『新オズの腹ペコタイガー』
第八幕 最高に美味しいお米
ドロシーはかかしと臆病ライオン、それにカルロスと一緒にウィンキーの国に入っていました。その黄色の国に入ってです。
ドロシーはにこにことしてです、皆に言いました。
「こうしてウィンキーに来たら」
「うん、思う出すね」
「最初の冒険の時をね」
かかしと臆病ライオンが応えます、煉瓦の道の左右に広がる奇麗な黄色の草原とその遠くに見える森林を見つつ。
「マンチキンから都に入って」
「それで魔法使いさんにこの国の魔女を退治しろって言われたね」
「そして何とか皆で力を合わせてね」
「魔女の攻撃を退けて」
「最後は私がお水をかけて」
魔女がお水が弱点とは知らなかったのですがそれでもでした。
「やっつけたのよね」
「それが最初の冒険だったね」
「ドロシーがこの国に来たね」
「そうしたことがあったから」
だからだというのです。
「この国に来るといつも懐かしさを感じるわ」
「僕は今はこの国に住んでいるしね」
かかしは右の人差し指を立てて言いました。
「色々な思い出があるよ」
「そうした国よね」
「木樵君とジャック君もいるしね」
「ええ、皆にとって思い入れのある国よね」
「オズの国の中でもね」
「そうですよね、僕も読みました」
カルロスもお話に入りました、ここで。
「皆さんのこの国での冒険は」
「ええ、王室年代記に書いてあるわね」
「それを読みました」
「あの時は大変だったのよ、けれどね」
ドロシーはにこりとした笑顔でカルロスにもお話します。
「今はとてもいい思い出よ」
「そうですよね」
「それからも何度もこの国に来ていて」
ドロシーは笑顔のまま言います。
「今回もね」
「このウィンキーの国に来ましたね」
「ええ、それでだけれど」
あらためてです、ドロシーは皆に言いました。
「これからね」
「僕達が手に入れるべき食材を手に入れるんですね」
「そうよ、私達が手に入れるものはお米だけれど」
「お米っていいますと」
ここでカルロスが言うことはといいますと。
「水田ですよね」
「ええ、水田のお米よ」
「そうですよね」
「オズの国のお米もね」
「そのお米ですけれど」
ここでカルロスが言うことはといいますと。
「恵梨香はお米は水田で作るものって思ってますよね」
「オズの国でもそうだけれどね」
「けれどお米は水のない田んぼで作る種類もありますよね」
「そう、中にはね」
かかしがカルロスの今の言葉に応えました。
「そうしたお米もあるよ」
「そうですよね」
「けれど恵梨香そうしたお米は知らないんですよね」
「うん、恵梨香はお米はね」
「絶対に水田で作るものって思っていますね」
「日本ではそうだからね」
「はい、日本でのお米は」
まさにとです、カルロスはお話します。
「水田のものですね」
「全部そうだね」
「だから」
それでとです、カルロスはまた言いました。
「そうした畑みたいな田んぼもあるって聞いて驚いていました」
「どうもね」
ドロシーは考えるお顔になてです、こう言いました。
「日本人の感覚だとね」
「お米は水田ですね」
「そこで作るってイメージがあるわね」
「どうしてもですね」
「そうよね、恵梨香は御飯が大好きだけれど」
「もう水田から作るって完全に思ってますね」
「日本人は皆そうなのかしら」
考える表情のまま言うドロシーでした。
「お米は水田から作るものって考えているのかしら」
「そうみたいですね、学校の日本人の子皆そう言います」
それこそというのです。
「お米は水田から作るものだって」
「そのイメージが完全に定着してるのね」
「そうみたいです」
「オズの国も日系人の人いるれど」
その人達もというのです。
「皆お米は水田よ」
「それでオズの国も」
「ええ、日系や中国系の人が作るお米はね」
それこそというのです。
「水田よ、そして私達もね」
「皆さんですね」
「水田よ、あとはね」
さらに言うのでした。
「少しだけ水のない田んぼもあるわよ」
「そうですよね、オズの国のお米も」
「だから恵梨香もこの国に来ても」
「はい、お米は水田って思っています」
「そうよね」
「それでだけれど」
ここでまた言って来たかかしでした。
「今回僕達が行く人のお米はね」
「どういったお米ですか?」
「水田で作るお米だよ」
オズの国でもオーソドックスなそちらだというのです。
「そしてインディカ米だよ」
「細長いお米ですね」
「そうだよ」
その通りとです、かかしはカルロスに答えました。
「そのお米はね」
「そうですか、わかりました」
「じゃあ食べやすいですね」
「細長いお米の方がカレーに合うかな」
臆病ライオンはインディカ米と聞いてこう言いました。かかしは何も食べる必要がないのでこのお話には入りません。
「やっぱりね」
「そうだよね、カレーならね」
「そちらだよね」
「僕もそう思うよ」
「そうだよね。恵梨香もそちらのお米も好きだけれど」
「恵梨香が一番好きなのは日本のお米だね」
「そうなんだ」
カルロスは臆病ライオンに応えました。
「恵梨香はそのお米が一番好きなんだ」
「そうみたいだね、あの娘は」
「お握りとかお寿司が好きだけれど」
「あと丼とかね」
「そうした時の御飯は」
それこそというのです。
「ジャポニカ米がいいって言うんだ」
「粘りの強いお米だね」
「そちらの方がなんだ」
「恵梨香の好みはね」
ドロシーが言うには。
「日本人のものね」
「そうですよね」
「私もあの娘の好みには気付いてたわ」
「恵梨香はお米が大好きで」
そして、なのです。
「ジャポニカ米派ですね」
「そうよね」
「そこに特徴があるわ」
大いにというのです。
「あの娘のね」
「好みの」
「そう思うわ、ただ」
「ただ?」
「ジャポニカ米も美味しいのよね」
ここでこうも言ったドロシーでした。
「あちらはあちらで」
「お握りやお寿司にしたら」
「美味しいわ」
「あとあの糸を引いたお豆の」
「納豆ね」
「僕最初あれを見てうわ、ってなったんですが」
その納豆のお話もするのでした。
「あれにも合いますね」
「そうなのよね、納豆もね」
「匂いは強いですが」
それでもというのです。
「味はあっさりしていて」
「美味しいんですよね」
「実はね」
「糸がひいていてねばねばしていても」
「あのあっさりさは凄いわ」
ドロシーもこう言うのでした。
「本当にね」
「そうですよね」
「不思議な食べものよ」
「日本には不思議な食べものが多いですけれど」
「納豆は特に不思議ね」
「僕もそう思います」
「何かそうしたお話してるとね」
臆病ライオンは大きな舌を出してお口の周りを舐め回してから言いました。
「お昼に御飯食べたくなったよ」
「あら、じゃあお昼は御飯ね」
「それにする?」
「そうしようかしら」
「それがいいかもね」
こうしたお話しながらです、皆はウィンキーの国を西に西にと進んでいきます。カルロスは道の左右のウィンキーの黄色い家たちを見ながら言いました。
「そろそろお昼ですね」
「もう少ししたらそうするわ」
「そうですよね、それでなんですが」
「私達がこれから行く場所ね」
「そこは何処ですか?」
「西に西に行った場所よ」
「このウィンキーの国をですか」
カルロスはこう尋ねました。
「さらにですか」
「そうなの、ジャックのお家やかかしさんのお家を越えてね」
「西に行くの」
「そうして進んでいけばですか」
「とても広い水田が見えるから」
「そこが、ですね」
「私達の行く場所よ」
「マリューさんっていう人がその水田の主なんだ」
かかしもカルロスに説明します。
「オズの国で一番美味しいお米を作ると評判の人でね」
「実際に凄く美味しいんだ」
臆病ライオンも言います。
「オズの国でもね」
「本当に一番なんだね」
「そうなんだ」
「だからね」
それでというのです。
「僕達は今からマリューさんのところに行くんだ」
「その人のお家がもっと西に行けばあるんだね」
「黄色い中に緑の水田があるから、いや」
臆病ライオンは自分のその言葉を訂正して言いました。
「もう収穫時かな」
「じゃあお米は緑じゃないね」
「黄色くなっているね」
「金色って言うべきかな」
カルロスは微笑んで臆病ライオンにお話しました。
「収穫時のお米は」
「そちらの色だね」
「あの色のお米を見ると」
「もう凄く美味しそうだよね」
「恵梨香が大好きなんだ」
「特にあの娘が」
「そうなんだ」
こうお話するのでした。
「あの娘のお米好きはもう筋金入りだから」
「それで収穫時にお米を見たら」
「もう目がきらきらするんだ」
もうそれだけでというのです。
「それがまた凄いから」
「恵梨香らしいのかな」
「お米が好きってことが」
「というかあの娘がここに来たらどうなっていたかな」
「もう凄く喜んでいたと思うよ」
「それこそ」
「そう、はしゃぐ位にね」
「カルロスみたいになるのかしら」
ドロシーはカルロスが五人の中ではムードメーカーのポジションにいてとても明るい性格であることから言いました。
「その時の恵梨香は」
「そこまではならないですね」
「やっぱりそうよね」
「僕は五人の中で一番賑やかですから」
自分でもこのことはわかっています。
「また特別です」
「じゃあ恵梨香がはしゃぐにしても」
「あの娘は大人しいですから」
「そうしたはしゃぎ方はしないわね」
「そう思います」
「やっぱりそうよね」
ドロシーもこう応えます。
「あの娘だと」
「はい、あの娘は」
「あの娘なりに最もテンションが高くなる」
「そうなりますね」
「そうよね、じゃあもうね」
「お昼ですね」
「御飯を食べましょう」
お米のそれをとです、ドロシーは言いました。
「何がいいかしらね」
「さっき納豆のお話が出ましたけれど」
「じゃあ納豆御飯かしら」
「それもいいですけれど他にもないですか?」
「納豆だけじゃなくて」
「例えばお寿司とか」
これがカルロスの提案でした。
「お寿司でも納豆食べますし」
「納豆巻きね」
「そうしますか?」
「そうね、じゃあお寿司がいいわね」
「はい、それお願いします」
「いいね、お寿司なんだ」
臆病ライオンはお寿司と聞いてにこにことなっています、そのうえでの言葉です。「
「じゃあ皆で食べようね」
「僕はいつも通りでいいよ」
かかしは食べません、その必要がないので。
「皆が食べる笑顔を見て楽しむよ」
「わかったわ、じゃあ皆でお寿司を食べましょう」
また言ったドロシーでした。
「これからね」
「はい、それじゃあ」
こうしてでした、皆でお寿司を食べてでした。
また出発しますが右手にでした。
ブリキの木樵のお城を見てです、カルロスはこんなことを言いました。
「あのお城の傍を通りますと」
「行きたくなるわね」
「はい、どうも」
こうドロシーにも答えます。
「木樵さんに会いたくなります」
「けれど今はあの人はね」
「はい、冒険に出ておられますね」
「だから今はいないわ」
お城の中にというのです。
「オズマと一緒にギリキンに行っているわ」
「あの国に行ってですね」
「お肉を貰いに行ったわ」
「ナターシャ、それにハンクさんと一緒に」
「ええ、四人でね」
「そうでしたね」
「そういえば私はね」
ドロシーはここでも最初の冒険のことを思い出して言いました。
「今もかかしさんと臆病ライオンさんとね」
「木樵さんの四人で、ですね」
「冒険に出ることが多いわ」
「僕達が揃うとね」
臆病ライオンも言います。
「それだけで違うんだよね」
「そうよね、あの時からお友達だから」
「お互いも知っていて」
「勝手がわかってて」
「もう言葉を交えないでも」
「色々なことがわかるわ」
「全く以てそうだね」
かかしも言います、木樵のお城を見ながら。近くには自分のお家もジャックのお家も見えます。ジャックは今はいませんでしたが。
「僕達はお互いのことをよくわかるね」
「ええ、何を考えているのか」
「本当によくわかるよ」
「一緒に色々な冒険をしてきて」
「そうなったね」
「そうね、だからまたね」
ドロシーはにこにことしてかかしと臆病ライオンに言いました。
「機会があれば」
「僕達四人でね」
「冒険をしようね」
「私はオズの国で一番冒険をしてるけれど」
こうも言ったドロシーでした。
「あの時のことは本当に忘れらないから」
「ドソリーさんは冒険が好きですけれど」
ここで、です。カルロスも言いました。
「何か冒険の方からドロシーさんを招待してくれてるみたいな」
「そんな気がするのね」
「そう思いますけれどどうですか?」
「そうね、確かにね」
ドロシーも考えるお顔になってカルロスに応えました。
「私はいつもね」
「冒険に招待されていますね」
「それで冒険をしている感じがするわ」
「そうですよね、ドロシーさんご自身も」
「そんな気もするわ」
こう答えたのでした。
「何かね」
「だからドロシーさんは冒険をするんですよ」
「冒険の方から招いてくれて」
「そんな感じがするわね」
微笑んで言ったドロシーでした。
「この国に来る度にね」
「冒険にもなっていましたね」
「ええ、オズの国に定住するまでは」
「そうでしたね」
「あの時からもそうで」
そしてと言うのでした。
「今もね」
「都から出ればですね」
「冒険になっているから」
「冒険に招待されているんです」
「そうよね」
「ええ、それじゃあ今回も」
「冒険に行きましょう」
「皆でね」
こうお話してでした、皆でさらに西に進んでいきます。
そしてこの日は夕暮れまで歩いてでした。夜は夕食を摂ってテントで休んで。
朝は日の出と共に起きてでした、朝御飯を食べてです。
また出発です、その朝日を見ながらです。
カルロスはかかしにです、あらためて尋ねました。
「西に行くんですよね、僕達は」
「そうだよ」
「このまま西に行って」
「そしてその後は北に行くよ」
「煉瓦の道から外れて」
「そう、普通の道を通ってね」
そのうえでというのです。
「北に行くんだ、そうしたらね」
「その人のお家があるんですね」
「うん、マリューさんのね」
まさにその人のお家がというのです。
「あるからね」
「じゃあ田んぼがですか」
「凄い水田が広がっているよ」
かかしはこうカルロスにお話しました。
「見たらびっくりする位のね」
「それだけの広さですか」
「そうなんだ。そして広いだけじゃなくてね」
それに加えてというのです。
「そこから採れるお米がね」
「オズの国で一番美味しいんですね」
「そうなんだ、だから行くんだよ」
カルロス達もというのです。
「これからね」
「そういうことですね」
「そう、じゃあ道のことはわかったね」
「わかりました」
カルロスはかかしに確かな声で答えました。
「じゃあ行きましょう」
「これからね」
「お米はこの中に入れるわ」
ドロシーはバスケットボックスを出して皆に見せつつお話しました。
「この中には何でもどれだけでも入るから」
「魔法のバスケットボックスですね」
「毎朝パンが一杯入るバスケットボックスもあるけれど」
ドロシーが最初の冒険の時にマンチキンの魔女から貰ったものでドロシーは今も大切に持っているのです。
「これはまた別のバスケットボックスだから」
「それの中にですね」
「入れて都に持って帰るわ」
「わかりました」
カルロスはドロシーにも確かな声で答えました。
「じゃあ行きましょう」
「ええ、これからね」
さて、それじゃあね」
臆病ライオンも言います。
「まずは西に行ってそして北」
「道はそうだね」
「そうだよ、落ち着いて行こうね」
「どんな水田なのかな」
カルロスは臆病ライオンとお話しながらその水田のことを考えています。
「何か楽しみになっていたよ」
「そうそう、見たいって思ってわくわくするよね」
「本当にね」
「そのわくわくする感じがいいよね」
「冒険の醍醐味だよね」
「そわくわくするものがね」
それこそとです、臆病ライオンも言います。
「オズの国にはいつもあるんだ」
「それがオズの国だよね」
「カルロスはこの国でいつもわくわくしているね」
「うん、そうならなかったことはね」
それこそと言うのでした。
「ないよ」
「そうだね、僕もだよ」
「毎日わくわくしてだね」
「楽しく過ごしてるよ」
「だから冒険もだよね」
「大好きなんだ」
「私もよ。宮殿にいても楽しいけれど」
ドロシーも言います。
「こうして冒険に出ることがね」
「一番好きなんですね」
「そうなの、だから今もね」
「わくわくしていますね」
「水田を見ることにね、こうして皆と歩いていても」
それだけでもというのです。
「楽しいわ」
「わくわくしていますか」
「ウィンキーの景色を見ても」
丁度南の方に村が見えました、皆田畑で楽しく働いていて周りに犬や鶏、羊や馬達が楽しく過ごしています。
「わくわくするから」
「何でもわくわくする」
「それがいいのよ」
オズの国にいてというのです。
「本当にね」
「そうですね、何か飽きるってことも」
「オズの国にはないわね」
「いつも楽しい思いが出来る」
「それがオズの国なのよ」
そしてドロシー達の冒険なのです。
「だからいいの、中には沢山の国もあるしね」
「ローランドとかリンキティンク王の国とか」
「そう、色々な国があるでしょ」
「僕達まだそうした国には行ってないですけれど」
「機会があればね」
その時にというのです。
「行くことが出来るわよ」
「そうなりますね」
「そして時々の感じで」
「時々?」
「ボタン=ブライトにも会えるわよ」
いつも寝ていて起きていてもぼんやりとしているあの子にというのです。
「貴方達も一度会ってるわね」
「はい、王立大学で」
「あの子にも会えたりするから」
「あの人いつも急に出て来ますよね」
「そうした子なの。何処にいるのかわからないけれど何処かにいる」
それこそいつもです。
「そして私達とも会うのよ」
「不思議な人ですね」
「あの子もね」
「今回もひょっとしたらですか」
「会えるかも知れないわよ」
くすりと笑ってです、ドロシーはカルロスに言いました。
「その時も楽しみにしていてね」
「わかりました」
カルロスはドロシーににこりと笑って応えました、そうしたお話をしながらです。
皆でまずは西に西にと進んででした、それから。
ある道が煉瓦に北から南に交差していましたがここで、でした。
ドロシーが皆にです、微笑んで言ってきました。
「ここからね」
「北に行けばですね」
「マリューさんのお家よ」
他ならぬその人のというのです。
「今から行くわ」
「わかりました、それじゃあ」
「その前にね、もうお昼だから」
「あっ、それじゃあ」
「お昼御飯を食べましょう」
十時のお茶はもう済ませていてです、今はそうした時間でした。
「これからね」
「そして食べてですね」
「北に向かいましょう」
「わかりました、じゃあ今日のお昼御飯は」
「何がいいかしらね」
「ううん、そうですね」
カルロスはドロシーの言葉を受けてです、少し考えてから答えました。
「タコスとか」
「メキシコ料理ね」
「それと野菜スティックですか」
「そして主食は何かしら」
「ジャガイモはどうですか?」
カルロスが脳裏に浮かべたのはこちらでした。
「ジャガイモのお料理とか」
「そうね、じゃあジャガイモをボイルしてね」
そしてとです、ドロシーも応えて言います。
「上にバターを乗せた」
「それですね」
「それを食べましょう」
「いいねえ、ジャガイモをゆでてね」
臆病ライオンはここでも舌なめずりをして言います。
「その上にバターを乗せたら」
「美味しいわよね」
「最高だよね」
それこそというのです。
「ジャガイモを最後に美味しく食べる方法の一つだよ」
「そうだよね、だから僕もどうかって言ったんだ」
「いい考えだよ、じゃあね」
「これから食べよう」
「デザートはパンケーキがいいかしら」
ドロシーはデザートのお話もしました。
「シロップをたっぷりかけた」
「あっ、それもいいですね」
「そうでしょ、じゃあ皆で食べましょう」
「わかりました」
こうお話してでした、そのうえで。
皆で草原のところに出て敷きものを敷いてテーブル掛けの上からメニューを出して食べはじめました。ただかかしはいつも通り食べません。
ドロシーと臆病ライオン、カルロスの三人で食べますがそのジャガイモを食べてです、カルロスはにこにことして言いました。
「いや、急にです」
「お腹に溜まるわよね」
「はい、ジャガイモは」
「ジャガイモは食べたらね」
「他の食べものよりもですよね」
「お腹に溜まるのよ」
ドロシーもそのジャガイモを食べつつ笑顔になっています。
「だからいいのよ」
「美味しいですし」
「栄養もあってね」
「素晴らしい食べものですよね」
「あとサツマイモもね」
ドロシーはこちらのお芋についても言及しました。
「いいわよね」
「はい、あちらは甘くて」
「お菓子みたいでね」
「あちらもあちらで美味しいですね」
「ええ、だから私達もね」
ドロシーだけでなく、というのです。
「サツマイモも食べてるわ」
「そうなんですね」
「両方ね」
「お芋はいいよね」
臆病ライオンもジャガイモを食べています、それも沢山。
「僕も大好きだよ」
「ライオンさんお肉も食べるけれど」
「うん、こうしてね」
「ジャガイモとかお野菜も食べるよね」
「腹ペコタイガー君もそうだね」
「どれも好きなんだね」
「嫌いなものはないからね」
食べものの、というのです。
「だからね」
「ジャガイモや野菜スティックもなんだ」
「食べているんだ」
「成程ね」
「それじゃあね」
「お腹一杯食べてからね」
「また出発しよう」
こうお話してでした、皆はお昼御飯も楽しんでです。
そしてまた出発しました、そうしてその普通の道を北に向かって進んでいると三時位になってでした。皆の目の前にです。
見渡す限りの収穫間近の水田が広がっていました、もう収穫されている田んぼもあります。それを見てです。
カルロスは目を瞠ってです、こう言いました。
「いや、これは」
「凄いね」
「はい、凄いですね」
こうかかしにも答えるのでした。
「本当に見渡す限りですね」
「水田だね」
「いいですね」
「これがマリューさんの田んぼなんだ」
即ち水田だというのです。
「道の左右に分かれてね」
「広がっているんですね」
「そうだよ、じゃあね」
「はい、今からマリューさんのお家に行くんですね」
「マリューさんのお家はね」
ドロシーが言ってきました、水田の中にある一軒のお家を指差して。
「あそこよ」
「あれっ、何か」
「あまりよね」
「はい、水田は広いですけれど」
「お家はね」
「普通なんですね」
「そう、普通のお家なのよ」
ウィンキーの何処にもある、です。
「大きくも小さくもないね」
「そうですか」
「今から行くわよ」
そのマリューさんのお家にというのです。
「いいわね」
「わかりました、それじゃあ」
こうお話をしてでした、皆で。
そのマリューさんのお家に向かいました、するとです。
そのお家の扉を開ける前にでした、その扉からです。
黒い顎髭を生やしたウィンキーの黄色い服と帽子それにブーツを身に着けたおじさんが出てきました。そのおじさんはです。
ドロシー達を見てです、こう言いました。
「おや、ドロシー王女」
「マリューさん、今からお仕事かしら」
「うん、そうなんだ」
まさにというのです。
「これからね」
「おやつを食べてなのね」
「またお仕事だよ」
「そうなのね」
「夕暮れまで働いて」
そしてというのです。
「晩御飯を食べて」
「お風呂に入って」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「寝るよ」
「そうするのね」
「それで王女さん達はどうしてここに来てくれたのかな」
「実はね」
ドロシーはにこりと笑ってです、そのおじさんことマリューさんにです。
お話してです、あらためて尋ねました。
「それでなの」
「ここに来てくれたんだ」
「そうなの、いいかしら」
「それはいいけれど」
マリューさんはドロシーに微妙なお顔で言葉を返しました。
「お礼はいいよ」
「あら、エメラルドはなの」
「お米は何度でも好きなだけ栽培出来てね」
そしてというのです。
「幾らでもあるから」
「だからなの」
「そう、お礼はね」
それこそというのです。
「いいよ」
「そうなの」
「そう、別にね」
特にというのでした。
「そうした気遣いはいいよ」
「そういう訳にはいかないのよ」
「お礼はちゃんとしないと」
「駄目だから」
それでというのです。
「お米を貰うのならね」
「お礼としてだね」
「ええ、エメラルドを貰ってね」
「そこまで言うのならね」
マリューさんは大柄な身体にあるその二本の太い腕を組んで言いました。
「有り難く貰うよ」
「ええ、有り難う」
「そういうことでね」
「そうしてくれると私も嬉しいわ」
「じゃあお米はね」
「ええ、頂いていくわ」
「好きなだけ持って行ってね」
そしてと言うマリューさんでした。
「そのうえでね」
「そして、ですね」
「そう、それとね」
マリューさんはここでカルロスも見てでした、こうも言ったのでした。
「こちらの子は確か」
「そう、私が最初にいた世界から来たね」
「五人の子供達のうちの一人の」
「カルロスよ」
微笑んでです、ドロシーはお話しました。
「この子がね」
「そうだね、どうやらこの子は」
マリューさんはカルロスを見つつです、にこりと笑って言いました。
「運動神経が抜群だね」
「そうなの、五人の中でもね」
それこそと言うのです。
「一番運動神経がいいの」
「そうだね」
「ええ、サッカーとか得意よ」
「じゃあ畑仕事とかも出来るかな」
「畑仕事はあまり」
首を傾げさせてです、カルロスは先生に答えました。
「したことがないです」
「そうなんだね、けれどね」
「僕はですか」
「出来るね、運動神経だけでなくね」
それにというのです。
「体力もありそうだから」
「ううん、だといいんですけれど」
「農作業はね」
つまり畑仕事はといいますと。
「まずはやってみることだよ」
「最初はですか」
「そしてどんどんやっていくとね」
「それでなんですか」
「よくなっていくものだけれど君はね」
「向いてますか」
「そんな感じだね」
こう言うのでした、カルロス自身に。
「わしよりもずっとね」
「マリューさんオズの国で一番の米農家ですよね」
「いやいや、この土地がいいし」
マリューさんが今いるそこがというのです。
「わしだけじゃないからな」
「マリューさんだけじゃないんですか」
「わしに女房がいて」
そしてというのです。
「息子達や娘達がいてね」
「皆で働いてですか」
「それで作るものだからね」
だからだというのです。
「わしは自分をそうは思っていないよ」
「そうなんですか」
「わし一人ではね」
とても、という口調の言葉でした。
「何も出来ないからね」
「畑仕事はね」
かかしがここで言います。
「一人ではね」
「出来ることはですか」
「限られているしね」
「だからですか」
「そうだよ、わしも女房がいて」
またこのお話をしたマリューさんでした。
「沢山の息子と娘、その孫達がいてね」
「大家族なんですね」
「ははは、息子が九人に娘が八人いてな」
笑ってお話するマリューさんでした。
「そして孫が合わせて百五十人か」
「そんなにおられるんですか」
「牛や馬もいてな」
「そういえば」
ここでカルロスも気付きました、水田の中にお家が何十とあります。そしてどのお家にも立派な厩舎があります。
「お家が多いですね」
「わしの家族の家だよ」
「どのお家もですか」
「あとコンバインも持っているしな」
牛や馬の他にもというのです。
「皆で頑張って働いているからこそだよ」
「この水田で、ですか」
物凄く広いこの場所で、です。
「美味しいお米が採れるんですね」
「そうだよ」
まさにというのです。
「わし一人ではとてもね」
「出来ませんか」
「出来ないな」
それこそと答えたマリューさんでした。
「とてもな」
「そうなんですね」
「じゃあお米はな」
それはといいますと。
「好きなだけ持って行ってくれ、わしは今からまた働く」
「ご家族と一緒にですね」
「ああ、皆でお米を作るんだ」
満面の笑顔での言葉でした。
「これからもな」
「おやつも食べてですね」
「そうさ」
是非にというのでした。
「そうするよ」
「わかりました、それじゃあ」
「今からな」
こうお話してでした、そのうえで。
一行はマリューさんに案内されたお米の貯蔵庫に入ってそこでバスケットボックスの中にお米を入れました。そして適量と思ったところで。
ドロシーがです、皆に言いました。
「これだけあったらね」
「相当に入れましたよね」
「それこそ宮殿で皆が一年食べられるだけね」
「ははは、確かに入れたね」
案内役のマリューさんも笑顔で言います。
「皆で」
「はい、本当に」
「それじゃあな」
「後は、ですね」
「皆おやつは食べたかい?」
刈り入れを終えて来たマリューさんはここでこう尋ねました。
「おやつの時に来たけれど」
「そうだけれどもうね」
ドロシーがマリューさんに応えます。
「お米入れている間に時間が経って」
「もう夕暮れだね」
「夜になりそうね」
「晩御飯の時間ですね」
「だからね」
それでというのです。
「おやつはいいわ」
「晩御飯かな」
「そうなるわね」
「じゃあおやつは」
カルロスがここで提案しました。
「晩御飯の時に」
「デザートで」
「はい、デザートですけれど」
「おやつの量で食べるのね」
「それでどうですか?」
こうドロシーに言うのでした。
「おやつを食べ損ねても」
「夜に食べればいいってことね」
「それでどうですか?」
「そうね、おやつを食べ損ねてもね」
「そうして食べればいいですよね」
「ええ、カルロスの言う通りね」
微笑んで答えたカルロスでした。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「それなら今日はうちで食べていきな」
マリューさんは笑顔でまた皆に言いました。
「そして一泊していきな」
「いいんですか?」
「遠慮はいらないよ」
これがマリューさんの返事でした。
「皆で楽しく食べればいいよ」
「そうですか」
「御飯もあるよ」
マリューさんはこちらも出しました。
「たっぷり食べなよ」
「御飯でどんなお料理を作ってくれるのかな」
臆病ライオンがマリューさんに尋ねます。
「一体」
「パエリアだよ」
「パエリアですか」
「そうだよ、それにパンと野菜をたっぷり入れたスープに」
それにというのです。
「ローストチキンだよ」
「じゃあデザートはおやつを兼ねて」
ドロシーが言います。
「ケーキを出しましょう」
「いいね、ケーキを食べる皆の顔は最高だよ」
かかしはこう言います。
「じゃあみんなの笑顔を楽しませてもらうよ」
「では皆で食べよう、そして食べた後は」
マリューさんはさらに言います。
「お風呂も入ればいいよ」
「お風呂もですか」
「うちのお風呂は凄いから皆で楽しんで欲しいんだよ」
「凄いっていいますと」
「露天風呂でな、家族皆が入るんだ」
そうしたお風呂だとです、マリューさんはカルロスに笑顔でお話するのでした。
「男湯と女湯に分かれていてね」
「温泉ですか」
「そうなんだ、温泉なんだよ」
「うわ、それはまた凄いですね」
「そこに入って楽しめばいいさ」
「そしてですね」
「一泊すればいいさ」
こう言ってでした、そして。
ドロシー達はマリューさんに晩御飯をご馳走になってテーブル掛けから出したケーキも楽しんで温泉にも入ってです。
この日はマリューさんのお家で一泊してでした、日の出と共に朝御飯にお握りもご馳走になってマリューさんと手を振って別れました。
それから都への帰路につきましたが意気揚々としてです。
ドロシーが皆にです、笑顔で言いました。
「帰りましょう」
「これから都に」
「ええ、そうしましょう」
カルロスがドロシーに応えてでした、皆でお米を持って都に帰りました。
ドロシーたちお米班も無事にお米を手に入れる事が出来たな。
美姫 「そうね。こちらも無事に済んだわね」
ドロシーの最初の冒険の話も少しだけど聞けたし。
美姫 「着々と皆、材料を手に入れていくわね」
だな。全て揃うのが楽しみだ。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。