『オズのポリクローム』
第四幕 ポリクロームの家
皆は飛行船でお空の旅を続けていました、飛行船はゆっくりとですが止まらずそのうえで先に進んでいました。
今はお昼を食べています、そのお昼のお料理はです。
鳩のローストをメインにしてです、ポテトサラダにコーンポタージュのスープ、それとふんわりと焼いたパンです。
その鳩を食べてです、恵理香は目を丸くして言いました。
「神宝の言う通りね」
「美味しいよね」
「ええ、鳩もね」
そうだとです、神宝に言うのでした。a
「美味しいわ」
「そうだよね、鳩もいいんだよ」
「神宝が美味しそうって言った訳がわかったわ」
「実際に美味しいから」
だからというのです。
「僕もああ言ったんだよ」
「そうなのね」
「確かに美味しいね」
ジョージも言います。
「鳩も、ただ」
「ただ?」
「小骨多いね」
ローストを手に持って食べながらです、ジョージは神宝にこうも言ったのでした。
「結構以上に」
「うん、鳩はそうだよ」
「案外ね」
「美味しいけれどね」
「何かそれがね」
どうもというお顔で言うジョージでした。
「気になるかな」
「骨があったら噛み砕いたらいいんじゃない?」
こう言ったのはカルロスでした。
「それで」
「いや、それはよくないよ」
ジョージはカルロスの提案に即座に返しました。
「鳥の骨を噛み砕いて食べるのはね」
「よくないんだ」
「うん、硬いからお腹の中で消化出来なくて」
それでというのです。
「そのお腹の中を傷付けるから」
「だからなんだ」
「うん、犬でもそうだよ」
「そういえば犬に鶏の骨は食べさせないね」
「それでなんだ」
「人もなんだね」
「あまり鳥の骨は噛み砕いて食べない方がいいんだ」
ジョージはここでこうも言いました。
「アメリカの実家でよくお父さんとお母さんに言われたから」
「ひょっとしてそれって」
「うん、実家で犬を飼ってるからね」
このことから言ったのです。
「それで知ってるんだ」
「成程ね」
「とにかくね」
「鳥の骨は食べない方がいい」
「そういうことだよ」
「よし、じゃあ気をつけて食べるよ」
カルロスはジョージのお話を聞いてそしてでした、そのうえで。
骨は慎重にです、お口の中でどけて食べるのでした。これはナターシャも同じで。
ローストを慎重に食べてです、そして言いました。
「お魚食べる時を思いだしたわ」
「小骨が多いからだね」
「それか鶉ね」
この鳥もお話に出します。
「あの鳥も小骨多いから」
「鶉は小さいからそう感じるのかもね」
「そうかもね。けれど実際に」
「鳩はっていうんだね」
「小骨が多いわ、それが気になるわ」
「けれど鳩も美味しいわよ」
勿論ドロシーも食べています、そうしながらお話するのでした。
「私も前に食べたことがあるけれど」
「小骨は多くても」
「美味しいわ」
そうだとです、ジョージに言うのでした。
「そうしたものと思って食べることよ」
「そこは割り切って」
「そう、美味しいものが食べられる」
「まさにそのことがですね」
「第一でしょ」
「確かに。言われてみれば」
「そういうことだから、じゃあローストを食べて」
そしてというのです。
「パンも食べてね」
「デザートもあるよ」
魔法使いも言ってきます。
「それもね」
「今日のデザートは何ですか?」
「果物だよ」
「それですか」
「林檎にオレンジ、それに西瓜と無花果だよ」
「あっ、西瓜もあるんですか」
「そうだよ、西瓜は好きかな」
魔法使いは皆にこのことも尋ねました。
「あれは」
「はい、好きです」
「西瓜大好きです」
皆西瓜と聞いて魔法使いに笑顔で答えました。
「とてもです」
「大好きです」
「あんな美味しいお野菜ないですよね」
「甘くてすっきりしてて」
「最高です、西瓜」
「うん、皆西瓜をお野菜と知っていることもいいね」
実は果物ではないのです、西瓜は。
「とにかくね、西瓜もね」
「デザートとしてあるんですね」
「そちらも」
「そうだよ、だから楽しみにしていてね」
「ううん、西瓜はね」
ここで腹ペコタイガーも言います、山の様に盛られたパンもローストも実に美味しそうにもりもりと食べています。
「いいよね」
「あっ、腹ペコタイガーさんもなんだ」
「西瓜食べるんだ」
「虎なのに」
「うん、オズの国の虎は食べるよ」
腹ペコタイガーはこう五人に答えました。
「僕の大好物の一つだよ」
「僕も食べるよ」
臆病ライオンも言ってきました。
「そして大好きだよ」
「僕もアメリカにいた時は食べなかったけれど」
トトもなのでした。
「好きだよ」
「ううん、オズの国の動物はね」
「虎やライオンもお野菜食べるんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、いざとなればね」
ここでトトが言うことはといいますと。
「西瓜を牙で割って食べるんだ」
「トト、そんな無作法はことをしたら駄目よ」
ドロシーは自分の横にいるトトの今の言葉を聞いて少しむっとして注意しました。
「穴を開けてそうして中にお顔を入れて食べるのよね」
「僕の場合はそうだけれど」
「そんなことしたら駄目よ」
絶対にというのです。
「無作法な食べ方だし毛が西瓜のお汁で濡れるでしょ」
「うん、確かにね」
「だから駄目よ。若し食べたくなったらね」
その西瓜をというのです。
「私が切ってあげるから」
「その西瓜を食べればいいんだね」
「そう、だからね」
「そのまま食べたら駄目なんだね」
「そうよ」
「ううん、僕達だとね」
「皮ごと食べるけれどね」
これが腹ペコタイガーや臆病ライオンの食べ方でした。
「そこはね」
「身体の大きさが違うからね」
「そうだね、動物によって食べ方が違うのは当然だね」
ジョージは二匹の言葉を聞いて頷きました。
「それは。まあね」
「まあ?」
「まあっていうと?」
「うん、オズの国のことがまた一つわかったよ」
「僕達もお野菜を食べることがだね」
「そのことがだね」
「そういえば前からだったね、タイガーさんもライオンさんもお野菜も果物も食べてたよ」
ジョージはここでこのことも思い出しました。
「お菓子だってね」
「そうだよ、僕達も色々とね」
「食べるんだよ」
「だからね」
「西瓜だって大好きなんだよ」
「そうだね、じゃあ皆で西瓜もね」
それもとです、皆でお話しながらでした。
お空の旅の中でお昼御飯も楽しみました、そのお昼の後は飛行船の中のお風呂にも入りました。そしてです。
お風呂から出てです、ジョージは魔法使いに尋ねました。今飛行船は雲の中を飛んでいて一面白くふわふわしています。
「あの、飛行船の中にお風呂があるのは」
「そうそうないよね」
「はい、やっぱりオズの国の飛行船だからですね」
「そうだよ」
まさにそれが為にというのです。
「だからなんだよ」
「それでお風呂もあるんですね」
「うん、普通の飛行船にはないから」
「そこは飛行機と同じですね」
「だから特別だよ、けれど気分がいいね」
「はい、凄いお風呂ですよね」
そのお風呂のことをです、ジョージは魔法使いに目を輝かせて応えました。
「一面、横も下も上もガラスで」
「透明になっていてね」
「お空が三百六十度見えていて」
「魔法のガラスだからね」
それでというのです。
「飛行船の袋になっている部分もね」
「お空がですね」
「見えるんだ」
そうなっているというのです。
「あそこはね」
「そうなんですね」
「僕も後で入るよ」
魔法使いはにこにことしてジョージに言いました。
「そして景色も楽しんでくるよ」
「そうされるんですね」
「女の子達も入ったかな」
「はい、ドロシーさんと一緒に」
「楽しませてもらいました」
すっきりとしたお顔で身体から湯気をほかほかと出しながらです、女の子二人も魔法使いに答えました。
「さっきまで女の子のお風呂で」
「入っていました」
「それは何よりだよ、お空の旅は歩く楽しみはないけれどね」
それでもというのです。
「こうしたことは楽しめるんだ」
「そういえば今回の旅はね」
「僕達ずっと船の中でね」
神宝とカルロスも言うのでした、勿論二人もお風呂に入っています。
「歩いていないね」
「そうだよね」
「うん、それでもね」
「お食事やお風呂はですね」
「楽しめますね」
「そうだよ、あと到着はね」
ポリクロームのお家にはというのです。
「明日の朝だから」
「あっ、早いですね」
「うん、飛行船は確かにゆっくりだけれど」
それでもというのです。
「歩くよりもずっと速いし。それにいつも進むからね」
「夜の間もですね」
「だからね」
「明日の朝にですか」
「着くよ、それまではお空の旅を楽しもうね」
「わかりました、それじゃあ」
ジョージが五人を代表して笑顔で応えました、そして。
ドロシーは皆にです、ここであるものを差し出しました。
それはジュースでした、白いそのジュースは。
「カルピスですか?」
「白いジュースっていいますと」
「そうよ、日本で売っているジュースよね」
まさにそれだとです、ドロシーも皆に答えます。
「正確に言うとジュースではないわね」
「そうですね、、乳飲料ですよね」
それになるとです、ジョージも答えます。
「カルピスは」
「ええ、けれどね」
「そのカルピスをですね」
「飲みましょう」
「そういえば今僕達は雲の中を飛んでいるから」
「白い中でしょ、その白い中にいるから」
それでというのです。
「白い飲みものはどうかって思ってなの」
「だからカルピスですか」
「そうよ、では飲んでね」
「わかりました、それじゃあ」
「はい、飲ませてもらいます」
カルロスは笑顔で応えてでした、そのうえで。
皆でカルピスも楽しみました、お空の旅は飛行船の中で楽しみながらでした。
雲から出るとです、下に雲が見えていた。
周りも上も青空でした、ここで魔法使いはです。
操縦席にあったボタンを一つ押しました、すると。
三百六十度見渡す限り景色が見えました。そのお空の景色が。
「あっ、上も横も」
「本当に全部が」
「お空になってて」
「とても青くて」
「どうかな、全部見える様にね」
それこそというのです、魔法使いも。
「してみたけれど」
「うわ、凄いですね」
「お空の中に浮かんでるみたいです」
「見渡し限り青空で」
「下は雲の絨毯で」
「凄い景色ですね」
「これがお空だよ」
まさにというのです。
「違うよね、他の場所と」
「はい、全然」
「飛行機で飛んでいるみたいです」
「飛行機は全部見渡せないですけれど」
「この飛行船ならなんですね」
「そうだよ、こうした風にね」
まさにというのです。
「全部見渡せるんだ」
「ううん、魔法の飛行船だから」
「だからなんですね」
「こうした風にも出来るんですね」
「見渡す限り見られることも」
「出来るんですね」
「そうだよ、そして夜になればね」
その時はといいますと。
「夜空になるから」
「完全な星空ですか」
「そのお空が見られるんですね」
「夜になれば」
「それもですね」
「そう、見られるからね」
だからと言ってです、そのうえで。
皆まずはでした、青いお空を楽しんででした。お空が赤くなって。
濃紫になりました、すると。
そこにはです、まさにでした。
無数の瞬く星達がお空に出ました、その中の星達を見てです。
ジョージはです、ある星座を指差して言いました。
「あれが北斗七星だね」
「うん、そうだね」
神宝もジョージのその言葉に頷きます。
「あれがね」
「そうだったね」
「何か北斗七星って」
神宝はこんなことも言いました。
「日本でもよく漫画やアニメに出るね」
「あっ、確かに」
日本人の恵理香も応えます。
「出ることが多いわね」
「それだけ有名ってことだね」
「そうよね」
「北斗七星はね」
ジョージがこの星達についてお話します。
「大熊座なんだよね」
「そうよね、尻尾の部分だよね」
「ギリシア神話だとね」
「それでね」
神宝はその大熊座の近くにあるもう一つの七つの星達を見て指差しました。
「あれは小七曜でね」
「北極星もよね」
「あるよ」
「あの星ね」
恵理香は北極星は自分で見付けました。
「一番大きいからわかりやすいわ」
「そうだよね」
「大熊座と子熊座なんだよね」
ジョージは目を細めさせてその二組の七つ星を見ています。
「あの二つの星達が」
「そうね、お母さんと子供なのよ」
ナターシャもそのお星様を見ています。
「二組の七つ星でね」
「そうなんだよね」
「私はね」
ここでナターシャが言うことはといいますと。
北斗七星の二つ目の星のところを見てです、皆に尋ねました。
「あの双子星見えるわよね」
「うん、見えるよ」
「しっかりとね」
「あそこはお星様が二つあるのよね」
「そうなんだよね」
四人も応えます。
「双子星っていって」
「一つじゃないだよね」
「だから北斗七星っていうけれど」
「実際は八つあるのよ」
「先生も言ってたわ、授業で」
「そうだよ」
その通りだとです、魔法使いも皆にお話します。
「北斗七星は七つじゃないんだ」
「そうですよね、八つですよね」
「本当はそうなんですよね」
「あの星が見えるのはね」
それこそとも言う魔法使いでした。
「目がある程度よくないとね」
「見えないですよね」
「目が悪いと」
「それで昔は視力の検査にも使われたんだ」
その星が見えるかどうかということで、です。
「見えたら目がいいんだよ」
「じゃあ僕達はですね」
「目がいいんですね」
「そうだよ、目はね」
それはともお話するのでした。
「大事にするんだよ」
「目がいいに越したことはない」
「そういうことですね」
「だから大事にすべきなんですね」
「そうだよ、目はね」
必ずというのです。
「大事にするんだよ」
「わかりました、じゃあ」
「目はこれからも大事にします」
「大切にしますので」
「そうするんだよ、ではもう寝ようか」
夜が深くなったからです。
「そして朝になればね」
「いよいよですね」
「ポリクロームさんのお家ですね」
「待ちに待ったというか」
「あの人と会えますね」
「あの人のお家まで着いて」
「そうだよ、私も彼女のお家に行くのはね」
魔法使いにしてもです。
「はじめてなんだよ」
「私もよ」
「僕もそうだよ」
ドロシーとトトもそうなのです。
「だからね、行くことがね」
「楽しみだよ」
「というか誰もね」
「ポリクロームのお家に行ったことはないよ」
臆病ライオンと腹ペコタイガーもでした。
「それこそこうしたお空を飛べないと行けないから」
「行きにくいからね」
「だからオズの国の殆どの人が行っていないよ」
「僕達にしてもね」
そうだというのです。
そうしたことをお話してでした、ここで。
二匹はお口を大きく開いて欠伸をしてでした、魔法使いに言いました。
「さて、じゃあね」
「寝ようね」
「それで朝になればね」
「いよいよそのポリクロームのお家だね」
「そうだよ、じゃあ今から寝よう」
こうしたことをお話してでした、皆は。
それぞれベッドに入ったり敷きものの上に寝そべってです、そのうえで。
ゆっくりと寝ました、皆ぐっすりと寝てでした。
朝起きるとです、丁渡その時に朝日が昇ってきていました。ジョージはその朝日が昇るのを見て言いました。
「あっ、丁渡ですね」
「うん、朝になったところだね」
「丁渡いい時に起きましたね、僕達」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「うん、僕達が朝起きるのは」
それはというのです。
「旅の時はいつも朝日が昇る時だね」
「そうですね、朝日と一緒に起きるのは」
「とても気持ちがいいね」
魔法使いも笑顔です、そして。
ドロシーが皆にです、こう言いました。
「それじゃあね」
「はい、今からですね」
「御飯を食べて」
「それからですね」
「御飯を食べた後はお風呂に入りましょう」
昨日の夜に続いてというのです。
「身体も奇麗にして服も着替えてね」
「奇麗な服にですね」
「そうしてですね」
「勿論歯も磨いてね」
このことも忘れないドロシーでした、歯を磨くということは歯を大事にするということで歯は健康に物凄く影響を与えるからです。
「そうしてよ」
「ポリクロームさんのお家にですね」
「行ってですね」
「ポリクロームさんとお会いするんですね」
「そうよ、じゃあまずは御飯を食べましょう」
ドロシーは早速テーブル掛けを出しました、そこで出した朝御飯はです。
サンドイッチでした、ハムやレタスにトマト、それに卵にハンバーグとです。色々なものが入ったサンドイッチです。
飲みものは牛乳です、そして果物もあります。今朝の果物はといいますと。
「ネーブルですね」
「そうよ」
その通りとです、ドロシーはジョージに答えました。
「これを食べるから」
「ネーブルですか、いいですね」
「ネーブルも美味しくて栄養があるから」
「ビタミンが豊富ですよね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「食べましょう、いいわね」
「はい、朝からですね」
「美味しく栄養を摂って」
「お風呂にも入って歯も磨いて」
「服も着替えてね」
そうして奇麗にしてというのです。
「それからよ」
「ポリクロームさんのお家ですね」
「大体六時半ね」
「その時間に着くんですね」
「そうよ、その時にね」
こうお話してでした、皆でサンドイッチとネーブル、そして牛乳を楽しみました。それから皆お風呂に入ってでした。
ジョージはお風呂の中で一緒に入っている男の子達と魔法使いにこんなことを言いました。透明なお部屋の中で皆水槽の中にいます。
「ううん、何かね」
「何か?」
「何かっていうと?」
「うん、僕も飛行機にの言ったことはあるよ」
このことをです、皆に言うのでした。
「飛行船にもね、けれどね」
「雲の上のお家に行くのはだね」
「それははじめてだから」
それでとです、神宝に答えるのでした。
「何か信じられないね」
「オズの国は信じられないことばかり起こるけれど」
カルロスも言います。
「今回は特にだね」
「そうだよね、本当にね」
だからとです、ジョージはまた言いました。
「嘘みたいだよ」
「オズの国は不思議の国でも」
「今回は特になのは確かだね」
神宝とカルロスはこうも言いました。
「雲の上のお家ね」
「そして雲の上を歩くのかな」
「ううん、凄いね」
「夢みたいだよ」
「その夢みたいなことが起こるのがオズの国だからね」
魔法使いは男の子達と違ってにこにことしています、その起こることをもうわかっていて受け入れている感じです。
「落ち着いてね」
「それで、ですか」
「それを楽しめばいい」
「そういうことなんですね」
「そうだよ、悪いことは起こらないからね」
だからというのです。
「楽しみにしていよう、じゃあ今はね」
「はい、お風呂をですね」
「楽しもうね」
こうジョージに言ってでした、そうして。
皆はまずはお風呂を楽しんでなのでした、それからです。
着替えて歯も磨いてです、操縦席のところに行くとです。目の前に雲の上にあるギリシアの神殿を思わせる白い宮殿がありました。
その宮殿を見てです、ジョージは目を輝かせて言いました。
「あの宮殿がですね」
「そうよ、あの宮殿がね」
まさにとです、ドロシーがジョージに答えます。
「ポリクロームのお家よ」
「そうですよね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「これからね」
「はい、これからですね」
「お家に入るわよ」
「わかりました、それじゃあ」
ジョージは確かな顔で頷いてでした、遂にです。
飛行船は雲の傍に来てでした、そうして。
雲の上に足を踏み入れるとでした。
「あっ、ちゃんとね」
「歩けるわね」
恵理香とナターシャはお顔を見合わせて笑顔でお話しました。
「雲の上でもね」
「しっかりとね」
「歩けるわ」
「そうね」
「ええ、この雲の上はね」
ドロシーもその雲の上に立って歩きつつ二人に応えます。
「歩けるわ」
「何か嘘みたいですね」
「雲の上を歩けるなんて」
「オズの国でも」
「こんなことがあるんですね」
「そうだね、確かにね」
「このことは凄いことだよ」
臆病ライオンと腹ペコタイガーも雲の上に来ています。
「雲の上を歩けるって」
「嘘みたいなことだよ」
「いや、本当にね」
「僕達も驚いてるよ」
「ふわふわしててね」
トトも雲の上を歩きつつ言います。
「何かあれだね」
「ええ、この感触はね」
「柔らかいベッドの上にいるみたいだよ」
こう魔法使いにも言うのでした。
「この感触ってね、だからね」
「だから?」
「こんなことをしたくなったよ」
トトはここで雲の上を跳ねたり転がったりしはじめました、ですが。
ドロシーはそのトトにです、むっとしたお顔で注意しました。
「駄目よ、トト」
「はしゃいだらだね」
「雲から落ちるわよ」
だからというのです。
「落ち着いてね」
「そうだね、それじゃあね」
「何か僕もね」
カルロスもこう言うのでした。
「何かね」
「飛び跳ねたい?」
「そうなんだ」
ジョージに雲の上を歩きつつ答えるのでした。
「ふわふわふかふかしてて」
「最高のベッドの上にいるみたいだから」
「そう、だからね」
それでというのです。
「ついついね」
「飛び跳ねたくなるんだね」
「そうなんだ」
こう言うのでした。
「ついついね、けれどね」
「危ないよ」
神宝も真剣にです、カルロスに注意します。
「そんなことしたら」
「そうなんだよね、だからね」
「我慢してるんだね」
「そうなんだ」
「その方がいいよ」
ジョージはまた神宝に言いました。
「さもないと落ちて大変なことになるよ」
「落ちたらやっぱり死ぬかな」
「死にはしないけれど」
ここで、でした。ドロシーがカルロスに言いました。
「オズの国では誰も死なないから。けれどね」
「それでもですか」
「落ちたら怖いし」
それにというのです。
「痛いわよ」
「そうなんですね」
「だから落ちたら駄目よ」
絶対にというのです。
「死ななくてもね」
「わかりました、それじゃあ」
「はしゃぎたくなる気持ちはわかっても」
それでもというのです。
「落ちない様にね」
「そうします」
「さて、ではね」
トトとカルロスのはしゃぐ気持ちを抑えてからです、そのうえで。
皆を先に進ませるとです、宮殿の方からです。
虹色の生地の薄いギリシアの女神みたいな服を着た娘が来てでした。皆の前にくるくるとした動きと一緒に言ってきました。
「いらっしゃい、待ってたわ」
「久しぶりね」
ドロシーがそのポリクロームに笑顔で応えました。
「元気そうね」
「ええ、貴方達もね」
「今回ははじめて貴女のお家に来たけれど」
それでもというのです。
「何か雲の上ってね」
「どう?歩いてる気持ちは」
「不思議な気持ちよ」
とてもというのです。
「私もね」
「そうなのね、貴女も」
「ええ、それじゃあね」
「今から私のお家に入って」
「楽しんでいいかしら」
「そうして欲しくて来てもらったのよ」
ポリクロームは微笑んで、です。ドロシーに答えました。
「貴方達にね」
「それじゃあ」
「ええ、今からね」
「お家に入って」
「そしてね」
そのうえでというのです。
「楽しんでね」
「わかったわ、それじゃあね」
こうしてでした、皆はポリクロームに彼女のお家に案内してもらうことになりました。そのギリシアの神殿を思わせるその中に。
お家の中はとても奇麗でした、壁も柱も雲の様に真っ白で。
床も白くてまるで雪みたいでした、中も神殿を思わせる造りです。
その中を案内されてです、ジョージは周りを見ながら言いました。
「何かお家というよりは」
「神殿みたいよね」
「はい、どうも」
こうドロシーにも答えます。
「そんな感じです」
「そうね、奇麗でね」
「神秘的な感じがして」
「とても不思議な場所です」
「これが私達のお家なの」
案内をしているポリクロームがジョージ達に答えてきました。
「雲で出来ているの」
「それでなんですね」
「こうした造りなの」
「ポリクロームさんのお部屋もですか」
「そう、こうした感じなの」
「そうなんですね」
ジョージはポリクロームのお話を聞いてこうも言いました。
「不思議ですね」
「不思議かしら」
「はい、オズの国の中でも」
特にというのです。
「そんな感じがします」
「そこまで不思議かしら」
「お家の中もふわふわとしていて」
歩いているその感触がです。
「地上と本当に違いますね」
「それが不思議なのね」
「それに中も」
そのお家の中もというのです、左手には中庭がありますが雲のその中に草花があって青いお水をたたえたお池もあります。
「神殿みたいで」
「お家よ」
「そうですよね、けれど」
「神殿みたいっていうのね」
「そんな感じがします」
「そうなのね」
「そういえばポリクロームさんは」
ジョージはあることに気付きました、その気付いたことはといいますと。
「朝露だけを召し上がられるんですよね」
「そうよ」
「じゃあ食べるものは」
「ないわよ」
これがポリクロームの返事でした。
「朝露は自然に出て来るわね」
「はい、草花について」
「それを少し飲むだけでいいから」
「だからですね」
「このお家には食べるものはないわ」
食べる必要がないからです。
「全くね」
「そうですよね、朝露を舐めるだけで」
「寝ることはしていても」
それでもというのです。
「食べることはしないわ」
「そうですよね、だからですか」
「生活感がない?」
恵理香は首を傾げさせてこう言いました。
「ここは」
「うん、何か不思議だなって思ってたら」
ジョージは恵理香のその言葉に応えました。
「それがないんだ」
「そうよね」
「かかしさんや木樵さんのお家みたいに」
「食べる場所とかがないから」
「それでなんだね」
「そうよね」
「飲むことはしてるわよ」
これがポリクロームの言葉です。
「朝露をね」
「けれど舐めるだけですよね」
「量は多くないわ」
「ですから、あまり」
「生活感がないっていうのね」
「そうだと思います」
「神聖な感じが強くて」
神宝が言うにはです。
「お家じゃなくて本当に神殿みたいです」
「神殿ね」
「それにポリクロームさんも」
この人自身もとです、ポリクロームがお話することはといいますと。
「天女様みたいで」
「あっ、確かに」
ジョージは神宝の言葉にも頷きました。
「ポリクロームさんは雲のお家に住んでいて」
「虹の人だからね」
「うん、着ている服も虹だしね」
「それにとても奇麗だから」
「天女みたいだね」
「精霊でね」
「確かにね」
ジョージも頷くのでした、ポリクロームは天女とです。
そしてカルロスもです、こう言いました。
「ポリクロームさん以外の人もだよね」
「私以外の?」
「はい、皆さん朝露だけを召し上がられるんですよね」
「そうよ」
「じゃあポリクロームさん以外も」
その他の人もというのです。
「天女さんみたいなんですね」
「そうなのよ」
ドロシーがカルロスに答えました。
「私もポリクロームのお姉さん達に会ったことがあるけれど」
「皆さんなんですね」
「天女様みたいにね」
「奇麗なんですね」
「そうなの、あとね」
「あと?」
「ポリクロームにはお父さんとお母さんもいてね」
そしてというのです。
「お兄さんもいるのよ」
「お姉さんだけじゃなくて」
「お兄さんが一番上におられるの」
「そうだったんですか」
「そうよ」
そのポリクローム本人の返事です。
「私達の兄弟の一番上の人はお兄さんよ」
「そうなんですね」
「お兄さんが何人かいてお姉さん、妹に弟も沢山いるわ」
「子沢山な家族なんですね」
カルロスはそのお話を聞いてあらためてこのことを知りました。
「そうなんですね」
「そうね、確かにね」
「そうですか、じゃあ」
「今は皆ここにいるから」
「お会い出来るんですね」
「これから案内する場所にね」
ポリクロームの家族がいるというのです。
「会ってね」
「わかりました、それじゃあ」
「そういえばポリクロームさんのご家族は」
ここで、です。ナターシャも言うのでした。
「皆さん奇麗なんですよね」
「そうかしら」
「そう聞いていますけれど」
「そうそう、凄くね」
「皆とびきりの美人さんだよ」
ポリクロームに代わってです、臆病ライオンと腹ペコタイガーがナターシャに答えました。
「もう誰もが美人さんで」
「本当に天女さんみたいだよ」
「ポリクロームだけじゃないから」
「凄いんだよ」
「そうなのね、どんな感じかしら」
「あら、ナターシャも可愛いわよ」
これがポリクロームの返事でした。
「とてもね」
「だといいですが」
「ええ、何なら私の服を着てみる?」
「えっ、ポリクロームさんの服を」
「後でね。どうかしら」
「ポリクロームさんの服を」
ナターシャはポリクロームのその虹色のきらきらとしてさらさらとした服を見ました、周りには同じ色の帯が身体を覆うようにしてあります。
「私もですか」
「ドロシーも恵理香も、そして」
ここでポリクロームは男の子も見てでした。
そしてです、彼等にも言うのでした。
「貴方達もどうかしら」
「僕達もですか」
「けれど僕達は」
「男の子ですから」
「お父さんや兄弟の服があるから」
女の子の服ではなくです。
「その服を着てみたらどうかしら」
「ううん、凄い服ですけれど」
「僕達もですか」
「着ていいんですか」
「ええ、よかったらね」
その時はとお話してでした、そして。
ポリクロームは皆をお家の奥にと案内していきます、お家の中はです。
人気がありません、ジョージはこのことについてもです。ポリクロームに尋ねました。
「あの、皆さんは」
「お家の奥に集まってるわ」
「だからですか」
「そう、今は姿を見ないの」
「そうなんですね、あと」
「あと?」
「鳥や虫はいますね」
生きものはいるのでした、お家の中に。
「雲の上でも」
「そうよ、ここにはちゃんと生きものもいるのよ」
「雲の上でもですね」
「そうなのよ」
「そういえば空気も」
「普通だね」
魔法使いが言いました、他の皆も気付きました。
「雲の上でも」
「そうなの、私達のいる雲の上はね」
「空気も普通なんだね」
「私達は空気が薄くても平気だけれど」
「それでもだね」
「虫や鳥の皆は苦しいから昔グリンダさんから貰った魔法の道具で空気を地上と同じ濃さにしてるの」
「成程ね」
魔法使いはポリクロームのその説明を聞いて頷くのでいsた、そうしたお話をしながらです。
皆お家の奥まで来ました、その扉の前で皆一旦お互いに服装をチェックしました。服は皆それぞれきちんと整っていました。
飛行船だから、いつになくのんびりした感じに。
美姫 「良いわよね。暮れていく空に、綺麗な星空」
だな。で、朝日が昇る頃には雲の上に。
美姫 「特に問題もなく無事に到着できたわね」
良い事だよ。で、飛行船から降りた訳だが、雲の上を歩く感触が気になる。
美姫 「どんな感じなのかしらね」
さて、到着した一行だけれど。
美姫 「この後はどうするのかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね」