『オズのビリーナ』
第一幕 頭のいい鶏
オズの国にドロシーと一緒に来た鶏のビリーナは今は沢山の家族を持っているオズの国の名士の一人です。王宮に住んでいますが。
一族の、彼女が産んだ鶏達の国も持っています。その国はマンチキンの国にあってビリーナが女王様でご主人が王様です。
そのことはドロシーも知っています、それで王宮の中でビリーナに言うのでした。
「貴女も女王様なのよね」
「ええ、そうよ」
ビリーナはドロシーに笑顔で答えます。
「私もね」
「オズマと一緒で」
「そう、ただね」
「鶏の国の女王様であって」
「オズの国の主ではないわ」
そこははっきりと言います。
「あくまで鶏の国の主よ」
「そうよね」
ドロシーはテーブルにいるビリーナに答えます、ドロシー自身は座っていてそのうえでホットレモンティーを飲んでいます。
「貴女は」
「そしてドロシーはオズの国の王女様」
「そうよ」
「私は女王様なのよ」
「では女王様」
笑顔で言うドロシーでした、悪戯っぽく。
「今日は何をされますか?」
「そうね、今日はトウモロコシを食べようかしら」
「あら、それはもう朝に食べたわよ」
「お昼もよ」
その時もというのです。
「食べたいのよ」
「だからなのね」
「お昼もトウモロコシにしようかしら」
また言うのでした。
「そう考えているわ」
「じゃあどうして遊ぶの?」
「そうね、お散歩かしら」
王宮のというのです。
「そうしようかしら」
「そうね、お散歩ね」
「ドロシーも好きでしょ」
「ええ、色々な場所を歩くことはね」
実際にとです、ドロシーはビリーナに答えました。
「好きよ」
「それじゃあね」
「後は皆も呼んで」
「それがね」
皆と聞いてです、ドロシーはビリーナに少し残念なお顔になって言いました。
「それが皆今はね」
「お散歩出来ないの」
「オズマは今はトロットとベッツイを連れて街の視察に出てて」
「すぐには戻らないの」
「そうなの」
これがというのです。
「夕方までね」
「そうなのね」
「魔法使いさんはモジャボロさんと一緒に王立大学に行っていて」
「ムシノスケ教授のところにね」
「行ってて。臆病ライオンと腹ペコタイガーもね」
彼等はといいますと。
「オズマの付き添いで行ってるから」
「じゃあ私達と」
「僕はいるよ」
トトはドロシーの足元からです、ビリーナに言いました。
「いつもドロシーと一緒だから」
「貴方は一緒ね」
「うん、ただ他の人はね」
「ハンクやキャプテン=ビルさんもいないわね」
ビリーナから彼等に言いました。
「トロットやベッツイと一緒になのね」
「うん、あの人達もオズマと一緒だよ」
「一緒に行っていて」
「いないしね」
「後は」
ここで言ったのはドロシーでした。
「ガラスの猫とエリカね」
「つぎはぎ娘は?」
「ギリキンに遊びに行ったわ」
ドロシーはビリーナに答えました。
「それでかかしさん、木樵さんと遊んでるわ」
「そうなのね」
「いないから」
「何か王宮の皆も忙しいのね」
「そうなの、私はいるけれど」
それでもというのです。
「トトとガラスの猫とエリカとね」
「五人でお散歩ね」
「いつもより少ないかしら」
「いや、そうでもないんじゃない?」
ビリーナはドロシーにすぐに答えました。
「五人いれば充分よ」
「お散歩には」
「じゃあ今日は五人でお散歩しましょう、それに」
「それに?」
「これは私の勘だけれどね」
こう前置きしてです、ビリーナはドロシーに言いました。
「あの子達も来るわよ」
「恵梨香達も」
「そう、多分ね」
そうなるというのです。
「あの子達はこうした時にこそ来るから」
「そういえばそうね」
ドロシーもビリーナのその言葉に頷きます。
「あの子達こうしたお話をしてるとね」
「いつも来るでしょ」
「噂話をすればね」
「遊びに来るのよ」
「考えてみれば不思議ね」
「これが縁なのよ」
ビリーナは右手の羽根を挙げて言いました。
「人のね」
「人のなの」
「そう、あの子達と私達のね」
「そしてオズの国の」
「だからね」
それでというのです。
「多分来るわよ、あの子達も」
「そうなのね」
「だからあの子達が来たらね」
その時はというのです。
「一緒にお散歩しましょう」
「それじゃあね」
「王宮には後はジュリアがいるけれど」
ジュリア=ジャムの名前もです、ビリーナはお話に出しました。
「あの娘はいつもお仕事をしているから」
「だから迂闊に声をかけられないの」
「お仕事の邪魔だから」
「そう、声はかけられないわね」
ドロシーも納得して言います。
「これが」
「そうなのよね」
「あの娘が暇な時はいいけれど」
それでもというのです。
「忙しい時はね」
「邪魔出来ないのよね」
「そうよね、じゃあお昼は」
「トウモロコシを食べましょう」
「是非ね」
こうしたことをお話しているとです、そこに早速でした。
恵梨香とナターシャ、カルロスとジョージ、神宝の五人が王宮の中に来たとのベルが鳴りました。ビリーナはそのチャイムが鳴った方にお顔を向けて言いました。
「あら、早速」
「言ったすぐ傍からだね」
トトが応えました。
「来たね」
「本当にそうね」
言ったビリーナ自身も言います。
「私が言ったことだけれど」
「勘でね」
「その通りになったわね」
「ビリーナって勘がいいからね」
「ええ、けれど言ったすぐとなるとね」
「意外だった?」
「少しね」
実際にというのです。
「あらまあって感じよ」
「そうなんだね」
「けれどあの子達も来たからにはね」
「そうね、それならね」
ドロシーも微笑んで、です。ビリーナに応えます。
「一緒に遊べるわね」
「そうね、何なら冒険にも行く?」
ビリーナがドロシーに聞きました。
「そうする?」
「それもいいかしら」
ドロシーはビリーナのその提案に乗りました。
「ついこの前出たばかりだったけれど」
「ギリキンに行ったね」
「ええ、貴方と一緒にね」
トトを見て言います。
「そうしたわね」
「そうだね、それじゃあね」
「ええ、また冒険に出ることもね」
「考えるね」
「そうするわ」
こうお話をしながらです、ドロシー達は席を立って恵梨香達を迎えに行きました。そして五人の子供達をお茶の間に案内してです。
ジュリアにお茶とお菓子を出してもらってです、ドロシーはその二つも楽しみながら五人に尋ねたのでした。
「今回はどうして来たの?」
「はい、実は」
ナターシャが答えました。
「何か呼ばれた気がしまして」
「それでなの」
「それもビリーナに」
テーブルの上に登っているビリーナを見ながらの言葉です。
「そんな気がしまして」
「それでなんです」
「丁度下校しようとしていたんですが」
「皆でオズの国に来ました」
カルロスとジョージ、神宝もドロシーに答えます。
「これは何かあるって思いまして」
「渦のところに皆で行きまして」
「それでなんです」
「あら、それじゃああれね」
ビリーナは三人の男の子のお話を聞いて言いました。
「私が来るかもって言ったらなのね」
「オズの国で言ったのね」
ここで聞いたのは恵梨香でした。
「そう」
「そう、あんた達が来るかもってね」
「そう言ったのね」
「そうしたらすぐに来たのよ」
「多分それね」
ナターシャはビリーナのお話を聞いて静かに頷きました、お茶を飲みながら。皆が今飲んでいるお茶はレモンティーです。
「ビリーナが私達が来るかもって言ったのがね」
「呼び出しになったのね」
「そうだと思うわ」
「あらあら、私の勘が呼んだのじゃないのね」
ビリーナはナターシャのお話を聞いて言いました。
「私自身が呼んだのね」
「そうみたいね」
「こうしたこともあるのね」
「こうしたことが起こるのもオズの国ね」
こんなことも言ったドロシーでした。
「来るかもって思った人が呼ばれたと思って実際に来る」
「オズの国は、ですね」
「この国は不思議の国ですから」
「だからこうしたこともある」
「そんな気がしたkとが実際になる」
「不思議なことが起こるんですね」
「そうみたいね、私もここに定住するまで何度もそうしたことがあったから」
ドロシーは五人に自分自身のこともお話しました。
「この国は縁がある人を何度も引き寄せるのよ」
「だから君達は今回来てくれたんだね」
トトもドロシーの足元から言います。
「いつも通り」
「そうね、それじゃあ」
「今回のこの縁を大事にして」
「そしてだね」
「一緒にこの訪問を楽しむ」
「そうすべきね」
「僕はそう思うよ」
五人に陽気に答えたトトでした。
「そうしようね」
「それじゃあ」
ナターシャは今度はお菓子、お茶と一緒に出されているチョコレートで包んだ柔らかめのクッキーを食べながら言いました。
「今回もオズの国を楽しませてもらいます」
「それじゃあまずはね」
ドロシーがナターシャに笑顔で応えました。
「王宮をお散歩しましょう」
「お茶とお菓子の後で」
「いえ、お昼御飯の後でね」
それからというのです。
「楽しみましょう、今日のお昼はタコスよ」
「あのメキシコ料理ですか」
「そう、それとサラダよ」
こうしたメニューだというのです。
「ビーフシチューもあるし」
「今日のお昼も豪勢ですね」
「そうよ、楽しみにしていてね」
「私はトウモロコシよ」
ビリーナは自分の食べもののお話をしました。
「朝もそれでね」
「あら、朝もお昼もなの」
「そう、トウモロコシよ」
それを食べるとです、ビリーナは恵梨香に答えました。
「それを楽しむの」
「そういえばビリーナは」
「トウモロコシが好きでしょ」
「そうよね」
「お豆も麦もお米も好きだけれど」
「トウモロコシもよね」
「そう、それで今はね」
今日のビリーナはというのです。
「トウモロコシを楽しみたいの」
「そうした気分なのね」
「あんた達もどうかしら」
ビリーナは恵梨香だけでなく他の子達にも誘いをかけました。
「トウモロコシ、美味しいわよ」
「じゃあ茹でて」
まずは神宝が応じました。
「一本ね」
「バターコーンもいいね」
ジョージはこちらでした。
「バターで炒めてね」
「ううん、焼いたのがいいかな」
カルロスは日本の出店でよく売っているそれを思い出しました。
「僕はそれかな」
「さて、何がいいかしら」
「トウモコロシの食べ方もそれぞれだから」
ナターシャと恵梨香の女の子二人はそれぞれのお顔を見合わせてそのうえで相談をしました。女のこ同士で。
「茹でても炒めても焼いてもいいけれど」
「どれがいいかしら」
「そこは難しいところね」
ドロシーも言います。
「トウモロコシの食べ方も」
「どれも美味しいですから」
ナターシャは考える目になっています、実際に。
「具体的に何を食べるかとなりますと」
「迷う時があるわね」
「はい、どうしても」
「私もよ。どの食べ方にしようかしら」
「考えますね」
「今実際にね」
そうなっているというのです。
「さて、どうしようかしら」
「迷ったらその時はね」
ビリーナは今度は左の羽根を挙げてです、皆に言いました。
「あれよ」
「あれ?」
「あれっていうと」
「サイコロを投げて決めればいいのよ」
これがビリーナの解決案でした。
「そうすればいいのよ」
「サイコロを投げて、よね」
「その目で決めるのよ」
そうしればいいというのです。
「それでね」
「そうね、それがいいわね」
ドロシーはビリーナのその言葉に頷きました。
「こうした時は」
「そうでしょ」
「何か私達って迷った時はいつもこうね」
「サイコロかルーレットね」
「それで決めているわね」
「そうよね」
「決め方として妥当よ」
そうだとです、ビリーナはドロシーに言いました。
「それもね」
「そうよね、ジュリアス=シーザーもそうだったし」
ドロシーはこうも言いました。
「サイコロで決めていたわね」
「賽は投げられたね」
「ええ、だからね」
「決めるにあたってね」
それでというのです。
「いいと思うわよ」
「私達は英雄じゃないけれど」
「それでもね」
「決めることはいいわね」
「じゃあね」
「ええ、サイコロかルーレットか」
「どっちかで決めればいいわね」
トウモロコシの食べ方にしてもです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「あっ、シーザーですけれど」
神宝がここでドロシーに言います。
「カエサルさんのことですよね」
「ええ、そうよ」
その通りとです、ドロシーも答えます。
「ユリウス=カエサルさんの英語読みよ」
「それぞれの言葉で読み方が変わるんですよね」
ジョージも言います、ドロシーと同じアメリカ人で英語を喋るこの子も。
「英語とラテン語でも」
「うん、ブラジルはポルトガル語だけれど」
カルロスもお国の言葉をここで思い出します。
「その呼び方に近いね」
「カエサルさんに?」
恵梨香はカルロスのその言葉に応えました。
「そうなのね」
「欧州の言葉はラテン語からはじまっているけれど」
ナターシャがお話することはといいますと。
「その国それぞれで言葉が違うのよね」
「ええ、だからカエサルさんも英語だとね」
ドロシーのお言葉です。
「シーザーになるのよ」
「そうなんですね」
恵梨香はドロシーのその言葉に頷きました。
「同じ人でも」
「そうした呼び方になるの、そしてね」
「はい、そのカエサルさんもですね」
「迷った時にサイコロで決めたの」
そうしたというのです。
「それで道を開いたのよ」
「そうなんですね」
「そう、そしてね」
そのうえでというのです。
「私もそうしようって思ってるの」
「そうなのね」
「そう、それかルーレットで決めましょう」
「サイコロかルーレットかで迷うことはないわ」
ビリーナはそこも注意しました。
「別にね」
「どっちか思いつきで決めればいいわね」
「その時の気分でね」
「そうね、カエサルさんのお話が出たし」
そこから考えるドロシーでした。
「ここはサイコロにしましょう」
「それで決めるのね」
「そうしましょう、じゃあ早速ね」
ドロシーは懐からサイコロを取り出しました、そしてです。
サイコロを振る前にどの目が出たらどんなお料理にするのかを決めてそうして振ると決まったお料理はといいますと。
「茹でることになったわね」
「はい、決まりましたね」
「丸茹でですね」
「じゃあ茹でて丸かじりですね」
「そしてですね」
「後はそれぞれで味付けですね」
「そうしましょう」
五人に笑顔で応えるドロシーでした、そして。
皆は茹でたトウモロコシを食べますがそこでのそれぞれの味付けは。
お醤油をかける恵梨香を見てです、ドロシーはくすりと笑って言いました。
「恵梨香らしいわね」
「お醤油をかけることがですね」
「ええ、とてもね」
「恵梨香はいつもお醤油よね」
「これが一番美味しいのよ」
ビリーナにも答えます。
「私としてはね」
「お醤油で味付けをすることが」
「そう、一番美味しいの」
「トウモロコシに限らないわね」
「そうね、ドロシーさんの言う通りね」
「お醤油が第一ね」
「逆にお醤油がないと」
それこそなのです。
「私困るわ」
「お醤油は中国にもあるけれど」
神宝が言うにはです、トウモロコシにお塩をかけつつの言葉です。あっさりとした感じです。
「日本は何でもお醤油だね」
「うん、それも大豆のお醤油だよね」
ジョージはバターを乗せています、バターはアツアツのトウモロコシの上で溶けだしています。
「日本だと」
「日本人はお醤油を凄く使うね」
カルロスはタバスコをかけています、少量にしても辛そうです。
「お料理に」
「だからトウモコロシにもなのね」
ナターシャは何もかけていません。
「出店でもそうだし」
「そうなの、私もね」
恵梨香がまた言います。
「これが一番好きよ」
「お醤油がなのね」
「そうなの、じゃあ食べましょう」
「ええ、それぞれの食べ方でね」
ドロシーはマヨネーズを付けています、ビリーナは何もです。
そしてそれぞれの食べ方でトウモロコシも他のお料理も食べてでした、皆はまずはお昼御飯を楽しんでです。
ドロシーの提案通り王宮のお散歩をすることにしました、ここでガラスの猫とエリカを呼びますと。
エリカはです、大きく欠伸をしてから言いました。
「私は別にいいわ」
「あら、どうしてなの?」
「だって眠いから」
こうナターシャに答えます。
「お昼寝したいの」
「それでなの」
「動きたい時に動くから」
こうも言うのでした。
「別にいいわ」
「そうなのね」
「というかね」
「というか?」
「猫はそうでしょ」
「好きな時に寝て好きな時に動く」
「それが猫という生きものだから」
だからというのです。
「私もそうするわ」
「それじゃあね」
「ええ、そういうことね」
「私は付き合うわ」
ガラスの猫は自分のガラスの身体ヲペロペロと舐めてもっと奇麗にしつつそのうえでナターシャ達に言いました。
「そうするわ」
「貴女は寝る必要がないからね」
「そして休む必要もないから」
ナターシャにも答えます。
「だからね」
「今日のお散歩もなのね」
「幾ら動いても疲れないから」
だからというのです。
「好きなだけ動くわ」
「そうするのね」
「ええ、そうするわ」
まさにというのです。
「暇だしね」
「それじゃあね」
「さて、手入れもしたし」
そのガラスの身体のです。
「行きましょう」
「あんたいつも身体の手入れをしてるわね」
エリカはガラスの猫に横から言いました。
「私以上に」
「私の身体は手入れをすればするだけ奇麗になるからね」
今も舐めつつ言います。
「だからなのよ」
「奇麗にしているの」
「そうよ」
まさにという返事です。
「それはあんたもでしょ」
「確かに私もそうだけれど」
「それでもなのね」
「あんたには負けるわ」
「あんたは寝たり食べたりするからね」
「その分なのね」
「手入れをする時間が少ないのよ」
それに対してガラスの猫はいつも起きています、それでなのです。
「私よりもね」
「そういうことね」
「それでどう?私の身体」
そのガラスの身体だけでなく透き通ったその身体の中にある赤い脳とハートもここぞとばかりに見せてです、エリカに聞くのでした。
「最高に奇麗でしょ」
「ええ、手入れをしているだけあってね」
「あんたも手入れをすればね」
「奇麗になるっていうのね」
「そうよ、そうしたらいいわ」
「まあね、私もね」
エリカもこう言います。
「あんたに負けたくないわ」
「猫としてよね」
「この毛並みは自慢なのよ」
エリカにとってもです。
「あんたのガラスの身体にも負けないわよ」
「だからなのね」
「私は寝ないといけないけれど」
それでもというのです。
「手入れはするわ、それにね」
「それに?」
「王宮の人に頼んでお風呂やブラッシングもお願いしてもらうわ」
そうしたこともするというのです。
「それでもっと奇麗になるわ」
「毎日そうするの」
「そう、毎日よ」
まさにというのです。
「今もそうしてるけれどね」
「そうそう、エリカって凄く奇麗好きなんだよね」
トトも言ってきます。
「本当に毎日お風呂に入るしね」
「あんたもそうだけれどね」
「僕もお風呂とブラッシング好きだよ」
「それでそのお風呂とブラッシングをもっとよくしてもらってね」
「今以上に奇麗になりたいんだね」
「この毛並みはガラスに負けないわよ」
これがエリカの自負です。
「だからそうするわ」
「そうなんだね」
「ええ、そしてね」
またここで欠伸をしたエリカでした、そのうえで言うことはといいますと。
「よく寝るわ」
「何でそこでそう言うの?」
ビリーナはエリカのその言葉に突っ込みを入れました。
「寝るって」
「だって寝ることこそがね」
「いいっていうのね」
「睡眠不足は健康の大敵でしょ」
「それはその通りね」
ビリーナも認めることです。
「確かに」
「だからよ」
「あんたは今から寝るの」
「これまで以上に毛並みの手入れはするけれど」
それと一緒にというのです。
「じっくり寝ることも続けるわ」
「無理して起きてその分手入れはしないの」
「そんなことしても何にもならないでしょ」
「起きている分だけ毛並みが悪くなるから」
「そう、だからね」
「寝るのね」
「そうするわ」
まさにというのです。
「そうするから」
「ううん、何かマイペースね」
「猫だからね」
エリカの返事はあっさりとしたものでした。
「そうなのよ」
「それは私もよ」
ガラスの猫もです。
「好きなことをして生きているわね」
「猫って何ていうかね」
ここで言ったのはナターシャでした、その言うことはといいますと。
「本当に何でもかんでもマイペースね」
「それが猫よ」
「そうなのよ」
二匹でナターシャに答えます。
「だからね」
「それで納得してね」
「知ってるけれど」
それでもと言ったナターシャでした。
「そのことを再認識したわ」
「そうなのね」
「あらためてなのね」
「ええ、よくね」
「まあ猫って本当にマイペースよね」
ビリーナも言います。
「自分の調子で動くわね」
「そうよ、この通りね」
「今日もそうするし」
「そうよね、ただエリカは私の家族を襲わないからね」
だからというのです。
「いい猫ね」
「猫は鳥も好きだからね」
鼠と一緒にです。
「気をつけていたのよ」
「つけていたのね」
「オズの国に来るまではね」
「私も昔は色々と悪さをしたわ」
エリカにしてもです。
「それで最初にこの国に来た時はドロシーにも魔法使いさんにもかなり言われたわ」
「全くよ」
そのドロシーも言ってきます。
「あの時の貴女は本当に悪かったわ」
「ええ、けれどね」
「行いをあらためたのね」
「そうよ」
こうドロシーに答えます。
「今みたいにね」
「キャットフードしか食べなくなったしね」
「だってキャットフード美味しいもの」
本当にというのです。
「だからね」
「それを食べてればなのね」
「満足だから」
それでというのです。
「動くものには反応するけれどね」
「それは仕方ないわね」
「猫だからね」
本当にそれに尽きます、動くものに反応することも。
「自然とそうなるのよ」
「だから」
ここでです、ナターシャは。
黒いゴスロリ、いつものファッションの服から猫じゃらしを出してでした。そのうえでエリカの前に持って来てです。
ふりふりとさせます、するとエリカだけでなくです。
ガラスの猫も反応します、二匹で前足を出しますが。
その二匹を見てです、ナターシャは微笑んで言いました。
「やっぱり猫よね」
「そうされるとね」
「自然と身体が出るのよ」
二匹共言います。
「どうしてもね」
「反応しちゃうのよ」
「それが猫よね」
ビリーナも言います。
「ガラスでも猫は猫なのよ」
「そうよ、私は誇り高い猫だから」
前足を必死に出しつつも胸を張るガラスの猫でした。
「そうするのよ」
「そうなのね」
「その猫の習性としてね」
「動くものがあると」
「こうして自然に動くのよ」
「いい習性でしょ」
エリカはこう言うのでした。
「これも」
「いい習性かしら」
「そうじゃないと思うけれど」
ビリーナだけでなくエリカも首を傾げさせます。
「普通のね」
「生きものの習性じゃないの?」
「あまりね」
「いいものじゃないでしょ」
「悪いものでもないけれど」
「いいものでもないわ」
「私達がいいと思ってるからいいの」
これがエリカの言葉です、やっぱり前足はナターシャがふりふりさせている猫じゃらしに向けられています。
「この通りね」
「そうなのね」
「ええ、じゃあそろそろお散歩よね」
エリカはここでドロシーに尋ねました。
「そうよね」
「ええ、そうよ」
ドロシーはエリカにはっきりと答えました。
「もう行くわ」
「じゃあね」
「それならよね」
「休むわ」
そうするというのです。
「私はね」
「それじゃあね」
「さて、じっくり寝るわよ」
ナターシャが猫じゃらしを止めたのでエリカも反応を止めてでした、自慢の毛の手入れをしながら言うのでした。
「これからね」
「じゃあ私達はね」
ドロシーはエリカ以外の皆に声をかけました。
「お散歩に行きましょう」
「王宮は広いですしね」
「お散歩のしがいがありますね」
「それならですね」
「今日はそうして楽しむんですね」
「そうよ、じゃあいいわね」
こう言ってです、そしてでした。
皆はお昼寝に入るエリカと別れてでした、王宮の中のお散歩をはじめました。そのお散歩を楽しむ中で。
ふとです、ビリーナはガラスの猫と共に皆の先頭を歩きながらこんなことを言いました。
「そういえばナターシャ達は私の国には来たことがないわね」
「ええ、そうね」
ナターシャがビリーナに答えます。
「私達五人はね」
「そうだったわね」
「貴女は女王様でもあったわね」
「そうよ、鶏の国のね」
ビリーナの家族の王国のです。
「旦那が王様でね」
「そうだったわね」
「じゃあ一回来てみる?」
ナターシャ達にお顔を向けて言いました。
「そうしてみる?」
「お邪魔していいの?」
「いいわよ」
一言で答えたビリーナでした。
「それじゃあね」
「確かマンチキンの国ね」
「そこにあるわ」
オズの国の東の国です、色は青です。
「じゃあ行きましょう」
「マンキチンだね」
「そういえば最近行ってなかったね」
「マンチキンもいいよね」
「じゃあ行きましょう」
四人も言います、そしてです。
四人であらためてです、ビリーナに言いました。
「それじゃあね」
「案内してくれるかな」
「ビリーナの国までね」
「マンチキンまでね」
「そのつもりで提案したから」
だからというのです。
「喜んでそうさせてもらうわ」
「それなら」
ナターシャも笑顔で言うのでした。
「お願いするわね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「食べるものは人間とは違うから」
「そうね、生のものばかりね」
「生のトウモロコシや麦よ」
それの粒です。
「私達鶏が食べるものはね」
「そうだよね」
トトはビリーナのすぐ後ろ、ドロシーの足元から応えました。すぐ後ろにドロシーがいてドロシーの後ろに五人がいます。
「生が基本だよね」
「ポップコーンも食べるけれどね」
「冷えてないとね」
「食べないわ」
この国の鶏達はポップコーンが好きでもなのです。
「それもしないわ」
「そうだよね」
「生が基本よ」
あくまでというのです。
「私達はね」
「だからだね」
「ナターシャ達は自分達で何とかしてね」
鶏の国で食べるものはというのです。
「そうしてね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
ナターシャもビリーナに答えます。
「オズの国だから食べるものには困らないし」
「そういうことでね」
「ええ、じゃあマンチキンでは」
あの国ではとです、ナターシャはさらに言いました。
「青いボルシチやピロシキを食べることにするわ」
「青いトウモロコシじゃないの」
「そちらも食べたいけれど」
それと同じだけというのです。
「ボルシチも食べたいから」
「そこはロシア人ね」
「ええ、日本でもよく食べているけれど」
ボルシチやピロシキもというのです。
「オズの国でもそうしたいから」
「そういうことね」
「ええ、青いボルシチでも」
外の国では赤いこのシチューもです、マンチキンはそうなるのです。
「美味しいのよね」
「というかね」
ここでドロシーが言ってきました。
「オズの国ではそれぞれの色があるから」
「はい、ウィンキーでは黄色のボルシチですよね」
「ギリキンでは紫でね」
「この都では緑ですね」
「それぞれの色があるわよ」
カドリングは赤ですがボルシチは元々赤いので特に言いませんでした。
「オズの国ではね」
「そうですよね」
「けれど色は違ってもね」
「美味しいことは変わらないですね」
「色は違っていてもね」
「味は変わらないですね」
「そういうことよ、じゃあ私もね」
ドロシーもというのです。
「ビリーナの国にお邪魔したいけれど」
「あら、また冒険の虫が出て来たのね」
「そうなの」
ビリーナにもにこりと笑って答えます。
「ここにきてね」
「ドロシーのいつもの虫ね」
「どうも私の中のこの虫は元気らしくて」
自分の中にいるその虫のことをです、ドロシーはビリーナににこにことしてお話します。
「すぐに冒険に行きたくなるのよね」
「オズの国の何処かへのね」
「だから今回もね」
「私の国への冒険ね」
「それに行っていいかしら」
「知ってる?貴女はオズの国の何処でもフリーパスなのよ」
これがビリーナの返事でした。
「だからね」
「ビリーナの国に行ってもいいのね」
「ええ、むしろ貴女が来てくれるのなら」
オズの国でも屈指の人気者のドロシーがというのです。
「私も大歓迎よ」
「それじゃあね」
「ええ、行きましょうね」
「貴女のお国にね」
「じゃあ今日はお散歩の後は晩御飯を食べてね」
トトがお話をまとめました。
「それでお風呂に入って休んで」
「それからよね」
「明日の朝に出発しよう」
ドロシーにも言うのでした。
「そうしようね」
「じゃあ私も行くわ」
「私もよ」
エリカとガラスの猫も参加を申し出てきました。
「お風呂に入って奇麗になって」
「いつも通り磨いてね」
「出発するわ」
「一緒にね」
「じゃあ皆で行きましょう」
ドロシーは二匹の猫の申し出に笑顔で答えました。
「楽しくね」
「ええ、じゃあね」
「楽しく行きましょう」
二匹の猫も応えます、そしてでした。
皆は夜も楽しく過ごしました、そのうえでそれぞれのベッドの中で明日からはじまる冒険に思いを馳せるのでした。
散歩から冒険へ。
美姫 「ビリーナの国に行く事に」
今度は一体何が起こるのか。
美姫 「楽しみよね」
だな。次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」