『新オズの腹ペコタイガー』
第六幕 カドリングのスパイス
ジュリアはチクタク、臆病ライオンそしてジョージと共に冒険の旅に入りました。その冒険の旅はといいますと。
南に向かっていました、エメラルドの都から南といいますと。
「カドリングですね」
「ええ、そうよ」
ジュリアは微笑んでジョージに応えました。
「私達が行く国はね」
「そうですね」
「そのカドリングに私達が目指すものがあるのよ」
「確か僕達が手に入れるものは」
「スパイスよ」
それだというのです。
「ルーを作るね」
「それですね」
「そう、それを手に入れるわ」
「わかりました、それでそのスパイスのある場所は」
「実はこの国の奥の方、グリンダのお城に裏手にね」
そこにというのです。
「様々なスパイスを作っている人がいて」
「その人のところに行って」
「スパイスを貰うの」
「そのカレールーを作る」
「そのスパイスが凄いのよ」
まさにというのです。
「もうその人の栽培の仕方、それに場所がいいから」
「オズの国でもですね」
「最高のスパイスなのよ」
まさにというのです。
「それを貰うの、その人はグリンダのお友達で凄くいい人でね」
「お願いすればですね」
「スパイスを分けてくれるわ」
「だからですね」
「今からそこに行くのよ」
スパイスを作っているお百姓さんのところにというのです。
「わかったわね」
「はい、わかりました」
ジョージはジュリアの言葉に笑顔で頷きました。
「それじゃあ」
「さて、カドリングの国には色々な種族の人がいるけれど」
ここで言ったのは臆病ライオンでした。
「今回はそうした人達のところに寄るのかな」
「いえ、寄らないわ」
ジュリアは微笑んで臆病ライオンに答えました。
「もう一直線にね」
「そのお百姓さんのところに行くのね」
「そのつもりよ」
「一直に行って一直線に帰るんだね」
「私寄り道はしないから」
そうしたことはしないというのです。
「だからね」
「それでなんだ」
「すぐに行ってね」
そしてというのです。
「すぐに帰るわ」
「それじゃあね」
「ええ、行きましょう」
「それではーーです」
チクタクも言います。
「その人のーーところにーー行きーーましょう」
「これからね。食べものはあるわ」
それはとです、ジュリアは皆にお話しました。
「テーブル掛けがあるから」
「テントもですね」
「姫様から頂いたわ」
そうだというのです。
「どちらもね」
「だからですね」
「ええ、安心してね」
冒険の間はというのです。
「食べものと飲みもの、そして寝起きする場所もあるから」
「わかりました、じゃあ」
「二つあるから、テントは」
それはというのです。
「安心してね」
「二つですか」
「一つはジョージと臆病ライオンさんが入って」
「もう一つはですね」
「私とチクタクよ」
「私はーー別にーーいいーーですーーが」
テントに入らなくてもとです、チクタクは言います。
「寝る必要ーーがーーないーーので」
「雨が降ったらよくないし朝露が着くから」
「だからーーですーーか」
「ええ、だからよ」
「私もーーですーーね」
「そうなの、だからね」
ジュリアはチクタクに笑顔を向けて言います。
「一緒のテントにいましょう」
「それならーーです」
ここでチクタクはジュリアに言いました。
「私はーージョージ達ーーとーーです」
「一緒になの」
「休みーーます」
「男の子だけで?」
「レディーーーとーー同じ場所ではーー夜をーー過ごしません」
こう言うのでした。
「それがーー礼儀ーーです」
「真面目ね」
「そうーーでしょうーーか」
「私は別にいいけれど」
チクタクと一緒に寝てもというのです。
「貴方は機械だから」
「機械ですーーが」
それでもとです、チクタクはジュリアに返します。
「私もーー男ーーですので」
「だからなのね」
「男女ーー別のーー場所でーー寝る」
「そうなっているから」
「そうーーしまーーす」
「そこまで言うのならね」
ジュリアも頷きます。
「そうするわね」
「でーーは」
「ううん、チクタクってね」
チクタクの言葉を聞いてです、ジョージは頷きつつ言いました。
「凄く真面目だね」
「うん、そうなんだ」
臆病ライオンはジョージのその言葉に応えました。
「チクタクは僕達の中でも一番真面目だよ」
「この四人の中で?」
「オズの国全体でもね」
「一番真面目かな」
「そう言っていいね」
「そうなんだね」
「ジュリアも真面目だけれど」
それでもというのです。
「チクタク程じゃないかな」
「ええ、私もさっきのやり取り通りよ」
そのジュリアの言葉です。
「チクタク程じゃないわ」
「そうだよね」
「ええ、その真面目さも頼りにしているわ」
こうも言うのでした。
「それじゃあね」
「はい、そのチクタクと一緒に」
「スパイスを貰いに行きましょう」
こうお話してでした、四人でそのお百姓さんのところに向かうのでした。その途中チクタクの動きが止まりかけてもです。
ジュリアとジョージで背中のゼンマイを巻いてあげつつ先に進みます、赤いカドリングの国の中を。その中で、です。
赤い草原の中の黄色い煉瓦の道、皆が歩いているその道のところにです。
一人の赤い服と鍔の広いとんがり帽子とブーツ、カドリングのその服を着ている男の子が困ったお顔で歩いていました。
その男の子にです、臆病ライオンが声をかけました。
「どうしたのかな」
「あれっ、貴方は」
「うん、臆病ライオンだけれど」
「あのエメラルドの都にいる」
「オズの国の獣達のリーダーの一匹にしてもらっているね」
「噂は僕も聞いてるよ」
男の子はこう臆病ライオンに答えました。
「何でも凄く勇敢で心優しいんだよね」
「勇敢かどうかはね」
臆病ライオンはこのことにはこう返します。
「名前の通りだよ」
「いやいや、オズの国一の勇気の持ち主だって聞いてるよ」
「そうだといいけれどね」
「その臆病ライオンさんがどうしてここに?それに」
ここで、です。男の子はです。
臆病ライオン以外の人達も見てです、言うのでした。
「ジュリア=ジャムさん?宮殿のメイドさんの」
「そうよ」
ジュリアは笑顔で答えました。
「私がそのジュリア=ジャムよ」
「そうよね」
「それでそちらの機械の人が」
「チクタクーーです」
チクタクも自分から名乗ります。
「宜しくーーです」
「こちらこそね、そして」
男の子は今度はジョージを見ました。
「そっちの男の子は」
「最近オズの国に時々来てるけれど」
ジョージも自分からお話します。
「アメリカから来てる」
「ああ、何か最近j評判の五人の」
「うん、そうなんだ」
「子供達だね」
「その一人だよ」
「そうなんだね、歳は僕と同じ位かな」
男の子はジョージのお顔を見つつお話しました。
「どうやら」
「そうなるかな」
「うん、僕の名前はロンドっていうんだ」
「ロンド君?」
「ロンドでいいよ」
「わかったよ、じゃあロンドって呼ぶね」
ジョージはにこりと笑ってそのロンドに言葉を返しました。
「これからはね」
「そういうことでね」
「それでロンド」
「うん、何かな」
「困った様子だけれどどうしたのかな」
彼のそのことを察して聞くのでした。
「何かあったのかな」
「うん、実は草を探しているんだ」
「草?」
「そう、それは特別な草でね」
「どんな草なのかな」
「ちょっと特別な草でね」
それでとです、ロンドはジョージにお話します。
「スパイスでもあるんだ」
「スパイスなんだ」
「実はお父さんに言われて探してるんだけれど」
そのスパイスをというのです。
「それがね」
「見付からないんだ」
「この辺りにあるって聞いたけれど」
「そのスパイスを手に入れてどうするの?」
ジュリアもロンドに尋ねます。
「それで」
「うん、お家に持って帰ってね」
そしてというのです。
「それも植えるんだ」
「スパイスを」
「そのつもりなんだけれど」
それでもというのです。
「見付からないんだ」
「ひょっとして」
ここで、です。ジュリアはです。
ふと気付いてです、ロンドに尋ねました。
「貴方リンネさんの息子さん?」
「お父さんのこと知ってるの?」
「グリンダの宮殿の裏で沢山のスパイスを作っている」
「うん、そうだよ」
「あの人の息子さんだったのね」
しみじみともして言うジュリアでした。
「そうだったのね」
「どうしたの、一体」
「実は私達今から貴方のお父さんのろこに行くつもりだったの」
「そうだったんだ」
「そうなの、今からね」
「ふうん、そうだったんだ」
「だから今から行くつもりだけれど」
ここで、です。ジュリアはです。
三人にお顔を向けてです、こう言いました。
「この子の探しているスパイスをね」
「僕達もですね」
「一緒に探してあげる」
「そうしようとーーいうのーーですね」
「どうかしら」
こう尋ねるのでした。
「これからね」
「いいと思うよ」
最初に答えたのは臆病ライオンでした。
「困っている人を助けるのは当然のことだよ」
「そうしたことは忘れるな、ですよね」
ジョージも微笑んでジュリアに答えます。
「いつも」
「その通りーーです」
最後に言ったのはチクタクでした。
「放ってーーおいてはーーいけまーーせん」
「そうね、若し嫌って言ったら」
その時はとです、ジュリアは三人にこうも言います。
「私怒っていたわ」
「そうですよね、困っている人を見捨てていたら」
「そんなことをしたら絶対によくないから」
ジョージにも言います。
「ここはね」
「ロンドのお父さんのところに行く前に」
「そう、まずはそのスパイスを探してあげましょう」
「わかりました、それじゃあ」
「それからよ」
ジュリアはまた言いました。
「行くわよ」
「そうしようね」
臆病ライオンは微笑んで応えました、そしてです。
ジュリアはロンドにです、あらためて尋ねました。
「それでいいかしら」
「はい、何でしょうか」
「貴方の探しているスパイスだけれど」
尋ねたのはこのことです。
「どういったものかしら」
「お父さんから色とか形とか聞いてないかな」
ジョージもロンドに尋ねます。
「どんなのか」
「うん、まず色は赤くて」
「カドリングにあるからかな」
「それとは別でね。元々赤いんだ」
そうした色のスパイスだというのです。
「小さくて細長い実を持っているんだ」
「小さくて細長いんだね」
「唐辛子に似ているんだ」
「じゃあすぐにわかるんじゃないの?」
ここまで聞いてです、ジョージは赤い草原の草花を見ました。その草花も草原にあるものです。
「この草原にはない感じだから」
「そう思うよね、ジョージも」
「うん、そうじゃないの?」
「僕もそう思ったけれど」
それがというのです。
「見付からないんだ」
「それはおかしなことだね」
「二時間は探してるけれど」
「場所はここにあるんだよね」
臆病ライオンはロンドに尋ねました。
「お父さんにそう言われたんだね」
「うん、そう言われたからここに来たけれど」
「ないんだ」
「そうなんだ」
まさにというのです、困ったお顔で。
「どうしても」
「それはーーです」
チクタクが言うことはといいますと。
「一人だけーーだからーーでは」
「僕だけだから?」
「ここは広いーーです」
ロンドが探している草原、ここはです。
「お一人でーー探すーーには」
「だからなんだ」
「中々ーー見付かりーーません」
そうだというのです。
「ですーーから」
「そうね、一人で探すよりもね」
ここで言ったのはジュリアでした。
「皆で探した方がいいわね」
「そうですね、一人だと難しいことでも」
「皆でやるとね」
「楽ですし」
「見付かりにくいものもね」
ジュリアはジョージにお話します。
「見付かるわ」
「だからですね」
「ここは皆で探しましょう」
「そうすればですね」
「見付かるものよ。それじゃあね」
「はい、皆で」
「調べましょう」
こうしたことをお話してでした、皆でです。
ロンドを助けてそのスパイスを探しはじめました、草原は広いですが五人で調べていくとです。
三十分位してでした、臆病ライオンがロンドを自分のところに呼びました。
「ねえロンド」
「まさか」
「これかな」
こう言ってです、彼を自分のところに呼びました。
そしてその草原の中に生えている細長い実がある植物を見せてです、ロンドにあらためて尋ねたのでした。
「君が言った感じだけれど」
「うん、そうだよ」
すぐにです、ジョージは臆病ライオンに答えました。
「これがね」
「君の探していたスパイスだね」
「間違いないよ」
「じゃあこれを持ってね」
「お家まで帰ろう」
「そうしよう、すぐに」
「それじゃあね」
皆がそこに集まってそのスパイスを見ます、そこでジョージが言います。
「これを持って行くにしても」
「どうしてーー持ってーー行くかーーです」
チクタクも言います。
「種ーーでしょうか」
「そのまま持って行くには」
ジュリアもスパイスを見つつ言います。
「少しね」
「難しいですね」
「鉢に入れて持っていくべきよね」
「そうですよね」
「鉢ならです」
ロンドはすぐにです、その手にしている鞄からです。
一つの赤い鉢とスコップを出してです、皆に言いました。
「ここに」
「持って来たのね」
「最初からこうしてです」
「持って帰るつもりだったから」
「二つ共持ってきました」
そのスコップと鉢をというのです。
「こうして」
「用意がいいわね」
「これが僕の仕事ですから」
笑顔で答えるロンドでした。
「用意はしています」
「そうなのね」
「それじゃあです」
「これから採取するのね」
「そうします」
こうしてでした、ロンドがです。
スコップでそのスパイスを採取して土と一緒に鉢に入れました。それが済んでからジュリア達に言いました。
「これで後はです」
「ええ、お家に帰って」
「それでお仕事は終わりだね」
「そうだよ、じゃあね」
こうジュリアとジョージにもお話してでした。
鉢を鞄の中に収めてスコップもそうしてです、ロンドはあらためて皆に言うのでした。
「お家まで案内するけれど」
「道は知ってるわよ」
ジュリアが微笑んでロンドに答えます。
「もうね」
「あっ、そうなんですか」
「ええ、最初から貴方のお家に行くつもりだったし」
「道筋もですか」
「もう調べていたから」
だからだというのです。
「すぐに行けるわ」
「そうなんですね」
「じゃあ行きましょう」
ロンドのお家にというのです。
「これからね」
「わかりました、それじゃあ」
「ただ。ここから貴方のお家までね」
ジュリアは少し考えるお顔になってロンドに言うのでした。
「結構な距離があるけれど」
「うん、ここからグリンダの宮殿まで遠いよ」
臆病ライオンも言います。
「何日か歩いてだから」
「その距離を歩いて来たの」
「はい、そうです」
ロンドはジュリアにすぐに答えました。
「ここまで来ました」
「そうよね、その間食べるものは」
「道にある果物や木に実っているお弁当を食べていました」
オズの国には様々な実のなる木があります、その中にはとても美味しい果物が実のる木も多くあってです。中にはお弁当が実のる木もあるのです。
「そうしてここまで来ました」
「そうよね、やっぱり」
「はい、いつもスパイスを採りに行く時はそうしています」
食べるものはというのです。
「お水も一緒です」
「じゃあお風呂も」
「うん、河沿いでね」
ロンドはジョージにも答えました。
「いつも水浴びをしているけれど」
「その時にだよね」
「傍にあるボディーソープやシャンプーの草から取ってね」
そのボディーソープやシャンプーをです。
「奇麗にしていたよ」
「そうだよね」
「オズの国で皆がそうしているみたいにね」
「わかったよ、そのことも」
「だからいつも楽しく旅をしているんだ」
「危険は大丈夫?」
臆病ライオンはこのことを尋ねました。
「いざという時は」
「引き返したり走って逃げたりしてるよ」
「だからそのこともだね」
「大丈夫だよ」
「そうなんだね」
「どうやらーーロンドはーーです」
またチクタクが言います。
「賢いのーーですーーね」
「そうだといいけれどね」
「自分でーー賢いとーー言う人はーー賢くないーーことーーがーー多いーーです」
これがチクタクの返事でした。
「ですからーーロンドーーは」
「賢いのかな、僕は」
「私はーーそうーー思いーーます」
「だといいけれどね」
「ではーーですーーね」
「うん、これからね」
「出発ね」
ジュリアが笑顔で言います。
「これから」
「ええ、行きましょう」
笑顔で応えたジュリアでした、そしてです。
ロンドを加えて五人になった皆はです、ロンドのお父さんであるそのお百姓さんのところに再び向かいました、その途中でテーブル掛けで御飯を食べてです。
その時にです、ロンドはサンド一を食べて言いました。
「何かね」
「美味しいかしら」
「はい、一人で食べる時が多いですが」
「こうしたスパイスを探す旅の時は」
「どうしても、ですが」
「皆で食べると、よけ」
「余計に美味しいです」
ジュリアににこりと笑ってお話します。
「本当に」
「それは何よりよ。じゃあ貴方のお家に行くまではね」
「はい、こうしてですね」
「皆で食べながらね」
「御飯の時は」
「そうして行きましょう」
「わかりました。僕いつも一人旅でしたけれど」
そのスパイスを手に入れる旅の時はです。
「誰かが一緒だと全然違いますね」
「そう、一人だと危ない時も大変だけれど」
「引き返したり逃げたり」
「そうする時も大変だよね」
「死なないし怪我もしないけれどね」
オズの国だからです、誰もそうはなりません。
「けれどやっぱり大変だよ」
「そう、だからね」
「誰かも一緒だと」
「いいよ」
その分だけだというのです。
「君はお父さん以外に家族の人いるかな」
「お母さんと妹、それに犬や鶏達がいるよ」
「じゃあ妹さんかね」
「犬や鶏達とだね」
「一緒に行ったらどうかな」
「一人で旅をするよりもだね」
「うん、誰かと一緒に行った方がいいからね」
「だからだね」
「そうしたらいいよ」
これが臆病ライオンのアドバイスでした。
「君の為にもね」
「それにスパイスも簡単に見付かるし」
「今回みたいにね」
「そうだよね、旅もね」
「一人よりもだよ」
「じゃあそうするね」
こうしたこともお話しながらです、五人は夜はすぐに晩御飯を食べて水浴びをして身体を奇麗にしてからです。
すぐ寝て朝日が昇ると起きてまた歩いてでした、数日の間進んで。
グリンダのお城まで着きました、ですが今はお城には入らずにです。
その裏手にある山の中に入りました、そこに入ってです。
暫く進むと山と山の間にでした、村がありました。ジョージはその村を見てジュリアに尋ねました。
「この村にですね」
「ええ、私達がお会いするね」
「そのお百姓さんがおられるんですね」
「そうよ」
ジョージににこりと笑って答えます。
「ここにね」
「わかりました、それじゃあ」
「今からーー行きーーましょう」
チクタクも言います。
「これから」
「うん、じゃあね」
臆病ライオンも頷いてでした。
皆でロンドのお家に向かいます。ジュリア達はもうその場所を知っていました。それでそのお家の前まですぐに来られました。
ジュリアが玄関の扉をノックするとでした。
赤い服と帽子に濃い顎鬚を生やして太った男の人が出て来てです、ジュリアを見て言いました。
「おや、これは」
「おじさん、お久し振りです」
「ジュリア嬢がここまで来るなんてね」
「はい、実は」
ジュリアはその男の人に事情をお話します。
その様子を見てです、ジョージは臆病ライオンとチクタクに尋ねました。
「この人が」
「うん、ロンドのお父さんだよ」
「オズの国一のーースパイスのーー作り手ーーです」
そうだというのです。
「この方がね」
「そうーーなのーーです」
「そうなんだね」
「そうだよ」
ロンドもジョージにお話します。
「僕のお父さんだよ」
「そうなんだね」
「それで僕はね」
ロンドはジョージににこりと笑いながらお話します。
「お父さんに言われてなんだ」
「あそこまで行っていたんだね」
「そうだよ」
まさにその通りだというのです。
「そうしていたんだ」
「成程ね」
ジョージも納得しました、そして。
お話が終わったところで、でした。
お百姓さん、ロンドのお父さんはロンドにも顔を向けて笑顔で言いました。
「事情は聞いたぞ」
「僕のこともだね」
「ああ、よかったな」
「お陰ですぐに見付かったよ」
ロンドも自分のお父さんに笑顔で答えます。
「本当にね」
「そうだな、それじゃあな」
「スパイスは後で渡すけれど」
「ジュリアさん達にスパイスを渡す」
もう決めていました、このことも。
「折角ここまで来てくれたし、それにな」
「オズマ姫のお願いだから」
「断る筈がない」
そのお髭のお顔を綻ばせて言うのでした、
「絶対にな」
「そういうことだね」
「これからスパイスを取って来るからな」
「じゃあその間は」
「御前がジュリアさん達とお話をしてくれるか」
「それじゃあね」
こうしてお父さんが戻るまでの間ロンドはジュリア達とお話をすることになりました、ジュリアはその状況になってこう提案しました。
「お茶を出そうかしら」
「お茶を飲みながらですか」
「ええ。お話しない?」
ロンドににりと笑って提案します。
「これから」
「お願い出来ますか?」
「ええ、いいわよ」
にこりと笑ったままロンドに応えてです。
ジュリアは早速です、テーブル掛けを出してそこにティーセットを出しました。そのティーセットを見てでした。
ロンドは驚いてです、こう言いました。
「豪華ですね」
「うふふ、そう言ってくれるかしら」
「紅茶だけじゃなくて」
三段セットです、上はクッキー中はチョコレートケーキで下はドーナツです。ロンドはそのセットを見て言ったのです。
「おやつを三つも出して」
「ティーセットだからよ」
「それで、ですか」
「ロンドはティーセットを食べたことないの?」
「はい、うちも毎日おやつは出ますけれど」
それでもというのです。
「一度に三つもはないです」
「ティーセットを食べないのね」
「そういうものがあるなんてことも」
知らなかったというのです。
「どうにも」
「そうなのね、けれどね」
「こうした食べ方が実際にあるんですね」
「そうなのよ」
「宮殿だけのことですか?」
「結構皆食べてるわよ」
オズの国で、と答えたジュリアでした。
「この食べ方はね」
「そうなんですね」
「どれでも好きなものを食べて」
ジュリアはロンドにこうも言いました。
「三種類共食べてもいいし」
「ケーキもドーナツもですか」
「クッキーもね」
「じゃあまずはクッキーを」
「ええ、どうぞ」
皆でそのティーセットを楽しみつつお話をはじめました。とはいってもチクタクは食べないので飲んで食べているのは三人と一匹です。
その臆病ライオンがです、紅茶を飲みつつ言いました。
「このレモンティーがいいんだよね」
「ライオンさんはそっち派なの?」
ジョージが臆病ライオンに尋ねます。
「お茶は」
「ううん、ミルクティーもアップルティーも飲むけれど」
それでもというのです。
「「ドーナツの時はね」
「レモンティーなんだね」
「これが一番だよ」
「それかコーヒーだね」
「そうそう、ドーナツだとね」
「アメリカのお菓子を食べる時はどちらかだね」
「どうもミルクティーはね」
こちらはといいますと。
「美味しいけれど」
「それでもね」
「アメリカって感じしないね」
「ドーナツとかには合わないね」
「どうしてもね」
「ええ、だからお茶はレモンティーにしたの」
ジュリアは二人に話しました。
「紅茶にしようと思っていたけれど」
「そういうことですね」
「ええ、私もレモンティーが好きだしね」
こうしたことをお話しながらでした、皆でアメリカ式のティーセットを楽しみました。ジョージはここでこんなことも言いました。
「これが日本や中国のもあるんだよね」
「どういうこと?」
「うん、ティーセットは本来イギリスのものだけれどね」
「イギリスって外の世界にある国だよね」
「うん、その国のものなんだ」
レモンティーを飲みつつです、ジョージはロンドにお話します。
「本来はね。けれどね」
「今僕達が楽しんでいるのはアメリカ式で」
「日本式や中国式もあるんだ」
「そうなんだ」
「そう、日本のお茶やお菓子が出て」
そしてというのです。
「中国のお茶やお菓子も出るよ」
「そうなんだ」
「色々あるんだね」
「そうなんだ」
「ティーセットって一口に言っても」
「色々あるんだ、オズの国ではね」
そうだというのです。
「色々あるんだ」
「ロシアやブラジルのものもあるよ」
臆病ライオンもロンドにお話します。
「色々とね」
「面白いね、それはまた」
「ジョージ達が来る様になってね」
このオズの国にです。
「そうなったんだ」
「ティーセットも色々増えたんだ」
「そうだよ」
「それじゃあ」
そのお話を聞いてでした、ロンドは言いました。
「お父さんにティーセットのことも話してみるよ」
「そしてなのね」
「はい、家族でも楽しみます」
そうするというのです。
「皆で」
「そうしてね、ティーセットは皆で楽しむものよ」
「一人で楽しまずに」
「そうするものよ」
「そう、面白いからね」
だからというのです。
「楽しんでね」
「はい、皆で」
こうしたことをお話しました、そして。
ロンドのお父さんがカレーのスパイスを一杯持って来てでした。ジュリアに手渡してからこう言いました。
「では美味しいカレーを」
「はい、作らせてもらいます」
「そういうことで」
こうお話してでした、一行はロンド達と分かれました。
そしてです、その時にです。
ロンドは皆にです、こう言いました。
「また来て下さいね」
「ええ、また機会があれば」
ジュリアが皆を代表して言葉を返しました。
「お邪魔させもらうわ」
「是非。あとティーセットのことも」
「それのこともなのね」
「お父さんとお母さんにお話しますので」
「ええ、そうしてね」
そうしたことをお話してでした、お互いに笑顔で別れました。ジュリアは帰り道にロンドのお家から貰ったバスケットボックスの中のスパイス達を見ながら言いました。
「さて、これからね」
「それを持って行ってですね」
「エメラルドの都に帰りましょう」
「そうしましょう」
「帰り道にも気をつけて」
臆病ライオンはこのことも言いました。
「帰ろうね」
「ええ、それは勿論よ」
「帰り道が一番危なかったりするからね」
「はいーー油断してーーです」
チクタクもそのことを言います。
「帰りーーましょーーう」
「そうだよね、煉瓦の道をしっかりと歩いて」
ジョージも言います。
「帰ろう」
「いい、煉瓦の道を外れないでね」
ジュリアは皆にこのことに釘を刺します。
「この道は安全だから」
「ええ、それじゃあ」
こうしたことをお話してでした、皆で。
エメラルドの都に帰ります、気をつけて帰った帰り道は平和で四人共何もなくエメラルドの都に着きました。
その時にです、ジョージは言いました。
「またロンドと会いたいですね」
「ええ、ジョージに新しいお友達が出来たわ」
「はい、ですから」
ジュリアにもお話します。
「またです」
「そうよね、お友達が出来ることはいいことよ」
「そうですよね」
「だからね」
それでとお話してです、皆は都の門に入りました。まずはスパイスが手に入りました。
ジュリアたちスパイス組から。
美姫 「こちらは寄り道せずに目的地へと真っすぐに」
真面目さんたちがいるからな。
美姫 「それでも、途中で草を探している子と出会ったからね」
それは人助けだしな。
美姫 「結果として、目的の人の子だったけれどね」
ともあれ、スパイスは無事に手に入ったか。
美姫 「そうね。次は他の組かしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね」
ではでは。