『オズのポリクローム』
第六幕 雷の精霊達
一行は朝早く起きて日の出を見ました、東の雲から昇ってきて世界を月の世界から自分の世界に変えていきます。
その日の出を見てです、トトはしみじみとして言いました。
「さて、一日がはじまったね」
「ええ、このお日様を見たら」
ポリクロームもくるくると踊りながら応えます。
「はじまると思うわ、いつもね」
「そうなんだよね、本当に」
「それじゃあ朝露を飲んで」
「朝御飯を食べて」
「一日をはじめましょう」
「さて、今日の朝御飯は何がいいかな」
「そうですね、包かお饅頭はどうですか?」
神宝は魔法使いの言葉にすぐに応えました。
「それにしますか?」
「中国のパンだね」
「どうでしょうか」
「いいね、じゃあそれにしよう」
魔法使いは神宝の言葉に頷いてです、そして。
ドロシーがテーブル掛けをかけるとです、そこに。
魔法使いは中国茶とです、肉饅頭に包を出しました。それと鶏肉とお野菜をたっぷりと入れた湯、中華料理のスープもあります。それと茶玉子もあります。
その茶玉子を見てです、神宝は目を細めさせて言いました。
「はい、茶玉子がです」
「中国の朝御飯にはだよね」
「欠かせないものの一つです」
にこにこと笑って言うのでした。
「他にも朝のおかずはありますけれど」
「中国人は朝に茶玉子を食べることが多いからね」
「ですから」
「そう思って出したんだよ」
「有り難うございます、それじゃあ」
「これから食べようね」
「はい」
こうしてです、皆は中華の朝御飯を楽しみました、それからお風呂に入ってでした。皆で臆病ライオンと腹ペコタイガー、そしてトトにブラックシングをしました。
ジョージは男の子三人で臆病ライオンにブラッシングをしています、魔法使いも一緒です。腹ペコタイガーは女の子二人とポリクロームがしています。トトはドロシーがです。
ジョージは臆病ライオンの鬣にブラッシングをしながらです、臆病ライオンに尋ねました。
「気分はどうかな」
「最高だよ」
臆病ライオンはジョージに喉を鳴らして答えました。
「これ以上はないまでに」
「そう、気持ちいいんだ」
「お風呂も入ってね」
「最後はブラッシングもしたら」
「最高の気持ちになるよ」
今の様にというのです。
「実は僕達奇麗好きなんだ」
「そういえばいつも奇麗にしてるよね」
「うん、不潔だね」
それはというのです。
「好きじゃないから」
「そうなんだ、僕も奇麗なのが好きだよ」
「僕もそうだよ」
腹ペコタイガーにトトも言います。
「だからブラッシングもね」
「大好きだよ」
「こうしていつも誰かにブラッシングしてもらって」
腹ペコタイガーが言うことはといいますと。
「僕は凄く幸せでしてくれる人に感謝しているよ」
「本当に有り難うね」
臆病ライオンも言います。
「凄く気持ちいいよ」
「それは何よりだね、ただね」
「ただ?」
「このまま寝たら御免ね」
あまりにも気持ちがよくてです。
「その時は」
「あれっ、さっき起きたばかりなのに」
「だからあまりにも気持ちがいいから」
それでリラックスしてです。
「それでなんだ」
「寝ちゃうこともあるんだ」
「時々あるから」
「僕もそうなんだよね」
腹ペコタイガーもです、とても気持ちよさそうです。
「だからもうこのまま」
「寝そう?」
「今は大丈夫だけれど」
それでもというのです。
「うとうとするかもね」
「じゃあ寝たらいいわ」
ポリクロームは自分がブラッシングをしている腹ペコタイガーに言いました。
「その時はね」
「寝てもいいんだ」
「え、子持ちがいいならね」
そうならというのです。
「ゆっくりと寝たらいいわ」
「それじゃあ」
「臆病ライオンさんもだよ」
ジョージは微笑んで自分がブラッシングをしている臆病ライオンに言いました。臆病ライオンもとても気持ちよさそうです。
「寝ていいよ」
「そう言ってくれるんだ」
「というか寝たら駄目なの?」
ぎゃあ国です、ジョージはこう臆病ライオンに尋ねました。
「ブラッシングをしてもらっていて」
「そんな話は聞かないわよ」
ドロシーもトトをブラッシングしつつ言います。
「全くね」
「僕実は結構寝るよ」
ここで言ったのはトトでした。
「ブラッシングをしてもらってて」
「そうよね、けれどね」
「ドロシーそのことで何も言わないよ」
「というか悪くないから」
また言ったドロシーでした。
「そうしたことはね」
「それじゃあ」
「ええ、何時でもね」
それこそ気持ちよくなったらというのです。
「寝ていいわ」
「有り難う、じゃあね」
トトはドロシーの言葉に笑顔で頷いてでした、そうしてです。
そのまま気持ちよくブラッシングを受けました、リラックスしたまま。
ジョージは臆病ライオンの鬣を熱心にブラッシングし続けています、そしてその中でこんなことも行ったのでした。
「この鬣をブラッシング出来るのがね」
「どうなのかな」
「うん、楽しいよ」
こう答えるのでした。
「僕もね」
「君もなんだね」
「何かね」
ブラッシングをしているその手を動かし続けながらの言葉です。
「この立派な鬣を触っているだけでも」
「そうそう、やっぱりね」
「ライオンさんの鬣はいいよ」
神宝とカルロスは他の部分をブラッシングしつつ言いました。
「見事だからね」
「格好いいしね」
「この鬣をブラッシング出来るってね」
「嬉しいよ」
「外の世界でライオン君の鬣、いやライオン君自信をブラッシングしようと思ったら」
それこそというのです。
「大変だからね」
「虎さんもね」
「大変よ」
ナターシャと恵理香も言います。
「命懸けになるっていうか」
「怖くて出来ないわ」
「ああ、外の世界の虎とはお話が出来ないしね」
腹ペコタイガーは女の子二人の言葉を聞いて理解しました。
「だからね」
「そう、若しそんなことをしたら」
「どうなるか」
わかったものではないというのです。
「食べられることもね」
「普通にあるから」
「ううん、僕も実は食べたいと思うわよ」
何しろいつもお腹を空かせているからです、腹ペコタイガーの食欲は幾ら食べても収まることがありません。
ですがそれでもです、腹ペコタイガーはいつもです。
「けれどね」
「君には良心があるからね」
「この良心がいつも僕に言うんだ」
それこそとです、ジョージに答えるのでした。
「そんなことをしてはいけないって」
「だからだね」
「うん、僕はそんなことはしないよ」
皆を食べたりする様なことはというのです。
「絶対にね」
「そうだよね」
「もしそんなことをしたら」
それこそというのです。
「僕は僕でなくなるよ」
「とても悪い虎になってしまうね」
「悪い虎になる位ならね」
それこそというのです。
「腹ペコでいた方がいいよ」
「そうだよね」
「それに食べるものはね」
腹ペコタイガーはこうも言いました。
「いつもあるからね」
「だからだね」
「うん、僕は君達の誰も食べないよ」
絶対にそうしたことはしないというのです。
「間違ってもね」
「そう思うと良心は大事だよね」
「良心がないと」
それこそというのです。
「僕もどうなっているのか」
「良心がない人は」
ポリクロームも言います。
「人なのかしら」
「人じゃないかも知れないね」
魔法使いがポリクロームに答えました。
「そうした人は」
「そうなるのね」
「心が人間でないのなら」
「オズマは人間だね」
魔法使いは最初にオズの国の国家元首である彼女の名前を出しました。
「そうだね」
「勿論よ」
ポリクロームは魔法使いのその質問にすぐに答えました。
「オズマは人よ」
「そうだよね、けれどね」
ここで魔法使いはあえて言いました。
「オズマは妖精だよ」
「身体は、なのね」
「そう、人間じゃないね」
「それを言ったら」
「そうだよ、ポリクロームだって妖精だからね」
「私も人間じゃないわ」
「そうなるんだよ」
「けれど私は」
「そう、君も人間だよ」
オズマと同じく、というのです。
「かかし君も木樵君もジャック君もチクタクもね」
「皆も」
「忘れていけないのはつぎはぎ娘だね」
勿論この人もだというのです。
「もっと言えば臆病ライオンや腹ペコタイガーも人間になるよ」
「あれっ、僕達はね」
「そうだよね」
魔法使いの今の言葉にです、二匹の動物はブラッシングをしてもらいながら目を瞬かせて尋ね返しました。
「獣だけれど」
「人間になるのかな」
「それを言ったら僕もかな」
トトも言ってきました。
「そうなるの?」
「そうだよ、人はね」
どうしてなるのかをです、魔法使いは皆にお話しました。
「心で人になるから」
「どんな姿形でも」
「そうだよ、人はね」
またポリクロームに言いました。
「その心で人になるんだよ」
「そして良心は」
「人を人にするその心のね」
それこそというのです。
「最も大事なものの一つだからね」
「それがないと」
「人でなくなってしまうよ」
「じゃあ僕が若し良心をなくしたら」
「人でなくなるよ」
まさにというのです。
「悪い虎になってしまうよ」
「やっぱりそうなるんだね」
「だから君は。私達皆がそうだけれど」
「良心をなくしたら駄目なんだね」
「そうなんだよ、今思うと」
魔法使いはふとです、この人のことを思い出しました。
「前のノーム王だったラゲドー氏はね」
「あの人は人じゃないの?」
「ううん、確かに底意地が悪くてとんでもない性格だったけれど」
考えるお顔でポリクロームに答えました。
「かろうじてかな」
「人間だったのね、あの人も」
「邪悪とまではね」
それこそというのです。
「いかなかったかな」
「邪悪なのね」
「邪悪というのはね」
考えながらです、魔法使いはポリクロームだけでなく皆にお話しました。
「もう人が人でなくした」
「そこまでの存在なんですね」
「オズの国にはいないけれど」
流石にです、そうした人が入られない様にそうした人が出て来ない様に誰もがいつも注意している国だからです。
「妖魔一族が近くなっていたけれど」
「ああ、あの」
「ノーム王と一緒に都を攻めようとした」
「あの一族ですね」
「今は記憶をなくしてから心を入れ替えたそうですけれど」
「外の世界にはどうしようもない位に邪悪になった存在がいるね」
まさに人でなくなった存在がというのです。
「吐き気を催す位に」
「漫画とかでね」
「そうしたキャラクター出て来るね」
「とんでもなく悪い奴が」
男の子三人がここで気付きました。
「そうした悪い奴がなんだ」
「実際にもいるんだ」
「そうなんだね」
「そうした存在には気をつけるんだよ」
魔法使いは皆に注意しました。
「そしてくれぐれも良心をなくさないようにね」
「わかりました」
「そのことは注意します」
「本当にいつも」
「人はなくしてはいけないものが多いんだよ」
良心以外にもというのです。
「そうしたものをわかっておくことも大事なんだ」
「魔法使いさんは持ってるわね」
ポリクロームが魔法使いに言ってきました、そのお話をする彼に。
「しっかりと」
「ううん、少なくともね」
「少なくとも?」
「確かに私はペテン師だったけれど」
それでもというのです。
「それで人からお金と盗ったり陥れたり殺したりしたことはないよ」
「そうしたことはよね」
「ないよ」
それこそ一度もというのです。
「オズの国に入る前もいた時も外の世界に帰った時もまたオズの国に入った時もね」
「確かに嘘はよくないわ」
ドロシーも言います、魔法使いの古い古いお友達のこの娘も。
「けれど魔法使いさんはいい人よ」
「ペテン師でもだね」
「ええ、だって私達のことをいつも助けてくれて相談に乗ってくれるじゃない」
「だからなんだね」
「最初からね」
ドロシーが最初にオズの国に来たその時からというのです。
「私のことを助けてくれたじゃない」
「だからだっていうんだね」
「魔法使いさんはいい人よ」
こう魔法使い本人に言うのでした。
「心根はね」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
「本当のことだから、そしてね」
「そして?」
「今回の冒険でも力になってくれているじゃない」
今現在もというのです。
「こんないい人滅多にいないわよ」
「ええ、魔法使いさんはね」
ポリクロームも魔法使いに言います。
「何かあったら皆の力になってくれる素晴らしい人よ」
「だといいんだけれどね」
「だから魔法使いさんもね」
「人間だっていうんだね」
「私達と同じね」
「じゃああれだね」
腹ペコタイガーが言います。
「ここにいる皆は人間になるね」
「人の心を持っているから」
「そうなるよね、僕達も」
腹ペコタイガーはここで、です。臆病ライオンとトトつまり自分にとってかけがえのない友人達を見ました。
そしてです、そのうえで言うのでした。
「心が人間なら」
「僕はずっと自分を犬と思っていたけれど」
「犬でもね」
「人間なんだ」
「人間の心を持っていたらね」
「そうなるんだね」
「そうなるよ、魔法使いさんのお話だとね」
こうトトにも言うのでした。
「君にしてもね」
「成程ね」
「今日はいいことを知ったよ」
腹ペコタイガーの今の言葉はしみじみとしたものになっています。
「本当にね、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「ブラッシングをしてもらった後は」
ブラッシングはまだしてもらっています、その中で喉をゴロゴロとさせて目を細めさせてそうして言うのです。
「寝ようかな」
「その時まで我慢出来るの」
「出来るよ」
ポリクロームにも答えました。
「けれど今も寝ていいんだよね」
「そうよ、貴方の好きにして」
「そうなんだね、まあそれでもね」
「寝るのはなのね」
「その時だから」
ブラッシングが終わったその時だというのです。
「そうするから」
「それじゃあ」
「うん、そして起きた時かな」
「そうだね、大体その時にだね」
今度は魔法使いが腹ペコタイガーに答えました。
「雷の精霊達のところに着くよ」
「そうだよね」
「もう少しでね」
「それじゃあその時まで寝かせてもらうね」
「そうしたらいいよ」
「いや、本当にね」
「本当に?」
「今回の旅はね」
この旅のこともです、腹ペコタイガーは言うのでした。
「ゆっくりしているね」
「たまにはこうした旅もいいかな」
臆病ライオンも言います。
「いつも次から次に何かが起こる旅もいいけれどね」
「そんなこと言ってると起こるわよ」
二匹にです、ドロシーがにこりと笑って言いました。
「何かが」
「ああ、ドロシーといるとね」
「絶対に何かが起こるからね」
「ピンチに次ぐピンチ」
「そしてそれを乗り越えるんだよね」
「それが私の冒険だから」
それでというのです。
「起こるわよ」
「ううん、そうなんだよね」
「それがまた楽しいけれどね」
「ドロシーがいるとね」
「何も起こらないってことはないからね」
「むしろオズの国ではね」
ドロシーがどうとかいうよりもこの国そのものがというのです。
「何かが起こるから」
「だからですね」
「そのことはもう踏まえてですね」
「頭の中に入れておいて」
「常に動くべきですね」
「そういうことよ、じゃあいいわね」
こう言ってでした、そしてです。
ドロシーはにこにことしてです、皆にあらためてお話しました。
「いつも何が起こってもいい様に考えておきましょう」
「そうね、その方がすぐに何でも対応出来るから」
ポリクロームがドロシーに応えました。
「その方がいいわね」
「だからね」
「そう心構えしておくべきね」
「その通りね」
こう言ってドロシーの言葉に頷くのでした。
「それじゃあ何が起こっても皆で受け止めましょう」
「楽しんでね」
こうしたこともです、ブラッシングをしつつお話をしてです。
皆で飛行船に乗りつつ先に進んでいっていました。その時に。
ジョージは上を見てです、驚いて言いました。
「上に凄く大きな金色の鳥がいますけれど」
「あっ、確かにね」
神宝もジョージの言葉を受けて上を見ました、他の皆も。すると確かにそこに金色のとても大きな鳥が飛んでいました。
飛行船の少し斜め上にです、鷲に似ている形の鳥がいます。しかも金色に輝くその身体の周りにはです。
火が燃え盛っています、カルロスはそれを見て言いました。
「あれはフェニックス?」
「そうだよね」
ジョージもカルロスのその言葉に頷きます。
「あれは」
「うん、そうだよね」
「まさかね」
「フェニックスまでいるなんて」
「フェニックスっていうと」
恵理香もその大きな鳥を見つつ言います。
「五百年に一度生まれて生まれ変わり続けて」
「永遠に生きる鳥だよ」
「そうよね」
「フェニックスもオズの国にはいるのね」
ナターシャも上を見ています。
「そうなのね」
「そうよ、オズの国にもフェニックスはいるのよ」
その通りだとです、ポリクロームが五人に答えます。
「それでお空を飛んでいたりするの」
「雲の上をですか」
「この飛行船の上を」
「あの鳥は高く飛べるの。朱雀さんと一緒で特別な鳥だから」
だからだというのです。
「飛んでいるの」
「そうなんですね」
「ただ、オズの国ではフェニックスは生まれ変わらないから」
五百年に一度の転生はないというのです。
「オズの国では誰も死なないから」
「だからですね」
「そうなの」
こうジョージにも答えます。
「だから転生はしないの」
「それじゃあオズの国では誰もがフェニックスですね」
ポリクロームのその言葉を聞いてです、ジョージはこう考えました。
「そうなりますね」
「誰も死なないから」
「はい、フェニックスは何度も生まれ変わって死なないですから」
その五百年の間もです、決して死ぬことがありません、
「不死鳥って言われているんです」
「そうよね、そう考えるとね」
「オズの国では誰もがフェニックスね」
「そうなりますよね」
「ええ、ただフェニックスはね」
この鳥はというのです。
「オズの国のものもその力は凄いから」
「神様の鳥だからですね」
「そこが違うの、お空の仲間の中でも一番凄い鳥の一人よ」
それがフェニックスだというのです。
「その姿を見ただけで幸運が訪れる位だから」
「じゃあ僕達は」
「ええ、皆見たから」
「いいことが起こるんですね」
「そうよ、絶対にね」
「そうですか、フェニックスを見たお陰で」
ジョージはポリクロームのその言葉を聞いて考えるお顔になってです、そのうえでこうしたことを言いました。
「僕達にいいことが起こるんですね」
「幸運が私達を守ってくれるわ」
「そうなんですね、じゃあ」
「ええ、さっきドロシーともお話したわね」
「はい、何が起こっても」
「幸運が私達を守ってくれるから」
フェニックスを見たお陰で授かったこれがというのです。
「何が起こっても楽しみましょう」
「落ち込まずにですね」
「そう、それに私元々ね」
ポリクロームの性格としてです。
「落ち込むのは性格じゃないから」
「だから余計に」
「楽しみましょう」
「何が起こっても」
「是非ね」
「それにしても大きいね」
「そうだよね」
臆病ライオンと腹ペコタイガーもフェニックスを見つつ言います。
「フェニックスってね」
「この飛行船よりも大きいかな」
「あんな大きい鳥は他には朱雀かな」
「あとロック鳥とか位だね」
「ロック鳥はもっと小さいかな」
「確かに大きいけれどね」
こうした鳥のこともお話するのでした。
「オズの国には大きな鳥も多いけれど」
「フェニックスは確かに大きいね」
「中国では鳳凰と言うんだよ」
神宝がここで二匹に言いました。
「やっぱり不老不死の神鳥なんだ」
「ふうん、鳳凰ね」
「いい名前だね」
「そうだよね、その鳳凰を見たんだね」
神宝はしみじみとして言いました、そのフェニックスを見ながら。
「やっぱりオズの国は楽しいよ」
「フェニックスって結構色々な国でお話に残ってるね」
カルロスは神宝が言ったことを受けて言いました。
「ガルーダっていう鳥もいるし」
「仏教で言う迦楼羅よね」
「そうそう、そうした呼び名もあるね」
「仏像にもなってるのよ」
その迦楼羅はとです、恵理香はカルロスにお話しました。
「奈良にあるの、身体は人だけれど」
「へえ、そうなんだ」
「私も観に行ったことがあるわ」
「日本にはそうした仏像もあるのね」
ナターシャはそのお話を受けてフェニックスを見ながらも恵理香の方にその目をやって言うのでした。
その仏像について。
「そちらも面白いわね」
「奈良にね」
「わかったわ、あの古い街ね」
「ええ、奈良は他にも色々なものがあるから」
「物凄く大きな仏像あるよね」
ジョージは奈良と聞いてこの仏像のことをです、恵理香に尋ねました。
「そうだよね」
「ええ、東大寺にね」
「あの仏像凄いよね」
「あの仏像はまた特別だから」
奈良に沢山ある仏像の中でもというのです。
「本当に」
「だからなんだね」
「ええ、私も何回か観に行ってるけれど」
「驚くんだ、観る度に」
「凄いって思ってるわ」
こうしたことをお話するのでした、そしてです。
皆でフェニックスを観ることが出来たこと自体にも幸運を感じてでした、飛び去っていくフェニックスを見届けてです。
雷の精霊さん達のところに向かい続けました、するとです。
前に周りに物凄い音を立てて数えきれないだけの雷を帯させてゴロゴロと五月蝿い位の雲を見付けました、その雲を見てです。
魔法使いはすぐにです、皆に言いました。
「あの雲がだよ」
「雷の精霊さん達の雲ですね」
「そうなんですね」
「うん、そうだよ」
まさにというのです。
「あの雲がそうだよ」
「着いたんですね、目的地に」
「今回の目的地に」
「そうだよ」
こう子供達に答えるのです。
「そしてこれからね」
「あの雲に行って」
「それからですね」
「雲の中に入って」
「精霊さん達と会うんですね」
「うん、ただね」
ここでこうもです、魔法使いは言うのでした。
「問題はね」
「あの雷自体だね」
トトが魔法使いに応えて言います。
「あれがね」
「そう、この飛行船はコーティングしているけれど」
「僕達は違うからね」
「そう、だからね」
「このまま雷の精霊さんのところに行ったら」
「雷を受けて大変なことになるよ」
「死なないですよね」
別にとです、ジョージが魔法使いに答えました。
「雷を受けても」
「オズの国ではね、けれどね」
「雷を受けた衝撃とかはですか」
「受けるよ、だからね」
「何か備えをしないと」
「駄目だよ、だからね」
それでと言ってです、すぐにでした。
魔法使いは皆の前にあるものを出しました、それは。
小さな針でした、皆にその針を見せて言うのでした。
「それは何ですか?」
「避雷針だよ」
「その避雷針を持っているとですか」
「うん、雷を受けてくれてね」
そしてというのです。
「消してくれるんだ」
「凄い避雷針ですね」
「この避雷針を持ってね」
魔法使いは皆にその避雷針を見せつつ答えました。
「外に出しているとね」
「雷を受けてくれるんですね」
「そのうえで流してくれるから」
「雷がどれだけ周りにあっても」
「大丈夫だよ」
「凄い避雷針ですね」
「私が作ったんだ」
他ならぬ魔法使い自身がというのです。
「魔法でね」
「魔法の避雷針ですね」
「普通の避雷針よりずっと凄いよ」
「針みたいに小さくても」
「雷を全部受けて防いでくれるから」
だからというのです。
「これさえ持っていれば安心だよ」
「それじゃあ」
「皆に一本ずつ配るよ」
まさにその避雷針をというのです。
「身体の何処かに付けておいてね」
「わかりました」
ジョージも他の皆も頷いてでした、そのうえで。
皆はその避雷針を着けてです、そうしてから雷の精霊さん達がいるその雲に進みました。そしてその横に来てです。
雷が荒れ狂う雲の上に降りました、魔法使いが皆を代表して先頭に立ってです。
雲の上を見回しました、その雲はといいますと。
「暗いね」
「ええ、雷雲ね」
ポリクロームが魔法使いに答えます。
「これは」
「そうだね、まさに雷が宿っている雲だよ」
「本当にね、それで」
「うん、あのお屋敷がだね」
雲の上には白いポリクロームの家の様な宮殿を思わせる建てものもあります。
その建てものを見てです、魔法使いは言うのでした。
「雷の精霊さん達のお家だね」
「まずはあそこに行って」
「精霊さん達とお話しよう」
「それじゃあね」
こうお話してででした、そしてです。
皆でそのお家に向かいました、大きい雷も小さい雷も荒れ狂っています。その赤や青、黄色に緑の雷達はです。
皆にも襲い掛かります、ですが。
全ての雷がです、避雷針に引き込まれていってです。
消されてです、皆は何もありませんでした。
ジョージはその雷が吸い込まれ消えていくのを見て言いました。
「確かにどんな雷も」
「そうだよね」
「はい、吸い込まれてです」
「消えていくね」
「本当に凄い雷ですね」
「だからこうした時もね」
「この避雷針さえあれば」
ジョージは魔法使いに応えて言いました。
「大丈夫なんですね」
「そうだよ」
「いや、凄い魔法の道具ですね」
「僕も開発出来てね」
「嬉しいですか」
「雷は大変だからね」
若し受けたりするとです、オズの国では誰も死なないにしても。
「こうして造ることが出来てよかったよ」
「人の役に立つから」
「魔法は人の役に立たないとね」
その魔法を使える人の言葉です、そうしたお話をしつつです。
皆はその建てものまで来ました、そして魔法使いが声をかけるとです。
小さな女の子が出て来ました、淡い緑色の髪の毛にです。赤や青、黄色や緑といった雷の色が奇麗に配色された丈の長い生地の薄い服を着た可愛らしい娘です。目の色はライトブルーで唇は赤です。その娘がでて来て挨拶をしてきました。
「どなたですか?」
「ええ、私達はね」
ポリクロームがです、その女の子に自分達のことをお話しました。そしてそのお話を聞いてからでした。女の子も自分のことをお話しました、雷の精霊の女の子だとです。
そしてです、皆にあらためて言うのでした。
「それでポリクロームさん達がですか」
「ええ、雷があまりにも鳴るからね」
「気になって来てくれたんですね」
「普段よりずっと凄いけれど」
こう女の子に言うのでした。
「どうかしたの?」
「そのことなんですけれど」
少し考えてからです、女の子は答えました。
「お家の中に来てくれますか」
「入っていいのかしら」
「はい、どうぞ」
女の子はポリクロームにすぐに答えました。
「中に」
「ええ、それじゃあね」
「実は困ったことになっていまして」
「この雷のことで」
「普段はこんなことはないんです」
女の子はポリクロームにこのことを断るのでした。
「こんなに雷が荒れ狂うことは」
「そうよね、それがどうしてかしら」
「ですから」
「そのことをなのね」
「聞いてくれますか?」
またポリクロームに言いました。
「お父さんのお話を」
「雷の精霊さん達の」
「そう、そして」
「どうしてこんな風になっているのか」
「お願いします」
聞いて欲しいというのです。
「是非」
「やっぱり困ってるよね」
「はい、実は」
女の子はジョージにも答えました。
「この状況には」
「普段はこんなに鳴らないから」
「というか詳しいことはお父さんからですが」
それでもというのです。
「私達は普段雷を操ることが出来ます」
「私達と同じよね」
女の子の言葉を受けてです、ポリクロームが言ってきました。
「そのことは」
「はい、ポリクロームさんは虹の精霊ですから」
「虹を自由に操れるわ」
「そうですよね、それと同じで」
「貴女達も雷を操れるわね」
「はい」
そうだというのです。
「操れます、ですが」
「それでもなのね」
「今はそれが出来なくなっています」
「そのことがおかしいね」
トトは女の子のお話を聞いて言いました。
「だから是非ね」
「はい、聞いて下さい」
こう答えたのでした。
「お父さんのお話を」
「今からね」
「頼むわ。それにしても」
ここで女の子はトトを見ました、その小さくて黒い長い毛を持つ犬を。
「貴方可愛いわね」
「有り難う、そう言ってくれるんだ」
「私犬大好きなの」
「ここにも犬はいるんだ」
「犬はいないけれど雷獣はいるわ」
「ああ、あの黒くて足が六本ある鼬みたいな」
「あの生きものがいるの」
こうトトにお話しました。
「私達雷の精霊の友達よ」
「そうなんだね」
「その子達がいるから」
だからというのです。
「ここにはね」
「そうなんだね」
「あの子達もね」
「雷を操れるんだね」
「そうなの」
だからというのです。
「あの子達も、ただ」
「まさか」
「そうなの、その子達のことなの」
その雷獣のというのです。
「そのことをね」
「今から」
「お父さんに聞いて下さい」
女の子はまたポリクロームにお話しました。
「是非」
「わかったわ、それじゃあ」
「私達も困っていますから」
「そうなのね、それじゃあ」
「どうぞこちらに」
こうしてです、女の子の案内を受けてです。皆は雷の精霊さん達のお家に入りました。そしてその中はといいますと。
「何かここも」
「そうだね」
「ポリクロームさんのお家とね」
「同じ造りね」
「そうよね」
ジョージにです、四人が応えて言います。
そしてです、ジョージはこう言いました。
「精霊さんのお家は何処もこうした造りかな」
「古代ギリシアの神殿風のね」
「そうした造りなのかな」
「雷の精霊さんにしても」
「他の精霊さん達も」
「ええ、そうよ」
ポリクロームがです、五人に答えました。
「精霊のお家は何処もこうよ」
「こうした神殿みたいな造りですか」
「そうなの」
ジョージにもお話します。
「私達のお家はね」
「そうなんですね」
「そう、私達はこうした造りの家が一番落ち着くから」
「神殿みたいな造りが」
「精霊さんだからかな」
神宝はポリクロームとジョージのお話を聞いて言いました。
「ギリシア神話のニンフも精霊じゃない」
「同じ精霊だからかな」
「だからオズの国の精霊さんもね」
「こうした造りがなんだ」
「一番落ち着くのかな」
「そうなのかな」
「まあ落ち着く場所は人それぞれだしね」
ここでこう言ったのはカルロスでした。
「僕も一番落ち着くのはブラジルのお家だしね」
「そうね、私もね」
恵理香はといいますと。
「畳がいいわ」
「日本人だからだよね」
「ええ」
まさにそうだとです、恵理香はカルロスに答えました。
「私はね」
「やっぱりそこはね」
「人それぞれよね」
「それで精霊さん達はなんだ」
「そうなの、私達はね」
女の子がカルロスに答えます。
「こうした造りが一番落ち着くの」
「私も含めてね」
ポリクロームも言います。
「そうなのよ」
「人の好みとかはそれぞれってことだね」
ジョージも言います。
「オズの国にいるとそのこともわかるよ」
「外の世界より色々な人が沢山いるから余計にだね」
魔法使いがジョージにお話します。
「そうしたこともわかるんだよ」
「そういうことですね」
「色々なものを見て色々なことを知る」
「それもオズの国ではですね」
「わかることだよ」
「もうすぐよ」
ここで女の子がまた言ってきました。
「お父さん達がいるお部屋は」
「あっ、何かお家の構造も」
ジョージはここでこうしたことにも気付きました。
「ポリクロームさんのお家と似てるかも」
「それも落ち着くからよ」
「だからなんだね」
ジョージはこのことにも納得しました、そうしたことをお話しながらです。一行は雷の精霊さんの一家がいるそのお部屋の扉の前に来ました。
本当に今回の旅はのんびりしたものだな。
美姫 「そうよね。こっちものんびりした気分だわ」
だな。のほほーん。
美姫 「でも、辿り着いた先では雷が鳴り響いているみたいね」
だな。流石にここでものんびりは無理そうだな。
美姫 「心配した雷も魔法の避雷針のお蔭で無事に通り抜けれたけれど」
この雷の原因はどうやらお父さんにあるみたいだな。
美姫 「一体、何が起こっているのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね」