『オズのボタン=ブライト』




                第十二幕  行きたい国に行っていて

 王様は朝御飯を食べてからです、皆に言いました。
「では今からな」
「グリンダに聞くのね」
「そうするとしよう」
 こうオズマにも言います。
「これよりな」
「そういえば王様もね」
「そうじゃ、カドリングの主であるグリンダさんとはな」
「お友達ね」
「そうなのじゃよ」 
 オズマがグリンダとそうであるのと同じで、です。
「非常に頼りになるお友達じゃ」
「それならね」
「うむ、連絡をしよう」
 こう言ってでした、王様は。
 その手に携帯電話を出してでした、すぐにグリンダに連絡をしました。
 グリンダが電話に出るとです、まずはお互いに挨拶を交えさせてでした。そのうえで王様からグリンダに聞きました。
「実はボタン=ブライトが今朝までわしの宮殿にいたのじゃが」
「いなくなったのね」
「うむ、そうなのじゃ」
「あの子の常ね」
「全くじゃ、それでな」
「あの子の居場所を確かめて欲しいのね」
「貴女の本には書いてあるじゃろ」
「ええ、オズの国のことなら何でも書かれる本だから」
 魔法の力で自然にです。
「当然あの子のこともね」
「そうじゃな、それならな」
「あの子が今何処にいるのか」
「教えてくれるか」
「わかったわ」
 グリンダは電話の向こうで王様に微笑んで答えました。
「それならね」
「今すぐにじゃな」
「確かめるわ」
「うむ、頼む」
「少し待っていてね」 
 こうしてでした、グリンダは一旦電話から離れてでした。その本をチェックしてそれから電話のところに戻って王様にお話しました。
「あの子は今は狐の国にいるわ」
「あの国にか」
「あの国の木陰でぐっすりと寝ているわよ」
「うむ、わかった」
 ここまで聞いてです、王様は頷きました。
「ではすぐに行こうぞ」
「狐の国までね」
「そうしようぞ」
「それはいいけれど」
 グリンダは意気込む王様に言います。
「貴方の国から狐の国に行くと」
「時間がかかるか」
「ええ、そしてその間にね」
「ボタンが何処に行くかわからんな」
「あの子は何時何処に行くかわからないのよ」
 寝ている間にです。
「だからね」
「そうじゃな、てくてくと歩いて行くとな」
「会えないかも知れないわよ」
「全くじゃ」
 その通りとです、王様も頷きました。
「行ってもう何処かに行ったのでは本末転倒じゃ」
「そうでしょ、だからね」
「狐の国にすぐに行く必要があるな」
「さて、どうしたものか」
「すぐにそちらにドラゴンを送るわ」
「移動用のか」
「そうするわね」
 こう王様に申し出るのでした。
「私の宮殿からね」
「悪いのう」
「いいわ、ボタンを見付ける為なら」
 電話の向こうで微笑んで、です。グリンダは王様に言いました。
「ドラゴン位はね、それに今そこにはオズマも五人の子供達もいるでしょ」
「一緒に楽しく遊んでおるぞ」
「王子とつぎはぎ娘、木挽の馬もジュリア=ジャムも」
「皆おるぞ」
「それならね」
 是非にというのでした。
「これ位何でもないわ」
「そしてドラゴンに乗ってか」
「お空を飛んでね」
 そしてというのです。
「狐の国に行くぞ」
「それならね」
 こう言ってでした、そしてです。
 オズマはすぐにリンキティンク王の国にドラゴンを向かわせました、するとです。
 宮殿の前に全身真っ赤なとても大きなドラゴンが来ました、長い首にとても大きな頭に角を持っている四本足のドラゴンです。
 翼も尻尾も大きいです、そのドラゴンを見てでした。
 王様達は宮殿の外に出ました、するとドラゴンから言ってきました。
「お話はグリンダ様から聞いています」
「それではじゃな」
「はい、私の背中に乗って下さい」
 是非にという返事でした。
「是非」
「そしてじゃな」
「はい、狐の国に行きましょう」
「これよりな」
「空を飛んで行きますので」
 その大きな翼を使ってです、ドラゴンの翼はとても大きなものです。
「すぐですよ」
「済まんのう」
「いえいえ、皆さんグリンダ様のお友達です」
 それならというのです。
「これ位何でもありませんよ」
「ではじゃな」
「皆さん私の背中に」
 またこう言ったドラゴンでした。
「すぐに出発しましょう」
「よし、では皆よいな」
 王様はあらためて皆に声をかけました。
「ドラゴンに乗せて行ってもらおうぞ」
「凄いですね」
 カルロスはその巨大なドラゴンを見て驚きの声をあげました、お顔もその声に相応しいものになっています。
「オズの国にはドラゴンもいることは知っていますけれど」
「それでも」
「まさか今回の冒険はドラゴンもなんて」
 ジョージと神宝もカルロスと同じ声とお顔です。
「想像じていなかったので」
「驚いています」
「私もです」
「私もやっぱり」
 ナターシャと恵梨香も男の子三人と同じでした。
「ドラゴンに乗るなんて」
「凄いことになっていますね」
「だからね、オズの国ではね」
 王子が驚く五人に優しい笑顔でお話します。
「凄いことが普通に起こるんだよ」
「そうしたお国だからですか」
「こうしたこともね」
「驚くまでもない」
「そうだよ」
 こうカルロスに応えて五人にお話するのでした。
「だから気にしなくていいよ」
「そうなんですね」
「それではじゃ」 
 王様がまた皆に声をかけます。
「皆乗るぞ」
「宜しくね」
 オズマは微笑んでドラゴンに挨拶をしました。
「狐の国までね」
「はい、お任せ下さい」
「では姫様背中に」
 ジュリアがオズマをドラゴンのそこに案内します。
「どうぞ」
「ええ、それじゃあね」
「さて、あたし達もね」
「乗ろうね」
 つぎはぎ娘と木挽の馬が続きます。
「背中から落ちない様にしてね」
「気をつけてね」
「落ちることはないよ」
 ドラゴンが二人に言ってきました。
「僕の背中からはね」
「そうなの?」
「グリンダ様が乗っている人は落ちない様に魔法をかけてくれているからね」
「だからなのね」
「そう、だから安心してね」
 こうつぎはぎ娘にお話するのでした。
「落ちることはないから」
「それじゃあね」
「さあ、皆乗って」
 ドラゴンの方からも促します。
「そしてすぐに行こう」
「よし、それではな」
 王様も応えます、そしてでした。
 皆ドラゴンの背中に乗りました、皆が乗ったところでドラゴンは翼を羽ばたかせてでした。地上からお空に飛び立ちました。
 そしてお空に出るとでした、あっという間に空高く舞い上がってでした。
 風の様に進んでいきます、カルロスはそのドラゴンの背中で言いました。
「うわ、何か」
「あっという間だね」
「そうですね」
 また驚いて王子に応えるのでした。
「これなら」
「グリンダさんのお城から宮殿までもすぐだったね」
「はい、確かに」
「ドラゴンの飛ぶ速さは凄いんだ」
「この速さは」
 それこそと言ったカルロスでした。
「ジェット機みたいですね」
「外の世界の文明だね」
「はい、飛行機です」
「うん、僕はジェット機は見たことがないけれど」
「そんな速さ、いえ」
 カルロスはさらに言いました。
「もっと速いかも知れません」
「ドラゴンはだね」
「オズの国で一番速いですか?」
「そうかも知れないね」
 王子は微笑んでカルロスに答えました。
「ドラゴンはね」
「そうなんですね、実際に」
「さて、それじゃあね」
「狐の国まですぐですね」
「着くよ」
「そして着いたら」
「ボタンに会おうね」
 その彼にというです、そしてでした。
 本当にあっという間にでした、ドラゴンは狐の国の前に着きました。それこそ移動にかかった時間はです。
「二十分もかかってないよ」
「それ位だね」
 最初に降り立ったつぎはぎ娘と馬がお話をします。
「流石ドラゴンね」
「あっという間に移動出来るね」
「そうね、これ位速かったら」
 次に降り立ったオズマも言います。
「まだボタンは寝ているかしら」
「寝られるだけ寝る子ですからね」
 ジュリアはくすりと笑って彼のことをこう言うのでした。
「それなら」
「ええ、若しあの子がまだ寝ていたら」
「その時はですね」
「起こしてあげましょう」
「はい、そうしましょう」
 他の皆も降りてです、ドラゴンにここまで運んでくれたお礼を言いました。そして王様はドラゴンに尋ねました。
「では御前さんはグリンダさんのところに帰るのじゃな」
「いえ、ここで待っています」
 ドラゴンは王様にすぐに答えました。
「寝て」
「帰らんのか」
「皆さんはお国に帰られますね」
「うむ、ボタンを迎えたらな」
「遅くとも夕方には」
「そのつもりじゃ」
「それならです」
 ドラゴンは王様に穏やかな声で答えるのでした。
「ここで寝てです」
「待っていてくれるのじゃな」
「行きだけでなく帰りも皆さんをお送りせよとです」
「グリンダさんにも言われておるのか」
「はい、ですから」
「そうか、悪いのう」
「いえいえ、私もこれから気持ちよく寝ますので」
 待っている間はというのです。
「お気になさらずに」
「そう言ってくれるか」
「はい、では」
「うむ、待っていてくれるか」
「寝てそうしています」
 ドラゴンはにこやかに笑ってでした、そのうえで。
 その場で蹲ってとぐろを巻いて眠りに入りました、皆はそのドラゴンに一時の別れの言葉を告げてでした。
 そのうえで狐の国の門まで来ました、とはいっても振り向けばすぐそこが門でした。
 門には軍服を着た狐の門番がいます、王様がその兵隊さんに声をかけました。
「ちょっとお邪魔しに来たが」
「あっ、どうも」
 兵隊さんは王様に敬礼をして応えました。
「今日もこちらの王様と遊びに来られたのですね」
「ほっほっほ、また違う」
「と、いいますと」
「ここにボタン=ブライトが来ておってな」
「ああ、あの子またここに来てるんですね」
「この門を潜ってはおらんな」
「若しこの門に来れば」
 兵隊さんは王様に胸を張って答えました。
「私がいますので」
「すぐにわかるな」
「はい」
 こう王様に答えるのでした。
「左様です」
「では寝ていて」
「中に移動していたのでしょう」
 それで彼が狐の国にいるというのです。
「いつも通り」
「やはりそうじゃな」
「あの子については」
 狐の兵隊さんもです、お国の門をしっかりと守っている。
「少し以上にです」
「どうにもならんな」
「どうしようもありません」
 苦笑いを浮かべてです、王様にお話します。
「私もです」
「そうじゃな、ではな」
「これからですね」
「貴国に入らせてもらってじゃ」
 そのうえでというのです。
「あの子を起こしてな」
「そしてですね」
「また遊ぶとしよう」
「そこでそう仰るのがです」
 兵隊さんは王様のお言葉を聞いて笑って言いました。
「王様ですね」
「わしらしいか」
「はい、とても」
「遊びを言うからか」
「ボタンとも我が国の王様ともですね」
「遊ぶぞ」
 こう答えるのでした、王様も。
「そうするぞ」
「それでは」
「中に入れてくれるか」
「はい、皆さんは我が王のお友達です」
 この場にいる全員がです、カルロス達五人も狐の王様とは親交があるので兵隊さんもこう言ったのです。
「それでは」
「ではな」
 王様が応えてでしった、そして。
 皆は一緒にでした、狐の国に入れてもらいました。皆は中に入れてもらうとすぐにでいsた。
 王様にです、こう言われました。
「ではこれよりな」
「はい、ボタンのいるところにですね」
「行こうぞ」 
 こう言うのでした。
「何しろそれが目的で来たのじゃからな」
「はい、それじゃあ」
 カルロスが王様に応えます、そしてです。
 皆でボタンを探すことにしました、ここで探すヒントはといいますと。
「木陰にいるとのことなので」
「うむ、この国の中のな」
 王様はジュリアに応えました。
「木陰ですやすやと寝ておったという」
「それならですね」
「まずは木を探すか」
「そうしますか」
「それではな」
「はい、それなら」
「木を探そうぞ」
「それならです」
 王子が知恵を出しました。
「皆で手分けして国の中を探しましょう」
「一つに集まって探すのではなくじゃな」
「はい、その方が手早く簡単に見付けられます」
「その通りじゃな」
「では」
「皆各自別れてボタンを探そう」
 王様は王子の提案を受けて皆に言いました。
「手分けしてな」
「そうね、それじゃあ一旦お別れしてあの子を探して」
 オズマもにこりとして応えます。
「見付けたら携帯のメールで連絡しましょう」
「いや、こうした時携帯って便利よね」
 つぎはぎ娘も自分の携帯を出します、その服のポケットから自分の布製の魔法の携帯電話を出したのです。
「すぐに連絡出来るから」
「そうだね、じゃああの子を見付けたらね」
 木挽の馬も自分の木製の電話を出しています。
「メールで連絡しよう」
「じゃあ今から別れて」
 カルロスはにこりとして皆に言います。
「ボタンを探そう」
「ではな」
 王様が応えてでした、そのうえで。
 皆は一旦お別れしてです、ボタンを手分けして探しはじました。そしてすぐにでした。  
 オズマが皆を狐の王様の宮殿の裏手の林のところに呼びました、そこに皆が集まりますと。
 ボタンは一本の赤い木の下で仰向けになってすやすやと寝ています。ナターシャはそのボタンを見てくすりと笑って言いました。
「気持ち良さそうに寝てるわね」
「そうね」
 恵梨香もそのナターシャを見てにこりとなりました。
「とてもね」
「夜からずっと寝ているみたいね」
「やっぱりそこはボタンだね」
 神宝もボタンを見て優しい笑顔になっています。
「寝ている間に何処かに行っちゃうのは」
「そうだね、そして今回は狐の国に移動していたんだね」
 最後にジョージが言いました。
「この子も気付かない間に」
「うん、けれど見付かったから」
 カルロスはボタンのその偶然のことを今は置いておいて言いました。
「よかったよ」
「うむ、ではな」
 それではとです、王様も応えてでした。
 そのうえで、です、王様はすやすやと寝ているボタンに声をかけました。
「朝じゃぞ」
「あれっ、そうなんだ」
「目を覚ますのじゃ」
「それじゃあ」
 ボタンは王様に応えてでした、そのうえで。
 目を覚ましました、そしてこう言ったのでした。
「今日はよく寝たよ」
「そうだね、それでね」
 今度はカルロスがボタンに声をかけます、微笑んで。
「周りを見てくれるかな」
「わかったよ、それじゃあね」
 ボタンはカルロスに応えて周りを見ました、そしてこう言ったのでした。
「僕また何処かに移動していたんだね」
「うん、そうだよ」
「ここは何処かな」
「狐の国だよ」
「ああ、そうなんだ」
「どうしてここに来ているのかは」
「わかんなーーい」
 ボタンのこうした時のいつも通りの返事でした。
「起こしてもらったらここにいたんだ」
「そうだね」
「うん、けれど皆も一緒なんだ」
「教えてもらったのじゃ」
 王様がボタンにお話します。
「グリンダさんに居場所を調べてもらってな」
「そうだったんだ」
「そしてドラゴンに乗ってここまで来たのじゃ」
「わかったよ」
 どうして皆が自分を迎えに来てくれたことはというのです。
「そのことはね」
「それは何よりじゃ」
「うん、それで狐の国にいるから」
「狐さん達と遊びたいのう」
 王様は自分の望みをここで言いました。
「是非な」
「やっぱり王様はそう言うよね」
「そこはわかるじゃろ」
「うん、王様だからね」
 オズの国でも屈指の遊び好きの人だからです。
「そうだよね」
「ではな」
「これからだね」
「遊ぶとしようぞ」
「それじゃあ狐の王様のところに行くんだね」
「そうじゃ」
 まさにその通りという返事でした。
「今からあの王様のところに行くぞ」
「わかったよ」
 またこう答えたボタンでした、そうしてです。
 皆は狐の王様の宮殿の正門のところに行ってです、そこの門番の兵隊さんにお話をして通してもらいました。
 そのうえで大理石の奇麗な、狐の神様の彫刻や狐さん達が主人公の絵画が飾られている廊下を進んでです。狐の王様の間に来ました。
 するとです、狐の王様は玉座から降りて皆の高さまで来て言いました。
「ようこそ、我が国に」
「相変わらず元気そうじゃな」
「ははは、そちらこそ」
 狐の王様は笑ってリンキティンク王に応えました。
「元気そうで何より」
「うむ、それで今日こちらにお邪魔したのは」
「もう門番の兵から聞いておるぞ」
「そうか、では話が早い」
「今日はここで遊ぶのだな」
「貴殿と共にな」
「それでは」
 狐の王様はリンキティンクの王様の提案に微笑んで応えてでした、そのうえで他の皆にも明るい声で応えました。
「では皆さん」
「ええ、これからね」
「共に遊びましょうぞ」
 オズマにも笑顔で応えます。
「楽しく」
「それじゃあ何をして遊ぼうかしら」
「遊びと言っても色々ありますが」
 王様は楽しそうに考えるお顔になっています。
「今日は今我が国で流行っている遊びを」
「その遊びはどんなのですか?」
 ジュリアが狐の王様に尋ねます。
「一体」
「百人一首といって」
「ああ、百人一首ですか」
 恵梨香がそう聞いて言います。
「日本の遊びですね」
「歌を詠みその歌の札を取る」
「それが狐の国では流行っているんですか」
「左様、この遊びでいいか」
「ふむ、面白そうじゃな」
 そう聞いてです、王様が笑顔で言いました。
「ではそれを楽しもうぞ」
「それでは早速」
 狐の王様も応えます、そしてです。
 皆で百人一首をはじめました、ここでカルロスはこんなことを言いました。
「日本での遊びだから」
「恵梨香だよね」
 ボタンがカルロスに応えます、既に和歌が書かれているお札は床の上に置かれていて皆で囲んでいます。
「やっぱり」
「うん、和歌は日本だからね」
「恵梨香が一番強いかな」
「そうだよね」
「あれっ、、けれど恵梨香は」 
 ここで言ったのはつぎはぎ娘です。
「今は詠む役だから」
「あっ、それなら」
「恵梨香はだね」
「参加しないわよ」
 お札を取る立場としてはです。
「そうなってるわよ」
「そうだね、詠むのならね」
 それならとです、カルロスはつぎはぎ娘の言葉に頷きました。
「お札は取れないね」
「そうでしょ」
「それに私はね」
 恵梨香も言ってきます、その彼女も。
「和歌は知らないから」
「あれっ、そうなんだ」
「百人一首もね」
 今まさに楽しもうとしているこの遊びもというのです。
「殆どしたことないから」
「だからなんだ」
「そう、弱いわよ」
 実際にというのです。
「私はね」
「日本人なのになんだ」
「日本人なら誰でも百人一首が得意かというと」
 恵梨香はカルロスにお話します。
「そうでもないのよ」
「そうなんだ」
「そうよ、ブラジル人でも誰でもサンバ踊れないでしょ」
「うん、僕ダンスはね」 
 そのサンバにしてもです。
「あまり得意じゃないよ」
「そうでしょ、だからね」
「日本人だからって誰もが百人一首が得意か」
「そういう訳じゃないのよ」
「そうなんだね」
「ええ、私は百人一首では皆と同じよ」
「それじゃあ誰が一番強いかは」
「これからわかることだと思うわ」 
 実際に遊んでみてというのです。
「だからね」
「はじめるんだね」
「そうしましょう、詠むわね」
「それじゃあ」
 カルロスが応えてでした、そのうえで。
 皆で実際に百人一首をはじめました、そうして。
 一通りしてです、勝ったのは。
「私だったね」
「御主強いのう」
 リンキティンク王は一番お札を取れてにこにことしている狐の王様に対して笑って返しました。
「見ていて惚れ惚れしたわい」
「最近毎日しているからね」
「出来るのじゃな」
「最初は私もね」
 それこそというのです。
「全然出来なかったよ」
「そうだったのじゃな」
「それが毎日しているうちに」
「出来る様になった」
「その通りだよ」
「そうか、しかし百人一首はな」
「楽しいね」
 狐の王様のお言葉です。
「優雅で」
「こうした遊びもあるのじゃな」
「そうだよ、さて十時にはお茶を飲んで」
 そしてと言うのでした。
「お昼は」
「揚げだよね」
 ボタンがすぐに狐の王様に尋ねました。
「それを食べるんだよね」
「そう、あれは実に美味しいね」
「元は日本のお料理らしいけれど」
「日本からアメリカに入って」
「オズの国にもだね」
「入ってね」
 そしてというのです。
「我々も食べたけれど」
「そして食べたら」
「あんな美味しいものはないよ」
 狐の王様はこうまで言いました。
「鶏肉よりもいいよ」
「それでじゃな」 
 リンキティンク王もここで言います。
「今では主食に近いな」
「そうなっているね」
「ではじゃな」
「お昼は揚げを食べよう」
「どうした食べ方をするのじゃ?」
「これが色々あってね」
 狐の王様は本当に楽しそうに揚げの食べ方のお話をはじめました。
「焼いてもよし、煮てもよしで」
「稲荷寿司やきつねうどんもじゃな」
「何をしても美味しいんだよ」
「本当に好きなのじゃな」
「そうだよ」
 心からの返事でした。
「我が国では皆好きだよ」
「そしてじゃな」
「お昼は皆で食べよう」
「最早この国の名物じゃな」
「だって皆好きだからね」
 狐さん達がというのです。
「そうなっているよ」
「そういうことじゃな」
「狐さんってやっぱり揚げが好きなんだね」
 ボタンも言います。
「そうなんだね」
「その通りだよ」
「狐さんは鶏肉も好きだけれど」
「今では揚げの方がだよ」
「好きなんだね」
「だから皆にもだよ」
 笑顔で言うのでした、ボタンにも。
「揚げを食べて欲しいんだ」
「それじゃあだね」
「お昼はそれを楽しみにして十時は」
「おやつは何なの?」
「羊羹に」
 狐の王様はまずはそれを挙げました。
「お団子にお饅頭だよ」
「和菓子だね」
「和風ティーセットだよ」
「また日本なんだね」
「そう、揚げに凝っているとね」 
 これがというのです。
「日本のお菓子も好きになってね」
「それで今日の十時は」
「和菓子なんだよ」
 羊羹やお団子だというのです。
「お茶も日本のお茶でね」
「この国何か日本好きになってきたわね」 
 オズマも狐の王様の言葉を聞いて少し驚いています。
「前はそうじゃなかったのに」
「だから揚げのお陰で」
 狐の王様はオズの国の国家元首にもお話しました。
「それでなんです」
「さっきボタンに言った通りね」
「そうです、揚げは私達の好みを変えました」
「親日になっているのね」
「少なくとも舌はそうですね」
「そういうことなのね」
「狐さん達は多くの国にいますけれど」
 祖国ブラジルにいないことはです、カルロスは残念に思いながらもお話しました。
「揚げが一番なんですね」
「そう、我々は外の世界ではかなり広い範囲に住んでいるというね」
「実際にそうです」
 その通りという返事でした。
「熱い場所以外にはいますよ」
「そうだね、だから舌もね」
「揚げ以外にもですね」
「楽しめるけれど」
「揚げはですね」
「本当に凄いよ」
 まさにというのです。
「我々に最高に合っているよ」
「そういうことなんですね」
「そう、それじゃあ十時にはおやつが出るけれど」
「その間もお昼も」
「そう、ずっと」
 それこそというのでした。
「百人一首をしようか」
「はい、今日はそれでですね」
「遊ぼうね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で楽しくおやつも食べながら百人一首を楽しんでです。そしてその後で揚げと鶏肉のお昼御飯が出ました。
 焼いた揚げに煮た揚げ、それにです。
 きつねうどんもあります、オズマはそのきつねうどんを見て微笑みました。
「このおうどんもいいわね」
「きつねうどんもですね」
「ええ、いいわよね」
「そう、最早我々はおうどんといえば」
「きつねうどんになっているのね」
「揚げがなくては」
 おうどんの中にもです。
「もう食べられません」
「そこまで好きなのね」
「だからこそ皆さんにも」
「ええ、じゃあ頂くわね」
「どうぞ、おうどんに揚げを入れると」
 それこそというのです。
「こんな美味しいものになるなんて」
「それじゃあね」
「きつねうどんも」
 こうお話してでした、そのうえで。
 きつねうどんも食べました、それからまた百人一首もしました。それは三時のおやつも挟んで夕方もでした。
 楽しみました、そして。
 夕方になるとです、リンキティンク王は皆に言いました。
「ではな」
「今日はだね」
「うむ、これで帰らせてもらいたいが」
「また来てね」
 狐の王様は笑顔でリンキティンク王に応えました。
「そしてまた遊ぼう」
「貴殿もわしの国に来てな」
「一緒にだね」
「遊ぶぞ」
「それでは」
 お互いにこうお話して楽しんで、でした。そして。
 狐の王様は皆をお国の正門まで送りました、それから。
 ドラゴンが寝ているのを見てです、こうしたことも言いました。
「あのドラゴンで来たと」
「その通りじゃ」
「では、だね」
「うむ、あのドラゴンに乗せてもらってな」
「帰るんだね」
「そうさせてもらう」
「わかった、ではな」
 それならと言ってです、そしてでした。
 狐の王様は皆をミクりました、お互いに手を振り合ってそうして仲良くでした。王様達はドラゴンに声をかけました。
「よいか」
「あっ、これからですね」
「うむ、国に帰るが」
「それでは」
「また送ってくれるか」
「勿論ですよ」
 ドラゴンは王様に礼儀正しく応えてでした、そのうえで。
 皆はドラゴンの背中に乗りました、そして最後まで狐の王様と手を振り合って再会を約束するのでした。
 リンキティンク王の国にはすぐに着きました、すると。
 王様はドラゴンから降り立ってです、皆も降り立って。
 飛び立とうとするドラゴンにです、こう言いました。
「それでじゃが」
「はい、私はこれで」
「違う、お礼じゃ」
「いえ、お礼は」
「そういう訳にはいかぬ」
 こうドラゴンに言うのです。
「わしも王様じゃ、礼を忘れてはいかん」
「では」
「何でも好きなものを言ってくれ」
「何でもですか」
「それをやろう」
 送迎をしてくれた褒美というのです。
「御主にな」
「何でもですか」
「うむ、欲しいものを言うのじゃ」
「それでは」
 ここでドラゴンが王様に言ったものはといいますと。
「お菓子を下さい」
「お菓子か」
「はい、王様がいつも食べている」
 それをというのだ。
「お菓子をお願いします」
「それでいいのか」
「いえ、王様はお菓子もお好きですよね」
「好きも好きも大好きじゃ」
「そうですね、王様が召し上がらているのを見ていると」
「そういえばグリンダさんのお城に行った時も食べておるな」
「はい、その時に見まして」
 そしてというのです。
「食べたくなりました」
「それじゃあな」
「王様がお礼と言われるなら」
「それをか」
「はい、それなら」
「わかった、ではな」
 王様はドラゴンの言葉に頷きました、そしてです。
 宮殿から色々な種類のお菓子をこれでもかと出してでした、そのうえで。  
 ドラゴンにプレゼントをしました、ドラゴンはその山の様なお菓子を見てにこりと笑って言いました・
「有り難うございます、では」
「これをじゃな」
「いただきます」
「そしてじゃな」
「はい、グリンダ様のお城に戻ります」
「それではな」
 ドラゴンはそのお菓子を思いきり食べてでした、そのうえで皆とお別れの挨拶をしてからグリンダのお城に飛んで帰りました。
 その後で、でした。王様は皆に言いました。
「ではな」
「宮殿でだね」
「遊ぼうぞ」
 こうボタンにも言うのでした。
「夜もな」
「寝るまでだね」
「そうしようぞ」
「さて、明日は」
 今度はオズマが言います。
「私達そろそろ都に戻らないといけないけれど」
「結構宮殿を空けていますからね」
「そう、だからね」
 それでとです、オズマは王子に答えました。
「もう戻るわ」
「では今日は」
「ええ、今回ここにいる最後の日になるわね」
「明日の朝にですね」
「出発するわ」
 こうお話するのでした、そして。
 オズマはカルロス達にもです、笑顔でお誘いをかけました。
「貴方達もどうかしら」
「この国の次はですね」
「ええ、エメラルドの都で楽しまない?」
「どうしましょうか」
 カルロスが悩んでいるとです、王様が五人に言いました。
「オズの国は色々な場所に行くのがよいぞ」
「そして色々なものを見て楽しむのがいいんですね」
「だからじゃ」
「僕達今度はですか」
「都に行って楽しむのじゃ」
「それじゃあ」
「うむ、行って来るのじゃ」
 これが王様のアドバイスでした。
「是非な」
「それじゃあ」
「ええ、明日の朝都に行きましょう」
「わかりました」
「都までは私が魔法の帚を皆に渡すから」
「あの魔女が使う」
「そう、あの帚を使ってね」
 そしてというのです。
「皆でお空を飛んで帰りましょう」
「僕は走って行くけれどね」
 木挽の馬は帚に跨がることが出来ないからです、四本足なので。
「皆はその上をだね」
「ええ、飛んで行くわ」
「帚に乗る皆を見上げるのもいいね」
 こうオズマに応えるのでした、そして。
 カルロスはボタンにです、彼からお誘いをかけました。
「ボタンも都に来るの?」
「起きたらね」
「そうするんだ」
「うん、寝て起きて都にいたら」
 その時はというのです。
「皆と一緒にね」
「そう、それじゃあね」
「ほっほっほ、ではその時までわし等と一緒に遊ぶのじゃな」
「そうしていい?」
 ボタンは王様にお顔を向けて尋ねました。
「王様と一緒にいて」
「よいぞよいぞ」
 これが王様の返事でした。
「ではその時までな」
「皆で」
「遊ぼうぞ」
 こうお話してです、そのうえで。
 ボタンは皆にです、こう言うのでした。
「若し都で会えたら」
「うん、その時はね」
「一緒に遊ぼうね」
「また皆で」
「そうしましょう」
 ジョージ、神宝、恵梨香、ナターシャが応えます。
 そしてジュリアもです、こうボタンに言います。
「その時はとびきり美味しいパンケーキを焼いてあげるわ」
「楽しみにしてるよ」
「そして一緒に踊ろう」
 つぎはぎ娘もボタンに声をかけます。
「そうしようね」
「うん、それじゃあね」
「そして都でたっぷり遊んで」
 カルロスは四人のお友達に言います。
「また僕達の世界に戻ろうね」
「何時戻ってもいいわよ」
 オズマはそのカルロスに微笑んでお話します。
「オズの国は何時来て何時戻ってもいい国だから」
「はい、それじゃあ」
「満足するまで楽しんでね」
 オズマは微笑みのまま言うのでした、皆はオズの国でこの日も次の日も楽しく過ごすのでした。一緒に。


オズのボタン=ブライト   完


                         2016・3・11



ボタンの居る場所はすぐに分かったし。
美姫 「探しに行くのにドラゴンに乗ったり」
その後も最後まで遊び倒したな。
美姫 「今回はずっと遊んでいたわね」
だな。冒険も良いけれど、こうやって遊ぶのもな。
美姫 「どちら楽しそうね」
ああ。今回はここでお終いのようだな。
美姫 「投稿ありがとうございました」
今回も面白かったです。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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