『オズのポリクローム』




               第二幕  雲まで行く方法

 王宮にいる皆が会議室に集められてです、そのうえで。
 ドロシーは恵理香達とお話したことを皆にもお話しました、そうしてから皆にどうしたらポリクロームのいる雲のところまで行けるのかをお話しました。 
 そのお話を聞いてです、まずは魔法使いが言いました。
「気球で、と言いたいけれど」
「それにはよね」
「うん、あまりね」
 ドロシーに微笑んで返すのでした。
「安全じゃないしね、気球に搭載出来る燃料も少ないし」
「落ちたり燃料切れの心配があるから」
「気球はお勧め出来ないよ」
「そうなのね」
「ううん、お空を飛ぶのなら」
 今度はオズマが言いました。オズの国家元首の席で考える顔で言うのでした。
「翼だけれど」
「それでもね」
 オズマにもです、ドロシーが応えます。
「鳥の翼だと」
「鳥は雲まで行くことはあまりないから」
「その高さまで上がることは難しいわね」
「そう、それにね」
 オズマはさらに言うのでした。
「高く上がることは普通に飛ぶことより辛いから」
「疲れるわね」
「お空の上の方は空気も薄いから」
「じゃあ翼で行くことも」
「あまりお勧め出来ないわ」
 実際にというのです。
「こちらもね」
「そうなのね」
「虫の羽根を使っても」
 魔法でそれを身体に生やして使うことも出来ますが。
「蝶々とかの羽根じゃ無理よ」
「そういえば蝶々ってね」
「高い場所飛んでないよ」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーが言いました。
「あまり高くないところ飛んでいて」
「それもひらひらとね」
「そう、だから虫の羽根だと」
 さらに言うオズマでした。
「使うにも種類があるわ」
「どんな羽根ならいいですか?」 
 ジョージがオズマに尋ねました。
「雲まで飛ぶのなら」
「そうね、やっぱり蜂かしら」
「蜂の羽根を使えばですか」
「雲まで行けるかも知れないわ」
「それじゃあ」
「いえ、それでもね」
 蜂の羽根を使ってもなのでした。
「さっき行ったけれどお空の上の方が空気が薄いから」
「その中で運動をしたら」
 カルロスがオズマの言葉に気付きました。
「大変ですね」
「ええ、とても疲れるわよ」
 空気の薄い場所で運動をすれば普通の場所で運動をするよりもずっと疲れてしまうのです。運動の時に吸い込まないといけない酸素が少ないからです。
「それはね」
「そうですよね」
「ええ、だからお空にまで飛ぶこと自体が」
「あまり、ですね」
「お勧め出来ないわ」
 オズマとしてはというのです。
「私としては」
「そう、君達は子供だから」
 ボームさんは五人を気遣って言います、五人がポリクロームのところまで行きたいと願っているからこのお話を出したことを知っているからです。
「そこまで体力を使うと」
「よくないですね」
「うん、そうだよ」
「じゃあ四霊獣の方々みたいに霊力でお空を飛んだり雲に乗ったりとか」
 神宝はこうしたことを提案しました。
「これは」
「あっ、筋斗雲だね」
 ジョージは神宝の雲に乗ってという言葉から気付きました。
「孫悟空が乗っている」
「そう、あれを使えばどうかな」
「確かに。あれなら楽にお空まで行けるね」
「そうだよ、いいと思うよ」
 神宝はこうジョージに言いました。
「霊力を使って飛んでも」
「特に雲がいいね」
「そうだよね」
「あっ、雲を使って飛ぶ魔法だね」 
 モジャボロが神宝のお話に乗りました、この人は今日は王宮に来ていたのです。
「あれは面白い魔法だね」
「オズの国でもこの魔法使えますか」
「ええ、使えるわ」
 こう答えたのはオズマです。
「私とグリンダがね」
「そうですか、じゃあ」
「ええ、それで行こうかしら」
 オズマは雲に傾くのでした。
「私が筋斗雲を出すから」
「王女は中国の魔法も使えるんですね」
「だってアメリカには中国系の人もいるのよ」
 オズマはこう神宝に答えました。
「だから私も使える様になったのよ」
「あっ、オズの国はアメリカが反映される」
 アメリカ人のジョージも笑顔で気付きました。
「それでオズの国にも中国系の人がいて」
「中華街もあれば中華料理も食べられるでしょ」
「はい」
「それで私も中国の魔法、仙術が使えるのよ」
「それじゃあそれで行きますか?」
 ジョージは筋斗雲で行く方法に傾きました。
「ポリクロームさんのおられる雲のお家に」
「そうね、それもいいけれど」
 ここで言って来たのは鶏のビリーナでした、今ベッツイとトロットはキャプテン=ビル、そしてチクタクと一緒にカドリングのグリンダの宮殿に遊びに行っています。ムシノスケ教授は大学で論文を書いていていません。
「お空の冒険をすぐに終わらせるの?」
「筋斗雲だとすぐだから」
「まさに一瞬よね」
 右の翼を上げてジョージにも言います。
「それこそ」
「うん、僕も西遊記は知ってるけれどね」
「あの雲はあっという間に動くから」
「だからね」
「そう、それでね」
 それでというのです。
「雲までの旅は楽しまないのね」
「ううん、どうせなら」
「楽しんだらどうかしら」
 こう言うのでした。
「ここはね」
「それじゃあやっぱり」
 木樵がです、自分の隣の席にいるかかしにお話しました。
「ここはね」
「うん、飛行船ならね」
「安全に雲の場所まで行けて」
「しかもだよね」
「飛行船はゆっくりと進むから」
「空の旅も楽しめるね」
「そうだよ、疲れないし」
 自分で飛ぶ場合と違ってです。
「いいと思うけれどどうかな」
「そうね」
 オズマが最初にです、かかしの提案に頷きました。
「他の行き方よりも安全でしかもお空の旅を楽しめるわね」
「そうだよね、帰りも楽だしね」
「だからね」
「うん、いいと思うよ」
 かかしは微笑んでオズマにもお話しました。
「僕としてもね」
「飛行船で行くとなると」
「本当にゆっくりよね」
 恵理香とナターシャは二人でお話しました。
「お空を飛んで」
「雲まで安全に行けて」
「ポリクロームさんにもね」
「普通に会いに行けるわね」
「それならこれで決まりかしら」
 ドロシーも言いました。
「飛行船で行くべきね」
「うん、私もそれでいいと思うよ」
 魔法使いもです、ドロシーに続きました。
「あれなら楽しく安全な旅が出来るからね」
「そうですね、じゃあ」
「飛行船ですね」
 恵理香とナターシャは魔法使いにも応えました。
「皆で楽しく」
「お空の旅も楽しんで」
「行きましょう」
「ポリクロームさんのところまで」
「私もそれでいいと思うわ」
 オズマも言いました。
「ここはね」
「うん、では早速飛行船を出そう」
「王宮にも飛行船があるんですか」
「一つあるよ」
 ボームさんはジョージの問いに笑顔で答えました。
「緑色でオズの国の国旗をあしらったものがね」
「まさに応急の飛行船がですね」
「あるよ」
 そうだというのです。
「すぐに出せるよ」
「そうですか、それは何よりですね」
「それと燃料はね」
 かかしが言うのでした。
「水素は使わないから」
「あれは危ないですよね」
「うん、下手に使うとね」
 かかしはジョージにお話します。
「爆発が起こるからね」
「だからオズの国でも使わないですね」
「私の魔法で生み出したガスを使うよ」
 魔法使いが言ってきました。
「科学と合わせたね」
「それを使うから」
「そう、安全だよ」
 魔法使いはジョージに優しい笑顔でお話しました。
「だから安全な旅を楽しめるからね」
「そうですか、それじゃあ」
「さて、では飛行船を出して」
「事前にポリクロームに連絡しましょう」
 ドロシーはここで、でした。
 その手にです、携帯を取り出して五人に言いました。
「行く前にちゃんとね」
「はい、連絡をしてですね」
「急にお邪魔してポリクロームさんが驚かない様にですね」
「そうしてですね」
「行くんですね」
「今から連絡をして」
「そうしましょう、実は私あの娘の携帯の番号を知ってるから」
 それでというのです。
「今から連絡しておくわ」
「オズの国にも携帯があるんですね」
 恵理香はその目を瞬かせてドロシーに言いました。
「テレビもあって」
「ええ、だからオズの国jはアメリカが反映されるから」
「アメリカにあるものはですね」
「オズの国に合う様にアレンジされて存在しているのよ」
「私達が魔法で生み出したりするんだ」
 ここでまた魔法使いがお話しました。
「それであるんだ」
「それで携帯もあるんですね」
 ナターシャもそのお話を聞いて頷きます。
「そういうことですね」
「そうだよ、だからドロシーも持っているんだ」
「じゃあオズの国も皆携帯持ってるんですね」
 ジョージはそれはドロシーだけではないと考えて言いました。
「それじゃあ」
「そうよ」
 その通りとです、ドロシーはジョージに微笑んで答えました。
「オズの国の皆が持ってるわよ」
「やっぱりそうですか」
「ポリクロームもね」
「何かオズの国の携帯は」
 ジョージはそのオズの国の携帯をよく見ました、するとそのデザインは。
「ドロシーさんのは緑でしかも可愛いデザインですね」
「ええ、エメラルドの都の携帯だから」
「それで、ですね」
「緑で」
「それでデザインも」
「私の趣味でね」
「そうした風になってるんですね」
 可愛らしいものになっているというのです。
「オズの国の携帯ですね」
「それで都のね」
 エメラルドの都の、というのです。
「そうなっているのよ」
「そうですか」
「ちなみに僕や木樵君も携帯を持っているけれどね」
 かかしも言ってきました。
「黄色だよ」
「僕はブリキで造っていて黄色く塗っているんだ」
「ウィンキーだからね」
 その色になるというのです。
「そうなっているんだ」
「そういうことですね、オズの国のそれぞれの色が出ますね」
 携帯にもとです、ドロシーも応えました。
「やっぱり」
「そうなの、それで今から連絡するから」
 ドロシーはジョージ達にあらためて言ってです。
 すぐにメールを出しました、すると数分経ってです。
 ドロシーはにこりと笑ってです、こう言いました。
「是非来てってね」
「メールがですね」
「帰ってきたんですね」
「ええ、今ね」
 そうだとです、ドロシーは皆に笑顔で応えました。
「待ってるって言ってくれたわ」
「じゃあ今から飛行船を出してですね」
「皆で雲まで行くんですね」
「ポリクロームさんのところまで」
「そうしましょう、じゃあ早速ね」
 ドロシーはもう席を立たんばかりになってうきうきとした感じで言うのでした。
「行きましょう」
「はい、それじゃあ」
「これから一緒にですね」
「ドロシーさんもですね」
「一緒にですね」
「行きたいけれどいいかしら」
 ドロシーは五人にあらためて尋ねました。
「皆と一緒にね」
「はい、お願いします」
「ドロシーさんと一緒にお空の旅を楽しんで」
「そしてですね」
「ポリクロームさんのところにお邪魔して」
「あの人ともお話をするんですね」
「そうしましょう」
 こう五人とお話してでした、そして。
 皆はお話を終えてでした、王宮のお庭に出てです。
 すぐに飛行船を出そうとしました、ですが。
 お空を見るともう夕方でした、それでオズマは皆に言いました。
「行くのはね」
「はい、もう夕方ですから」
「夜に飛行船を出して作業をするのもですね」
「よくないですね」
「ですから明日ですね」
「明日の朝起きてですね」
「ええ、飛行船を出して出発しましょう」
 皆にです、オズマは言うのでした。
「そうしましょう、それとね」
「それと?」
「それとっていいますと」
「私は今忙しくて」
 それでとです、オズマはこのことは残念そうに言うのでした。
「お空には行けないの」
「そうですか、じゃあ」
「僕達だけで、ですね」
「お空まで行くんですね」
「楽しんできてね」
 男の子三人にもです、オズマは言いました。
「皆で」
「はい、じゃあ」
「そうしてきます」
「申し訳ないですが」
「申し訳なくはないわ」
 このことは違うとです、オズマは返しました。
「むしろ帰って来たらお話を聞かせて欲しいわ」
「お空の旅のことをですか」
「そちらのことを」
「ええ、確かに行けないことは残念だけれど」
 それでもというのです。
「後でお話を聞くのも楽しいから」
「だからですね」
「後で、ですね」
「僕たちからですか」
「お話を聞いて」
「そしてですね」
「そのことを楽しまれるんですね」
「そうしたいわ、だから楽しんできてね」
 五人ににこにことしてお話するのでした。
「私は後で楽しませてもらうから」
「では今は」
 ここでジュリア=ジャムが出て来て皆に言ってきました。
「王宮で楽しまれて下さい」
「お風呂に入らないかい?」
 魔法使いも言ってきました。
「身体を温めて奇麗にして」
「そしてご夕食も楽しまれて下さい」
 ジュリアはこちらもお話に出してきました。
「これから」
「そうね、飛行船は明日の楽しみに取っておいて」
 ドロシーもにこりと笑って応えます。
「今はね」
「お風呂とお食事にです」
「あと寝ることもね」
「楽しまれて下さい」
 王宮でのそうしたことをというのです。
「是非」
「わかったわ、皆今からね」
 ドロシーは五人にもお顔を向けてお話しました。
「お風呂に入りましょう、そしてね」
「晩御飯ですね」
「そちらですね」
「今日はステーキですよ」
 ジュリアは晩御飯のメインディッシュもお話に出しました。
「凄く美味しいですから」
「ステーキですか」
「王宮のステーキ美味しいんですよね」
「それじゃあですね」
「お風呂に入ってそして」
「ステーキですね」
「何枚でもありますから」
 量も多いというのです。
「お好きなだけ召し上がって下さい」
「わかりました、じゃあ」
「まずはお風呂に入って」
「それからそのステーキを楽しませてもらいます」
「是非」
「そうされて下さいね」
 ジュリアは五人にも明るく言いました、そしてでした。
 男の子達は男の子達で、女の子達は女の子達でお風呂に入って奇麗な服に着替えました。とはいってもです。
 ジョージはお風呂から上がって奇麗な服に着替えた皆を見て笑って言いました。
「服の色は変わらないね」
「うん、皆ね」
 神宝がジョージのその言葉に頷いて答えます。
「僕は青でね」
「僕は赤だね」
 ジョージは自分の服の色を見て言いました。
「そして皆もね」
「色々な服があったけれど」
 カルロスは自分の黄色い服を見ながら笑ってお話します、五人共王宮で着るのに相応しい絹の立派な服です。恵理香とナターシャはドレスです。
「やっぱり僕は黄色だよ」
「そうだね、カルロスはね」
 ジョージも笑顔で頷きます。
「その色だね」
「そして恵理香はピンクね」
「ナターシャは黒で」
 ナターシャと恵理香はお互いでお話しています、それぞれのドレスを見て。
「いつもその色よね」
「皆そうよね」
「何か僕達五人ってね」
 ここでまた言うジョージでした。
「オズの国みたいに色が決まってるね」
「うん、けれどね」
「僕達三人はオズの国の色だけれど」
 神宝とカルロスがジョージに言います。
「赤、青、黄色でね」
「それぞれカドリング、マンチキン、ウィンキーの色だけれど」
「恵理香とナターシャはね」
「違う色だよね」
「黒とピンクはね」
 ジョージは女の子二人の色をあらためて見て言います。
「オズの国のそれぞれの色じゃないね」
「そうなのよね」
 ナターシャもジョージに応えながら自分の黒のドレスを見ます。とても奇麗な絹で作られた可愛らしいデザインのドレスです。
「私と恵理香は」
「ううん、私は桜や桃が好きだから」
 恵理香も自分のピンクの奇麗なデザインのドレスを見ています。
「いつもピンクだけれど」
「二人のそれぞれの色だね」
「別にそれでもいいのよ」
 ここでドロシーが五人に言うのでした。
「それぞれの色でもね」
「そういえばドロシーさんも」
「ええ、私もエメラルドの都の王女だけれど」
「緑の服ばかり着ていないですね」
「色々な服を着てるでしょ」
「はい」
「僕だってね」
 ドロシーの足元にいるトトも言ってきました。
「黒だね」
「あっ、確かに」
「ナターシャと同じ色だけれどね」
「誰も問題にしていないね」
「だって実際に問題じゃないから」
 エメラルドの都にいて黒でもというのです。
「オズの国にはそれぞれの色があってもね」
「その色じゃないといけないってこともないの」
「そうなんだよ」
 こうお話するのでした。
「オズの国はね」
「色は決まっていてもその色でないといけないということはない」
「そうなんだよ」
「成程ね」
「そうだよ、それぞれが好きな色の服を着ていいから」
「じゃあ僕達それぞれ好きな服でいいんだね」
 しみじみとして言うジョージでした。
「赤でも」
「そうだよ、その色を楽しんでいいから」
「じゃあそうさせてもらうね」
「そうしてね、それじゃあ御飯だよ」
 トトは嬉しそうに五人全員に言いました。
「皆でステーキを食べようね」
「うん、今からね」
「サラダもスープもあるからね」
「いいね、そういえばいい匂いがしてきたよ」
 ジョージはお鼻に入って来た匂いから述べました。
「これは玉葱の匂いかな」
「そうだね、玉葱だね」
 トトはもっとはっきりとわかります、流石は犬です。
「玉葱を使ってるね」
「どんなステーキになるのかな」
「それは食べてみてからのお楽しみにしましょう」
 ここで笑顔で言ったドロシーでした。
「皆でテーブルに来た時に」
「その時にですか」
「そう、食べましょう」
 是非にというのです。
「その時のお楽しみということで」
「そうですね、それじゃあ」
「ええ、今からね」
 こう笑顔でジョージに答えてでした、ジョージも皆も頷いてです。そのうえで皆で王宮の食堂に向かったのでした。
 そしてそこで、です。皆でまずはサラダにスープを食べました。どちらもエメラルドの都で採れたお野菜をたっぷりと入れた美味しいものでした。
 次には鯉をオリーブオイルとワインで煮たものです、勿論ワインのアルコールは熱されていて抜けています。
 その鯉を食べてです、モジャボロは唸って言いました。
「美味しいよね、鯉も」
「はい、ただ」
 ジョージはモジャボロに目を丸くさせてモジャボロに言いました。
「僕鯉はあまり」
「食べていないんだ」
「はい」
 そうだというのです。
「アメリカでは鯉はあまり」
「そうそう、食べないんだよね」
「そうですよね」
「そうした人が多いんだよね」
「ですから鯉が増えて困っています」
「あれっ、美味しいのに」
 神宝は実際にその鯉をフォークとナイフで美味そうに食べながらジョージに突っ込みを入れました。
「鯉って」
「うん、僕は食べるけれど」
「アメリカ人はなんだ」
「食べない人が多いんだ」
「そうなんだ」
「中国系や日系の人は違うみたいだけれど」
 それでもというのです。
「多くの人はね」
「ううん、アメリカ人って何でも食べると思ってたけれど」
「いや、それがね」
「食べないものもあるんだね」
「そうなんだ」
「僕達みたいに何でも食べると思ってたけれど」
 中国の人達の様にというのです。
「食べないものもあるんだね」
「実はね」
「それで鯉も食べないんだ」
「そうなんだよ」
 ジョージはまた答えました。
「けれど美味しいね」
「そうだよ、鯉はとても美味しいんだ」
「いや、こんな美味しいなんてね」
 驚きながら食べるジョージでした。
「凄いよ」
「そうね、確かに」 
 ナターシャもその鯉を食べつつ言いました。
「鯉は凄く美味しいお魚よ」
「川魚もいいんだね」
 ジョージはしみじみとしてもいました。
「いや、また食べたいよ」
「うん、川魚は美味しいよ」
 ここでカルロスがジョージに言いました。
「ブラジルじゃ結構食べるから」
「ああ、アマゾンで」
「うん、あそこで一杯漁れるからね」
「そういえばそうだったね」
「色々な種類のお魚もいてね」 
 そのアマゾン川ではというのです。
「食べることも多いよ」
「そうだったね」
「美味しいお魚も多いよ」
「ただ」 
 けれど、です。恵理香がここでジョージに言いました。
「川のお魚は注意しないといけないの」
「どうしてかね」
「特にお刺身で食べる場合だけれど」
「傷みやすいの?」
「それ以上に虫のことがね」
「そう、川魚は虫に注意しないと駄目だよ」
 魔法使いもこのことを言います、この人も勿論一緒にいます。食べる必要のないかかしと木樵は一緒にいて皆が食事を楽しむのを見て楽しんでいます。
「オズの国のものは大丈夫だけれどね」
「そんなに怖いんですか」
「鯉もだよ」
「生で食べる時は」
「熱を通さないとね」 
 今みたいにです。
「危ないんだ」
「そんなにですか」
「食事中にはあまり言えないけれど」 
 魔法使いはこう前置きもしました。
「身体の中に入ったら大変なことになるよ」
「そこまで怖いんですね」
「うん、だから気をつけるんだ」
「この鯉を食べる時もですね」
「君達の世界で食べる時はね」
「お刺身を食べる時は注意しないとね」
 また言った恵理香でした。
「鯉も他の川魚もね」
「そのこと覚えておくよ」
「絶対にね」
 恵理香の声の調子も強いです、そして。
 皆で鯉を食べてです、それからでした。
 いよいよメインのステーキです、そのステーキはといいますと。
 玉葱のソースをかけたステーキです、そのステーキについてステーキを持って来たジュリアが笑顔でお話しました。
「シャリアピンステーキです」
「玉葱でお肉を柔らかくしたステーキよね」
「はい、そうです」
 その通りとです、ジュリアはドロシーに答えました。
「そのステーキです」
「そうよね」
「美味しいです」
 味についてです、ジュリアは太鼓判を押しました。
「そしてどんどん焼いていますので」
「じゃあ僕もお腹一杯になるね」
 一番大きな、一メートルはある鯉をぺろりと平らげた腹ペコタイガーが言ってきました。臆病ライオンと一緒に床で食べています。
「何枚でも食べられて」
「ええ、貴方も満足出来るだけあるわ」
「それは有り難いよ、とにかく僕はいつもお腹が空いてるからね」
「その頭でもよ」
「満腹になれる」
「それだけのものがあるから」 
 だからというのです。
「どんどん食べてね」
「そうさせてもらうよ」
 こうしてです、皆でそのシャリアピンステーキを食べるのでした。
 ステーキを食べてです、ジョージは言いました。
「凄く柔らかいですね、しかも」
「美味しいわね」
「はい、玉葱のソースがまた」
 お肉にかけられているそれがというのです。
「絶品です」
「お肉と玉葱は合うのよ」
 このことをオズマも言うのでした。
「あと大蒜もね」
「そうですよね、確かに」
「だから今日はこのステーキなの」
「シャリアピンステーキですね」
「そう、では一枚食べたら」
「はい、それからも」
「どんどん食べてね」
「パンも美味しいわ」
 ドロシーはパンも食べて言うのでした。
「こちらもね」
「このパンも柔らかくて」
 ジョージもパンを食べてみました、エメラルドの都の緑の麦と緑の牛乳、緑の卵を使った奇麗な緑のパンです。
「美味しいです」
「オズの国のパンですね」
「このパンも」
「だから凄く美味しくて」
「幾らでも食べられそうです」
 ジョージの他の四人もそのパンを食べて言いました。
「ステーキにパンに」
「他のお料理も美味しくて」
「本当にお腹一杯になるまで食べたいです」
「むしろ食べられます」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
 また言って来たジュリアでした。
「シェフの方々も喜んでくれます」
「王宮のシェフの人って素晴らしい腕ですよね」
 ジョージはこのことも言いました。
「いつも物凄く美味しいものを作ってくれて」
「ええ、王宮のシェフはどの人も最高の腕を持っているの」
 オズマがジョージにこのことも答えました。
「凄くね」
「オズの国で一番のシェフですか」
「私はそう思うわ」
「王女はですか」
「その人それぞれで違うから」
 その人が思うオズの国で一番のシェフはというのです。
「だからね」
「私は王宮のシェフの人の他にもう一人素晴らしいシェフを知ってるわ」
 ドロシーが言ってきました。
「その人はね」
「エマおばさんですね」
「そう、あの人よ」
 ヘンリーおじさんと一緒にドロシーを育ててくれたこの人だというのです。
「あの人がなのよ」
「ドロシーさんにとってのですね」
「オズの国のもう一人の最高のシェフよ」
 こうまで言うのでした。
「あの人がね」
「そうなんですね」
「あの人がドロシーさんの最高のシェフですね」
「王宮のシェフの人と並んで」
「そうなの、またおばさんのところに行ってね」
 そしてというのです。
「おばさんのお料理食べたいわ」
「あの人は今もヘンリーさんと一緒に過ごしておられますね」
「ええ、農園を持ってね」
 そうだとです、ドロシーはジョージに答えました。
「楽しくね」
「そうですよね」
「私はお父さんとお母さんがいなくて」
 ドロシーはこのことは少し寂しそうにお話しました。
「おじさんとおばさんも子供がいないけれど」
「ドロシーさんが、ですね」
「おじさんとおばさんの子供でね」
「そしてヘンリーさんとエマさんがですね」
「私のお父さんとお母さんよ」
「まさにそうですよね」
「かけがえのないね、だからこうして一緒にオズの国にいられて」
 そうなったことがというのです。
「とても幸せよ」
「ドロシーさんにとっての最高の幸せですか」
「ええ、私達はずっと一緒よ」
 このオズの国においてというのです。
「これからはね」
「それじゃあまた何時か」
「おじさんとおばさんのお家に行ってね」
「楽しくですね」
「おばさんのお料理を食べながら楽しくお話したいわ」
「カンサスにおられた時みたいに」
 ここでこうも言ったジョージでした。
「あそこの大平原におられたんですね」
「ええ、ずっとね」
「そうですよね、カンサスですか」
「ジョージは知らないわよね」
「カンサスはあまり」
 実際にというのです。
「あの辺りは」
「そうよね、アメリカ人でも」
「カルフォルニアとカンサスは全然違ってますから」
「そんなに違うのかな」
 臆病ライオンはそのジョージに尋ねました。
「アメリカなのに」
「オズの国でも色々な場所があるよね」
「それでアメリカもなんだ」
「うん、カルフォルニアとカンサスではね」
「そうなんだね」
「それに時代も違うから」
 ドロシーも臆病ライオンにお話します。
「私がいた頃のアメリカと今のアメリカは」
「百年位離れてるね」
「だから全然違ってるの」
「じゃあ今のカンサスは」
「私がいた頃と全く違うわ」
 そうなっているというのです。
「何もかもがね」
「そういえばオズの国も変わったしね」
「そうでしょ、テレビや携帯電話が出て来てね」
「コンピューターもあってね」
「インターネットも出来るから」
 オズの国でもというのです。
「この国も凄く変わったし」
「アメリカも全然なんだね」
「変わってるわ」
「そもそもだね」
「うん、オズの国の人達もね」
 かかしと木樵の言葉にもオズの国の今がお話されましあt。
「昔は肌の白い人ばかりだったけれど」
「今は違うよ」
「黄色い肌、黒い肌、褐色の肌」
「目や髪の毛の色も黒い人が増えたよ」
「けれどその人達もね」
「オズの国で楽しく過ごしているからね」
 そうなっているのです、オズの人達自身も。
「肌や目の色が違っていても」
「皆オズの人だからね」
「そうだね、オズの国は皆永遠でも」
 それでもとです、ライオンも言います。
「変わっていくんだね、誰もが何もかもが」
「そうよ、それぞれ違っていてね」
 ドロシーは臆病ライオンにまた言いました。
「変わっていくものなのよ」
「そういうことだね、じゃあ」
「ええ、臆病ライオンもね」
「このステーキを食べるよ」 
 こう言ってでした、臆病ライオンもそのシャリアピンステーキを楽しみました。そしてステーキを皆たっぷりと食べてから。 
 最後はデザートでした、そのデザートは。
「あっ、これは」
「ええ、パイだけれど」
「五色のパイですね」
 見ればです、赤と青、黄色、それに黒とピンクの五色のパイです。
「これは凄いですね」
「貴方達の色のパイよ」
 オズマがジョージにお話します。
「これはね」
「僕達のですか」
「実は今エメラルドの都でそれぞれの色の苺を作っているの」
「僕達のそれぞれの色の」
「そう、赤と青、黄色はね」
 それぞれジョージ、神宝、カルロスの好きな色です。
「カドリング、マンチキン、ウィンキーから取り寄せて」
「あの、じゃあ」
「私達の色は」
 恵理香とナターシャがオズマに尋ねました。
「どうして作ったんですか?」
「ピンクと黒は」
「オズの国の色はその五色が多いけれどその五色だけではないから」
 だからと言うオズマでした。
「ピンクも黒もあるから」
「その色をですか」
「苺に入れることもですか」
「出来るから」
 だからというのです。
「その二色の苺も造ったの」
「それで私達の色もですか」
「あるんですね」
「それでね」
 そのパイにというのです。
「貴方達の色の苺を全部入れたの」
「だからこうした五色のですね」
「パイになったんですね」
「そしてその味はね」
 苺のそれはといいますと。
「オズの国だから」
「美味しいんですね」
「苺も」
「そしてパイも」
「そうなんですね」
「実は貴方達がいない時に一度食べたの」
 この五色の苺のパイをというのです。
「そうしたら美味しかったから」
「だから私達も」
「今から」
「食べてね」
 是非にというのです。
「皆で」
「はい、じゃあ」
「今から」
 五人はオズマに笑顔で応えてでした、そのうえで。
 その苺のパイを食べました、パイは五人がこれまで食べたどんなパイよりも美味しかったです。そのパイを食べて。
 そしてでした、魔法使いが五人に言いました。
「さて、後はね」
「はい、後はですね」
「ゆっくりと寝て」
「そして朝になれば」
「いよいよですよね」
「うん、飛行船を出してね」
 そしてというのです。
「それからだよ」
「その飛行船に乗って」
「そしてその飛行船に乗って」
「それからですね」
「お空に出るんですね」
「ポリクロームさんのところまで行くんですね」
「そうだよ、今日はそのことを楽しみにしてね」
 そのうえでというのです。
「寝よう、ゆっくりとね」
「何か楽しみで寝られないです」
 ジョージは笑ってこんなことを言いました。
「どうにも」
「ははは、皆よく寝られるよ」
「それはどうしてですか?」
「今日もたっぷり遊んでたっぷり食べたからだよ」
「だからですか」
「うん、よく寝られるよ」
 そうだというのです。
「充実していたからね」
「だからですか」
「うん、身体はほどよく疲れていてね」
「そしてですか」
「じっくりと寝られるよ」
「そうなんですね」
「では寝るんだよ」
 こう言ってでした、そのうえで。
 五人は魔法使いの言った通りでした、パジャマに着替えてベッドに入るとすぐに寝てしまいました。皆の夜はとても静かに過ぎていきました。
 ですがその前にです、ふとです。
 ジョージは一緒のお部屋で寝る前に皆にです、こんなことを訪ねていました。
「僕達は寝るけれど」
「うん、このオズの国にはね」
「寝なくていい人達もいるからね」
「かかしさんや木樵さんね」
「今は王宮にいないけれどチクタクさんやジャックさんもね」
「寝ないでいいってどんなのかな」
 ジョージはこのことについて少し思うのでした。
「一体」
「ううん、僕達は寝ることが凄く気持ちいいし楽しいけれど」
 神宝は少し考えてからジョージに答えました。
「そうする必要のない人はね」
「別にかな」
「最初からそう思わないんじゃないかな」
「寝るとどうとか」
「うん、別にね」
「そういえばかかしさんも木樵さんも」
「そうしたことに何も言わないよね」
 こうジョージにお話しました。
「食べることについても」
「そういえばそうだね」
「だからね、寝られる人は寝てね」
「寝ないでいい人はだね」
「寝ない、それでいいんじゃないかな」
「そういうことになるんだね」
「寝ないでいい人達も楽しく過ごしてるし」
 夜のかかしや木樵は楽しくお喋りをしてお昼の時と同じ様にすごしています、食べる必要もないから平和です。
「それでいいよ」
「じゃあそういうことで」
「うん、僕達は寝よう」
「そうしようか」
 ジョージは神宝に笑顔で応えてでした、そして。
 カルロスは少し目をこすって皆に言いました。
「もう眠いしじっくり寝られるよ」
「そうね、寝たらもう朝になりそうね」
 ナターシャも笑顔でカルロスに応えます。
「ぐっすりと寝られて」
「うん、じゃあ皆お休みなさい」 
 恵理香は皆に夜の挨拶をしました。
「私とナターシャは二人で寝てね」
「僕達は三人で寝るよ」
 ジョージはその恵理香に男の子三人でと答えました、そしてそれぞれのお部屋に入って朝までじっくりと寝ました。



空へは飛行船で行く事に。
美姫 「筋斗雲も面白そうだったけれどね」
まあ、ゆっくりと空の旅を楽しむのなら飛行船の方が良いだろうしな。
美姫 「そうね。事前に連絡も入れているし大丈夫だと思うけれど」
空で何かあれば地上のように身軽にとはいかないしな。
美姫 「今回の旅はどうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね」



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