『オズのビリーナ』




                 第五幕  鶏の国

 一行はビリーナと王様の案内を受けて王宮を出たうえで鶏の国を観て回ることになりました。そのお国を観て回りますと。
 すぐにです、カルロスが言いました。
「小人の国みたいだね」
「小さいからね、僕達と比べると」
「鶏はね」
 ジョージと神宝がカルロスに応えます。
「どうしてもね」
「そんな感じになるね」
「そうだね」
「あとね」
 恵梨香は見ていてあることに気付きました、そのあることはといいますと。
「羽毛が沢山落ちてるわね」
「その羽毛を集めているんだ」
 ご主人が恵梨香に答えて言うことはといいますと。
「それを集めて枕やベッドにね」
「使うのね」
「そうだよ、羽毛の枕やベッドにする為に」
 まさにというのです。
「集めているんだ」
「そうなのね」
「いいものだよ」
 その羽毛はというのです。
「僕達のそれはね」
「鶏の羽毛っていいの」
「特に僕達のものはね」
「この国の鶏さんのものは」
「そうだよ、凄くよくてね」
 それでというのです。
「皆からも好評なんだ」
「何しろ羽毛は次から次に出るから」
 ビリーナもお話します。
「お掃除のついでに集めて」
「そしてなのね」
 ナターシャも聞いていて頷いています。
「皆よくお掃除してるのね」
「そうよ」
 まさにという返事でした、ビリーナの今のそれは。
「そうしてるの」
「成程ね」
「そしてね」
「そして?」
「お外には畑があって」
「その畑で食べものを作ってるのね」
「そうよ、勿論畑も柵で覆ってるわ」
 そちらもというのです。
「門の一つから出てすぐにね」
「畑に行けるのね」
「柵に囲まれたね」
「警護は厳重なの」
「厳重というか私達の国ってことよ」
 柵はというのです。
「柵の中が私達の国」
「それを見せているのね」
「そうなの、勿論国の護りでもあるわ」
「やっぱり柵はそうよね」
「これでも厳重な柵なのよ」
 只の木の柵かというと違うというのです。
「二重でしかも弾力があって燃えないし」
「木なのに燃えないの」
「魔法使いさんにかけてもらってね」
 燃えない様にというのです。
「そうなっているの」
「それはいいわね」
「そう、あと運動場も広いのがあるから」
 この国にはというのです。
「運動も出来るわ」
「結構色々揃ってるのね」 
 お話を聞いてです、トロットもしみじみとして頷きます。
「この国は」
「鶏が楽しく過ごせる場所よ」
「そういう風に作ってるのね」
「そうよ、あとね」
「あと?」
「一つ大事なことは」
 その大事なことはといいますと。
「この国は皆家族だから」
「ビリーナのご主人の子供さんとお孫さんと」
「ひ孫でね」
「血縁者なのね」
「お婿さんやお嫁さんもいて」
 その鶏さん達もというのです。
「皆家族よ」
「そうよね」
「だから結束も固いわよ、それこそね」
「それこそ?」
「誰か一羽でもいなくなったら」
 それこそというのです。
「大騒ぎになるのよ」
「じゃあ昔の私みたいにつまみ食いなんかしたら」
「大変な騒ぎよ」
 まさにとです、ビリーナはエリカにすぐに答えました。
「それこそね」
「やっぱりそうよね」
「そんなことはしないわね」
「今の私はしないわ」
「だといいけれどね」
「今日のお昼はお刺身よ」
 このことは絶対だというのです。
「だから間違ってもね」
「鶏もなの」
「食べないわよ」
 それこそというのです。
「絶対にね」
「だといいけれど」
「ええ、ただ一羽でもなのね」
「いなくなるとね」
 それこそというのです。
「大騒ぎよ」
「そうなるのね」
「毎朝家族単位でチェックしてね」 
 誰がいるかとです、ご主人が答えます。
「異常がなかったら家長が鳴くんだよ」
「コケコッコーーとよね」
 ガラスの猫が応えます。
「そう鳴くのね」
「そうなんだ、若しいない家があれば」
 その時はといいますと。
「泣かないからわかるんだ」
「どの家の家族がいないか」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「それでわかるんだ」
「そういうことね」
「まあ大抵は皆いるよ」
「心配無用なのね」
「若し誰かいなかったらわかるしね」
「あと私達の国にはノームは来ないわよ」
 ビリーナはこのこともお話しました。
「皆が皆卵を産むからね」
「鶏だから」
 ナターシャが応えます。
「そうなるわね」
「そうよ、招待もね」
「しないのね」
「絶対に来ないことがわかっているから」
 それでというのです。
「しないわよ」
「まあそうなるわね」
「ええ、ノームは卵が天敵だから」
「当たれば死ぬ位に」
「そうなるから」
「あの人達は招待しないの」
「むしろビリーナ達がノームの国に行ったらね」
 ジョージが言うにはです。
「あちらが大変だね」
「うん、もう大騒ぎだよ」
 カルロスも言います。
「そうならない筈がないよ」
「実際最初にビリーナが行った時にあの時のノーム王は怯えきっていたね」
 神宝はその時のことをお話に出しました。
「それで難を逃れられた位だし」
「そうよね、だからね」
 恵梨香は鶏さん達が箒で道にある羽毛を集めるついでにお掃除もしてお国を奇麗にしているのを見ながら言いました。
「それはね」
「ないわね」
「こればかりはね」
 ノームの人達とのお付き合いはというのです。
「僕達にはないね」
「やっぱりそうよね」
「これは仕方ないね」
「ノームの人達にとって卵は天敵だから」
「どうしてもね」
「そういうことね、わかったわ」
 恵梨香もここまで聞いて納得しました。
「そのことはね」
「うん、それとね」
「それと?」
「狐とはね」
「あっ、狐は鶏肉が好きだから」
「僕達はお付き合いしたくないね」 
 鶏の方からというのです。
「最近まで交流はなかったし」
「今はあるの」
「少しだけれどあるよ」
 そうだというのです。
「あちらが鶏よりも好きな食べものが出来たから」
「揚げね」
 それが何かです、ナターシャが言いました。
「それね」
「そう、日本から入ってきたらしいね」
「揚げは狐に凄くいい食べものみたいね」
「油揚げさえあればみたいだから」
 狐さん達はというのです。
「満足出来るみたいだね」
「そうだね、狐君達の主食になっているね」
 キャプテンも言います。
「油揚げは」
「煮ても焼いても食べているわね」
 トロットも言います。
「私もあの国に何度も行ってるけれど」
「きつねうどんも食べてるし稲荷寿司もね」
「いつも食べてるわね」
「そういうのを見るとね」
「本当に好きなのね」
「そうね、好き過ぎて」
 それでなのです、揚げが。
「鶏肉が主食じゃなくなったわね」
「だからね」
 それでとです、王様も言います。
「あちらとの交流も出来る様になったわ」
「そうなのね」
「揚げはオズの国になかったよ」 
 王様はナターシャにお話しました。
「日本の食べものでね」
「日本からアメリカに入ってよね」
「オズの国にも入ったんだ」
「そうだったわね」
「そうした食べものでね」
「狐さん達に会って」
「主食になったんだ」
 まさにそうなったというのです。
「あちらのね」
「狐さんっていえば揚げよね」
 恵梨香が言うにはです。
「何といっても」
「それは日本だけだよ」
「日本の狐さんだけだよ」
「他の国の狐さんは違うよ」
 ジョージと神宝、カルロスはその恵梨香に言います。
「狐さん達は色々な国にいるけれど」
「揚げが好きとなるとね」
「本当に日本の狐さん達だけだから」
「揚げが日本にしかないから」
 恵梨香も言います。
「だからよね」
「そうよ、あと日本の狐さん達は」
 ナターシャが恵梨香に言うことはといいますと。
「小さいわね」
「それも皆言うわね」
「ええ、山にいてね」
「他の国の狐さんに比べて小さいのね」
「あと愛嬌があるわね」
「そうなのね」
「童話とかでもよく出て来て」
 そうしたお話の中でもというのです。
「化かしたり悪戯したりしてもすぐに懲らしめられるでしょ」
「ええ、強い人や偉いお坊さんに」
「そうしたところがね」
「愛嬌があるのね」
「可愛いわね」
「そういえばそうね」
「日本では狸さん達もいるけれどね」
「そういえば何か」
 ここでトロットが言うことはといいますと。
「揚げ食べる様になってね」
「ええ、狐さん達もね」
「これまで以上に平和になったわね」
 エリカとガラスの猫も言います。
「愛嬌が出て来て」
「さらにね」
「化けることは前からだけれど」
「さらに親しみやすくなったわね」
「そう、そのこともあってだよ」 
 まさにとです、王様は二匹の猫にも答えました。
「私達は付き合える様になったんだ」
「狐さん達が揚げを食べる様になって」
「それから」
「どうもお肉を食べるより揚げや野菜を食べる方がね」
 そうした方がというのです。
「平和な考えになるかもね」
「それ言われてるわね」 
 ナターシャは王様のその言葉に頷きました。
「私達人間の間でも」
「菜食主義だね」
 キャプテンはそのナターシャに応えました。
「その考えだね」
「はい、そう言われてますね」
「そうだね、人によるけれどね」
「人にですか」
「臆病ライオン君や腹ペコタイガー君は最初から穏やかだから」
 そうした性格だからというのです。
「そこはそれぞれだね」
「あの人達はお肉よね」
 お肉を食べているとです、ビリーナも言います。
「そうよね」
「そう、基本はね」
 ライオンや虎は肉食だからそうなります。
「けれどそれでもだね」
「あの人達はいつも穏やかね」
「臆病ライオン君は勇気の塊だけれどね」
「あんなに穏やかなライオンは他にはいないわ」
「腹ペコタイガー君もね」
 彼もです。
「穏やかだね」
「ええ、とてもね」
「だからそこはね」
「それぞれなのね」
「狐君達は穏やかになって」
 揚げを主食にする様になってです。
「そしてね」
「臆病ライオンさんや腹ペコタイガーさんはね」
「肉食でもだよ」
「一概には言えないのね」
「そうだよ、それぞれの性格があるんだ」
 そこはというのです。
「むしろね」
「それでね」
「それで?」
「君達のそれぞれの性格があるね」
「確かに」
 王様はキャプテンのその指摘に頷きました。
「僕達も一羽一羽性格が違うね」
「大人しい子もいればだね」
「そうでない子もいるね」
「特にね」
 ここでビリーナが言うことはといいますと。
「あの子はね」
「ああ、あの子はね」
「凄いわね」
「全く、困った子だよ」
 夫婦でお話をするのでした。
「どうにもね」
「そうよね」
「問題児がいるみたいね」
「そうなのよ」 
 ビリーナは自分達に聞いてきたトロットにすぐに答えました。
「これがね」
「そうなのね」
「カミーユっていってね」
「男の子かしら」
「そうよ、女の子みたいな名前だけれどね」
「私は聞いてすぐに男の子って思ったわ」
 トロットはこうビリーナに返しました。
「カミーユっていうと」
「カミーユだと女の子でしょ」
「いえ、本当にそう思ったから」
 実際にというのです。
「これが」
「それはまた不思議ね」
「感性かしら」
 カミーユという名前を女の子のものではなく男の子のものと感じ取ることはというのです。
「それぞれの」
「そうしたものなのね」
「というかビリーナはどうして女の子みたいな名前を男の子につけたの?」
 ナターシャはビリーナにこのことから尋ねました。
「それはまた」
「女の子みたいだったのよ」
「生まれた時は」
「そう、卵から出た時はね」
 まさにその時はというのです。
「美形でね」
「それでカミーユにしたの」
「そうなの」
「僕達にとって玄孫のうちの一羽でね」
 王様もお話します。
「一番のやんちゃなんだよ」
「やんちゃさんなのね」
「そうなんだ」
 王様は恵梨香にもお話しました。
「この国で一番のね」
「ううん、やんちゃっていうと」
 恵梨香はここでエリカを見ました。
「エリカみたいな」
「あら、私なの」
「だって貴女本当にやんちゃだから」
「猫は皆そうよ」
「いえ、エリカは猫の中でもかなりやんちゃだよ」
 神宝はこうエリカに言いました。
「僕が見た中で一番かな」
「最初にオズの国に来た時は凄かったしね」 
 ジョージはそのことからお話しました。
「何かと」
「そうそう、その時のことを思うとね」 
 カルロスもその時のことについて言及します。
「エリカは相当にやんちゃよ」
「性格は違うところが多いけれど」
 それでもとです、ビリーナもお話します。
「本当にやんちゃで」
「エリカと同じ位にだね」
 キャプテンもビリーナに問います。
「騒動を起こすんだ」
「そうなの、実際にね」
「だからだね」
「私達も手を焼いているのよ」
「そうなんだね」
「全く、どうしたものか」
 ビリーナはこうも言いました。
「あの子についてはね」
「何度も注意しているのだけれどね」
 王様もというのです。
「これが中々」
「やんちゃなのが治らないわね」
「そうだよね」
「乱暴なことはしないけれど」 
 それでもというのです。
「悪戯とかばかりして」
「困るよ」
「本当にね」
 こう口々にお話します、彼等にとっては本当に悩みの種みたいです。ですがその彼についてです。ビリーナはこうも言いました。
「ただ、凄く頭がいいのよ」
「そうなのね」
「そう、頭の回転が速くて」
「だから余計になのね」
「騒動を起こすのよ」
 こうお話するのでした。
「あの子は」
「そうなのね」
「やれやれよ、それで今はどうしてるの?」
 ビリーナはご主人に尋ねました。
「あの子は」
「ここ数日は別にね」
「何もしていないのね」
「ううん、何かと国の中を見回っているだけで」
「何もなのね」
「そう、何もしていないよ」
「あの子にしては珍しいわね」
 ビリーナはご主人のお話を聞いて意外に思って言うのでした。
「一日一回は何かをするのに」
「それがね」
「心を入れ替えたかというと」
「そうした子でもないしね」
「またおかしなことね」
 首を傾げさせて言うビリーナでした。
「それはまた」
「そうだね、けれどね」
「油断は出来ないわね」
「何時何をする子かわからないからね」
「ええ、そうよね」
「本当にね」
 こうお話するのでした、二羽で。
 そしてです、ビリーナは皆にこうも言いました。
「カミーユに会う?」
「ええ、どんな子かね」
 トロットがビリーナのその言葉に答えます。
「興味が出て来たわ」
「それじゃあだね」
「あの子のお家に行きましょう」
「それじゃあ」
「この近くよ」 
 皆が歩いているそこのというのです。
「そこに行ってね」
「そしてよね」
「カミーユに会いましょう」
「外見はね」
 王様はカミーユの姿形についてお話します。
「結構整ってるんだけれどね」
「あなたに似てね」
 ビリーナはすぐにご主人である王様に言いました。
「そうよね」
「それは褒め過ぎだよ」
「いえいえ、私にはわかるわ」
 まさにというのです。
「あなたは最高に優しくてハンサムな鶏よ」
「そうかな」
「羽毛も顔立ちもトサカもね」
 その全てがというのです。
「整っていてね」
「ううん、鶏の容姿はあまりわからないけれど」
 ナターシャは横で聞いていて考えるお顔になりました。
 それで、です。その考えるお顔でこう言うのでした。
「ビリーナがそう思うのならそうかしら」
「鶏の顔のことは鶏がわかるのよ」 
 これがビリーナの返答でした。
「これがね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
「貴女がそう言うのなら」
「そうよ」
 まさにというのです。
「この人は一番の美男子なのよ」
「鶏の中で」
「心もね」
「大切なのは心だからね」 
 キャプテンも言います。
「それがいいというのことは素晴らしいね」
「それはわかるでしょ」
「王様は立派な人だよ」
 キャプテンから見てもです。
「本当に」
「そうしたことも含めてね」
「美男子だね」
「鶏で一番のね」
「それで結婚して」
「王様になってもらったの」
 自分が女王になってというのです。
「そういうことよ」
「成程、よくわかったよ」
「ええ、それでこのお家にね」
 ここでビリーナはあるお家の前で立ち止まりました、見れば他の鶏達のお家と同じく鶏の大きさに合わせたお家です。
「カミーユがいるのよ」
「僕達の曾孫の子のうちの一羽とカドリングから来た奥さんの家だよ」
 王様も皆に説明します。
「このお家はね」
「そうなのね」
 ガラスの猫がそのお家を見つつ言います。
「それでこのお家にいるのね」
「そうだよ、いいかな」
 王様は穏やかな声でお家に声をかけました。
「誰かな」
「あっ、ひいお祖父ちゃん?」
「王様の声がするわ」
 二羽の男女の声が聞こえてきました、そのお家の中から。
「これはまたどうしてかな」
「私達にご用が」
「カミーユはいるかな」
 王様はお家の中から出て来た二羽の若いつがいの鶏達に尋ねました。見れば二羽共奇麗な羽毛の白い鶏達です。
「あの子は」
「はい、うちの子は皆今はお家の中にいます」
「それで遊んでますけれど」
「今呼びますね」
「そうしますね」
「そうしてくれるかな、実はね」
「お客さんが来ているの」
 ビリーナもつがいの二羽に言います。
「このお家にね」
「あっ、トロット王女にキャプテンさん」
「ガラスの猫にエリカもいるわね」
「ええと、それで」
「その人間の子供達は」
 五人も見て言うのでした。
「誰かな」
「はじめて見る子達だけれど」
「あんた達も聞いている筈よ、外の世界から来た子達でね」
 ビリーナはつがいにです、ナターシャ達のこともお話しました。
「オズの国の名誉市民の子達よ」
「あっ、あの噂の」
「オズマ姫やドロシー王女のお友達の」
「それがこの子達なんだ」
「トロット王女よりも子供ね」
「ええ、十歳よ」
 ナターシャがつがいに答えます。
「私達はね」
「そうなのね」
「じゃあカミーユと同じ感じかしら」
「人間で十歳というとね」
「それ位かしら」
「そうなのかしら」
 ナターシャはつがいの言葉を聞いてまた考えるお顔になりました。
「私達が」
「そんな感じね、あんた達はカミーユと同じ位よ」 
 ビリーナもナターシャに言います。
「大体ね」
「そうなのね」
「ええ、じゃあカミーユをね」
 ビリーナはまたつがいに言いました。
「読んでね」
「うん、わかったよひいお祖母ちゃん」
「呼んできます」
 二羽も応えてです、そのうえで。 
 一旦お家の中に入ってそのカミーユという子を呼びました、すると雛が何羽も出て来ました。二羽は雛達を周りに置いて皆にお話しました。
「いやあ、皆来ちゃって」
「子供達が」
「この通りね」
「カミーユも他の子達もいるわ」
「どの子がカミーユなの?」 
 恵梨香は雛達を見つつつがいに聞きました。
「それで」
「僕だよ」
 雛達のうちの一羽が右の羽根を挙げて名乗ってきました。
「僕がカミーユだよ」
「そうなのね」
「うん、弟や妹達とは違うよね」
「違うかな」
 ジョージはカミーユの言葉を聞いて全ての雛達を見てこう言いました。
「見たところ皆同じだよ」
「皆雛だよね」
 神宝が見てもです、見ながら目を瞬かせています。
「鶏の」
「色も外見も同じで」
 カルロスも言います。
「区別がつかないよ」
「そうよね」  
 恵梨香も三人の言葉に頷きます。
「ちょっと。私達にはね」
「見分けがつかないわね」
「そうね」
 エリカとガラスの猫、二匹から見てもです。
「カミーユも他の子達もね」
「同じに見えるわ」
「いや、違うよ」
 カミーユが雛達の中から言います。
「僕は皆より少し大きくて瞳と嘴が大きいよ」
「そうそう、お兄ちゃん大きいんだよね」
「身体も嘴もね」
「黒目のところが大きいわ」
「爪が少し曲がっていて」
「足の皺が少なめよ」
「かなり違うんだよね」 
 彼の弟や妹達もこう言います、ですが。
 ナターシャ達五人も二匹の猫達もです、こう言います。
「そう?」
「嘴も目も同じに見えるわ」
「爪曲がってる?」
「皺多い?」
「大きさも違うかな」
「全部一緒じゃない」
「鏡で見たみたいにそっくりよ」
 皆こう言います、そして。 
 トロットもです、キャプテンにお顔を向けて言うのでした。
「こう言ったら何だけれど私達が鶏さん達を見分けることは」
「かなり難しいね」
「そうよね、トサカで性別はわかるけれど」
「羽毛の色が違うこともね」
「他のことで見分けるとなると」
「中々出来ないよ」
「種族が違うとそうね」 
 ビリーナも言います。
「私は五人の区別がわかるけれどね、トロットとキャプテンも」
「この子達はわかりやすいわよ」
 トロットはすぐにビリーナに答えました。
「三人男の子で二人女の子で」
「そうよね」
「それぞれお肌や目、髪の毛の色が違うから」
「だからわかるわ」
「むしろ私とベッツイ、ドロシー、オズマの方がでしょ」
「髪の毛と目の色で見分けてるわ」
「そうでしょ、種族が違うとね」 
 どうしてもとです、トロットも言います。
「同じに見えるの」
「私のお父さんの言葉だけれど」
 ナターシャが言うにはです。
「日本に来た時アイドルグループの娘が皆同じ顔に見えたってね」
「あっ、それうちのお父さんも言ってたわ」
 恵梨香も言います。
「そうね」
「皆外見違うのにね」
「最初は区別がつかないって」
「そうよね」
「そうかしらね」
「違うわよね」
「私はそう思うけれど」
「私もね」
 二人で言います。
「そこはね」
「それぞれお顔違うのに」
「わからないのかしら」
「どう違うのか」
「そうだね」
 キャプテンも言います。
「興味というかはじめて見るとね」
「わからない」
「そういうものですか」
「学校のクラスでもそうだね」
 キャプテンはこう言った方が五人にもわかると思ってこうした例えを出しました。
「最初は誰が誰か名前と顔が一致しないね」
「あっ、そう言われますと」
「そうですね」
「言われてみればいつもクラスが変わると最初は」
「皆の名前と顔が一致しないです」
「どうしてもそうなります」
「そうだね、だから慣れるとね」
 この場合はクラスにです」
「名前と顔も一致してね」
「誰が誰かわかる様になる」
「そういうことですね」
「アイドルも誰が誰かわかる様になる」
「慣れてくれば」
「そうなりますね」
「そういうことだね、だから種族の違いも」
 今皆が困っているこれのこともというのです。
「慣れるとわかる様になるよ」
「私も今では完全によ」 
 また言うビリーナでした。
「オズの国の人の誰が誰かわかるわよ」
「ビリーナもなのね」
「ノームの人達もね」 
 自分達を天敵としている彼等もというのです。
「わかる様になったわ」
「そういえば私は」
 トロットはといいますと。
「まだあまりね」
「ノームの人達の見分けがつかないのね」
「ええ、どうもね」
「前の王様と今の王様の違いはわかるでしょ」
「何とかね」
「けれどなのね」
「完全にはね」
 そこまではというのです。
「見分けがつかないわ」
「そうなのね」
「私達もビリーナ達も同じね」
「種族が違うと見分けがつきにくいわね」
「そうなるまでに時間がかかるわね」
「慣れるまではね」
 そうなるとです、ビリーナとトロットはお互いにお話をしました。そして王様はカミーユにあらためて聞きました。
「最近悪戯はしていないね」
「だって最近ずっと眠くてね」 
 カミーユは自分のひいひいお祖父ちゃんである王様に答えました。
「寝てばかりなんだ」
「それでなんだ」
「お昼寝がとても気持ちよくて」
 それでというのです。
「悪戯とかしていないよ」
「それは何よりだね」
「うん、だから安心してね」
「全く、起きている間も静かにしてくれたら」
 王様はしみじみとした口調でこうしたことも言いました。
「有り難いけれどね」
「全くだよ、この子ときたら」
「本当に悪い子だから」
 カミーユのお父さんとお母さんも困ったお顔で言います。
「起きたら悪戯ばかりして」
「やんちゃだから」
「乱暴なことはしないけれど」
「悪い子よ」
「あらゆる悪戯をあらゆる方法でする」
 カミーユはこんなことも言いました。
「それが子供のお仕事っていうけれど」
「そんなことは言わないよ」
「誰がそんなことを言ったの?」
 ご両親はすぐにです、カミーユに問い返しました。
「また近所のリンチェンさんかい?」
「あの人なの?」
「うん、あの人に教えてもらったんだ」
 素直に答えたカミーユでした。
「子供がそれがお仕事だってね」
「全く、変なことばかり覚えて」
「あの人みたいになったらどうしようかしら」
「リンチェンさんっていうと」 
 ガラスの猫はつがいが出した名前を聞いてです、ビリーナと王様にすぐに聞きました。
「誰?」
「私達の娘婿のうちの一羽よ」
「ウィンキーの烏骨鶏だよ」
「遊び人で無類の悪戯好きで」
「カミーユが成長したみたいな子なんだ」
 こうガラスの猫にお話します。
「私から見れば娘婿で子供だけれど」
「この子達から見れば人生の先輩だね」
「そうなのね、それでそのリンチェンさんがなのね」
「カミーユはあの子を慕っていて」
「何かと教えてもらっているんだ」
 それでというのです。
「そういえばカミーユはリンチェンに似てきたね」
「性格がね」
「あの人のところにいつも行くから」
「すっかり悪戯好きになって」
 つがいも言います、困ったお顔になって。
「真面目な人を慕えばいいのに」
「何で国一番の悪戯者につくのかしら」
「リンチェンさん凄い人だよ」
 カミーユは鶏として言うのでした。
「もの知りで心の動きとかもよくわかってるから」
「けれどあの人の悪戯を考えると」
「お世辞にも褒められないわ」
「だからだよ」
「あの人のところには」
「あまり行かない」
「そうしなさい」
 こう言うのでした、カミーユに。
 ですがカミーユはご両親にです、平気な様子で言葉を返します。
「僕リンチェンさんみたいな凄い元気で頭のいい鶏になるんだ」
「リンチェンが元気で頭がいいことは事実だね」
 王様も認めることです。
「けれどね」
「それでもなんだ」
「そう、彼はね」
「悪戯好きだから」
「あまり全てを受け入れないで欲しいが」
「またああした子が増えたら大変よ」
 ビリーナはすっかり国のお母さんになっています、女王様であると共に。
「もうね」
「ううん、そうなんだ」
「そうよ、本当に」
「僕ああした鶏になりたいのに」
「王様みたいになりなさい」
 ビリーナはご主人を見てカミーユに言います。
「こうした立派な人にね」
「立派になるっていいことなの?」
 カミーユは首を右に傾げさせてビリーナの今の言葉に応えました。
「それって」
「何言ってるのよ、悪い筈がないでしょ」
「だって生真面目に生きるだけが人生じゃないよ」
「だからっていうの」
「うん、僕はリンチェンさんとかね」
 さらに言うのでした。
「リンキティンク王みたいに生きたいんだ」
「ああした騒がしい遊び人になりたいの?」
「自由に生きるね」
「自由なのはいいけれど」
 それでもとです、また言うビリーナでした。
「悪戯が過ぎるのは駄目よ」
「リンチェンさんやリンキティンク王みたいに」
「そうよ」 
 まさにというのです。
「私もやんちゃだけれどあんたは遥かにだから」
「物事には限度があるのだよ」
 王様もカミーユに再び言います。
「普通の悪戯好きならいいけれど」
「僕は度が過ぎているんだ」
「そう、そんなのだと大変だよ」
「いいと思うけれどね、僕は」
「全く、これじゃあ本当にリンチェンみたいになるかな」
 王様は困ったお顔で言うのでした。
「この子は」
「参ったことね、まあこの子にはずっと言っていきましょう」
「そしてだね」
「育てていくことにして」
「そう、子育ては諦めないことだからね」
「諦めたらそれで終わりよ」 
 子育てはとです、ビリーナは王様に言います。
「それでね」
「そうだね、諦めず何度も何度も言っていく」
「そうすればね」
 まさにというのです。
「次第によくなっていくから」
「諦めないでいきましょう」
「言っていこうね、それはそうとして」
 ここで王様は話題を変えました、その話題はといいますと。
「君は今度国に素晴らしいお花を持って来てくれるとか」
「そのお話ね」
「どういったお花なのかな」
「虹色の菫よ」
「虹色の?」
「そう、虹色に輝く菫があるのよ」
 こうご主人である王様にお話するのでした。
「このオズの国にね」
「そうなんだね」
「それでね」
 さらにお話するのでした。
「この国に種を持って来てね」
「植えてだね」
「飾ろうと思っているの」
「それは何時かな」
「そうね、何時にしようかしら」
 ビリーナは王様の言葉を受けて考えるお顔になりました。
「それは」
「そのことも考えていこうね」
「ええ、そうしましょう」
 二羽でお話します、そして。
 そのお話が一段落したところで、です。キャプテンは皆に時計で時間をチェックしたうえでこう言いました。
「もうお昼だよ」
「あっ、御飯の時間ね」
「うん、そうだよ」
 トロットにも答えます。
「もうね」
「それじゃあ」
「私達もお昼にするから」
 ビリーナも皆に言います。
「あんた達も食べてきて」
「うん、それじゃあね」
「それでお昼を食べたらまた王宮に来て」
「それでまた遊ぶのね」
「そうしましょう、午後は午後で」
「それじゃあね」
 トロットがビリーナに笑顔で応えます、そしてです。ビリーナはここでご主人に笑顔でこうしたことを言いました。
「久しぶりに一緒に食べましょう」
「そうするんだね」
「ええ、皆でね」
「それならトロットさん達と一緒に食べよう」
「あら、王宮でと考えていたけれど」
「トロットさん達皆が王宮jの食堂に入るには」
「そう、難しいでしょ」
 何故難しいのかもです、ビリーナも言います。
「あそこには人間用のテーブルや椅子がないから」
「用意しておきべきだね」
「今後はね、けれど今はね」
「そう、トロット達の為のテーブルや椅子がないから」
 だからというのです。
「残念だけれどね」
「お昼は別々だね」
「そうなるのよ」
「じゃあお昼を食べたら」
「合流よ、そういうことでね」
「それじゃあね」
 二羽でお話してでした、そのうえで。 
 トロット達は今は鶏の国の外に出ました、そして彼女達で御飯を食べるのでした。



鶏の国を回ったみたいだけれど。
美姫 「まあ、流石に個体を見分けるのは難しいみたいね」
だな。にしても、鶏にも悪戯好きが。
美姫 「カミーユがどう成長するのかはまだ先でしょうけれどね」
お昼は別々だけれど、後で合流する事に。
美姫 「次回はどうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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