『オズのボタン=ブライト』
第八幕 迷路を進んでいって
ボタン達は迷路をさらに進んでいきます、地下一階をクリアーして一階に行くとです。そこも地下一階と同じでした。
ただ迷路を進んでいってです、オズマは言いました。
「地下一階と違うわね」
「そうですね、迷路の中身が」
恵梨香も歩いていて気付きました。
「地下一階と違う中身ですね」
「それぞれの階で形が違いますね」
神宝も歩きながら言います。
「そうした迷路なんですね」
「まあどの階も同じ構造なら」
それならと言ったジョージでした。
「簡単ですよね」
「迷路は難しいからこそ面白い」
ナターシャの言葉です。
「悩むだけに」
「だからなのね」
「この迷路はあえて難しい構造になっておってな」
王様はその迷路のことをお話します。
「地下一階と一階、二階三階でな」
「それぞれですね」
「そう、構造が違っておる」
こうジュリアにもお話します。
「大きさもな」
「だからこそ難しいんですね」
「地下一階、地上六階じゃ」
「合わせて七階ね」
つぎはぎ娘も言います。
「階もあるから余計になのね」
「難しいのじゃ」
「成程、そうした場所なんだね」
木挽の馬も進んでいます、今もジュリアと共に最後尾にいます。
「このピラミッドは」
「これだけ難しいのならな」
それこそと言う王様でした。
「やりがいがあるじゃろ」
「問題はおトイレだけれど」
ボタンは王様にこのことを尋ねました。
「どうするの?」
「この中では魔法でな」
「魔法で?」
「おトイレに行きたくなることはないのじゃ」
「そうだったんだ」
「そうじゃ、現に皆そうじゃな」
「言われてみれば」
「そして出入り口のところに大きな、部屋が何十もあるおトイレがあるからな」
「出たらそこでだね」
「トイレが出来る」
「そうなんだね」
「だから安心するのじゃ」
こうボタンに言うのでした。
「そちらもな」
「うん、安心したよ」
「ここはそうしたところじゃ」
王様はそのボタンと一緒に先頭を進みつつ言うのでした。
「存分に楽しめるところじゃ」
「それじゃあ」
「お菓子も好きなだけ食べられる」
このことについても言った王様でした。
「よい場所じゃ」
「やっぱりおトイレってするからね」
「飲んだり食べたりしておるとな」
「その心配がいらないのはいいことだね」
「そしてお昼になれば」
ここで言ったのは王子でした。
「御飯を食べよう」
「今日のお昼は何を食べようかな」
そのことを今から楽しみにしているカルロスでした。
「楽しみだね」
「そうね、何を出そうかしら」
オズマもカルロスの言葉に応えます、食べものを出すテーブル掛けを持っている人として。
「お昼は」
「ハヤシライスとか」
ふとこのお料理を思いついたカルロスでした。
「そういうのは」
「ハヤシライスね」
「日本で食べて美味しかったので」
「アメリカにも入っていてね」
「オズの国でも食べられますね」
「けれどあまりね」
ここで微妙なお顔になったオズマでした。
「食べないわね」
「カレー程は」
「カレーの方がね」
それこそというのです。
「有名ね」
「そうですね、言われてみれば」
「どういう訳か」
「そうなんですよね」
恵梨香も言うのでした。
「カレーライスと比べてハヤシライスは」
「あまり食べられないわね」
「人気がないかっていいますと」
「そうでもないわね」
「はい、美味しいですし」
それで、というのです。
「お肉もマッシュルームも玉葱もありますし」
「幾らでも食べられるわね」
「けれどカレーライスは」
「強いのよね」
「不思議な位強いわね」
「そうですよね」
「だからカレーライスと比べられると」
どうしてもなのです。
「ハヤシライスはメジャーじゃないですね」
「カレーって凄いよね」
カルロスは恵梨香にも言いました。
「もうあれだけで一つの世界だよ」
「世界なの?」
「だってカレーだけで漫画とか本にもなるじゃない」
「言われてみれば」
「だからね」
それで、というのです。
「カレーは凄いよ」
「そうなるのね」
「うん、ただね」
「ハヤシライスもよね」
「あれも美味しいからね」
「日本に来てあの食べ物もよかったよ」
「そうだよね」
ジョージと神宝も言います。
「カレーライスもよかったけれど」
「ハヤシライスにしてもね」
「食べたら身体も温まるから」
ナターシャはこのことも頭の中に入れています。
「いいのよね」
「それじゃあ今日はハヤシライスかしら」
オズマは皆の言葉を聞いてこちらに傾きました。
「それとサラダがいいわね」
「サラダもですね」
「ええ、ポテトサラダかしら」
オズマが考えているのはこのサラダです。
「それがいいかしら」
「いいですね、ポテトサラダも」
カルロスも笑顔になります。
「それじゃあ」
「お昼になったらね」
「はい、その時は」
「テーブル掛けを出すから」
「その場で、ですね」
「皆で食べましょう」
「あとお茶の時間にはだよね」
ボタンは今はビスケットを食べています、そのうえで言うことは。
「お菓子もだね」
「ボタン今お菓子食べてるけれど」
「それはそれでね」
「お茶の時間もなんだ」
「うん、食べるよ」
そうするというのです。
「その時もね」
「それだけ食べたら太るよ」
カルロスはボタンの言葉を聞いて笑って返しました。
「オズの国じゃなかったら」
「僕太ってたの」
「そこまで食べてたらね」
しかもお菓子をです。
「そうなるよ」
「そうなんだ」
「うん、オズの国では太ることがないけれどね」
体型はそのまま維持される国だからです。
「そうなるよ」
「僕が太ったらどうなるのかな」
「そのまま丸くなるよ」
「丸くなんだ」
「そして動きにくくなるよ」
「動きにくくなることは嫌だね」
ボタンにしてもというのでした。
「やっぱりね」
「そうだよね、けれどオズの国だから」
「そんな心配はいらないね」
「うん、安心してね」
「じゃあ十時になったら」
「その時もだね」
「お菓子を食べるよ」
お茶と一緒にというのです。
「そうするよ」
「うん、まあ太らないならね」
カルロスも笑って言うのでした。
「いいよ」
「それじゃあね」
こうしたお話をしているとすぐにそのお茶の時間になりました、そして。
皆で一緒にです、お茶を飲んでお菓子を食べてでした。迷路をさらに進んでいきます。一階の後は二階三階と進んで。
三階でお昼になりました、お昼はハヤシライスにポテトサラダ、デザートはアップルパイとアップルティーです。
そのお昼を食べながらです、カルロスはこうしたことを言いました。
「上に行くにつれ狭くなってきてるのは」
「ピラミッドだからだよ」
王子がカルロスに答えます、皆でテーブル掛けを囲んで座って食べています。
「徐々にね」
「上にいくにつれですね」
「狭くなっていくんだ」
「ピラミッドは四角錐だからですね」
「そう、その形だからね」
その為にというのです。
「徐々に狭くなっていっているんだ」
「上に行くにつれ」
「そうだよ」
「そうなんですね、それで狭い分」
「迷路の難しさも下がってきているね」
「そうですね」
「それがこの迷路の特徴なんだ」
王子はハヤシライスをスプーンで食べつつカルロスに微笑んでお話します。
「上に進むにつれてね」
「狭くなっていって」
「難易度も下がるんだ」
「じゃあ最初がですか」
「一番難しいんだ」
「そうした造りなんですね」
「何でもそうだね」
ここでこうも言った王子でした。
「最初が難しいね」
「はい、一番」
「最初は何も知らないしね」
「難しくなりますね」
「このピラミッドもだよ」
「最初が一番難しくて」
「徐々に慣れるせいもあって」
そのこともあってというのです。
「簡単になるんだ」
「そういうものですか」
「もう四階、五階って進むと」
「余計にですね」
「簡単になってね」
「六階はですね」
「もうすぐだよ」
クリアーするにはというのです。
「そうなるよ」
「そうですか」
「そして地下はね」
地下一階、そこはといいますと。
「最初は何でもね」
「下積みというかね」
それこそと言ったオズマでした。
「表に出るまでに努力が必要でしょ」
「はい、それまでに」
「だからこのピラミッドもね」
「地下があるんですね」
「そうなの」
「そうだったんですか」
「わしはただ楽しくのう」
王様はポテトサラダをたっぷりと食べています、サラダにはポテト以外にレーズンや玉葱に胡瓜、ソーセージも入っています。
「そう造ってもらったが」
「何かですね」
「そうした感じになっておるのう」
こうカルロスにお話するのでした。
「ここは」
「自然と」
「わしが楽しい造りにしてくれと頼んだら」
「人生みたいな」
「そうしたものにな」
まさにというのです。
「なったわ」
「不思議なことですね、そのことも」
「全くじゃな」
実際にと言った王様でした。
「このことは」
「本当にそうですね」
「自然とそうなるのかのう」
「自然とですか」
「この世の中のものはな」
オズの国でもというのです。
「世の中を表すものになる」
「このピラミッドにしても」
「それこそな」
カルロスに言うのでした。
「色々な形でな」
「そうね、世の中にあるのなら」
オズマも言います。
「何でもね」
「世の中を表すものになるんですね」
「そのそれぞれをね」
オズマはお話をしながらハヤシライスを食べています、そしてそのハヤシライスも見てそうして言うのでした。
「このハヤシライスにしても」
「世の中をですね」
「表しているのよ」
「そうなんですね」
「ええ、何かとね」
こうしたことをお話しつつお昼を食べました。
そしてお昼を食べ終えてまた歩きはじめます、すると実際に階を進むにつれて狭く簡単になっていって。
あっという間に六階まで着いて頂上に出ました、みんな無事クリアーしました。
そしてお外に出た時にです、ジュリアはピラミッドの頂上からカドリングの赤い奇麗な世界を見回しながら言いました。
「最初思っていたよりも」
「早く終わったじゃろ」
「夕方近くまでって思っていました」
「大抵の者がそう言うのじゃ」
「そうなんですか」
「もっと時間がかかると思っていたとな」
実際にというのです。
「言うのじゃ」
「そうなんですね」
「かなり難しいと思ってな」
「確かに地下や一階はかなりでしたね」
「しかしな」
「それでもですか」
「徐々にな」
上に進むにつれてというのです。
「慣れるし狭くなって簡単になってな」
「こうしてですね」
「思ったよりも早くクリアー出来るのじゃ」
「そういうものですか」
「わしも同じじゃった」
他ならぬ王様もそうだったというのです。
「これは夕方までに終わらぬとな」
「思っておられたんですね」
「そうじゃった、しかしな」
「こうしてですね」
「思ったより早く終わって」
そしてというのです。
「こうして頂上でな」
「景色も楽しめたんですね」
「そうじゃ」
満面の笑みでの言葉でした。
「こうしてな」
「そうですか」
「うむ、ではな」
さらに言った王様でした。
「ここから降りようぞ」
「ここにいてね」
ボタンが言ってきました。
「景色も観たいけれど」
「いや、それには」
カルロスがボタンに言います。
「ちょっとバランスが悪いよ」
「ここは?」
「うん、ピラミッドの頂上はね」
「狭いから」
「ブロック幾つか分しかないじゃない」
それだけの広さしかないからというのです。
「しかも風があるし」
「吹き飛ばされたりとか」
「そうしたこともあるから」
「それじゃあだね」
「うん、ここに長くいるのはよくないよ」
「じゃあ降りないと駄目だね」
「それに僕達の他に迷路を進んでいる人もいて」
このことも言ったカルロスでした。
「後から来るだろうから」
「その人の邪魔にならない様に」
「是非ね」
「もう降りるんだね」
「そうしよう」
「うむ、カルロスの言う通りじゃ」
王様もカルロスのその言葉に頷きます。
「ここはな」
「すぐにですね」
「降りるべきじゃ」
まさにというのです。
「そうしようぞ」
「わかったよ」
ボタンもこう返しました。
「それじゃあね」
「降りてな」
「それからは」
「うむ、トイレをしたい人はトイレをしてな」
そしてというのです。
「宮殿に帰るとするか」
「いえ、どうもね」
ここでこう言ったのはオズマでした。
「降りて少ししたらお茶の時間よ」
「三時か」
「だからお茶を飲みましょう」
つまり午後のティータイムを楽しもうというのです。
「そうしましょう」
「わかった、それではな」
「ええ、セットも出すわ」
ティーセットもというのです。
「お茶と一緒にね」
「それも楽しみじゃな」
「そうね、じゃあ降りましょう」
「もうお菓子もね」
ボタンはクラッカーを食べています、ですが。
「ないしね」
「全部食べたんだ」
「うん」
カルロスの少し驚いた言葉に穏やかに答えたのでした。
「そうだよ」
「凄いね」
「美味しかったから」
だからというのです。
「全部食べちゃったよ」
「いや、美味しくてもね」
「全部食べたことは」
「凄いよ」
そのこと自体がとです、カルロスはボタンに言いました。
「よく食べたね」
「しかも十時もお昼もかなり食べてるから」
ジュリアも言います。
「相当なものよ」
「どれも美味しかったから」
「それだけ食べたら」
それこそとも言うジュリアでした。
「眠くなるわよ、後で」
「太らなくても?」
「ええ、そうなるわよ」
「太ると大変だよ」
ジョージが言ってきました。
「それだけで動きにくくなるからね」
「食べ過ぎるとね」
神宝もボタンに言います。
「外の世界じゃ太るんだよね」
「それで身体にも困ったことが起きたりするから」
恵梨香はこのことを心配しています。
「太り過ぎはよくないのよね」
「寒い時はそれでもいいけれど」
ナターシャはある程度寛容みたいです、太ることについて。
「あまりだとやっぱりよくないみたいね」
「太ってると寒くないともいうけれど」
カルロスは少し首を捻ってです、ボタンに言うのでした。そうしたお話をしながらピラミッドの階段を皆で一段ずつ降りています。
「それでも太り過ぎは本当によくないね」
「王様位がいいのかしら」
つぎはぎ娘は軽やかに歩きつつ王様を見ています。
「太っているにしても」
「わし位か」
「ええ、それ位がね」
「ふむ、わしは確かに太っておるのう」
自分でも言う王様でした。
「しかしオズの国じゃからこれ以上は太らんしな」
「動きにくい?」
「快適じゃ」
王様は木挽の馬にも言いました。
「充分動けておる」
「そうだよね」
「これ以上痩せることもないが」
しかし、と言うのでした。
「充分じゃ」
「体型がそのままっていいことですよ」
カルロスはしみじみとした口調で王様にお話しました。
「太らない、痩せないことは」
「そうなるのじゃな」
「はい、ですからボタンも」
彼についてもというのです、今はその猜疑のクラッカーを食べています。
「このままならいいですね」
「そうなんだね」
「うん、ただよく食べたね今日は」
「ボタンはよく食べてるね」
王子が見てもです。
「身体は小さいけれど」
「何か食べられる時はね」
「幾らでもだね」
「僕は食べられるんだ」
「それで今日はだね」
「そんな日なんだ」
それこそ幾らでもというのです。
「だから三時もね」
「食べられるんだね」
「そうだよ」
「わかったわ、じゃあお菓子もね」
オズマも微笑んで言うのでした。
「たっぷり食べてね」
「うん、そうするよ」
「さて、 何を出そうかしら」
具体的にとです、オズマは三時のティータイムに何を出すのか考えはじめました。
「今日の三時は」
「それが一番の問題ですよね」
「そう、何にしようかしら」
オズマはカルロスにも応えて言います。
「一体ね」
「最近色々なお菓子食べてますね」
「ええ、お茶にしてもね」
「レモンティーだけじゃないですね」
アメリカでよく飲まれている紅茶です。
「烏龍茶にお抹茶に」
「ロシアンティーもね」
「コーヒーも飲みますし」
「そうなのよね」
「コーヒーですと」
ふとです、カルロスはこう言ったのでした。
「ウィンナーコーヒーもいいですね」
「ウィンナーコーヒーって何?」
その名前を聞いてです、ボタンが尋ねました。
「どんなコーヒーなの?」
「コーヒーの上に生クリームが乗っているんだ」
「生クリームなんだ」
「そう、クリープを入れないでね」
生クリームを乗せているというのです。
「そうしてるんだ」
「それで生クリームがクリープになっているんだ」
「ミルクみたいね」
「そうなんだね」
「これも美味しいよ」
実際にと答えたカルロスでした。
「普通のコーヒーもいいけれどね」
「確かに美味しそうだね」
ボタンもお話を聞いてこう思いました。
「飲みたくなったよ」
「それじゃあ今日はウィンナーコーヒーにするわ」
オズマもお話を聞いて微笑んで決定しました。
「それでお菓子もオーストリアの感じにするわね」
「オーストリアって?」
「お外の世界にある国の一つよ」
オズマはボタンにこのことから説明しました。
「そのウィンナーコーヒーの国なの」
「そうなんだ」
「ウィンナーっていうのはウィーンのっていう意味で」
オズマはさらにお話します。
「ウィーンはオーストリアの首都なのよ」
「ふうん、エメラルドの都みたいなんだねウィーンで」
ここまで聞いてこう思ったカルロスでした。
「それじゃあ」
「そうね、エメラルドの都がオズの国の首都ね」
「うん」
「それでウィーンはオーストリアの首都だから」
「一緒だよね」
「そうなるわね」
オズマも頷くことでした。
「確かに」
「エメラルドの都のコーヒーだと」
「緑でしょ」
「うん、コーヒー豆が緑だからね」
それで緑のコーヒーになるのです、エメラルドの都の色は緑なのでコーヒーも他のものと同じく緑色になっています。
「緑だよね」
「それだとね」
「エメラルドコーヒーかな」
「そうした名前になるかしら」
「それかグリーンコーヒー?」
こうも言ったボタンでした。
「エメラルドの都のコーヒーは」
「そうなるかしらね」
「あそこのコーヒーも美味しいよね」
「それじゃあ都に帰ったらどう?」
オズマは微笑んでカルロスに提案しました。
「都のコーヒーをね」
「うん、オズマがいいっていうのなら」
ボタンは微笑んでオズマに応えました。
「飲ませてね」
「それじゃあね」
「この国で遊んだ後は」
「都に来るのね」
「そうしていいよね」
「勿論よ」
にこりとしてです、応えたオズマでした。
「一緒に帰ってね」
「そしてだね」
「楽しみましょう」
こうお話してでした、そのうえで。
皆でピラミッドを降りてそうしてからです、皆でウィンナーコーヒーとオーストリアのお菓子を楽しむのでした。そのお菓子は。
甘いクッキーにフルーツ、それにです。
黒いとても甘いチョコレートケーキを食べて、ボタンは目を瞬かせて言いました。
「このとても美味しいケーキいいね」
「ザッハトルテっていうのよ」
そのボタンにです、オズマがお話します。
「このお菓子はね」
「ザッハトルテっていうんだ」
「そうよ」
「ふうん、これもだよね」
「オーストリアのお菓子でね」
「アメリカでも食べられていて」
「オズの国でもなの」
アメリカが反映されるお国だからです。
「食べられるのよ」
「じゃあオーストリアの人もアメリカに来ているんだね」
「その通りよ」
まさにというお返事でした。
「ドイツの人達と同じでね」
「オーストリアの人達もなんだ」
「アメリカに移住してきているの」
「それでザッハトルテもなんだ」
「こうしてね」
「オズの国でも食べられるんだね」
「そうなのよ」
オズマはボタンに笑顔でお話するのでした。
「アメリカならではよ」
「色々な国から人が来る国だから」
「色々なものが食べられるのよ」
「そしてそにアメリカがだね」
「オズの国に反映されるのよ」
「アメリカってもう一つのオズの国なの?」
お話を聞いて思ったボタンでした。
「それじゃあ」
「そうね、実際にね」
「そうなるよね」
「ええ、アメリカ人もオズの国のことを知ってくれる様になったわ」
そうなったのはボームさんをはじめとした王室年代記の記録者の人達のお陰です、オズの国から聞いたことを本として皆に紹介したからです。
「そのことも含めてね」
「アメリカはもう一つのオズの国だね」
「そう言っていいわ」
「確かにそうかも知れないですね」
ジョージもザッハトルテを食べつつ頷きました、アメリカ人として。
「オズの国のことは最初に伝わる国ですし」
「というかオズの国の本はね」
ナターシャが言いますに。この娘もザッハトルテを食べています。
「アメリカ人が一番読んでるでしょ」
「僕達全部読んでいないよ」
神宝はこのことを残念がるのでした、やっぱりザッハトルテを食べながら。
「ボームさんが書いてくれた本以外はね」
「そうなのよね」
恵梨香もザッハトルテを食べつつ残念そうにしています。
「私達読めないから」
「アメリカから世界に伝わるから」
カルロスもザッハトルテの甘さを楽しみながら残念なお顔になっています。
「本当にアメリカはもう一つのオズの国だよね」
「最近はね」
また言ったオズマでした。
「オズの国への扉が色々な国にもあるけれど」
「日本とかね」
ボタンも言います。
「あるけれど」
「それでも一番多いのはオズの国で」
「僕も時々行くよ」
アメリカにというのです。
「というか起きてアメリカに来ているんだ」
「扉の傍にだね」
「前と一緒でね」
八条学園にいた時と、というのです。
「その時とね」
「そうだよね、ただ」
「ただ?」
「ボタンにしても他の人にしてもオズの国から極端には出ないよね」
「オズの国の外にはだね」
「扉の近くだけでね」
出ているにしてもです。
「そこからは行かないよね」
「そうだよね」
「それはオズの国の人だからよ」
オズマがカルロスに答えました、他の四人の子達にもです。
「オズの国に自然と戻るの」
「そうした風になっているんですね」
「そうよ、オズの国に一時出られても」
「自然と戻る様にですね」
「オズの国に導かれるの」
「それじゃあオズの国に意志があるんですか?」
カルロスはここでこのことに気付きました。
「それでオズの国の人達を引き寄せるんですか」
「ええ、オズの国にも意志があるの」
「やっぱりそうですか」
「それで皆を引き寄せているのよ」
「そういうことですか」
「ええ、オズの国はね」
「だからボタンも」
「そして皆もね」
五人共というのです。
「オズの国に住んでいないけrど」
「オズの国の人になっているんですね、僕達も」
「だからよくこの国に来るの」
「そして遊んでるんですね」
「こうしてね」
「そうですか、わかりました」
カルロスはしみじみとしたお顔になあってオズマの言葉に応えました、そして他の皆もです。カルロスと同じお顔になって言うのでした。
「オズの国にも意志があって」
「人間みたいに」
「それで人を引き寄せる」
「私達にしても」
「国に意志があるなんてね」
カルロスも言うのでした。
「不思議なことだよね」
「本当にね」
「まさに不思議の国ね、オズの国は」
「外に出た人まで引き寄せるなんて」
「そんな意志があるなんて」
「そして力もあるんだね」
意志だけでなくとです、カルロスはこのことにも気付きました。
「引き寄せるだけの」
「だから僕もいつも戻って来るんだね」
ボタンも気付きました。
「寝て起きたらオズの国の外にいても」
「そうみたいだね」
「そしてオズの国に好かれてるのかな」
「オズの国は自分の国の人は皆大好きなのよ」
オズマはにこりと笑ってカルロスの今の質問にも答えました。
「誰もをね」
「じゃあ僕も」
「ここにいる皆もよ」
それこそというのです。
「大好きなのよ」
「そして引き寄せてくれるんだね」
「そうしてくれるのよ」
「僕を好いてくれるなんて」
このこと自体がとても嬉しくてです、こう言ったカルロスでした。
「こんないいことはないよ」
「そう思うわよね、ボタンも」
「誰かに好いてもらうって嬉しいことだよね」
「ええ、そうよね」
「オズの国にそうしてもらえるなんて」
それもというのです。
「本当に嬉しいよ」
「それじゃあね」
「うん、この国でずっと楽しく遊ぶよ」
「ほっほっほ、では宮殿に帰ったらじゃ」
王様はボタンの言葉を聞いて笑って言いました。
「晩御飯まで遊ぼうか」
「今度は何をして遊ぶの?」
「おはじきにごむ跳びに何でもあるぞ」
それこそtごいうのです。
「遊びならな」
「何でもだね」
「あやとりはどうじゃ」
王様はこの遊びもお話に出しました。
「これは」
「王様あやとりもするんだ」
「これもまた面白くてのう」
「けれどあやとりって女の子の遊びだよね」
ボタンは首を傾げさせて王様に尋ね返しました。
「王様女の子の遊びもするの?」
「うむ」
王様はコーヒーカップを手に胸を張って答えました。
「その通りじゃ」
「女の子の遊びは」
「女の子がするものというのじゃな」
「違うの?」
「わしは違う」
こう答えるのでした。
「遊びなら何でも遊ぶ」
「それが王様なんだね」
「左様、どんな遊びでもするのじゃ」
「だからあやとりもなんだ」
「するしのう」
さらに言葉を続けます、ボタンに対して。
「他の女の子の遊びもする」
「そして男の子も遊びもだね」
「するぞ」
「どっちもだね」
「楽しければ何でもする」
それこそともいう返事でした。
「そして楽しむのじゃ」
「ううん、本当に何でも」
「そうじゃ、何でもするぞ」
「じゃあ僕もあやとりしていいんだね」
「よいぞ」
笑っての返事でした。
「そうしてもな」
「じゃああやとりしてみるね」
「これまでしたことはなかったのか」
「だって女の子がするものと思っていたから」
あやとりはというのです。
「それでしなかったんだ」
「そうしたことってあるよね」
カルロスもコーヒーを飲みながら応えました、生クリームの下にあるコーヒーはクリームに熱が阻まれて熱いままです。それでいてコーヒーの中にクリームが幾分か溶けていてそれで黒からブラウンに色を変えています。
「男の子がするもの、女の子がするもの」
「誰が決めたか知らないけれど」
「そう決まってることあるよね」
「そうだよね」
ボタンはカルロスにも頷いて応えます。
「あやとりにしてもそうで」
「他にもね」
「あるね」
本当にというのです。
「法律で決まっていないのに」
「オズの国でそうした法律はないわ」
オズマがオズの国の国家元首として答えます。
「男の子でも女の子でもね」
「どうした遊びでもだね」
「していいのよ」
ボタンに答えるのでした。
「実際にね」
「誰かの迷惑にならなかったら」
「いいのよ」
どんな遊びをしてもいいというのです。
「そうしてね」
「そうなんだね」
「だからね」
「僕があやとりしてもいいんだね」
「王様もね」
この人もというのです。
「だからボタンがあやとりをしたいのなら」
「していいし」
「他の遊びをしていいわよ」
「じゃあそうするね」
「考えてみたらそうした人いたよ」
カルロスはここで思い出した人がいました。
「漫画のキャラクターでね」
「あの漫画ね」
応えたのは恵梨香でした。
「青いネコ型ロボットの出る」
「うん、その漫画で出てるよね」
「眼鏡をかけた男の子ね」
「あのキャラクターあやとり得意だよね」
「射撃とね」
この二つがというのです。
「凄く得意よね」
「男の子だけれどあやとり得意だよね」
「誰にも負けないわよ」
射撃とこのことについてはというのです。
「実際にね」
「だからね」
「あやとりもね」
「していいんだね」
「というか男の子の遊びとか女の子の遊びとか」
「区分をすることも」
「私も好きじゃないわ」
こうカルロスに言うのでした、そして。
王様もです、笑って言います。
「しかもわしは大人じゃぞ」
「大人でもですね」
「子供の遊びが大好きじゃ」
「そうですよね」
「うむ、大人でもじゃ」
「子供の遊びを楽しまれてるんですね」
「そうじゃ」
その通りとです、カルロスに言うのでした。
「ならば男の子も女の子もな」
「大人の王様が遊ばれているから」
「もっと凄いことじゃろ」
「はい、確かに」
「しかしわしは何と言われてもな」
「遊ばれますね」
「それが生きがいじゃからな」
オズの国きっての遊び好きな人のお言葉です。
「そうしていくぞ」
「そうなんですね」
「うむ、それではな」
「帰ってからもですね」
「遊ぶとしようぞ」
「そしてお風呂にもね」
ボタンがお風呂をお話に出しました。
「入るんだね」
「当然じゃ、お風呂で気持ちよくじゃ」
「入って身体も洗って」
「楽しく遊ぶのじゃよ」
「お風呂に入ることも遊びなんだね」
「うむ」
その通りという返事でした。
「そちらも楽しみじゃ」
「じゃあ僕もね」
ボタンは王様の言葉に応えて言いました。
「一緒にね」
「楽しむな」
「そうしてもいいよね」
「だからわしは遠慮が嫌いなのじゃ」
「そういうことだね」
「うむ、では楽しく遊ぼうぞ」
「それじゃあ僕も」
王子も言うのでした。
「明日のお風呂を楽しみにしていよう」
「王子は絶対に朝なんだね」
「うん、朝に入るのがね」
「好きなんだね」
「それが一番気持ちいいからね」
だからこそというのです。
「いつも朝に入っているんだ、眠気も取れるしね」
「朝だね」
「ボタンもどうかな」
「朝はいつも寝てるから」
早寝遅起きです、ボタンは。
「だから多分ね」
「僕が入る時間にはいつも寝ているしね」
「御免ね」
「謝る必要はないよ」
それはと返した王子でした。
「それはそれぞれだから」
「それじゃあ」
「僕は明日の朝のお風呂を楽しみにしておくよ」
「そういうことだね」
こうしたことをお話してでした、そのうえで。
皆で宮殿に帰りました、そしてです。皆で遊んで晩御飯を食べてお風呂に入って寝ました。宮殿での時間もとても楽しかったです。
迷路を楽しんだみたいだな。
美姫 「みたいね。ボタンもはぐれたりしなかったみたいだし」
結構、大きな迷路だったけれど上に行くほど狭くとは。
美姫 「まあ、ピラミッドの形だしね」
だな。皆、思い切り遊んで楽しんでいるな。
美姫 「次はどんな遊びをするのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」