『オズのボタン=ブライト』
第一幕 いつも急に出て来る子
恵梨香達五人はこの日は自分達の学校にいました、そして五人でこんなことをお話していました。
「またオズの国に行きたいわね」
「うん、そうだね」
カルロスはナターシャの言葉に頷きました、五人は今は恵梨香のクラスにいてそのうえで楽しくお話しています。
「最近行ってないしね」
「だからね」
「もうそろそろだよね」
「行きたいわね」
また言ったナターシャでした。
「皆でね」
「じゃあ今日行く?」
早速と言って来たのはジョージでした。
「皆で」
「そうだね、思い立ったがだからね」
神宝はジョージのその言葉に同意して頷きました。
「今日の放課後時計台まで言ってね」
「それでいつも通りよね」
最後に言ったのは恵梨香でした。
「オズの国に行くのね」
「そうね」
ここまでお話してでした、ナターシャは。
考えるお顔になってです、皆に言いました。
「今日の放課後行きましょう」
「早速だね、さて今回はね」
カルロスはもうオズの国に行った時のことを考えています。
「どんなことになるかな」
「それは言ってみないとね」
恵梨香がカルロスのその言葉に答えました。
「わからないわね」
「結局はそうなんだよね」
「ええ、オズの国はいつも何かが起こるけれど」
「どんなことが起こるかは」
「わからないから」
何時何が起こるかわからない、それもまたオズの国です。
だからです、恵梨香はこうカルロスに言うのでした。
「そのこともね」
「楽しみにしてだね」
「行きましょう、今日の放課後に」
「それじゃあね」
「オズマ姫お元気かな」
神宝はこの人の名前を出しました。
「ドロシーさんも」
「元気に決まってるじゃない」
その神宝にです、ジョージは笑って返しました。
「だってオズの国だから」
「皆何時までも若くて死なない」
「そうした国だからね」
怪我も病気もすることがないからです。
「大丈夫だよ」
「そうだね」
「けれど問題はね」
「一体誰に会えるか」
「そして何が起こるかだね」
このことが問題だというのです。
「恵梨香の言う通り楽しみにしていよう」
「そうだね、じゃあ今日の放課後」
「皆で時計台にまで行こう」
そこにある渦の扉からです、オズの国に入ろうというのです。
そして実際にでした、放課後にでした。
五人は皆でその時計台に行ってでした、オズの国行こうとしました。ですが。
カルロスはふとです、時計台のすぐ傍の茂みのところにです。
白い長ズボンと黒い靴を着けた足を見ました、それで。
首を傾げさせてです、皆にその足を指差して言いました。
「この足ってまさか」
「ボタン=ブライト?」
「ひょっとして」
「ええと、まさかと思うけれど」
「オズの国から来たのかしら」
「ううん、まさかと思うけれど」
首を傾げさせつつ言うカルロスでした。
「ボタンかな」
「それならね」
恵梨香もその足を見ています、じっと見たままカルロスに言います。
「声をかけてみましょう」
「それでだね」
「ええ、起きてもらって」
そしてというのです。
「お話を聞きましょう」
「それじゃあね、ねえ」
恵梨香の提案を聞いてです、カルロスは。
すぐにです、足の主に声をかけました。
「起きてくれるかな」
「何?」
返事がすぐに返ってきました。
「誰か僕を読んだの?」
「この声は」
すぐにです、神宝はその声で気付きました。
「間違いないね」
「うん、ボタンだね」
ジョージにもわかりました。
「彼の声だよ」
「そうだよ、僕はね」
声の主は起き上がってでした、指で目をこすりながら出てきました。白い水兵さんの服を着た男の子が。
男の子はあらためてです、五人に言いました。
「ボタン=ブライトだよ」
「久しぶりだね」
カルロスがボタンに応えます。
「元気そうだね、君も」
「あっ、君達だったんだ」
ボタンは五人を見て頷きました。
「誰かなって思ったけれど」
「僕達これからオズの国にいるけれど」
「あれっ、ここオズの国じゃないの?」
「うん、僕達の世界だよ」
「そうなんだ」
「どうして僕達の世界にいるの?」
カルロスはボタンにです、あらためて尋ねました。
「僕達これからオズの国に行くつもりだけれど」
「わかんなーーーい」
これがボタンの返事でした。
「寝ていて起きたらね」
「ここにいたんだ」
「そうなんだ」
「いつもこうなのよね、この子」
ナターシャは首を傾げさせています、ただお顔はいつもの通りクールなポーカーフェイスのままです。
「寝ていて起きたら」
「思わぬところにいるんだよね」
「毎回ね」
ジョージと神宝も言います。
「それで今回もだね」
「しかも外の世界に来ているんだ」
「まあかかしさん達も」
恵梨香は最初にかかしさん達を見たことを思い出しています。
「オズの国に出ていたから」
「扉から出てね」
カルロスが恵梨香に応えます。
「そうだったね」
「だったらこの子もね」
「寝ているうちになんだ」
「オズの国をね」
「出ていたんだ」
「そうじゃないかしら」
「夢遊病?」
ふとです、神宝はこう言いました。
「ボタンは」
「だから寝ていてもだね」
「うん、移動してるのかな」
「そうなのかな」
ジョージはボタンの言葉に考え込みました、
「確かにあるかな」
「そうじゃないとね」
「いつも寝ている間に移動しているみたいだからね」
「だからね」
「そうかも知れないね」
「そうだよね」
「まあこのことはね」
ボタンが夢遊病かどうか、カルロスが言うには。
「ボタン本人もわからないかな」
「うん、僕もね」
そのボタンの言葉です。
「いつも気付いたらだよ」
「その場にいるよね」
「そうなんだ」
「だからだね」
「いつもわからからないんだ」
そうだというのです。
「どうしてその場にいるのか」
「そうだね」
「だから僕がわからないのはね」
いつも聞かれてそう答えるには理由があったのです。
「そうしたことなんだ」
「寝ているとね」
「その間はね」
ずっとというのです。
「わからないよ」
「そうなるんだね」
「うん、とにかくね」
「君は、だよね」
「起きている時のことはわかるけれど」
「寝ている間のことはわからないね」
「そういうことだよ」
こうお話するのでした。
「だから僕はどうして今自分がここにいるのかはね」
「わからないんだね」
「そうなんだ」
「そのことはわかったよ、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「君もオズの国にね」
こうボタンに言うのでした。
「行く?君の場合は戻るになるね」
「そうだね、気付いたらここにいたから」
「一緒に行く?僕達と」
「僕もオズの国好きだよ」
オズの国に生まれ育っているだけにです、ボタンはオズの国の全てが好きなのです。それこそあらゆるものも場所もです。
「だからね」
「戻るね」
「そうするよ、じゃあ」
「うん、今からね」
「君達と一緒にだね」
「行こう、扉までね」
オズの国に行くその渦の扉にです。
こうお話してでした、そのうえで。
皆はボタンと一緒にでした、扉のところまで行ってでした。扉をくぐって。
オズの国に到着しました、ですがその場所は。
皆がはじめて来た場所でした、砂浜で奇麗なマリンブルーの海が見えます。
その海を見てです、カルロスは皆に言いました。
「とりあえず端っこみたいだね」
「ええ、オズの国のね」
ナターシャがカルロスの言葉に応えます。
「そうね」
「オズの大陸の」
「ただ問題は」
「うん、ここが何処がだね」
「何処なのかな」
「赤い草が生えているわ」
恵梨香はジョージの服と同じ色の草をです、砂浜から離れた場所にある草原に気付きました。そこを指差して皆に言うのでした。
「ということはね」
「ここはカドリングだね」
「そうだね」
ジョージと神宝も応えます。
「じゃあカドリングの端」
「その海だね」
「ひょっとして」
ここでこう行ったカルロスでした。
「カドリングの南の海っていうと」
「どうかしたの?」
「リンキティンクさんの国?」
こう恵梨香に言うのでした。
「まさか」
「ああ、あの面白い人ね」
「うん、あの人の国かな」
「そういえばリンキティンクさんのお国はね」
「カドリングの国にあるね」
「今はね、だからなのね」
「そう思ったけれどどうかな」
あらためて言ったカルロスでした。
「ここは」
「あの、ボタン」
ナターシャは一緒にオズの国に入った彼に尋ねることにしました。
「貴方はわかるかしら・・・・・・あら」
「いないね」
カルロスはさっきまで自分達と一緒にいた彼がです。
今はいないことを知ってです、こう言いました。
「また」
「今回も急にいなくなったわね」
「そうだね」
「いつものことだけれど」
それでもと言うナターシャでした。
「今回もこうだと」
「困るね」
「実際にお話を聞こうと思っていたのに」
それがというのです。
「いないから」
「困ったことになったね」
「どうしようかしら」
「少なくとも海には出られないから」
船がないからです、神宝が言うには。
「大陸の内側に行こう」
「そもそも海岸は死の砂漠だから」
ジョージはその目の前の砂浜の方を見ています、そこがまさになのです。
「行けないしね、だからね」
「うん、内側に行かないとね」
「仕方ないね」
「じゃあ内側に行こう」
「内側に行けば」
それで、と言うのでした。
「村もあるだろうしね」
「村でお話を聞いて」
「そうしてね」
ここがオズの国の何処なのかを尋ねることにしました。
そしてです、五人はです。
まずは大陸の内側に向かいました、するとです。
すぐにです、ボタンがでした。
皆のところに来てです、こう言ってきました。
「あれっ、皆そこにいたんだ」
「あれっ、いたんだ」
「うん、気付いたらね」
ボタンは自分に声をかけたカルロスに応えました。
「この草原にいたんだ」
「そうだったんだ」
「そう、それでね」
「僕達がここに来たらだったんだ」
「会ったんだ」
そうだったというのです。
「何処に行ったのかって思ったよ」
「僕もそう思ったよ」
カルロスもこうボタンに返しました。
「君が何処に行ったのかってね」
「そうだったんだ」
「心配はしなかったけれど」
それでもというのです。
「困ったよ」
「困ったの?僕と離れて」
「だってここが何処か聞こうと思ったからね」
「御免ね、別の場所に出て」
「それは君の責任じゃないから謝らなくていいよ」
それは構わないというのです。
「別にね、ただね」
「ここが何処かだね」
「わかるかな」
「わかんなーーい」
これがボタンの返事でした。
「本当に何処なのかな」
「ボタンもわからないんだ」
「そうなんだ」
「それは仕方ないね」
カルロスはこう言ってです、皆もです。
「ボタンが知らないのなら」
「僕達もね」
「わからないから」
「どうしようもないわね」
「そうだよね、ボタンはオズの国の人だし」
カルロスは皆にもこのことを言います。
「それでわからないのならね」
「来た記憶はあるよ」
ボタンはこうは言いました。
「ここにもね」
「カドリングだよね」
どの国かは尋ねたカルロスでした。
「このことは間違いないよね」
「うん、僕もそのことはわかるよ」
今度は比較的はっきりと答えたカルロスでした。
「草が赤いからね」
「赤hアカドリングの色だからね」
「そのことは街ないないよ」
「そうだよね」
「けれどね」
それでもというのです。
「それ以上のことはね」
「わからないんだね」
「海辺ということしかね」
「ううん、何処jなのかな一体」
「だからリンキティンクさんの国じゃないかしら」
恵梨香がこうカルロスに言いました。
「やっぱり」
「そうかな」
「カドリングの国で海辺だから」
「そうなのかな」
「まずは村を探そう」
これが神宝の提案でした。
「それからだよ」
「そうだね、村で何処か聞くといいね」
ジョージは神宝のその提案に頷きました。
「じゃあまずは村を探そう」
「民家でもいいわね」
ナターシャは二人の言葉を聞いてこう言いました。
「とにかく人に聞きましょう」
「よし、じゃあまずは村なり民家なりを探そう」
カルロスは皆の意見をまとめて言いました。
「これからね」
「そうだね、それじゃあね」
ボタンがカルロスのその言葉に頷いてでした。
そしてです、彼も皆に言います。
「六人で探そう」
「皆はぐれないでいこう」
カルロスはボタンを見ていました、何しろこの子はしょっちゅうはぐれて何処かに行ってしまう子だからです。
「じゃあ村なり民家を探そう」
「これからね」
ボタンが応えてでした、そのうえで。
六人で海辺の辺りを探しました、するとです。
近くに灯台がありました、そしてその上にです。
赤いカドリングの服を着たおじさんがいました、カルロスはその人を見付けて皆に言いました。
「あの人に聞こう」
「そうだね、まずはね」
「あの灯台まで行ってね」
「あの人にここがどの国か聞く」
「それがいいわね」
ジョージ、神宝、ナターシャ、恵梨香が応えてです。
そしてです、皆でなのでした。
灯台に向かいます、そこで。
ボタンは皆にです、こんなことを言いました。
「灯台は夜に光を出すんだよね」
「ええ、そうよ」
恵梨香がすぐにです、ボタンに答えました。
「そして船の案内をするの」
「そうだよね」
「灯台は海の道標よ」
「だから必要な場所なんだね」
「そうなの」
「いい場所なんだね、灯台って」
「若し夜に灯台がないと」
その場合はどうなるかもです、恵梨香はボタンにお話しました。
「船は迷ってしまうの」
「そうしたいい場所なんだね」
「昼は周りが見えるけれどね」
「夜は真っ暗になるからね」
「何処が何処なのかわからなくなるわね」
「見えないとね」
「けれど灯台は光を照らして」
そうしてというのです。
「そこが何処か船に教えてくれるの」
「そして船は自分達の場所を知ってだね」
「航海出来るのよ」
「だから灯台があるんだね」
「そうなの」
恵梨香は微笑んでボタンにお話しました。
「だからオズの国にも灯台があるのよ」
「そうなんだね、そういえば」
今度はジョージが言います。
「僕達オズの国の海には出たことないね」
「海を見たこともだよ」
神宝はそのジョージにお話します。
「これまでなかったよ」
「そうだね、オズの国の海にはね」
「川や湖は何度も見ても」
「海はなかったね」
「そうだったよ」
「いや、そう考えたら」
「今度のことはね」
こうしてオズの海を見ていることはというのです。
「はじめてのことだよね」
「そうだよね」
「いや、オズの国の海もね」
「いいものだよね」
「奇麗に青く澄んでいて」
「何時までも見ていたいよね」
「そうね、神戸の海も素敵だけれど」
ナターシャも微笑んでその海を見ています。
「この海を見ていると飽きないわ」
「ボタンも海は好きかな」
カルロスは微笑んでボタンに尋ねました。
「水兵さんの服だしね」
「好きだよ、けれどね」
「けれど?」
「確かに僕は水兵さんの服を着ているけれど」
それでもというのです。
「海に出たことはあまりないんだ」
「そうなんだね」
「オズの国のあちこちを回ってるけれど」
「それでも海は」
「あまりないんだ」
「そうなんだね」
「リンキティンクさんの国にも何度か来たことがあって確かに海に出たこともあるけれど」
その数自体はあまり多くないというのです。
「そうなんだよ」
「そうなんだね」
「行くのは川や湖の方が多いかな」
「水兵さんは海だけれどね」
「それでもだよ」
「成程ね」
「あと何かね」
こうも言ったボタンでした。
「僕この服好きだけれどボームさんに言われたことがあるんだ」
「ボームさんに何て言われたのかな」
「この服は兵隊さんの服だよね」
「水兵さんのね」
「下士官や将校は着ないんだってね」
「あっ、そういえば」
カルロスも言われて気付きました。
「その服は兵隊さんだけだね」
「着ているのはね」
「その帽子も将校さんは被っていないよ」
「だからあまり偉い人の服じゃないんだって」
「実際にそうみたいだね」
「そうなんだね」
「まあ僕は偉くなるつもりもないし」
そうした考えはボタンにはありません。
「ずっとこのままだしね」
「オズの国の子供のね」
「だからね」
「水兵の服で充分なんだね」
「僕にはやっぱりこの服だよ」
にこりと笑ってその水兵さんの服を見て言いました。
「この服が一番だよ」
「似合ってるしね」
「凄く似合ってるよね」
「そのことは誰が見てもだよ」
ボタン程水兵さんのセーラー服が似合う子はいません、白いすっきりとしたその服が本当によく似合っています。
「似合ってるよ」
「だからね」
「水兵さんのままでだね」
「いいよ」
「じゃあ水兵さん」
カルロスは笑ってボタンに愛嬌のある声で言いました。
「今から灯台に行こう」
「了解、隊長」
「いやいや、僕は隊長じゃないよ」
このことはくすりと笑って否定しました。
「カルロスだよ」
「そうなんだ」
「うちのリーダーは別にいないから」
「強いて言うならナターシャ?」
「そうなるかな」
神宝とジョージはナターシャを見て言いました。
「いつも僕達を引っ張ってくれるから」
「まとめ役みたいな感じでね」
「リーダーは恵梨香じゃないかしら」
ですがナターシャは恵梨香を見て言います。
「私達のリーダーは」
「私なの?」
「だって皆のお母さんみたいな存在だからな」
「私がお母さんって」
「恵梨香がいると安心出来るから」
それでというのです。
「私達のお母さんでね」
「リーダーっていうの」
「そうじゃないかしら」
「そうかしら」
首を傾げさせてです、恵梨香はナターシャのその言葉に応えました。
「私は皆のリーダーなの」
「私達五人のね」
「そうしたことはね」
「あまり、なのね」
「思ったことはないけれど、それもこれまで一度も」
「そうだったの」
「というか誰がリーダーとかは」
そうした考え自体がというのです。
「ないんじゃないかしら、ただね」
「ただ?」
「その都度引っ張る子は違うわよね」
その場その状況によってというのです。
「私達は」
「私がそうなる時があれば」
「ジョージの時もあるし神宝の時もあるし」
二人も見て言います。
「今はカルロスがそんな感じだね」
「言われてみればそうかな」
カルロスは恵梨香に言われて確かにそうではないかと考えました、確かに自分が今は一番あれこれしようと言っているからです。
「今は僕かな」
「そうじゃないかしら」
「僕が思うにジョージが実働部隊で神宝が考えてナターシャがまとめて」
そしてというのです。
「恵梨香が和ませ役で僕はムードメーカーかな」
「それそれっていうのね」
「そんな感じかな」
こう恵梨香に言うのでした。
「普段はね、そしてオズの国ではね」
「どうなっているかしら」
「いつもドロシーさん達と一緒に遊んだり冒険していて」
「ドロシーさん達がなのね」
「僕達のリーダーになってるかな」
「そうなるかしら」
「うん、僕はそう思うけれどね」
こう恵梨香に言うのでした。
「あくまで僕の思うところだけれどね」
「そうなのね」
「それでね」
さらに言うカルロスでした。
「僕達の間ではリーダーはその都度変わるね」
「その場によって」
「そんな感じかな」
「私達はそれぞれのタイプがあって」
「それに合わせてリーダーが決まってるかな」
「いつも決まってるのじゃないのね」
「僕もナターシャが僕達のリーダーかなって思った時もあるけれど」
それはといいますと。
「その都度違うからね」
「私別に皆に指図しないわよ」
ナターシャ本人の言葉です。
「そういうことしないから」
「そうだよね」
「僕は気付いたことを皆に言ってるだけで」
神宝も言います。
「思ったことの場合もあるけれど」
「僕はまず自分が動けが信条だからね」
今度はジョージです。
「身体を動かいてね」
「私は皆に優しくしなさいって」
最後に言ったのは恵梨香です。
「お祖母ちゃんやお母さんに教えられてるから」
「そうだよね、皆それぞれのタイプがあって」
「リーダーはね」
「いないね、いつも決まってる子は」
カルロスはまた恵梨香に答えました。
「僕達の間では」
「そうなるわね」
「まあそういうグループだよ、僕達は」
「リーダーは常に変わる」
「強いて言うならドロシーさんかな」
くすりと笑って言ったカルロスでした。
「僕達のリーダーは」
「あの人なのね」
「一番よく一緒に冒険して」
それにというのです。
「いつも的確に僕達を引っ張ってくれるからね」
「確かにね」
「ドロシーさんがいたらね」
「いつも僕達を確かに導いてくれるから」
「凄く頼りになるね」
「だからドロシーさんかな」
自分達五人のリーダーはというのです。
「そうなるかな」
「ドロシーならね」
ボタンはドロシーと聞いて言うのでした。
「今も僕達を見ている筈だよ」
「王宮の鏡でだよね」
「オズの国のあらゆるところを見られる鏡でね」
「じゃあ僕達が今オズの国に来たことも」
「知ってると思うよ」
「そうだよね、やっぱり」
「うん、だからドロシーを心配させないようにしよう」
すぐにこうも言ったボタンでした。
「危ないことをしたりしてね」
「そうだね、そのことはね」
「気をつけないとね」
「その通りだね」
「じゃあね」
「うん、まずは灯台守さんに聞こう」
灯台にいるそのカドリングの赤い服を着たおじさんです。
「この国がどの国かね」
「カドリングの国なのは間違いないしにしてもね」
「それからだね」
こうお話してでした、そのうえで。
皆で灯台のすぐ下に来てでした、おじさんに尋ねました。
「すいません」
「少しいいですか?」
「どうしたんだい?」
おじさんは下から言って来た皆にすぐに応えました。
「そこにいるのはボタンの坊やじゃないか」
「僕のこと知ってるの?」
「御前さんは有名人だからね」
それで、という返事でした。
「そのセーラー服でわかったよ」
「そうだったんだ」
「それで何の用だい?」
「ここはどの国なの?」
ボタンはおじさんに自分達が知りたいことを尋ねました。
「カドリングの国なのはわかったけれど」
「リンキティンク王の国だよ」
「やっぱりそうなんだ」
「そうだよ、この国はね」
「そうだったんだね」
「それでわしはこの灯台で守をしているんだ」
つまち灯台守さんだというのです。
「それがわしの仕事さ」
「そうなんだね」
「とはいってもここにいるだけで」
その灯台にというのです。
「夜になれば自然と光が点くからな」
「その灯台にいるだけなんだ」
「文字通りの灯台守さ」
笑ってこうボタンに言うのでした。
「何でもないさ」
「楽なの?」
「楽だね、ここで寝泊りしているだけだから」
「毎日そこで寂しくないの?」
「相方がいてそいつと一日交代なのさ」
「休日はなんだね」
「楽しくしてるさ、それにな」
さらに言うおじさんでした。
「家が傍にあるからな」
「おじさんのお家がだね」
「そこから毎食女房が弁当を持って来てくれるんだよ」
「そうなんだね」
「それもとびきり美味いのをな」
笑って言うおじさんでした。
「だから何も困っていないさ」
「寂しくもないんだね」
「ああ、ここで昼は大好きな海を見て夜は寝る」
それがというのです。
「わしの仕事だよ、そして朝日を見て朝飯を食って」
「それでだね」
「相棒と交代して家に戻る」
「そうした生活なんだ」
「そうさ、わしのこともわかったかな」
「うん、よくね」
ボタンはおじさんに笑顔で頷いて答えました。
「それがおじさんのお仕事なんだね」
「このリンキティンク王の国に住みながらな」
「それでおじさん」
今度はカルロスがおじさんに尋ねました。
「リンキティンク王ですけれど」
「王様がどうかしたのかい?」
「お元気ですか?」
「元気も元気だよ」
笑って言うおじさんでした、リンキティンク王のことも。
「元気過ぎてね」
「それで、ですか」
「もう少し静かだったらって思う位だよ」
「そうなんですね」
「あんた達はうちの王様に会ったことはあるかい?」
「いえ、それがなんです」
カルロスは正直に答えました。
「あの人にお会いしたことはないです」
「そうなんだね」
「ただよく聞いてます」
「うちの王様のオズの国の有名人の一人だからね」
「はい、それでなんです」
「困った位に朗らかでね」
笑って言うおじさんでした。
「それで騒がしい位に笑ってるよ」
「やっぱりそうなんですね」
「ああ、相変わらずだよ」
本当に、という声でした。
「いいのか悪いのかっていうといいけれど」
「騒がしい」
「そうだよ」
「そうですか」
「今この国にいるよ」
「何処にも行かれずにですね」
「ご自身の王宮で今日も笑っておられるさ」
それがリンキティンク王だというのです。
「じゃあ今から行くかい?」
「そうですね」
ここで、です。カルロスは。
皆に顔を向けてです、そのうえで尋ねました。
「そうする?」
「そうね、やっぱりな」
「あの方のお国だし」
「あの方にお会いして」
「挨拶はしておかないと」
「やっぱりそうだよね」
カルロスは皆の言葉に頷いてです、そして。
おじさんに顔を戻してです、こう言いました。
「そうします」
「僕もだよ」
ボタンもおじさんに答えました。
「そうするよ」
「よし、じゃあ王宮まで行くんだな」
「リンキティンク王が王宮にいるのならね」
「王宮までの場所はわかるかい?」
「わかんなーーい」
「じゃあ地図をやるよ」
ボタンの問いに笑って返したおじさんでした。
「今からそっちに降りるから待ってくれよ、地図を持って来るな」
「そこを離れてもいいの?」
「灯台の傍にいればいいからな」
おじさんの灯台守としてのお仕事はというのです。
「だからな」
「いいんだね」
「ああ、じゃあ今から行くな」
「それじゃあね」
こうしてです、おじさんはです。
すぐに皆のとことに来てくれました、その手に地図を持って。
それはリンキティンク王の国の細かい地図でした、しかもです。
「カドリング全体の地図もですね」
「ついでだからな」
おじさんはカルロスに笑って応えました。
「やるよ」
「すいません」
「いいさ、御前さん達この国に来たのははじめてだろう?」
「はい、ボタン以外は」
「だったらな」
「カドリングの地図もですか」
「そっちもやるよ」
こう言ってくれたのでした。
「だから持って行きな」
「すいません、カドリングのことは詳しいつもりですけれど」
「しかしそれは王宮からの道だよな」
「都の」
「それならだよ、ここからカドリングの中に行くのは慣れてないならな」
それならというのです。
「だからな」
「この地図を持って行ってですか」
「行けばいいさ」
「それじゃあ有り難く」
「ああ、持って行きなよ」
その地図をというのです。
「そうしなよ」
「わかりました」
カルロスはおじさんの言葉に笑顔で頷きました、こうしてでした。
一行は地図を貰ってです、そのうえでまずはリンキティンク王の宮殿を目指すのでした。そして宮殿の方にです。
少し歩いていくとでした。皆の前にです。
赤い木々の林が見えました、その林を見てでした。
ボタンは五人にです、こう言いました。
「あの林の木はお弁当の木だよ」
「あっ、そうだね」
その通りだとです、カルロスはボタンに応えました。
「あの木はね」
「もうお昼だしね」
「丁度お腹も空いてるよね」
「うん、それじゃあね」
カルロスもボタンの言葉に頷いてです。
皆にお顔を向けてです、こう提案しました。
「じゃあ今から」
「ええ、それじゃああの林まで行って」
「お昼にしましょう」
「それぞれお弁当を手に取って」
「皆で食べよう」
「早く行こう」
ボタンは陽気に皆に声をかけます。
「そして食べよう」
「うん、今からね」
カルロスが五人に応えてでした、そのうえで。
皆はそのお弁当の木の林のところまで行ってでした。それぞれそのお弁当を手に取りました。そのブリキの箱を開けますと。
パンにです、コールドチキンと。
それに無花果が付いていてです、葡萄のジュースもあります。
そのお弁当を見てです、恵梨香はにこりと笑って言いました。
「美味しそうね」
「うん、しかも量も多いしね」
「パンも鶏肉もね」
ジョージと神宝もその大きなお弁当箱を開けて言います。
「無花果も三個も入っていて」
「全部食べたらお腹一杯だね」
「そうね、それじゃあね」
ナターシャも微笑んでいます、そのお弁当箱を開けて。
「皆で食べましょう」
「じゃあこれから食べよう」
勿論ボタンもお弁当箱を開けています。
「お弁当をね」
「いただきますをして」
恵梨香はそこから言うのでした。
「食べましょう」
「それは忘れたら駄目だよね」
カルロスも恵梨香に応えます。
「食べる前には」
「食べる前にはいただきますで」
「食べたらね」
「ご馳走様よ」
この二つは忘れたら駄目だというのです。
「絶対にね」
「そうだね、じゃあね」
「まずは」
実際にでした、皆で。
いただきますをしてです、お弁当を食べました。パンもコールドチキンもとても柔らかくてしかも味もとてもよくてです。
ボタンはにこりとしてです、こんなことを言いました。
「ほっぺたが落ちそうだよ、僕」
「美味しくてだよね」
「うん、そうだよ」
だからだとです、カルロスに答えるのでした。
「本当に美味しいから」
「確かにそうだね」
カルロスもボタンの言葉に頷きます。
「このお弁当は美味しいね」
「かなりね」
「いや、パンもいいし」
それにというのです。
カルロスはお弁当に付いていたフォークでコールドチキンを取ってお口の中に入れて味わいつつ言ったのでした。
「鶏肉もいいね」
「そうだよね」
「無花果もあるしね」
デザートのです。
「ジュースもあるから」
「たっぷり楽しめるね」
「いいお昼だよ」
こう言ったのでした。
「じゃあこれを食べて」
「それからだよね」
「リンキティンク王の宮殿に行こう」
「リンキティンク王はね」
その人はといいますと。
「僕は会ったことあるけれど」
「いつも笑ってるんだよね」
「悪戯好きでね」
「そうした人とは聞いてるよ」
「困った人って言う人もいるけれど」
それでもというのです。
「あの人はね」
「明るくてだね」
「面白い人だよ」
「それじゃあね」
「これからあの宮殿に行こう」
「これからね」
こうしたことをお話しつつです、そうして。
皆でお弁当を食べてからでした、皆はあらためてリンキティンク王の国に向かいました。今回の冒険がはじまろうとしていました。
ボタン=ブライトがまさかこっちの世界に来ていたとは。
美姫 「本当にびっくりよね」
ああ。まあ、運良くというかすぐに惠梨香たちが見つけてオズへと行けたけれどな。
美姫 「その代わりという訳ではないけれど、今回はどこか分からなかったわね」
だな。幸い、人を見つけて居場所は分かったけれど。
美姫 「今回の目的地はリンキティンク王ね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」