『オズのビリーナ』




                 第四幕  ビリーナの国

 一行は将軍のお家でココアとお菓子をご馳走になってからです、将軍とご主人に手を振って笑顔で別れました。
 その後で、です。一行はまた旅を再開しましたが。
 その道中でまずはジョージが言いました。
「ご主人が言われるにはね」
「ええ、亭主関白よね」
「そうみたいですね」
 こうトロットにも応えます。
「これが」
「いや、本当にかかあ天下って思ってました」 
 神宝も強く思っていました、実際に。
「将軍ですから」
「私もかなりそう思ってたわ」
「トロットさんもですね」
「というか殆どの人がそう思ってたんじゃないかな」
 カルロスは首を少し傾げさせた感じで言いました。
「将軍のお家については」
「私もそうだったし」
「トロットさんもですよね」
「本当にこうしたことはわからないのね」 
 恵梨香はしみじみとしたお顔になっています。
「家庭のことは」
「そうね」
「考えてみれば私達のお家もだし」
「恐妻家と言われていても実は違う」
 ナターシャも考えるお顔になっています。
「亭主関白ということも」
「あるのね」
「そのことがよくわかりました」
 ナターシャはトロットにもお話しました。
「さっき将軍のご主人とお話しまして」
「自分で恐妻家と言う人もいるけれど」
 キャプテンがここで皆に言います。
「実は違う場合もあるからね」
「口ではそう言いながらも、ですね」
「実は好き勝手している」
「そうした男の人もいる」
「そうなんですね」
「つまりは」
「そうだよ」 
 その通りとです、キャプテンは五人にお話しました。
「そうした知り合いも結構いたからね」
「というか後ろめたいことがあるから」
 ナターシャも言います。
「そんなことを言うのですね」
「そうした人がいるね」
「そうですか」
「うん、好き勝手お酒を飲んで遊んでね」
「それで恐妻家とですね」
「自分では言うんだ」
「よくない人ですね」
 ナターシャはキャプテンのその話にまた考えるお顔になりました。
「好き勝手していて奥さんのことを悪く言う人は」
「恐妻家っていうとどうしてもね」
「奥さんが悪く聞こえますね」
「けれど悪いことをするから怒られるからね」
「奥さんに」
「そういう人は確かによくないね」
「そうですね」 
 ナターシャはキャプテンの言葉に頷きました。
「悪いことをしていてそんなことを言うことは」
「うん、けれど世の中そうしたこともあるから」
「知っておくことですね」
「オズの国ではそこまで悪い人はいないけれど」
 自分は好き勝手していてそれで怒られて怒った相手の人を悪く言うようなそうした人はです。これは誰でもよくないことです。
「けれどね」
「それでもですね」
「そうした人もいるから」
「注意しないといけないですね」
「そうだよ」
 実際にとです、キャプテンは皆にお話します。
「誰もがそんなことをしてはいけないよ」
「そういうことですね」
「うん、それでだけれど」 
 ここでキャプテンは話題を変えました、今度の話題はといいますと。
 トロットにお顔を向けてです、こう言うのでした。
「一つ思うことはね」
「一つ?」
「うん、このまま真っ直ぐにビリーナの国に行って」
 そしてというのです。
「そこまで何もないか、それかね」
「行ってからなのね」
「何もないかな」
「絶対に何かあると思うわ」
 トロットはこうキャプテンに答えました。
「私はね」
「これまでがそうだったからだね」
「だってオズの国よ」
 自分達のいる国はというのです。
「だったらね」
「何かが起こるね」
「急に思わないことが起こる国よ」
 まさにそうした国だからというのです。
「だから今回もね」
「何かが起こるね」
「そう、些細な冒険もね」 
 ちょっと行く位のものでもです。
「何かが起こって」
「それでね」
「大冒険になることがいつもだから」
「わし等の旅もいつもそうだったし」
「それはもう私もね」 
 トロットにしてもというです。
「折り込み済よ」
「ならいいよ、何があってもね」
「皆で乗り切っておきましょう」
「そうして冒険を楽しんでいこう」
「是非ね」
「まあ何があってもね」 
 ここで言ったのはエリカです。
「私がいるから大丈夫よ」
「この私がいるのよ」
 ガラスの猫も言います、二匹共堂々と胸を張って歩いています。
「何があってもよ」
「恐れることはないわ」
「猫はね、凄い力があるのよ」
 エリカが言うその力は何かといいますと。
「抜群の勘と耳と目があるのよ」
「だからなのね」
「この三つで何でもわかるから」
 それでとです、トロットにも言うのです。
「怖がることはないわ」
「何があっても」
「そう、心配しないでね」
「貴女がいてガラスの猫もいるから」
「安心してね」
 こう言うのです、そしてです。
 そのお話の中で、です。ビリーナも言います。
「何といっても私がいるのよ」
「貴女もそう言うの?」
「言うわよ、私がいて乗り越えられたピンチは多いでしょ」
「そうね、貴女も勘がいいし」
 しかもです、ビリーナは。
「肝っ玉もあるからね」
「頭もね」
 このことはビリーナ自身が言います。
「だから大丈夫よ」
「そういうのがビリーナね」
「そして私は言った通りのことをするのよ」
 それこそ絶対にというのです。
「だからね」
「安心していいのね」
「何があってもね」
 それこそというのです。
「安心していいわよ」
「それじゃあ」
「そう、普通にね」
 それこそという返事です。
「大船に乗ったつもりでいてね」
「頼りにさせもらうわね」
「是非ね」
 確かな声で、です。トロットも応えます。そしてです。
 一行はお昼御飯も食べながら先に先にと進みます、ティータイムの一服も挟んで夕暮れになるまで歩いて。
 夜になってです、晩御飯を食べますが。
 カレーを食べつつです、ナターシャは言うのでした。
「今日はカツカレーなのね」
「そうよね」
 恵梨香もそのカレーを食べながら応えます。
「サラダとゆで卵と牛乳で」
「カツカレーなのね」
「ナターシャもカツカレー好きよね」
「好きよ、ただね」
「ただ?」
「このカレーは日本だけね」
 あるのはというのです。
「本来は」
「そうよね、アメリカにも入ってるから私達も今食べているけれど」
「こうしたカレーもあるなんて」
 ナターシャはしみじみとして言うのでした。
「日本に来て最初驚いたわ」
「こうしたカレーもあるって」
「そうなの」 
 実際にという返事でした。
「カレーのことは知っていて日本のカツもだけれど」
「それでもなのね」
「驚いたわ、両方を合わせているなんて」
 それこそというのです。
「面白いと思ったわ」
「カツカレーはね」
 そのカレーについてです、恵梨香はナターシャにこうお話しました。
「何でも日本のプロ野球選手が考えたらしいのよ」
「日本の」
「ええ、巨人の選手だったらしいのが嫌だけれど」
「巨人?」
 巨人と聞いてです、ナターシャだけでなく男の子三人も嫌なお顔になりました。四人共関西の学校にいるせいか巨人は嫌いなのです。
「あのチームの選手?」
「そうなの」
「嫌なチームね」
「そのチームの人だったらしいけれど」
「その人が考えたのね」
「何でも洋食が好きだったらしくて」
 それでというのです。
「カツとカレーを一緒に食べるにはどうすればいいのか」
「そう考えてなのね」
「作ったらしいのよ」
「それがカツカレーなのね」
「そうなの」
「成程ね、巨人の選手っていうのが気に入らないけれど」
 五人共、勿論ナターシャもそのことが気になります。けれどなのです。
「美味しいことは美味しいわね」
「そうよね」
「一緒に食べると」
「また違うのよね」
「カレーだけでもカツだけでも」
 そのどちらkだけでもというのです。
「美味しいけれど」
「それを一緒に食べると」
「また違うわ」
「御飯とルーとカツの三つが合わさって」
 まさに同時にです。
「凄く美味しいのよね」
「そうよね」
「私も好きよ」
 トロットも笑顔で食べています。
「カツカレーはね」
「トロットさんもですね」
「だから今夜はこれにしようって思ったの」
 カツカレーにというのです。
「是非ね」
「そういうことですね」
「あとカレーにはサラダよね」
「いい組み合わせですよね」
 サラダについてもです、ナターシャは応えました。
「カレーには」
「だからこれにしたの」
「和風サラダですね」
 海草も入っていてあっさりとしたぽん酢のドレッシングのです。
「何か洋風な様で和風ですね」
「カツカレーも日本生まれでね」
「そうですよね」
「どちらもアメリカに入ったからね」
「私達もこうして食べていますね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「それが美味しいわね」
「はい、本当に」
「それじゃあね」
「今晩はこのカツカレーとサラダを食べて」
「ゆで卵もね」
 牛乳もあります。
「寝ましょう」
「わかりました」
「デザートはチーズケーキよ」
 トロットは皆に笑顔でデザートのお話もしました。
「そちらも楽しんでね」
「わかりました」
 ナターシャも他の皆も笑顔で応えます、そしてです。
 皆でカツカレーとサラダ、ゆで卵を牛乳と一緒にお腹一杯食べました。そして最後はチーズケーキも食べて。
 それから近くの温泉に入ります、まずは男の子が入って。
 女の子となりましたがビリーナとエリカも一緒です、そして。
「あんたもなのね」
「ええ、この温泉はガラスも奇麗にしてくれるのよ」
 ガラスの猫はお湯の中に入りながらビリーナに答えます。
「だから私も入るの」
「そうなのね」
「このガラスの身体は奇麗にすればする程奇麗になるから」
「その為になのね」
「私も入ってるの」
「そういうことね、まあ私もね」 
 ビリーナにしてもです。
「水浴びのことが多いけれど」
「お湯に浸かってるわね」
「ここのお湯は身体に凄くいいから」
「それで入っているのね」
「そうよ、入ると疲れが取れるの」
 身体からというのです。
「だから入っているの」
「そうなのね」
「あんたとは違う理由ね」 
 入るそれはというのです。
「それでもね」
「こうしてなのね」
「入ってね」
 そしてというのです。
「今日はじっくり寝るわ」
「そうするのね」
「気持ちよくね、そうするわ」
「身体を温めるとね」
 エリカも言います。
「よく寝られるのよ」
「そうよね」
「暑過ぎても駄目だけれど」
「適度に温かいとね」
「よく寝られるわ」
 実際にとです、エリカも湯舟の中で言うのでした。
「じっくりとね」
「そうよね」
「猫もそうなのよ」
 他ならぬエリカ自身もというのです。
「お腹一杯でしかも身体が適度に温まってるとね」
「よく寝られるのね」
「ええ、それにここの温泉はね」
「あんたにもいいのね」
「そうよ、身体も奇麗になるし」
 それにというのです。
「毛にもいいから」
「だから入っているのね」
「そうよ」
 こう言うのです。
「ここの温泉は何度も入っているのよ」
「何か皆がそうね」
「それだけいい温泉ってことよ」
 誰もが入るまでにです。
「だからトロット達もいるのよ」
「ええ、私もこの温泉好きよ」 
 そのトロットの言葉です。
「お風呂は元々大好きだけれど」
「この温泉はよね」
「特に好きだからね」
「こうして入ってるのね」
「近くに寄ったから」
 それを縁としてというのです。
「入っているの」
「そうなのね」
「今日は特によく寝られそうね」
「そして明日もね」
 ビリーナも言います。
「楽しい旅よ、そして明日には」
「あんたのお国に着くのね」
「そうよ」
 まさにという返事でした。
「だから楽しみにしているのよ」
「まあね、楽しみにしておくわ」
 エリカはお湯を楽しみつつビリーナに答えました。
「知ってる国だけれどね」
「知っていても楽しめるでしょ」
「それはその通りよ」
「だからね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「あんたが一番楽しそうね」
 ビリーナのうきうきとした感じを見ての指摘です。
「どうにも」
「それはそうかも知れないわね」
「自分の国に帰られるから」
「だからよ、皆私の家族なのよ」
 お国にいる鶏達はというのです。
「子供に孫、ひ孫とね」
「あんたの家族に会えることもあって」
「本当に楽しみなのよ」
 心からというのです。
「楽しみなのも当然よ」
「そういうことね」
「そう、あんたも帰るお家があるでしょ」
「それは今は王宮ね」
 これがエリカの返事でした。
「アメリカにいた時も住んでる場所はあったけれどね」
「今は王宮が、なのね」
「私のお家よ」
「じゃあ帰るのは」
「あそこよ」 
 王宮に他ならないというのです。
「あんたみたいに肉親はいないけれどね」
「お友達はいるってことね」
「そうよ、ドロシーにトロットにね」
「ええ、確かに困ったところもあるけれど」
 名前を出してもらったトロットが応えます。
「エリカは私の友達のうちの一匹よ」
「そうでしょ」
「そう、難しい娘だけれど」
 何かと、というのです。
「悪戯好きで」
「猫は悪戯がお仕事よ」
「だからっていうのね」
「そうよ、だからいいわね」
「悪戯のことは」
「気にしないことよ」
 こう悪びれずに言うのでした。
「わかったわね」
「まあこういう娘だけれど」
 今度はやれやれといったお顔で言うトロットでした。
「この娘もオズの国の住人でね」
「私達にとってもなのね」
「友達よ、勿論ナターシャ達もそうで」 
 トロットはナターシャと恵梨香も見ます。
「そしてガラスの猫もね」
「私もなのね」
「そうよ、宜しくね」
「そうさせてもらうわ、私も悪戯好きだけれどね
「猫だからなのね」
「そうよ、けれどね」 
 確かに悪戯好きでもいうのです。
「あんたも友達よ」
「その友達のいるお家にね」
「王宮にね」
「帰るのね」
「私もね」
 またエリカが言います。
「そうするのね」
「そうね、それじゃあ」
「王宮に帰るわ」
 今回の旅が終わってもというのです、お風呂に入りながらそんなお話もしました。お風呂の後は皆ぐっすりと寝まして。
 朝はお饅頭、神宝のお国のそれを食べました。後は茶卵と温かいお茶がありました。そうしたものを楽しんで。
 出発です、そして九時位になるとでした。
 目の前に柵に囲まれた公園みたいな場所が見えました、その柵に囲まれた世界を前にしてです。ビリーナは皆に言いました。
「ここがね」
「ビリーナの国なのね」
「そうよ」
 こうナターシャにも答えます。
「ここがね」
「鶏の国ね」
「じゃあ中に入ってね」
「今からなのね」
「そうしてね」
「あっ、看板にね」
 見れば門もあります、そこに鶏の国と英語で書かれています。ナターシャはその看板も見て言いました。
「ちゃんと書いているわね」
「そうだね、この柵が覆いなんだね」
 ジョージは柵を見ました、マンチキンの木で作られた高い柵です。
「国の」
「つまり壁だね」 
 神宝もその柵を見て言います。
「街の」
「そうだね、この柵の中に街があるんだね」
 カルロスもその柵の向こうに何があるかわかっています。
「そうだね」
「じゃあ門を潜って」 
 最後に恵梨香が言いました。
「これから訪問ね」
「そうよ」
 その通りとです、ビリーナは皆に答えました。
「柵の向こうに国があるのよ」
「柵や壁の向こうにお国があるのは」 
 ナターシャが言うにはです。
「私達の国ね」
「というか街がお城で国よ」 
 ビリーナも言います。
「日本以外の国ではそうなのよね」
「お城がお城なのは日本だけなのね」
 恵梨香は考える顔になりました。
「姫路城とか大阪城とか」
「ああしたお城は珍しいわよ」
 ナターシャはその恵梨香に答えました。
「街を城壁で囲んでいないお城はね」
「大抵の国は街がお城なのね」
「そうなの」
「国で」
「それはオズの国でも同じなのよ」
「だからビリーナの国もなのね」
「ええ、こうしてね」
 まさにとです、ビリーナも言います。
「柵で囲んでるの」
「オズの他の国と同じで」
「そうよ、じゃあ入ってね」
「今からね」
「入りましょう」
「あっ、お母さんお帰り」
 門のところに行くと門番をしていた二匹の鶏達がビリーナに挨拶をしてきました。見ればその羽根には小さな銃を持っていて頭にはヘルメットがあります。
「元気みたいね」
「ええ、この通りよ」
 ビリーナは門番の兵隊さん達に明るく答えました。
「あんた達も元気みたいね」
「この通りね」
「それは何よりね、じゃあ今から王宮に戻るわ」
「それじゃあね、後」
「後?」
「五人見慣れない子供達がいるけれど」
 ナターシャ達を見ての言葉です。
「お母さんの友達かな」
「トロットさん達は知ってるけれどね」
 別の門番の鶏も言います。
「その子達ははじめて見るね」
「オズの国の名誉市民の子達よ」
 ビリーナは兵隊さん達にすぐに答えました。
「私の友達でもあるのよ」
「そうなんだ、それじゃあ」
「この国に来ても問題ないね」
「お母さんの友達だから」
「だからね」
「そうよ、じゃあ今から入るわね」
「どうぞ」
 門番の兵隊さん達はビリーナ達を笑顔で迎え入れました、それまで閉じられていた門がゆっくりと開いてです。
 こうしてです、皆はビリーナに案内されてそのうえで鶏の国に入りました。柵の中のそこは小さなお家が沢山並んでいてです。 
 鶏達が大勢歩いています、頭をコッコと前後に動かしながら。
 その鶏達はビリーナを見るとです、口々に挨拶をしました。
「お帰り、お祖母ちゃん」
「元気そうだね」
「久しぶりだね」
「今回はゆっくりしていってね」
「最近こっちにはあまりいないから」
「楽しく過ごしてね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 ビリーナは家族の皆に笑顔で応えます、そしてです。
 後ろについてくる皆にです、こう言うのでした。
「この子達は皆私の子供で孫でね」
「ひ孫なのね」
「皆そうなのね」
「私の家族よ」
 誰もがというのです。
「オズの国の他の鶏達も来てね」
「結婚して国民になって」
「家族になってるんだね」
「もう皆が皆家族で」
「ビリーナの子供や孫なんだね」
「そうなのね」
「そうよ」
 まさにとです、胸を張って言うビリーナでした。
「誰もがね」
「あと王宮になのね」
「夫がいるわ」
 こうナターシャに答えます。
「この世で一番ハンサムで優しい鶏よ」
「随分褒めるわね」
 ナターシャはビリーナのその言葉を聞いて少し驚きました。
「ビリーナがそこまで褒めるなんて」
「あら、おかしいかしら」
「いつもずけずけ言うから」
「だからよ」
「ずけずけ言うからなの」
「ありのまま言うのよ」
 まさにというのです。
「だからね、夫のこともね」
「ありのまま言ってるのね」
「そうよ」
「じゃあご主人は本当に」
「ハンサムで優しいのよ」
「鶏の中で一番」
「だから私も結婚してね」
 そしてというのです。
「一緒にいるのよ」
「そうなのね」
「じゃあその夫のいる王宮まで行きましょう」
「あそこね」
 見ればです、国の大通りの先に一際大きな建物があります。人のお家それも大きなものの位の大きさが優にあります。その建物を指し示してです。
 ビリーナは皆にです、こう言いました。
「あそこが私の王宮よ」
「そうなのね」
「あそこに夫がいるから」
 だからというのです。
「会ってね」
「うん、では皆行こうね」
 キャプテンも皆に言います、そしてでした。 
 一行はその王宮に入りました、王宮の中を見てです。
 恵梨香は首を少し傾げさせてです、こんなことを言いました。
「サファイアや青い大理石で飾られていて」
「鶏の像とかもね」
「全部青いね」
 ジョージと神宝も言います、王宮の中を見回しながら。
「カーテンもシャングリラも」
「カーペットもね」
「お家もそうだったけれど」
 カルロスはお国の家々のことを思い出しました。
「やっぱりマンチキンの国だね」
「ええ、マンチキンで」
 そしてと言う恵梨香でした。
「その中に白い鶏さんやひよこの子達がいて」
「映えるわね」
 ナターシャはその青の中の白や黄色もと言うのでした。
「それが」
「そうでしょ、青の中に白や黄色の私達がいるとね」
 ビリーナは自慢のその黄色い羽根を見せています、青い宮殿の中で、
「映えるから」
「だからなのね」
「マンチキンの色で統一したのよ」
 その後にというのです。
「全部ね」
「そうなのね」
「サイズは全部私達のサイズでね」
「そのせいか」
 ナターシャはちょっと上を見上げました、するとです。
 ちょっと先にシャングリラ、青いそれが見えます。ナターシャはそのシャングリラを見つつこんなことを言いました。
「私達人間にはね」
「小さいでしょ」
「どうもね」
 実際にというのです。
「それは否定出来ないわ」
「そうよね、ただ」
「鶏の国だから」
「宮殿もね」
「鶏に合わせた大きさなのね」
「そうよ、銅像もね」
 飾っているその青い銅像はといいますと。
 見れば鶏のものばかりです、ビリーナはその銅像達についてもお話します。
「こうしてね」
「鶏サイズね」
「そうなのよ」
「何でも鶏なのね」
「そのサイズよ、勿論ベッドやお風呂もよ」
 そうした場所もというのです。
「鶏サイズよ」
「じゃあ私達が住むことは」
「難しいわ」
「じゃあ泊まる時は」
「テントよ」
 トロットが言ってきました。
「そしてお食事はテーブル掛けよ」
「そうなりますね」
「お昼も楽しみにしていてね」
「そちらもですね」
「ええ、今日のお昼は飲茶よ」
 それにするというのです。
「朝も中華でね」
「お昼もですね」
「それになりますね」
「そうよ」
 こうキャプテンや五人にお話します。
「楽しみにしおいてね」
「飲茶もいいね」 
 キャプテンはそのお料理の形式についても笑顔で応えます。
「あれも」
「だからね」
「それでだね」
「飲茶にしましょう、お昼は」
「蒸し餃子や焼売に」
「麺類も出してね」
 これも忘れてはいけないというのです。
「皆で楽しみましょう」
「そのお昼の前によ」
 また言うビリーナでした。
「夫に会ってね」
「わかってるわ、それじゃあ」
「今からね」 
 皆も応えてです、そのうえで。
 ビリーナの案内を受けて王宮の奥に奥にと進んでいきます、そして一番奥の王の間に着くと鶏の足で十段上にある玉座にです。
 白い鶏が蹲る様にして座っています、頭には立派な赤いトサカが王冠みたいにあります。その鶏がです。
 ビリーナを見るとすぐに立ち上がって言ってきました。
「おお、よく帰って来てくれた」
「只今、あなた」
 ビリーナはその鶏に笑顔で応えました。
「戻って来たわ」
「それは何よりだ」
「暫くエメラルドの都にいたけれどね」
「これからはだな」
「また暫くね」
「この国にいてくれるか」
「そうさせてもらっていいかしら」
 こう尋ねるのでした。
「あなたは」
「勿論だよ、君がいないとね」
 白い鶏はビリーナにすぐに答えました。
「私は今一つ調子が出ないからね」
「私と一緒にいて」
「そう、君が作ってくれた御飯を食べて」
 そしてというのです。
「一緒に藁の上で休まないとね」
「辛いのね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「君がいない間ね」
「御免なさいね、王宮の皆とも付き合いがあるから」
「君は王宮にもいないといけない」
「この国もだけれど」 
 女王としてというのです。
「そうだけれどね」
「しかし今回はだね」
「暫くここにいてだね」
「女王、皆のお母さんとしてね」
「いてくれるんだね」
「あなたの妻としてもね」
「有り難い、では早速政治をしよう」
 そしてです、ご主人はです。
 皆にお顔を向けてです、こう言いました。
「トロット王女にキャプテンさん、二匹の猫は知っているけれど」
「五人の子供達はよね」
「お話は聞いてるよ」
 ご主人、鶏達の王様はというのです。
「オズの国の名誉市民だね」
「その五人よ、皆のお友達よ」
「そうだね、宜しく」
 王様は五人に挨拶をしました。
「私がこの国の王でビリーなの夫だよ」
「宜しくね」
 五人も笑顔で、です。王様に応えます。
「ナターシャよ」
「ジョージっていうんだ」
「神宝だよ」
「名前はカルロスだよ」
「恵梨香っていうの」
 五人はまずは名前を名乗ってそのうえでそれれの苗字もお話しました、そのお話をしてからそのうえででした。
 皆にです、こう言いました。
「皆の名前は覚えたよ、じゃあこれからはそう呼ばせてもらって」
「それでよね」
「私も名乗らせてもらうよ」
 こう言うのでした、その純白の羽根で赤い見事なトサカを持っている身体で。
「私はジョンというんだ」
「ジョンさんね」
「そう、この国で唯一ジョンという名前の王様かもね」
「そういえばジョンという名前の王様はいないわ」
 ナターシャも気付きました。
「どういう訳か」
「イギリスがそうだからね」
「だからなのね」
「ジョンという名前は王様になる者には付けない」
「イギリスがそうだから」
「オズの国にも影響しているのだろうね」
「では貴方はどうしてその名前なの?」
 ナターシャは王様にあらためて尋ねました。
「一体」
「それは私が最初王様になる予定じゃなかったからだよ」
「だからなの」
「普通の鶏として生きる予定だったからね」
 鶏の王様ではなく、です。
「それでこの名前を付けられていたんだ」
「そうなのね」
「そしてね」
 さらにお話する王様でした、お部屋には鶏達が並んでいますが兵隊さんもいれば立派に毛づくろいをした鶏達もいます、皆王様とビリーナの家族です。
「普通に育っていたんだ」
「このオズの国で」
「そうだったんだ、けれどね」
「私と会ってなのよ」
 ビリーナも言ってきました。
「それが変わったのよ」
「二人で家庭を持ってね」
「その家族が増えるうちにね」
「国にまでなって」
 そしてというのです。
「私も王様になったんだよ」
「そうした事情なのね」
「そうなんだ」
「だからジョンという名前でもいいのね」
「そうなんだ」
 まさにというのです。
「私はね」
「最初は王様になる予定じゃなかったから」
「そうなんだ」
「私もね」
 ビリーナも言います。
「女王になるなんて思わなかったわ」
「子供、家族の数が増えたからね」 
 キャプテンも言います。
「だからだね」
「そうよ、そうしたらね」
「国が出来るまでになって」
「私もね」
「女王になった」
「そうなのよ」
 そうした事情だというのです。
「運命はわからないね」
「王様になるとは思わなかったのに」
「なったから」
「そもそも私がオズの国に来たことも」
 このことからお話したビリーナでした。
「想像もしていなかったことだし」
「それを言ったら皆だよ」 
 キャプテンはこう言いました、ここで。
「オズの国に来て住むなんてね」
「そうですね、私達もまさか」 
 ナターシャも自分達のことを考えるのでした。
「この国に来ることになるなんて」
「想像もしていなかったね」
「行けたらいいとは思ったことはありますけれど」
「それでもだね」
「はい」
 キャプテンにもはっきりと答えます。
「来られて嬉しいです、それと」
「こうして来られたことにだね」
「感謝しています」
「神様にだね」
「そうしています」
「オズの国に来られることも不思議だよ」
 こうもお話したキャプテンでした。
「この不思議な国にね」
「奇跡みたいなことだね」
「そしてその奇跡の国でだよ」 
 ここで言ったのは王様でした。
「私はこれ以上ない奇跡に巡り会えたんだ」
「奥さんと出会えたことね」
「そうだよ、我が妻にね」
 こうトロットに答えます。
「そして今こうしてここにいることがね」
「奇跡なのね」
「この奇跡に感謝しているよ」
 まさにというのです。
「オズの神様達にね」
「私もよ、この国に来られてこの人と出会えたなんて」
 ビリーナも王様の横で言うのでした。
「これ以上はない奇跡よ」
「ううん、ビリーナもこの国に来られてよかったのね」
「とてもいいわよ」
 こう恵梨香に答えるのでした。
「最初は大変だったけれど」
「ドロシーさんと嵐の中だったわね」
「そう、海に放り出されてね」
「死ぬかも知れなかったわね」
「どうもオズの国には死にそうになって来る娘が多いわね」 
 トロットを見て言うのでした。
「この娘とキャプテンさんもそうだったし」
「ええ、オークにしがみつく様にしてね」
「大変だったわね」
「ベッツイやドロシーさんも大変だったわね」
「ドロシーなんか竜巻で来たりね」
「嵐の中とかね」
「私と一緒にね」
 まさにというのです。
「そんなのだから」
「普通死ぬんじゃ」
「そうだね」
 ジョージと神宝も言います。
「竜巻とか嵐とか」
「ドロシーさん運がいいのかな」
「元々凄く運がいいんじゃない?」
 カルロスも考えてみればという感じで言います。
「だからオズの国にも来られたんだよ」
「そうね、ドロシーの運のよさは天下一品よ」
 まさにとです、ビリーナも指摘します。
「何かあっても絶対に助かる娘だから」
「そうよね、ドロシーは」
 トロットもこのことに気付きました。
「どんなことがあっても大丈夫だから」
「あんな嵐だったら」
 ビリーナは自分がドロシーと一緒にオズの国に来たその時のことを思い出します、思い出すとそれこそです。
「普通海に飲み込まれて終わりね」
「そうなるけれど」
「ドロシーも運がよくて」
 そしてというのです。
「私もね」
「それ自体が不思議だよ、ここに来るまでも不思議でね」
 キャプテンがビリーナに応えます。
「この国に来ても不思議が起こり続ける」
「それがオズの国ね」
「そうなるね」
「そうね、その私の一番の不思議はね」
「この国の主になれたことだね」
「そうよ、この人と出会えてね」 
 ご主人である王様を見たままです。
「よかったしね」
「そうだね」
「じゃあこの国のことを案内するわね」
 あらためて言ったビリーナでした。
「お昼までね」
「お昼御飯は、だね」
 王様はその辺りのことがよくわかっていました。
「私達が食べるものと人や猫が食べるものは違うからね」
「私は何も食べないしね」
 ガラスの猫が言うにはです。
「そうした気遣いは一切不要よ」
「そうだね、君の場合は」
「ええ、そういうことでね」
「私はトロットにテーブル掛けでお刺身でも出してもらおうかしら」
 エリカの食べたいお昼はこちらでした。
「和風にね」
「お刺身なのね」
「お刺身も好きなのよ」
 ぺろぺろと毛づくろいをしつつ恵梨香に答えます。
「何でもね」
「お魚なら?」
「貝も好きよ、タコやイカは食べないけれどね」
「猫にイカはよくないしね」
「あら、そうなの」
「ええ、イカはよくないのよ」
 猫にはというのです。
「お母さんに言われたわ」
「それは初耳だわ」
「貴女も知らなかったのね」
「そうなのよ、だからイカは食べなくていいわよ」
「じゃあこれからも食べないわね」
「それじゃあそうするわね」
「それで今日のお刺身は何にするの?」
 恵梨香はエリカにさらに尋ねました。
「それで」
「何でもいいけれど、鮪かしら」
「鮪のお刺身なの」
「それがいいかしらね」
「じゃあ鮪のお刺身を食べて」
「楽しませてもらうわ」
「じゃあ今から案内するわね」
 ビリーナは皆に声をかけました。
「私の国の中をね」
「ええ、それじゃあお願いするわ」
 ナターシャが応えてでした、そのうえで。
 皆で王宮を出ました、ビリーナはご主人と一緒に皆を案内するのでした。



ビリーナの国に無事到着。
美姫 「特に何事もなくて良かったわね」
確かにな。街の探索は次回みたいだけれど。
美姫 「どんな変わった物があるのか楽しみね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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