『オズのカエルマン』
第二幕 カエルマンとの再会
ティータイムを楽しんだ一行は馬車に乗ってすぐにイップの村の近くにある真実の池に向かいました、するとすぐにでした。
馬車はお池の傍に来ました、そのあまりもの速さにです。
カルロスは馬車から降りてです、驚いて言うのでした。
「風みたいっていうか」
「あっという間だったわね」
ナターシャがカルロスに応えます。
「都からここまで」
「さっき門を出たばかりなのに」
都のその門をです。
「あっという間だったね」
「着いたわね」
「いや、本当にね」
「風みたいだったっていうのね」
「だって僕達三時をかなり過ぎて出たんだよ」
ティータイムをゆっくりと楽しんだのです。
「それでまだ日がかなり高いから」
「ええ、これならね」
「お花を拾ってね」
ジグゾーパズルになっているそれをです。
「カエルマンさんと合流して都に戻っても」
「夜になってないよ」
「明るいうちに帰られるわね」
「うん、そうなるよ」
「晩御飯には間に合うわ」
ナターシャはこのことについてほっとしてお話しました。
「夜になるかって思ってたけれど」
「ええ、大丈夫よ」
ドロシーも馬から降りました、そのうえで皆にお話するのでした。
「木挽の馬は物凄く脚が速いから」
「だからですね」
「もうすぐにね」
それこそというのです。
「都に戻られるわ」
「大丈夫なんですね」
「そう、だからお花を拾ってね」
「夜までにですね」
「都に帰って仲良くね」
「皆で晩御飯を」
こうお話してでした、そのうえで。
一行はお池の近くにあるそのジグゾーパズルになっているお花を探しました、するとお花の周りに幾つもでした。
パズルの欠片が落ちています、その破片達を一つずつです。
拾いつつです、ジョージは欠片を拾いつつです。
ここで、です。こう言うのでした。
「カエルマンさんは何処かな」
「ここにおられるんだよね」
ジョージが神宝に応えます。
「そうだったね」
「うん、その筈だけれど」
「ええと、何処かな」
「若しかしたら」
ここで神宝はふと閃いて言うのでした。
「お池の中かな」
「あっ、カエルマンさんは蛙だから」
「そう、だからね」
それでというのです。
「お池の中にいるのかも」
「そうだね、じゃあ」
「ちょっと呼んでみよう」
神宝も欠片を拾っています、そしてです。
お池のほとりに来てです、こう呼びました。
「カエルマンさん、おられますか?」
「あっ、君達もう来たんだね」
すると早速返事が帰ってきました。
「いやいや、お水の中にいたのでね」
「僕達にはですか」
「気付かなかったよ」
こう言ってでした、そのカエルマンがです。
お池の中からひょっこりと黄色い蛙のお顔が出て来ました、シルクハットまで被っているそのお顔は紛れもなくカエルマンのものです。
「御免ね」
「いえいえ、それでですけれど」
「あのお花の欠片だね」
「僕達今それを集めてるんです」
「うん、話はもう聞いてるよ」
「連絡を受けられたんですね」
「電話でオズマ姫からね」
直接言われたというのです。
「それでね」
「カエルマンさんもお花のことご存知なんですね」
「そうだよ、それで僕はお池の中に入って」
そしてというのです。
「お池の中の欠片を拾っていたんだ」
「そうですか」
「かなりあったよ、けれどね」
「それでもですね」
「うん、全部拾ったよ」
そうしたというのです。
「だから安心してね」
「有り難うございます」
「ははは、お礼はいいよ」
カエルマンは神宝のお礼に笑って応えてでした、そのうえでお池から出て来ました。そしてその手にある袋をです。
神宝の横に来ていたドロシーに見せてです、笑顔で言いました。
「ここにね」
「お池の中にあった欠片がなのね」
「全部あるよ」
そうだというのです。
「ちゃんとね」
「それじゃあ後は」
「陸にある分だけだね」
「全部拾えればいいけれど」
ここでなのでした、ドロシーは少し考え込みました。そうしてから今も自分の足元にいるトトにこう言いました。
「トト、ちょっと欠片の匂いを嗅いでくれるかしら」
「それでだね」
「うん、そうしてね」
そのうえでというのです。
「残りが落ちているかね」
「僕がその匂いでだね」
「確かめてくれるかしら」
「うん、わかったよ」
トトはドロシーのお願いに笑顔で頷いて答えました。
「それじゃあ今からね」
「これの匂いを嗅いで」
ドロシーは自分が持っている欠片の一つを差し出してトトに嗅いでもらいました、それが終わってからでした。
トトはお花をくんくんとさせてです、そうしてドロシーに答えました。
「あとはね」
「ええ、幾つ残っているかしら」
「二つ残っているよ」
それだけだというのです。
「一つは恵梨香の足元、もう一つはカエルマンさんから少し離れた場所にね」
「あっ、あったわ」
「これだね」
トトの言葉を受けてです、二人共すぐに見付けました、そしてその二つの欠片を拾ってでした。
カエルマンはドロシーにです、笑顔で言いました。
「これでだね」
「ええ、全部揃ったわ」
ドロシーはカエルマンと恵梨香からその欠片を受け取って笑顔で答えました。
「これでね」
「そうだね」
「さて、後は」
「オズマ姫から聞いたよ」
「王宮に持って帰ってね」
「そこで組み立てるんだね」
カエルマンもこう言うのでした。
「そうだね」
「ええ、それでカエルマンさんもどうかしら」
「喜んで」
カエルマンはドロシーの申し出ににこりと笑って答えました。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあ早速だけれど」
「馬車に乗ってだね」
「エメラルドの都に戻りましょう」
その中の王宮にです。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
「ここまではすぐに終わったわね」
「何よりだね」
カエルマンもにこにことしてドロシーに応えます。
「欠片が全部集まって」
「すぐにね」
「いや、お池の中の欠片が全部見付かってよかったです」
神宝はカエルマンに言うのでした。
「本当に」
「いや、お水の中ならね」
「カエルマンさんならですか」
「僕は蛙だからね」
それ故にというのです。
「お水の中なら何でもわかるよ」
「何でもですか」
「そう、よく見えるしよく聞こえるし」
「匂いもですね」
「わかるよ」
それもというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「うん、全部わかるよ」
「やっぱり蛙ですね、僕達はとても」
「お水の中ではだね」
「歪んで見えて殆ど聞こえなくて匂いなんて」
それこそなのです、人間がお水の中にいると。
「わからないです」
「そうだね、けれど蛙はわかるんだ」
「お水の中で生きる生きものだから」
「それでだよ、ただお鼻はね」
このことについてはです、カエルマンはトトを見つつ言うのでした。
「僕もお水の中でも」
「僕にはだね」
「犬の諸君には負けるよ」
とても、というのです。
「君達にはね」
「僕ここにいてもお池の中の匂いが全部わかるよ」
「犬の鼻は特別だよ」
「カエルマンさんのそれと比べてもね」
「そうだよ、足元にも及ばないよ」
カエルマンのお鼻もとてもなのです、犬のトトのお鼻には敵わないのです。それだけ犬のお鼻は凄いのです。
「全く、犬のお鼻は凄いよ」
「このことは僕の自慢だよ」
トトも胸を張って言います。
「お鼻のことだけはね」
「いや、他にもじゃない」
「そうかな」
「君達は耳もいいし足も速いしね」
「だといいけれどね」
「君達は凄いよ。それじゃあ」
「ええ、馬車に戻りましょう」
ドロシーは早速カエルマンに応えました。
「それで都に戻りましょう」
「それではね、ただ」
「ただ?」
「一つお願いがあるけれど」
ここでカエルマンはドロシーに言うのでした。
「いいかな」
「何かしら」
「うん、僕も都に行かせてもらいけれど」
「それとなのね」
「うん、ケーキも一緒にね」
こうお願いするのでした。
「そうして欲しいけれど」
「わかったわ、あの人もなのね」
「最近オズの国に行きたいって言ってたから」
「それでよね」
「うん、あの娘もね」
一緒にというのです。
「それでいいかな」
「わかったわ」
笑顔で頷いたドロシーでした、そしてです。
ドロシーは皆にです、こう言いました。
「まずはね」
「はい、まずはですね」
「イップの村に行って」
「そこで、ですね」
「ケーキさんと合流して」
「あらためてですね」
「都に戻りましょう」
こう五人の子供達にお話するのでした。
「これからはね」
「はい、それじゃあ」
「まずはイップの村に行きましょう」
「そういうことでね、じゃあね」
こうしてでした、皆はです。
馬車に乗りましたが一旦イップの村に向かいました、そしてすぐに白い服とボンネットを着ていて洗い桶を持っているブロンドの可愛い顔立ちの娘さんの前に来てです。
ドロシーがです、笑顔で言いました。
「あの、カエルマンさんから聞いたけれど」
「あっ、ドロシー王女もですか」
「ええ、貴女が都に行きたいってね」
「そうなんです、最近行っていなかったので」
それでとです、ケーキも答えます。
「久し振りにって思っています」
「それならね」
「私も行っていいんですか」
「ええ、だから迎えに来たのよ」
「悪いですね、何か」
「いえ、私達もついでだから」
それで、と返すドロシーでした。
「これも縁よ」
「じゃあその縁で」
「貴女もね、あとね」
「あと?」
「別に畏まった言い方でなくてもいいから」
それはというのです。
「普通にお話しましょう」
「ですがドロシー王女は」
「王女っていうのね」
「はい、オズの国でも特別な方なので」
だからだというのです。
「私も」
「私特別じゃないわよ」
とてもと返すドロシーでした、にこりと笑って。
「そんなことはないわよ」
「だからなの」
「そう、そんなことはいいから」
畏まったお話の仕方はというのです。
「貴女がそうしたいのなら別だけれど。だって私の方が年下だし」
「それで」
「私はドロシー=ゲイルよ」
ドロシー王女であるよりもというのです。
「だからね」
「それじゃあ」
「ええ、私も普通にお話するし」
「それで私も」
「お願いね」
あくまでケーキがよければというのです。
「それなら」
「じゃあドロシーさん」
ケーキはドロシーの言葉を受けてでした、そうして。
あらためてです、こう言ったのでした。
「これからは」
「ええ、お友達としてね」
お話してお付き合いをしようというのです、こうしたことをお話してでした。
ドロシーとケーキは砕けたお話をすることにしました、その二人にです。
村人達は笑顔でこう言いました。
「じゃあ王女さん宜しくね」
「カエルマンさんとケーキをエメラルドの都に連れて行ってね」
「わし等はここで楽しく待ってるよ」
「土産話を期待してね」
「いやいや、今回はジグゾーパズルだけだから」
カエルマンがその皆に答えます。
「特にね」
「面白い話はないと」
「そう言うんだね」
「そのことは申し訳ない。けれど土産話はなくとも」
それでもというのです。
「土産ものはありますぞ」
「ではとびきりの土産ものを」
「待っていますぞ」
「ではいい旅を」
「それでは皆さん」
ここでカエルマンは気取った仕草でなのでした。
頭のシルクハットを取ってやっぱり気取った仕草でお辞儀をしました、それが終わってドロシー達に言いました。
「ではこれより」
「オズの国に戻りましょう」
「それでお花を組み立てて」
神宝も笑顔で言います。
「それからですね」
「とっておきのジグゾーパズルもして」
「そうしましょう」
神宝はカエルマンに笑顔で言うのでした。
「皆で」
「うむ、ではエメラルドの都に」
満面の笑顔で言ってでした、そうしてです。
ドロシー達は馬車に戻ってエメラルドの都に戻りました、本当に暗くなる前に都に戻ることが出来ました。
そして都に戻るとです、ドロシーは皆にお話しました。
「今日はね」
「はい、もうすぐ夜ですし」
「日帰りですぐでしたから」
「だからですね」
「もうこれで」
「そう、お風呂に入って晩御飯を食べて」
そしてというのです。
「休みましょう」
「そうですね、それじゃあ」
ここまでお話して頷いたのは恵梨香でした。
「まずはお風呂ですね」
「そう、皆で入りましょう」
「わかりました、それじゃあ」
恵梨香はドロシーの言葉に頷きました、そして実際にでした。
磨かれた緑の大理石の床と壁、エメラルドの浴槽のとても広いお風呂場に男の子は男の子で、女の子は女の子で入りました。
その湯舟の中で、です。恵梨香とナターシャは一緒に入っているドロシーに尋ねました。ケーキは湯舟から出て身体を洗っています。
「あの、カエルマンさんですけれど」
「お風呂は」
「あの人も好きよ」
ドロシーは二人にこう答えました。
「毎日入ってるわよ」
「ああ、やっぱり」
「蛙ですからね」
「お水好きなんですね」
「お風呂も」
「そうなの、あの人も凄く奇麗好きなの」
だからというのです。
「毎日入ってるわよ」
「そうですか」
「あの人もですか」
「お風呂好きで」
「毎日奇麗にされてるjんですね」
「蛙の身体は本来はぬめぬめしてるわね」
蛙の身体の特徴です。
「けれどね」
「それでもですね」
「あの人の場合は」
「お風呂に入って石鹸とかで洗っても大丈夫なの」
これがカエルマンのお身体なのです。
「むしろ清潔にしないとそのぬめりが悪くなるらしいのよ」
「お肌も奇麗にして」
「それこそですか」
「あの人のぬめりもよくなる」
「そういうことなんですね」
「そう、何でも汚くしてるとぬめりが臭くなるらしいのよ」
そうした意味で悪くなるというのです。
「だからあの人はお風呂好きなの」
「人間もお風呂に入っていないと臭くなりますからね」
「汚くなりますから」
「だからですね」
「あの人も毎日お風呂に入ってるんですね」
「そうなの、だから私達もね」
にこりとして笑って言うドロシーでした。
「お風呂に入って」
「そして奇麗にして」
「晩御飯をですね」
「そうしましょう、髪の毛も洗って」
ドロシーはこのことも忘れていませんでした、見ればドロシーの髪の毛はいつも通り奇麗な長い髪の毛です。
その髪の毛を自分の手に取ってまた言うのでした。
「さもないとね」
「はい、髪の毛は」
「奇麗にしないと」
「汚くなりますしね」
「一番念入りに洗わないと」
「そう、しっかりと洗って」
そうしてというのです。
「拭いてね」
「乾かして」
「整えましょう」
こうしたこともお話するのでした、そしてお風呂から出るとです。
カエルマンは男の子達とトランプをしていました、しているのはポーカーですが。
神宝はくすりと笑ってです、そのカエルマンに言うのでした。
「カエルマンさん、駄目ですよ」
「むう、私の目がだね」
「はい、動き過ぎますから」
きょろきょろといつも動いているその大きな目を見ての指摘です。
「わかりますよ」
「僕の動きがだね」
「やっぱりポーカーは表情です」
それが第一だというのです。
「相手にどれだけ読ませないかですから」
「僕はどうしてもね」
「目に出ています」
その考えがというのです。
「どんな状況は」
「それはよくないね」
「はい、ポーカーをするうえでは」
「困ったことだね」
「それだけ素直ってことでもありますけれど」
神宝はくすりと笑ってこうも言いました。
「僕も結構表情出ますけれど」
「うん、実際神宝もね」
「思ったこと顔に出る方だよ」
ジョージとカルロスはそれぞれ五枚のカードを手に神宝に言います。
「すぐにわかるよ、何を考えてるか」
「どうしたいかね」
「だからポーカーの時も」
「結構いい状況かどうかわかるよ」
「まあそれは僕達もだと思うけれど」
「実際のところね」
自分達のこともここで言うのでした。
「結構ナターシャが表情出ないけれどね」
「いつもクールだしね」
「うん、ナターシャはそうだよね」
神宝も二人に答えます。
「いつも表情がね」
「出ないよね」
「あれこそ本当のポーカーフェイスだよ」
「表情が出る時もあるけれど」
「勝負の時は特に出ないんだよね」
こうしたことをお話していました、そして。
カエルマンが最初にでした、お風呂から出て来てそれぞれ王宮にある奇麗なドレスを着ている女の子に気付きました。
そしてです、カードを持っていない左手で手を振って言いました。
「やあ、お風呂はどうだったかな」
「ええ、ゆっくりとね」
ドロシーはにこりと笑ってカエルマンに答えました。
「温まって奇麗にしてきたわ」
「それは何よりだね」
「カエルマンさん達はお風呂早かったのね」
「男の子は早いよ」
お風呂はというのです。
「女の子よりもね」
「そうね、髪の毛を洗う手間が少ないし」
「それにね」
それに加えてというのです。
「身体も温まりやすいから」
「そうなのよね、女の子はね」
どうしてもと言うドロシーでした。
「冷え性から」
「そうだね」
「そのことがあるから」
「女の子の方がお風呂は長いね」
「それでなのね」
「うん、僕達は先にあがってね」
そうしてというのです。
「ポーカーを楽しんでいたんだ」
「そうなのね」
「それで私のこと言ってたけれど」
ナターシャはドロシーとカエルマンのお話が一段落したところで、でした。男の子達に尋ねました。
「表情がないとな」
「御免、気を悪くしたかな」
神宝がナターシャに謝ってから応えました。
「悪気はないけれど」
「いいわ、それがわかってるから」
それならと返すナターシャでした。
「それに私の無表情はね」
「それは?」
「寒いからだし」
「寒いからって?」
「ロシアのことよ」
ナターシャの祖国であるこの国だからというのです。
「ロシアは寒いから」
「寒いから?」
「表情がないことと関係あるの?」
「そうなの?」
神宝だけでなくジョージとカルロスもナターシャの今の言葉には首を傾げさせます。
「何で?」
「ええと、何でかな」
「気候と表情の関係って」
「寒いから顔が凍るの」
ナターシャはいぶかしむ三人に答えました。
「あまり顔を動かせないから」
「えっ、そうなの」
「それで表情がなくなって」
「だから無表情になるんだ」
「そうなの、本当にロシアは寒いから」
今は微笑んでお話するナターシャでした。
「表情もなくなるの」
「ううん、それは凄いね」
神宝もびっくりすることでした。
「表情まで凍るなんて」
「そうだね、ニューヨークとかも寒いけれど」
ジョージも言います。
「そこまではね」
「うん、北京とかでもそこまでいかないよ)
神宝はジョージにもこう言うのでした。
「表情がなくなるとか」
「そうだよね」
「日本でもね」
恵梨香もナターシャにこう言います。
「北海道でもそこまで寒くないから」
「ロシアの寒さはまた特別だから」
「それでなのね」
「ロシア人は無表情な人が多いの」
「そうなのね」
「成程ね、いい勉強になったよ」
神宝っはしみじみとした口調で述べました。
「寒過ぎると表情がなくなるんだ」
「そうなの」
「だからナターシャもなんだ」
「皆よりも無表情なのよ」
「そういうことだね」
「そう、けれどそれでポーカーが強いのなら」
微笑んでこうも言うナラーシャでした。
「いいわね」
「うん、ちょっとナターシャとのポーカーはね」
「あまりしたくないね」
「勝てないから」
男の子三人で言うのでした、そしてここでポーカーが終わりました。一番は神宝、二番がジョージ、続いてカルロスで。
カエルマンはやれやれといったお顔で、です。こう言いました。
「僕が最下位だね」
「ううん、やっぱり目で」
「言ってしまうからだね」
「そうですね」
神宝がカエルマンに答えます。
「やっぱり」
「そうだね、今度からサングラスをしようかな」
「カエルマンさんのサングラスですか」
「うん、しようかな」
「それ何か大変そうですね」
神宝はカエルマンがサングラスをしている姿を想像しました、ですがいざ想像してみようとしてもなのでした。
どうしても想像出来ないで、です。こう言いました。
「どんなお姿か」
「片目ずつ片眼鏡で、かな」
「そうなります?」
「うん、そうなるかな」
「やっぱり大変ですね」
「そうだね、けれどね」
カエルマン自身も言うのでした。
「実際そこまですると大変だよ」
「そうですね、どうしても」
「だからどうなのかな」
「難しいところですね」
「僕の悪い癖というか」
むしろとも言うカエルマンでした。
「蛙ならね」
「どうしようもないことですね」
「目が大きくて動くことはね」
人間のそれ以上にです。
「仕方ないからね」
「じゃあポーカーは」
「そうだね、好きなんだよ」
ポーカーをすること自体はなのです。
「じゃあ負けてもいいかな」
「それでもポーカー自体がお好きなので」
「いいかな」
「そうされるんですね」
「下手とかはいいかなってね」
考えつつ言うカエルマンでした。
「そうも考えたけれどどうかな」
「そうですね、そう言われますと」
どうかと答える神宝でした。
「何をするかを考えますと」
「まずはそれが好きかどうか」
「はい、一番大事なのはそのことですから」
「上手下手よりもね」
「楽しんでいるかどうかですから」
「僕雨はポーカーを楽しんでるよ」
「それならですね」
またカエルマンに答えました。
「いいということで」
「そうなるね、じゃあ」
「はい、それなら」
「これからもね」
ポーカーをすると言ったカエルマンでした、そうしたこともお話してです。皆は夕食の場に向かいました。するとそこにはです。
かかしと木樵、それにジャック達もいます。神宝はその彼等を見て言いました。
「皆さんもですか」
「そう、オズマ姫に呼ばれてね」
かかしが神宝に気さくに答えます。
「それでなんだ」
「都に来られたんですか」
「そうだよ、実は私達もね」
かかしは神宝に気さくにお話します。
「最近パズルに凝っていてね」
「それで、ですか」
「そう、オズマ姫のお誘いを受けて」
「飛んで来たんだ」
木樵も楽しそうにお話しました。
「ウィンキーの国からね」
「飛んで、ですか」
「まあ飛んで来たというのは例えだけれどね」
「それでも急いで、ですか」
「来たんだよ」
そうだとです、木樵も神宝達にお話します。
「いや、それじゃあね」
「はい、皆で楽しみましょう」
「そうしよう、皆で知恵を絞ってね」
「僕はあまり頭が回らないけれど」
ジャックも言うのでした。
「パズルは好きだよ」
「いえ、ジャックさんは」
「そうだよね」
ジョージが神宝に続きます。
「結構ね」
「頭いいですよ」
「よく閃いて」
「僕達を助けてくれてるじゃないですか」
「だといいんだけれどね」
ジャックは二人の返答に感謝しつつ答えました。
「僕にしても」
「ええ、ジャックはね」
ジャックを作ったオズマも夕食の場にいます、そうしてそのジャックに対してにこりと笑ってこう言うのでした。
「頭のカボチャがいいとね」
「その時はなんだ」
「凄く閃くわ」
彼の場合はそうだというのです。
「かかしさんと同じ位ね」
「そうなんだね」
「ええ、だから今回はとびきりのいいカボチャにしたから」
それで、というのです。
「大丈夫よ」
「閃きがあるんだね」
「今の貴方にはね」
「じゃあ僕も頑張るね」
「他の皆も呼んだから」
オズマはここで今この場にいる人達全員に言いました。
「ムシノスケ教授にもね」
「オズの国の知恵者を全部ですね」
「そう、招待状を送ったの」
オズマは恵梨香ににこりと笑って答えました。
「勿論魔法使いもね」
「ここにもういるよ」
見れば場には魔法使いもいます、子供達ににこりと笑って言うのでした。
「僕はね」
「魔法使いさんもおられたら」
「力強いかな」
「はい、とても」
恵梨香は魔法使いに笑顔で答えました。
「何かどんなパズルでも解けそうです」
「まずはお花のそれを組み立てよう」
カエルマンが言ってきました。
「それからね」
「ジグゾーパズルも」
「それを楽しもう」
「それがいいですね」
恵梨香もカエルマンのその言葉に頷きます。
「それじゃあ」
「それがいいわね、じゃあこれからは」
オズマはカエルマン達の言葉に頷いてでした、あらためて皆に言いました。
「食べましょう」
「夕食をね」
ドロシーがオズマに応えました、そうしてでした。
皆で晩御飯を食べます、今日の晩御飯たといいますと。
「まずは海藻サラダ」
「そしてボルシチ」
「それからフィッシュバーガー」
「シェラスコに」
「炒飯ですか」
五人は一度に持って来られたメニューを見て言いました。
「何ていいますか」
「今日はばらばらですか?」
「そんな気がしますけれど」
「フルコースじゃなくて」
「それぞれ違うお料理ばかりな」
「いえ、貴方達五人のお国のね」
オズマは五人ににこりと笑って答えます。
「お料理なのよ、それでねケーキの好きな」
「私もですか」
「クッキーもあるから」
「それがデザートですか」
「そうなの」
こうにこりと笑って言うのでした。
「それとパイよ」
「何のパイですか?」
「すぐりのパイよ」
神宝の問いにすぐに答えました。
「それも用意してあるから」
「だからですね」
「どちらも楽しんでね」
そのデザートもというのです。
「飲みものはクリームをたっぷりと入れた紅茶よ」
「それもいいですね」
「ええ、それもカドリングの紅茶よ」
全てが赤いその国のというのです。
「それも楽しみにしていてね」
「カドリングですか、そういえば」
カドリングと聞いてです、神宝はあの人のことを思い出してその人のこともオズマに対して尋ねたのでした。
「あの、グリンダさんは」
「ええ、あの人もね」
「呼ばれたんですね」
「声をかけたらね」
他の人達と同じくです。
「大丈夫っていうから」
「そうですか、あの人もですか」
「来てくれるわ」
「それはさらに心強いですね」
「オズの名士がかなり集まったわ」
オズマの頼りにしている友人達がです。
「だからね」
「ジグゾーパズルもですね」
「相当なものでもね」
「大丈夫ですね」
「そう、いけるわ」
そうだというのです。
「楽しめるわ」
「わかりました、それじゃあ」
「皆でじっくりと楽しみましょう」
オズマは皆ににこりと笑って言うのでした、そしてです。
その皆で晩御飯を食べるのでした、食べない人達も食べる人達が楽しんでいるのを見て楽しんでいます。
そうしてです、その中で。
カルロスはどんどん運ばれて来るシェラスコを食べつつ言いました。
「やっぱりお肉はね」
「こうしてだね」
「はい、たっぷりとあって」
そしてとカエルマンに言うのでした。
「どんどん食べられるのが」
「いいんだね」
「それが最高ですよね」
満面の笑顔での言葉です。
「ただ、お肉は」
「うん、ただそれがあるだけではね」
カエルマンもそのシェラスコを食べています、よく焼けたお肉に濃い玉葱のソースをかけたものを楽しんでいます。
「駄目だよね」
「焼いたり煮たりしただけでは」
「そう、一つのものがね」
「必要ですね」
「香辛料がね」
これがどうしてもというのです。
「お肉には必要だよね」
「欠かせないですね」
「調味料自体がそうだけれど」
料理全体にです。
「肉料理にはね」
「香辛料がないと駄目ですね」
「うん、このシェラスコもね」
この肉料理にもなのです。
「胡椒とかは必要だね」
「そうですよね」
「そういえばあれだよね」
神宝もそのシェラスコを食べつつ言います、皆それぞれのお料理を楽しんでいます。
「昔欧州では香辛料がなくて」
「そうらしいね」
カルロスは神宝にも応えます。
「どうやら」
「そう、それでね」
「海に出てね」
「インドまで買いに行ったんだよね」
「それが大航海時代だね」
「そうだよね」
「そこからなんだよね」
ジョージも言うのでした。
「そこからコロンブスがアメリカ大陸を発見したんだよ」
「そう、そしてジョージもドロシーもね」
「アメリカにいるんだね」
「そうなったんだよ」
「ううん、香辛料からはじまるなんて」
それこそと言うジョージでした。
「面白いね」
「そうだね、けれど本当にね」
「香辛料を使わない肉料理は」
「かなりね」
それこそというのです。
「味が落ちると思うよ」
「そうだろうね」
「お刺身とかにしたら」
恵梨香もシェラスコを食べつつ言いました。
「山葵とか使ったら駄目なの?あとお醤油」
「そういうのもないから」
だからとです、神宝は恵梨香にも言いました。
「欧州には」
「お醤油がないことは知ってるけれど」
「山葵もないから」
それもというのです。
「欧州には」
「ううん、じゃあ生姜とかも」
「本当に何もなかったんだ」
欧州はというのです。
「香辛料は。あったのはお塩位かな」
「それだとね」
恵梨香も神宝のお話を聞いてわかりました。
「どうしようもないわね」
「だからどうしても胡椒が欲しくてね」
「欧州の人達はお肉食べるから」
「海に出たんだよ」
「そういうことね」
「オズの国みたいにね」
それこそというのです。
「何でもあるかっていうと違うから」
「そういうことね」
「それが歴史を大きく動かしたからね」
「香辛料も凄いのね」
「かなりね」
「だからこれだけ美味しいのね」
ナターシャもそのシャラスコを食べています。
「香辛料を使っているから」
「それもオズの国の香辛料は」
それこそと言うドロシーでした。
「外の国のものとはね」
「また違いますね」
「そう、格別に美味しいわ」
そうだというのです。
「お肉もそうだけれどね」
「それでここまでの味なんですね」
「そうなのよ」
「調味料もいいですし」
「ナターシャも笑顔になるわね」
「はい」
微笑んで答えたナターシャでした、実際に。
「そうなっていますよね、私」
「いい笑顔よ」
ドロシーもこう答えます。
「それだけ美味しくて楽しんでるってことね」
「そうなりますね」
「ロシアの寒さもね」
「美味しいものの前には」
「溶けるのね」
こう言うのでした。
「やっぱり」
「そうですね、幾ら寒くても」
「美味しいものには負けるわ」
「そう、美味しいものを食べることは幸せで」
ここでカエルマンが言うことはといいますと。
「その幸せはどんな寒さもね」
「溶かすんですね」
「そういうものだよ」
こうナターシャにお話するのでした。
「だからね」
「はい、それじゃあ」
「心ゆくまで楽しんで笑顔になってね」
「そうさせてもらいます」
「暖かい幸せこそがこの世の一番の宝」
カエルマンはにこにことしてお話するのでした。
「僕も村から旅をしていってわかったよ」
「そうですね、ものを知ることが一番じゃなくて」
ケーキもカエルマンに応えます。
「幸せこそがですね」
「一番の宝だよ」
カエルマンは満面の笑顔で言うのでした、そうして今はお料理を楽しむのでした。
今回は馬車であっという間に目的地に。
美姫 「本当にすぐに着いたわね」
だな。帰りに新たな客人を迎えに行って、そのまま帰宅できるぐらいだし。
美姫 「とりあえず、目当ての花のパズルは手に入れた事だし」
それに取り掛かるのは次回かな。
美姫 「どうなるのか次回も待っていますね」
待っています。