『オズのポリクローム』
第八幕 不死鳥
お風呂を楽しんだ皆は夜空の星達、上と横にアーチの様に広がっている星空と下に広がるもう暗くなっている雲の絨毯達を見ながらです。
そのうえで晩御飯となりました、今日のメニューはといいますと。
「サンドイッチにですね」
「ホットドッグ」
「それとサラダにお野菜のテリーヌ」
「それと果物のジュースに」
「デザートは果物の盛り合わせですね」
「あとはカボチャのシチューだよ」
魔法使いはそちらも出しました。
「今回はお野菜を多くしたんだ」
「それと果物もですか」
「多くしてくれたんですか」
「ヘルシーですね」
「うん、美味しく健康に食べてね」
そしてというのです。
「楽しもう」
「はい、わかりました」
「それじゃあ今から楽しく食べて」
「健康になるんですね」
「これから」
「そうだよ、楽しもうね」
こう皆に言ってでした、そのうえで皆にいただきますをする様に言ってでした。皆でそのサンドイッチやホットドッグ、野菜料理を楽しむのでした。ポリクロームはお花から取った新鮮な露を自分のコップに置いています。
そうして彼女はそのお露を飲んで言うのでした。
「とても美味しいわ」
「うん、ポリクロームにはね」
「このお露を出してくれたのね」
「そうなんだ」
彼女の為にとです、魔法使いは答えました。
「そうしたんだよ」
「そうなのね、有り難う」
「お礼には及ばないよ、じゃあポリクロームもね」
「ええ、このお露を飲んでね」
「楽しんでくれたら嬉しいよ」
「是非そうさせてもらうわ」
ポリクロームもこう応えてでした、そしてです。
皆と一緒に食事を楽しむのでした、ジョージは勿論サンドイッチを食べています。中にはレタスや胡瓜にトマト、それにハムが挟んでいます。
そのサンドイッチを食べてです、にこりと笑って言いました。
「美味しいですね」
「このテーブル掛けから出したものはどれも凄く美味しいのよ」
ドロシーもこうジョージに答えます。
「だからね」
「それですよね」
「このサンドイッチも美味しいの。それでね」
「それで?」
「飲みものは果物のジュースもあるけれど」
ジョージにです、ドロシーはガラスのコップに入った白い飲みものを差し出しました。そのうえで彼に言いました。
「ミルクもあるわよ」
「牛乳ですか?」
「いえ、山羊さんのミルクよ」
「ああ、そちらのミルクですか」
「そうよ、どうかしら」
「頂きます」
ジョージはドロシーからそのヤギのお乳を手で貰ってです、一口飲んでからこのミルクについても言いました。
「美味しいですね」
「そうでしょ」
「はい、こちらも」
「よく牛乳を飲むけれど」
「山羊さんのミルクもいいですよね」
「そう、美味しいでしょ」
「はい、とても」
「そういえば沖縄では山羊肉を食べるわね」
恵梨香はここでこう言いました。
「それがまた美味しいのよ」
「そういえば学校の食堂でもあるんだったね」
神宝も言います。
「沖縄料理の中に」
「ええ、小学校中学校は給食があるけれど」
恵梨香はその神宝にお話しました。
「私達の通っている八条学園でもね」
「うん、学校の給食もとても美味しいよね」
「けれど高校からはお弁当に売店にね」
「食堂もあって」
「そこに沖縄料理もあって」
それでというのです。
「山羊肉のお料理もあるのよ」
「そうだったよね」
「それでね」
さらにお話する恵梨香でした。
「私は家族で沖縄旅行に行った時に山羊のお刺身食べたの」
「それが美味しかったんだ」
「とてもね。あとそーきそばや足てびちも食べたわ」
「ああ、どっちもとても美味しいよね」
「そういうのも凄く美味しかったわ、シークァーサーのソフトクリームとかもあって」
「沖縄ね、暖かいというか暑い場所よね」
ナターシャがここでこんなことを言いました。ホットドッグを両手に持ってその小さいお口でホットドッグを前から食べながら。
「そうよね」
「ええ、そうよ」
「暑い場所には憧れるわ」
「ナターシャいつもそう言うわよね」
「ロシアは寒いから」
とにかくこれに尽きます。
「だから私オレンジやマンゴーも好きなの」
「暑いところの果物が、だよね」
「そう、どれも大好きなの」
カルロスにもです、ナターシャは微笑んで答えました。
「バナナもね」
「そういえばいつも食べてるよね、バナナとか」
「寒い国にいるとね」
「そうした暑い場所で採れる果物が好きになるんだね」
「そうなの、だからね」
「ナターシャも大好きなんだね」
「ええ、今もオレンジとバナナがあるから」
どちらもデザートにあります、他には西瓜や蒲萄、無花果があります。
「頂くわ」
「オズの国にいるとね」
「わからないことだよね」
サンドイッチやホットドッグをその大きなお口でどんどん食べている臆病ライオンと腹ペコタイガーが言ってきました。
「オズの国は何でも採れてね」
「いつもどんなものでも好きなだけ食べられて」
「暑い場所も寒い場所もいつも一緒にあるから」
「ナターシャのお話を聞いても」
「ぴんとこないんだよね」
「逆にカルロスのお話を聞いてもね」
彼の場合もというのです。
「暑い国のお話を聞いても」
「それでもね」
「うん、僕から見ればロシアが羨ましい時もあるよ」
実際にとです、カルロスはナターシャにお顔を向けながら二匹に答えました。
「あまりにも暑いからね」
「カルロスの場合はそうなのね」
「雪なんてブラジルでは見たことないから」
「だからなのね」
「いいなあ、って思うこともあったよ」
「そうだったの」
「雪は日本に来てはじめて見たよ」
カルロスの場合はそうなのです。
「奇麗だよね、結晶が」
「雪はオズの国にもあるけれどね」
今度はトトが言ってきました。
「それなら」
「うん、そうだよね」
「それでその雪はなんだ」
「見させてもらったよ」
日本で、というのです。
「はじめて見た時どんなに嬉しかったのか」
「そこが違うのよね」
ナターシャは今度はサラダを食べつつ言いました。
「ロシアとブラジルだと」
「本当に違うよね」
「私は暑い場所の果物が大好きで」
「僕は雪が大好きでね」
「それぞれね」
「好きなものが違うね」
「そこにないものを人は欲しがるんだ」
魔法使いがここでこう言いました。
「だから二人もなんだよ」
「暑い国の果物が好きで」
「雪が好きなんですね」
「そうだよ、けれどあるとね」
そして持っていると、というのです。
「人はおおむね欲しくなくなるものだよ」
「けれど中にはね」
ここでトトが言う人はといいますと。
「かつてのラゲドー王みたいな人もいるからね」
「あっ、前のノーム王だよね」
「そう、今は別の人が王様だけれど」
トトはジョージに答えました。
「あの人はオズの国の全てを手に入れたかったんだ」
「それで悪巧みもしてね」
「オズの国が危なかったんだ」
「マボロシ族とかと手を結んでね」
「あの時は忘却の泉があって助かったよ」
まさにあの泉のお陰だったというのです。
「若しなかったらね」
「大変なことになっていたね」
「そうなっていたよ、あの王様は本当に欲張りだったから」
トトから見てもです。
「中にはそうした人もいるんだよ」
「そうだよね、あの人は困った人だよね」
「今は王様だった時のことを忘れて気楽に過ごしているけれどね」
「オズの国でね」
「ノームの人達も変わったしね」
「そもそもノームは」
ここでポリクロームも言いました。
「元々地の中に住んでいて」
「地の精霊と言うべき人達だよ」
魔法使いがポリクロームに答えました、テリーヌをフォークで取って食べながら。
「あの人達はね」
「そうよね、けれどどうしてあんなに意地悪だったのかしら」
「うん、それはね」
「それは?」
「持っていないと思い込んでいて妬んでいたんじゃないかな」
「宝石も金も銀も好きなだけ持っていたのに」
「けれどね」
「それでもなの」
「そう、ずっと地の中にいて日の光を浴びていなくて」
「今は浴びているわね」
「そうだけれどね」
それでもというのです。
「ずっと違っていてね」
「お日様を見ていなくて」
「暗い世界しか持っていないと思っていて」
「それで性格がなのね」
「暗くなって歪んでしまっていたんだ」
「そうだったのね」
「それがね、外にも出て」
王様が代わってからです。
「私達と付き合う様になって自分達のことがわかったんだ」
「ノームの人達自身が」
「そう、わかったんだ」
それでというのです。
「自分達も持っているってことにね」
「持っていないんじゃなくて」
「彼等も持っているんだ」
「そのことがわかったから」
「だからあの人達は変わったんだ」
「私達みたいな心になったのね」
「そうだよ、素直で純粋な心になったんだ」
そうした心になったというのです。
「あの人達もね」
「そうなのね、だから私達もあの人と仲良くなれる様になったのね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「ラゲドー王はね」
彼についても言うのでした、かつての。
「あの人は本当に悪い人だったから」
「その人が王様だったから」
「余計に悪かったんだよ」
ノームの人達にとってというのです。
「それが王様が代わってね」
「それで変わりだしたのね」
「うん、その歪んでしまったノームの中で一番歪んだ人だったから」
「悪い人が王様になると」
「余計に悪いことになるんだ」
「オズマと逆ね」
「そう、正反対だよ」
まさにというのです。
「それは余計に悪いことになるんだよ」
「そういうことなのね」
「だからオズの国はね」
「オズマが主でとてもいいのね」
「そうだよ、オズマはとてもいい人だから」
だからというのです。
「国家元首としてもいいんだよ」
「そういうことなのね」
「けれど魔法使いさんも」
ここでジョージが魔法使いに言いました。
「かつては」
「この国の主だっていうんだね」
「はい、そうでしたよね」
「ああ、私は嘘を吐いてなっていたから」
「だからですね」
「駄目だよ」
その時のことを思い出して、です。魔法使いは申し訳なさそうな笑顔になって言いました。
「やっぱり私はオズの国の主じゃないんだよ」
「主はオズマ姫ですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「私はこのままでいいよ」
「魔法使いさんで、ですね」
「うん、このままでいいよ」
「そうなんですね」
「ただね」
「ただ?」
「あの時ドロシーと一緒に気球でアメリカに帰ろうとした時に」
その時のことをです、ドロシーを見つつお話するのでした。
「もうオズの国に戻ることはないって思っていたよ」
「それが、でしたよね」
「うん、戻って来てね」
そのうえでというのです。
「今じゃ本当に魔法も使える様になってね」
「本当の魔法使いにもなって」
「それでオズの国に住んでおられますね」
「そうなったよ、運命はわからないものだよ」
「魔法使いさんもオズの国に愛されてるんですよ」
ジョージはこう言いました。
「そうなんですよ」
「だからだっていうんだね」
「はい、実際オズの国で魔法使いさん嫌いな人はいないですよ」
皆から愛されています、その温和で気さくな人柄そしていざという時に頼りになるその魔法と知識、機転によってです。
「それは最初に来られた時からですね」
「そうよ、皆魔法使いさんが好きよ」
ドロシーも魔法使いに言います。
「勿論私達もね」
「だといいけれどね」
「ええ、今だってね」
この旅行の時もというのです。
「一緒にいるのはね」
「私のことが好きだから」
「だからなのよ」
それでというのです。
「私達もそうしてるの」
「そう、僕達も魔法使いさんにお会い出来て」
「嬉しかったんですよ」
「オズの国の偉大な魔法使い」
「その人にお会い出来ましたから」
「そして今も一緒にいられて嬉しいですよ」
「私は所詮手品師だったんだけれどね」
アメリカにいた頃の魔法使いはそうでした。
「それでこんなに好いて貰えるのは冥利に尽きるよ」
「そんなに嬉しいのね」
「嬉しいよ」
本当にというのです。
「誰だって人気者でいたいね」
「はい、確かに」
「それは私もだよ」
「だからですね」
「皆に好いてもらってしかも頼りにされる」
「これ以上いいことはですね」
「ないよ」
まさにというのです。
「本当にね」
「だからなんですね」
「今の私は幸せだよ」
心からの言葉でした。
「尚且つ何時までも健康でいられて美味しいものもこうして食べられるからね」
「うん、ただね」
ここで腹ペコタイガーが言うことはといいますと。
「何時までも健康でいられることはいいことだけれど」
「これ以上いいことはないと思うけれど」
「いやいや、健康だからこそね」
腹ペコタイガーはジョージにも言うのでした。
「お腹が空くんだよ」
「ああ、君の場合はね」
「僕も健康だよ、だからね」
「いつもなんだね」
「食べてもすぐになんだよ」
それことというのです。
「お腹が空いて大変なんだよ」
「そういうことなんだね」
「それが困るね」
サンドイッチをむしゃむしゃと食べながら言うのでした。
「だってこのサンドイッチもどれだけ食べてもすぐにお腹が空くんだから」
「だからといって僕達を食べないけれどね」
「そんなことはしないよ」
腹ペコタイガーはトトにも答えました。
「僕には良心があるからね」
「だからだね」
「誓ったんだ、オズマにも他の皆にも僕自身にもね」
その誓いはといいますと。
「テーブル掛けから出たもの以外は食べないって」
「そう決めたんだね」
「そうだよ」
こうトトにも言うのでした。
「だから僕は皆を食べたりしないよ」
「それはいいことだね」
「うん、それにテーブル掛けは幾らでもね」
「食べものを出せるから」
「いいんだよ」
それこそというのです。
「だから僕テーブル掛け大好きだよ」
「腹ペコタイガーにとっても素晴らしい魔法の道具だよね」
「そうだね、けれどね」
「いくら食べてもなんだ」
「そうなんだ、健康だからね」
それで、というのです。
「すぐにお腹が空くんだよ」
「だから困るんだね」
「それが困るね、ただ健康であること自体はいいことだよね」
腹ペコタイガーもこのこと自体は喜んでいます。
「そのことはいいことだよ」
「その通りだよ、それにお腹が空いたら」
ジョージがまた腹ペコタイガーに言いました。
「また食べればいいし」
「だからだね」
「そう、健康であることはね」
そのこと自体はというのです。ジョージも。
「とてもいいことだよ」
「その通りだよね、言われてみれば」
「そう、それとね」
「それと?」
「腹ペコタイガーって虎だけれど」
それでもというのです。
「何でも食べるよね」
「今食べているサンドイッチとか?」
「うん、臆病ライオンもだけれどね」
彼もというのです。
「何でも食べるよね」
「お野菜でもね」
「果物でもね」
「うん、確かにお肉がメインだけれど」
「外の世界の虎と同じで」
「僕はお野菜も果物もお菓子も食べるよ」
腹ペコタイガーはジョージに確かな声で答えました。
「オートミールは大好物の一つだよ」
「僕もオートミール好きだよ」
臆病ライオンも言います。
「朝なんか最高だよね」
「そうそう、朝のオートミールは格別だよ」
「外の世界ではライオンや虎はオートミール食べないんだ」
「お肉ばかりだね」
ジョージは二匹に答えました。
「そういえば」
「そうなんだ」
「外ではそうなんだね」
「キャットフードは食べるかな」
ジョージは二匹がネコ科の動物であることからこう思いました。
「どうかな」
「ああ、キャットフードね」
「結構食べるよ」
二匹はキャットフードについても答えました。
「おやつにもね」
「結構食べるよ」
「ふうん、そうなんだ」
「そのまま食べることもあるし」
「上にミルクをかけてもらって食べることもあるよ」
そうしたケースもあるというのです。
「猫缶もいいね」
「僕達にしてみれば量が少ないけれどね」
「猫缶も食べるんだ」
「エリカと一緒にね」
「食べたりするよ」
オズの世界にドロシー達と一緒に来た猫です。
「ガラスの猫は何も食べないけれどね」
「あの猫は食べるからね」
「あとお魚も食べるね」
「鮪とかね」
「とにかく何でも食べるんだ」
ジョージは二匹のお話を聞いてこう思いました。
「君達は」
「要するにそうなるかな」
「実際にサンドイッチ食べてるしね」
「そこでお野菜も果物も食べるし」
「そう思ってくれてもいいよ」
「そうなんだね、じゃあお魚を出しても」
そのお魚のお料理について思うジョージでした。
「いいのなら」
「うん、何かな」
「どうかしたのかな」
「鯉いいかな」
ジョージはホットドッグを食べつつ言いました。細長いパンの間にソーセージとマスタードで味付けされたキャベツとケチャップが入っています。
その全ての味を楽しみつつです、このお魚について言ったのです。
「あれもね」
「ああ、鯉美味しいよね」
神宝が鯉と聞いて反応しました。
「あのお魚もね」
「うん、僕も日本で食べたけれど」
「美味しかったんだね」
「お刺身も煮ても。あと揚げても」
「そうそう、鯉はとても美味しいんだよ」
「あのお魚もいいかな」
皆で食べて、というのです。
「腹ペコタイガーさんや臆病ライオンさんにもね」
「ああ、僕鯉大好きだよ」
「僕もだよ」
二匹共答えはこうでした。
「本当に美味しいよね」
「あのお魚もね」
「オズの国だと川や湖でも鮪とか漁れるけれど」
「鯉も普通にいるからね」
「そうだったね、オズの国じゃ海のお魚が川にもいるよね」
ジョージもこのことを思い出して言いました。
「その鮪も」
「そうだよ、だからああしたお魚も食べてるけれど」
「鯉もいいよね」
「鯉の味はまた格別だよ」
「物凄く美味しいよ」
「何かね」
ここでカルロスが言うことはといいますと。
「日本人って海のお魚ばかり食べてるよね」
「鯉も食べるけれど?」
「いやいや、割合的にだよ」
こう恵梨香にもです、カルロスは言いました。
「海と川を行き来するお魚も食べてるけれどね」
「鮭とか鰻とか」
「うん、そうしたお魚も食べるけれどね」
「鮎を食べていても」
「全体的にお魚といえばね」
海から漁れたものだというのです。
「ブラジルじゃアマゾンから漁れたお魚よく食べるんだよね」
「ああ、アマゾンね」
「あそこのお魚は種類も数もとても多くてね」
「それでなのね」
「ブラジルじゃあそこのお魚もよく食べるんだ」
「ピラルクとか」
「食べるよ」
この巨大なお魚もというのです。
「これが美味しいんだ」
「美味しいの」
「そうだよ、これがね」
「そうなのね」
「ピラルクって確か」
ポリクロームはお露を飲みつつ言ってきました。
「凄く大きなお魚で」
「はい、四メートルあります」
「それはまた大きいわね」
「それを食べるんです」
「それで美味しいのね」
「そうなんです、オズの国にもいますか?」
カルロスはポリクロームにピラルクのことについて尋ねました。
「ピラルクは」
「ブラジルのお魚よね」
「はい、そうです」
「だったらね」
「いないですか」
「そう思うわ」
「オズの国はアメリカが反映されるから」
だからというのです、ポリクロームも。
「ブラジルのお魚は」
「いないですか」
「色々なお魚がいても」
それでもというのです。
「ピラルクはいないわね」
「それは残念ですね」
カルロスは実際にとても残念そうにです、ポリクロームに応えました。食べる勢いも少しだけ減っています。
「あのお魚がいないことは」
「けれどそんなに大きなお魚なのね」
「四メートルあります」
「実際に大きいわね、私の倍以上の大きさがあるわよ」
「はい、確かに」
「見てみたいけれど」
「けれどオズの国がアメリカが反映される国なら」
そこにいる生きもの達もです。
「仕方ないですね」
「私が会えなくても」
「それでもね」
「あの、それでだけれど」
ここで、でした。ナターシャが飛行船の中から三百六十度見られる様になっているお空を見つつでした。皆に言ってきました。
「下に凄いのが見えるわ」
「凄いって?」
「ええ、下を見てみて」
自分達の、というのです。ジョージにも。
「夜で見えにくいけれど」
「あれっ、あれは」
ジョージはナターシャの言葉に従って下を見てみました、するとです。
夜のお空の中にでした、暗いので確かには見えないですが。
お魚がいました、それも一匹や二匹ではなく何千匹といる感じです。沢山のお魚達が群れを作って飛んでいます。
そのお魚達を見てです、ジョージも言いました。
「オズの国じゃお魚もお空を飛ぶんだ」
「ええ、そうよ」
ポリクロームがジョージに答えました。
「そうしたお魚もいるの」
「そうなんですね」
「これまでもいたと思うけれど」
「あっ、そうだったんですか」
「ええ、そうだったのよ」
「これまで気付きませんでした」
こうポリクロームに答えるのでした。
「そうだったんですね」
「そうなの、結構飛んでるから」
「よく注意して見れば」
「すぐに見えるわ」
「今みたいにですね」
「そうよ、種類も多いわよ」
お魚のそれもというのです。
「鮫もいたりするわよ」
「えっ、鮫もいるんですか」
鮫と聞いてです、ジョージは怖がるお顔になりました。他の四人も同じです。
「襲われたりしません?」
「私達は襲われないわよ」
「精霊さん達はですか」
「ええ、空のお魚はお魚と鳥だけを食べるから」
だからというのです。
「私達は食べないわよ」
「だといいですけれど」
「中には凄く大きな鮫もいるわよ」
「ホオジロザメとかですか」
「その鮫もいるわね」
オズの国のお空を飛ぶ鮫の中にはというのです。
「そういえば」
「何か凄いお空ですね」
「オズの国だから」
これがポリクロームの言う理由の根拠でした。
「そうしたことも普通にあるの」
「そうなんですね」
「不思議の国だから」
こうも言うのでした、そしてです。
皆は晩御飯を全部食べてでした、それからです。
後は皆で寝ました、朝になるとまずはお風呂に入りました。お風呂の中から朝日が雲の上から出て来るのを見ながらです。
ジョージは湯船の中から満面の笑顔で言いました。
「こんな冒険はじめてだよ」
「うん、お空を飛びながらね」
「お風呂に入って朝日を見るなんてね」
一緒に入っている神宝とジョージが応えます。
「これまでなかったよね」
「物凄い旅だよ」
「そうだよね、お空にいてね」
それでとです、また言ったジョージでした。
「お風呂も楽しめて景色もだから」
「こんな旅が出来るなんて」
「外でもないよね」
「いや、お空っていったら飛行機だけれど」
それでもとも言うジョージでした。
「飛行船もいいね」
「そうだね、ゆっくりと飛んで」
「こうして景色を楽しみながら旅をするのもね」
「いいものだよね」
「これはこれで」
「全くだよ、よく寝てお風呂で目を覚まして身体も奇麗にして」
そしてというのです。
「朝御飯だね」
「そうそう、気持ちよくね」
「朝も食べようね」
「それにしても。よく見れば」
ここで、でした。ジョージはです。
周りのお空を見ました、するとです。
今もです、お空にはです。
鳥の他にお魚も一杯います、海のお魚も川のお魚もです。そして鮫もいます。ジョージはその鮫を見て言いました。
「あの鮫頭がハンマーみたいな形してるね」
「シュモクザメだね」
神宝もその鮫を見ました、そのうえで名前を言いました。
「あの鮫は」
「そうそう、日本じゃそう呼んだね」
「そうだよ」
「アメリカじゃハンマーヘッドシャークっていうんだ」
「頭の形がそう見えるからだね」
「その名前なんだ」
実際にというのです、見れば本当にハンマーみたいな形の頭をしていてです。その左右に目があります。
「確かにハンマーだね」
「そうだよね、あの鮫もオズの国にいて」
「お空も飛んでるんだね」
「いや、凄いものを見られたよ」
「何か」
カルロスも言ってきました。
「お空にいるのは確かだけれど」
「どうしたの?」
「いや、海にいる生きものを見てもね」
それでもというのです。
「何かオズの国ならね」
それならというのです。
「そうしたこともあるんだってね」
「そう思えるんだ」
「それが不思議だね」
とても、というのです。
「不思議な光景がオズの国ならあるんだって思えることが」
「そのこと自体がなんだ」
「カルロス的には」
「そうなんだよ、僕にとってはね」
カルロスもその鮫を見て言うのでした。
「いや、凄く面白いね」
「そうだね、お空でお魚を見られるのもね」
「オズの国だけだからね」
「ううん、見れば見る程」
「オズの国ならではだよね」
「鳥もいるしね」
カルロスは左手にです、今度は鳥の群れを見付けました。
「ほら、リョコウバト」
「あっ、いるね」
「あの鳩もね」
「リョコウバトもいるなんてね」
「僕はそれが一番嬉しいよ」
ジョージはにこりと笑ってでした、カルロスに応えました。
「あの鳩がいることが」
「アメリカにはもういないから」
「そう、だから余計にね」
それでというのです。
「こうして見られて嬉しいよ」
「そうなんだね」
「うん、それとね」
「それと?」
「ほら、あそこ」
ジョージは飛行船の後ろを指さしました、勿論そこにもお空があります。そこにはお魚や鳥以外の生きものがいました。その生きものはといいますと。
「ウミガメがいるよ」
「いるね、烏賊もいるし」
「蛸もね」
「お魚以外もいるんだ」
「他の海の生きものも」
「いや、お魚がお空を飛んでるのも面白いけれど」
その他にもというのです。
「ウミガメや烏賊、蛸もね」
「いるんだね」
「それで泳いでるんだね」
「このオズの国では」
「そうなんだね」
「恵梨香もお風呂場で見てるだろうけれど」
ここでジョージは言うのでした。
「恵梨香絶対に今食べられるかしらとか言ってるよ」
「そうそう、恵梨香ってね」
「烏賊や蛸好きだからね」
「特にたこ焼きが好きだよね」
「明石焼きとかも」
「恵梨香って蛸っていったらね」
この娘の場合はそれこそなのです。
「たこ焼きなんだよね」
「蛸イコール食べるもの」
「そう確信してるよね」
「もうたこ焼きに目がなくて」
「蛸を見ても言うんだよね」
「多分朝御飯の時に絶対に言うよ」
笑ってです、ジョージは二人に言いました。
「朝はたこ焼きにしようって」
「絶対に言うね、恵梨香」
「それでナターシャがお風呂に入ってる時とか言うね」
「あの二人のやり取りってパターンあるから」
「そうなるね」
「僕もそう思うよ、じゃあ身体も奇麗にしたしすっきりとなったし」
そのお風呂に入ってです。
「あがろうか」
「それで恵梨香のお話をね」
「聞こうね」
こうしたこととお話してでした、そしてです。
三人は朝御飯の場に出ました、すると実際にでした。お風呂上がりで奇麗な香りを出している恵梨香がテーブル掛けの傍に座っていて言っていました。
「たこ焼き出しましょう」
「貴女お風呂に入ってる時も言ってたわよ」
ナターシャがその恵梨香に横から言います。
「お空を蛸が飛んでるの見てから」
「だって蛸だったらね」
「たこ焼きっていうのね」
「たこ焼き美味しいでしょ」
「日本に来てはじめて食べたわよ」
「それで美味しかったわよね」
「けれどね」
ナターシャは微妙な声で恵梨香に返しました。
「貴女程じゃないわよ」
「私程じゃないって?」
「何でそうたこ焼きが好きなのよ」
「美味しいから」
これが恵梨香の返事でした。
「だからね」
「たこ焼きだっていうのね」
「ええ、いいでしょ」
「朝からたこ焼きなの?」
「駄目?」
「そんなお話聞いたことないわよ」
「昨日買ったのが残ってたら食べるでしょ」
恵梨香はナターシャにあっさりと返しました。
「そうでしょ」
「それは日本だけでしょ、それも関西」
「そうかしら」
「そうよ、恵梨香はね」
そもそもというのです。
「蛸は食べものとしか思ってないでしょ」
「あれっ、違うの?」
「怖いとか思わないの?」
「怖いの?蛸が」
そう言われてもです、恵梨香はぴんとこない感じです。首を傾げさせてそのうえで言うのでした。
「私は別に」
「私最初テレビで観て気持ち悪かったわよ」
「そうなの」
「そうも思わないのね」
「可愛いじゃない」
恵梨香から見ればです。
「蛸って」
「それで食べたら美味しいっていうのね」
「たこ焼きが一番で」
何といってもこれは外せません。
「お酢にも合うし茹でても焼いても美味しくて。カレーに入れてもいいわよね」
「シーフードカレーね」
「烏賊だって。物凄く美味しいじゃない」
「烏賊も同じなのね」
「たこ焼きとは全然違う形だけれどいか焼きも美味しいでしょ」
「あのお好み焼きの薄いのね」
「ええ、イカ墨のスパゲティも美味しいし」
恵梨香はこちらもお話に出します。
「烏賊だって怖くないわよ」
「日本人は皆そう言うわね」
「美味しいじゃない」
蛸も烏賊もというのです。
「そうでしょ」
「気持ち悪いとも思わなくて」
「美味しいとしか思わないわよ」
「やれやれね、それで今もなのね」
「たこ焼きはどう?」
またこう言った恵梨香でした。
「今朝はね」
「だからそれはお昼かおやつにしましょう」
ナターシャは幾分か呆れつつ恵梨香にこう返しました。
「その時にね」
「お昼かおやつになの」
「そう、その時にね」
「じゃあ今朝は」
「そうね、今朝はオムレツにしましょう」
ドロシーはにこりと笑って皆に言いました。
「それとトーストね」
「オムレツですか」
「あと新鮮なトマトも欲しいわね」
ドロシーは恵梨香に応えてこちらもお話に出しました。
「あと牛乳ね」
「今朝のメニューはそれですか」
「そうしましょう、それでお昼はね」
その時にとも言うドロシーでした。
「たこ焼きにしましょう、それにね」
「それに?」
「焼きそばも出しましょう」
こちらもというのです。
「二つ共ね」
「いいね、じゃあね」
魔法使いはその二つのお料理を聞いてでした、ドロシーに笑顔で言いました。
「ビールも欲しいね」
「魔法使いさんは大人だからね」
「お酒を飲めるからね、だからね」
「ビールなのね」
「うん、そちらも頼むよ」
「わかったわ、じゃあビールも出すわ」
魔法使いの為にというのです。
「それと私達はコーラとサイダーね」
「そうそう、たこ焼きとか焼きそばにはね」
ジョージも言います。
「コーラとかサイダーなんですよね」
「炭酸飲料が似合うんだよね」
「お好み焼きにもそうだよね」
神宝とカルロスも笑顔で言います。
「だからお昼の飲みものはね」
「そうしたのなんだね」
「そうよ、では朝はね」
また今朝の朝食のことを言うドロシーでした。
「オムレツを食べましょう」
「わかりました」
「それとトマトとトースト」
「それに牛乳ですね」
「皆で食べましょう」
こうしてでした、皆はこの朝はオムレツとトマト、それにトーストを楽しむことになりました。今朝の食事もとても美味しいものでした。
のんびりと探し物と。
美姫 「朝風呂に入りながらの朝日なんて良いわね」
だよな。しかも高い空なら、朝日もよく見えるだろうし。
美姫 「残念ながら、今回は見つからなかったけれどね」
まあな。でも、空の旅を楽しめるから良いな。
美姫 「次はどうなるのかしらね」
次回も待っています。