『オズのカエルマン』




                       第七幕  ネイティブの人達

 一行はギリキンの国をさらに北に進んでいきます、その中で。
 神宝はジョージにふと尋ねました。
「ねえ、ネイティブの人達だけれど」
「アメリカのだね」
「ほら、西部劇でよく嘘吐かないって言ってるよね」
 神宝はジョージにこのことを言うのでした。
「そうだよね」
「うん、よく言ってるね」
「あのことは本当なのかな」
 こうジョージに尋ねたのです。
「アメリカ人だから知ってるかな、ジョージも」
「いや、実はね」
 ジョージは神宝の問いにです、少し申し訳なさそうに答えました。
「僕あまりネイティブの人に会ったことがないんだ」
「あれっ、アメリカ人なのに?」
「うん、確かにアメリカには色々な人がいてね」
「ネイティブの人は最初からいるよね」
「そうだよ、けれどね」 
 それでもだというのです。
「あの人達は少ないし居留区によくいるから」
「ネイティブの人達の」
「だからあまりね」
「会っていないんだ」
「そうなんだ」
「うん、アメリカには三億の人がいるけれど」
 ジョージはアメリカの人口のこともお話しました。
「それでもね」
「ネイティブの人達は少ないんだ」
「百万人位かな」
 三億人のうちのです。
「それ位しかいないから」
「それに居留区っていう場所にいるからだね」
「そう、会うこともないんだよ」
「ううん、アメリカ人でもなんだ」
「ネイティブの人に会う機会は少ないんだ」
「だからジョージもなんだ」
「会う機会もないから」
 それでというのです。
「その言葉もね」
「本当かどうかは」
「わからないんだ」
 アメリカ人のジョージにしてもというのです。
「実はね」
「そうなんだね」
「映画だとね」
 ジョージは神宝がお話に出したこちらのこともお話します。
「確かによくそう言うよね」
「そうだよね」
「嘘吐かないって」
 ジョージはその映画の中でネイティブの人がよくする右手の仕草をしてみせました、そのうえで言うのでした。
「言うよね」
「あれ格好いいよね」
「西部劇では敵役なんだけれど」
「大抵そうだね」
「敵でも格好いいよね」
「うん、そうだね」
 こうしたことをお話するのでした、その二人の会話を聞いてです。
 カエルマンがです、笑顔で言いました。
「オズの国のネイティブの人達はね」
「はい、あの人達は嘘吐かないですか」
「うん、オズの国の人達皆がそうだけれど」
「ネイティブの人達もですね」
「嘘を吐かないんだ」
「じゃあ映画と一緒で」
「あの人達はとても正直だよ」
 そうだというのです。
「だから安心していいよ」
「そうですか、正直ですか」
「とてもね」
「じゃあ映画と一緒ですね」
 こうも言った神宝でした。
「やっぱりネイティブの人は嘘を言わないんですね」
「絶対にね」
「わかりました、それであの人達はこれから行く場所にですね」
「いるよ、集落にね」
 ネイティブの集落にというのです。
「そこで楽しく過ごしているよ」
「西部劇そのままなんですね」
 神宝は集落と聞いてその目を細めさせました。
「嬉しいですね」
「神宝って西部劇好きなの」
「そうなんだ」
 神宝は恵梨香にも答えました。
「アメリカのだけでなくイタリアの方のもね」
「イタリア?」
「イタリアも西部劇作っていたんだ」
「そうだったの」
「そっちも結構面白いよ」
 イタリアの西部劇もというのです。
「楽しめてるよ」
「ううん、イタリアっていうと」 
 恵梨香はイタリアにある自分のイメージから言いました。
「ローマ帝国とかそういうのかしら」
「あとローマの休日ね」
 ナターシャが言ってきました。
「あの映画凄くよかったわね」
「ええ、あの映画は私も観たけれど」
 ここで、です。恵梨香もナターシャに頷きました。
「とても素敵な映画よね」
「あの映画のイメージもね」
「あるわよね、イタリアって」
「明るくて歴史があって」
「楽しい国よね」
「だから西部劇っていっても」
 ロシア人のナターシャも言うのでした。
「あまりね」
「イメージじゃないわよね」
「どうにもね」
 こう二人でお話するのでした。
「イタリアで西部劇の撮影なんて」
「出来るのかしら」
「いや、イタリアではしていなかったんだ」
 神宝が二人にこのことをお話しました。
「実はね」
「あれっ、そうなの」
「イタリアでは撮影していなかったの」
「スペインで撮影していたんだ」 
 この国でというのです。
「イタリアの西部劇、マカロニ=ウエスタンはね」
「スペインって」
「あの国でって」
「イタリアとスペインは伝統的に仲がいいし」
 神宝は二人の女の子にお話していきます。
「言葉も通じるし」
「そうなの!?」
 恵梨香は神宝の今の言葉にびっくりして問い返しました。
「イタリアとスペインって言葉通じるの」
「そうだよ」
 その恵梨香に横からカルロスが言ってきました。
「勿論ブラジルとスペインもね」
「そうなの」
「そう、スペインとブラジル以外の中南米の国はスペイン語でね」
「ブラジルはポルトガル語よね」
 恵梨香はこのことは知っていました。
「それでも通じるの」
「スペイン語とポルトガル語って似ているんだ」
「通じる位に?」
「日本で言うと方言位の差で」
 それで、というのです。
「中国での方言程変わらないよ」
「そうみたいだね」
 中国の話が出て神宝も言うのでした。
「スペイン語とポルトガル語の違いわ」
「アメリカの英語とイギリスの英語位かもね」
「だとしたら普通に通じるね」
 アメリカ人のジョージもカルロスに応えます。
「スペインとポルトガルだと」
「そうだよ、それでね」
「イタリア語とスペイン語もね」
 また言う神宝でした。
「似てるから」
「通じるのね」
「そうなんだ」 
 こうお話するのでした。
「それで西部劇の撮影も出来たんだ」
「そういうことなのね」
「それにスペインは西部劇の場所みたいなところも多くて」
「西部劇の撮影も出来ていて」
「だから出来たんだ」
「そうなのね」
「うん、マカロニ=ウエスタンも出来たんだ」
 神宝はこうお話しました。
「あの国でもね」
「イタリアの西部劇ね」
「それはそれで面白いよ」
「神宝って西部劇にも詳しいのね」
「面白いから観てるんだ」
 神宝の趣味の一つなのです、そして。
 そうしたこともお話しているとです、カエルマンが五人に言いました。
「まあネイティブの人達は敵役であることが多いけれど」
「映画ではですね」
「けれどオズの国ではね」
「オズの国の住人ですね」
「とても正直で心優しいね」
 そうした住人の人達だというのです。
「というか映画は映画だから」
「そういう風に作ってるんですよね」
「そうだよ、そろそろ着くから」
 そのネイティブの人達の集落にというのです。
「楽しみにしておいてね」
「ほら、草原に出たよ」
 ここで魔法使いも五人に言いました。
「草原に出たということはね」
「そろそろですね」
「集落ですね」
「そうだよ、集落と言ってもいいし村と言ってもいいし」
 そのどちらでもというのです。
「どちらにしても近いよ」
「そういえば」
 ギリキンのl国の紫の草原の中に入ってです、神宝は遠くにバッファローの群れを見ました、アメリカのプレーリーにいる彼等をです。
「バッファローもいますね」
「プレーリードッグもいるよ」
 ジョージは少し近くにこの動物を見付けました。
「ここはプレーリーだね」
「そうだね、ただ」
「ギリキンの国だからね」
 そのバッファローやプレーリードッグ達は紫色でした。二人はこのことに首を頷かせてこうも言うのでした。
「紫だね」
「その色はね」
「コヨーテもいるけれど」
 ケーキはこの動物を見付けていました。
「紫ね」
「やっぱりギリキンの国ですね」
「ここはそうですね」
「そうよ、草原の動物達もね」
「じゃあネイティブの人達の服も」 
 神宝はこのことを察しました。
「やっぱり」
「紫だよ」
 カエルマンが神宝の疑問に答えました。
「彼等の服もね」
「やっぱりそうなんですね」
「そう、だからね」
「そのことは頭に入れておいて」
「行こうね」
 こうしたお話をしつつでした、皆で魔法使いとカエルマンの案内の下進んでいきます、暫く歩いていると草原の向こうからです。
 紫の馬に乗った紫のネイティブの服にです、頭には一本の鳥の羽根やはり紫のそれがある人が来ました。
 お肌は褐色で日に焼けている感じです、顔立ちは何処か恵梨香や神宝達に似ています。その人が一行の前に来て言ってきました。
「魔法使いさんにカエルマンさんがおられるということは」
「うん、冒険に来たんだ」
 魔法使いがその人に答えました。
「ここまでね」
「そうですか、それでこの子達は」
 ネイティブの人は馬から降りてあらためて魔法使い達に挨拶をしつつ尋ねるのでした。
「一体」
「聞いてるかな、ドロシー達と同じでね」
「そういえば」
「うん、この子達がだよ」
「ドロシー王女達と同じく外の国から来たですね」
「オズの名誉市民の子達よ」
「そうですか、この子達が」
 ネイティブの人はあらためて五人を見つつ言いました。
「あの子達なのですか」
「話は聞いていたみたいだね」
「酋長から」
 こうもです、ネイティブの人は答えました。
「聞いていました」
「それは話が早いね、ではね」
「はい、今回ここに来られた理由は」
「それはだね」
 魔法使いはネイティブの人にその理由をお話しました、そのお話を聞いてです。ネイティブの人は頷く顔で言いました。
「成程、そのことなら」
「うん、この草原を越えてね」
「さらにですね」
「青龍のところに行くよ」
「道中お気をつけを。ただ」
「この草原に来たからにはね」
「はい、どうぞ」
 ネイティブの人は笑顔で一行に笑顔でこうも言いました。
「我等の村に」
「是非ね」
「酋長もお待ちです」
「酋長というと」
 どうかとです、神宝は目をきらきらとさせるのでした。
「完全に西部劇ですね」
「そうだね、まさにね」
 カエルマンがその神宝に応えます。
「映画のね」
「面白いですね」
「何でも面白いのがオズの国だよ」
「そうですね、じゃあこれから」
「うん、酋長にも会いに行こう」
「わかりました」
 こうしてでした、一行はそのネイティブの人に案内されてネイティブの村に入りました。村は紫の木の柵に覆われていてその中に三角の紫のテントが幾つもあります、そして。
 紫の服のネイティブの人が一杯楽しそうに遊んだり馬に乗ったりものを食べたりしています、その食べているものとは。
 お肉にです、それに。
「玉蜀黍もありますね」
「うん、ネイティブといえばね」
「やっぱり玉蜀黍ですよね」
 神宝はその紫のとても奇麗な玉蜀黍を見ながらカエルマンとお話しています、ネイティブの人に村の中を案内してもらいつつ。
「ネイティブ」
「うん、僕はあまり食べないけれどね」
「カエルマンさんはやっぱり」
「蛙だからね」
 その食べるものはというのです。
「お魚とか虫とかね」
「そうしたものですよね」
「そうだよ、けれど嫌いではないよ」
 そうした食べものもというのです。
「そちらもね」
「そうですよね」
「もうすぐですよ」
 ネイティブの人が皆に言ってきました。
「酋長のテントです」
「あのテントですね」
 ジョージは目の前にある大きな三角系の、紫の生地に網目の模様があるテントを指差しつつネイティブの人に応えました。
「あのテントの中に酋長さんがおられますね」
「そうだよ」
 その通りとです、ネイティブの人はジョージににこりと笑って答えました。
「あのテントの中におられるよ」
「そうですよね」
「ではね」
「はい、今から」
「あの中に入るよ」
「わかりました」
「酋長は丁渡お茶を飲んでいる時かな」
 こうもです、ネイティブの人は言いました。
「今は」
「そういえば丁渡」
 恵梨香はネイティブの人の言葉にお顔を少し上にやって言いました。
「三時位ですね」
「うん、だからね」
「酋長さんもですね」
「お茶にお菓子をね」
「楽しんでおられるんですね」
「僕達もね」
 ネイティブの人はこうも言うのでした。
「そろそろ」
「お茶にお菓子をですね」
「僕達は玉蜀黍以外にも食べているんだ」
「お菓子もですね」
「そう、これでも他の村の人達と交易もしていて」
 その交易で、というのです。
「玉蜀黍をあげてこちらも貰ってるんだ」
「お菓子を」
「お嬢ちゃんは日本人だね」
 ネイティブの人は恵梨香のお顔を見て言いました。
「そうだね」
「はい、そうですけれど」
「うん、日本のお菓子もあるし」
 今度はナターシャも見て言うのでした。
「ロシアのお菓子もね」
「我が国のお菓子もですか」 
 今度はナターシャが応えました。
「私の国のお菓子も」
「あるよ」
「ブラジルのお菓子もありますよね」
 カルロスは自分から尋ねました。
「そうですよね」
「あるよ、とにかくね」
「お菓子もですね」
「僕達は大好きで色々と食べているんだ」
「そうなんですね」
「では今からね」 
 ここで、でした。ネイティブの人がテントの入口を開けてです。皆はテントの中に入りました。するとそこにはネイティブの服を着て、です。
 頭には紫の鷲の羽根を数えきれないだけ一杯着けた帽子を被っているお年寄りがいました、丁渡ブリキのカップで何かを飲んでいるところでした。
 そのご老人は一行を見てです、まずは魔法使いとカエルマンを見て言いました。
「これはようこそ」
「酋長、久し振り」
「お元気そうだね」
「はっはっは、この通りじゃよ」
 酋長と呼ばれたご老人は気さくに笑って応えました。
「今もこうしてな」
「お茶を楽しんでるんだね」
「左様じゃ」
 酋長はカエルマンにも答えます。
「交易で貰った紅茶をな」
「それは何よりだね」
「お菓子はシュークリームじゃ」
 見れば酋長の前のお皿、胡座をかいて座っているその前に陶器のお皿があってです。その上に紫のシュークリームが幾つもあります。
「今日はこれがおやつじゃ」
「それは何よりだね」
「して今日は何用かのう」
 酋長はあらためてカエルマン達に尋ねました。そして恵梨香達も見るのでした。
「それにこの子達はあれじゃな」
「うん、オズの国にね」
「来た子達じゃな」
「そうだよ」
 こう酋長にお話するのでした。
「今回の冒険に同行してくれているんだ」
「ふむ、そして冒険の目的は」
「それはね」 
 このこともでした、カエルマンはお話しました。ここで皆酋長さんの前に座って酋長さんが勧めるお茶とお菓子をご馳走になりました、そして飲んで食べつつそのお話を聞いてです。
 酋長は考えるお顔になり言うのでした。
「青龍さんはあれじゃな」
「あれっていうと?」
「北におるのは本来は玄武さんじゃ」
「そうだね、それはね」
「玄武さんは今どうしておられる」
「玄武さんについては」
 カエルマンはここで答えました。
「特に何も」
「何処にも移っておられぬな」
「ないね」
「そうじゃな」
「それじゃあ玄武さんがここにいて」
「青龍さんがこちらに来ておるということは」
「玄武さんにかな」
「何かあるのではないか」
 こう言うのでした。
「わしはそう思うが」
「それで青龍さんが心配になって来て」
「それでじゃ」
「こっちに来ているんだね」
「わしはそう思うが」
「成程、そういえばその可能性があるね」
 カエルマンは酋長さんの仮説にです、腕を組んでそのうえで言うのでした。
「確かにね」
「そうじゃな、それで玄武さんじゃが」
 酋長さんはさらにお話するのでした。
「あの人は亀と蛇でじゃな」
「そう、一緒でね」
「亀の方が玄武さんで」
「蛇の方はね」
「お友達じゃな」
「そうだよ」
「どちらかに何かあったのではないのか」
 また言う酋長さんでした。
「そう思うがどうじゃ」
「その可能性はあるね」
「僕達はこれまで青龍に何かあると思っていたけれど」
 魔法使いも言うのでした。
「その可能性もあるね」
「そう思うがのう」
「じゃあ青龍さんがこっちに来た理由は」
 また言ったカエルマンでした。
「玄武さんを心配して」
「そうではないのかのう、ただな」
「ただ?」
「それがわかるのはな」
「玄武さん自身、そしてだね」
「青龍さん自身に聞かぬとな」
「わからないね」
 カエルマンは酋長さんの言葉に頷きました。
「そういえばそうだね」
「だからどちらにしてもな」
「行くべきだね」
 まずは、です。青龍のところにというのです。
 こうしたことをお話してでした、酋長さんは皆にこうも言いました。
「青龍さんのいる場所はわかっておるな」
「それはね」
 カエルマンは酋長さんのこの質問にも答えました。
「充分にね」
「ではよい」
「これから行くよ」
「道中気をつけてな」
「あっ、それでなんですけれど」
 ふとです、神宝はあることに気付きました。そして酋長さんに尋ねました。
「あの、気になったことですけれど」
「うむ、何じゃ」
「はい、ここには馬がいますね」
「皆乗っておるぞ」
「そうですね、ただオズの国の馬は」
 その馬のことをです、神宝は言うのでした。
「木挽の馬だけで」
「そうじゃ、それでわし等もじゃ」
 酋長さんは神宝のその問いに答えるのでした。
「最初は乗っていなかった」
「そうですよね」
「しかしオズの国はな」
 この国はといいますと。
「アメリカが反映される国じゃな」
「アメリカに馬がいれば」
「そういうことじゃ」
「そうでしたか」
「だから他の馬もな」
 その馬達もというのです。
「おるぞ」
「そうですよね」
「そう、だからのう」
「馬もいるということで」
「特に気にすることはない」
「わかりました」
 ここまで聞いてです、神宝も納得して頷くのでした。酋長さんはここまでお話してそうしてなのでした。ふとです。
 ここで、です。こんなことも言いました。
「さて、ではな」
「さて?」
「話に夢中で皆飲んでも食べてもおらんではないか」
 お茶もお菓子もというのです。
「折角のおやつの時間だというのに」
「あっ、そうだね」
 ここで、なのでした。魔法使いも酋長さんの言葉に応えました。
 そして、です。こうも言いました。
「それじゃあ」
「遠慮はいらん」
 明るく言う酋長さんでした。
「どんどん食べてくれ」
「それじゃあお言葉に甘えて」
「オズの国では甘いものは遠慮せぬ」
「皆で仲良くだね」
「食べてこそじゃ」
 だからだというのです。
「よいな」
「それではね」
「さてさて、幾らでもあるからな」
 お茶もお菓子もどちらもというのです。
「シュークリーム以外のお菓子もあるぞ」
「シュークリームが少し意外ですね」
 神宝はこのことを笑って言うのでした。
「ネイティブの人のお菓子としては」
「ははは、そうじゃろうな」
「交易で手に入れたからですね」
「そうじゃ、あるのもな」
 それもというのです。
「オズの国ということじゃ」
「そういうことですね」
「だから心配することはない」
「そうですか」
「さあさあ、食べてくれ」
 また言う酋長さんでした。
「皆で食べて仲良くな」
「楽しむんですね」
「わしが嫌いなことが一つある」
 酋長さんはくすりと笑ってこうも言いました。
「それは美味しいものを独り占めすることじゃ」
「そのことがですか」
「嫌いじゃ」
 そうだというのです。
「だからな」
「今はですね」
「皆で食べようぞ」
「じゃあ」 
 五人がまずシュークリームを手に取りました、そして。
 そのシュークリームを食べてです、こう言うのでした。
「あっ、確かに」
「このシュークリームもかなり」
「美味しいわ」
「そうじゃろう、わし等はこの草原で狩りをした畑を耕して暮らしておる」
 幸せにです。
「そして交易でな」
「こうしたものも手に入れて」
「過ごされているんですね」
「そうじゃ」
 まさにその通りだというのです。
「楽しいぞ」
「それは何よりですね」
「それでじゃが」 
 また言った酋長さんでした。
「あんた達随分とオズの国に慣れておるな」
「何度か来ていますので」
 神宝は酋長さんにシュークリームを食べつつ答えました。
「ですから」
「それでじゃな」
「ただ、ギリキンの国に来たことは」
「ないか」
「マンチキン、カドリング、ウィンキーはあります」
「しかしギリキンはじゃな」
「はじめてでして」
 それにというのです。
「この草原に来ることもはじめてです」
「そうか、ではまた機会があればな」
「その時はですか」
「ここに来てくれ」
 こう五人に言うのでした。
「ドロシー王女達には何度も来てもらっておるからな」
「僕達にもですね」
「うむ、来てもらいたい」
 是非にという口調でのお返事でした。
「頼むぞ」
「わかりました」
「さてさて、ではな」
 ここまでお話してまた言う酋長さんでした。
「お茶とシュークリームを楽しんでな」
「それからですね」
「あんた達の旅を続けて欲しい」
 これが子供達への言葉でした、そうしたことをお話してです。酋長さんは五人も暖かくもてなしたのでした。
 そしてです、皆がさらに北に発つ時に送って言うのでした。
「ではな」
「はい、それじゃあ」
「また機会があれば」
「会って楽しもうな」
 こう五人にも言うのでした。
「こうしてな」
「何か本当に」
 ここで神宝はしみじみとしてでした。
 酋長さんにです、こう言いました。
「西部劇みたいですね」
「映画のじゃな」
「はい、ネイティブの人ですね」
「ははは、そうであればいいのう」
「やっぱり嘘は」
「我等の部族で一番よくないことはじゃ」
 それこそがというのです。
「嘘じゃ」
「嘘を吐くそのことが」
「まずよくない」
「そう決まっているんですね」
「皆教えられていることじゃ」
 この部族の中で、というのです。ネイティブの。
「嘘から全ての悪いことがはじまるからな」
「ものを盗んだり人を傷つけたり」
「そうしたことはまずはじゃ」
「嘘からですか」
「嘘は言葉から出る、言葉は全てのはじまりじゃ」
 人のそれだというのです。
「それ故にな」
「まず嘘を言わないことですね」
「それが大事なのじゃよ」
「だからこの草原のネイティブの人達も」
「嘘を言わぬ」
 絶対にというのです。
「わしもな」
「わかりました、嘘がですね」
「全ての悪いことのはじまりじゃからな」
 だから最初からというのです。
「言わぬわ」
「じゃあ僕達も」
「気をつけてな」
「そうします」
「インディアン嘘吐かないじゃ」 
 あえてネイティブではなくこう言ったのでした。
「そういうことじゃ」
「それじゃあ」
「うむ、ではまたな」
 二人で笑顔でお話してでした、皆はネイティブの部族の集落を後にしてさらに北に進みます。青龍のところに。



ネイティブ部族の集落で少し休憩を。
美姫 「そこで青龍だけではなく、玄武の話も出てきたわね」
だな。青龍が動いた理由として玄武がという話だったな。
美姫 「そういう事もあるのね」
まあ、真相は直接聞くしかないけれど。
美姫 「益々、会うのが楽しみね」
一体、何があったのか。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



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