『オズのベッツイ』
第七幕 ラベンダーグマと会って
一行はクマセンターの中に入りました、すると小熊のぬいぐるみの兵隊さんが一匹出て来てです。こう一行に言ってきました。
「誰かと思えば」
「お久しぶり」
ハンクがその小熊さんに応えます。
「お元気そうね」
「ベッツイさん達だね、ただ」
小熊さんはベッツイ達と一緒にいる恵理香達を見て言うのでした。
「そっちの子達ははじめて見るね」
「私達のお友達よ」
ベッツイが笑顔で小熊さんに説明します。
「だからね」
「おかしな人達じゃないんだね」
「そう、だから安心してね」
「わかったよ、それじゃあね」
小熊さんはベッツイの言葉に納得した様子で前に進みました、そして。
その恵理香達にです、こう言ったのでした。
「君達をお客さんとしてね」
「そうしてですね」
「クマセンターの中に案内するよ」
ナターシャ達の前で五人を見上げての言葉です。
「これからね」
「お願いします」
「それにしてもさっきは君が来たし」
小熊さんはガラスの猫も見て言いました。
「その前はアン王女も来たし」
「アン王女は今もここにいるのよね」
「うん、いるよ」
小熊さんはベッツイの問いにはっきりとした言葉で答えました。
「それで王様、ラベンダーグマとお話してるよ」
「わかったわ、じゃあ王様達に会いに行って来るわね」
「それと王女にもだね」
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあね」
「それにしても」
ナターシャはここで小熊さんを見つつです、しみじみとした口調でこうしたことを言ったのでした。
「本当にぬいぐるみなのね」
「僕の姿がかい?」
小熊さんもナターシャに応えます。兵隊さんの帽子とその手に持っている銃もとても似合っていてしかも可愛らしいです。
「そう言うのかい?」
「クマセンターのことは聞いてるけれど」
「僕達のことを」
「本当にぬいぐるみなのね」
「それは見た通りだよ」
小熊さんはそのふかふかとした右の前足を頭の横で動かしつつ答えました。
「この通りね」
「そうなんですね」
「僕達は熊は熊でもね」
「ぬいぐるみですね」
「その熊達の国がね」
「このクマセンターですね」
「そうだよ」
こうナターsタにもお話するのでした。
「そうなんだよ」
「わかりました」
「その目で見て納得してくれたね」
「噂には聞いていてもその目で見ますと」
「それでわかるね」
「納得出来ます」
そうなるというのです。
「目で見ることが大きいですね」
「その通りだね、じゃあ僕達のことも納得してくれたし」
「はい、それじゃあ」
「今からね」
まさにというのです。
「一緒に行こう」
「王様達のところに」
こうお話してでした、一行は小熊さんに案内してもらってです。
クマセンター、森の中にあるその国の中を進みました。どの熊さん達もぬいぐるみでふかふかしててとても可愛らしいです。
その熊さん達を見てです、恵理香が言いました。
「何かこの国もね」
「ずっといたくなるわね」
「熊さん達が可愛らしいから」
それでとです、恵理香はナターシャに答えました。
「テディーベアもいて」
「恵理香ぬいぐるみ好きだからね」
「ナターシャもよね」
「ええ、大好きよ」
ナターシャは熊さん達を見つつ恵理香に答えました。
「お部屋の中にも一杯あるでしょ」
「そうよね、ナターシャのお部屋は熊さんのぬいぐるみで一杯よね」
「熊を嫌いなロシア人はあまりいないわ」
「ロシアっていえば熊だよね」
カルロスもこう言ってきました。
「そうだよね」
「ええ、よくイメージで書かれたり言われるわね」
「だからだね」
「ロシア人は熊が好きで」
それで、というのです。
「私もそうなの」
「そうだね、中南米は熊が少ないからね」
カルロスは自分のお国のこともお話しました。
「そこは羨ましいかな」
「ブラジルはジャガーかしら」
ナターシャもカルロスに応えて言います。
「お国の動物は」
「そうなるかな」
「アマゾンには一杯動物がいるけれど」
「一番人気があるのはそれかもね」
「ジャガーなのね」
「ピラルクやアナコンダも人気があるけれど」
その中で一番は、というのです。
「ジャガーかな」
「格好いいからよね」
「そうだよ、一番人気はジャガーだろうね」
「そうね、ブラジルは」
ナターシャはカルロスの言葉を聞いて頷いてです、それから。
ジョージと神宝の二人にも顔を向けてです、この二つの動物の名前を出しました。
「鷲とパンダね」
「うん、アメリカだと鷲が人気あるよ」
「中国はやっぱりパンダだよ」
二人もこう答えます。
「オリンピックのマスコットでもあるし」
「皆大事にしているよ」
「そうよね。貴方達のお国ではそうね」
「ハクトウワシだね、特に」
「パンダはジャイアントパンダだよ」
二人も言います、そして。
そのジョージと神宝は残る一人の恵理香にもです、尋ねるのでした。
「それで日本で人気のある動物は」
「何だろうね」
「僕達これといって思い浮かばないけれど」
「何かある?」
「ううん、猫かしら」
恵理香は首を左に傾げさせて右手の人差し指を口元に当てて考える顔で答えました。
「それなら」
「猫なんだ」
「日本で一番人気があるのは」
「ワンちゃんも人気があるけれど」
こちらの生きものもだというのです、けれどでした。
「一番人気があるのは」
「猫なんだ」
「あの生きものなんだね」
「どっちかっていうと難しいけれど」
それでもというのです。
「猫かしらね」
「ううん、何かね」
「平和な感じがするね」
猫が日本で一番人気のある生きものと聞いてです、二人は考えているお顔で返しました。
「そこはね」
「鷲とかじゃないから」
「どうしてもね」
「そう思えるね」
「噛んで引っ掻くけれど」
恵理香も言うのでした。
「猛々しさはないわよね」
「パンダもね」
神宝は自分のお国で人気のあるこの生きものことを恵理香にお話しました。
「あれで怖いんだよ」
「そうよね」
「そう、怖いんだよパンダは」
そうだというのです。
「大きいし力も強くて」
「爪もあって?」
「そう、牙もあるから」
「怖いのね」
「怒らせたら怖いよ」
「鷲は言うまでもないよね」
ジョージは自分のお国の動物についてお話しました。
「強いし」
「鷲も怖いわよね」
「そうだよ、空で一番強いから」
「ジャガーや熊だってね」
カルロスも言いました。
「怖いからね」
「ええ、熊は特にね」
「そう、ジャガーだって素早いし獰猛だから」
「怖いわよね」
「そうした生きものだよ」
「けれど猫は」
「そうした生きものと比べたら」
ナターシャも恵理香に言うのでした。
「怖くないわね」
「全然ね」
「可愛いけれどね」
「日本って怖い生きものあまりいないから」
恵理香はここでこのことも言いました。
「だからかしら」
「そのこともあってなのね」
「熊はいるけれど」
それでもだというのです。
「北海道のヒグマはともかくとして」
「日本の熊はツキノワグマね」
「ナターシャもツキノワグマは見たことあるわよね」
「動物園でね」
八条学園の中には動物園もあります、ナターシャはその動物園でツキノワグマ達を観たことがあるのです。
「ロシアの熊よりずっと小さいわよね」
「やっぱりそうよね」
「ええ、だからね」
それでというのです。
「熊がいても」
「そんなに怖くないわね」
「狼がいたけれど」
「ニホンオオカミね」
「もう絶滅したし実は大人しかったっていうから」
「日本はあまり怖い生きものがいないのね」
「そうなの、そのせいかしら」
他の国で人気のある生きものと比べてというのです、日本で人気のある生きものは。
「猫や犬が人気があるのは」
「そうかも知れないわね」
「ううん、あと狐や狸ね」
童話から言う恵理香でした。
「日本で人気があるのは」
「狐や狸は普通でしょ」
ガラスの猫が横からベッツイに言ってきます。
「オズの国にもいるし」
「狸もよね」
「狐も狸もね」
そうだというのだ。
「どっちもいるわよ」
「そうよね」
「何でもない感じでしょ」
狐や狸はと言う猫でした。
「正直なところ、それでもなの」
「日本では人気なの」
「成程、そうなの」
「そうなの、ただ日本は本当に怖い動物が少ないから」
それで、というのだ。
「人気がある生きものも怖くないの」
「そういうことなのね、ただ」
「ただ?」
「そこも日本らしいかしら」
猫は少し考えるお顔で言いました。
「強い生きものじゃなくて愛される生きものが人気なのは」
「そうなるのかしら」
「ええ、あたしも日本に行ったことがあるけれど」
「あの塔から」
「そう、かかしさん達と一緒に行ったけれどね」
「その姿で驚かれなかった?」
恵理香は猫のそのガラスの身体とルビーの脳味噌、それに心臓を見て言います。確かに物凄く目立つ外見です。
「誰にも」
「作りもののふりをしたからね」
「それで大丈夫だったのね」
「動かないあたしはこれ以上はないガラスの彫像よ」
猫のそれだrというのです。
「実際に元はそうだったし」
「ううん、それで動かなくて」
「かかしさんや木樵さんに持ってもらってね」
そうしてというのです。
「あんた達の世界にも行ってるのよ」
「かかしさん達も変わった外見だけれど」
「あの人達は仮装があれば紛れ込めるでしょ」
「大勢で行ったら仮装行列になるし」
「そう、だからね」
それで、というのです。
「あの人達もいけるし」
「それで貴女もなのね」
「そういうことよ。それじゃあね」
「ええ、クマの王様にお会いして」
「それでラベンダーグマにも会ってね」
ベッツイも恵理香に言って来ました。
「アン王女にも会って」
「そして、ですね」
「黄金の林檎のジャムを貰いましょう」
「そうしましょう」
こうお話するのでした、そしてまた猫が言ってきました。
「あたしがここに先に来た時は王女さんがいたから」
「だから王様のところに行けば」
「会えるわよ」
間違いなく、というのです。
「だからね」
「会えるのね」
「そのことは大丈夫よ」
「じゃあアン王女にはお会い出来るわね」
「確実にね」
「それでお会いすれば」
それで、なのでした。
「黄金の林檎のジャムが貰えるわね」
「ええ、楽しみにしてるわ」
ベッツイはにこにことしてまた言いました。
「王女と会えるのが」
「そうですね、それじゃあ行きましょう」
「焦らない焦らない」
先頭を歩いて案内役を務めている熊の兵隊さんがここで一行の方を振り向いて言ってきました。銃を手にしたまま。
「王様はおられるから」
「そうですね、それじゃあ」
「そう、案内はちゃんとするしね」
こうベッツイ達に言ってなのでした。兵隊さんはちゃんと案内をしてです。
そしてです、王様のところに行くとです。
大きな奇麗なピンク色ぬいぐるみの熊さん、王冠を被り笏を持った熊さんがピンク色の小熊のぬいぐるみを抱いてそこにいます。その熊さん達の前に来てです。
兵隊さんがです、一行に言いました。
「こちらにおわしますのが」
「クマセンターの王様ですね」
「そうだよ」
にこりと笑ってです、兵隊さんはナターシャに答えました。
「こちらの方が」
「王様と」
「その忠実な家臣ピンク色の小熊だよ」
こう言うのでした。
「宜しくね」
「やあ、ベッツイ王女」
その王様がベッツイに声をかけてきました。
「ようこそ、久しぶりだね」
「ええ、こんにちは」
ベッツイは王様ににこりと笑って挨拶をしました。
「お元気そうね」
「今日は何のご用かな」
「アン王女とお会いしたくて」
「ああ、アン王女だね」
「こちらにいるのよね」
「うん、今もここにいるよ」
王様はベッツイにはっきりと答えました。
「今は席を外しているけれど」
「何処に行ったの?」
「お風呂をご馳走しているんだよ」
「あら、お風呂に入ってるの」
「そう、今はね」
「あたしが会ったすぐ後でなのね」
猫は王様の説明を聞いて言いました。
「それでなのね」
「そう、君達に会うのならと言ってね」
「お風呂に入って奇麗になって」
「会いたいと言ってね」
それで、というのです。
「入っているんだ」
「そうなのね」
「だから少し待ってくれるかな」
王様は皆に穏やかな声でお話しました。
「王女がお風呂からあがるまでね」
「わかったわ、じゃあそれまでは」
待つまでの間はです。
「お喋りをして過ごそうか」
「そうね、少しの間だし」
ベッツイが王様に応えます。
「それがいいかしら」
「君達のことを聞きたいね」
王様はナターシャ達を見て言うのでした。
「ベッツイ王女のお友達だね」
「はい、そうです」
ナターシャが一礼してから王様に答えました。
「ベッツイ王女と同じ世界から来ました」
「そうだね、それじゃあ」
「私達のことを」
「聞きたい、いいかな」
「それはいいことだね」
ハンクも王様のお話を聞いて言いました。
「自己紹介にもなるし」
「そうよね、それじゃあ」
「うん、君達のお話を聞かせてくれるね」
「わかりました」
こうしてアン王女が戻るまでの間はです、一行は王様達に自己紹介をしました。そしてそれが終わった時にです。
ブロンドの豊かな髪に勝気そうな青い目の女の子がやって来ました。黄色い軍服とズボンに帽子、羽飾りとモールは金色です、そして。
ブーツは濃い黄色です、その人が来てです。
ベッツイ達を見てです、こう言いました。
「お久しぶり、お話は聞いてるわ」
「あたしからね」
「ええ、さっきね」
ガラスの猫に応えて言うのでした。
「貴女から事情は聞いたから」
「それならお話が早いわね」
ベッツイはアンのお話を聞いて笑顔で言いました。
「それじゃあね」
「黄金の林檎のジャムね」
「あるわよね、ウーガブーの国に」
「あるわ」
「それじゃあウーガブーの国に行けば」
「ええ、ただね」
ここでこう言ったアンでした。
「一つ困ったことがあるのよ」
「困ったこと?」
「その林檎からジャムを作られるのはウーガブーの国でも一人だけなの」
「その人がどうかしたの?」
「ええ、病気になって寝込んでるの」
「大丈夫なの?」
「オズの国では誰も死なないから」
命の危険はありません、このことは安心していいことでした。
ですがそれでもとです、アンはベッツイに困ったお顔でお話するのでした。
「けれど熱が出てベッドから起き上がられないの」
「それでジャムを作ることが出来ないのね」
「他の林檎のジャムもね。皆林檎のジャムが好きなのに」
ウーガブーの国ではです、このことはウーガブーの国の人達にとって大変なことです。それでアンも困ったお顔です。
それで、です。こうも言うのでした。
「だから私も何とかしようと思ってなの」
「ここに来てね」
王様が皆にもお話します。
「ピンクの小熊に聞きに来たんだ」
「僕はこれから起こることなら何でもわかるから」
小熊自身も言ってきました。
「何でもね」
「それでここに来たの」
アンがまた事情を説明してくれまいsた。
「この子に。その人の病気を治す為にはどうすればいいかって聞きにね」
「それで治療の仕方はわかったの?」
「ええ、わかったわ」
アンはベッツイの問いに笑顔で答えました。
「有り難いことにね」
「そう、それで治療の方法は」
「真実の池に一つのお花が咲いているの」
アンは小熊から聞いたことをお話しました。
「そのお花を摘んですり潰したものを飲ませれば」
「その人の病気が治って」
「ジャムを作ってくれるの」
「そうなのね、それじゃあ」
「私今から真実の池に行くわ」
アンはベッツイにはっきりと言いました。
「これからね」
「ここからあの場所まで」
「そうするわ」
「一人で行くのね」
「ここまでも一人で来たのよ」
アンはベッツイににこりと笑って答えました。
「それならね」
「真実の池までも一人で行くのね」
「そのつもりよ」
「オズの国も随分安全になったけれど」
アンの言葉を聞いてでした、ベッツイは考えるお顔で述べました。
「けれどね」
「けれど?」
「何があるかわからないわ、一人旅は」
「うん、 ベッツイの言う通りだね」
ハンクがベッツイのその言葉に頷きました。
「本当に危ないよ、一人旅は」
「少なくとも王女さん一人では危険ね」
猫もアンに言います。
「ここから真実の池までかなり遠いから」
「皆どうかしら」
ベッツイはナターシャ達にお顔を向けて尋ねました。
「王女さんと真実の池まで一緒に行く?」
「あの池まで、ですね」
「皆で」
「ジャムを作ってくれる人がいないとジャムは手に入らないわよ」
このことをです、猫は皆に言いました。
「絶対にね」
「そうよね、考えてみれば」
ナターシャは猫のその言葉を受けて考えるお顔になって述べました。
「アン王女とお会い出来てもね」
「そうでしょ、その人だけがウーガブーの国でジャムを作られるのよ」
「その人だけがなの」
ここでアンも言ってきました。
「黄金の林檎からジャムを作れるの」
「まさにその人だけが」
「そう、だからね」
それでというのです。
「私もここまで来て治し方を尋ねたの」
「そうなんですね」
「だからよ」
それでとも言ったアンでした。
「私は絶対に真実の池まで行くわ。何よりも国民が苦しんでいるのに何もしないなんて王女のすることではないわ」
「その通りですね、それで」
「私は行くから」
その真実の池にというのです。
「絶対にね」
「それでなのね」
「行くから」
アンはまた言いました。
「絶対に」
「事情はわかったわね」
アンがここまでお話をしたところでなのでした、ベッツイは皆にまた声をかけました。
「だからね、アンを一人で行かせたい?」
「それはかなり」
「危ないですよ」
ジョージと神宝が最初に言いました。
「女の子一人での旅は」
「事故とかもありますし」
「怖い獣、カリダとかがいたら」
カルロスはオズの国のこの獣のことを名前に出しました。
「大変ですよ」
「そうでしょ、だからね」
「皆で真実の池まで」
「行きましょう」
「あの、そこまでしなくていいわよ」
アンはこう皆に言いました。
「私一人でここまで来たしこれからもね」
「これまでは大丈夫でもこれからはわからないよ」
ハンクはしっかりした声でアンに返しました。
「何があるか」
「だから。私達も一緒に行くわ」
ベッツイはまたアンに言いました。
「その方が安全だし私達もジャムが欲しいから」
「それでなの」
「そう、一緒に行っていいかしら」
「私もそう思います」
恵理香もアンに言いました。
「皆で行った方が安全ですから」
「ううん、それじゃあ」
「皆で行きましょう」
最後にナターシャがアンに言いました。
「ここは」
「皆同じ意見みたいね」
ベッツイは満足したお顔で言ってです、そして。
アンに顔を向けてです、あらためて言いました。
「そういうことだから」
「いいの?」
「それとも一人でいたいの?アンは」
ベッツイはアンにこう問い返しました、怪訝なお顔になった彼女に。
「この旅の間は」
「そう言われると私もね」
アンにしてもです、そう言われるとでした。
「やっぱり皆で賑やかな方がいいわ」
「そうよね」
「旅行にしてもね」
「それならいいわよね」
「ううん、何か悪いけれど」
「悪くないわ、だって私達もね」
ベッツイはまだ戸惑いを見せるアンに微笑みのまま再び言いました。
「黄金の林檎のジャムが欲しいから」
「目的は同じだから」
「遠慮することはないわよ」
「その意味でもなのね」
「ええ、一緒に行きましょう」
真実の池までの旅もというのです。
「そうしましょう」
「そこまで言うならね」
強くお願いされればです、それならでした。
アンもベッツイ達の好意を受け取ることにしました、そのうえで言いました。
「お願い出来るかしら」
「それじゃあね」
「ええ、一緒に行きましょう」
アンもここで微笑んでベッツイに答えました。
「皆でね」
「そうしましょう」
こうしてでした、アンは皆と一緒に真実の池まで行くことになりました。そのお話を決めてからです、ナターシャがアンに尋ねました。
「あの、それでアン王女」
「何かしら」
「王女は前は女王でしたね」
「お父様とお母様が戻られたからよ」
「それで女王からですね」
「王女に戻ったの」
それで今は王女という呼び名だというのです。
「お父様が国王でお母様が女王よ」
「復位されたんですね」
「そう、だから私は今はウーガブーの国の王女よ」
女王ではなくとです、アンはナターシャの問いに答えました。
「そうなったのよ」
「そうですか」
「そうなのよ」
「そのことはわかりました」
ナターシャはアンの返答を聞いて納得して頷きました、ですがナターシャはアンにこのことも尋ねたのでした。
「ただ」
「もう一つ聞きたいことがあるのね」
「王女様はお一人でここまで来られたんですよね」
「ええ、そうよ」
「それで真実の池までも」
「一人で行ってね」
そして、というのです。アンも。
「一人でウーガブーの国に戻るつもりだったのよ」
「どうしてお一人なんですか?」
「そういえば」
ここで恵理香も言いました。
「王女様は以前オズの国を征服されようとして」
「軍隊を率いておられましたね」
ナターシャもアンにこのことを尋ねるのです。
「十六人位の」
「そうでしたね」
「それで今はどうして」
「お一人なんですか?」
「もう戦争はしないから」
それで、とです。アンは二人の問いに答えました。
「それでなのよ」
「兵隊さん達は」
「もう皆元の仕事に戻って軍人になることはないわ」
「そうなんですね」
「そう、国民に同行してもらってそのお仕事を奪っては駄目だから」
アンはそこまで考えていたのです、そしてだったのです。
「私一人で行くことにしたの」
「そうだったんですか」
「それで、ですか」
「そうなの、皆から止められたけれど」
それでもだとです、アンは二人の少女に笑ってお話するのでした。
「そうしたのよ」
「無鉄砲だと思いますけれど」
ナターシャはアンのその決断と行動にあえて厳しいことを言いました。
「それは幾ら何でも」
「そう言われたわ、皆にもね」
「そうですよ、女の子が一人で旅に出るなんて」
「せめてあたし達みたいなお供がいないとね」
ガラスの猫もそこを言います。
「一人だけじゃ何かあったらそれで終わりよ」
「何人かいてこそですよ」
恵理香もまた言いました、アンに。
「困った時に助かります」
「そう言われたけれど、いてもたってもいられなくて」
「それが危ないです」
ナターシャは眉を曇らせてそして言うのでした。
「本当にお気をつけ下さい」
「何かあったらすぐに私達に声をかけて」
ベッツイはアンを咎めませんでした、ですがこうお願いしたのです。
「そうすれば駆けつけてね」
「助けてくれるの?」
「そうするから」
だからだというのです。
「声をかけてね」
「動く前に」
「そう、一人で動く前にね」
「助けてくれるの?私達を」
「当たり前よ、ここはオズの国よ」
それ故にというのがベッツイの返事でした。
「それならよ」
「助けてくれるの」
「それにウーガブーの国はウィンキーの国の中にあるじゃない」
ベッツイはアンにこのことも言いました。
「それならよ」
「皇帝である木樵さんに」
「助けてもらえるから」
このことも言うのでした。
「一人で無茶をするより」
「誰かに声をかけて」
「やってね。そもそも貴女が一人で行くって行って同行を言って来た人はいないの?」
「何人もいたわ、けれどね」
「貴女一人で行ったのね」
「そうしたの」
アンはこのこともベッツイにお話しました。
「皆を困らせたくないから」
「だからそういうことがね」
「かえってよくないのね」
「そうよ」
ベッツイはアンにはっきりと答えました。
「気を使うことはいいけれど」
「それが他の人を心配させてしまうなら」
「かえってよくないから」
こうアンに言うのでした。
「だからね」
「今回みたいなことは」
「してはいけないわ」
それは絶対にというのです。
「だから今度からはね」
「一人で行くのじゃなくて」
「誰かに声をかけてね」
それで一人で行かないこと、というのです。
「他のこともだけれど」
「何でも前以て誰かにお話して」
「それで一人ですると危ないことはね」
「一人でしないことね」
「それが第一よ」
まずはというのです。
「そこはお願いね」
「わかったわ、そういうことなのね」
「そう、くれぐれもお願いね」
「ううん、そこまで考えていなかったわ」
「考えていなかったら考えられるようになればいいのよ」
ベッツイは微笑んでアンにこうも言いました。
「それならね」
「考えられるようになればいいのね」
「考えていなかったらね」
「そうなればいいってことね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「これからは考えていきましょう」
「わかったわ、それじゃあね」
「さて、じゃあね」
「ええ、今からね」
「真実の池に行きましょう」
「ここからは遠いからね」
王様が皆に言いました。
「道中気をつけてね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「お花は真実の池のほとりにあるから」
王様はベッツイ達にこのことをまた言いました。
「このことは間違いないから」
「ピンクの小熊の言葉だから」
「そう、この子はわかるからね」
これから起こること、それがとです。王様は自分の前にいるそのピンクの小熊を見つつベッツイに応えましたt。
「確実だよ」
「その通りね」
「それに若しわからないのなら」
真実の池に行ってもです。
「その時はカエルマンに聞くといいよ」
「イソップの村のね」
「そう、彼にね」
助けてもらえばいいというのです。
「頼りになる人はあそこにもいるよ」
「有り難いですね」
ナターシャは王様の言葉を聞いて言いました。
「そうした人がいてくれますと」
「君達もそう思うね」
「はい、とても」
「その通りだよ、そうした人がその場所にもいるとね」
「それならですよね」
「余計に助かるからね」
何かあったその時はというのです。
「君達もね」
「はい、カエルマンさんにも」
「いざという時は話をするといいよ」
「わかりました、それじゃあ」
「また何かあれば来るといいよ」
王様はとても優しい声で一行に言いました。
「僕達は何時でも歓迎させてもらうからね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
ベッツイが王様に応えました。
「またウィンキーまで来る時があればね」
「是非ね」
「それじゃあ行きましょう」
ガラスの猫もこう皆に言います。
「是非ね」
「ええ、それじゃあね」
ベッツイは猫の言葉にも頷きました、そうしてアンと共にクマセンターの人達と笑顔で別れて真実の池に向かうのでした。
アン王女に会う事ができたな。
美姫 「でも、やっぱり問題が起こっていたみたいね」
まさかジャムを作れる人が病気だとはな。
美姫 「それの治療の為にここまで一人で来ていたのね」
運よく入れ違いにならずに済んで本当に良かったな。
美姫 「そうね。途中で話を聞いてなかったら、今度は王女を探さないといけなかったものね」
次の目的地が真実の池になったみたいだな。
美姫 「今度はアン王女も加わっての旅ね」
無事に花を見つける事が出来るかな。
美姫 「次回も待っていますね」
待ってます。