『オズのボタン=ブライト』




                 第九幕  お菓子作り

 王様は朝風呂から出た王子と宮殿の廊下で会ってです、こんなことを尋ねました。
「お風呂はどうじゃった」
「いいお湯でしたよ」
 王子は微笑んで王様に尋ねました。
「いつも通り」
「ふむ、そうか」
「はい、お陰で頭も身体もすっきりしました」
「それはよいのう、その話を聞くと」
 王様はこう言うのでした。
「わしも入りたくなったわ」
「朝風呂にですか」
「うむ、そうしたくなった」
 王子に笑って言うのでした。
「どうもな」
「それではどうぞ」
 王子は王様に微笑んだまま言葉を返しました。
「何時でも入られれるお風呂ですしね」
「そうじゃな、では行って来る」
「はい、ただ」
「ただ、何じゃ?」
「王様今日は早起きですね」
 王子は王様にこうも尋ねました。
「いつもと違って」
「たまたまな」
「早く起きられたんですか」
「そうなのじゃ」
 その通りだというのです。
「本当にたまたまじゃ」
「そういう日もありますね」
「そうじゃ、ではな」
「これからですね」
「入ってな」
「朝御飯ですね」
「そちらも楽しもうぞ」 
 王子に笑って言ってです、そうして。 
 王様はお風呂に向かいました、ですが。
 お風呂場にはです、王様の前にもういました。そのいるのはといいますと。
「君達もおるのか」
「はい、何か目が覚めまして」
「それも三人共です」
「そうなってしまいまして」
 カルロスとジョージ、神宝が王様に応えます。三人共既に服を脱いでいて腰にタオルを巻いているだけの姿ですう。
「朝にお風呂に入ろうって」
「そうお話しまして」
「今からお風呂に入るところです」
「そうか、では一緒に入ろうぞ」
 王様は三人にも笑顔で応えました、そしてでした。
 すぐに服を脱いで一緒にお風呂場に入りました、まずはタオルと石鹸で身体を奇麗に洗ってシャワーで泡を洗い落としてです。
 王様は三人にです、笑ってこう言ったのでした。
「サウナに入るか」
「サウナですか」
「そこに入るんですか」
「うむ、そうするか」
 こう言うのでした。
「今朝のお風呂はな」
「サウナっていいますと」
 カルロスは王様の提案を聞いてこう言いました。
「ナターシャのお国のお風呂ですね」
「あの娘のじゃな」
「あの娘ロシア人で」
「その国ではじゃな」
「お風呂はサウナなんです」
「熱い部屋でたっぷりと汗をかく、じゃな」
「そうしたお風呂です」
 まさにというのです。
「あそこのお風呂は」
「確かロシアは寒かったのう」
「物凄く寒いんですよ」
「これが本当に」
 ジョージと神宝も王様にお話します、そのサウナに向かいながら。
「息が凍ったりとか」
「睫毛も凍るとか」
「雪もかなり降って」
「オズの国じゃ信じられない位です」
「オズの国にも雪があるがのう」
 それでもというのです。
「息や睫毛が凍ることはないからのう」
「絶対にですよね」
「ない」
 王様はカルロスに断言しました。
「それでサウナであったまるのじゃな」
「そうみたいです、あとお部屋も暖かくて」 
 そしてというのです。
「厚着ですし」
「そういえばあの娘厚着じゃな」
「そうですよね」
「君達よりもずっとな」
「ロシアじゃもっとらしいですよ」
「さらに厚着か」
「はい、あの娘の冬のロシアでの写真観ましたけれど」
 それはどういったものかといいますと。
「厚い生地の帽子で毛皮のコート、底の厚いブーツで」
「かなりじゃな、それは」
「スカートも長くて下にタイツで」
「下もか」
「それで手袋はミトンです」
「完全装備か」
「そうでもないとみたいです」
 ロシアの冬はです。
「無理みたいなんです」
「ううむ、想像も出来ないのう」
「アメリカにも寒い場所ありますけれど」
「中国にも」 
 ジョージと神宝はそれぞれのお国のお話をしました。
「ですがそれでも」
「ロシアは別格です」
「国全体がアラスカみたいなんですよ」
「東北みたいに寒いですから」
「ブラジルは国全体が暑いんです」
 カルロスもお国のことをです、王様にお話します。
「けれどロシアはその逆です」
「国全体が寒いのじゃな」
「そうなんです」
「凄い話じゃのう」
「オズの国ではないですね」
「とてもな」
 そうした国はというのです。
「常春の国だからな」
「そうですね」
「あの娘も凄いところに住んでおるな」
「ロシアは」
「そしてサウナもあるのか」
「暖まる為にも」
「熱い位にじゃな」
 こうお話してでした、そのうえで。
 四人でサウナルームに入りました、ですが。
 そこにもうです、ボタンが四人と同じ腰にタオルを巻いた姿のままでいてです、そのうえで座ったまますやすやと寝ています。
 そのボタンを見てです、カルロスは首を傾げさせて言いました。
「これはね」
「うん、流石にね」
「想像していなかったね」
 ジョージと神宝も言います。
「寝ている間に何処かに行く子だけれど」
「サウナにいるとかね」
「ちょっとね」
「考えていなかったね」
「しかもね」
 カルロスはさら言うのでした。
「裸になっているし」
「このこともね」
「どういうことかわからないね」
「どうしてサウナにいるのか」
「それに裸なのかね」
「それは本人に聞くとよいな」
 王様はいぶかしむ三人にあっさりと返しました。
「この子自身にな」
「それじゃあ」
「少なくともサウナで寝たままはよくない」
「のぼせますよね」
「お風呂ではな」
 それこそというのです。
「寝るのはよくない」
「気持ちよくても」
「そうじゃ」
 それでというのです。
「ここはな」
「それじゃあ」
「うむ、今から起こそう」
 こう言ってでした、実際にです。王様はボタンのところに来て彼に声をかけました。
「起きるのじゃ」
「その声は王様?」
「そうじゃ」
 ゆっくりと目を開けたボタンに答えました。
「サウナに来たのじゃ」
「あれっ、ここサウナなの?」
 ここで、です。ボタンは。
 起きてです、周りを見回して言いました。
「そういえばそうだね」
「ずっと寝ておったのか」
「ベッドの中でね」
「そうだったのじゃな」
「貸してもらっているお部屋でね」
「それでどうしてなのじゃ」
 王様はボタンにさらに尋ねました。
「君はここにおるのじゃ」
「わかんなーーい」
 王様にいつもの返事で返しました。
「王様に起こしてもらったらね」
「ここにおったのか」
「そうなんだ」
「服は何時脱いだの?」
「わかんなーーい」
 ボタンはカルロスにも同じ返事でした。
「どうしてかな」
「そうなんだね」
「本当に気付いたらね」
「いるんだ」
「そうなんだ」
「まあボタンらしいかな」
 カルロスは全くわからないながらもこう考えることにしました。
「それも」
「そうだね、気付いたらっていうのは」
「それもね」
 ジョージと神宝もこう考えることにしました。
「ボタンらしいね」
「そういうことだね」
「しかも汗もね」
 ボタンの身体を見ますと。
「まだかいていないね」
「つまり入ってすぐじゃな」
 王様も言います。
「そうじゃな」
「そうみたいですね」
「わし等より少しだけ前に来た様じゃあ」
「じゃあ今から」
「一緒に汗をかくか」 
 そのサウナの中で、というのです。
「そうするか」
「それじゃあ」
「うむ、ボタンもサウナに入るか」
 こう提案するのでした。
「そうするか」
「うん、じゃあね」
 それならとです、ボタンも頷いてでした。
 五人でサウナに入りました、そして汗をかいてです。
 水風呂に入って一旦冷やしてまたサウナに入ってです、ボタンは言うのでした。
「こうして汗をかくと」
「いいね」
「うん、気持ちいいね」
 笑顔での言葉でした。
「湯舟に入っているのと同じだけ」
「そうなんだよね」
 カルロスもボタンに笑顔で応えます。
「この感じがね」
「サウナって気持ちいいね」
「子供はあまり入らない方がいいというが」
 王様が言うにはです。
「君達位ならな」
「もう入ってもいいんですね」
「そうじゃ」
 こう言ったのでした。
「ボタンは微妙かのう」
「あれっ、僕達よりずっと長く生きているんじゃ」
「生きている年月はじゃな」
「そうですよね」
「身体のことじゃ」
「ああ、そういうことですか」
「ボタンの身体は君達よりも幼いな」
「はい、確かに」
 そう言われるとです、カルロスも頷きます。
「それじゃあ」
「君達もボタンには普通に接しておるな」
「そうですね」
「姫様やドロシー王女には敬語であろう」
「そうしていますし」
「ボタンは大体どれ位かな」
「僕達より一つか二つ下?」
 ジョージとカルロスはこうお話しました。
「そうかな」
「それ位だよね」
「まあそれ位じゃな」
 王様も二人の言葉に頷きます。
「大体な」
「そうですよね」
「それ位ですよね」
「それでじゃ」
 また言う王様でした。
「サウナはまだ早いかもとも思うが」
「それでもですか」
「まあいいかなって感じなんですね」
「それで僕達と一緒になんですね」
「まあ過ぎなければよいな」
 サウナに入ることがです。
「子供でもな、そしてわしもな」
「あっ、王様そろそろ汗がね」
 ボタンはお話をする王様のお身体を見て言いました。
「玉みたいになってきてるね」
「そうじゃな」
「ここからだよね」
「うむ、これが滝みたいになればな」  
 その汗がです。
「もう出る」
「そうするんだね」
「また水風呂に入って最後は湯に入ろう」
「最後に身体を洗うの?」
「もう一度か」
「王様よくそうするから」
「それは当然じゃ」
 もう決まっているとです、王様はボタンに明るく笑って答えました。
「最後にも身体を洗うのはな」
「最初も洗うよね」
「あれは汚れをな」
「取る為?」
「身体が汚れたまま湯舟に入ってはならん」 
 そこは強く言うのでした。
「だから最初に洗う」
「そうしているんだね」
「水風呂も同じじゃ」
「やっぱり皆が入る場所だから」
「まずは身体を奇麗にしてな」
「それから入るんだね」
「そうなのじゃ、そして最後はな」 
 もう一度お身体を洗う理由もです、王様はボタンにお話します。
「汗をかいておるな」
「それでその汗をだね」
「奇麗にしておくのじゃよ」
「その為だね」
「うむ、ではな」
「最後はだね」
「身体を洗うぞ」
 そしてお風呂を出るというのです、そしてです。
 王様は皆と一緒に実際に水風呂に入ってです、それから湯舟で身体を温めなおしてからでした。
 身体を洗って髪の毛も奇麗にしてでした、お風呂から出るともういい時間でした。朝御飯がはじまる時でした。
 ナターシャは幾分か眠そうなお顔で朝御飯のメニューを見て言いました。
「今日も美味しそうね」
「ええ、そうよね」
 恵梨香がナターシャの言葉に頷きます。
「お粥ね」
「中華風のね」
「それとね」
 お粥だけでなく、でした。
「焼豚とザーサイ」
「その二つもね」
「美味しそうね」
「朝のお粥はね」
 それこそと言うのでした。
「最高のご馳走よ」
「ナターシャもそう思うのね」
「ええ」
 微笑んで、です。ナターシャは恵梨香に答えました。
「御飯のお粥もオートミールもね」
「大麦のお粥ね」
「ミルクを入れたね」
 それだというのです。
「そのお粥もね」
「あれも美味しいわね」
「そう、だからね」
「オートミールもいいのね」
「朝に食べると特にね」
 それこそというのです。
「美味しいわね」
「朝にそうしたものは」
 恵梨香も言います。
「別格なのよね」
「だからね」
「今朝もなのね」
「とても嬉しいわ」
「私も朝のお粥は大好きよ」
 オズマも言ってきました。
「お昼や夜もいいけれど」
「朝は、ですね」
「一番ですね」
「その時間によって味が違うわ」
 それこそというのです。
「お料理の中にはそうしたものがあって」
「お粥はですね」
「朝ね」
「朝に一番美味しい」
「そういうものだと思うわ」
 こう恵梨香達にお話するのでした。
「お米のお粥もオートミールもね」
「どちらもですね」
「姫様実際によく朝はお粥でしょ」
 ジュリアも恵梨香達にお話します。
「こうしたお粥やオートミールね」
「はい、確かに」
「言われてみればそうですね」
 恵梨香とナターシャはジュリアの言葉にも頷きました。
「姫様朝はよくお粥ですね」
「お粥を召し上がられていますね」
「それとフレークね」
 オズマはこちらもと言うのでした。
「最近はあれに牛乳をかけて食べるのも好きよ」
「ですね、確かに」
「姫様フレークもお好きですね」
「何かそうしたのもですよね」
「朝にはいいですね」
「朝は水分も欲しくなるから」
 寝ている間に汗もかくからです、それで水分も欲しくなるのです。
「そのこともあってね」
「起き抜けはどうしても食欲がなくて」
「さらりとしたものを食べたいですし」
「それに加えて水分も欲しくなるから」
「お粥やフレークがいいんですね」
「そうよ、それで朝は食欲がないっていってね」
 ここで注意する様に言ったオズマでした。
「何も食べないのは駄目よ」
「朝食を抜くことは」
「止めた方がいいですね」
「それは駄目よ」
 絶対にという言葉でした。
「朝、いえ三食ともね」
「絶対にですね」
「食べないといけないんですね」
「食事を抜いたら充分に動けないから」
 だからというのです。
「食べないと駄目なのよ」
「朝もそしてお昼と夜も」
「絶対にですね」
「そうしないとね」
「わかりました、それじゃあ」
「今朝も食べます」
 二人はオズマの言葉に笑顔で頷いてお粥を食べるのでした、勿論他の皆も同じです。そしてつぎはぎ娘と木挽の馬はです。
 皆が食べるのを見ています、つぎはぎ娘はそうしつつ自分の隣にいる馬にこんなことを言ったのでした。
「ねえ、今朝もね」
「皆いい顔をしてるね」
「美味しいものを食べる時は」
「うん、皆そうなるね」
「いい顔になってるね」
「そしてその皆の顔を見てね」
「あたし達も笑顔になるね」
 こう馬に言うのでした。
「自然と」
「僕達は何も食べないけれど」
 それでもとです、馬も応えます。
「その笑顔を食べているね」
「心でね」
「それで元気になるんだね」
「そうね、それで今日はどうして遊ぶの?」
「自転車はどうじゃ」
 王様もお粥を食べています、そうしつつつぎはぎ娘に答えました。
「ツーリングじゃ」
「自転車であちこちを回るの」
「この国のな」
「そうするのね」
「そうじゃ、どうじゃ」
 また言った王様でした。
「これは」
「いいわね」
 つぎはぎ娘は王様のその言葉に頷きました。
「それも、ただあたしは自転車には乗れないわよ」
「おや、そうじゃったか」
「かかしさんもよ、だって足がふわふわしてるから」
 生地のお肌と服の下にあるのは綿です、かかしは藁が入っています。
「踏ん張ることが出来ないからね」
「それでか」
「そう、自転車には乗れないわよ」
「ではどうするかじゃな」
「それなら僕の背中に乗ればいいよ」
 ここで馬がつぎはぎ娘に言いました。
「君はね」
「いつも通りなのね」
「そうすればいいよ」
 自転車に乗れないのならというのです。
「それでいいよね」
「ええ、じゃあね」
 つぎはぎ娘も馬の誘いに乗って応えます。
「宜しくね」
「今日もね」
「自転車はかなりあるから」
 王子が皆にお話します。
「皆乗られるよ」
「一人一台ずつですね」
「あるよ」
 王子はカルロスの質問にも笑顔で答えました。
「だから安心してね」
「はい、わかりました」
「それとね」
「それと?」
「君達の世界の自転車はどんな感じかな」
「どんなって?」
「うん、オズの国の自転車と違うところはあるかな」
 王子はカルロス達に尋ねるのでした。
「果たして」
「ううん、そう言われましても」 
 カルロスは王子に言われてです、難しいお顔になって言うのでした。
「ちょっと」
「観ないとわからないね」
「はい、ここの自転車を」
「それじゃあまずはね」
「どんな自転車かですね」
「観てもらうことからかな」
 こう言うのでした。
「それからだね」
「はい、じゃあまずは」
「自転車を観ようね」
 こうお話してでした、皆は宮殿の自転車置き場のところに行きました。そのうえで並んで置かれている自転車達を観てです。五人は口々に言いました。
「あっ、観たところ」
「そうだね、別にね」
「変わったところないね」
「私達の世界の自転車と同じね」
「変わることはないわ」
 こう言うのでした。
「ブレーキもあるし」
「ライトもちゃんと点いてるよ」
「ペダルやチェーンもしっかりしてるし」
「ハンドルも大丈夫だし」
「速く走れそうね」
「ここの自転車はこけないから」 
 オズマが五人にお話します。
「絶対にね」
「こけないんですか」
「ドロシーに聞いたけれど外の世界の自転車はこけるわね」
「はい、バランスを崩しますと」
「そうよね、けれどね」
「オズの国の自転車はですね」
「こけないの」
 こうお話するのでした。
「だから安心してね」
「その他のことは」
「多分変わらないわ」
 外の世界のそれと、というのです。
「速く走ることも出来るから」
「それじゃあ」
「そう、こけることもないから」
「外の世界の自転車よりずっといいですね」
「そうなるわね」
 こけない分だけです。
「だから楽しんで行きましょう」
「わかりました」
「では皆それぞれじゃ」
 まさにとです、ここで王様が皆に言いました。
「自転車を選んでな」
「そのうえで、ですね」
「出発じゃ」
「わかりました、それじゃあ」
「コースはわしが案内するからな」
「ピラミッドの時と同じですね」
「わしの国じゃ」
 今皆がいるリンキティンク王の国はというのです。
「だからわしはよく知っておる」
「それで、ですね」
「案内役をさせてもらう」
「じゃあお願いします」
「そういうことでな、ではわしはな」
 王様は傍にあった自転車を手に取りました、そして。
 他の皆もです、これはと思う自転車を取ってでした。
 それぞれ乗りました、そうして出発しました。王様は自分で言った通り先導役を務めて出発しました。ここで、です。 
 恵梨香がです、ふとこうしたことを言うのでした。
「私とナターシャはスカートですね」
「ええ、私とジュリアもね」
 オズマが恵梨香の隣に来て応えました。
「そうね」
「はい、けれど何か」
「運転しやすいっていうのね」
「普通ズボンの方が動きやすいです」
 自転車に乗る時はというのです。
「ですが」
「それでもこの自転車はね」
「普通にです」
 本当にズボンに乗っている時と同じ位にです。
「動けます」
「これもオズの国の自転車なのよ」
「こけることがなくて、ですね」
「どんな服でも軽やかに運転出来るの」
「そうなんですね」
「魔法がかけられているから」
 それで、というのです。
「そうして動けるの」
「あっ、だからですか」
「そうよ」
 オズマはにこりと笑って恵梨香に答えました。
「そうなっているの」
「そういうことですか」
「オズの国は科学と魔法があるわね」
「はい、どちらも」
「科学と魔法を合わせるとね」
「そうした凄い自転車になるんですね」 
 絶対にこけなくてしかもどんな服でも軽やかに運転出来る。
「そうなんですね」
「そうよ、じゃあね」
「はい、今日はこの魔法の自転車に乗って」
「ツーリングを楽しみましょう」
「わかりました」
「いや、今日もね」
 ここで言ったのはカルロスでした、誰よりも楽しそうに自転車に乗ってそのうえで運転しています。青空も周りも観ています。
「いい天気だね」
「そうだよね」
 ボタンも一緒です、それでカルロスに応えるのでした。
「とてもね」
「うん、ボタンもね」
「自転車に乗ってるよ」
「そうだね」
「僕歩くことが多いけれど」
 それでもというのです。
「自転車もいいね」
「そういえばオズの国で自転車は」
「あまりないよね」
「そうだよね」
 カルロスはボタンの言葉に頷いて応えました。
「皆歩く方が多いね」
「ずっとね」
「皆行き来出来る場所で暮らしてるからかな」
「そういえばそうだね」
「うん、お店とかなくてもね」
 オズの国ではです。
「すぐ傍に行くと何でも生えていたり実っていて」
「お弁当とかね」
「洗剤もね」
 そうしたものが全てです、お野菜や果物の様に。
「あるから」
「ちょっと森とかに行けばあるから」
「沢山の人が畑を耕して森とかに行ってね」
「暮らしてるね」
「そうだね」
「そう、普通にね」
 そうなるからです。
「別にね」
「自転車を使ってまでして遠くに行くこともないよね」
「そうした世界だからかな」
「だからな」
 ここでまた言った王様でした、皆の先頭を進みながら。
「オズの国の自転車は遊びの為じゃ」
「今みたいにですね」
「ツーリングやスポーツに使うものじゃ」
「それで、ですね」
「うむ、日常生活では使わぬ」
「使えてもですね」
「皆そういう目的に使うのじゃ」
 ツーリングやスポーツにというのです。
「そうしてな」
「そうなんですね」
「うむ、その通りじゃ」
「しかし遊ぶ為に使ってもな」
「それでもですね」
「よいじゃろ」
「はい、オズの国の自転車は」
 カルロスは王様のすぐ後ろに来て応えました。
「実際にこけないですしね」
「しかもわしのこの服を着ていてもじゃ」 
 王様が着る立派な服です、厚い生地のマントにゆったりとした服で頭にはいつも被っている王冠もあります。
「それでもな」
「普通に動けていますね」
「この通りな」
「そういうことですね」
「そうじゃ、ではな楽しく行くぞ」
「わかりました」
 カルロスは王様にも応えてす、楽しく進むのでした。そして十時になってティータイムで休憩してまた出発しました。
 道は左右に森がある場所に入りました、その森を観てです。
 カルロスはその赤い葉を観てです、こんなことを言いました。
「紅葉みたいだね」
「紅葉って?」
「外の世界だと葉の色が季節によって変わるんだ」
「あっ、そうなんだ」
「うん、春は緑でね」
 こうボタンにお話します。
「夏はそれが深くなって」
「その緑が」
「秋には赤くなったり黄色くなるんだ」
「ふうん、そうなんだね」
「そうなんだ、特に日本ではね」
「恵梨香のお国だと」
「そうなるんだ」
 まさにというのです。
「季節によって色が変わるんだ」
「不思議だね」
「オズの国ではそういうことはないよね」
「うん、ないよ」
 ボタンはカルロスに答えました。
「そうしたことはね」
「国によって色は違うけれどね」
「うん、季節はいつも一緒だしね」
 まさに常春です、オズの国は。だから冒険の時も実はお外で寝ても別に風邪をひくこともないのです。暖かいので。
「そうしたことはね」
「ないね」
「うん、季節によって葉の色が変わるんだね」
「そうなんだよ」
「面白いね」
 ボタンは目を輝かせて言いました。
「オズの国は国で変わるのにね」
「外の世界だとそうなんだよ」
「成程ね」
「その秋のことを思い出したんだ」
 またこうお話したカルロスでした。
「ふとね」
「それじゃあオズの国を一周したら」
「一周したら?」
「外の世界の季節を味わえるかな」
「言われてみれば」 
 そう言われてです、実際にでした。
 カルロスは納得してです、こうボタンに返しました。
「そうなるかな」
「うん、季節で葉の色が変わるんだよね」
「そうだよ」
「葉が変わるならね」
「オズの国だとね」
「国から国へ行けばいいんだよ」
 まさにそうすればというのです。
「そうなるね」
「そうだね、緑はエメラルドの都にあるし」
 緑の国です。
「黄色もあるし」
「ウィンキーにね」
「それにね」
 カルロスはさらに言いました。
「他の色もあるし」
「マンチキンとかギリキンとか」
「青とか紫とか」
「あるよね」
「そうだね、あと冬はね」
「その季節は?」
「何もなくなって枯れて」
 そしてというのです。
「雪で白くなるけれど」
「オズの国雪もあるよ」
「そうだよね」
「ほら、山を観て」
 遠くにある山脈をです、ボタンは自転車に乗りながら指差しました。赤い山々の上にはです。
 雪があります、それで白くなっています。
「あの通りね」
「うん、雪があるね」
「白い雪がね」
「あそこに行けば」
「雪があるよ」
 冬のそれがというのです。
「あそこにね」
「そうだね、確かに」
「だからね」
「オズの国にいれば」
「それだけでね」
「季節の全部、いやさらにね」
「観られるよね」
 カルロスに言うのでした。
「そうだね」
「うん、その通りだよ」
「季節があるのはいいけれど」
 ボタンはさらに言いました。
「オズの国だとね」
「最初から全部観られるから」
「僕はそれでいいよ」
「そうだね、僕もね」
「オズの国がいいよね」
「オズの国もいい、かな」
「オズの国も?」
「外の世界もよくてね」
 その季節がです。
「オズの国もね」
「どっちもなんだ」
「うん、いいね」
 こう言うのでした。
「そう思うよ」
「どっちがよりいいかじゃないんだね」
「どっちも同じ位ね」
 いいというのです。
「僕はいいと思うよ」
「成程ね」
「うん、ただね」 
 ここで森を抜けて今度は草原に出ました、そこはカドリングの草原なので奇麗な赤い臭が絨毯みたいに広がっています。
「赤い草原はないね」
「ここみたいな」
「うん、草の色は緑だから」
「いつも?」
「冬は枯れるけれど」
 冬以外の他の季節はといいますと。
「それ以外の季節はね」
「緑なんだね」
「そうなんだ」
「エメラルドの都の草原みたいかな」
「ちょっと違う緑なんだ」
「外の世界の草原の緑は」
「うん、緑は緑でも黄緑なんだ」
 そちらの緑だというのです。
「どっちかっていうとね」
「そうなんだね」
「そう、都の緑はエメラルドグリーンだね」
「草原はね」
「そこが違うんだ」
 同じ緑でもというのです。
「またね」
「そういえば緑っていっても」
「色々あるよね」
「うん、赤もね」
「このカドリングは赤の国だけれどね」
「色々な赤色があるよ」
「それで外の世界の草原はなんだ」
 そこはというのです。
「黄緑なんだ」
「そうなんだね」
「うん、エメラルドグリーンじゃなくてね」
「あそこはエメラルドの国だから」
 その都からオズの国を治めるオズマの言うことは。
「草原もエメラルドグリーンなのよ」
「まさにエメラルドの都ですね」
「そうなのよ」
 まさにというのです。
「だからね」
「その色なんですね」
「黄緑もあるけれど」
「草原はその色ですね」
「そうなの」
「わかりました、そのことも」
「オズの国は季節はないけれど」 
 またお話したオズマでした。
「国によって色が違うから」
「オズの国を回れば色々な色が見られる」
「そのことを覚えておいてね」
「わかりました」
 カルロスはオズマの言葉に微笑んで頷きました。
「じゃあすぐに色々な色を見たいなら」
「はい、一度に回ります」
「そうしてね」
「そして今はですね」
「うむ、こうしてじゃ」 
 まあt王様が言ってきました。
「わしの国を回るのじゃ」
「そうさせてもらいます」
「ではな」
「こうしてツーリングも楽しめるなんて」
 それこそとです、カルロスは言うのでした。
「オズの国はいいですね」
「だから色々な遊びが出来ることがな」
「オズの国なんですね」
「そういうことじゃ」
「わかりました、それじゃあ」
「明日も遊ぶぞ」
「そうしましょう」
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 皆でツーリングも楽しむのでした、この日は一日楽しみました。そしてそのツーリングが終わってからでした。
 宮殿に着いてです、王子は王様に笑顔で言いました。
「今日は僕も」
「ほう、この時間にじゃな」
「お風呂に入りたいですね」
「いい汗をかいたからじゃな」
「そうです」
「あれっ、今の二人は」
 ボタンは王子と王様のやり取りを聞いて言いました。
「あまりお話していないのに」
「充分お話せたわね」
「うん、そうだよね」
「どうしてかな」
「それはそれだけお互いに知っているからよ」 
 ジュリアは微笑んでボタンにお話しました。
「だからよ」
「それでなんだね」
「そう、所謂ツーカーの関係よ」
「ツーカーなんだ」
「あまりお話していなくてもね」
「わかるのよ」
 お互いに何を言いたいのかです。
「そうしたものなのよ」
「それだけ二人がなんだね」
「お互いを知っていて仲がいいのよ」
「そういうことなんだね」
「そう、僕と王様の付き合いは長いからね」
 王子も微笑んでボタンにお話します。
「だからね」
「今みたいなやり取りでもだね」
「わかるんだよ」
 そうだというのです。
「僕がロバだった頃からの付き合いだから」
「それじゃあ」
「そう、安心してね」
「わかりました」
 こう言うのでした、そして。
 ボタンは少し考えるお顔になってです、こう言いました。
「僕もそうした人がいたらいいな」
「そう思うならね」
 ジュリアはまたカルロスに言いました。
「より人とお付き合いすることよ」
「誰と?」
「誰でもいいの」
 それこそというのです。
「誰とお話してもいいからね」
「それでいいの?」
「そこからそうした人が生まれるから」
「僕がよく知っている人が」
「そしてボタンをよく知っている人がね」
「お互いになんだね」
「生まれるから」
 だからというのです。
「誰とでもお付き合いしてね」
「わかったよ」
 確かなお顔で頷いたボタンでした、そうしたお話もしたのでした。



ボタンがサウナで寝ていたって。
美姫 「どうも入ってすぐだったみたいだから良かったわ」
だよな。で、今回は自転車に乗って色々と見て回ったと。
美姫 「こけない自転車というのも凄いわね」
確かにな。ともあれ、今回も楽しそうだな。
美姫 「次回は何をするのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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