『オズのベッツイ』
第八幕 真実の池に
ベッツイ達はアンと合流してそのうえで真実の池に向かうことになりました、そしてクマセンターを出てからです。
ベッツイはアンにです、こう尋ねました。真実の池までの道は黄色い煉瓦の道です。
「貴女はこれまで何を食べてきたのかしら」
「ウーガブーの国を出てからね」
「やっぱりお弁当の木から?」
「それと果物をね」
木に実っているそうしたものをというのです。
「食べていたわ」
「そうしていたのね」
「そう、だからね」
「食べることには困っていなかったのね」
「お風呂にも入っていたわ」
こちらも大丈夫だったとです、アンはベッツイに答えました。
「そちらもね」
「川で」
「そう、シャンプーや石鹸の草を取ってね」
「毎日入っていたのね」
「そうしていたわ」
「わかったわ、旅の間は困っていなかったのね」
「全くね」
少なくとも食事やお風呂には、というのです。
「寝る時は折り畳み式の寝袋を持ってるし」
「拡げたら大きくなる」
「それに入って寝ていたから」
「そちらも大丈夫だったのね」
「そう、気楽な旅だったわ」
「それまで危険がなかったことはよかったわね」
ベッツイはアンのこれまでの旅のことを聞いてまずはほっとしました、ですがそれでもこう注意するのでした。
「けれどそれはね」
「運がよかっただけっていうのね」
「そうよ、食事やお風呂や寝ることだけじゃないでしょ」
旅は、というのです。
「猛獣がいたり崖や変わったところがあったり」
「メリーゴーランドマウンテンとか」
「そう、道に迷うこともあるわ」
こちらの危険もあるというのです。
「本当に危険で一杯だから」
「一人旅は危険なのね」
「何度も言うけれどね」
「地図を持っていても」
「そもそもアンは確かにオズの国を征服しようとしたわ」
そう決意してウーガブーの国を出たのです、そうしてベッツイ達とも知り合った実に実りの多い進軍でした。
「けれどあまりウーガブーの国から出ていないでしょ」
「何度か出たことはあるわ」
「ウィンキーの国の地理に詳しいの?」
「地図は持っているわ」
「地図は持っていても実際に歩いたことはあまりないわよね」
「そのことはね」
そうだとです、アンも認めるしかありませんでした。
「実際に」
「それで一人で旅に出るなんて」
「無謀だよ」
ベッツイの横にいるハンクもアンに言いました。
「やっぱり」
「そうなるのね」
「そう、だからね」
それで、とです。ハンクはアンにさらに言いました。
「王女さんそうしたことは本当に気をつけて」
「本当に道に迷ったら大変よ」
ベッツイはアンにさらに注意するのでした。
「オズの国のことは毎日オズマとグリンダが鏡や本で何があったかチェックしていて貴女が道に迷っても見付けることが出来るけれど」
「それで心配する人がいるから」
「人を心配させたら駄目なことはね」
「私もわかっているつもりだったけれど」
「旅で何かあれば同じよ」
「ドロシーだってね」
ハンクはオズの国きっての旅行家の名前も出しました。
「一人旅はしないよ」
「そういえばあの子はいつも誰かと一緒に旅をしているわね」
「トトかビーナは絶対に一緒にいるよ」
特にトトはです、ドロシーとはカンサスからの友達だからよく彼女と一緒にいるのです。
「モジャボロさん達が一緒になることも多いし」
「一人旅はしないのね」
「危ないことがわかっているからね」
「それで他の人を心配させない為にも」
「一人旅はしないんだよ」
それがドロシーなのです、一人旅をして危険な目に遭ったり道に迷ってオズマ達を心配させないようにしているのです。
「実際あの人の旅はよく思わないことが起こったから」
「アンは本当に運がよかったのよ」
ベッツイは眉を曇らせてアンに言葉を続けます。
「オズの国は命の危険がなくても」
「何かがいつも起こる国よね」
「そう、あちこちにあらゆるものがある国よ」
だからこそ不思議の国なのです、オズの国はこの世界のどの国よりも不思議なものごとに満ちているのです。
「それで今まで何もなかったことは」
「本当に運がよかったのね」
「道にも迷わなかったし」
例え地図があってもです、ウーガブーの国からあまり出たことのないアンは一人でも道に迷わなかったことはです。
「それでクマセンターまで行けたから」
「このまま真実の池に一人のまま無事で行けてたら」
「本当に奇跡だったわ」
その時はというのです。
「まさにね」
「ううん、それじゃあ」
「ここで私達に出会えたことは神様のご加護よ」
まさに、という口調での言葉でした、ベッツイの今の言葉は。
「だからこのご加護を大事にしてね」
「一緒に旅をして」
「これからもね」
「一人旅を避けて」
「誰かと一緒に行って」
「他のことでも他の人を心配させない」
「そうしてね」
くれぐれもという口調で、です。ベッツイはアンに言うのでした。そうしたお話をしてそのうえでなのでした。
一行は道を進んでいきました、そして日が暮れたところでベッツイは皆に言いました。
「今日はここでね」
「はい、お休みですね」
「晩御飯も食べて」
「近くに湖があるから」
それもチェックしてです、ベッツイは場所を選んだのです。
「丁渡いいわ」
「あそこで身体も洗って」
「奇麗にもして」
「寝ましょう」
晩御飯の後はそうしようというのです、こうお話してです。
ベッツイは皆を道の横に案内しました、そしてそこでテントとテーブル掛けを出してあらためて皆に言いました。
「今晩は何を食べようかしら」
「そうですね、今夜はアン王女も入られましたし」
ナターシャはベッツイにこう答えました。
「ですから」
「アン王女のリクエストに応えるのね」
「そうしたらどうでしょうか」
「そうね。それがいいわね」
ベッツイはナターシャのその提案に頷きました、そして。
そのうえで、です。そのアンに顔を向けて尋ねました。
「それじゃあね」
「私のリクエストに応えてくれるのね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
笑顔でアンに言うのでした。
「今夜はね」
「わかったわ、それじゃあね」
ベッツイのその言葉を受けてでした、アンは暫く考えてです。それからベッツイにこう答えました。
「サラダは海鮮サラダがいいわね」
「レタスと若芽の」
「そこに海老とトマト、セロリにスライスしたキャロットが入ったね」
「まずはそれね」
「ドレッシングはフレンチの白で」
ドレッシングのことも忘れませんでした。
「それとスープはコンソメ。玉葱と蕪、ベーコンのね」
「そのスープね」
「それと鮭のカルパッチョに」
お魚はこのお料理でした。
「メインディッシュはステーキがいいわ」
「何のステーキかしら」
「牛肉をレアで」
ステーキはこちらでした。
「デミグラスソースでね」
「パン?御飯?」
「パンにしてくれるかしら。スライスした食パンで付けるのは林檎のジャムよ」
「黄金の?」
「うふふ、それはウーガブーの国に戻ったらよ」
アンはベッツイのジョークに笑ってこう返しました。
「その時によ」
「そうよね、それはね」
「ええ、普通の林檎のジャムよ」
「そちらね」
「デザートはチェリーのタルト」
デザートのことを言うことも忘れていません。
「飲みものはミルク。これでどうかしら」
「わかったわ、じゃあそれをね」
「全部出してくれるのね」
「このテーブル掛けに出せないものはないわ」
皆が囲む形で出して拡げているそれにはというのです。
「だからね」
「今私が言ったものも全部」
「人数分出せるわ、おかわりもね」
「本当に万全ね」
「魔法の力よ」
テーブル掛けにこめられているそれのというのです。
「だからなのよ」
「素晴らしい魔法ね」
「魔法も科学も人の役に立つものでないとね」
「駄目だからね」
「そう、だからね」
それでと言ってです、そして。
ベッツイはアンが食べたいとリクエストしたお料理を全部それも人数分出しました、そうして皆で食べる前の言葉を言ってです。
そのうえで食べはじめました、アンはそのお料理まずはサラダを食べてからそのうえでベッツイに言いました。
「とても美味しいわ」
「気に入ってくれたのね」
「ええ、王宮のシェフのお料理と同じ位ね」
「美味しいのね」
「ウーガブーの国は小さいけれど」
それでもというのです。
「それぞれの仕事は皆超一流でね」
「王宮のシェフの人も」
「何でも凄く美味しいものを作ってくれるのよ」
「スープもステーキも?」
「何でもね」
本当に美味しく作ってくれるというのです。
「そのシェフのお料理と比べても」
「このテーブル掛けのお料理は美味しいのね」
「ええ、これなら幾らでも食べられるわ」
「それは何よりよ」
「あの、それですと」
神宝はウーガブーの王宮のシェフのお話を聞いてです、お話してくれたアンにこう尋ねたのでした。
「中華料理は」
「あっ、そちらのお料理はね」
アンは神宝の言葉に残念そうなお顔で答えました。
「作られないの」
「そうなんですか」
「ハンバーガーやフライトチキンはどうですか?」
ジョージはアメリカのお料理はどうかと尋ねました。
「そちらか」
「今のアメリカ料理もね」
「専門外ですか」
「うちのシェフはフレンチなの」
そちらのお料理の専門だというのです。
「それとイタリアなの」
「じゃあパスタもですね」
カルロスはアンのその返答を聞いて尋ねました。
「王女はお好きですね」
「好きよ、うちのシェフはパスタも得意だから」
「それは何よりですね」
「私はフランス料理とイタリア料理をよく食べてるの、というか」
こうも言うアンでした。
「うちのシェフはその二つが専門だから」
「その二つのお料理以外はですか」
「食べないの。あとドイツ料理も作ってくれるけれど」
「三国ですね」
「ドイツ料理は専門じゃないの」
そのシェフの人はというのです。
「そちらはね」
「欧州系ばかりですね」
「そう、だから中華や今のアメリカ料理はね」
そうしたお料理はとです、アンは恵理香達にお話します。
「私は殆ど食べたことがないわ」
「和食もですね」
恵理香もアンに尋ねるのでした。
「天麩羅とかも」
「ウーガブーの国では食べたことがないわ」
「やっぱりそうですか」
「お蕎麦とかおうどんもね」
所謂麺類も、というのです。
「殆どないわ」
「美味しいですから」
「それはね、私も知っているわ」
「召し上がられたことはあるんですね」
「中華にしてもハンバーガーにしてもね」
「それでもですか」
「そうなの、ウーガブーの国から出た時だけよ」
そうしたお料理を食べる時はとです、アンは恵理香にも答えました。
「私の場合は」
「ボルシチもないのですね」
最後にナターシャが尋ねました。
「それでは」
「ええ、ロシアのビーフシチューよね」
「あれも」
「そう、ないわ」
「じゃあビーフシチューも」
「そうなの、普通のものよ」
アンが普段食べているビーフシチューはです。
「そちらよ」
「私もああしたシチューは好きだけれど」
「貴女はボルシチの方が好きなのね」
「食べ親しんできましたから」
それがナターシャがボルシチを好きな理由です。
「ですから」
「それぞれのお国が出ているわね」
アンは五人の子供達のお話をここまで聞いてです、しみじみとして言うのでした。
「貴女達のね」
「そうですね、言われてみれば」
「私もそうね」
他ならぬアンもと言うのでした。
「私もね、王宮のシェフのお料理を食べてきたから」
「フランス料理かイタリア料理なのね」
「それかドイツ料理よ」
そういったお料理が好きだというのです。
「あと飲みものはミルクで」
「今飲まれている」
「それとアップルティーやコーヒーよ」
「あっ、そういえば」
ナターシャはアンがコーヒーを好きと聞いてふと気付いたことがありました、その気付いたことはといいますと。
「フランスやイタリアはコーヒーでしたね」
「ドイツもそうよね」
「だからですか」
「王宮のメイドがコーヒーを淹れてくれるの」
そしてそのコーヒーをというのです。
「それを毎日飲んでるの」
「そうですか」
「コーヒーはいいわよ」
アンはにこにことして皆にお話します。
「ウーガブーの国のコーヒーはね」
「そんなにですか」
「ええ、いいわよ」
そうだというのです。
「本当にね、だからね」
「だから?」
「だからっていいますと」
「ウーガブーの国に行ったらね」
その時はとです、アンは皆に言いました。
「皆楽しんでね」
「そのコーヒーを」
「ウーガブーの国の」
「そうしてね」
是非にという口調で皆に言うのでした。
「美味しいものは皆で食べてこそね」
「一番美味しい」
「だからですね」
「そうよ、だからね」
アンは皆に笑顔のままお話します。
「その時を楽しみにしていてね」
「真実の池に行ってウーガブーの国に戻って」
「その時にですね」
「ウーガブーの国のコーヒーをご馳走になる」
「その時を」
「勿論コーヒーだけじゃないわよ」
アンは決して吝嗇ではありません、むしろかなり気前がいい娘なので皆にさらに言うのでした。
「シェフのお料理も楽しんでね」
「その不ランチ、イタリアンが得意な」
「その人のお料理も」
「それもですか」
「召し上がっていいんですね」
「そうよ、是非ね」
これがアンの返答でした。
「だからいいわね」
「それじゃあ」
「その時を楽しみにさせてもらいます」
「是非」
皆もこうアンに答えます。
「お花を持って行って」
「そのうえで」
「そう、それからね」
アンもそのことを言います、お花のことを。
「ウーガブーの国に戻ってからよ」
「それまではこのテーブル掛けのお料理があるわ」
ここでベッツイが行ってきました。
「そちらも楽しんでね」
「わかったわ、それじゃあね」
「ええ、どんどん食べてね」
「そうさせてもらうわね」
アンもベッツイに笑顔で答えます、そうして。
皆でそのお料理を食べて湖で男女交代で入浴してでした。そのうえで。
この日はゆっくりと寝ました、それから朝になってです。
皆で出発しました、ナターシャはこの時にベッツイに尋ねました。
「真実の池までの道には何かありますか?」
「いえ、ないわ」
ベッツイはナターシャのその問いに笑顔で答えました。
「比較的安全な道よ」
「そうですか」
「ええ、けれどアクシンデントはあるから」
「だからですね」
「一人旅はよくないの」
それでだというのです。
「安全でもアクシンデントがあるのが旅だから」
「それで、ですね」
「私もアンに言ったの」
皆で行こうと、というのです。
「そういうことだったの」
「安全でも用心はしておくべきですからね」
「そうよ、用心を重ねないと」
それこそとも言うベッツイでした。
「私も一度ね」
「そうそう、オズの国に来た時はね」
ハンクがベッツイの今の言葉に応えます。
「大変だったからね」
「死ぬかもって思ったから」
「木の板の上に乗って何とか流れ着いたから」
「そうした経験があったから」
「ベッツイは余計にだね」
「こうしたことは注意しているの」
危険な目に遭ったからなのです。
「もっともあれは私のせいじゃなかったみたいだけれど」
「遭難は仕方ないよ」
それは、と答えたハンクでした。
「天候のことは」
「だからなのね」
「そう、それは仕方ないよ」
「それでもね」
「気をつける様になったんだね」
「もうああいう思いしたくないから」
こう思うからなのです、ベッツイは。
「用心する様にしているの」
「大変だったからね」
「若し運よくこの国に来ていなかったら」
「どうなっていたかわからなかったね」
「ハンクもそうだったわね」
「そう、僕もね」
言うまでもなくです、ハンクもそうでした。ベッツイとその時一緒だったので。
「一緒だったから」
「そうでしょ。けれどハンクは」
「用心深くないっていうんだね」
「私よりはね」
「うん、僕はね」
それでというのです。
「何でも注意深く、用心深くとかはないね」
「そうよね」
「ああしたこともあったけれど」
ハンクはベッツイに穏やかな声でお話します。
「それでも僕はベッツイ程じゃないね」
「穏やかでいるのね」
「用心深いことも大事だけれど」
ハンクの場合はなのです。
「落ち着いている方がいいから」
「ハンクはそう考えているから」
「うん、ベッツイは用心深くあってね」
「ハンクは落ち着いているのね」
「それでいいんじゃないから」
これがハンクの考えでした。
「僕達は」
「そうね、それじゃあね」
「それでいこう」
「私達は大抵一緒だし」
「旅の時も王宮でもね」
ベッツイとハンクの関係はドロシーとトトのそれと同じです、本当に切っても切れない友達同士なのです。
それで、です。ベッツイも言うのです。
「だからね」
「それでよね」
「そうしてお互いを助けていこう」
「私達がそれぞれの特性を活かしてね」
「これからもね」
こうお話してでした、ベッツイとハンクは笑顔で頷き合ってです。そうしてベッツイはナターシャにあらためて言いました。
「私はこうした考えだから」
「それで、ですね」
「真実の池までの道もね」
「用心していくんですね」
「若し何かあったら」
その時はといいますと。
「猛獣だったらね」
「その時は任せてくれるかしら」
アンがベッツイに答えました。
「私にね」
「アンに?」
「実は砂を持って来てるの」
それで、というのです。
「目にかけたら寝てしまう砂をね」
「眠りの砂ね」
「それがあるから」
「それじゃあ猛獣が来たら」
「カリダが出て来てもね」
オズの国で一番獰猛なこの獣が出て来てもというのです。
「大丈夫よ」
「そうしたものを持ってるのね」
「私はいらないって言ったけれど」
アンは少し苦笑いになってベッツイに答えました。
「お父様とお母様がどうしてもって言って」
「持たせてくれたの」
「そう、だからね」
それでというのです。
「今持ってるから」
「よかったわ、それじゃあね」
「いざっていう時は任せて」
アンはベッツイににこりと笑って言うのでした。
「猛獣が出て来たらね」
「それで、先の道はね」
ガラスの猫も言ってきました。
「地図であらかじめ確かめてるし」
「これでね」
ベッツイは猫にも答えて地図も出しました。
そしてその地図を観つつです、皆に言うのでした。
「これはウィンキーの最新の地図だけれど」
「そこにはですね」
「ええ、真実の池までの道も書かれてるけれど」
それでもというのです。
「危ない場所は書いていないわ」
「それで、ですね」
「用心していくわ」
ナターシャにも応えてでした、そのうえで。
地図でチェックしながら先に進みます、そしてお昼になると御飯を食べるのでした。お昼はハンバーガーとラーメン、それと果物の盛り合わせでした。
そのハンバーガーを食べつつです、アンは言いました。
「これがね」
「ウーガブーの国ではですね」
「そう、私は食べないの」
アンはこうジョージに答えました。
「王宮ではですね」
「そうなの、だからね」
「ここでこうして食べると」
「新鮮よ」
そう思えるというのです。
「とても美味しいし」
「それは嬉しいですね」
ハンバーガーが大好きな彼にとってはです、とても嬉しいお言葉だったので笑顔になりました。
「じゃあどんどん食べて下さい」
「ラーメンもね」
アンはそちらも食べて言います。
「いいわね」
「これは中国のラーメンなんです」
今度は神宝がアンにお話します。
「どうでしょうか」
「こちらもいいわね」
「それじゃあこちらもどんどん」
「そうさせてもらうわね」
「そういえばね」
カルロスもハンバーガーとラーメンを楽しんでいます。その中でふと恵理香に顔を向けて彼女に尋ねました。
「日本にもハンバーガーとラーメンあるけれど」
「ええ、どちらもね」
「違うよね」
「今食べているハンバーガーやラーメンと」
「うん、同じ食べものとは思えない位にね」
「そうそう、それはね」
「僕も思うよ」
ジョージと神宝も恵理香に言うのでした。
「日本のハンバーガーはね」
「ラーメンもね」
「違うんだよね、アメリカのと」
「中国のラーメンとは本当に違うよ」
「味付けも大きさも」
「麺の作り方が別だよ」
「ううん、最初にそう言われた時は驚いたわ」
本当にとです、恵理香も言います。
「アメリカや中国でも食べてると思ったのに」
「それが違うんだ」
「それぞれの国でね」
そうだとです、二人は恵理香にこうも言いました。
「アメリカでもハンバーガーは地域によって多少味が違うし」
「中国の麺って本当に地域で色々だよ」
「だからね」
「日本のラーメンはもう日本の料理って言ってもいいよ」
「ハンバーガーにしてもそうだよ」
「そう言っていいから」
こうお話するのでした、そうしてです。
カルロスもです、恵理香に言うのでした。
「日本人の好みにね」
「合う様になっているのね」
「そうなっているんだ」
「いつも言われるのよね」
「このハンバーガーはアメリカの、それも」
「ロスの味ですね」
ジョージがベッツイに答えます。
「それですね」
「そちらの味よね」
「それで麺は」
「これは北京ですね」
今度は神宝が答えます。
「北京のラーメンですね」
「そちらの味なのね」
「はい、スープも」
北京のものだというのです。
「調味料にしても」
「そういえば日本でも」
恵理香も自分のお国のことから言いました。
「ラーメンは場所によって違うわ」
「そうね、神戸と大阪でも違うわね」
ナターシャも恵理香に言います。
「京都や和歌山でも」
「そうなの、同じ関西のラーメンでもね」
「それぞれ違うわね」
「そうなっているの」
そうだというのです。
「あと九州の博多だとね」
「豚骨ラーメン?」
「あのラーメンだし」
「私豚骨ラーメン好きよ」
ナターシャは今は北京のラーメン、中国のそれを食べていますが日本のそちらのラーメンもというのです。
「あのダシの味がいいわね」
「独特でしょ」
「ええ、濃くてね」
「麺は細くて」
「よくスープが絡まって」
それでいいというのです。
「私好きなのよ」
「じゃあ今度はね」
ここでこう言ったのはです、ベッツイでした。
「その豚骨ラーメンを食べる?」
「はい、また今度」
ナターシャもこうベッツイに応えます。
「お願いします」
「それじゃあね、ナターシャが言ってくれたらね」
「テーブル掛けに出してくれるんですね」
「そうするからね」
それで、というのです。
「何時でも言ってね」
「わかりました」
「和食だとおうどんもお寿司も天麩羅も」
こうしたものをです、アンは名前を出してきました。
「お蕎麦も好きよ」
「他には」
「お握りも好きよ、卵焼きもね」
「結構召し上がられていますね」
「後はお好み焼きやたこ焼きも」
好きだとです、アンは笑顔で恵理香に答えます。
「美味しいわね」
「焼きそばは」
「あれもいいわね」
「何かウーガブーの国の外では」
「色々なもの食べるわ。お弁当の木から出してね」
そしてというのです。
「食べているのよ」
「そうなの、ただ」
「ウーガブーの国ではですね」
「フランス料理とイタリア料理、ドイツ料理よ」
「その三つですね」
「その三つを食べているから」
だからだというのです。
「他のお料理は食べないの」
「シェフの人にお願いしたらどうですか?」
恵理香はこうアンに提案しました。
「そうしたお料理を作ってくれる様に」
「お願いするでしょ、そしたらね」
「そうしたら」
「焼きそばがスパゲティになるの」
「スパゲティにですか」
「おうどんはペペロンチーノになるの」
「おうどんのペペロンチーノですか」
そのお料理を聞いてです、恵理香は頭の中でお皿の上にスパゲティみたいに置かれていてペペロンチーノのソースを絡められているものを想像しました。
そしてです、こうアンに言いました。
「美味しいそうですね」
「美味しいことは美味しいけれど」
「日本のおうどんではないですね」
「イタリアでしょ」
「はい、イタリアです」
このお国のお料理だというのです。
「私もそう思います」
「シェフの腕は最高よ、けれど」
「その三つのお国のお料理だけしかですね」
「作ることが出来ないの」
「じゃあお刺身も」
「大抵カルパッチョになるわ」
お刺身を作ってもそちらのお料理になるというのです。
「これがね」
「そうなんですね」
「そう、だから和食はね」
「ウーガブーの国の外で、ですね」
「食べているの。他の国のお料理もね」
ウーガブーの国を出たその時にというのです。
「食べてるの」
「それでウーガブーの国で一番召し上がられているお料理は」
「そうね、オムレツね」
「オムレツですか」
「朝はよくそれを食べているわ」
こう皆にお話するのでした。
「目玉焼きもね」
「あっ、目玉焼きは日本でも食べます」
「あれ美味しいわよね」
「はい、とても」
そうだと答える恵理香でした。
「朝は特に」
「シェフはハンバーグの上にも乗せてくれるわ」
「ハンバーグと目玉焼きを一緒にですね」
「食べているの」
「それお母さんも作ってくれます」
恵理香のお母さんがです、そうしたものを作ってくれるというのです。
「美味しいですよね」
「そうでしょ、私ハンバーグも好きだから」
「ハンバーグでしたら」
それならとです、カルロスが言うことはといいますと。
「僕も大好きです」
「貴方もなのね」
「あれも美味しいですね」
「ええ、私も好きだから」
「シェフの方がよく作ってくれるんですね」
「それで楽しんでいるわ」
そのハンバーグをというのです。
「いつもね」
「成程、じゃあ」
「ウーガブーの国に着いたらシェフに作ってもらうわ、貴方達にね」
「何か悪いですね」
「私は遠慮されることは嫌いよ」
アンはカルロスににこりと笑って返しました。
「言っておくけれどね」
「それじゃあ」
「ええ、その時はね」
ウーガブーの国に戻ったその時はというのです。
「楽しみにしておいてね」
「わかりました」
「そういうことでね」
こうしたお話をしてです、一行はお昼も楽しんででした。
さらに先に進みます、周りには黄色の木々もあります。
その黄色い葉と枝、幹の木達こそ一行がウィンキーの国にいる証拠です、周りは村や民家も見えます。その村や家を見てです。
猫はしみじみとしてです、こうしたことを言いました。
「この辺りも今はお家が増えたわね」
「そうね、昔に比べたらね」
「ずっと増えたわ」
そうなったと言うのです、ベッツイにも。
「昔よりもね」
「ずっと増えたわね」
「ウィンキーはオズの国で一番未開でね」
「人もあまりいなくて」
「この辺りまで来たら」
「もうそれこそ誰もいなくて」
かつてはそうだったというのです。
「寂しいところだったわ」
「そうだったわね、けれどね」
「今はね」
「こうして村もあって」
「お家も出来て」
「田畑もあってね」
「いい場所になってきたわね」
「森や林もそのままでね」
木々は健在で、というのです。
「いいわね」
「そうね、あたしもこの場所好きよ」
今のこの場所をというのです。
「とてもね」
「私も。オズの国も広くなってしかも人が増えて」
「前よりもずっといい国になったわね」
「私が来た時も最高の国だったわ」
「あたしが心を持った時もね」
「それでもね」
「最高で終わりじゃないのよ」
猫はこうも言いました。
「最高はさらにね」
「上があるのね」
「お空と同じよ」
猫はここでお空を見上げました、黄色いウィンキーの国の上の空はとても青く何処までも澄んでいます。
そのお空を見上げてです、猫はベッツイに言いました。
「お空は何処までもあるでしょ」
「何処までも上があるわね」
「そう、だからね」
「最高にしても」
「最高のさらに上があって」
それで、というのです。
「何処までも上があるのよ」
「そういうことなのね」
「そう、だからね」
それでだというのです。
「オズの国は前よりもずっといい国になったし」
「これからも」
「そう、どんどんよくなっていくのよ」
「最高って言っても終わりじゃなくて」
「その最高の中でも層があるの」
これが猫の考えでした。
「そうしたものだから」
「この辺りもいい場所になったし」
「他の場所もそうよ」
「どんどんよくなっていくのね」
「ええ、そうよ」
猫は今度はベッツイにお顔を向けて言いました。
「そうしたものよ」
「そうなのね」
「その証拠にあんたこれまで色々な人と出会ってきたでしょ」
「素晴らしい人達とね」
「どんどんね」
「オズの国に来てから」
「そう、だからね」
それでというのです。
「何でもそうなのよ」
「これで終わりはなくて」
「どんどんよくなっていくものであって」
「そうでないといけないのね」
「そうしたものなのよ」
猫はこうベッツイにお話します。
「オズの国にしてもね」
「そういうことなのね」
「成程ね」
「それに何でも変わっていくわ」
猫は今度はこうしたことを言いました。
「よくなるってことも変わるってことだけれど」
「何でも。オズの国でも」
「オズの国では誰も歳は取らないけれどね」
「私達は少し成長したけれどね」
「それはあんた達が少し大人になりたいって思ったからよ」
そう思ったからなのです、ベッツイ達が。
「元に戻ることも出来るじゃない」
「それはね」
「けれどオズの国でもね」
「他のことは」
「そう、変わっていくでしょ」
「この辺りもそうだし」
「何でも変わるのよ」
それこそなのです。
「オズの国でも何処でも」
「そういうことね」
「そうよ、だからここももっとよくなるわ」
「変わっていって」
「そう、奇麗になっていくし賑やかになっていって」
「その時また来たいわね」
「是非そうしましょう」
猫はここでは笑ってベッツイに言いました。
「変わっていって。よくなっていくことを観ることも楽しいから」
「それじゃあね」
こうしたお話をしてです、一行は真実の池に向かうのでした。ですがこの時はまだ誰も道中に思わぬことがあるとは想像していませんでした。
特に今の所は問題もなさそうだな。
美姫 「そうね。旅を楽しんでいるわね」
防衛手段もちゃんと持っているみたいだし。
美姫 「このまま何事もなくとはいかない感じだけれど」
一体何が待っているんだろうか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。