の何処にでもいるから」
「だからオズの国の五色があるのね」
ナターシャも他の子達もここでそのことがわかりました。
「そうだったのね」
「この首都にはね」
「そうなのね」
「そしてここは黄金なの」
「黄金で造られているから」
「ええ、頂きの黄金を使ってね」
「というか頂きの一部?」
「そう思ってもいいわ」
こうも答えてでした、ビリーナは一行を王様のところに案内しました。王宮の黄金は奥に進んでも同じでした。そしてです。
兵隊さん達も黄金の服と鉄砲、それにヘルメットでした。まさに黄金の宮殿で。
玉座も黄金で王様もでした、服も金色で冠も王様の杖もです。
やっぱり黄金でその王様にです、トロットがまず一礼して皆も続きます。その後で。
王様はトロットにです、こう聞きました。
「今回は急に来たね」
「ええ、貴方達が闇エルフ族といがみ合ってるって聞いてね」
「エルフ族とはいつもだよ」
それこそと返した王様でした。
「わし等はいつもじゃないか」
「それを地下でも起こしたのね」
「彼等は好かん」
これが王様の返事でした。
「だからね」
「それが理由?」
「何でいつもそうするのか」
「何から何まで?」
「それがわからないからね」
それ故にというのです。
「だからだよ」
「つまりエルフの人達自体が」
「例えばだよ」
ここで王様が言う例えはといいますと。
「トロット王女はお魚はどうした調理が一番かな」
「お魚?」
「揚げるとすれば唐揚げだね」
王様はこの料理を挙げました。
「お魚を揚げるとなると」
「唐揚げね」
「わし等ドワーフ族はこう言う、けれどね」
「それでもエルフ族の人達はなの」
「彼等は天麩羅というんだ」
「それでそれがなの」
「それは違うと言えばね」
ドワーフの人達がです。
「彼等はわし等の方が違うというんだ」
「唐揚げじゃなくて天麩羅ね」
「そっちだというんだ」
「ジャガイモもよね」
ここでビリーナが言いました。
「あんた達は潰して食べるわね」
「それが一番じゃないか」
「けれどエルフの人達は切るわね」
「それは邪道だよ、とにかく何から何でもね」
「違うのね」
ビリーナはそこを確認しました。
「あんた達とエルフの人達は」
「彼等の好みと趣味が理解出来ないんだよ」
「それでまたいがみ合ってるの」
「闇エルフの人達ともだよ」
「何かこれだと」
ここまで聞いてです、ナターシャは。
腕を組んで考えるお顔になってです、こう言いました。
「闇エルフ族の人達もこんなのかしら」
「そうよ、よくわかったわね」
「その通りよ」
ナターシャにです、ガラスの猫とエリカが答えました。
「あっちもこんな感じよ」
「こんな風だから」
「それでいつもいがみ合ってるの」
「こうしてね」
「そうなのね、まあ何ていうか」
ナターシャは言おうとしました、下らない理由でと。ですがドワーフの王様の真剣なお顔を観て気付いて言いました。
「言わないってことで」
「そう、いい判断よ」
トロットがナターシャに応えました。
「言わない方がいいこともあるの」
「そうですね」
「はっきり言いたいのは山々だけれど」
「言ったら駄目ですね」
「そういうことよ、とにかくね」
「ドワーフの人達はこうした理由で、ですね」
「エルフの人達を嫌ってるの」
実際にというのです。
「これがね」
「まあとにかくドワーフの王様から話は聞いたわね」
ビリーナは五人の子供達に確認を取りました。
「それじゃあね」
「ええ、次は」
「闇エルフ族のところに行くわよ」
「ああ、あっちにも行くのだね」
王様はビリーナとナターシャのやり取りを聞いて述べました。
「では伝えておいてくれるかな」
「闇エルフの王様に、よね」
「そう、君達はいつも間違っているとね」
こうビリーナにこと付をお願いするのでした。
「そう伝えてくれ」
「納得しないけれど納得したわ」
これがビリーナの返事でした。
「それじゃあね」
「その様にね」
「じゃあまた来るわ」
ビリーナは王様に返しました。
「お邪魔したわね」
「うん、またね」
「すぐに来ることになると思うわ」
ビリーナは王様にこのことを約束しました。
「それでもいいわね」
「是非共」
温和な笑顔で返す王様でした。
「ではな」
「ええ、またね」
ビリーナが応えてでした、そのうえで。
一行はドワーフの王様の下を去りました、王様は一行を王宮の門まで送ってくれてドワーフの人達の応対も気さくで屈託のないものでした。
始終友好的なドワーフの人達についてです。
列車に戻って出発してからです、ジョージは車両の中で言いました。
「いい人達だよね」
「そうだね」
カルロスはジョージのその言葉に頷きました。
「凄くね」
「奇策で屈託がなくて」
神宝もこう言います。
「悪い人達じゃないよ」
「王様もいい人だったし」
恵梨香は首を傾げてさえいます。
「悪い印象はなかったわ」
「街全体がそうだったわね」
ナターシャも同じ印象を受けていました。
「いい人達よ」
「それはわかるけれど」
恵梨香はまた言いました。
「エルフの人達とは仲が悪いのね」
「そう、どのエルフともね」
キャプテンは五人にこう断りました。
「彼等は仲が悪いんだ」
「相性ですね」
ナターシャはキャプテンに応えました。
「その問題ですね」
「そうだよ、これがね」
「どうしてもですね」
「ドワーフの人達は金が第一、銀が二番目だけれど」
「エルフの人達は違うんですね」
「彼等は銀が第一、金が二番目だよ」
そうなるというのです。
「それでドワーフの人達はとにかく金銀や宝石が大好きだけれど」
「ノームの人達と同じで」
「エルフの人達はそこまで好きじゃないんだ」
「好きでもですね」
「ドワーフやノームの人達程はね」
そこまではというのです。
「強くないんだ」
「そこも違うんですね」
「むしろ自然の方が好きなんだ」
エルフの人達はというのです。
「それは闇エルフも同じでね」
「そのことをこれからですね」
「観ることになるよ」
「闇エルフの街まで行って」
「ドワーフの首都は整然としていて奇麗だったわね」
トロットが皆にお話します。
「闇エルフの街も奇麗よ、ただね」
「ドワーフの街とはまた違うから」
「そこはわかっておいてね」
ガラスの猫とエリカも五人にお話します。
「また別の奇麗さよ」
「ドワーフの街とはね」
「もうすぐ着くわよ」
ビリーナは皆に告げました。
「じゃあいいわね」
「ええ、それじゃあ」
「今度は闇エルフの街に」
五人も応えてでした、そのうえで。
一行は今度は闇エルフの街に来ました、すると周りに闇エルフの人達がいました。どの人達もお人形さんみたいに整った顔立ちです。
ただ街は地下の空間を利用したもので。
「思ったよりも」
「ええ、小さな街ね」
恵梨香がナターシャに応えます。
「ドワーフの首都よりもね」
「ずっと小さいわ」
「それなりの大きさはあっても」
「山全体って感じでもないわね」
「闇エルフは人口が少ないからよ」
ビリーナは前にお話したことを二人にお話しました。
「エルフの中でかなり少数派なのよ」
「そういえばそうだったわね」
ナターシャも言われてこのことを思い出しました。
「闇エルフは」
「そう、エルフ族は多くが森や山にいてね」
「そっちの人達が主流で」
「地下に住む闇エルフはほんの少しなのよ」
「エルフの人達の中で」
「だからなのよ」
「街も小さいのね」
ドワーフの人達のそれと比べて遥かにです。
「そうなのね」
「森エルフで言うと森の普通の街位ね」
「それ位?」
「そう、ドワーフの首都の十分の一位の大きさよ」
「そんな感じね、確かに」
「それがこの街よ」
闇エルフの街というのです、見ればあまり規則的ではない街です。
道は曲がって入り組んでいて幅も様々です、ヒカリゴケや飛び交う蛍達に照らされている家々も黒い煉瓦で造られていますが妙に不規則です。
そして街の真ん中に左右非対称であちこち曲がっている漆黒の宮殿がありますが。
その宮殿、家々も一緒に見てです。ナターシャは言いました。
「何か大樹みたい」
「それを模した造りなの」
トロットが答えました。
「闇エルフの宮殿やお家はね」
「そうなんですか」
「闇エルフの人達も元々は森に住んでいたからね」
「それで、ですか」
「その名残なの」
「そうですか」
「闇エルフの人達も最初は森に暮らしていた普通の森エルフの人達だったの」
そうだったというのです。
「けれどね」
「地下に移住したんですか」
「他の場所に住みたいって思って」
「森に満足しないで、ですか」
「満足していたけれど他に面白い場所はないかって思ってね」
トロットはナターシャ達に闇エルフの人達が闇エルフになったその事情をお話していきます。それがどういったものかとです。
「海エルフの人達もそうだけれど」
「そう思って移住したんですね」
「そうなの、地下にね」
「それで闇エルフになったんですか」
「肌や髪の色も変わったの」
「地下に移住してから」
「そうなったの、それで今はね」
その街を見回しながらの言葉でした。
「ここで楽しく住んでいるのよ」
「そうですか」
「ええ、住んでいる場所は違ってるけれど」
「エルフなんですね」
「違うのは外見だけでね」
他のエルフの人達とはです。
「性格は同じよ」
「エルフはいい人達っていいますけれど」
「闇エルフの人達もよ」
「そうですか」
「そこは安心してね」
「わかりました、そういえば」
ナターシャはその闇エルフの人達を見ました、漆黒の肌にさらりとした銀髪それに緑色の切れ長の目がとても奇麗です。
すらりとした長身を質素な服で覆っています、そして銀やエメラルドやサファイアで飾っていますが。
「やっぱり銀ね」
「そうだね、銀だね」
「ドワーフの人達は金でね」
「エルフの人達は銀だね」
ジョージと神宝、カルロスが応えます。
「お話通りね」
「エルフ族の人達は銀が好きなんだ」
「それでよく身に着けてるんだね」
「それと」
恵梨香も言います。
「エルフの人達はエメラルドやサファイアが好きなのね」
「あっ、そうね」
ナターシャも言われて気付きました。
「そういえば」
「そうよね、ドワーフの人達はルビーやオパールで」
「この人達はそちらなのね」
「宝石の好みも違うのね」
「ええ、そうよ」
「宝石の好みも違うのよ」
ガラスの猫とエリカもナターシャにお話します。
「エルフ族とドワーフ族はね」
「そこも違うのよ」
「そうなのね、何か」
ここでナターシャが言うことはといいますと。
「水と油ね」
「そう、ドワーフ族とエルフ族はね」
ビリーナも応えました。
「まさに正反対なのよ」
「水と油で」
「決して混ざらないのよ」
「そうなのね、これがね」
「これが?」
「お酢と油ならいいのに」
こう言ったのでした。
「本当にね」
「お酢と油なら」
「そう、美味しいから」
「ドレッシングでしょ」
「そう、ドレッシングは美味しいから」
「私はドレッシングは口にしないけれど」
鶏だからです、それでなのです。
「そうなのね」
「水と油ならどうしようもないけれど」
「お酢と油なら」
「それなら」
「そう、いいのにね」
「そうね、ドレッシングならいいのに」
トロットもドワーフ族とエルフ族のことを考えて言うのでした。
「ドワーフ族とエルフ族は」
「そうですね」
「お水をお酢に出来ればいいのにね」
「どうにかならないでしょうか」
「どうしたものかしら、少なくともドワーフ族とエルフ族のいざかいは収めて」
「いざかいをなくす」
「そうしないとね」
こうナターシャに返すトロットでした、そうして。
一行は煉瓦の宮殿に来ました、宮殿は漆黒ですが銀でも飾られています、その銀の量はドワーフの王宮の金と同じ位でした。
その銀の瞬きを見てです、ナターシャ達五人はまた言いました。
「何ていうか」
「この宮殿は銀なのね」
「銀で凄く眩しくて」
「目がチカチカする位で」
「奇麗過ぎるけれど」
「この宮殿の中にね」
またビリーナがお話します。
「闇エルフの王様がいるわよ」
「どんな人?」
ナターシャはすぐにビリーナに尋ねました。
「それで」
「闇エルフの王様もね」
「いい人なのね」
「そうよ」
まさにというのです。
「悪い人じゃないわ」
「そうなのね」
「けれどね」
「それでもドワーフ族の人達とは」
「水と油なのよ」
ナターシャの言葉をそのまま返しました。
「そうなの」
「やっぱりそうなのね」
「それじゃあね」
「その王様のお話をなのね」
「今から聞いてね」
「わかったわ」
王宮の一番奥まで行くと銀の扉がありその銀の扉を開くと銀のお部屋の中に銀の玉座があり若々しい顔立ちのすらりとした長身、闇エルフの中でもとりわけそうである見事な身なりの人が座っていました。その人にです。
トロットは一礼して皆も続きました、そのうえで。
トロットがお話します、その人に。
「王様、お久しぶり」
「ようこそ、トロット王女」
丁寧で礼儀正しい返事でした。
「闇エルフの国に」
「お元気そうね」
「この通りです、今回はどういったご用件で」
「最近ドワーフの人達と揉めているそうね」
「国境を接しまして」
それでと答えるのでした。
「今は」
「そうなのね」
「ただ」
「ただ?」
「我々に落ち度はありません」
王様はこうトロットに述べました。
「これは誓って言います」
「悪いことはしていないのね」
「間違ったことはしていません」
断じてという返事でした。
「私達は。間違っているのはです」
「ドワーフ族の人達なのね」
「いつもの通りです」
「違うというのね」
「そうです、何故彼等はです」
こうも言った王様でした。
「地形をあそこまで変えるのか」
「掘り進んでいって」
「ありのままの形を尊重しないのか」
「それがなの」
「わからないのです」
「そうなのね」
「彼等とは他のエルフ達と同じです」
闇エルフであろうともというのです。
「考えが理解出来ません」
「それじゃあ」
「はい、喧嘩にはなりませんが」
「これからもなのね」
「いがみ合いは続くでしょう」
こう言うのでした、そしてです。
ビリーナは闇エルフの王様にもです、言うのでした。
「じゃあまた来るわ」
「お帰りですか」
「ええ、またすぐ来ることになるけれど」
「何時でもどうぞ」
「それじゃあね」
こうお話してでした、そのうえで。
一行は王宮を後にしますが王様は皆を礼儀正しく最後まで送ってくれました、他の闇エルフの人達もとても礼儀正しく紳士淑女でした。
それで列車に戻ってです、ナターシャは言うのでした。
「やっぱりいい人達ね」
「礼儀正しくてね」
「マナーもよくて」
ジョージと神宝が言います。
「悪い人達じゃないよ」
「一緒にいて笑顔になれたよ」
「お互いに悪い人達じゃないのに」
カルロスはドワーフ族の人達のことも考えます。
「どうしてかな」
「仲が悪いのかしらね」
恵梨香もそこがわかりません。
「本当に水と油だわ」
「それね、私も気付いたことがあったわ」
ビリーナが言いました。
「あることにね」
「あること?」
「あることっていうと」
「それは何?」
「一体」
「ドワーフの人達もエルフの人達も確かにいい人達よ」
そこはビリーナも認識しています。
「どちらもね、ただこだわりが強いの」
「それぞれのこだわりが」
「そうなのね」
「そう、それもね」
さらに言うビリーナでした。
「譲らないから、頑固でしょ」
「そうね」
トロットも言われて気付きました。
「どちらもこだわりが強くてね」
「頑固でしょ」
「引かないわね」
「そこは似てるのよ」
「水と油でも」
「譲らないところはね」
「しかも」
トロットはさらに言いました。
「それはそれこれはこれ」
「そうした考えをしないわね」
「こだわってばかりで」
「そのせいでよ」
「いがみ合っているのね」
「白か黒しかないの」
ドワーフ族もエルフ族もというのです。
「それでいがみ合っているのよ」
「そういうことね」
「それでね」
「解決もしないのね」
「このことがわかったわ」
ビリーナにしてはです。
「ドワーフ族とエルフ族はね」
「闇エルフの人達だけじゃなくて」
「皆なのよ」
それこそというのです。
「あの人達は」
「そこが問題で」
「そこをどうにかすればね」
「いがみ合いが解決するのね」
「というかよ」
こうも言ったビリーナでした。
「切ったジャガイモと潰したジャガイモはどっちが美味しいかしら」
「どっちも?」
「わしもそう思うよ」
トロットだけでなくキャプテンもこう答えました。
「どっちがどっちかっていうと」
「どっちもだよ」
「ジャガイモはどう調理しても美味しいわ」
「そうだよね」
「だからどっちかとは」
「言えないよ」
「そうしたものよ、コーンもよ」
ビリーナは自分の好物のお話もしました。
「バターコーンもポップコーンも美味しいわよ」
「どちらが一番」
「それはないね」
「一番という認識もね」
それもというのです。
「その人それぞれで違うでしょ」
「好みの問題は」
「それは」
「その人それぞれで」
「種族によっても」
「違うしそれが正しいとか間違ってるとか」
そう考えることもというのです。
「違うわよ」
「あの人達はわかっていないのね」
また言ったトロットでした。
「どうにも」
「そうですね、どちらもどちら」
ナターシャが言いました。
「それでいいと考えたら」
「それで解決するかしら」
「そうなりますか?」
「そうかも知れないわね」
「ひょっとしたら」
ふとです、ビリーナが閃きました。そしてその閃きを皆に言いました。
「この問題の解決の仕方が出たかもね」
「それは一体何?」
「どういったものなの?」
「ええ、カリフ王に提案するわ」
まさにと言ったビリーナでした、ガラスの猫とエリカに。
「パーティーを開くのよ」
「それが解決の仕方なの」
「そうなの」
「そうよ、ノーム族主催で」
そしてというのです。
「ドワーフの人達とエルフの人達を呼んだ」
「それでそのパーティーでなの」
「この問題を解決するの」
「そうよ」
まさにというのです。
「これで出来るわ」
「じゃあその知恵をね」
「見せてもらうわよ」
「そうしてね、そしてこの問題を解決して」
そうしてというのです。
「あらためて種のところに行くわよ」
「虹色の菫の種」
「そこになのね」
「ええ、行くわよ」
こう言ったのでした。
「いいわね」
「ええ、それじゃあね」
「ここはあんたを頼らせてもらうわね」
「そういうことでね、カリフ王にお話するわよ」
是非にというのでした。
「ノームの国に戻ってね」
「そういえばこの列車今は何処に向かっているの?」
ここでナターシャは行く先について尋ねました。
「それで」
「ノームの国よ」
「そのノームの国ですか」
「そうよ」
まさにそこだとです、トロットが答えます。
「あそこに向かっているわ」
「戻ってるんですね」
「そうよ、じゃあ」
「いい機会ね」
まさにとです、ビリーナも言います。
「じゃあ戻って」
「カリフ王にお会いして」
「お話しましょう」
まさにというのです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「下らないことは気にしないことよ」
人生訓も出したビリーナでした。
「それもまた大事なことよ」
「どうでもいいことは」
「そう、気にしないの」
ナターシャにも言います。
「大きなことは考えてね」
「そうあるべきなのね」
「そう、だって世の中色々なことが起こるでしょ」
「それはね」
「次から次に」
「だからなのね」
「その中の大きなことについて考えてね」
そしてというのです。
「小さいことはいいのよ」
「無視するのね」
「大きなことを解決しないと後で大変なことになるわ」
「だから小さなことはなのね」
「どうでもいいのよ、後で大きくなりそうだったら解決しないとだけれど」
まだ小さいうちにです。
「大きなことを見て考えるべきよ」
「ドワーフやエルフの人達と違って」
「そうよ、あの人達はこだわりが強いから」
「小さなことに」
「それでああして仲が悪いのよ」
「お互い小さなことにこだわり過ぎなのね」
「ジャガイモはどれも美味しいでしょ」
切っても潰してもです。
「それで金も銀も奇麗でしょ」
「宝石もどれもね」
「それならそれでいいのよ」
「どっちもなの」
「それでね」
ビリーナはさらにです、ナターシャに言いました。
「パーティーでそれをはっきりさせて」
「この騒動を解決するのね」
「そうよ、ドワーフの王様に名士の人達に」
ビリーナは知恵を働かせてパーティーにお招きする人は誰がいいのかも考えていきました、まずはドワーフの人達で。
「エルフ族は闇エルフ以外にも」
「森エルフや山エルフの人達もなのね」
トロットがビリーナに聞きました。
「お呼びするのね」
「勿論海エルフの人達もよ」
「それぞれのエルフの人達も呼ぶのね」
「王様と名士の人達をね」
各エルフ族のというのです。
「そうするわ」
「じゃあカリフ王にもお話して」
「そう、お酒もご馳走も出してね」
「パーティーね」
「それを開いてそこで」
まさにというのです。
「この些細な問題を解決するわ」
「些細なんだね」
ビリーナの今の言葉にです、ジョージは目を瞬かせて聞き返しました。
「困ったお話なのに」
「だから今小さなことって言ったでしょ?」
これがビリーナの返事でした。
「私の頭の前にはね」
「じゃあオズの国のドワーフ族とエルフ族の言い合いは」
神宝もビリーナに機来ます。
「これでなんだね」
「すぐに終わるわよ」
「まあビリーナの言う通りジャガイモはどっちも美味しいね」
カルロスはジャガイモのお話をしました。
「切っても潰しても」
「そうよね、こだわることでもないわよね」
恵梨香もこうした考えでした。
「そのこだわりを消す」
「そうしたパーティーにするわよ」
確かな声で言ってです、ビリーナはパーティーの内容についてトロットとキャプテンにもお話しました。そして二人からカリフ王にお話しました。
カリフ王は二人からお話を聞いてです、こう言いました。
「ああ、成程ね」
「これならいけるわね」
「カリフ王もそう思うね」
「うん、流石はビリーナ女王だね」
ビリーナが鶏の女王だからこう呼びました。
「頭がいいよ」
「ええ、ただね」
「君達を通じて話したことはだね」
「鶏だからね」
「そう、彼女自身から言われるとね」
「ノーム族としてはなのね」
「聞くどころじゃないよ」
鶏が怖くてです、とにかくノーム族は鶏が駄目なのです。彼等にとって卵はそこまで怖いものということです。
「そこはね」
「だからビリーナもそれがわかっていてね」
「君達に話してだね」
「私達が伝えたのよ」
ビリーナの考えをです。
「そうしたのよ、じゃあね」
「よし、それでいこう」
「パーティーを開くのね」
「そうしよう、是非ね」
こう言って実際にでした、ノーム族の人達は列車をドワーフの首都と各エルフ族の首都に送ってお招きしてです。
そしてです、パーティーの用意もしました。ビリーナの考え通りに。
問題を解決するためにパ^ティーか。
美姫 「確かに良い考えかもしれないわね」
だな。とは言え、すんなりといくかな。
美姫 「そこはそういくようにしないとね」
さてさて、どうなる事やら。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。