『オズのボタン=ブライト』




                 第六幕  気付けば中に

 皆はお城を完成させてからです、今度は。
 お弁当を食べます、そのお弁当はといいますと。
 皆それぞれ食べています、そうしてです。
 カルロスは自分のハンバーグとパン、それにフルーツが一杯入っているお弁当を食べながらです。皆に言いました。
「頭と身体を動かした後のお弁当はね」
「うん、本当にね」
「美味しいね」
 ジョージと神宝はカルロスにそれぞれのお弁当を食べながら応えました。ジョージはハンバーガー、神宝は肉饅です。見ればナターシャは黒パンにフルーツ、そして恵梨香はお握りです。
「かなり身体も動かして」
「頭もだったから」
「もう普段のね」
「二倍は美味しいね」
「うん、こうしてね」
 カルロスはパンを食べつつ二人に笑顔で応えました。
「とても美味しいね」
「しかもお外で食べてるし」
 こう言ったのは恵梨香でした。
「余計に美味しいわ」
「そうよね、お外で食べると」
 ナターシャは恵梨香のその言葉に頷きました。
「美味しさが増すのよね」
「不思議な位ね」 
 エリカはキャットフードのお弁当です。
「美味しいわね」
「うん、そういえばエリカもだね」
 カルロスはキャットフードを食べているエリカにも声をかけます。
「楽しんでるね」
「キャットフード美味しいわ」
「皆でも食べてるし」
 オズマはマッシュポテトとステーキサンド、それに苺のお弁当です。
「そのこともあってね」
「美味しくて仕方ないですね」
「食べ過ぎてしまうわ」
 こう言ったのはジュリアです、色々な種類のサンドイッチを食べています。
「それで眠くなるかも」
「眠くなったら」 
 ボタンは幕の内弁当を食べています。
「寝ちゃいそうだよ」
「ほっほっほ、寝ればいい」
 王様は東西のオードブルが一杯入っているお弁当です。
「その時はな」
「けれどですよ」
 王子はソーセージとフライドチキンをパンと一緒に食べています。
「またこの子が何処かに行くと」
「探すことになるのう」
「けれどそれがですね」
「うむ、それもまたよい」 
 探すことがというのです。
「非常にな」
「楽しめるからですね」
「探して楽しめる」 
そのこともというのです。
「非常によい」
「ううん、寝たら」 
 その時はと言ったボタンでした。
「どうなるのかな、僕は」
「わからないからね」
「そうそう、その時はね」
「どうもね」
 ここでこう言ったのはつぎはぎ娘とガラスの猫、それに木挽の馬です。何も食べないけれど皆が見ていて楽しんでいます、今も。
「この子の場合は」
「寝たら何処に行くか」
「そこが不明なんだけれどね」
「しかしそれがよいのじゃ」
 王様はつぎはぎ娘達にもほっほっほと笑って返します。
「そこで探すのもな」
「王様は何でも楽しまれるんですね」
「遊びとしてな」
「それでなんですね」
「そうなった時も考えておるが」
「楽しみですか」
「そうじゃ、まあこの子が寝なかったならな」 
 その時はといいますと。
「そのままアスレチックじゃ」
「そのことを楽しまれますね」
「そうじゃ、しかしここのお弁当は本当に美味い」
 味も楽しんでいる王様です。
「よいぞよいぞ」
「じゃあお腹一杯食べて」
「アスレチックじゃ」
「お腹食べることはいいことにしても」
 ここで言ったのはジュリアでした。
「問題があるわ」
「満腹になったら眠くなる、ですね」
「それと身体が重くなって」
 こうカルロスに言います。
「その分ね」
「動きが鈍くなりますね」
「そこが問題よ」
「そうですね、確かに」
「だからね」
 それで、というのです。
「食べ過ぎた時はそのことに注意よ」
「わかりました」
「そして運動する前はね」
「アスレチックも運動ですからね」
「準備体操は忘れないことよ」
 このことは特に強く言うジュリアでした。
「身体をほぐして温める」
「このことはですね」
「忘れたら駄目よ」
「ううむ、すぐ遊びたいがのう」
 王様も言います。
「その前にか」
「はい、王様もです」
「準備体操はか」
「忘れないで下さいね」
「さもないとか」
「オズの国では怪我をしないですが」
 それでもというのです。
「充分に動けないので」
「必ずか」
「そうして下さい、こけたりつまずいたりしにくくもなりますし」
 身体がほぐれた分だけです。
「そこは」
「そういえばわしは元々太っておるしな」
「ですから余計にです」
「準備体操をしてか」
「お願いします」
「わかった、ではな」
「僕もなんだね」
 ボタンもジュリアに尋ねます。
「アスレチックの前は」
「そう、皆だから」
「準備体操はだね」
「忘れないでしてね」
「わかったよ」
 今回はこう答えたボタンでした。
「そうするよ」
「それじゃあね」
「僕はのんびりとしたいけれど」
 それでもです、ボタンも。
「こけたりしたくないから」
「そう思うなら余計によ」
「準備体操をだね」
「しっかりとするのよ」
「わかったよ」
 こう答えたボタンでした、そして。
 皆で食べてからです、少し時間を置いて。
 それからじっくりと準備体操をしました、それからでした。
 皆でアスレチックをします、皆ズボンなので軽やかに動きます。その中で特に速く動く人はといいますと。
 つぎはぎ娘、それにガラスの猫とエリカです。カルロスは彼等の後ろに必死につきながら尋ねたのでした。
「そこまで速く動けるのは」
「そう、綿の身体だからよ」
「猫を甘く見ないことよ」
「そういうことよ」
 こうそれぞれカルロスに答えます。
「綿が入っていて関節もないからね」
「猫はもう何処でも行けるのよ」
「身体も小さいしね」
「そんなのだったらね」
 それこそと言うカルロスでした。
「僕が敵う筈がないよ」
「いやいや、カルロスもよ」 
 ガラスの猫がカルロスに言います。
「かなりじゃない」
「一番を目指してるのに」
「それは無理よ」
「君達がいるからだね」
「走るだけなら馬に負けるけれど」
 木挽の馬にです。
「こうした障害物系ならね」
「猫のものだっていうのね」
「そうよ」
 こうカルロスに言うのでした。
「見た通りね」
「ううん、猫は確かに色々な場所を行けるからね」
「そう、お髭さえあればね」
 エリカは進みながらです、自分のお髭を誇らしげに見せています。
「猫は何処にも行けるのよ」
「お髭でその場所を察知してだね」
「そう、お髭が大丈夫って感じたところはよ」
「何処でも行けるんだったね」
「しかもこの身のこなしよ」
 実に軽やかに進んでいます、エリカもガラスの猫も。
「それこそよ」
「何処にでもだね」
「行けるのよ」
「ううん、つぎはぎ娘と君達には」
 馬は関節が動かずしかも馬の身体なので進むのに苦労しています、何とかジョージや神宝達についてきている感じです。
「僕も負けるよ」
「カルロスは五人の中で一番運動神経いいわよね」 
 つぎはぎ娘が聞いてきました。
「そうよね」
「うん、そうだよ」
「けれどあたしの身体は綿の身体でね」
「関節もないから」
「軽くて柔らかいから」
 これ以上はないまでにです。
「こうしてどんどん進めるのよ」
「そうなんだね」
「しかも疲れないから」
「そのことも大きいね」
「悪いけれど一番は貰うわよ」
「あら、一番は私よ」
「私のものよ」
 ガラスの猫とエリカも言ってきます。
「つぎはぎ娘には負けないわよ」
「このお髭にかけて一番になるわ」
「そうはいかないから」
 こう言ってです、つぎはぎ娘は。
 自分の身体を鞠みたいにです、ぽんぽんと飛ばして。
 そのうえで進んでいきます、すると。
 それを見たガラスの猫もです、全力で駆けはじめました。そのガラスの猫の横にいたエリカもなのでした。
 全力で進みます、それを見てです。
 カルロスは仰天してです、こう言いました。
「あれだけとんでもない動きや速さだと」
「ちょっと、だよね」
 王子がカルロスの横に来て言ってきました。
「いや、ちょっと以上にだね」
「はい、追いつけないです」
「そうだよね」
「人間の身体では」
「アスレチックは本来人間の身体に合わせて作られてるけれどね」
「彼女達はね」
「身体が違いますから」
 その構造がです。
「僕達よりも動きがよくて」
「それだけにね」
「僕達より速く動けるんですね」
「ああしてね」
「一番目指してたんですけれど」
「一番になるだけが楽しみじゃないよ」
 微笑んで、です。王子はカルロスに言いました。
「それだけじゃね」
「そうですか」
「そう、競技自体をすることをね」
「楽しむこともですか」
「楽しみ方だよ」
「一番になるだけじゃなくて」
「スポーツは勝つだけじゃないね」
 こうも言った王子でした。
「そうだね」
「はい、言われてみれば」
「スポーツマンシップを守って」
 このことは絶対です。
「そしてね」
「そのうえで、ですね」
「怪我をしないようにしてね」
 このことについても言う王子でした。
「身体を動かして進んでいくことを楽しむ」
「それもいいんですね」
「王様がそうなんだ」
 他ならぬリンキティンク王がというのです。
「あの人は一番には興味がなくて」
「楽しむこと自体がですね」
「そう、それ自体がね」
 まさにというのです。
「楽しむ人だから」
「そうしたこともですか」
「楽しみ方だよ」
 まさにというのです。
「本当にね」
「そうなんですね、じゃあ僕も」
「一番を取ることもいいけれど」
 それと共にというのです。
「楽しもうね」
「わかりました」
「そうした風にね」
 こう言ってです、王子自身もです。
 にこにことして進んでいます、一つ一つ進みながら。
 そうしてです、皆ででした。
 アスレチックを楽しみました、一番はといいますと。
「あたしだったわね」
「思いきり跳ねたから」
「どうにもならなかったわ」
 ガラスの猫とエリカが今度は喜びで跳ねているつぎはぎ娘に言います。
「本当にボールみたいに動いて」
「それも自分からね」
「そうして動かれるとよ」
「辛かったわ」
「こうしたことが出来るのがね」
 つぎはぎ娘の言葉です。
「あたしだからね」
「それでよね」
「出来たのよね」
「やれやれよ」
「本当にね」
「まあ今回はあたしが一番だけれど」
 少し落ち着いてです、つぎはぎ娘は言いました。
「次はわからないわね」
「次にやる遊びの時は」
「その時はなのね」
「だってあたしにも得意じゃないことはあるから」
 だからというのです。
「そうしたものをする時は一番じゃないよ」
「一番になれるものとなれないものがある、じゃな」
 王様はお顔の汗をジュリアに拭いてもらいながら言います。
「そういうことじゃな」
「そうよ、あたしは何でも出来るかっていうと」
「違うのう」
「そんな人いるの?」
 こうも言ったつぎはぎ娘でした。
「そもそも」
「まずいないわね」
 オズマがつぎはぎ娘に答えます。
「それこそね」
「オズマでもよね」
「何でも出来るのは神様よ」
「オズマも神様じゃないから」
「そう、不得意なものはあるわ」 
 オズの国の国家元首でしかも魔法も使えるこの娘でもです。
「色々とね」
「出来ないこともよね」
「あるわよ」
「そういうことよね」
「だからそうしたことはね」
「わかっておくのね」
「得意不得意はあって」
 そしてというのです。
「出来ないこともね」
「あるのね」
「そう、人はね」
「あたしも身体はこうだけれどね」
「人でしょ」
「心が人間だからだよね」
「皆人なのよ」
 綿の身体でもというのです。
「だから得意不得意もなのね」
「あるのよ、だからアスレチックが得意でも苦手でもね」
「それでもなのね」
「いいのよ、けれど一番になったことはね」
 そのこと自体はというのです。
「素直に喜んでいいわ」
「そうしたことを楽しんでもいいのね」
「楽しみ方はそれぞれだから」
「アスレチックをすること自体も一番になることも」
「どうした楽しみ方でもいいのよ」
「そういうことね」
「そう、とにかく皆もう終わったわね」
「わしが最後だったかのう」
 王様はもう汗を拭き終えて満足したお顔になっています。
「そういえば」
「ボタンはどうしました?」
 王子は王様に彼のことを尋ねました。
「王様と一緒でしたか?」
「僕はここだよ」
 ここでボタンの声がしてきました、見ればです。
 王様の横にです、ボタンがしっかりといます。汗はジュリアが手渡したタオルでしっかりと拭いています。
「最後までやったよ」
「ああ、君もいるんだね」
「そうだよ」
 こう王子にも答えるのでした。
「この通りね」
「それは何よりだよ」 
 王子もボタンに微笑んで言います、そしてでした。
 カルロスは四人にです、こう言いました。
「皆怪我ない?」
「ええ、大丈夫よ」
 まずは恵梨香がカルロスに応えます。
「こけたりしなかったから」
「そう、よかったよ」
「いや、凄くいい運動だったわ」
 ナターシャも自分の黒いタオルで汗をかいています。白いお肌から出ている汗が玉の様になっています。
「午前のお城を組み立てた時と同じだけね」
「満足したよ」
 ジョージは完走してにこにことしています。
「本当にね」
「身体を全部動かしてたから」
 神宝はアスレチックでの運動のことについて言います。
「いい運動になったよ」
「うん、アスレチックっていいよね」
 笑顔で言うカルロスでした。
「身体全体を使って運動出来るから」
「カルロスって本当にスポーツが好きね」
 ジュリアがその彼に尋ねます。
「サッカーもそうだけれど」
「はい、身体を動かすならです」
「何でもなのね」
「好きです」
 ジュリアにもこう答えます。
「実際に」
「そうよね」
「運動をして」
 そしてというのです。
「気分をすっきりさせることがなんです」
「好きで」
「いつもしてます」
「そういえばね」
 ボタンがカルロスに言います。
「五人共それぞれ個性があるよね」
「僕達はだね」
「うん、カルロスがスポーツマンで」
 まずは彼のことを言ってです。
「神宝は知識だね」
「成績は神宝が一番いいんだ」
 学校のとです、カルロスは答えました。
「学年でトップクラスなんだよ」
「ふうん、そうなんだ」
「ちなみに僕が一番悪くて」
 五人の中でとです、ボタンに笑ってです。このこともお話するのでした。
「学園の真ん中位なんだ」
「一番悪くて真ん中?」
「皆成績いいから」
 だからというのです。
「僕が一番悪いんだ」
「そうなんだね」
「カルロスそんなに成績悪くないわよ」
 恵梨香は笑って言う彼に言いました。
「別にね」
「真ん中だから」
「そう、普通位だとね」
「悪くないんだ」
「そう、普通よ」
「だといいけれど」
「それでジョージがバランスいいよね」
 ボタンは彼のことも言いました。
「知識も運動も」
「うん、ジョージはそうだね」
 カルロスはボタンの彼の指摘についてお話しました。
「どちらもね」
「そうだよね、それでナターシャがまとめ役で」
 五人のです。
「いざって時に皆を引き締めたりね」
「そうそう、ナターシャはね」
「それで恵梨香がお母さんでね、皆をフォローする」
「いざって時は恵梨香ってところはあるね」
 また答えたカルロスでした。
「実際に」
「本当に五人それぞれで」
「個性があるんだね」
「僕が見てもね」
「よく言われるね、そのことは」
「五人共国が違うし」
 オズマは彼等の出身国のことを言いました。
「そこも面白いわね」
「アメリカだけじゃないのよね」
 エリカは自分達の生まれた国を最初に出しました、ドロシーもベッツイもトロットもアメリカから来ているのですから。
「それぞれ国が違って」
「そうなんだ、僕はブラジルで」
「ジョージは私達と同じ国だけれど」
「神宝は中国でね」
「ナターシャはロシアで」
「恵梨香は日本だね」
「そこも面白いし好きな色も違って」
 そこにも個性が出ている五人です。
「それぞれよね」
「個性は大事ね」
 ガラスの猫は自分の身体を普通の猫みたいに舐めています、そうして奇麗にしています。
「ないよりある方がいいわ」
「うん、本当にね」
「ないようであるのが個性っていうね」
 馬はこうも言いました。
「皆それぞれ違うよ」
「とはいってもオズの国だと」
 カルロスはこの国にいる人達のことを言うのでした。
「皆すごい個性的だよね」
「そんなに?」
「うん、かなりね」
 またボタンに応えたカルロスでした。
「個性が強いよ」
「僕もかな」
「うん、とてもね」
「そうかな」
「だって寝ている間に何処に行くかわからないんだよ」 
 そのことがというのです。
「凄く個性的だよ」
「そうなんだね」
「うん、君もね」
「そうなんだ」
「君の個性もね」
 それこそというのです。
「相当だよ」
「そうなんだ」
「うん、僕はそう思うよ」
「何もないって思ってたら」
「あるんだよ」
「さて、汗をかいたからのう」
 ここで、でした。王様が言ってきました。
「何か飲むか」
「ジュースですか?」
「いやいや、もうそろそろ三時じゃな」
 王子に応えて言うのでした。
「だからな」
「三時となりますと」
「おやつじゃ」
 まさにその時間だというのです。
「だからな」
「お茶ですか」
「それかコーヒーじゃ」
「ティータイムですね」
「それを楽しむか」
「それじゃあです」
 ジュリアは王様に応えて言うのでした。
「今からテーブル掛け出しますね」
「あの魔法の道具があるのか」
「私が持ってるの」
 すぐにです、オズマが応えてきました。
「いつも持って来ているから」
「そうなのか」
「何かあった時に備えてね」
「あれがあれば何でも食べられるからじゃな」
「お外に出る時は持って来ているの」
「そうなのか」
「そう、じゃあ今からテーブル掛けを広げるから」
 そうしてというのです。
「それでね」
「ティーセットを出すのじゃな」
「これからね」
「では早速じゃな」
 王様はオズマの言葉を聞いて笑顔で応えました。
「これから皆で楽しもうぞ」
「コーヒーも紅茶も出して」
 そこは皆がそれぞれ飲みたいものを飲むからです、どちらも出して用意します。
 そしてです、それと一緒にでした。
「ティーセットもね」
「ティーセットは何を出すのかのう」
「そうね、リーフパイにクッキーに」
 まずは二つ出したオズマでした。
「上がクッキーで真ん中がパイでね」
「そして下のお皿には何かのう」
「フルーツね」
 それだというのでした。
「苺にアップル、オレンジにパイナップルね」
「おお、よいのう」
「じゃあ今から出すから」
「ではじゃな」
「皆で楽しみましょう」
「運動をして汗をかいたからな」
「ティータイムよ」
 そちらの時間になりました、そして実際にです。
 オズマはすぐにそのテーブル掛けを出してでした。
 皆で紅茶やコーヒーと一緒に甘いものも楽しみます、見れば女の子達が紅茶で男の子達はコーヒーを飲んでいます。
 その状況を見てです、つぎはぎ娘はこんなことを言いました。
「それぞれ違うね、飲んでるのが」
「ええ、そうね」
 恵梨香はその紅茶を手につぎはぎ娘に応えました。
「私達は紅茶で」
「男の子はコーヒーね、今回は」
「何かそんな気分なんだ」
 そのコーヒーを手にしているジョージの言葉です。
「今は」
「紅茶もいいけれど」
 神宝もカップの中にはコーヒーがあります。
「コーヒーの方が飲みたくて」
「私は紅茶よ」
 ナターシャは実際にその手に紅茶があります。
「それにしたの」
「不思議なこともあるものね」
 つぎはぎ娘は四人の言葉を聞いてあらためて言いました。
「性別で飲むものが完全に別れるなんて」
「そういう時もあるってことだね」
 王子もコーヒーです。
「まあ好きな時にね」
「好きなものを飲むね」
「そうすればいいしね」
「それもそうね、じゃああたしはいつも通りね」
 飲むことも食べることもしないけれど、です。
「見て楽しむね」
「じゃあね」
「皆飲んで食べてね」
 ガラスの猫も馬も言います、こうしてでした。
 皆で三時のティーセットを楽しみました、それが終わってです。 
 王様は皆にです、明るく言いました。
「では宮殿に帰ろうぞ」
「はい、そしてですね」
「宮殿に帰ってな」
「晩御飯を食べてお風呂に入って」
「夜も寝るまで遊ぼうぞ」
 宮殿の中で出来る遊びもというのです。
「是非な」
「それじゃあ」
 こうお話してでした、皆で出発しようと思っていたら。
 不意にです、カルロスは皆を見回して言いました。
「あっ、また」
「むっ、どうしたのじゃ?」
「ボタンがいないです」
 こう王様に答えるのでした。
「また」
「そういえばそうじゃな」
「ひょっとして食べ終えて」
「運動してティーセットでお腹が膨れてじゃな」
「寝ちゃって、ですね」
「何処かに行ったのじゃな」
「そうなったみたいですね」
 カルロスはやれやれといったお顔になっています。
「コーヒー飲んだ後なのに」
「コーヒーを飲んでも眠くなる時はな」
「なるんですね」
「お茶も同じじゃ」
「だからですか」
「うむ、あの子も寝たのじゃ」
 何をしても眠くなる時は眠くなるというのです。
「そうなったのじゃ」
「今回は何処に行ったのかな」
「さて、それが問題じゃな」
「本当に何処に行くかわからないですから」
「ランダムじゃからな」
「完全に」
「ううんと、私の勘ではね」
 ここで言って来たのはガラスの猫でした。
「猫の勘よ」
「それだと?」
「あの子は今回は近くにいるよ」
「そうなんだ」
「ええ、すぐ傍にね」
「そうね、何かね」
 エリカも言います。
「お髭があの子の感覚を感じ取ってるわ」
「それじゃあ」
 そう聞いてでした、カルロスは。
 自分達がいる自然公園の仲を見回してです、こう言ったのでした。
「ここにいるんだね」
「ええ、間違いなくね」
「私達のすぐ傍にいるわね」
「そのことはいいけれど」
 それでもと言うのでした。
「問題は何処にいるかだね」
「森の中かな」
 王子は森の中を見ています。
「そこかな」
「可能性高いですね」
「うん、森の中で寝ていたら」
「簡単には見えないですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「あそこにいるのかな」
「じゃあ森の中を探してみます?」
「そうだね、あそこをね」
「それじゃあ」
「他にも色々探すとしよう」
 王様はご自身が言った通りに楽しい感じでいます、ボタンを探すにあたっても。
「この自然公園のあちこちをな」
「それじゃあ」
「うむ、探そうぞ」
 うきうきとしてです、王様はです。 
 自ら率先してボタンを探しにかかります、しかし。
 ボタンは森の中にはいませんでした、それでオズマも言うのでした。
「森の中にはいなかったわね」
「はい、そうでしたね」
 カルロスは首を少し傾げさせてオズマに応えました。
「残念なことに」
「それじゃあね」
「何処でしょうか」
「大体察しはつくわ」
 オズマは微笑んでカルロスに答えました。
「森にいないならね」
「それは何処ですか?」
「あそこよ」
 こう言って指祭sた場所はです。
 お城でした、午前に皆が作ったブロックのお城です。
「あそこにいるわ」
「ああ、お城ですか」
「そう、あの中にいるわ」
「そういえば」
 言われてです、カルロスも頷きます。
「あの中は」
「そう、城壁に囲まれているし」
 ブロックのそれにです。
「しかもね」
「はい、お城の中も」
「見えないから」
「だからですね」
「森の中にいないのならね」
「あの中ですね」
「そうだと思うわ」
 こう予想を述べるのでした。
「あの子が今いる場所はね」
「それじゃあですね」
「今から行きましょう」
 お城の中にというのです、そしてでした。
 実際にです、皆でその橋を上げてです。門を潜ってまずは城壁とお城の間を探してからです。
 お城の中に入るとです、ボタンが気持ちよさそうに寝ていました。つぎはぎ娘はその彼を見て皆に言いました。
「ぐっすりね」
「うん、寝てるね」
「やっぱり身体動かしてお腹一杯食べたからね」
「眠くなったんだね」
「そうみたいね」
 こうカルロスにも言うのでした。
「それで寝ちゃってなのよ」
「ここに移ってたんだね」
「そういうことよ」
「ほら、近くにいたでしょ」
「実際にね」
 ガラスの猫とエリカも言います。
「猫の勘は当たるのよ」
「お髭は嘘を吐かないわ」
「だからね」
「ちゃんとここにいるのよ」
「うん、勘は凄いね」
 カルロスも腕を組んで考えるお顔で応えます。
「まさかね」
「本当に傍にいたなんて」
「思わなかったっていうのね」
「いや、ある程度は思っていたけれど」
 それでもというのです。
「本当に傍にいたからね」
「人間の勘なんて比べものにならないのよ」
 誇らしげに胸を張ってです、ガラスの猫はカルロスに言うのでした。
「猫の勘はね」
「鋭いんだね」
「その通りよ」
「猫のお髭はね」
 エリカはそのお髭をこれみよがしに見せています。
「レーダーなのよ」
「そこまで凄いんだね」
「そういうことよ」
「そうなんだね、だから」
「わかったのよ」
「そういうことだね、じゃあね」
 カルロスはあらためて言いました。
「ボタンを起こして」
「宮殿まで帰ろうね」
 馬が応えます。
「これからね」
「うん、そうしよう」
「さて、ボタンよいか?」
 王様がボタンに声をかけます。
「起きて帰るぞ」
「あれっ、その声は」
「わしじゃよ」
 寝ぼけ眼をこすりつつ起き上がるボタンにまた言いました。
「御前さんはまた寝ておったのじゃ」
「そうだったんだ」
「左様、では帰ろうぞ」
「宮殿までだね」
「そして夜も楽しもうぞ」
「それじゃあね」
「それでだけれど」
 王子がカルロスに尋ねました。
「どうしてここにいたのかは」
「わかんなーーい」
 いつも通りの返事でした。
「皆に起こしてもらったらね」
「それでだね」
「ここにいたんだ」
「そこはいつも通りだね」
「うん、とにかくだよね」
「宮殿に帰ろう」
 王子もこう言うのでした。
「これからね」
「わかったよ、じゃあね」
 こうしてでした、ボタンを見つけた皆はです。宮殿にまで帰ることにしました。そしてです。
 そのうえで、皆は帰る中ででした。
 夕陽を見てです、王様はここでもにこにことして言いました。
「奇麗じゃな」
「この夕陽もですね」
「うむ、実にな」
「王様って夕陽もですか」
「好きじゃ」
 カルロスに笑顔で答えるのでした。
「見るのがな」
「朝やお昼のお日様もですね」
「好きでな」
「それで、ですね」
「夕陽もじゃ」
 今皆で見ているそれもというのです。
「好きなのじゃ、そしてお月様もな」
「お好きですか」
「そうじゃ、太陽は時間によって変わるな」
「はい、場所も」
「それを見ているのも楽しい」
 こう言うのでした。
「お月様は日によって形が変わるが」
「それもですね」
「見ていて楽しいからのう」
「だからそちらもですね」
「好きじゃ」
「王様は月見も好きだからね」
 王子もお話します。
「満月も半月も三日月もね」
「どれもですね」
「そうなんだ」
「そしてこの夕陽も見て」
「この通り楽しんでおる」
 実際にと言う王様でした。
「強い日差しもいいがこうした日差しもよいな」
「夕陽を見てると」
 ここで言ったのはボタンです。
「何かね」
「どうかしたのかな」
「うん、優しい気持ちになるね」
 こうカルロスに言うのでした。
「何かね」
「ボタンはそうなんだ」
「そうだけれど」
「どうしてかな、それは」
「わかんなーーい」
「それはお月様wを見てもかしら」
 ここでオズマがカルロスに尋ねました。
「それは」
「うん、そうだよ」
「それならわかったわ」
「どういうことですか?」
 カルロスはすぐにオズマに尋ねました。
「ボタンが夕陽やお月様を見て優しい気持ちになるのは」
「どちらも優しい光だからよ」
「その光を見てですか」
「優しい気持ちになるの」
「だからですか」
「そう、朝日で目覚めてね」
 朝日のこともお話するオズマでした。
「お昼の光で元気になって」
「夕陽で優しい気持ちになって」
「お月様でさらにそうなってね」
 そのうえでというのです。
「そのうえで寝るものなのよ」
「それが人なんですね」
「そうなの、だからボタンもね」
「夕陽で優しい気持ちになるんですね」
「そうだと思うわ」
「そうですか、わかりました」
 カルロスもここまで聞いて頷きました。
「ボタンがそうで」
「私達もそうだと思うわ」
「照らされる光によって違うんですね」
「そうなってくるのよ」
「光ってそうした意味でも大事なんですね」
「そうよね」
「さて、宮殿に帰ったらじゃ」
 また言って来た王様でした。
「皆で美味しいものを食べてお風呂に入ろうぞ」
「それで、ですよね」
「ぐっすり寝て明日また楽しく過ごすのじゃ」
 こう言うのでした、ボタンも王様も夕陽を見ても優しい楽しい気持ちなのでした。



昼食の後はアスレチックで楽しんだみたいだな。
美姫 「今回はのんびりと過ぎていくわね」
かと思ったら、気が付けばまたボタンが居なくなってたり。
美姫 「今回は近くだったし、すぐに見つかったけれどね」
本人は特に気にしていないみたいだけれど。
美姫 「楽しそうで何よりだわ」
うんうん。次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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