『新オズの腹ペコタイガー』




                 第十一幕  薔薇の蜂蜜

 お昼御飯を食べた後で、です。アンはトロットに黄金の林檎を沢山あげて彼女と一緒にバスケットボックスの中に入れてからです。
 あらためてです、トロットに尋ねました。
「これから薔薇の国に行くのね」
「ええ、そうなの」
 それでというのです。
「蜂蜜を貰うか」
「林檎と蜂蜜ね」
「カレーに入れるといいでしょ」
「最高の隠し味よ」
 実際にと答えたアンでした。
「まさにね」
「そうでしょ、だからね」
「蜂蜜もなのね」
「貰いに行くわ」
「わかったわ、けれどね」
 ここで微妙なお顔になって言うアンでした。
「あの国の人達はね」
「ええ、薔薇の人達でね」
「心が冷たいわよ」
「昔はそうだったわね」
「それはね」 
 首を傾げさせての言葉でした。
「そうだけれど」
「アンはあの国の人達は好きじゃないのね」
「そうなの」
 その通りとです、アンはトロットに曇ったお顔で答えました。
「実はね」
「そうなのね」
「けれど確かに蜂蜜ならね」
「あの国の蜂蜜でしょ」
「オズの国ではね」
「だからあの国に行くの」
「モジャボロさんもおられるから」 
 アンはここでモジャボロを見て言いました。
「不愉快な思いをしないと思うけれど」
「モジャボロさんのお人柄とラブ=マグネットのお陰でね」
「モジャボロさんを嫌いになる人はいないから」
 だからというのです。
「あの人達も貴女達を嫌いにはならないけれど」
「それでもなのね」
「私一回あの国に行ったけれど」
「その時になのね」
「あまりいい気持ちにならなかったから」
 アンも一度あの国に行ったことがあるというのです。そしてその時に思ったことをトロットにお話するのです。
「それでね」
「私達にもなのね」
「行くのは止めないけれど」
「気をつけてっていうのね」
「不愉快な気持ちにならない様にね」
 これがアンの言いたいことでした。
「この国からあの国まで一直線の道があるけれど」
「オズマが開いてくれたね」
「だからすぐにも行けるけれど」 
 それでもというのです。
「この国からあの国に行く人いないわよ」
「貴女と同じ感情を抱いているから」
「ええ、まさにその通りよ」
「そこは変わらないのね」
「変わる筈がないわよ」
 それこそという返事でした。
「向こうからも来る人はいないし」
「道は開けたのに」
「道は開けても感情はそうはいかないわ」
 アンはその薔薇の国の方を見てトロットに答えました。
「私達あの国の人達のこと好きじゃないから」
「行かないのね」
「一人もね。行くのは旅の人達よ」
「私達みたいな」
「その人達にはいつもこう言ってるの」
 その言っている言葉はといいますと。
「不愉快な思いをしても気にしないでね」
「わかったわ、それじゃあね」
「ええ、今からね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 トロット達はウーガブーの国から薔薇の国に行くことになりました。その薔薇の国に行く道はといいますと。
 黄色い煉瓦の道です、恵梨香はその道を進みながらトロットに言いました。
「この道は公道ですか」
「そう、オズマが開いたね」
「だから黄色い煉瓦の道なんですね」
「オズの国の公道はね」
「黄色い煉瓦ですよね」
「そうよ、けれどね」
「トロットはその道を歩きながら恵梨香に言いました。
「私達以外に行き来している人はいないわね」
「はい、道の左右も」
 恵梨香は道の周りを見回して言いました。
「何か」
「お家や畑も殆どないわね」
「ここはまだ開けていないんですか」
「そのこともあるけれど」
「さっきアン王女がお話されていましたけれど」
「皆薔薇の国についてはね」
「よく思っていないんですね」
 恵梨香はトロットに言いました。
「やっぱり」
「そうなの、アンも実際にあの国に行ってね」
 そしてというのです。
「不愉快な思いをしたの」
「だからなんですね」
「あの国には行かないから」
「ウーガブーの人達自体も」
「そして周りの人達もね」
 その薔薇の国のです。
「あの国には行かないの」
「好かれていないんですね」
「そうよ、私もあの国に行ったけれど」
 トロットもその鬨のことを思い出すと表情が曇ります。
「いい思いをしなかったわ」
「トロットさんがオズの国に来られた時ですね」
「あの時奇麗だと思ったのは一瞬で」
 それでというのです。
「すぐに不愉快になったわ」
「そうでしたね」
「だから私もあの国については」 
「トロットさんもですか」
「そうなの、けれどね」
「今はですね」
「あの国の人達も穏やかになったから」 
 昔と比べてというのです。
「安心してね」
「わかりました、それじゃあ」
「薔薇の国に行きましょう」
「今から」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で先に先にと進んでいきます、その旅は楽ですがそれでもです。トトはお鼻をくんくんとさせてから言いました。
「後ろから何か来るよ」
「何かって?」
「うん、ウーガブーの国からね」
 そこからとです、腹ペコタイガーにも答えます。
「何か来たよ」
「人かな」
「そうみたいだね、この匂いは」
 トトはお鼻をくんくんとさせたまま言いました。
「アン王女だよ」
「あれっ、あの人が来てるの」
「うん、こっちに来てるよ」 
 匂いでそのことがわかるというのです。
「またどうしてかな」
「あれっ、おかしいね」
 モジャボロはトトのその言葉を聞いて首を傾げさせました。
「この道に入る時彼女自身が言っていたね」
「うん、王女さんもウーガブーの国の人達もね」
「薔薇の国の人達は好きじゃなくてね」
「この道を通る人達もね」
「いない筈だから」
「それでどうしてかな」
 トトも首を傾げさせます。
「王女さん来てるのかな」
「わからないね、けれどね」
「王女さん本人が来たら」
「お話を聞こう」
「そうするべきだね」
「それでどれ位の速さなの?」 
 トロットがトトにアンの歩くそれについて尋ねました。
「どれ位の速さでこちらに来てるのかしら」
「そうだね、結構速いよ」
「速いのね」
「こっちに来るのもすぐだよ」
「そうなのね」
「うん、走るのに近いから」
「あの娘足速いのよね」
 トロットはトトのお話を聞きながら言いました。
「歩くのも走るのも」
「いつもお身体を動かしてるから」
「畑仕事とかもしてスポーツも好きだから」
 トロットはトトにアンの活発さもお話しました。
「だからね」
「それで足も速いんだね」
「そうよ、じゃあ待とうかしら」
「そうだね、もう三時だしね」
 モジャボロは懐から懐中時計を出して時間をチェックして言いました。
「丁度おやつの時間だし」
「ええ、じゃあおやつの用意をしながらね」
「王女さんを待とう」
「そうしましょう」
 トロットはモジャボロの言葉に頷きました、そして。
 そのうえで、でした。皆でです。
 煉瓦の横の少し荒れた場所に敷きものを敷いてでした、テーブル掛けも出して。
 おやつの用意をはじめました、今日のおやつはです。
 お抹茶にです、それに。
「上はういろうでだね」
「ええ、真ん中はお団子でね」
「下は蕎麦ぼうろの」
「和風にしてみたの」 
 つまり和風ティーセットだとです、トロットは腹ペコタイガーに答えました。見ればお皿も和風のものになっています。
「今日はね」
「恵梨香が一緒だからかな」
「ええ、そうよ」
 その通りとです、腹ペコタイガーにそのこともお話しました。
「これにしたの」
「そうなのね」
「そう、それにね」
「それに?」
「実はアンは和食好きなの」
 このこともあってというのです。
「あちらのお料理もね」
「それで出したんだ」
「そうなの、恵梨香とアンのことを考えてね」
「嬉しいです」
 恵梨香はトロットの言葉を聞いて笑顔で言いました。
「じゃあ有り難く」
「ええ、食べてね」
「そうさせてもらいます」
 恵梨香は笑顔で言って。そして。
 皆で、なのでした。おやつの用意をしていますと。
 アンが皆のところに来ました、見れば今のアンの服装はトロットと同じ様な旅の服です。腹ペコタイガーはそのアンに尋ねました。
「君が来るのはトトが匂いからわかっていたけれど」
「あら、そうなの」
「うん、それでどうして来たのかな」
「放っておけないって思って」
「僕達を?」
「だって薔薇の国に行くのよ」 
 それでというのです。
「あの国に行けばね」
「不愉快な気持ちになるから」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「私も来たの」
「そうなのね」
「あの人達がトロット達に何かしたら」
「僕がいてもだね」
「その時はね」
「容赦なくなんだ」
「そうよ」 
 アンはモジャボロにも強いお顔で言います。
「向かうから」
「だから僕のラブ=マグネットもあるし」
「もうあの国の人達もっていうのね」
「かなり穏やかで温厚になったから」
「安心していいっていうのね」
「そうだよ」
「そうだといいいけれど」
 また言ったアンでした。
「それでもね」
「心配だからだね」
「行くわ」
 こう言ったのでした。
「一緒にね」
「ええ、それじゃあね」
 それならとです、トロットも頷いてでした。
 それからです、アンに笑顔で言いました。
「一緒に食べましょう」
「あら、日本のおやつね」
「ええ、一緒に食べてね」
 そしてというのです。
「薔薇の国に行きましょう」
「一緒に行っていいのね」
「折角来てくれたから」
 だからとです、アンにまた答えたのでした。
「行きましょう」
「それじゃあ」
 こうしてでした、アンも一向に加わりました。そして和風のティーセットを皆で楽しんだのでした。そしてでした。 
 そのティーセットを食べてからです、トロットは皆に言いました。
「じゃああらためてね」
「うん、出発だね」
「そうしましょう」
 腹ペコタイガーにも答えます。
「今からね」
「じゃあね」
「日が暮れるまで歩いて」
「テントで休んで」
「そして朝にまた出発よ」
「そうするんだね」
「ええ、明後日のお昼位には」 
 トロットは考えるお顔になって言葉を続けました。
「薔薇の国に着いてるかしら」
「それ位だね」
 モジャボロはトロットのその予測に頷きました。
「大体」
「そうよね」
「それ位に着いてね」
「それでよね」
「うん、蜂蜜を貰ってね」
「都に帰るわ」
「僕達が一番の長旅だね」
 こうも言ったモジャボロでした。
「間違いなくね」
「ええ、今回の旅ではね」
「ウーガブーの国から薔薇の国へ」
「面白いわよね」
「そうだね、じゃあゆっくりとね」
「行きましょう」
「のどかね」
 トロットとモジャボロのやり取りを聞いてでした、アンはどうかという顔で言いました。
「あのl国に行くのね」
「本当に好きじゃないんだね」
「物凄く不愉快だったから」
 アンは腹ペコタイガーにも言いました。
「だからよ」
「そうなんだね」
「だからそれから今までね」
「ずっと行っていなかったんだね」
「この道に足を入れること自体がね」
 そもそもというのです。
「なかったのよ」
「そういうことなんだね」
「けれどね」
「うん、今からだね」
「行くわ、私も」
 アンはもう決めていました、それが言葉にも出ています。
「これからね」
「僕達に何かあった時の為に」
「若し不愉快なことになろうとしたら」
「私が止めるから」
 絶対にというのです。
「任せてね」
「うん、それじゃあね」
「そういうことでね」 
 また言ったアンでした。
「行きましょう」
「それじゃあね」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行は冒険を適度に休みながら続けました、そして。
 前からクルマー達が来ました、クルマー達は両手両足の車輪で煉瓦の道を進んでいます。その彼等のお顔を見れば。
 にこにことしています、アンは彼等のそのお顔を見てすぐに彼等に尋ねました。
「いいことがあったの?」
「うん、とてもね」
「楽しい思いをしたよ」
「貴方達薔薇の国から来たのよね」
 アンはクルマー達にこうも尋ねました。
「そうよね」
「そうだよ、あの国でね」
「凄く楽しかったからね」
「今僕達はこうしてオズの国を楽しく旅してるけれど」
「あの国でもね」
「楽しかったよ」
「あの国でなの」
 怪訝な顔になって言うアンでした。
「楽しい思いしたの」
「そうだけれど」
「何かあったのかな」
「あんな不愉快な国ないわよ」
 アンはクルマー達にも言うのでした。
「それこそね」
「いやいや、違うよ」
「もうそこのことはね」
「悪い人達じゃなかったよ」
「行ってもね」
「特に不快な気持ちはしなかったし」
「結構よくもてなしてもらったよ」
「私の言った通りでしょ」
 トロットはここでアンに言いました。
「もうあの国もね」
「よくなったのね」
「確かに貴女が行った時はそうだったけれど」
「今は違うの」
「どんな国も変わるわ」
 そうだというのです。
「それにあの国だってオズの国だから」
「私達と同じ国だから」
「そんなことはないわ」
「今はなのね」
「だからね」
「今は安心して行けばいいのね」
「気持ちはわかるけれどね」 
 アンが不愉快な気持ちになったそのことはというのです。トロットにしてもそのことを味わったので言うのです。
「それでもね」
「今回は安心して」
「行きましょう」
「それに僕もいるよ」
 モジャボロは微笑んで名乗り出ました。
「ラブ=マグネットもあるから」
「あの人達にしても」
「僕達に何も不愉快なことはしてこないよ」
「本当にまずいことになったらね」
 アンに今言ったのは腹ペコタイガーでした。
「僕が何とかするから」
「虎の貴方が」
「安心して行こうね」
「ええ、皆がそう言ってくれるし」
 それならと言ったアンでした。
「それならね」
「ええ、行きましょう」
 トロットはアンの背中を押す様にして言いました、そしてでした。
 クルマーと別れて皆で道をさらに進んでいきました。その道をどんどん進んでいって時々食事を摂ったりして休んで、です。
 徐々に進んでいきました、その中で。
 恵梨香は朝御飯のパンを食べつつです、腹ペコタイガーに言いました。そのパンは食パンでジャムがたっぷりと塗られています。
「薔薇のジャムもあったわね」
「あっ、そうだね」 
 言われてです、腹ペコタイガーも応えます。
「ジャムも色々でね」
「そう、私は今は苺のジャムを食べてるけれどね」
「薔薇のジャムもあるね」
「あのジャムも今度食べたいわ」
「今日出したらよかったわね」
 ここでこう言ったのはトロットでした。
「薔薇のジャムを」
「いえ、今日は」
「苺のジャムを食べたくて」
「これを出させてもらいました」
 見ればサラダもあります、そしてハムエッグもです。腹ペコタイガーはそのサラダとハムエッグを食パンに挟んだサンドイッチを食べています。
「私ジャムは苺が一番好きなので」
「それでなのね」
「はい」
 その通りだというのです。
「そうさせてもらいました」
「そうなのね、けれどね」
「けれど?」
「薔薇のジャムは確かに美味しいわ」
 こうも言ったトロットでした。
「そしてその薔薇から摂った蜂蜜もね」
「これから私達が行く薔薇の国のですね」
「そう、美味しいから」
 だからというのです。
「楽しみにしていてね」
「カレーに入れてもですね」
「美味しいからね」
「じゃあ本当に楽しみにさせてもらいます」
「蜂蜜と林檎はね」
 アンは牛乳を飲んでいます、朝のデザートの無花果を食べた後で。
「最高の組み合わせなのは確かね」
「そうでしょ、カレーの隠し味としてもね」
「凄くいいわね」
「そしてその蜂蜜の仲でもね」
「あの国の蜂蜜なのね」
「それで行くのよ」
「それで今あの国に行っても」
 またこのことを言うアンでした。
「安心していいのね」
「そうよ、何度も言うけれどね」
「でjはいざ、なのね」
「ええ、行きましょう」
 その薔薇の国にとお話してです、そしてでした。 
 一行は朝食の後で薔薇の国にまた向かうのでした、煉瓦の道はとても歩きやすくて移動には何の問題もありませんでした。
 そして薔薇達が見えてきたところで。
 トトがお鼻をくんくんとさせてです、こう皆に言いました。
「いよいよね」
「ええ、薔薇の香りがよね」
「凄くなってきたよ」 
 恵梨香にこう言うのでした。
「もう堪らない位だよ」
「そうなのね」
「僕にとってはね」
「困る位?」
「いや、困りはしないよ」
 薔薇の香りがです、トトにとっては相当に強くてもというのです。
「匂いを凄く感じることはね」
「普通なのね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「幾ら香りが強くても困らないよ」
「薔薇の香りは素敵だけれど」
 恵梨香はトトの言葉を受けて言いました。
「臭いと大変よね」
「そうした匂いは嗅がない様にするから」
「だからなのね」
「大丈夫だよ」
「そうなのね」
「うん、安心してね」
 こう恵梨香にお話するのでした。
「僕のお鼻のことは」
「だといいわ」
「それとね」
「それと?」
「とにかくいい香りだよ」 
 薔薇の国の香りのことも言うのでした。
「普通の薔薇よりもね」
「もっとなのね」
「いい香りだよ」
「私も薔薇の香りは好きだけれど」
「恵梨香達ももうすぐ感じるから」
 その薔薇の香りをというのです。
「楽しみにしていてね」
「それじゃあね」 
 恵梨香はトトの言葉に頷きました、そうして。
 皆で薔薇の国に向かって歩きました、すると実際にその香りが漂ってきてです。恵梨香はうっとりとして言いました。
「あっ、本当に」
「普通の薔薇の香りよりもだね」
「ええ、いい香りがするわ」
 実際にとでです、恵梨香はトトに答えました。
「とてもね」
「うん、この香りはね」
「薔薇の香りだけれど」
「普通の薔薇よりもずっとね」
「いい香りがするわね」
「そうだね、これで中に入れば」
 その時にどうなるのかもです、トトは言いました。
「香りだけで素敵な気持ちになれるよ」
「そうよね」
「うん、じゃあ早く行こう」
 腹ペコタイガーも薔薇の香りを感じています、そのうえでの言葉です。
「そしてね」
「薔薇の中に入って」
「楽しもう」
「じゃあ、ね」
 アンだけが今一つ乗り気ではない感じです。まだ。
「中に入りましょう」
「うん、じゃあね」
 腹ペコタイガーが応えてでした。
 皆で薔薇の国に入りました、すると緑のドレスに髪の毛が様々な色の薔薇の花になっている白いお肌のとても奇麗な人達がいました。
 その人達と薔薇の枝、刺のあるそれや葉で作ったお家や建物を見ながらです。アンはその不機嫌な顔で恵梨香に言いました。
「ここがね」
「薔薇の国ですよね」
「そうよ」
「そうですね、じゃあこの人達が」
「薔薇の人達なのよ」
 まさに彼等だというのです。
「私があまり好きじゃないね」
「そうですね」
「じゃあまずはね」
「ええ、女王様のところに行きましょう」
 トロットが二人に言います。
「これからね」
「はい、それじゃあ」
 恵梨香が応えてでした、そのうえで。
 トロットは皆を薔薇の国の王宮まで案内しました、その間です。
 薔薇の人達は皆に笑顔で親しく挨拶をしてきました、トロットはその挨拶を受けてびっくりして言うのでした。
「これが薔薇の国なの」
「ええ、今のね」
 また答えたトロットでした。
「そうよ」
「そうなのね」
「私の言った通りでしょ」
「言ったことは信じていたけれど」
「それでも本当ならでしょ」
「驚くわ」
 そうだとです、アンはトロットに答えました。
「その目で見たらね」
「そうよね、やっぱり」
「この国も本当に変わったのね」
「いい方にね」
「あんなに無愛想な国だったのに」
「今はこうなのよ」
「明るくて親しみのある国になったのね」
「そうなの」
 まさにというのです。
「だから安心してね」
「ええ、わかったわ」
 ここでトロットも薔薇の国の人達に笑顔で手を振る様になりました。
 そしてです、トロットは自分達を迎えに来た衛兵さんに尋ねました、衛兵さんは白薔薇の頭で服は緑の軍服です、手には薔薇の枝で作った槍があります。
 その衛兵さんにです、こう尋ねたのです。
「女王はおられるかしら」
「はい、おられます」
 衛兵さんは敬礼をしたうえでトロットに答えました。
「王宮に」
「じゃあ今からお邪魔させてもらうわ」
「今日はどういったご用件で」
 来たのかとです、衛兵さんも尋ねてきました。すると。
 トロットはすぐに事情をお話しました、すると衛兵さんは聴き終えてすぐに納得したお顔になって言いました。
「わかりました」
「そういうことでね」
「我が国の蜂蜜をですね」
「頂きに来たから」
「では陛下のところに案内させて頂きます」
「それではね」
 トロットは衛兵さんににこりと笑って応えてでした、そのうえで。
 皆で一緒に王宮に向かいました、今度は衛兵さんに案内されて。
 王宮も薔薇の枝や葉で造られていてです、様々な色の薔薇があちこおちに咲いていて。
 とても奇麗です、その宮殿の中に入ってです。
 やはり薔薇で飾られた他には絶対にないその中も進んで、でした。
 女王の間に入りました、女王は最初薔薇の葉が重なって出来た玉座に座っていましたが。
 一行が入って来たらです、その真紅の花びら達を動かして笑顔で言いました。
「ようこそ、我が国へ」
「ええ、こんにちは」
 トロットが女王に笑顔で挨拶を返しました。
「久しぶりにね」
「この国に来てくれたのね」
「そうなの、それでね」 
 ここでも自分達が来た理由をお話したトロットでした。
 そして、です。そのうえで。
 トロットは女王にも事情をお話したのでした、すると。
 女王はにこりと笑ってです、トロットに言いました。
「では応急の貯蔵庫に行ってね」
「そこでね」
「ええ、好きなだけ持って行くといいわ」 
 その蜂蜜をというのだ。
「それこそね」
「またえらく気前がいいわね」 
 アンは女王の返事を聞いて目を丸くさせました。
「本当に別の国みたい」
「あら、貴女はウーガブーの国の」
「ええ、アン=アンヤコレヤよ」
「かなり前に来たわよね」
「それ以来ずっと来ていなかったわね」
「それは昔の私達と会って」
「そう、不愉快になったからね」
 アンは正直に女王にお話します。
「行かなかったのよ」
「今までは」
「そうだったの、けれどね」
「今の私達はどう思うかしら」
「別の国の別の人みたいよ」
 アンが以前来た時と比べてというのです。
「それこそね」
「そう言ってくれるのね」
「実際にそう思うわ。それじゃあね」
「ええ、貯蔵庫に案内してもらって」
 アンもというのです。
「蜂蜜を頂くわ」
「それではね、それとね」
「それと?」
「丁度おやつの時間ね」 
 にこりと笑ってです、こうも言った女王でした。
「今はね」
「あっ、そういえばそうだね」 
 モジャボロは女王のお話を聞いて懐から懐中時計を出して時間をチェックして応えました。
「もうね」
「皆でおやつを食べましょう」
 貯蔵庫に行く前にというのです。
「まずはね」
「そうしてなのね」
「そう、それからね」 
 いよいよというのです。
「貯蔵庫に行きましょう」
「薔薇の国だから」
 腹ペコタイガーは女王のお話を聞いて言いました。
「やっぱり薔薇を使った」
「ええ、お菓子とね」
「その蜂蜜もかな」
「あるわよ」
 そちらもというのです。
「それ自体も蜂蜜を使ったお菓子もね」
「あるのね」
「ええ、だからね」
「それを楽しめばいいのね」
「おやつの時はね」
「そうなのね」
「遠慮はいらないわ」
 女王はにこりと笑ってです、アンに言います。
「皆で楽しく食べましょう」
「何かお話をすればする程」
 しみじみとして言うアンでした。
「別の国に来たみたいね」
「今は凄くいい国でしょ」
「悪い印象は受けないわ」
 こうトロットにも答えます。
「それじゃあ」
「ええ、まずはおやつを食べましょう」
 こうしてでした、皆でです。
 まずはおやつをご馳走になりました。薔薇のプティングと蜂蜜で作ったお菓子に薔薇と蜂蜜のケーキにです。
 ローズティーです、そのティーセットを見てでした。
 恵梨香は女王にです、こう言いました。
「何か」
「ええ、薔薇の国だから」
「それで薔薇となんですね」
「そうよ、お菓子も薔薇でね」
「それで蜂蜜もあって」
「こうした風なのよ」
「そうなんですね」
 恵梨香はここまで聞いて頷きました、そして。
 そのお菓子とお茶の香りを感じ取ってです、こうも言いました。
「この香りも」
「いいでしょ」
「はい、とても素敵です」
「だからね」
「このお料理をですね」
「楽しみましょう」
 にこりと笑っての言葉でした。
「今からね」
「わかりました、それじゃあ」
「ローズティーにはね」
 ここでまた言った女王でした。
「蜂蜜を入れてもいいわよ」
「その蜂蜜をですね」
「少しね」 
 その量はというのです。
「少しでいいわよ」
「とても甘いからですね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「少しだけ入れてね」
「わかりました」
 恵梨香も女王の言葉に頷いてです、まずはローズティーを一口飲みました。お茶自体のお味はといいますと。
「これだけでも」
「甘いわね」
「はい、甘くて薔薇の味がして」
「いいものね」
「これだけでも」
 まさにというのです。
「素敵な味と香りです」
「そうね、そしてね」
「ここに蜂蜜を入れるとですね」
「さらによくなるわ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「そうしてみてね」
「わかりました」
 こうしてでした、恵梨香は実際にです。
 お茶に蜂蜜を入れてみました、すると。
 そのお味はです、確かにでした。
「本当に驚く位」
「美味しいわね」
「この蜂蜜凄いですね」
「それがなのよ」
「この国の蜂蜜ですね」
「そうなの」
 まさにというのです。
「だからね」
「それで、ですね」
「そう、だからね」 
 それでとです、また言うのでした。
「もっと楽しんでね」
「わかりました」
「いや、お菓子もね」
 腹ペコタイガーは早速そちらを楽しんでいます。
「凄く美味しいよ」
「そうだね、薔薇と蜂蜜の味がね」 
 トトが応えます。
「凄くいいね」
「そうだよね」
「これなら本当に楽しめるよ」
「そちらも遠慮なくね」
 女王はお菓子についても笑顔でお話します。
「楽しんでね」
「うん、是非ね」
「そうさせてもらうよ」
「この国もオズの国だから」
 それでと言う女王でした。
「皆楽しんでね」
「うん、わかったよ」
「それじゃあね」
「どんどん食べさせてもらうよ」
「このお菓子もね」
 二匹も笑顔で応えます、勿論トロット達もです。
 お菓子とお茶を心ゆくまで楽しみました、食堂でのおやつの時間を過ごしてそれからは貯蔵庫に案内してもらって。
 そこで瓶に入っている蜂蜜をです、女王は皆に一つ差し出して尋ねました。
「幾つ必要かしら」
「その蜂蜜の瓶がだね」
「ええ、幾つ必要なのかしら」 
 女王はモジャボロに言いました。
「一体」
「そうだね、隠し味だからね」
「カレーのね」
「だからあまり多くなくていいけれど」
「腹ペコタイガーさんが食べるのよね」
「そうだよ」
 その通りとです、モジャボロは答えました。
「そして王宮の皆もね」
「腹ペコタイガーさんも食べるし」
 桁外れの食欲を誇る彼のことをです、女王はまずは考えました。
「そしてね」
「都の宮殿の皆もだよ」
「相当の量のカレーを作るわね」
「そうなるわね、じゃあね」 
 女王はモジャボロの説明を聞いて考えろお顔になって。
 そしてです、こう言いました。
「三つ位かしら」
「瓶をだね」
「それ位ね」
「そうだね」
 腹ペコタイガーも応えます。
「蜂蜜の量は」
「ええ、じゃあ持って行ってね」
「わかったわ、じゃあそれだけ頂くわね」
 トロットも言います、そして。
 女王にエメラルドを差し出してこうも言いました。
「これはお礼よ」
「あら、そんな大きなエメラルドを」
「蜂蜜を貰ったからね」
「何か悪いわね」
「いいのよ、とても美味しい蜂蜜を貰うんだから」
「それでなのね」
「ええ、貰ってくれるかしら」
「そう言ってくれるのなら」
 女王は微笑んでトロットの申し出に応えました。
「頂くわね」
「ええ、お願いするわね」
「王宮の中に飾らせてもらうわ」
「自分には着けないの」
 その身にというのです。
「それはしないの」
「ええ、私が付けても私だけが楽しんでるでしょ」
「けれど王宮に飾ったら」
「皆が見て楽しめるから」
「そういうことね、わかったわ」
「ええ、おれじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 女王はそのエメラルドを受け取りました、そして。
 そのエメラルドのやり取りも見てです、アンは思ったのでした。
「何かね」
「どうしたの?」
「ええ、本当に昔の薔薇の国と違うってね」
 そう思ったとです、腹ペコタイガーにも答えるのでした。
「思ったわ」
「そうなんだね」
「ええ、まあとにかくね」
「うん、アンも今のこの国のことがわかったね」
「よくね、来てよかったわ」
 アンはにこりと笑って言いました。
「本当にね」
「それは何よりだね」
「また来たいわ」
 この薔薇の国にというのです。
「そしてこれからはね」
「これからは?」
「ウーガブーの国全体で仲良くお付き合いしたいわ」
「それはいいことだね」
「皆にもお話するわ」
 笑顔でこう言ってでした、そのうえで。
 皆は隠し味の方も揃ったことに喜びました。そうして女王と別れてそのうえで都への帰路についたのでした。



これで蜂蜜も手に入ったな。
美姫 「そうね。これで、いよいよカレー作りが始められるわね」
最高の材料ばかりを集めたからな。
美姫 「きっと美味しいんでしょうね」
次はどんな話になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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