『オズのボタン=ブライト』




                 第十一幕  消えたボタン

 この日もまずは朝御飯からでした、皆は食べました。
 この日はボルシチと黒パンでした、ロシア料理です。
 そのロシア料理を楽しみつつです、オズマは言いました。
「朝から美味しくて」
「それで、ですね」
「目がすっきりするわ」
「頭もですね」
「そうなるわ」
 こうジュリアにお話するのでした。
「いい感じよ」
「そうですね、朝からボルシチもいいですね」
「ロシア風のビーフシチューもね」
「いいですね」
「それと、です」
 ここでナターシャ、ロシア人であるこの娘が微笑んで言うのでした。
「サラダもですね」
「ええ、このサラダもね」
 オズマはそのサラダも見ています、見ればです。
 そのサラダは濃い感じです、他の国のレタスやトマトであっさりとしたものではありません。かなりのボリュームがあるものです。
 そのサラダを食べながらです、神宝はオズマに言うのでした。
「中国では生野菜は食べなかったんです」
「昔はなのね」
「けれど今は食べていますし僕も好きです」
「サラダはレタスやトマトだけじゃないんですね」
 サラダをよく食べるアメリカ人のジョージが言います。
「こうしたサラダもあるんですね」
「そうみたいね」
 オズマはジョージにも応えるのでした。
「ポテトサラダもあるし」
「あのサラダも美味しいですね」
 恵梨香はそのロシアのサラダを食べつつ言います。
「ボリュームもあって」
「ロシアは寒いからなのね」
 オズマはこう言いました。
「こうした濃い感じになるのね」
「寒いと栄養を摂らないと駄目なんだね」
 ボタンは黒パンを食べながら言います、そのパンに苺のジャムをたっぷりと付けてから美味しく食べています。
「そうなんだね」
「暑いよりもね」
 カルロスがボタンに答えます、ボタンと同じ食べ方で黒パンを食べながら。
「寒いとね」
「栄養が必要なんだね」
「寒さに勝たないといけないからね」
「それでなんだね」
「僕もブラジルにいる時よりも日本にいる時の方がね」 
 それこそというのです。
「脂肪の多いものとか甘いもの食べてるから」
「寒いから?」
「うん、あったまる様なものを食べてるよ」
「そうなんだね」
「実際にね」
 こう言うのです。
「さもないと我慢出来ないから」
「それでなんだ」
「そうなんだ」
「ううん、寒いって大変なんだね」
「ええ、何かとね」
 そのナターシャの言葉です。
「食べないと駄目なのよ」
「ナターシャにしてもなんだね」
 ジョージはナターシャに聞きました。
「食べてるんだね」
「そういえばナターシャって細いけれど」
 神宝も言います。
「結構食べるんだよね」
「私よりも食べてるかしら」
 恵梨香は首を少し傾げさせて言いました。
「どちらかっていうと」
「五人の中で一番食べてるのはカルロスかしらね」 
 つぎはぎ娘は自分の席に座って言うのでした。
「そうかしらね」
「そうかもね、見たところ」 
 木挽の馬はそのつぎはぎ娘の横にいます。
「カルロスが一番食べてるかもね」
「うん、そうだろうね」
 実際にとです、カルロスも答えます。
「僕が五人の中で一番食べてるね」
「それで一番元気だよね」
 ボタンはカルロスに言いました。
「そうだね」
「うん、そうかもね」 
 否定しないで答えたカルロスでした。
「食べてそしてね」
「動いてるんだね」
「確かに今の方がよく食べてるよ」
 ブラジルから日本に来た時の方がというのです。
「けれど動くこともね」
「それもだね」
「しているから」
 それでというのです。
「同じかな」
「食べてだね」
「食べたらね」
「カルロスは動くんだね」
「動かないと気が済まないんだ」
 どうしてもというのです。
「僕はね」
「そこがカルロスらしいね」
「ボタンもそう思うよね」
「実際にね」
「僕もそう思うよ」
 カルロス自身もとです、ボタンに微笑んで答ました。
「そうね」
「よく食べてよく動く」
「それが僕だよ」
「じゃあ今日もだね」
「うん、朝からたっぷり食べてるしね」
「遊んでだね」
「身体を動かすよ」
 まさにです、そうするというのです。 
 そしてです、実際にです。
 この日は外でテニスをしました、王様はスポーツも遊びと考えているからです。
 それでテニスコートでテニスをしてです、ボタンはこんなことを言いました。
「テニスっていいよね」
「凄く楽しいよね」
「うん、汗もかくしね」
 ダブルスで一緒に組んだカルロスに応えます。
「いい遊びだよね」
「だからね」
 それで、とです。カルロスは額の汗をタオルで拭きながらボタンに言うのでした。
「僕テニスも好きなんだ」
「サッカーだけじゃなくて」
「そう、もっと言えば野球もソフトボールも好きで」
 それにというのです。
「バスケやバレーボールもだよ」
「好きなんだね」
「色々なスポーツがね」
「そうなんだね」
「そしてこのテニスもね」
 好きだというのです。
「好きで結構しているんだ」
「そうなんだね」
「そう、じゃあね」
「うん、また僕達の番になったら」
「楽しもうね」
 見ればジョージと神宝、恵梨香とナターシャ、オズマとジュリア、それに王様と王子がそれぞれダブルスを組んでいます。つぎはぎ娘と馬は観ているだけです。コートはとても奇麗でよくお掃除されています。
 そのお掃除についてです、王様は言います。
「お掃除も遊びじゃ」
「お掃除もですか」
「そうじゃ、汚い場所やものを奇麗にするな」
「はい、確かに」
「それは楽しいことじゃからな」
「遊びなんですね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「だからじゃ」
「王様はそっちもですね」
「遊びじゃ」
「そして楽しむものですね」
「うむ、だからテニスをする前に楽しんだな」
 そのお掃除をです。
「そして後はな」
「テニスの後もですね」
「して楽しむぞ」
「そうされるんですね」
「至るものが遊びじゃ」
 王様独自のお考えです。
「だから楽しむぞ」
「何ていいますか」
 ふとです、こんなことも言ったカルロスでした。王様のそのお話を聞いて。
「王様って何でも遊びですから」
「何でも嫌がらないとじゃな」
「そうですよね」
「ほっほっほ、遊びを嫌がることはないじゃろ」
「はい、遊びですから」
「だからじゃ」 
「お掃除もですね」
 カルロスはまた言いました。
「そうなんですね」
「うむ、それにな」
「しかもですか」
「サインも遊びじゃ」
「書類への」
「どれだけ速く的確に一枚一枚サインをしていってな」
 決裁しないといけないその書類をです。
「終わらせるかな」
「いつも遊んでおられるんですね」
「そうしておるぞ」
「じゃあ会議も」
「ほっほっほ、新しい遊びを考えるな」
「そうしたものですか」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「会議もな」
「遊びを考える話し合いですか」
「大臣達とな」
「そうなんですね」
「また会議がある」
 やっぱり楽しそうに言う王様でした。
「そしてじゃ」
「その会議の中で、ですね」
「新しい遊びを決めるのじゃ」
「そういうことですね」
「そしてじゃ」
「新しい遊びをされるんですね」
「そうしておるのじゃよ」
 王様は飲みものの林檎ジュースを美味しそうに味わいつつお話します。
「いつもな」
「そうなんですね」
「いや、毎日遊んでじゃ」
 そしてというのです。
「楽しいぞ」
「ありとあらゆることを遊びにしていると」
「実によい」
「それだけで楽しくなるんですね」
「そういうことじゃ、しかしこのテニスをしておると」 
 王様が今度言うことはといいますと。
「凄く汗をかくのう」
「はい、そうですよね」
 実際カルロスもかなり汗をかいているので頷くのでした。
「凄い運動ですから」
「全くじゃ」
「そもそも王様は」
「わしが?」
「はい、ジャージを着ておられますけれど」
 見れば皆ジャージです、カルロスは黄色、ジョージは赤、神宝は青、ナターシャは黒、恵梨香はピンクの上下のジャージで。
 オズマは緑、ジュリアはライトグリーンです。そして王子と王様は紅ですが。
 その紅のジャージの生地が皆のより厚くてです、ジョージは言うのです。
「生地が厚いですから」
「だからか」
「はい、その分汗をかきます」
「しかも太っておるからか」
「そのこともありまして」
「わしは皆より汗をかくのじゃな」
「そう思います」
 こう王様にお話するのでした。
「そのせいで」
「それでか」
「はい、ただ汗をかくこともお嫌いじゃないですね」
「遊びは汗をかくものじゃ」
 これが王様の返事でした。
「だからな」
「それでいいんですね」
「その通りじゃ、汗をかくならどんどんかくぞ」
「わかりました、じゃあ次はやりますか?」
「うむ、君とボタンのチームとな」
「王様と王子のチームで」
「一緒にな」 
 こう言ってです、そのうえででした。
 実際に四人でゲームを楽しみました、他の皆もです。
 交互にラケットでボールを打ち合い勝負しました、試合は明るく楽しく爽やかに行われて十時になってです。
 ティータイムとなりました、その時にです。
 オズマは紅茶、ミルクティーを飲みながら皆に言いました。
「皆もテニスが好きで何よりも」
「姫様もですよね」
「テニスお好きですよね」
「そうですよね」
「ええ、スポーツ自体が好きで」
 そしてというのです。
「テニスもね」
「お好きだからですね」
「今日も楽しまれてるんですね」
「そうなんですね」
「そうよ」
 五人に笑顔で返した言葉でした。
「この通りね、都にいる時もよくしているわ」
「ドロシー王女達となのよ」
 ジュリアはティーセットのエクレアを手に取りつつ五人にお話しました。
「私ともね」
「テニスをされてるんですね」
「そうなんですね」
「そうなの、姫様は今日みたいにいつも軽やかに動かれるのよ」
「そういえばオズマってね」
 ボタンはサンドイッチを食べています、サンドイッチの間にはジャムとフルーツが挟まれていてとても甘くなっています。
「左右に凄く速いよね」
「そうでしょ」
「いつもしていてなんだ」
「姫様はテニスがお上手なの」
「そうなんだね」
 ボタンはそう聞いて頷きました。
「いつもしているから」
「そうなの、他のスポーツもお好きでね」
「そしてテニスも」
「そうなの」
「僕はテニスは」 
 ボタン自身はといいますと。
「あまりしないかな」
「いつも何処かにいるからね」
 つぎはぎ娘が言ってきます、観戦役の。
「テニスコートの傍にいることは少ないから」
「そうなんだ、起きたら違う場所にいたりするから」
「テニスをするとなると」
「こうした時だけだよ」 
 皆と一緒になった時のみというのです。
「だからね」
「そういうことね」
「うん、だから僕はテニスは」
「あまりしないのね」
「今日は久し振りにしたかな」
「その割にはいい動きしてたよ」
 ダブルスを組んでいるカルロスの言葉です、カルロスは苺やメロンといったセットの中のフルーツ類を食べています。
「君はね」
「そうかな」
「うん、速くて」
 それにというのです。
「スマッシュも的確だったし」
「だったらいいけれど」
「だからね」
「けれど僕ね」
「テニスの経験はないんだね」
「そうだよ」
 その通りという返事でした。
「あまりね」
「というかボタンってね」
「僕は?」
「うん、運動神経いいよね」
「そうだね」
 王子がカルロスのその指摘に頷きました。
「確かにボタンは運動神経がいいね」
「そうですよね、冒険の時も」
 カルロスはボタンと一緒に冒険した時のこともお話しました。
「幾ら歩いても平気だったから」
「体力もあるね」
「運動得意なんじゃ」
 いつも寝ているイメージはあってもというのです。
「前からそう思っていたふしはあっても」
「僕寝るのが一番好きだよ」
「いや、それでもだよ」
 ボタン本人にも言うのでした。
「君は運動神経あるよ」
「だといいけれど」
「テニスをしても」
 また言ったカルロスでした、このことも。
「よかったし」
「若しカルロスがテニスをいつもしていたら」
 そのテニスが好きなオズマの言葉です。
「私よりずっと上手だと思うわ」
「ボタンの運動神経と体力なら」
 ジュリアも言います。
「男の子ですし」
「私よりもよね」
「お言葉ですが」
「お言葉じゃないわ」
 そこははっきりと返したオズマでした。
「当然のことだから」
「当然ですか」
「誰もが何でも一番になれないでしょ」
「一番を目指してもですね」
「得意不得意があるわね」
「はい、確かに」
「私が何でも一番になれるかは」
 それは、というのです。
「人には出来ないから」
「だから姫様も」
「そう、ボタンが私よりテニスが上手でもね」
 それでもというのです。
「いいのよ」
「そうなのですね」
「ええ、そうよ」
 ジュリアに笑顔で言うのでした、そして。
 オズマは素直にです、こうボタンに言うのでした。
「オズの国で一番のテニスプレイヤーになる気はあるかしら」
「いや、別にね」
「いいのね」
「僕テニスは好きだけれど」
 それでもというのです。
「それ以上に寝ることが好きだから」
「テニスよりもなのね」
「うん、寝ることで一番ならいいわ」
「わかったわ、じゃあその気になったらね」
「その時になんだね」
「目指すといいわ」
 これがオズマの言葉でした。
「テニスはね」
「じゃあそうするね」
「ええ、けれど寝ることが一番好きなら」
「オズの国で寝ることの一番になりたいと思ったら」
「目指すといいうんだね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「ボタンがそうしたいならね」
「わかったよ」
 ボタンはオズマの言葉に頷きました、そして。
 そのお話をしてです、王様は紅茶を一口飲んでから皆に言いました。
「ではこれからもな」
「テニスですね」
「テニスを楽しもうっていうんですね」
「そうじゃ、今日はテニスをして遊ぼうぞ」
 こう子供達に答えるのでした。
「是非な」
「いいですね、私いつもゴスロリの服ですけれど」
 ナターシャも紅茶を飲みつつ笑顔で言います。
「ジャージもいいですしね」
「そうよね、ジャージでスポーツするのもね」
 恵梨香も微笑んでナターシャに続きます。
「いいわよね」
「小学校だと体操服だけれど」
 ジョージは自分達が通っている小学校のお話をしました。
「こうしてそれぞれが好きなジャージを着てやるのもいいね」
「ジャージにもそれぞれの好きな色が出てるしね」
 神宝は皆のそれぞれのジャージを見ています。
「そのことも面白いね」
「そうだね、僕は黄色でね」
 カルロスも言います。
「皆はそれぞれの色だね」
「何かね」
 つぎはぎ娘はこんなことを言いました。
「五人共オズの国の何処からか来たみたいよ」
「それぞれの色が?」
「そう、特にあんた達三人はね」
 カルロス達男の子達を見ての言葉です。
「そうよね」
「ウィンキー、カドリング、マンチキンだね」
「そう、三人はね」
 それこそというのです。
「そうよ」
「そうだね」
「女の子達はね」
 ナターシャと恵梨香はといいますと。
「少し違うかしら」
「黒とピンクはね」
 木挽の馬が言うことはといいますと。
「オズの国にはないよね」
「国の色としてはね」
「そうなんだよね」
「ただ、ナターシャは紫で」
 その黒が紫色に近いというのです。
「ギリキンかしら」
「そうなるかな」
「恵梨香は女の子自体ね」
 そうなるというのです、恵梨香は。
「ピンクは女の子の色だから」
「私はそうなのね」
「凄く女の子らしいし」
 外見も性格も行動もというのです。
「五人の中でお姉さんって感じだから」
「それでなのね」
「そう、恵梨香は女の子よ」
 それになるというのです。
「オズの国のね」
「そうなるのね、私は」
「ええ、そしてね」
 さらに言うつぎはぎ娘でした。
「五人でオズの国ね」
「ううん、外の国から来たのにだね」
「あんた達オズの国の市民じゃない」
 つぎはぎ娘はカルロス達にこのこともお話しました。
「そうでしょ」
「うん、姫様に名誉市民にしてもらってるよ」
 最初の冒険の最後に任命してもらったことをです、カルロスはつぎはぎ娘にお話しました。
「だからだね」
「オズの国の市民よ」
「だから僕達五人で」
「オズの国よ、オズマがエメラルドの都でね」
 まさにそのものというのです。
「六人でそうよ」
「皆それぞれオズの国なのよ」
 オズマが微笑んで言ったきました。
「そうなるのよ」
「そうなんですね」
「そう、五人もオズの国でね」
「姫様もそうで」
「他の皆もよ」
 それこそというのです。
「誰もがオズの国なのよ」
「オズの国にいる人は」
「そうなるのよ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はさらにテニスを楽しみました、そしてお昼にはです。
 お昼を食べました、今日のお昼はといいますと。
「お寿司なんだね」
「それがいいかしらって思ってね」
 オズマはボタンににこりと笑って答えました。
「それでなの」
「お寿司にしたの」
「日本のお料理だね」
「そうよ」
 その通りとです、オズマはまた答えました。
「お寿司はね」
「何度か食べてるけれど」
 ボタンにしてもです。
「お寿司っていいよね」
「ボタンも好きなのね」
「大好きだよ」
 ボタンはそのお寿司を手に取って食べています、玉子を海苔でジャリに付けているとても美味しそうなお寿司です。
 そのお寿司を食べつつです、ボタンも言うのです。
「何とも言えないよね」
「御飯にお砂糖とお酢で味を付けて」
「そしてだよね」
「上にお刺身とかを乗せてね」
「その組み合わせがいいよね」
「私も好きで」
 オズマは笑顔で食べています、そのお寿司を。
「時々食べてるの」
「テーブル掛けで出して」
「旅行の時はこれで出してね」
 そしてというのです。
「都ではシェフの人達に作ってもらってるの」
「そうして食べているんだね」
「ええ、そうしてね」
「姫様も食べてるんだね」
「お寿司を作ることは難しくても」
 それでもというのです。
「都のシェフの人は上手に作ってくれて」
「このテーブル掛けもだね」
「美味しいお寿司を出してくれるの」
「ううん、実際に凄くね」
「美味しいわね」
「うん」
 笑顔で答えながらです、ボタンは今度は鮪のお寿司を食べています。
「幾らでも食べられるよ」
「いいことよ、じゃあね」
「実際にだね」
「うん、食べてね」
 そしてというのです。
「お腹一杯になってね」
「そうならせてもらうね」
「お寿司っていう食べものもね」
 カルロスは鮭のお寿司を食べながら言うのでした。
「面白いよね」
「面白いって?」
「御飯と色々なお刺身が食べられてね」
「そうだね、言われてみればね」
「納豆なんかもあるし」
「納豆巻きだね」
「そう、これもね」
 カルロスは実際に今度は納豆巻きを食べています、海苔に巻かれたジャリの上にネタとして納豆があります。
 その納豆を食べてです、こう言ったのでした。
「お寿司になるしね」
「いや、その納豆はのう」
 王様はその納豆を見ながら言うのでした。
「最初驚いたわ」
「そうですよね」
「これが食べるものかとな」 
 そう思ってというのです。
「びっくりしたわ」
「そうそう、糸を引いてるお豆なんて」
「何かと思ったわ」
「僕の国にも色々な食べものありますけれど」
 神宝はお国の中国のことをお話します。
「納豆みたいなのはないですからね」
「匂いが凄いんですよね」
 ジョージは納豆のその匂いをお話します。
「もう食べものと思えない位に」
「噂には聞いていたけれど」
 ナターシャのコメントはといいますと。
「実際にその目で見てやっぱり驚きました」
「けれど美味しいでしょ」 
 恵梨香はそれぞれ納豆について言う皆にこう言いました。
「納豆は」
「食べてみればね」
「実際に」
「そうしてみれば」
「美味しいわ」
 カルロス達四人も肝心のお味についてはこう言います。
「意外とあっさりしていて」
「御飯に合ってて」
「しかも身体にいいし」
「いい食べものよ」
「関西でも昔はあまり食べてなかったけれど」
 恵梨香は神戸で生まれ育っています、神戸も関西なのです。
「実際に美味しいのよ」
「左様、これが食べるとな」
 王様はまた納豆について言いました。
「美味しいのじゃ」
「そうなんですよね」
「御飯にも合うしおうどんにも合う」
「あっ、そうなんですね」
 カルロスは王様の納豆はおうどんにも合うという言葉にお顔を向けました。
「納豆はおうどんにもですか」
「麺に絡めてな」
「そうして食べるとなんですね」
「これもまたいい」
「そうなんですね」
「そうじゃ」
 その通りというのです。
「カルロスも今度食べてみるといい」
「わかりました、今度そうしてみます」
「納豆巻きもよいがな」
「そちらもですね」
「僕も納豆食べられるよ」
 ボタンは今はいくら巻きを食べています、それもまたいいのです。
「そちらもね」
「ボタンもだね」
「そう、好きだよ」
「ボタンって何でも食べられるね」
「うん」
 いくら巻きも食べてです、そして次ははまちのお寿司を食べています。
「胡瓜もね」
「かっぱ巻きだね」
「そっちもね、ただ」
「ただ?」
「何で胡瓜のお寿司をかっぱ巻きっていうの?」
 ボタンが疑問に思ったのはこのことでした。
「どうしてなのかな」
「それはね」
 ジュリアが答えました、ボタンの今の質問に。
「日本に河童っていう妖怪がいるの」
「妖怪なんだ」
「そう、妖怪は西洋で言う妖精ね」
「オズマみたいなんだね」
「そう、オズマも妖精だからね」
 オズの国の光の妖精です、オズマは。
「オズマのお友達になるわね」
「河童も」
「そう、河童は川や湖に住んでるの」
「水の妖怪なんだ」
「そうなの、緑色の身体で」
 それにというのです。
「甲羅を背負っていて頭にお皿があってお口は嘴で指と指の間には水かきがあるの」
「面白い外見だね」
「お相撲が好きで食べものは」
「胡瓜が好きなんだね」
「ええ、そうなのよ」
「胡瓜は河童の好物だから」
 ボタンもわかりました、ここで。
「かっぱ巻きになるんだね」
「そうよ」
「わかったよ」
 ここまで聞いてです、ボタンは微笑んで頷きました。
「そういうことだね」
「そうなのよ」
「成程ね、それで河童はオズの国にいるのかな」
「日本からアメリカに来ている人もいるから」
「河童もなんだ」
「ええ、いるわ」
 このオズの国にもというのです。
「オズの国には世界中から妖怪が集まっているのよ」
「そうなんだね」
「アメリカの妖怪がいて」
 そしてというのです。
「日本の妖怪も中国の妖怪もいるのよ」
「ブラジルやロシアの妖怪もだね」
「勿論よ」
 ジュリアはまた答えました、かずのこ巻きを食べつつ。
「色々な国の妖怪がいるのよ」
「そうした人達にも会いたいね」
「ええ、会えるわよ」
 笑顔で答えたジュリアでした、ここでも。
「オズの国にいればね」
「その時を楽しみにしていいかな」
「勿論よ」
 笑顔で答えたジュリアでした、この時も。
「その時も楽しみにしていてね」
「うん、わかったよ」
 ボタンはジュリアの言葉に頷いてでした、そして。
 河童巻きを食べてから今度はお稲荷を食べて言いました。
「この前狐さんと狸さんと楽しく遊んだけれどね」
「狐だね」
「うん、狸さんもいたよ」
「いいね」
 カルロスは狐や狸と聞いて羨ましそうに言いました。
「どっちもブラジルにはいないんだよね」
「ブラジルにはいないの?」
「狐も狸もね」
「そうなんだ」
「特に狐はね」
 この生きものはというのでした。
「恵梨香達の国には全部いるのにね」
「そうなんだ」
「ブラジルにだけいないんだ」 
 五人のそれぞれの祖国の中で、です。
「そうなんだよね」
「どうしてなの?」
「何か狐はあまり暑い場所にはいないらしくて」
「それでなんだ」
「ブラジルは暑いからね」
 何といってもという口調で、です。カルロスは答えました。
「それでなんだ」
「狐はいないんだ」
「ブラジルにはね」
「恵梨香達の国にはいても」
「そう、皆の国にはいるんだ」
 日本、アメリカ、中国、そしてロシアにはです。
「童話にも出るしね」
「ブラジルの童話では狐出ないんだ」
「動物園にしかいないよ」
 それこそというのです。
「あそこにしかね」
「残念だね」
「ブラジルには色々な生きものがいるけれど」
 それでもというのです。
「狐はいないんだ」
「そうなんだね、わかったよ」
「けれどオズの国には狐が普通にいるんだよね」
「うむ、狐の国もあってのう」
 王様はとろのお寿司を食べています。
「あの国の王様はわしの友達じゃ」
「お二人は仲がよくてね」
 王子は鯖のお寿司を食べつつ言います。
「よく一緒に揚げも食べてるよ」
「あそこの王様は無類の鶏肉好きじゃが」
 狐だからこそ、というのです。
「それ以上に日本から来た揚げに病み付きにになっておるのじゃ」
「これだね」
 ボタンはオズマが美味しそうに食べているお稲荷さんを見つつ王様に応えました、さっきはボタンも食べていました。
「お稲荷さんだね」
「左様、あとはきつねうどんじゃ」
「薄い揚げをおうどんに乗せた」
「あれも大好物なのじゃ」
「とにかく揚げが好きなんだ」
「この世で最高の食べものと言っておる」
 そこまで好きだというのです。
「毎食食べておるぞ」
「本当に病み付きなんだね」
「揚げがあればとさえ言っておるぞ」
「僕も揚げはね」
「好きじゃな」
「けれどそこまではね」
「だから狐じゃからな」
 それ故にというのです。
「そこまで好きなのじゃ」
「狐さんと揚げはなんだ」
「最早切っても切れないものになっている」
「じゃあお寿司も」
「殆ど稲荷寿司じゃ」 
 狐の王様が食べるお寿司はです。
「しかも王様だけでなくな」
「お国の人もだね」
「皆じゃ」
 狐だからというのです。
「いつも食べておるのじゃ」
「成程ね」
「うむ、今度行ってみるか」
「行けたらね」 
 これがボタンの返事でした。
「その時はね」
「そうじゃな、君は何時何処に行くかわからん」
「だからね」
「そうじゃな、ではあの国に行った時にはな」
「うん、揚げをね」
「頂くな」
「そうさせてもらうよ」
 ボタンは王様に微笑んで応えました、そしてです。
 午後もテニスを楽しんで皆でいい汗をかきました、汗をかいた後で。
 皆で宮殿に帰ってです、お風呂で汗を流して着替えて晩御飯も食べました。そのうえで夜は寝たのですが。
 朝起きるとです、そこで遂にでした。
「あれっ、ボタンは?」
「いないよね」
「そうだね」
 カルロスはジョージと神宝に言われました。
「ひょっとして」
「またいなくなったのかな」
「うん、お部屋にいないからね」
 ボタンのベッドの中にです。
「これはね」
「間違いないね」
「何処かに行ったね」
「あれっ、どうしたの?」
「何かあったのかしら」
 お部屋の外で朝お話をしている三人のところにです、恵梨香とナターシャが来ました。五人共もう着替えています。
「まさかと思うけれど」
「ボタンがいなくなったのかしら」
「そのまさかだよ」
 カルロスが二人に答えます。
「朝起きたらなんだ」
「そうなのね、やっぱりね」
「あの子の常ね」
「そうだね、彼がいなくなることは常だからね」
 カルロスもわかっていて言います。
「もう皆驚いていないね」
「今更って感じだからね」
「彼の場合はね」
 ジョージと神宝も言います。
「それなら」
「もうね」
「それじゃあ探しましょう」
「すぐにそうしましょう」
 恵梨香とナターシャは三人に提案しました。
「すぐにね」
「皆にもお話して」
「よし、それなら」
 カルロスが乗りました、そのうえで。
 五人は他の皆にもお話しました、すると。
 すぐにです、オズマが言います。
「ではまずはね」
「ボタンを探すんですね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「探す前にね」
 くすりと笑ってです、オズマがここで言うことは、
「朝御飯を食べましょう」
「まずは、ですね」
「ええ、一旦宮殿の中を皆で探して」
 そしてというのです。
「それからはね」
「見付かればそれでよしで」
「宮殿にいなかったら」
 その時はというのです。
「朝御飯にしましょう」
「朝御飯を食べてですか」
「皆で捜索に出ましょう」
 宮殿に出て、というのです。
「そうしましょう」
「ほっほっほ、果たして何処にいるのかのう」
 王様はここで笑って言いました。
「見付けるのが楽しみじゃ」
「楽しみですか」
「うむ」
 その通りとです、王様はカルロスに答えました。
「実にな」
「それじゃあ」
「さて、朝御飯前に宮殿の中を探して」
「宮殿にボタンがいれば一緒に朝御飯を食べて」
「そしてな」
「いなかったらですね」
「出発じゃ、いいな」
「捜索の冒険に」
 カルロスも王様のお言葉を理解して応えます。
「行こうぞ」
「王様そっちの方を楽しみにしていません?」
「うむ、何かとな」
「そうですか」
「うむ、ではな」
「それではですね」
「そうじゃ、探すとしよう」
 こう言って実際にでした、皆で朝御飯前に探しました。しかし宮殿の何処にもいなかったのでそれでなのでした。
 王様は皆にです、笑顔で言いました。
「いなかったな」
「それならなのね」
「そうじゃ、朝御飯を食べてじゃ」
 そしてというのです。
「出発じゃ」
「王様今度は冒険で遊ぶのね」
 つぎはぎ娘は王様の考えを読んで尋ねました。
「そういうことね」
「ほっほっほ、その通りじゃよ」
「成程ね、じゃあ朝御飯を食べて」
「皆出発するぞ」
「何処にいるかわからないんだよね」
 木挽の馬が言います。
「ボタンは」
「それを探すのが面白いではないか」
「いえ、待って下さい」
 ここで王子が王様に言ってきました。
「オズマ姫の魔法かグリンダさんにお聞きすれば」
「それでわかるか」
「グリンダさんは魔法でオズの国のあらゆる場所を知ることが出来ます」
「オズの国のことは何でも書かれる本にじゃな」
「はい、あそこにです」
「よし、ではじゃな」
「まずはグリンダさんのところにですか」
 王子は王様に言いました。
「連絡しますか」
「そうするとするか」
「それがいいですね」
「よし、ではまずはグリンダさんに聞くか」
「そうしましょう」
「話は決まった」 
 これで、というのでした。
「グリンダさんに連絡じゃ」
「それじゃあ」
「うむ、朝御飯の後じゃ」
「ではまずはですね」
 ジュリアも応えます。
「朝御飯を食べるんですね」
「やはり何事も食べてからじゃ」
「それからはじまりますね」
「うむ、そうしようぞ」
 こう言ってでした、そのうえで。
 皆はまずは朝御飯を食べました、今日はお饅頭とお野菜を炒めたものでそれを食べてからなのでした。



遊んで食べてと。
美姫 「本当に楽しそうよね」
だな。このまま遊び尽すかと思ったけれど。
美姫 「ここに来て、ボタンがいなくなったわね」
もう今回はいなくならないかと思っていたが。
美姫 「すぐに居場所は分かりそうだけれどね」
良かったな。まあ、どちらにせよ食べてからという事に。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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