『新オズの腹ペコタイガー』




                 第九幕  牧場のお肉

 オズマは今回は自分も冒険に出ています、一緒にいるのはブリキの木樵にハンク、それにナターシャです。
 四人でギリキンの国に入っています、そのギリキンの国の紫を見てです。
 ナターシャはクールな表情に少しだけ微笑みを入れて言いました。
「こうしてギリキンの国に来て紫を見ていたら」
「どうした気持ちになるのかな」
「高貴な気持ちになるわ」
 こうハンクに答えたのでした。
「紫は高貴な色だから」
「だからなんだ」
「ええ、ただ私が着る服は」
「いつも黒だね」
 黒のゴスロリの服です、ナターシャは今もその服を着ています。
「そうだよね」
「黒が一番好きな色だから」
 それでというのです。
「この色なの」
「そうなんだ」
「ロシアは寒いから」
 それもかなりです。
「黒だと熱を吸うから」
「寒いけれどだね」
「その分だけ暖かくなるから」
「ナターシャは黒なんだ」
「それにロシアの冬は雪と氷ばかりなの」
「その中で黒は目立つね」 
 今度は木樵が言ってきました。
「その意味もあるんだね」
「そうなんです、それで黒が好きになって」
「今も着ているんだね」
「そうです」
「成程ね」
「その黒も好きですけれど」
 それと共にというのです。
「私紫も好きなんです」
「高貴な色だからだね」
「格好いいですし」
「成程ね」
「そういえば皆それぞれ好きな色があるわね」
 オズマも言います。
「五人共ね」
「私は黒で」
「ジョージは赤、神宝は青で」
「カルロスは黄色ですね」
「そして恵梨香はピンクよね」
「その五色の色の服をいつも着ていて」
 オズマはナターシャのその黒いゴスロリの服を見ながらお話します。お人形さんみたいなナターシャにとてもよく似合っています。
「特徴にもなっているわね」
「確かにそうですね」
「オズの国にもそれぞれの色があって」
「私達にもですね」
「色がありわね」
「そうですね」
 ナターシャはオズマのその言葉に頷きました。紫の草原の中の黄色い煉瓦の道を歩きながら。遠くには澄んだ湖と紫の森が見えています。
「それは」
「私は緑と思うかしら」
 オズマはくすりと笑ってナターシャに尋ねました。
「やっぱり」
「エメラルドの都の主だからですね」
 同時にオズの国の国家元首でもあります。
「だからですね」
「そう思うかしら」
「いえ、姫はいつも白いドレスを着ておられますね」 
 ここでこう言ったナターシャでした。
「ですから緑かといいますと」
「違うのね」
「はい、姫は白でしょうか」
「私はその色なのね」
「そうだと思います」
「そうなのね、けれどね」
 そしてでした、ここで。
 ふとです、オズマはこうも言ったのでした。
「ドロシーもベッツイもトロットもね」
「それぞれの色がですね」
「ありますか」
「そう思うわ」
 こう言ったのでした。
「皆にもあって私達にもね」
「そうなのですね」
「そしてそれは多分ね」
「多分?」
「一色じゃないわ」
 一つの色だけではないというのです。
「それぞれの人の中に何色もあるのよ」
「そうなんですか」
「メインの色はあっても」
 ナターシャの黒やオズマの白です。
「皆の中にね」
「何色もありますか」
「そうだと思うわ、黒と一口に言っても」
「私が好きな色も」
「勿論白もね」
 オズマのメインと言われるその色もというのです。
「色々な色があるのよ」
「白と一口に言っても」
「そういうものですか」
「そして赤も青もあるの」
 ナターシャやオズマにしてもというのです。
「皆の中ににね」
「人は一色じゃないんですね」
「一色で言い切れたらね」
 オズマはまた言いました。
「こんなに簡単なことはないかしら」
「けれど人はですね」
「複雑なものだから」
「これ以上はないまでに」
「そう、複雑なものでしょ」
「先生に言われました、人間がこの世で一番難しいことだって」
 ナターシャは自分達の世界の学校で先生に教えてもらったことをオズマにお話しました。
「学校のどのテストよりも難しいって」
「そう言われたのね」
「はい、言われてみると確かに」
「人間は難しいでしょ」
「一人の人が色々な感情を持っていますね」
「決まってないでしょ」
「はい、どの人も」
「笑ったり怒ったりしてね」
 所謂喜怒哀楽、人のそれも言うオズマでした。
「決して一つではないから」
「だから難しいんですね」
「そうなの、この世で一番難しいということはね」
「先生の言う通りですね」
「そう思うわ、わかっている先生ね」
 こうも言うオズマでした。
「いい先生ね」
「とてもしっかしていて何かと教えてくれます」
「そうした先生なのね」
「そうです、凄くいい先生です」
「そうした先生に出会えてよかったわね」
「そう思います」
「先生もいい人に出会えたら幸せだよね」 
 ハンクはこう言いました。
「本当に」
「そうよね」
「そうだよね、ナターシャはいい先生に出会えてね」
「幸せなのね」
「いい人に出会えたらそれだけで幸せだと思うよ」
 こうも言ったハンクでした。
「それだけでね」
「悪い人に出会えるよりもずっといいわね」
「うん、そうした人と会った時は」
 その時のこともです、ハンクは言いました。
「そうした人にならない様に」
「心掛けておくべきね」
「そう思うよ」
「そうよね。これは内緒だけれど」
 少し小声になって言ったナターシャでした。
「私恵梨香みたいになりたいって思うことがあるの」
「恵梨香に?」
「そうなの、実はね」
 ハンクにも言います。
「ああして明るく笑えたら」
「そうしたいんだ」
「私表情が硬いでしょ」
 ナターシャは自分のお顔のことも言いました。
「笑うにしても」
「無表情っていうんだ」
「それが気になっているから」
「恵梨香みたいに笑えたら」
「いいんだね」
「そう思ってるの」
 こうお話するのでした。
「あの娘みたいに明るく笑いたいわ」
「ナターシャの笑顔もいいと思うけれど」
「そうだね」 
 木樵はハンクの言葉に頷きました。
「可愛い笑顔だよ」
「そうですか?」
「うん、お人形さんみたいでね」
「ナターシャの金髪と白いお肌にはね」
 ハンクはナターシャの外見からもお和します。
「クールな感じの微笑みが似合ってるよ」
「私はそうは思わないけれど」
「いや、それがいいから」
 だからだというのです。
「ナターシャにとってはね」
「それが私のいいところなの」
「恵梨香は恵梨香で思っているよ」
「恵梨香も?」
「あの娘はナターシャのクールなところに憧れているよ」
「そうかしら」
「うん、この前言っていたんだ」
 ハンクはナターシャに恵梨香が言っていたことをお話しました。
「これは内緒にしてと言われてなかったから言うけれど」
「そうなの」
「そう、恵梨香はナターシャのクールさに憧れているんだ」
「そして私もなの」
「恵梨香に憧れてるね」
「あの優しさにね」
「それが出ている笑顔に」
 ハンクはあえてといった感じで言いました。
「憧れてるんだね」
「そうなるのかしら」
「お互いに憧れてるんだよ」
「私は恵梨香に憧れていて」
「恵梨香もナターシャに憧れているんだ」
「そうなのね」
「お互い様だよ」
 ハンクは穏やかで優しい声でお話しました。
「二人はいい意味でね」
「そう思うと」
「君達はお互いにいい人に出会えたね」
「そうなるのね」
「そう思うよ、僕は」
 こうお話しながら皆は先に進んでいきます。その中でオズマは皆に言いました。
「私達が目指すのは牧場よ」
「そこにですね」
「オズの国で一番のお肉があるの」
「牛肉ですね」
「どういったお肉がいいかしらって考えたけれど」
「牛肉ですか」
「ビーフカレーね」
 それだというのです。
「そのカレーが一番いいかしらって思って」
「だから牧場に行ってですね」
「そこでお肉を貰いましょう」
 カレー用の牛肉をというのです。
「是非ね、お礼のエメラルドもバスケットボックスも持って来たわ」
「わかりました、ビーフカレーですね」
「そうよ」
「カレーは色々ありますけれど」
 ナターシャは腕を組んで考えるお顔になって言いました。
「やっぱり一番メジャーなのは」
「ビーフカレーよね」
「そうですね」
「本来カレーには牛肉は入れないけれど」
「はい、インドでは牛肉は殆ど食べないですから」
 カレー発祥のこの国ではです。
「宗教の関係で」
「ヒンズー教だったわね」
「そうです、その宗教の決まりで」
「牛肉を食べないから」
「カレーには本来は牛肉を入れませんね」
「そうなのよね、けれどね」
 オズマはこう言いました。
「インドのカレーではないわ」
「今回作るカレーは」
「だからいいのよ」
「牛肉でもですね」
「では行きましょう」
 笑顔で言うオズマでした。
「その牧場までね」
「牧場は何処にありますか?」
 ナターシャはその場所のことも尋ねました。
「一体」
「もうすぐ西に曲がってね」
「そこからですか」
「行くの」
「そうですか」
「ええ、とても広い牧場でね」
 オズマはにこにことしてナターシャにお話します。
「紫の草原の中に沢山の生きものがいるの」
「牛さん達だけでなく」
「他の生きものもいるわ」
「鶏や山羊、羊に豚もいるよ」
 木樵もナターシャに言います。
「ただ、馬は最近までいなかったんだ」
「あっ、オズの国に馬は」
「いなかったね」
「木挽きの馬さんだけでしたね」
「長い間そうだったんだ」
「そうでしたね」
「今はいるんだ」
 そのいる理由もです、木樵はナターシャにお話しました。
「オズの国はいい意味でアメリカが反映されるね」
「アメリカにも馬がいるから」
「そう、ドロシーと一緒に来た馬もいたし」
 そして魔法使いさん達と一緒にこの時も大冒険をしました。
「馬もオズの国に入ったんだ」
「それでも今はいるんですね」
「そうなんだ」
「そういえば馬は」
 ナターシャは馬のことから気付いてこのことを言いました。
「日本ではお刺身にします」
「馬刺しだね」
「それで食べています」
「恵梨香がお刺身大好きだね」
「それで馬刺しも食べるんです」
「日本人らしいね」
「最初そのお話にも驚きました」
 馬刺しのお話を聞いてもというのです。
「日本に行く前に日本のことを詳しく聞いて何度も驚きましたけれど」
「馬刺しのこともだね」
「馬を食べてしかも生で食べるなんて」
「生肉はロシアでは食べないのかな」
「実は食べますけれど」
 そうだというのです。
「タルタルステーキです」
「それは生肉なんだね」
「はい、生のお肉を刻んでそこに玉葱とかを混ぜて食べます」
「ロシアにあるお料理だね」
「そうです、けれど」
 それでもと言うナターシャでした。
「日本でもそうしたのがあってしかもお刺身というのは」
「そのことに驚いたんだね」
「そうでした」
「それでナターシャは馬刺しを食べたことは」
「あります」
 一言で、です。ナターシャは答えました。
「それで美味しかったです」
「そうだったんだね」
「お魚のお刺身は山葵醤油で食べますけれど」
 日本ではそうしています、勿論恵梨香はいつもそうして食べています。
「馬刺しは生姜醤油や大蒜醤油で食べます」
「そこは違うんだね」
「はい、そうです」
 こう木樵にお話するのでした。
「それがまた美味しくて」
「成程ね、聞いていて参考になるよ」
「私もよ、じゃあ今日のお昼はね」
「馬刺しですか」
「それを食べましょう、それとね」
 オズマは微笑んでナターシャだけでなく皆にお話しました。
「御飯とお味噌汁、それとお野菜の天麩羅とおひたしね。ハンクは草ね」
「うん、僕はそれだけ」
「どの草がいいかしら」
「そうだね、今日はウィンキーの南の草かな」
「そこの草がいいのね」
「気分的にね」
 そこの草を食べたいというのです。
「そう考えてるよ」
「わかったわ、じゃあね」
「その草を食べて」
 そしてというのです。
「お腹一杯になるよ」
「それじゃあね」
「デザートは何かな」
 木樵がオズマに尋ねました。
「僕は皆が甘いものを食べて笑顔になるのを見たいけれど」
「食べた最後に」
「うん、何かな」
「羊羹がいいかしら」
 オズマがお話に出したデザートはこれでした。
「それとお茶ね」
「完全に和食だね」
「馬刺しだから」
 それがメインだからだというのです。
「そうしたの」
「成程ね」
「じゃあもういい時間だから」
 お昼だというのです。
「皆で食べましょう」
「はい、それじゃあ今から」
「草原に出てね」
 煉瓦の横のです。
「そこで食べましょう」
「わかりました、それじゃあ」
 ナターシャは微笑んでオズマに応えました、そしてでした。
 皆でお昼を食べました、それからまた歩いてです。 
 日が暮れると晩御飯を食べて近くのお池で身体を奇麗にしてから寝ました。そして朝御飯を食べて出発する時にです。 
 木樵は自分の身体に油を塗って関節のところに油をさしてこう言いました。
「これでいいよ」
「準備万端ですね」
「うん、僕は充分だよ」
「木樵さんのお身体が奇麗になりましたね」
「充分に動く準備も出来たからね」 
 だからというのです。
「これでいいよ」
「木樵さんにとって油を塗ることがお洒落で」
「関節に油を挿すことが食事だよ」
「そうなりますね」
「うん、だからもうこれでね」
「今日も元気にいけますね」
「そうだよ、じゃあ行こう」
「何か木樵さんがいますと」 
 ナターシャは今も微笑んで言いました。
「凄く頼りになりますね
「そう言ってくれるんだね」
「実際に木樵さんがいてくれるとね」
 ハンクも言います、朝御飯の草をたっぷりと食べた後で。
「百人力だよ」
「ええ、私も頼りにしているわ」
 オズマも笑顔で言います。
「オズの国で最も優しい勇者だから」
「だといいけれどね」
「その貴方と一緒にね」
「これからだね」
「牧場に行きましょう」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、皆は牧場に向けて出発しました。そして四人で煉瓦の道から離れたその道を進んでいますと。
 ふとです、目の前にです。
 一頭の馬がいました、赤くて大きな馬です。
 その馬にです、ナターシャは尋ねました。
「貴方はどうしてここにいるの?」
「うん、実は牧場を出てね」
「牧場っていうと」
 オズマは牧場と聞いてお馬さんに尋ねました。
「まさかミシェルさんの」
「そうだよ、僕時々牧場を出てね」
 そしてというのです。
「こうしてお散歩をしているんだ」
「ミシェルさんが心配しない?」
「事前に何処に行くかは言ってるから」
「問題ないのね」
「うん、今日もちゃんと言って出たから」
「ミシェルさんも心配していないのね」
「そうだよ」
「ミシェルさんっていいますと」
 そのお名前を聞いてです、ナターシャは言いました。
「牧場の」
「そう、牧場を家族でやっている人よ」
「そうなのね」
「そう、それでね」
 まさにというのです。
「私達が行く牧場はね」
「そのミシェルさんがやっている牧場ですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「そこに行くのよ」
「じゃあこのお馬さんについて行くと」
「ええ、それでね」 
 まさにというのです。
「すぐに行けるわ」
「そうなんですね」
「まあ僕もね」
 赤いお馬さんも言います。
「これから牧場に帰るつもりだったから」
「じゃあ君と一緒に牧場に言っていいかな」
 木樵がお馬さんに聞きました。
「今から」
「いいよ、じゃあ一緒に行こう」
「それではね」
「それにしてもこのお馬さん」
 ナターシャはお馬さんをじっと見て言いました。
「凄く大きくて立派な身体をしてるわね」
「そうね、乗ったら凄くね」 
 そしてというのです。
「速く走れそうね」
「自信あるよ、僕は牧場で一番足が速いんだ」
「そうなの」
「そうだよ、もう一日で千キロは走られるよ」
「それは無理じゃないの?」
「無理じゃないよ、速くて寝ている時以外はどれだけでも走られるからね」
 だからだというのです。
「食べることはしてもね」
「それで一日千キロもなのね」
「走られるよ」
「それは凄いわね」
「だからね」 
 それでというのです。
「僕に乗りたい時は何時でも言ってね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「貴方はとても大きいから」
 小学生のナターシャから見ればです、お馬さんは見上げる位に大きいです。
 それで、です。ナターシャはこう言うのでした。
「私には乗れないわ」
「私も無理ね」
 オズマも言います。
「貴方には乗れないわ」
「僕でやっとかな」
 木樵はこう言いました。
「君に乗れる大きさかな」
「木樵さん位かな」
「そうみたいだよ、けれど僕は今は君に乗らないでね」
 そしてというのです。
「歩いていくよ」
「そうするのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「気を使わなくていいよ」
「わかったよ、じゃあね」
「一緒に行こう」
 こう言ったのはハンクでした。
「牧場までね」
「うん、そういえば君はいつもトロットさんと一緒にいると聞いたけれど」
「今回は違うんだ」
 ハンクはお馬さんにすぐに答えました。
「オズマ姫と一緒なんだ」
「そうなのね」
「うん、こうした時もあるよ」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「そのことも気にしないで」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で一緒にでした、お馬さんの案内を受けて牧場に向かいました。その牧場は暫く進むと見えてきましたが。
 その柵に囲まれた牧場を見てです、ナターシャはその湖みたいな目を一旦瞬かせてからそのうえで言いました。
「これはまた」
「広いね」
「ええ、こんな広い牧場は」
 それこそと言うのです、お馬さんに答えて。
「見たことがないわ」
「オズの国の牧場は何処も広いけれどね」
「この牧場はなのね」
「特に広くてね」
「それでよね」
「オズの国で一番美味しいお肉とミルクがあるんだ」
「だから私達も来たのよ」
 オズマがナターシャに言います。
「この牧場にね」
「そういうことですね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「この牧場は広いから」
「迷子にならない様にですね」
「気をつけてね」
 ナターシャにこのことを言うのでした。
「くれぐれもね」
「わかりました」
「ミシェルさんはとてもいい人だけれど」
 それでもというのです。
「とにかく広いから」
「道に迷わないこと」
「そのことには気をつけてね」
 こう念押しをしてでした、お馬さんに案内されてそうして牧場の正門のところに来ました、お馬さんがそこに来ますと。
 牧場の中にいたギリキンの服の小さな男の子が来てです、門を開けてからお馬さんに言いました。
「お帰り」
「うん、只今」
「お客さん達を連れて来たみたいだけれど」
 男の子はオズマを見て言いました。
「オズマ姫が」
「そう、来られたんだ」
「何かあったんですか?」
 男の子はオズマ本人に尋ねました。
「一体」
「ええ、実はね」
 オズマは男の子にここまで来た事情をお話しました。
 そのお話を聞いてです、男の子は言いました。
「そうですか、お肉をですか」
「ミシェルさんはおられるかしら」
「お父さんですね、いますよ」
 男の子はオズマに笑顔で答えました。
「牧場の中に」
「そう、それじゃあね」
「お父さんにお話をして」
「お肉を頂くわ、そしてお礼にね」
 エメラルドを出して言うのでした、とても大きなそれを出して。
「これをね」
「うわ、凄く大きいですね」
「どうぞってね」
「そんなのもらうなんて」
「いいのよ、お礼だから」
 それでと答えたオズマでした。
「とにかくね」
「はい、お父さんに会ってですね」
「お話をするわ」
 そのミシェルさんにもというのです。
「これからね」
「わかったわ、それじゃあね」
 男の子とお話をしてでした、そして。
 お馬さんはオズマにです、こう言いました。
「じゃあこれからね」
「うん、ご主人のところに行って」
「そしてね」
「直接お話をするんですね」
「そうするわ、それじゃあね」
「また会おうね」
「うん、それじゃあね」
 笑顔で別れの挨拶をしました、そしてお馬さんは男の子と一緒に牧場の向こう側に行ってでした。オズマは彼等を見送ってです。
 オズマはあらためてです、ナターシャ達に言いました。
「じゃあ今からね」
「ミシェルさんのところにね」
「行きましょう」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆でミシェルさんを探しだしました、ですが。
 牧場はかなり広くて中々見付かりそうになりません、ですが。
 ここで、です。ハンクが皆に言いました。
「誰かに聞く?」
「牧場の中にいる牛さんか馬さんに」
「うん、だってこんなにいるんだよ」 
 牧場の中でのどかにいる色々な生きもの達を見回して言います。牛に馬、羊に豚に山羊に鶏にです。牧羊犬達もいます。
「それならね」
「誰かにミシェルさんの居場所を聞こう」
「そうね、それがいいわね」
 オズマはハンクの提案に頷きました。そして実際にです。
 近くにいる牛さんに尋ねるとです、牛さんはこう答えました。左斜め上の方を自分のお顔で指し示してです。
「あそこにいるよ」
「あっ、そういえば」
 ここで言ったオズマでした。
「紫の服の人がいるわね」
「見えるかな」
「ええ、小さくだけれど」
 オズマはその人をよく見つつ牛さんに答えました。
「見えるわ」
「あそこにいるのがミシェルさんだから」
「だからなのね」
「行くといいよ」
「わかったわ、それじゃあね」
「とにかく広い牧場だからね」
 何しろ中にいる人が小さく見える位です、もう向こう側の柵は見えないです。地平線みたいにすらなっています。
「見付からないよね」
「中々ね」
「だから僕に聞いて正解だったよ」
「そうね、ハンクの提案通りね」
 ハンクを見て言うオズマでした。
「お陰で助かったわ」
「そう言ってくれると何よりだよ」
「それじゃあね」
「今からね」
「僕はここにいるから」
 牛さんは牧草を食べつつオズマ達に答えました。
「それじゃあね」
「ええ、またね」
 こうお話してでした。そのうえで。
 オズマはその今は小さく見えるミシェルさんのところに行きました、近付くにつれミシェルさんが家畜達に異常がないのか見ているのがわかりました。
 そしてです、かなり歩いてミシェルさんのところまで行くと。太ってとても優しい笑顔の白いお肌のギリキンの紫の服を着た男の人がいました。
 その人からです、オズマに気付いて言ってきました。
「これはオズマ姫」
「お久しぶり、ミシェルさん」
 オズマは微笑んでミシェルさんに挨拶をしました。
「お元気そうね」
「この通りですよ」
 にこりと笑って答えたミシェルさんでした。
「私はいつも元気です」
「それは何よりね」
「それでこちらに来られた理由は」
「実はね」
 オズマはミシェルさんにも理由をお話しました、そのお話を聞くとです。
 ミシェルさんは満面の笑顔でこうオズマに答えました。
「わかりました、どうぞ」
「貰っていっていいのね」
「はい、牛肉でしたら」
 そのオズマが欲しいものをというのです。
「好きなだけ持って行って下さい」
「悪いわね」
「いいですよ、本当に幾らでもありますから」
 これがミシェルさんの返事でした。
「どんなお肉もミルクも」
「幾らでもですか」
「冷凍庫に行けばね」
 ミシェルさんはナターシャにも笑顔で答えます。
「山の様にあるよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「好きなだけ持って行ったらいいよ」
「何か悪いですね」
「いいよ、遠慮はね」
 ミシェルさんも笑顔でこう言うのでした。
「好きなだけ持って行っていいから」
「それじゃあ」
「エメラルドもいいんだけれど」
「ええ、それは貰ってね」
 オズマはミシェルさんにそのエメラルドを差し出して言いました。
「私からの気持ちだから」
「なら気持ちを頂きます、今から冷凍庫まで案内します」
 こうしてでした、皆は冷凍庫のところまで案内してもらうことになりましたが。木樵はお空のお日様を見て言いました。
「丁度ね」
「あっ、もうね」
「お昼だよ」
「じゃあお昼御飯を食べましょう」
 オズマはこう木樵に答えてです、ミシェルさんに声をかけました。
「貴方もどうかしら」
「お昼ですね」
「ええ、どうかしら」
「席だけ一緒にさせてもらいます」
「それだけなの」
「女房が作ってくれたお弁当がありますから」
 それを出しての言葉です。
「それを食べます」
「そう、じゃあね」
「はい、席だけ一緒で」
「それで、なのね」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆でお昼を食べました、オズマ達はテーブル掛けから出したものを食べて木樵は皆の笑顔を楽しみました。そしてです。
 また歩いて冷凍庫のある木造の建物の中にいました、そしてミシェルさんが冷凍庫の扉を開けますと。
 そこにはお肉が一杯ありました、ビニールに包まれたそれが。ミシェルさんはその肉の塊達を指差して言いました。
「これを好きなだけ持って行って下さい」
「この冷凍庫は実は中にどれだけでも入るの」
 オズマがナターシャに冷凍庫のことをお話します。
「それこそね」
「どれだけでもですか」
「そうなの、それも取ろうと思ったら」
 その時はというのです。
「古いものからどんどん先に出てね」
「お肉を無駄にしないんですね」
「だから賞味期限のことも気にしなくていいの」
「凄い冷凍庫ですね」
「オズの国の冷凍庫だから」
 それでというのです。
「そうした風になっているのよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
 それでと言うのでした。
「今から皆でお肉を入れましょう」
「それじゃあ」
「このバスケットボックスは保温も出来るからね」
 木樵がナターシャにそのことをお話しました。
「お肉を凍ったまま都まで持って行けるよ」
「それじゃあね」
「そう、行こうね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で、でした。バスケットボックスの蓋を開けてお肉を入れていきました。本当にお肉はバスケットボックスの中にどんどん入ります。
 そしてもうどれだけ入れたのかわからない位になってです。オズマは皆に言いました。
「これ位でいいわ」
「これだけあればですね」
「ええ、充分な量よ」
 カレーの中に入れるにはというのです。
「宮殿の皆がお腹一杯食べるだけのね」
「量がありますね」
「そうですか、じゃあ」
「これでいいわ」
「それじゃあですね」
「ええ、これを持って都まで帰りましょう」
 こう言うのでした。
「それじゃあね」
「はい、わかりました」
 こうお話してでした、皆でです。
 ミシェルさんに別れの挨拶をしようとしました、ですがここで。
 ミシェルさんは皆にです、こう言いました。
「もう夕方ですから」
「それでなのね」
「今日はうちに一泊しますか?」
「いいのかしら」
「だから私は遠慮が苦手なんですよ」
 ミシェルさんは笑ってオズマに答えました。
「ですから」
「それでなのね」
「はい、遠慮は無用ですよ」
 こう答えるのでした。
「ですから」
「それじゃあ今日は」
「うちの肉と乳製品の料理をどうぞ」
 そちらをというのです。
「心ゆくまで楽しんで下さい、風呂もありますから」
「お風呂もいいのね」
「どうぞ、それで笑顔で都まで戻って下さい」
「それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
 こうしてでした、皆でです。
 この日はミシェルさんのお家で一泊しました。ナターシャは晩御飯に食べたステーキについてその場で言いました。
「確かに凄く」
「美味しいでしょ」
「はい、本当にです」
 一緒にステーキを食べているオズマに答えます。
「美味しいです」
「これがミシェルさんの牧場のお肉なのよ」
「そうなんですね、お肉の質もよくて」
 それにと言うナターシャでした。
「焼き加減、お塩や胡椒にソースも」
「どれもでしょ」
「絶品です」
 本当にというのです。
「凄く美味しいです」
「そうでしょ、だからね」
「カレーのお肉もですね」
「凄く美味しいのよ」
「確かにそうなりそうですね」
 ナターシャはステーキを食べつつ言います。
「これだけのお肉なら」
「だからこの牧場まで来たのよ」
「そういうことですね」
「さあ、どんどん食べてくれよ」
 ミシェルさんは奇麗な奥さんと沢山の家族に囲まれながらナターシャに言います。
「ステーキも他の料理もね」
「はい、チーズやバターも」
「どれもね」 
 どのお料理もというのです。
「楽しんでくれよ」
「確かに」
 ナターシャは茹でたお野菜の上に乗せたチーズをお野菜と一緒に食べました。それは茹でられたお野菜の熱で溶けていてです。そのお味は。
「とろけそうです」
「美味しくてだね」
「はい、本当に」
 こう言うのでした。
「凄く美味しいです」
「これがうちのチーズでね」
「バターもですね」
「そうだよ」
「このバターは」
 オズマがそのバターを食べていました。ステーキの上に乗せられていて溶けているそれをお肉と一緒にです。
「確かにね」
「美味しいですね」
「とても」
「だからお肉だけじゃなくね」
 それにというのです。
「乳製品も楽しんでくれよ」
「わかりました」
 ナターシャは今度はパンを食べています、パンにはバターをたっぷりと塗っています。そしてそのパンの味も最高でした。
 デザートはヨーグルトでした、そのヨーグルトもとても美味しくて心から満足出来ました。そして晩御飯の後で。
 オズマとナターシャはミシェルさんのお家のお風呂に入りました、その温かいお風呂の湯舟の中に一緒にいてです。
 オズマはナターシャにです、にこりとした笑顔で言いました。
「凄く美味しいお肉でしょ」
「はい、驚く位に」
「そのお肉を使うから」
「カレーは、ですね」
「そのことからも美味しくなるわよ」
 一緒に湯舟の中にいるナターシャに言うのでした。湯舟はかなり広くて二人が入っても充分過ぎる広さです。
「楽しみにしていてね」
「わかりました」
「それじゃあね」
「はい、明日はここを出発して」
「都に帰るわよ」
「わかりました」
「さて、それでね」 
 オズマはここで話題を変えました
「ナターシャの髪型だけれど」
「何かありますか?」
「今はお団子にしてるわね」
 お風呂に入るからです、オズマもそうですがナターシャは普段のお姫様みたいなゴスロリに似合う髪型ではなく後ろで上に上げてお団子にして束ねています。
「その髪型もいいわよ」
「そうですか」
「ええ、とてもね」
「お風呂に入る時はこうしています」
「それで髪を洗う時はなのね」
「ほどいて洗っています」
 そのお団子をというのです。
「そうしています」
「そうなのね。実は私もね」
「姫様もですか」
「身体や髪の毛は自分で洗ってるから」
 だからだというのです。
「こうしてお団子にしてね」
「洗う時にですね」
「ほどいてるの」
「そうされていますか」
「どうかしら、私の今の髪型は」
「普段のストレートもいいですけれど」
 長い見事なブロンドの髪をほどいたそれをです。
「その髪型もです」
「いいのね」
「素敵です」
「そう、じゃあお風呂に一緒に入る時はですね」
「その髪型をですね」
「見せていいかしら」
「お願いします」
 ナターシャは微笑んでオズマに言うのでした、そして二人共髪の毛も身体も洗ってでした。身体も奇麗にしてベッドの中で寝て。
 次の日ミシェルさんの家族にベーコンエッグとヨーグルトをたっぷりとかけたフルーツ、それに牛乳をご馳走になってです。
 ミシェルさん達にお別れの挨拶をして手を振り合って別れてでした。
 ハンクがです、皆に笑顔で言いました。
「じゃあ都に戻ろう」
「うん、今からね」
 木樵が応えてです、そして。
 都への帰路につきました、オズマ達の旅は折り返し地点について意気揚々と帰るのでした。



お肉も手に入ったな。
美姫 「バスケットボックスのお蔭で、重さを感じずに良いみたいだしね」
だな。美味しいカレーの為に皆、続々と帰国と。
美姫 「次はどんな感じになるのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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