『新オズの腹ペコタイガー』




                 第七幕  素敵な野菜達

 ベッツイは船長さんとビリーナ、それに神宝とでした。
 都から東に向かっています、その時にです。
 緑から青にです、草の色がぱっと変わったのを皆で見てです、ビリーナが皆に言いました。
「これでね」
「うん、マンチキンの国に入ったんだね僕達は」
 神宝がビリーナに応えます。
「遂に」
「そうよ、そして私達が手に入れるものはね」
「お野菜だね」
「それよ、カレーには必要よね」
「絶対にね」
「お野菜がないとね」
 それこそとです、ビリーナは神宝に言います。
「カレーは完璧じゃないわ
「ルーとね」
「お肉とお野菜でしょ」
「それがないとね」
「御飯とね」
 これも忘れてはいけません。
「そしてね」
「果物と蜂蜜」
「その五つをそれぞれ集める」
「だからね」
 ベッツイも言うのでした。
「これから皆で行くのよ」
「そうですよね」
「私達五人もね」
「さて、今回の旅は」
 船長さんが言います。
「一体どんな旅になるのか」
「楽しみですね」
「そうだね、お野菜なら」
 船長さんは神宝に応えながら言います。
「マンチキンにいい人がいるからね」
「ジンジャー将軍ですか?」
「いや、彼女の畑や果樹園は独特だから」
「お菓子のですね」
「今回は彼女のお家には行かないよ」
「そうですか」
「途中立ち寄るかも知れないけれど」
 そrでもというのです。
「お野菜は別の人から貰うよ」
「その人は何て人ですか?」
「オオエさんっていうんだ」
「オオエさんっていいますと」
「うん、日系の人だよ」
 そのルーツはというのです。
「オズの国のね」
「恵梨香のお国の人ですか」
「そうだよ、とても優しいおばさんでね」
「お野菜を作ることがですか」
「凄く上手でね、作ったお野菜はそれこそ」
「オズの国一ですか」
「あの人が一番だね」
 何といってもというのです。
「だから僕達はマンチキンに来たんだ」
「そうだったんですか」
「期待してくれていいよ」
「それだけ素晴らしいんですね」
「うん、オズの国はお野菜も美味しいけれど」
 それでもというのです。
「あの人の作ってくれたお野菜はその中でもね」
「最高ですか」
「僕が保障するよ」
「確かにそうね」
 ベッツイもここで言うのでした。
「あの人のお野菜は最高ね」
「そうだね、ベッツイも知ってるね」
「マンチキンの国で冒険することも多いから」
 ベッツイも冒険好きなのです、このことはドロシーと一緒で何かあれば冒険に出て楽しんでいるのです。その都度。
「ご馳走になったことがあるわ」
「どのお野菜も最高だね」
「ええ、人参も玉葱もジャガイモも」
 ベッツイはお顔を明るくさせて言います。
「セロリもトマトもね」
「そうだね、苺も西瓜もね」
「凄く美味しいわ」
「パイナップルもね」
「どのお野菜もね」
「苺や西瓜はお野菜よ」
 ビリーナは歩きつつです、左の羽根を挙げて言いました。
「木に実らないから」
「そうなんだよね」
 神宝もビリーナに応えます。
「実はね」
「果物って思う人もいるけれど」
「そこは違うね」
「神宝もわかってるのね」
「最初そう言われた時は驚いたけれど」
 それでもと返す神宝でした。
「今は納得しているよ」
「畑で出来るからね」
「お野菜は畑で作るもの」
「そして果物は果樹園よ」
「甘くてもね」
「そうなのよ、私も最初は苺や西瓜は果物って思っていたわ」
 ベッツイも言います。
「けれど実はね」
「お野菜なんですよね」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「パイナップルはともかくとして」
 少しくすりと笑って言ったベッツイでした。
「苺や西瓜はカレーには入れないわね」
「合わないですよね、カレーには」
「ええ、まずね」
「カレーは色々入れられるけれどね」
 船長さんも言います。
「それでも限度があるね」
「そうですよね」
「入れられるお野菜とそうでないお野菜があるよ」
「どうしても」
「そう、それはあるよ」
 船長さんも神宝にお話します。
「それは仕方ないよ」
「西瓜とカレーはやっぱり」
「合わないね」
「苺も確かに」
「微妙だね」
「違いますね」
 神宝は自分から言いました。
「やっぱり」
「パイナップルはいいけれどね」
「そうですね、パイナップルは」
「人参と玉葱、ジャガイモに」
 ベッツイはカレーに合うお野菜を挙げていきました。
「ピーマンやセロリも入れることがあるわね」
「日本の大阪で食べたカレーはマッシュルームが入っているのとかもありましたよ」
「そうそう、茸も入れられるわね」
「あとブロッコリーとかアスパラガスも」
「そうしたのもいいわね」
「ナターシャは蕪も入れてましたよ」
「あっ、それもあるわよ」
 ベッツイは神宝にそれもありと返しました。
「確かにね」
「やっぱりそうですか」
「そう、カレーはそうしたものは入れられるの」 
 蕪にしてもというのです。
「西瓜とは苺は無理でも」
「色々と入れられますね」
「そうなの、それにね」
 さらに言うベッツイでした。
「私は少しだけ大蒜を入れたのも好きよ」
「大蒜をですか」
「少しだけね」
「身体にもいいしね」
 ここで船長さんもベッツイに続きます。
「大蒜もいいんだよ」
「じゃあ今回のカレーに入れるお野菜は」
「相当な種類でもいいかな」
「それでそのカレーをですね」
「皆で食べよう」
 腹ペコタイガーのリクエストからはじまったそれをというのです。
「是非ね」
「はい、楽しみにしています」
「まあ私はカレーよりもね」
 ビリーナが言うにはです。
「コーンやお米の粒だけでいいわ」
「それだけなんだね」
「そう、私は鶏だから」
 それでとです、神宝にも言うのでした。
「カレーはいいわ」
「お米の粒をルーに付けることは?」
「それはいいわ」
 その食べ方はというのです。
「嫌いじゃないわ」
「そうだよね、ビリーナも」
「ただ、お米の粒だけでいいの」
「それが一番なんだ」
「生のままでね」
「鶏だから?」
「そうよ」
 まさにその通りという返事でした。
「何といっても鶏は粒よ」
「お米にしてもコーンにしても」
「麦もね」
 それもというのです。
「お豆なんか大好きよ」
「大豆とか」
「大豆はいいわね」 
 ビリーナはその大豆のお話はこれまで以上にしみじみとして言うのでした。その味を思い出す様にしてです。
「お豆の中でも特にね」
「大好物なんだね」
「一番好きかしら」
「お豆の中で?」
「食べものの中でよ」
 その中の全ての中でというのです。
「好きよ」
「そうなんだ」
「身体にもいいし」
「うん、大豆は凄く身体にいいんだよね」
「神宝も好きなのね」
「お豆腐とか豆乳とか大好きだよ」 
 大豆から食べるその食べものがというのです。
「いつも食べてるよ」
「そういえば神宝よくお豆腐食べてるわね」
 ベッツイもこのことに気付きました。
「五人共だけれど」
「はい、美味しくて身体にいいので」
「それでなのね」
「確かによく食べてます」
 そうだとです、神宝自身もお話します。
「毎日じゃないにしても」
「私は毎日食べてるわよ」
 また言って来たビリーナでした。
「主食の一つよ」
「よし、じゃあ今日のお昼はお豆にしよう」 
 船長さんは皆のお話を聞いて言いました。
「お豆腐もね」
「そうね、じゃあ今日のお昼は豆腐料理ね」
 ベッツイもにこりとして言います。
「どういったのがいいかしら」
「麻婆豆腐とかどうですか?」
 神宝が提案したお料理はこちらでした。
「ビリーナは炒った大豆で」
「そうね、いいわね」 
 ベッツイは神宝の提案ににこりと笑って応えました。
「それじゃあね」
「はい、お昼は麻婆豆腐ですね」
「あとお野菜のお料理も出して」
 それもというのでした。
「青梗菜を茸、豚肉と一緒とろりと炒めた」
「味付けはチンジャオソースですね」
「そして炒飯でどうかしら」
「中華ですね」
「神宝がいるから」
 だからというのでした。
「それにするわ」
「中華ですか」
「貴方の国のお料理にね」
「有り難うございます」
「お礼はいいのよ、だって私も食べたいですから」
 だからだというのです。
「いいわ」
「そうですか、じゃあ」
「皆で食べましょう」
 その中華料理をというのです、こうお話してでした。
 皆はお昼になると黄色い煉瓦の道から離れてです、青い草原の上に敷きものを敷いてです。そうしてでした。
 テーブル掛けから麻婆豆腐に青梗菜と茸と豚肉をチンジャオソースで味付けをしたとろりとした炒めものに炒飯を出しました。デザートはライチ等フルーツです。
 ビリーナは大豆の炒めものを出してもらいました、そういったものを食べつつ。
 神宝は船長さんにです、そのオオエさんのことを尋ねました。
「オオエさんはここからどれ位の場所におられますか?」
「実はそんなに遠くじゃないんだ」
「そうなんですか」
「うん、ここから一日南東に行けばね」
「そこにですか」
「オオエさんのお家があるよ」
 そうだというのです。
「しかも道はあるから」
「あまり苦労はしないで、ですか」
「行けるよ」 
 そうだというのです。
「だから安心していいよ」
「そうですか」
「落ち着いて行こう」
 こうも言った船長さんでした、中華風のお箸とスプーンを使って麻婆豆腐や炒飯をとても美味しく食べながら。
「そこまでね」
「わかりました」
「まあ平和にいかなくても」
 アクシンデントがあってもというのです。
「皆でね」
「そうしたアクシンデントを乗り越えて」
「行こうね」
「わかりました」
「大事なことは慌てないこと」
 船長さんは落ち着いた笑顔で言いました。
「別にね」
「そうですね、いつも通りですね」
「オズの国でもね」
 それこそというのです。
「何処でもそうだね」
「はい、慌てたり焦ったら」
 それこそとです、神宝も言います。
「それで失敗しますね」
「成功するものもね」
「僕もそうでしたから」
「あらっ、神宝はいつも落ち着いてると思ったけれど」 
 ベッツイは神宝の今の言葉に意外なお顔になって返しました。
「違うの」
「はい、僕も慌てて失敗したことがあります」
「貴方は五人の中で一番頭がいいのに」
「いえ、冷静さならです」
 それこそというのです。
「ナターシャが一番ですよ」
「言われてみればあの娘いつも落ち着いてるわね」
「あの娘がいつも皆が焦ったら止めるんです」
 それがナターシャの役割だというのです。
「ですから」
「あの娘が一番冷静なのね」
「僕達五人の中では」
「そうなのね」
「慌てて失敗して」
 神宝は自分のことをお話するのでした。
「大変なことになったことがあります」
「そうなのね、言われてみればね」
 それこそとも言ったベッツイでした。
「私もそうね」
「そうなんですか、ベッツイさんも」
「焦ってね」
 それでというのです。
「大変なことになったことがあったわ」
「そうですか」
「そうなの、だから私も焦らない様にするわ」
 失敗して大変なことにならない様にというのです。
「さもないとまた同じことをするから」
「何度失敗することもあるけれど」
 それでもと言った船長さんでした。
「そこから反省することが大事だよ」
「反省しないとね」
「同じことをさらに繰り返して」
 そしてというのです。
「皆に迷惑をかけるよ」
「自分だけで済まないで」
「それはよくないよ」
 皆に迷惑をかけてはとです、船長さんは強く言いました。
「絶対にね」
「そうよね」
「愚かな人は焦った失敗を何度しても反省しないでね」
「皆に迷惑をかけるのね」
「そうなったら最悪だね」
「そうね、確かに」
 ベッツイは麻婆豆腐を食べながら船長さんの言葉に頷きました。
「周りもね」
「そうした人にならない為にも」
「忘れないことね」
「焦っての失敗もね」
「そういうことね」
「うん、だから落ち着いていこう」
 絶対にと言うのでした。
「ここはね」
「それじゃあね、後はね」
「これを食べて」
「それからだね」
「オオエさんのお家に行きましょう」
「場所はわかっているわよ」
 ビリーナは大豆を食べつつ神宝に言います。
「だから安心してね」
「うん、わかったよ」
「オオエさんのところに行けばね」
 ビリーナもこう言うのでした。
「それでお野菜が手に入るから」
「そしてそのお野菜を持ってだね」
「都に戻るのよ」
「ううん、何か今回の冒険は」
 神宝はビリーナの話を聞いて考えるお顔になって言いました。
「普通っていうか」
「平和っていうのね」
「そうかな」
「まあお野菜を貰って帰るだけだから」
 ベッツイも言います。
「いつもみたいに大冒険ではないわね」
「そうですよね」
「オズの国の冒険はいつも大冒険だけれど」
「今回はその前にカレーのお話があって」
「それで材料を集めるだけだから」
「穏やかですね」
「そうよね」
 ベッツイは炒飯を食べつつ神宝の言葉ににこりとして応えました。
「本当に」
「何か意外っていいますか」
「オズの国で冒険をして大冒険にならないことが」
「それが。本当に」
「そうかもね、けれどね」
「こうしたこともあるんですね」
「オズの国もいつも大冒険にはならないわ」
 冒険をしてもです。
「穏やかな旅になることもあるのよ」
「今みたいに」
「そうよ、じゃあいいわね」
「はい、オオエさんのところに行きましょう」
「皆でね」
「ではデザートはね」
 船長さんは皆が普通のお料理を全部食べたところで言いました。
「ライチや色々な果物だけれど」
「はい、その果物もですね」
「食べようね」
「わかりました」
 神宝は船長さんにも応えました、そしてでした。
 皆でライチや色々な果物も楽しみました。船長さんはビリーナに皮を剥いたライチを差し出して尋ねました。
「どうかな」
「いえ、それはいいわ」
「ライチは嫌いかな」
「私に少し大き過ぎるわ」
 だからいいというのです。
「葡萄を一粒貰うわ」
「そう、それじゃあね」
「ライチはいい匂いだけれど」
 それでもというのです。
「丸呑み出来ないしついばむにしても」
「難しいんだね」
「繊維が種に添って沢山あるわね」
「うん、実はそうなっているね」
「それで鶏が食べるのに向いていないの」
「じゃあ一条どうかな」
 船長さんは手でライチの実を縦に取ってです、そのうちの一条を実際に手で切り取ってからビリーナに差し出しました。
 そのうえで、です。ビリーナにあらためて尋ねました。
「これをね」
「あら、私の為に」
「うん、どうかな」
「有り難う、じゃあ頂くわ」
「それじゃあね」
「ライチは確かに美味しいのよ」
 ビリーナも否定しないことです。
「皮の中の白い実は嘘みたいな味がするわ」
「それだけ美味しいってことだね」
 神宝がビリーナに応えます。
「ライチが」
「ええ、私にとっては食べにくいけれどね」
「美味しいことは美味しいね」
「そう思うわ、私もね」
「じゃあその一条を食べて」
「それから葡萄を食べるわ」
 あらためてというのです。
「そうするわ」
「そういうことでね」
 神宝もライチを食べます、勿論ベッツイも。皆でデザートも楽しんで、でした。そうして皆はまた出発しました。
 煉瓦の道を離れて普通の野原の中の舗装されていない道を進みながらです、船長さんは皆にこうしたことを言いました。
「石には気をつけないとね」
「船長さんは特にね」
「足がこうだからね」
 ベッツイに笑みを浮かべてです、その義足を指差すのでした。
「だからね」
「そうよね」
「まあこの国では普通に歩けるけれど」
「それでもね」
「義足に石は普通の足より辛いよ」
「バランスが取りにくいからですね」
「うん、そうなんだ」
 神宝にも答えるのでした。
「だからいつもこうした道の時は気をつけているんだ」
「そうなんですね」
「こうして杖も使ってね」
 実際に杖も使っている船長さんでした。その杖も使ってバランスを取りながら皆と一緒に先に進んでいるのです。
「いつも歩いているんだ」
「義足だから」
「とはいってもね」
 船長さんはここで笑みにもなって言いました。
「歩くのは嫌いじゃないしね」
「進むのも速いわね」 
 ビリーナは自分の横にいる船長さんにお顔を向けて言いました。
「私達と同じ位ね」
「そうだね、これで普通だよ」
「歩き慣れているのかしら」
「オズの国に来てからもずっとだしね」
「もっとしっかりした義足にしたらどうかしら」
 ビリーナはこう提案しました。
「魔法使いさんかグリンダに頼んで魔法の義足を作ってもらって」
「本物の足と変わらない位の」
「そうした足にしたらどうかしら」
 義足の、です。
「そうしないのね」
「いや、わしにとってはね」
「この足がいいんですか」
「そうなんだ」
 こうお話するのでした。
「だからこれでいいんだよ」
「もっと動きやすい魔法の具足にしないで」
「わしはね」
「無欲ね、けれどそれが船長さんらしいわ」
 ビリーナはこう船長さんに言うのでした。
「納得したわ」
「してくれたんだね」
「とてもね、それじゃあ夕方までね」
「歩いて」
 そしてと言うのでいsた。
「先に進もう」
「そして後は」
「テントで休もう」
 船長さんはベッツイに答えました。
「ゆっくりとね」
「ええ、そして明日はね」
「オオエさんお家に行こう」
「是非ね」
 こうお話してでした、皆は日が落ちるまで歩いてでした。
 そして夕食を食べてです、近くのお池でそれぞれ歯を磨いて身体も洗ってから寝ました。そして日の出とともに朝御飯を食べて出発しました。
 オオエさんのお家には十時位に着きました、そして。
 お家の扉をノックすると目尻に皺がある太った青いマンチキンの女性の服を着ているアジア系のおばさんが出て来ました。そしてベッツイ達を見ると笑顔で言って来ました。
「あら、ベッツイ王女に船長さん」
「私もいるわよ」
「ビリーナも。それにこの子は」
 おばさんは船長さんも見て言うのでした。
「確か最近オズの国によく来ている」
「ええ、知ってるわね」
「五人の子供の一人でしたね」
「そうよ、神宝っていうの」
「中国からの子でしたね」
「はい、そうです」
 その通りだとです、神宝もおばさんに答えました。
「宜しくお願いします」
「ようこそ、我が家に」 
 おばさんは神宝ににこりと笑って応えました。
「アキコ=オオエよ」
「オズの国一の野菜作りの名人ですね」
「そう言われてるみたいね」
「そうですよね」
「それで今日は何の用で」
「ええ、実はね」
 ベッツイがオオエさんにお話しました。
「今度都で最高に美味しいカレーを作ることになったの」
「腹ペコタイガーのリクエストですか?」
「あら、わかるの」
「もうオズの国で食べものといえば」
 それこそというのです、オオエさんも。
「あの人ですからね」
「わかるのね」
「はい、あの人はいつも美味しいもをたっぷり食べたい人なので」
「それでどれだけ食べてもね」
「腹ペコになりますよね」
 腹ペコタイガーの名前に相応しくです。
「だからって思ったんですが」
「当たりよ、それで皆でそれぞれカレーの食材を集めることになったけれど」
「ベッツイさん達は私のところに来た」
「そうなの」
「私のお家のお野菜が欲しいですね」
「いいかしら、貰っても」
「お安い御用ですよ」
 オオエさんはベッツイに満面の笑顔で答えました。
「王女さんのお願いなら」
「それならね」
「はい、何でも差し上げますよ」
「有り難う、じゃあね」
「カレーに使うお野菜ですね」
「さて、何がいいかしらね」
「ここで長話も何ですね」
 ここでオオエさんはふとした感じで言いました。
「十時ですね」
「お茶の時間だから」
「お家の中に入って下さい、旦那は今は街に行っていませんが」 
 マンチキンの中にある街の一つにです。
「お茶をどうぞ」
「ええ、じゃあお菓子は私が出すわね」
 ベッツイはオオエさんに応えて言いました。
「それを皆で食べながらね」
「詳しいお話をですね」
「しましょう」
 こう追わしてでした、そのうえで。
 皆でオオエさんのお家に入りました、お家は青い木で作っていて青い家具が置かれている広いお家でした。木造のせいか何処かログハウスに似ています。
 そのお家のテーブルに皆で座ってでした、オオエさんは日本の麦茶を出しました。麦茶といってもマンチキンなので青いです。
 そしてベッツイはです、その青い麦茶を見て三色団子やお饅頭を出しました。
「日本のお茶だからね」
「日本のお菓子ですね」
「これでどうかしら」
「いいですね」
 にこりと笑って答えたオオエさんでした。
「では団子とお饅頭も楽しみながら」
「野菜のお話をしましょう」
「そうしましょう」
 こうしてでした、皆で日本のお茶とお菓子を楽しみつつです。
 お野菜のお話をはじめました、すると。
 ベッツイはすぐにです、オオエさんにこう言いました。
「まず人参よね」
「それと玉葱、ジャガイモですね」
 オオエさんも応えます。
「カレーに入れるお野菜は」
「この三つは絶対で」
「それでどんなカレーにされるんですか?」
「ビーフカレーかしら。量はたっぷりで」
「量は多いんですか」
「どれだけお野菜があっても魔法のバスケットボックスに幾らでも入るの」
 ベッツイだけでなくジュリア達五人の女の子がそれぞれ持っているものです。今回の食材を求める冒険においては。
「幾らでも何種類でも」
「うちの畑も幾らでも出来ますから、すぐに」
「幾らでも持って行っていいのね」
「遠慮なく、それでなんですが」
「ええ、お野菜の種類ね」
 そちらのお話に戻りました。
「何がいいかしら」
「まずは人参と玉葱、ジャガイモですね」
「この三つは外せないわね」
「それで皆でたっぷりと召し上がるんですよね」
「そうなの」
「ではお野菜の種類も多い方がいいですね」
「何がいいかしら」
 ベッツイは麦茶を飲みつつ言いました。
「他に入れるとしたら」
「マッシュルームはどうかな」
 船長さんの提案です。
「茸もね」
「そうね、マッシュルームもね」
「美味しいね」
「あとしめじとか」
「茸もいいから」
「じゃあそれも」
「他にはですね」
 オオエさんも言います、ここで。
「ピーマンやアスパラガスも」
「カレーに入れるにはね」
「いいですよ」
「そうした緑のものも」
「あと隠し味にです」
 さらに言うオオエさんでした。
「大蒜を少し」
「それもね」
「入れてはどうでしょうか」
「そうね、実はここに来るまでに皆でそうしたお話をしたけれど」
「カレーに入れるお野菜の話ですね」
「人参に玉葱、ジャガイモね」
 その三つにというのです。
「あとアスパラガスにブロッコリーと」
「茸ですね」
「マッシュルームとしめじ」
「それと大蒜ですね」
「あとは蕪かしら」
「蕪も入れますか」
「全部入れたら」
 それこそというのです。
「いいかしら」
「いいと思います、もうお野菜を入れるだけ入れて」
「美味しく栄養のある」
「そうしたのにしたらいいですよ」
「皆で一杯食べるから」
「一杯作りますよね」
 そのカレーをというのです。
「やっぱり」
「ええ、腹ペコタイガーも食べるし」
「宮殿の他の皆さんも」
「だったらね」
 それこそというのです。
「色々な種類のお野菜をたっぷりと入れる」
「そうすればいいですよ」
「それじゃあね」
「はい、人参と玉葱にジャガイモに」
「マッシュルームとしめじ、ブロッコリーとアスパラガスにピーマン」
「蕪、そして大蒜ですね」
「その全てですね」
「ええ、それじゃあね」
 ここまで全てお話してでした、お茶とお菓子も飲んで食べたところで。
 オオエさんは皆にです、こう言いました。
「それじゃあ」
「今からね」
「もうお野菜は全部採ってるものがあるから」
 ビリーナに応えてお話するのでした。
「それでね」
「皆でそれをバスケットボックスに入れて」
「持って行ってね」
「それじゃあね」 
 皆で畑に出てでした、そのもう採っていて籠に入れている人参やしめじといったお野菜達をでした。次から次にです。
 バスケットボックスの中に入れていきます、神宝はバスケットボックスの中にお野菜を入れながらこうしたことを言いました。
「本当に幾らでも入るんだ」
「それがこのバスケットボックスなの」
 ベッツイは微笑んで神宝に答えました。
「幾らでも入るの」
「そうなんですね」
「だから幾らでも入られるわ」
「凄いバスケットボックスですね」
「そうでしょ、これならね」
 それこそと言うのでした。
「何処にでも持って行けるし」
「幾らでも入れて持ち帰られますね」
「そうした便利なものなの」
「これも魔法の品ですね」
「ええ、魔法使いさんとグリンダが作ってくれたの」
「今回の冒険では皆さん一つずつ持っておられて」
「それで冒険をしているの」
 こうお話するのでした。
「お野菜を頼む為にね、あとね」
「このバスケットボックスの中に入れて持って来ているものがあったの」
「それは」
「とても大きなエメラルドよ」
 にこりと笑って言うのでした。
「それをオオエさんへのお礼に持って来ていたの」
「そんなのいいんですよ」
 そのオオエさんがにこりと笑って応えてきました、この人もお野菜をバスケットボックスの中に入れていっています。
「お野菜は幾らでも出来ますから」
「いえ、そういう訳にはいかないから」
「そうなのですか」
「お礼はちゃんとしないとね」
「だから皆がなのよ」
 ここでビリーナも言います。
「それぞれ大きなエメラルドを持って行ってるのよ」
「ジュリアさん達も」
「そうよ、食材をくれる人達へのお礼にね」
「そうなんだ」
「お礼は忘れたらいけないでしょ」
 ビリーナは神宝にしっかりとした声で言いました。
「そうでしょ」
「うん、僕もずっとそう言われてるよ」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「皆それぞれエメラルドを持って行ったのよ」
「ベッツイさんも」
「そういうことなの」
「ええ、だからね」
 ベッツイもにこりと笑って言います。
「お礼も持って来たの」
「じゃあそのエメラルドをですね」
「オオエさんにあげたの」
「本当になんですよ」
 また言うオオエさんでした。
「気遣いはいいんですよ」
「そういう訳にはいかないから」
「だからですか」
「ええ、貰ってね」
 そのエメラルドをというのです。
「どうぞ」
「それじゃあ家宝にさせてもらいます」
「是非ね」
 こうしたこともお話してでした、皆でお野菜をバスケットボックスの中に入れてでした。神宝はその全てのお野菜を入れたバスケットボックスをです。
 手に持ってみました、ですが。
 とても軽くてです、驚いて言うのでした。
「あんなに入れたのに」
「軽いでしょ」
「はい、凄く」
「魔法のバスケットボックスだからね」
「それでなんですね」
「そう、幾ら入れても重さは変わらないの」
「そうなんですね」
「だから私でもね」 
 力には自信のないベッツイでもというのです。
「持って行けるの」
「そうなんですね」
「じゃあこれを持って」
「都に帰るんですね」
「そうしましょう」
「それじゃあ」
「あっ、お豆はあるかしら」
 ふとです、ビリーナが言ってきました。
「大豆ね」
「大豆もカレーに入れるのね」
「どうかしら、それかコーンか」
「ビリーナはどちらがいいの?」
 具体的にです、ベッツイはビリーナに尋ねました。
「コーンと大豆だと」
「そうね、大豆ね」
「そちらなのね」
「やっぱりどっちかというと」
 ビリーナのより好きな食べものはというのです。
「大豆だから」
「だからなのね」
「それにするわ」
「大豆も作ってるからね」
 オオエさんも言ってきました。
「丁度いいね」
「ええ、じゃあね」
「カレーにお豆も入れるのね」
「私はそれで充分」
「カレーはなのね」
「お米も好きだしね」
 そこにお豆もあればというのです。
「じゃあ決まりね」
「大豆も入れて」
「それで帰りましょう」
「あと。そろそろお昼だから」
 オオエさんは皆にこうも言いました。
「お昼御飯どうですか?」
「オオエさんが作ってくれた」
「どうですか?」
 船長さんにも応えて言うのでした。
「それを召し上がって」
「それでは」
 船長さんもです、笑顔で答えました。
「皆で」
「遠慮はいらないから」
 ここでもこう言ったオオエさんでした。
「どんどん食べてね」
「それでメニューはどういったものなのかしら」
「煮豆とね」
 ビリーナに応えてです、オオエさんはメニューのお話もしました。
「それと人参と玉葱、蕪にベーコンのシチューと」
「美味しそうね」
「それと茸を何種類もオリーブと胡椒で炒めたものにパンよ」
「やっぱり野菜がメインね」
「うちの畑で採れたものよ」
 お野菜も茸もというのです。
「茸は栽培しているのよ」
「木を使って」
「そう、どれも遠慮なく食べてね」
「お野菜は沢山食べる」
 こう言ったのはベッツイでした。
「そうしないとね」
「はい、お野菜の栄養を摂って」
 神宝も言います。
「健康を維持しないと」
「だからね」
「それじゃあ今から」
「ええ、ご馳走になりましょう」
 こうしてでした、皆でです。
 オオエさんが作ってくれたお料理でお昼を楽しみました。デザートのプティングも食べてからお茶も飲んで。
 一行はオオエさんと手を振り合って別れました、そして。
 ベッツイは都に帰る道で、です。皆に笑顔で言いました。
「それじゃあこれからね」
「うん、都に帰ろう」
 船長さんが応えます。
「これからね」
「帰り道もね」
 そこもと言うのでした。
「気をつけて帰りましょう」
「何があればね」
 船長さんはまた言いました。
「皆で力を合わせて乗り切ろう」
「そうしましょう」
「そして安全な道を通ろう」
「この道から煉瓦の道に入って」
「後はそこから外れることなくね」 
 その煉瓦の道からです。
「都まで帰ろう」
「寄り道は不要よ」
 ビリーナも言います。
「真面目に帰るわよ」
「そうだね、じゃあ後はね」
 神宝もビリーナに応えて言います。
「都まで真っ直ぐに帰ろう」
「皆でね」
 ベッツイは手にしているバスケットボックスを見ながら微笑んでいました。このパーティーも目的の食材を手に入れることが出来ました。



野菜チームも無事に野菜を手に入れる事が出来たな。
美姫 「こちらも無事に済んだわね」
だな。帰りも寄り道はしないようだし。
美姫 「安全な道を通って帰るみたいだしね」
着々と素材も集まっていくな。
美姫 「他の人たちはどうかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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