『新オズの腹ペコタイガー』




                 第十幕  思わぬ来訪者

 トロットは腹ペコタイガーとモジャボロ、それに恵梨香とです。
 一緒に冒険をはじめました、その目指す先は。
「私達は林檎と蜂蜜を手に入れに行くわ」
「カレーの隠し味の」
「この二つが入っていると」
 トロットはにこりとして恵梨香に言います。
「もう味が全然違うでしょ」
「甘くなってですね」
「食べやすくなるわね」
「スパイスの辛さにそれが入って」
「より美味しくなるわね」
「はい」
 恵梨香もトロットの言葉に頷きます。もう既に黄色い煉瓦の道を歩きはじめています。
「それはそうですね」
「そうでしょ、だからね」
「私達はですね」
「その二つを貰いに行くのよ」
「責任重大ですね」
「まず林檎はね」
 林檎のことからお話するトロットでした。
「やっぱり黄金の林檎よ」
「アンヤコレヤ王女のですね」
「ええ、あの人の国に行くわよ」
「やっぱりそうですね」
「ウィンキーの国のね」
「そして蜂蜜は」
 恵梨香はトロットにこちらのことも尋ねました。
「何処で貰いますか?」
「それは薔薇の国にあるの」
「薔薇の女王の」
「ええ、あの薔薇の人達から蜂が蜜を作るけれど」
「その蜂蜜がですね」
「凄く美味しいから」
 だからだというのです。
「あそこで貰うわ」
「あの、薔薇の女王の国っていいますと」
 恵梨香はその国の名前を聞いてです、お顔を曇らせて言いました。
「ベッツイさん達が大変な目に遭った」
「ええ、あの国よ」
「僕もいたんだけれどね」
 モジャボロが笑ってお話に入って来ました。
「あの国にはね」
「そうでしたね」
「確かにあの時は大変だったけれど」
「それでもですか」
「今は大丈夫だよ」
「そうですか」
「うん、だから安心してね」
 こう言うのでした、そしてです。
 トロットは皆にです、こう言うのでした。
「私実はこのウーガブーの国とかにはあまり行ったことがないの」
「そういえばそうだよね」 
 腹ペコタイガーがトロットに応えます。
「トロットは船長さんと一緒にいることが多くてね」
「オズの国に来た時もそうでね」
「海や湖に縁があるね」
「そうだよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「あの国に行くのは久しぶりで」
「アン女王とお会いするのも」
「久しぶりなのよね」
 こう言うのでした。
「だから少し緊張しているわ」
「そうですか」
「ええ、けれど楽しみでもあるの」
「久しぶりに行くからですね」
「そうなの、じゃあまずはね」
「はい、ウーガブーの国に行って」
「薔薇の国に行くわよ。私達の旅が一番長いものになるわ」
 その距離から言うのでした。
「その間何があるかわからないけれど」
「それでもですね」
「気をつけながらも楽しくね」
「行くことですね」
「そうしていきましょう」
 これがトロットの言葉でした、そして。
 皆は楽しい冒険の旅をはじめてそのうえで歩き続けるのでした。
 そのまま歩いてです、お昼にです。
 皆で草腹に出てそこで御飯を食べていますと。
 煉瓦の道を通ってでした、何とトトが来ました。恵梨香はそのトトを見て目を丸くしてそのうえで言ったのでした。
「あれっ、どうしてここに?」
「うん、実はドロシーとお話をしてね」
 トトは恵梨香の前に来て言いました。
「冒険に出たすぐその時に」
「それでなの」
「そう、トロット達の冒険は長いものになるから」
 だからというのです。
「一緒に行くメンバーは多い方がいいってなってね」
「貴方が来たのね」
「いつもはドロシーと一緒でね」
 実際に今回も最初はその予定でした。
「旅をしているけれど」
「今回はなのね」
「そうしようってなってね」
 それでというのです。
「トロット達の後を追いかけてきたんだ」
「そうだったのね」
「そういうことで宜しくね」
「ここに来られたのは」
 モジャボロは御飯のパンを食べつつ言います。
「煉瓦の僕達の匂いを嗅いでだね」
「そうしながら追い掛けてきたんだ」
「流石は犬だね」
「うん、犬のお鼻だとね」
 このことは誇らしげに言うトトでした。
「もう何でも嗅げて嗅ぎ分けられるから」
「ここまで来られたね」
「こうしてね」
「今聞いたことだけれど」
 それでもと言うモジャボロでした。
「リーダーのトロットはどう思うかな」
「そうね、トトは嘘を言わないし」
 このことから言うトロットでした。
「ドロシーが決めたことなら」
「それならだね」
「私はそれでいいわ」
 異論はないというのです。
「それでね」
「それじゃあね」
「トト、お願いするわ」
 トロットはにこりと笑ってトトに言いました。
「一緒に行きましょう」
「それじゃあね」
「トトも一緒だとね」
 腹ペコタイガーは山の様なシェラスコのお肉をどんどん食べながら言います。
「頼りになるね」
「僕のお鼻がだね」
「そうなの、だからね」
 それでと言うのでした。
「一緒に行こうね」
「それじゃあね」
「じゃあ貴方もね」
 トロットはあらためてトトに声をかけました。
「一緒にお昼を食べましょう」
「うん、実はここに来るまで何も食べてなくて」
 それでと答えたトトでした。
「お腹ペコペコなんだ」
「それなら余計に都合がいいわね」
「ええ、それじゃあね」
「一緒に食べましょう」
 こうお話してでした、トトを入れた皆で一緒に食べるのでした。
 そしてその食事の後で出発しますがその進路についてです。トロットは考えるお顔になって言うのでした。
「さて、ウーガブーの国に行ったら」
「アン=アンヤコレヤ王女に会ってね」
「そしてお話をしてね」
 こう腹ペコタイガーにも答えるのでした。
「そのうえでね」
「林檎だね」
「まずはね」
 こう言うのでした。
「そこからよ」
「そうだね、しかしね」
「しかし?」
「いや、ウーガブーの国まで距離があるんだよね」 
 こう言うのでした。
「そのことが気になるね」
「そうよね、ウィンキーとギリキンの間にあって」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「かつてのオズの国の辺境にあった」
「そうした国だから」
「距離があるわ」
「そうなんだよね」
 腹ペコタイガーはさらに言いました。
「それまでに何かあったら」
「その時はなのね」
「戦うことになるのだったら」
 その時はと言う腹ペコタイガーでした。
「任せてね」
「虎の貴方になのね」
「うん、僕がいれば」
 それでというのです。
「何とかするよ」
「期待しているわね」
「それに僕がいてね」
 モジャボロも言います。
「ラブ=マグネットがあるから」
「ええ、それにモジャボロさんのお人柄で」
「僕は神様から誰とでも友達になれる幸福を授かっているから」
 ラブ=マグネットと合わせてです。
「その幸福からも難を逃れられるよ」
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「安心して行こう」
「それじゃあね」
「距離はあっても」
 それでもとです、今度は腹ペコタイガーが言いました。
「その長旅を楽しむつもりで行こう」
「そうね、それだけの余裕があればね」
「楽しく行けるよ」
「そうよね」
「そうだよ、僕達の普段の旅を思えば」
 ここでトトも言いました。
「今回の旅は短い位だよ」
「そういえばそうね」
「そうだよね、僕達の旅はいつも大冒険だからね」
「今回の旅はその普段と比べたら」
「普通よ」
「そうよね」 
 こうお話するのでした、そしてです。
 皆で一緒にウーガブーの国に向かうのでした。そして。
 皆で夜は晩御飯の後は近くの川でそれぞれ身体を奇麗にしてでした。テントで休んで日の出と共に朝御飯を食べて。
 出発するとです、ウーガブーの道まで続いている煉瓦の道の上にです。
 一匹の大きなドラゴンがいました、モジャボロはそのドラゴンを見て言いました。
「あれっ、クォックスじゃないか」
「あっ、モジャボロさん」
 そのドラゴン、クォックスもモジャボロに声を返します。
「お久しぶり」
「こちらこそ久しぶり。しかしね」
「どうしてここにいるかだね」
「うん、それはどうしてかな」
「実はね」
 こう言ったのでした。
「ここで探しものをしているんだ」
「探しもの?」
「実は宝石を持っていたんだけれど」
「宝石?」
「それを落としてしまったんだ」
 この辺りにというのです。
「それで探してるんだけれど」
「その宝石はどんな宝石から」
「シトリンだよ」
「シトリン、黄水晶だね」
 シトリンと聞いてすぐにこう言ったモジャボロでした。
「それはまたね」
「ここはウィンキーの国だから」
「黄色いものを落とすとね」
「見つかりにくいんだよね」
「そうだよね」
「それじゃあ」
 恵梨香はクォックスの困っているお顔を見て言いました。
「私達も一緒にね」
「探してくれるのかな」
「ええ、困った時はお互い様よね」
「そうね」
 トロットも頷くのでした。
「それはね」
「そうですよね、それじゃあ」
「恵梨香の言う通りね」
 トロットもこう言うのでした。
「やっぱりね」
「ええ、それじゃあ」
「皆で一緒に探しましょう」
「これからね」
「はい、今から」
「さて、黄色の中に黄色いものを落とした」
 ここでモジャボロは言いました。
「それならね」
「目で見てもね」
 トトが応えます。
「見付かりにくいね」
「枝を林の中に落としたら」
「もうそれで見付かりにくいね」
「目で見ようとしたら」
 これがモジャボロの言うことでした。
「どうしてもね」
「つまり、だね」
「そう、君の出番だよ」
 こうトトに言うのでした。
「もうわかっている様で何よりだよ」
「だって僕は犬だよ」
 これがトトの返事でした。
「犬ならね」
「お鼻だね」
「そうだよ、犬のお鼻はね」 
 それこそというのです。
「目よりもずっとわかるから」
「色々なものがね」
「犬はお鼻で感じるんだ」
 まず第一にというのです。
「見るよりもね」
「そうだね、だからね」
「ここは君の力を借りたいけれどいいかな」
「お安い御用だよ」
 笑顔で答えたトトだった。
「クォックスさんのシトリン探し出してみせるよ」
「そうしてくれるかい?」
「うん、それでだけれど」
 トトはクォックスの前に来てです、そのとてつもなく大きな身体を見上げて言いました。
「クォックスさんはシトリンをどうして持っていたのかな」
「右の前足に持っていたんだ」
 そうしてというのです。
「ずっとね」
「けれどその右の前足からなんだ」
「この上を飛んでいる時にね」
 困ったお顔で言うのでした。
「ぽろりとやっちゃって」
「それでだね」
「今探しているんだ」
 そうした事情だというのです。
「それでだね」
「うん、それじゃあね」
「今からだね」
「シトリンを探し出すよ、だからね」
「だから?」
「クォックスさんの右の前足の匂いを嗅がせてくれるかな」
 これがトトのリクエストでした。
「今から」
「僕の右の前足の?」
「うん、クォックスさんがシトリンをそこに持っていたのなら」
 それならというのです。
「シトリンに匂いが付いているよ、それも強く」
「強くなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「その匂いを探すよ」
「僕の匂いじゃないんだ」
「身体の場所によって匂いは変わるからね」
「あっ、そうなんだ」
「うん、足と手で匂いが違うんだ」
「君はそうしたことまでわかるんだ」
「犬だからね」
 まさにそれ故にというのです。
「僕はわかるんだ」
「それは凄いね」
「犬は皆そうだよ」
 それで普通だと言うのでした。
「気にしなくていいよ」
「ううん、それじゃあ」
「今からね」
「右の前足の匂いをね」
 まさにというのです。
「嗅がせてね」
「わかったよ、じゃあね」
 クォックスは右の前足を差し出しました、そして、
 トトはその匂いを嗅いででした、そのうえで。
 周りを見回してお鼻をくんくんとさせてでした、暫くそうしてです。 
 一行の左手にある林を見てです、こう言いました。
「多分ね」
「あの林にだね」
「あるよ」
 そのシトリンがというのです。
「匂いがするから」
「それじゃあ」
「今から行こう」
 こうしてでした、トトはすぐに林に向かいます。その彼にです。
 恵梨香がです、こう言いました。
「私も行っていいかしら」
「恵梨香も来てくれるんだ」
「トトだけなら林の中に何かあったらいけないから」
 用心をしてというのです。
「私もね」
「それでなんだ」
「ええ、一緒に行っていいかしら」
「うん、お願いするよ」
 笑顔で答えたトトでした。
「それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
「僕も行くよ」
 腹ペコタイガーも言ってきました。
「猛獣とかがいても僕がいたら安心出来るよね」
「だからだね」
「貴女も来てくれるのね」
「そうしよう、三人で行こう」
「じゃあ私達はね」
「ここで待っているよ」
 トロットとモジャボロはクォックスのところに来て言いました。
「林には恵梨香達が行って」
「僕達はここで留守番だね」
「そうだね、じゃあ待っていよう」
 こう言ってでした、そのうえで。
 恵梨香達は林の中に入りました、林の葉はウィンキーの国にあるので黄色で落葉もでした。奇麗な黄色の林でした。
 その林の中に入ってです、恵梨香はこうしたことを言いました。
「シトリンは黄色いから」
「うん、目に頼るとね」
 腹ペコタイガーも答えます。
「見付かりにくいね」
「というか見付からないよね」 
 トトはこう言いました。
「匂いから確かめないと」
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでと言うのでした。
「僕の鼻で探そう」
「犬君達の鼻って本当に凄いからね」
 腹ペコタイガーはしみじみとして言いました。
「虎のよりもずっとね」
「虎さんもお鼻はいいでしょ」
 恵梨香は腹ペコタイガーにこう言いました。
「人間よりも」
「そうだけれどね」
「犬さん達にはなのね」
「ずっと落ちるよ」
「そうなのね」
「やっぱりお鼻は犬君達だよ」
 それもずっと、というのです。
「ダントツだよ」
「そうなのね」
「だからここはね」
「トトに見付けてもらうのね」
「そうしよう、そしてね」
 さらに言った腹ペコタイガーでした。
「僕達はそのトトの傍にいてね」
「警戒ね」
「本当に何がいるかわからないからね」 
 だからというのです。
「ここはトトを警護していよう」
「わかったわ」
 腹ペコタイガーの言葉に頷いてでした、恵梨香は彼と一緒にトトの傍にいてガードをしていました。そしてです。
 そのうえで、です。三人でシトリンを探していますと。
 トトはお鼻をくんくんとさせつつ林の地面を調べて歩いてです、三十分位してです。
 ふと気付いた感じになってです、落ち葉を掘り返してみますと。 
 そこに黄色く輝く丸い恵梨香の手にすっぽり収まる位の大きさの宝石が出てきました。トトはその宝石を見て言いました。
「これが、だよね」
「匂いはなのね」
「うん、クォックスさんの右の前足に匂いがするよ」
「じゃあ間違いないわね」
 恵梨香はトトの言葉に頷きました。
「これがシトリンよ」
「そうだね、じゃあね」
「ええ、これを拾ってね」
「クォックスさんのところに戻ろう」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 恵梨香がその宝石を手に取ってでした、一緒に林を後にしてクォックスさんのところに戻りました。そこにはトロットとモジャボロもいてでした。
 皆で待っていました、そして恵梨香の手にある宝石を見てです。
 クォックスは笑顔になってです、こう言いました。
「そう、それがね」
「貴方のシトリンなのね」
「そうだよ」 
 お隣にいるトロットにも答えました。
「まさにね」
「そう、見付かったのね」
「よかったよ」
 満面の笑顔で言うクォックスでした。
「そして有り難う」
「お礼はあの娘達に言ってね」
 クォックスにです、トロットは微笑んでこう言いました。
「あの娘達が見付けてくれたから」
「そうだね、じゃあね」
 クォックスはトロットのその言葉に頷きました、そしてです。 
 恵梨香達に、特にトトにお礼を言いましたが。トトもこう言うのでした。
「お礼はいいよ」
「そう言うんだ」
「だってこうした時はね」
「お互い様だっていうんだね」
「だからね」
 それでというのです。
「別にいいよ」
「そうなんだ」
「うん、とにかくシトリンは探したからね」
「これを受け取ってだね」
「もうなくさないようにね」
「気をつけるよ、本当にね」
「ところでだけれど」
 腹ペコタイガーがクォックス尋ねました。
「君はどうしてここにいるのかな」
「うん、旅をしていてね」
「お空を飛んでだね」
「そうなんだ、そうしてお空の旅を楽しんでいたんだ」
「オズの国のだね」
「そうしているんだ、それじゃあね」
 今度はクォックスが腹ペコタイガーに尋ねました。
「君達のことも聞くよ」
「うん、僕達はね」
 腹ペコタイガーは自分達の旅の目的と行く場所をお話しました、そのお話を聞いてです。
 クォックスは頷いてです、こう言いました。
「成程ね、ウーガブーの国に行くんだ」
「そうなんだ」
「ここから歩いてだと遠いよ」
「それはもうわかってるよ」
「いやいや、歩いたら遠いけれど」
 クォックスは腹ペコタイガーに言うのでした。
「飛べば、それも僕だったらね」
「ここからでもすぐに行けるっていうんだね」
「そうだよ」 
 まさにその通りという返事でした。
「それこそ瞬きする位だよ。それに実はね」
「実は?」
「ウーガブーの国から薔薇の国まで道が開けたから」
「あっ、オズマが道を開いたのよ」
 トロットがここでこのことを思い出しました。
「そうすれば皆の行き来が楽になるからって言って」
「うん、だからその道を使えばね」
「ウーガブーの国から薔薇の国に行くことも」
「これまでよりずっと楽で安全だよ」
「そうよね」
「だからね」 
 それでというのです。
「ウーガブーの国に行ったら」
「そこでアン王女から林檎を貰って」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「薔薇の国で蜂蜜を貰う道はね」
「その道を使うんだね」
「ええ、そうするわ」
 トロットははっきりした声でクォックスに答えました。
「有り難う、いいことを聞いたわ」
「それとね」
 ここで、です。クォックスはあらためて言いました。
「さっき言ったけれど僕ならね」
「ここからウーガブーの国まであっという間によね」
「飛べるよ」
「お空を飛べるって有り難いわよね」
「さっきシトリンを探して見付けてくれたから」
 だからというのです。
「お礼に送らせてもらうよ」
「ウーガブーの国まで?」
「ええ、これからね」
「送ってくれるの」
「僕はただ適当に旅をしているだけなんだ」
 オズの国のお空をというのです。
「だからウーガブーの国に行ってもいいし」
「それでなの」
「乗せて行くよ」
 そのウーガブーの国までというのです。
「君達がよかったらね」
「いいの?」
「全然構わないよ」
 これがクォックスの返事でした。
「むしろ遠慮は無用だから」
「そうなのね」
「それでどうかな」
「ううん、確かにね」
 トロットはクォックスの言葉を受けてでした、腕を組んで考えるお顔になりました。そのうえでの言葉です。
「そうしたらすぐにね」
「ウーガブーの国に行けるね」
「行けるわ」
 それこそというのです。
「一瞬でね」
「僕は皆を乗せても重くないよ」
 その背中にと言うクォックスでした。
「この大きさだからね」
「私達全員を乗せても」
「そうだよ」
 それこそ全くという返事でした。
「だから気にしないで」
「どうしようかしら」
「ここはね」 
 ここで言ったのはモジャボロでした。
「クォックス君の好意に甘えるべきかな」
「そうしたらいいかしら」
「うん、クォックス君は是非にと言ってるし」
「それならなのね」
「ここはね」
「クォックスさんのご好意を受けて」
「乗せてもらおう」
 そのうえでウーガブーの国に行こうというのです。
「そうしよう」
「モジャボロさんはその意見なのね」
「僕はそうだよ」
「じゃあ皆はどうかしら」
「僕は大きいけれど大丈夫かな」
 腹ペコタイガーは自分の身体の大きさから言いました、臆病ライオンは別格として実は虎はライオンよりも大きな身体なのでそのことから言うのです。
「それでも」
「この大きさだからね」
 クォックスは自分の身体を見せて腹ペコタイガーに答えました。
「全然大丈夫だよ」
「そうなんだ」
「皆を一度に背中に乗せて」
 そのうえでというのです。
「一瞬で行けるから」
「それじゃあ」
「うん、君も気にすることはないよ」
「そうなんだね、じゃあ僕もね」
 納得して頷いた腹ペコタイガーでした。
「ご好意に甘えるべきかな」
「貴方もそう思うのね」
「ここはね」
「僕もね」
 トトも言うのでした。
「そうすべきかとね」
「思うのね」
「折角そう言ってくれるんだしね、クォックスさんがね」 
 だからというのです。
「いいって言ってくれてるし」
「というか見付けてくれたのは君だよ」
 クォックスはトトに直接言いました。
「だったらね」
「それならなんだね」
「是非共ね」
「それじゃあ」
 トトも賛成となりました、そして最後の恵梨香は。
 クォックス自身にです、お顔を向けて尋ねました。
「貴方は本当になのね」
「言った通りだよ」
「いいのね」
「うん、むしろお礼も兼ねてね」
 それでというのです。
「そうさせてもらいたいよ」
「そうなのね、ただね」
「遠慮したいの?」
「お礼って言われても」
 それでもというのです。
「あまりね」
「乗り気じゃないんだ、君は」
「何か悪いから」
「だからいいんだよ」
 クォックスは恵梨香に笑顔を向けて言いました。
「遠慮はね」
「そこまで言ってくれるなら」
「そうでしょ」
 トロットがその恵梨香に応えます。
「折角だからね」
「受けないとですね」
「かえって悪いわ」
「うん、だからね」
 モジャボロも言います。
「ここは乗せていってもらおう」
「そうすべきですね」
「これからね」
「わかりました」
 恵梨香も遂に頷きました、こうしてでした。
 皆でクォックスの背中に乗せてもらってでした。そしてクォックスが飛び立つとまさに一瞬で、でした。
 ウーガブーの国の前に来ました、恵梨香はクォックスの背中からそのウーガブーの国を見て言いました。
「本当に一瞬で」
「僕の言った通りだね」
「まるで木挽の馬さんに乗って来たみたい」
「いやいや、もっと速いよ」
「お空を飛んでいるから」
「ドラゴンの飛ぶ速さはね」 
 それこそというのです。
「風より速いから」
「そうなのね」
「そう、あそこからここに来るのも」 
 それこそというのです。
「一瞬なんだよ」
「貴方が言った通りに」
「ドラゴンは嘘を言わないよ」 
 このことはです、クォックスは胸を張って言いました。
「絶対にね」
「そう、絶対になの」
「だって誇り高い生きものだからね」
 その誇り故にというのです。
「嘘は言わないんだ」
「ネイティブの人達と一緒ね」
「あの人達も誇り高いからね」
「だから嘘を言わないのね」
「それは僕達も同じだよ」
「ドラゴンさん達も」
「長く生きていて由緒正しいものがあるからね」
 ドラゴンにはというのです。
「そして色々なことをしっていて強い力を持っている」
「そうした種族だから」
「ドラゴンは嘘を言わないんだ」
 絶対にというのです。
「だから僕もだよ」
「嘘を言わないのね」
「そうなの、それとね」
「それと?」
「君達はここで降りるんだよね」
 クォックスは恵梨香達にこのことを確認しました。
「そうだよね」
「ええ、そうよ」
「それじゃあね」
 それならと言ったクォックスでした。
「ここでお別れだね」
「そうね、とりあえずはね」
「縁があったらまた会おう」
「ええ、そしてその時はね」
「また楽しい時間を過ごそうね」
「一緒にね」
 にこりと笑ってです、恵梨香は自分にお顔を向けているクォックスとお話をしました。そしてなのでした。
 皆は背中から降りてです、そのうえでクォックスと手を振ってお別れをしました。クォックスはお空に飛び立ってあっという間に姿が見えなくなりました。
 クォックスと別れてです、トロットは皆に言いました。
「さて、それじゃあね」
「うん、今からだね」
「ウーガブーの国にお邪魔しましょう」
 腹ペコタイガーに応えて言うのでした。
「これからね」
「それじゃあね」
「おや、今から入ろうと思ったら」
 ここでモジャボロが皆に言いました、ウーガブーの国の方を見て。
「あっちから来たよ」
「アン王女だよ」
 見れば本当にです、アン=アレヤコレヤがこちらに来ています。髪型は普段のままですが服装はです。
 青いつなぎの作業服です、その格好で皆のところに来て言うのでした。
「トロットじゃない、それにモジャボロさん達も」
「どうして来たのかっていうのね」
「ええ、どうして来たの?」
 実際にです、アンはトロットに尋ねました。
「また急に」
「実はね」
 トロットはアンに事情をお話しました、その事情を聞いてです。
 アンはすぐにです、トロットに答えました。
「わかったわ、じゃあ黄金の林檎を持って行くといいわ」
「やっぱりその林檎なのね」
「オズの国で最も美味しい林檎といったら」
 それこそというのです。
「あれよ」
「黄金の林檎よね」
「このウーガブーの国で採れるね」
「やっぱりあれよね」
「そう、だからね」
 アンもトロットに言うのでした。
「あれを持って行ったらいいわ」
「持って行っていいのね」
「何言ってるのよ、オズマのお願いならね」
 それこそというのです。
「私が断る筈ないでしょ」
「貴女もオズマの友達だから」
「そうよ、だからこそね」
 それでというのです。
「私も遠慮なくよ」
「持って行っていいのね」
「好きなだけね」
 にこりと笑ってです、アンはトロットに言うのでした。
 ですがここで、です。トトはアンに聞きました。
「黄金の林檎のことはわかったけれど」
「何かしら」
「王女さん今どうして作業服なの?」
 アンが作業服を着ていることについて尋ねるのでした。
「それはどうしてなのかな」
「だってお仕事中だから」
「そういえば」
 ここでトトはお鼻をくんくんとさせました、そうしてすぐに言うのでした。
「王女さん林檎の匂いが凄いよ」
「確かに。ジャムの匂いがするね」
 腹ペコタイガーもくんくんとさせて言います。
「とても美味しそうだね」
「食べないでね」
「そんなことは僕の良心が許さないよ」 
 腹ペコタイガーはこうアンに返しました。
「絶対にね」
「そうよね、まあ実際にジャムもね」
「作ってるんだ」
「そうしてるのよ、今ね」
「それで林檎の匂いがして」
「そうなのよ」
「そういうことだね、それでその時になんだね」
 お仕事中にというのです。
「僕達の姿を見て」
「そう、たまたまお外に林檎を箱に入れて運んでいたら」
 まさにその時にというのです。
「貴方達を見てね」
「来てくれたんだね」
「そうなのよ」
「王女さんもそうしたお仕事するんだね」
「林檎を採ったりジャムを作ったり」
「そうしたことするんだね」
「ウーガブーの国ではそうよ」
 この国ではというのです。
「皆でね」
「そうするんだね」
「特に林檎のことはね」
「林檎はこの国の特産品だから」
「皆で採って皆で加工したりするのよ」
 まさにです、そうしているというのです。
「楽しくね」
「そうなんだね」
「とにかくね」
 また言うアンでした。
「今はそうしているのよ」
「そうなんだ」
「ついでに言うともうすぐお昼ね」
「そうだね、そう言われるとね」
「どうかしら、黄金の林檎を貰う前にね」
 にこりとして言うアンでした。
「食べて行かない?」
「ウーガブーの国のお料理を」
「そう、今からね」
「それじゃあね」
「私達も出すわよ」
 トロットもアンに笑顔で言います。
「テーブル掛けからね」
「あの魔法のテーブル掛けからね」
「そう、出すわよ」
「じゃあ皆でね」
「ええ、出したものをね」
 お互いにそうしたものとをいうのです。
「食べましょう」
「これからね」
 こうお話してでした、実際にです。
 皆はウーガブーの国に入ってそしてです。皆で仲良くお昼を食べることになりました。そしてこの時にです。
 腹ペコタイガーは舌なめずりをしてです、こんなことを言いました。
「林檎ソースの肉料理とかどうかな」
「それかなり美味しそうね」
「そうだよね」
「ええ、林檎はね」
 恵梨香も言うのでした。
「お肉にも合うのよね」
「だからカレーにも入れるだね」
「あの甘酸っぱさがね」
「甘くてそれでいて酸味があってね」
「それがお肉にも合うのよね」
「うん、僕大好きだよ」
「あるわよ」
 ここでアンが腹ペコタイガー達に答えました。
「そうしたお料理もね」
「そうなんですね」
「ええ、だからそちらも楽しみにしていてね」
「私の方もね」
 トロットも言います。
「とびきりのお料理を出そうかしら」
「何を出してくれるの?」
「アンは何が食べたいかしら」
「何でも好きだけれど」
 アンは皆を案内して歩きつつです、腕を組んで答えました。
「そうね、サンドイッチにポタージュかしら」
「ポタージュね」
「カボチャのね」
 このお野菜のポタージュだというのです。
「それがいいかしら」
「わかったわ、サンドイッチにね」
「ポタージュを」
「それを出すわね、それでデザートは」
「林檎あるわよ」 
 アンはにこりと笑ってこれをお話に出しました。
「幾らでもね」
「こちらも出すわ」
「そうしてくれるの」
「それで何がいいかしら」
「そうね、梨かしら」
「梨ね」
「洋梨ね」
 梨は梨でもというのです。
「それかしら」
「林檎と梨は似ている様でね」
「また味が違うから」
「そちらも楽しみたいのね」
「ええ、梨もね」 
 その洋梨をというのです。
「それで言ってみたけれど」
「わかったわ、洋梨ね」
「それを出してくれるかしら」
「お安い御用よ。では皆でね」
「ええ、楽しいお昼を過ごしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で楽しいお昼御飯の時を過ごすことになりました、そのお昼の時にでした。腹ペコタイガーは林檎のソースをかけた大きなステーキを食べつつ言いました。
「これはいいね」
「美味しいかしら」
「うん、凄くね」 
 実際にとても美味しそうに答える腹ペコタイガーでした。
「美味しいよ」
「気に入ってもらって何よりよ」
「これなら何枚でも食べられるよ」
 そのステーキをというのだ。
「いや、僕の場合何十枚から」
「相変わらず食いしん坊さんね」
「食べないとね」
 それこそというのです。
「僕は身体がもたないからね」
「そうよね」
「腹ペコタイガーだからね」 
 笑って自分の名前も言うのでした。
「どうしてもね」
「そうよね、それじゃあね」
「何十枚とだね」
「どんどん食べてね、そしてね」
「お昼を食べた後で」
「林檎を渡すから」
 その黄金の林檎をというのです。
「楽しみにしていてね」
「わかったわ、それじゃあね」
「まずは食べてからだね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆はお昼御飯を食べるのでした、腹ペコタイガー達はテーブル掛けから出したものも美味しく頂きました。



林檎の方も無事に手に入ったな。
美姫 「みたいね。途中でドラゴンと出会ったけれど」
大した問題もなかったしな。
美姫 「逆に空路を行けて少し到着が早まったぐらいだしね」
だな。でも、このチームはまだ蜂蜜が残っているから。
美姫 「次は蜂蜜ね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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