『オズのムシノスケ』




                第七幕  将軍のお家

 恵梨香達は遂にです、ジンジャー将軍のお家に着きました。そこは青いログハウスでした。
 そのログハウスを見てです、カルロスはムシノスケ教授に言いました。
「前から思っていましたけれど」
「オズの国のお家のことだね」
「はい、ドロシーさんが最初に来られた頃は」 
 ドロシーを見て言うのでした。
「お椀を逆さに置いたみたいな形のお家ばかりでしたね」
「ええ、そうだったわ」
 その通りとです、ドロシーも答えます。
「昔はね」
「それが今では」
「こうしてね」
 ジンジャー将軍のお家みたいにです。今皆で前にいるそのお家にです。
「ログハウスもあるのよ」
「その他にもですよね」
「ええ、色々な形のお家があるわ」
 今のオズの国はというのです。
「木樵さんはブリキのお家、かかしさんも独特のお家でね」
「何か玉蜀黍の塔みたいな」
「ジャックのお家はかぼちゃでね」
 まさにそれぞれです。
「色々なお家が出来ているのよ」
「そうですよね」
「だから皆のお家もね」
 オズの人達のそれもです、かかしや木樵以外の人達のそれも。
「こうしてね」
「ログハウスもあってですね」
「そうなの、日本のお家や中国のお家もあるでしょ」
「ロシア風のお家もありますね」
 ナターシャも自分のお国のお話をしました。
「見ました」
「オズの国も昔ながらのお椀みたいなお家以外にも」
 オズの国ではオーソドックスのそれもです。
「こうしてね」
「増えましたね」
「人も増えて」
 そしてなのでした。
「お家の種類も増えたのよ」
「そういうことですね」
「それで将軍はね」
「ログハウスを建てられたんですね」
「そうなの、前はお椀の形のお家だったけれど」
 今ではというのです。
「建て替えてこうしたのよ」
「将軍の趣味ですか」
「そう、将軍がログハウスを気に入って」
 その結果なのでした。
「ログハウスになったの」
「そういうことですね」
 ナターシャはドロシーの言葉に頷きました、そしてです。
 カルロスがです、ドロシーに言いました。
「それじゃあ今から」
「将軍にお話してね」
「はい、そうして」
 そのうえでというのです。
「ボタン=ブライトが起きる様なお菓子を」
「頂きましょう」
「事情をお話してですね」
「ええ、そうよ」
 このことは忘れてはいけませんでした、何事も事情をお話してからです。
 そうしたことをお話してからです、皆でお家の扉を叩きますと。
 若い背が高いですがいささか頼りない感じの人が来ました。着ている服はマンチキンのもので帽子もブーツも青です。
 その青い服の人がです、ドロシーと教授を見て言いました。
「おや、ドロシーさんに教授」
「お久しぶり」
 ドロシーが笑顔でその人に応えます、享受も帽子を脱いで一礼します。
「お元気そうね」
「有り難うございます、それで今日のご用は」
「将軍はいるかしら」
「女房ですね」
「ええ、今はどちらに」
「女房なら畑にいますよ」
 そこだというのです。
「そこでキャラメルを採ってます」
「あそこね」
「はい、そうなんですよ。私はお家の中で靴を作ってまして」
 それで今はお家の中にいたというのです。
「それで女房は」
「それじゃあ今から畑に行っていいかしら」
「はい、どうぞ」
 この人、将軍のご主人は笑顔で言うのでした。
「女房に用があるのでしたら」
「それじゃあね」
 こうしてでした、ドロシー達はお家の畑に行きました。畑はとても広くて果樹園もあります。その果樹園にです。
 将軍がいました、青い作業服を着た背の高い女の人です。ブロンドの髪を長く伸ばし後ろで束ねています。目は青く気の強い感じでお顔立ちはかなり整っています。
 その人にです、ドロシーが声をかけました。
「あの、将軍」
「あら、ドロシー王女」
 将軍はドロシーを見て言うのでした。
「今回はマンチキンを旅してるのね」
「そうなの、ちょっと用事があってね」
「用事?ムシノスケ享受もいて」
 将軍は一行を見ました、見ればです。
 教授にトト、五人の子供達もいます。その恵梨香達も見て言うのでした。
「その娘達は確か」
「ええ、オズの国に時々来るね」
「王女達のお友達ね」
「そうなの」
 そうだとです、ドロシーは将軍に五人を紹介しました。
「この子達もね」
「そうだったわね。一回オズの国で会っていたかしら」
 将軍は恵梨香達を見て言うのでした。
「そんな気がするけれど」
「そういえばそうでしたっけ」
 カルロスもこう将軍に返します。
「将軍とは一度」
「そんな気がするわね」
「将軍は時々エメラルドの都に来られますよね」
「ええ、時々だけれどね」
 実際に都に来ることもあるというのです。
「うちの旦那と一緒に遊びに行ってるわ」
「それで、でしょうか」
「会ってるかもね」
「そうですよね、ひょっとしたら」
「あんた達も今ではオズの国の名士だしね」
「あっ、そうだったんですか」
「オズマ姫のお友達としてね」 
 オズの国全ての国家元首である彼女のお友達ともなればです、オズの国ではそうなるのです。
「有名人よ」
「そうだったんですね」
「ええ、それでだけれど」
 将軍はカルロスとお話してからです、あらためて。
 ムシノスケ教授にお顔を向けてです、教授に尋ねました。
「教授がいらしてるってことは学問のことかしら」
「そう思うのだね」
「教授と言えば学問だからね」
 それでだというのです。
「そう思ったけれど違うのかしら」
「今回は学問ではなく」
「あら、違う事情なの」
「左様、ボタン=ブライトのことで」
「あの子また迷子になったのね」
「いやいや、保護はしているのです」
 教授は将軍にこのこともお話しました。
「我が王立大学で」
「それはよかったわね」
「ただ。起きなくて」
 ドロシーが困った顔で将軍にこのことをお話しました。
「それで困ってるの」
「あの子起きない時は起きないからね」
 将軍もこのことはよく知っています、ボタン=ブライトもオズの国では有名人でその迷子になることも起きないことも有名だからです。
「だからなのね」
「そうなの、それでどうして起きてもらうかっていうの話になってね」
 それは、というのです。
「ここに来たの」
「私のお菓子で」
「そう、好きなものを枕元に置いて」
 そうしてだというのです。
「そのうえでね」
「その匂いで起こすのね」
「北風と太陽ならね」
「太陽の方がいいわよね」
「そう、だから」
 それでだというのです。
「将軍にお菓子を頂きたいのだけれど」
「事情はわかったわ、それならね」
「お菓子持って行っていいかしら」
「好きなものを好きなだけ持って行って」
 将軍は笑顔でドロシーに答えました。
「キャラメルでもどれでもね」
「そうしていいのね」
「うちのお菓子は何時でも誰でも食べていいから」
 将軍は笑顔のままでした。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、何でもどれだけでも持って行って」
 またこう言うのでした。
「遠慮なくね」
「有り難う、それじゃあね」
「ボタン=ブライトにあげる分だけじゃなくてね」
「っていうと?」
「折角来てくれたから」
 それならというのでした。
「あんた達もどう?」
「お菓子を食べていいのね」
「さっき遠慮なくって言ったよね」
 だからだというのです。
「食べて行ってよ」
「ふむ。それでは」
 教授は将軍の言葉を聞いてです、恵梨香達に顔を向けて彼女達に尋ねました。
「君達はどうかな」
「本当にいいんですか?」
 恵梨香は申し訳なさそうに教授、そして将軍に尋ねました。そのお話を聞いて。
「何かいきなり来てそれでもですから」
「言ったわね、遠慮は無用って」
 将軍はその恵梨香ににこりと笑って言うのでした、彼女にも。
「誰でもね」
「それじゃあ」
「じゃあ僕達も」
「そうだね」
 ジョージと神宝も言います。
「将軍の申し出をね」
「受けさせてもらおう」
「そうね」
 ナターシャも言うのでした。
「じゃあお言葉に甘えて」
「お茶もコーヒーもあるわよ」 
 飲みものもと言うのです。
「何も遠慮はいらないからね」
「それじゃあ」
「宜しくお願いします」
 カルロスも将軍に言います。
「将軍のお家のお菓子を」
「じゃあ旦那も呼んでね」
 将軍はご主人のことも忘れていませんでした。
「皆で楽しく飲んで食べようね」
「あそこの席ね」
 丁渡皆のすぐ傍に木の椅子とテーブルがありました、重厚な青い樫の木で出来ています。
「あそこに皆が座って」
「あの席はね」
 どうかと言う将軍です。
「旦那が作ったのよ」
「将軍のご主人が」
「ええ、そうなの」
「ご主人器用なんですね」
「そう、木のものならね」
 それならというのです。
「何でも作ってくれるのよ」
「そうなんですね」
「丈夫でしかも座りやすくて」
 その席のこともお話する将軍でした。
「いい席よ」
「そうですか、じゃあ」
「さて、旦那は」
「お家の中にいるから」
 トトが言ってきました。
「僕が今から呼んで来るね」
「そうしてくれるんだね」
「うん、ちょっと待って」
 こう言ってでした、そのうえで。
 トトはドロシーと一緒にお家に行ってです、ご主人を呼びに行きました、そのうえで。
 皆はその間にです、お菓子と飲みものを用意しました。テーブルの上にです。
 そのお菓子を用意しながらです、カルロスは喉をごくりと鳴らして言いました。その目の前にある色々なお菓子を見てです。
「凄く美味しそうだね」
「ええ、そうよね」 
 恵梨香がそのカルロスに応えます。
「どのお菓子もね」
「キャラメルもシュークリームも」
「チョコレートもどれもね」
「物凄くいい匂いで」
「美味しそうだね」
「何か今にもね」
「ちょっと気を緩めるとね」
 それでだというのです。
「ついつい手が伸びてね」
「手に取ってしまいそうね」
「これは凄い誘惑だよ」
 カルロスは今にもそれに負けてしまいそうです。
「将軍のお菓子は」
「そうでしょ、これが私のお菓子よ」
 将軍はその今にも手を出しそうになっている子供達に笑顔で言うのでした、子供達も享受も食べる用意を進めています。
「美味しくない筈がないわよ」
「そうなんですね」
「けれどね」
「今はですね」
 恵梨香が言います。
「食べることはですね」
「旦那と王女さん達が来てからよ」
「そうですね、お菓子を食べることは」
「そう、だからね」 
 それでだというのです。
「今は我慢してね」
「わかりました」
「そう、少しだけだからね」
 我慢することはです。
「旦那と王女さん達がもうすぐ来るから」
「あっ、確かに」
「来ました」 
 ここでジョージと神宝が言いました、二人の顔の方にです。 
 ドロシーとトトがいてです、ご主人もいます。将軍はまずご主人を見てにこりと笑って場にいる皆に言いました。
「うちの旦那はいいわよ」
「どんな人ですか?」
「優しくてよく気がついてくれてね」
 そうしてというのです。
「物凄くいい人なのよ」
「そういう感じですね」
「そう、だから愛してるのよ」
「ご主人を」
 恵梨香もそのご主人を見つつ将軍に応えるのでした。
「そうなんですね」
「あんた達もね」
 この言葉は五人全員に言った言葉です。
「結婚するならいい人を見付けなさいよ」
「そうした人と結婚してですね」
「幸せになるのよ、私みたいにね」
「いい人と結婚すればですね」
「幸せになるのよ」
 是非にというのです。
「わかったわね」
「はい、わかりました」
 恵梨香だけでなく他の子達も応えます、将軍の言葉に。
「そうさせてもらいます」
「僕達も」
「まあね、私も結婚する前はね」
 どうだったかといいますと、その時の将軍は。
「やんちゃだったけれどね」
「ははは、あの時は大変だったよ」
 教授がコーヒーの用意をしつつ教授に笑顔で応えます。
「将軍の反乱はね」
「あの時はオズの国を征服してお菓子を好きなだけ食べたかったのよ」
 家事をせずにです。
「そう思っていたのよ」
「そうだったね、君達は」
「けれど今ではね」
「家事も農作業もしていて」
「頑張って働いてるわよ」
 農家の主婦としてです。
「そうしたら余計に食べるものが美味しくなって太らないか心配な位よ」
「太ることがですね」
「だからそれには気をつけてるわよ」
 カルロスにも言うのでした。
「今もね」
「そうなんですか」
「そう、だから身体をふんだんに動かす様にしてるの」
「動いて食べてですね」
「さらに動くのよ」
 それが今の将軍の生活だというのです。
「そうしてるのよ」
「何か楽しそうですね」
「ええ、毎日が楽しいわよ」
 その生活に満足しているという返事でした。
「よく動いてよく食べて」
「そうなんですね」
「太ることを気にしていてもね」
「それならですね」
「そう、余計に動くから」
 食べる分以上にというのです。
「動いてその分食べてね」
「そしてそれ以上にですね」
 カルロスも言います。
「そうするんですね」
「そうしたらお菓子も沢山出来て」
「余計にいいんですね」
「いいことをするとそれは一つでは終わらないの」
「さらにいいことが起こるんですね」
「そう、それがどんどん回っていってね」
「物凄くいいことになるんですね」
 カルロスは将軍がお話したいことがここでわかりました。
「そういうことですね」
「逆もあるけれどね」
「悪いことをするとですね」
「悪いことが起こりますね」
「例えばハンモックでだらだらと寝ながらね」
 そうしながら、というのです。
「ジュースを飲んでいたらお行儀が悪いでしょ」
「はい」
「実は座って飲む方が美味しいし」
 ジュースもというのです。
「それに溢しやすいわね」
「寝たまま飲んでいると」
「特にハンモックだとね」
 バランスが悪いからです、ハンモックで寝ることは確かに気持ちがいいのですがそこに寝ながらジュースを飲むことはです。
「よくないから」
「だからですね」
「そして溢して服を汚したら」
「余計に悪いですね」
「そうしたことになるから」
「悪いことはしないことですね」
「そこからまた悪いことが次から次に起こっていくのよ」
 このこともこの世の摂理の一つでした。
「それならいいことをした方がいいわね」
「そうですね」
「さて、それではね」
「今からですね」
「旦那も来たし」
 それならばというのです。
「皆で食べて飲みましょう」
「わかりました」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆で将軍のお家で作っているお菓子や飲みものを楽しむのでした、カルロスは将軍の果樹園に実っていた青いシュークリームを食べて言いました。
「とても美味しいです」
「そうでしょ」
「はい、とても甘くて」
「しかもその甘さがよね」
「癖がないです」
 だから余計にというのです。
「美味しいです」
「そうよね」
「将軍が育てたお菓子ですよね」
「オズの国のね」
「そしてマンチキンの国にあるから」
「青くて」
 それにというのです。
「この甘さなのよ」
「癖のない甘さですね」
「あっさりとしたね」
「マンチキンのシュークリームはこうなんですか」
「大体ね。ただね」
「ただ?」
「同じマンチキンのシュークリームでも場所によるわ」
 作る場所によるというのです。
「味が違って来るのよ」
「そこは僕達の世界と一緒ですね」
「そうそう、カンサスでもね」
 ドロシーは青いチョコレートを食べています、どのチョコレートも小さい摘める位の大きさでハート型になっています。
 そのチョコレートを食べながらです、ドロシーは彼女の故郷のお話をするのでした。
「作物は場所によってね」
「味が違ったんですね」
「そうなの、もっと言えばアメリカの中でもね」
「作る場所によってですね」
「同じ麦でもね」
 大麦でも小麦でもです。
「味が違っていたわ」
「そういうことですね」
「だからね」
 それで、というのです。
「オズの国でもそうなのよ」
「同じシュークリームでも」
「青い色でもね」
「味は違うんですね」
「そうなのよ」
「そして作る人によっても」
 将軍の旦那さんも言ってきました、旦那さんはパイを食べています。このパイも将軍と旦那さんの果樹園で実っていたものです。
「味が変わるんだよ」
「じゃあこのお菓子が美味しいのは」
「うちの女房のお陰だよ」
 何につけても、というのです。
「うちの女房は畑も果樹も上手にやっていくからね」
「味もですね」
「よくなるんだ」
「いい腕がいい味を作るんですね」
「そうだよ」
 まさにそうなるというのです。
「それは他のことでもだよね」
「そうですね、サッカーでも」
 カルロスは自分が大好きなこのスポーツを引き合いに出しました。
「上手な人は凄いプレイをします」
「そういうことだよ」
「学問もですな」
 教授はチョコレートを食べた後でお茶を飲みつつ述べました、紅茶の味ですがその色は綺麗なコバルトブルーです。
「よい学者が書いた論文はよいものです」
「教授のお仕事ですね」
「左様、これでも毎日書いておりますぞ」
 教授は旦那さんに笑顔で答えました。
「本を読み論文を書く」
「それが学者のお仕事であり」
「よい学者の論文はです」
「よいものになるんですね」
「よい農民がよい作物を作ることと同じです」
「それではうちの妻は」
「よい農家の方です」
 そうだというのです、まさに。
「奥方にとって天職だと思います」
「農家の主婦はいいものよ」
 将軍自身も満足している顔で言うのでした、そのお菓子と飲みものを心から楽しみ旦那さんをいとしげな目で見ながら。
「早寝早起きで身体を動かせて」
「美味しいものも食べて飲めて」
「そしてね」
 そうしてというのです。
「優しい旦那さんもいてくれて」
「僕はね、正直なところ」
 旦那さんが仰るには。
「一人でいてどうしようかって思ってたんだ」
「結婚相手はですか」
「見付からなかったんだ」
 そうだったとです、旦那さんは恵梨香にお話します。
「それでずっと独身かなって思っていたけれど」
「反乱が終わって国に戻ってだったのよ」
 将軍もお話します。
「私がね」
「そこでふと出会ってね」
「そうしてだったのよ」
「後はとんとん拍子に進んで」
「結婚したのよ」
「いや、よかったよ」 
 心から言うご主人でした。
「ジンジャーと結婚出来て」
「私もよ、後はね」
「子供が出来たら」
「言うことなしね」
「子供は天からの授かりものですぞ」
 教授は子供のことについてはいつもよりも真面目になって言いました。
「望んでもです」
「はい、そうしてもですね」
「得られるとは限らないわね」
「そうしたものでありますから」
 だからだというのです。
「待たれることです」
「待っていればですね」
「やがては」
「授かりますので」
 そうなるからだというのです。
「お二人は暫し待たれるが宜しいかと」
「はい、そうですね」
「それしかないわね」
「そういうことですので」
「ううん、子供というと」
 ナターシャは青い苺のジャムを舐めつつ紅茶を飲みながらです、こんなことを言いました。
「私達にはまだ」
「よくわからないよね」
「どういうものか」
 ジョージと神宝も言います。
「どうにもね」
「そのことは」
「そのうちわかるよ」
 教授も言います。
「君達にも」
「そのうちですね」
「やがては」
「学問は学ぶに相応しい歳があるのだよ」
 教授は五人にこのこともお話するのでした。
「君達はまだ小学生だね」
「はい、五年生です」
「ドロシーさん達よりも年下です」
「そう、その年齢に相応しい勉強なり学問なりがあるのだよ」
 それ故にというのです。
「だからだよ」
「だからですか」
「子供のことも」
「もう少ししてからになるね」
 ここは大人としてお話する教授でした。
「だから待っていてくれ給え」
「そうですか、それじゃあ」
「そうさせてもらいます」
 ジョージと神宝が頷きます、そうしてなのでした。
 五人は今は将軍と旦那さんが作ってくれたお菓子と飲みものを心から楽しみました、そうしてその楽しい時間が終わってからです。 
 カルロスがです、皆に言いました。
「それじゃあ」
「ええ、後はね」
 恵梨香がそのカルロスに応えます。
「ボタン=ブライトにどのお菓子を持って行くかよね」
「全部持って行くといいわ」
 こう言ったのは将軍でした。
「私の家で作ったお菓子の全部の種類をね」
「シュークリームもパイもですね」
「キャラメルもチョコレートも」
「たっぷりと持って行ってね」
 将軍は量についても言ってくれました。
「後はね」
「後は?」
「飲みものはね」
 こちらのことも忘れていない将軍でした。
「そっちは水筒あるかしら」
「ええ、持ってるわ」
 ここでドロシーがにこりと笑ってでした、そうして水筒を出して来てです。
 そのうえで、です。将軍に言うのでした。
「これね」
「ああ、王女さんが持ってたのね」
「そう、だからね」
「飲みものの心配はいらないわね」
「後ね」
 ここでさらにです、ドロシーはバスケットボックスも出して来ました。そうして将軍にあらためて言うのでした。
「お菓子はここに入れるから」
「相変わらずもの持ちがいいわね、王女さんは」
「いつも旅行してるから」
 それでなのです、ドロシーは。
「持ってるの」
「そういうことね」
「それじゃあね」
「ええ、その水筒とバスケットボックスに入れてね」
「持って行くわ」
「お菓子は」
 ここで恵梨香が言うことはといいますと。
 大きな黒地に唐草模様の布を出してです、こう言うのでした。
「これに入れるつもりでしたけれど」
「それ何なの?」
 トトは恵梨香が出して手に持っているその大きな布を見て尋ねました。
「物凄く大きいけれど」
「風呂敷っていうの」
「風呂敷?」
「日本にある布で」
 それでというのです。
「この中に入れて包んでものを運ぶのよ」
「お菓子もなんだ」
「そう、食べものとかもね」
 包んで運ぶとです、恵梨香はトトにお話しました。
「そうするものだけれど」
「ドロシーがバスケットボックス持ってるからね」
 だからなのでした。
「あのバスケットボックスには幾らでも入るからね」
「この風呂敷の出番はないわね」
「そうなるね、けれど」
「けれど?」
「面白いね、布に包んで持ち運びするなんて」
「日本独自だと思うわ」
「日本って前から面白い国だと思っていたけれど」
 それでもだというのです。
「そうしたものもあるなんてね」
「面白いっていうのね」
「かなりね」
「それでね」
 だからだというのです。
「僕もその風呂敷欲しいね」
「トトもなの」
「前足で包んで」
 そうしてです。
「首に巻いて運ぶんだよ」
「荷物は背中の方に置いてね」
「そうすればいいから」
「だから欲しいのね」
「僕もね、そう思えてきたよ」
 トトもだというのです。
「便利そうだしお洒落だしね」
「お洒落かしら」
「僕はそう思うよ」
 その風呂敷が、というのです。
「日本って趣があってね」
「ううん、 田舎臭いかもって思うけれど」
「そうかな、田舎臭くなんかないよ」
「だったらいいけれど」
「日本のものはお洒落だよ」
 とてもだというのです。
「その風呂敷もね」
「田舎臭くないのね」
「また言うけれどお洒落だよ」
「これまでそうは思わなかったけれど」
「僕から見ればそうだよ」
「そこはそれぞれなのね」
 見る人によってです、トトは犬でもその感性は同じでした。
「そういうことなのね、風呂敷にしても」
「そうだよ、それで風呂敷だけれど」
「オズの国に戻ったらね」
 その時にとです、ドロシーがトトにお話します。
「私が作ってあげるわね」
「ドロシーがなんだ」
「そう、トトの大きさなら」
 それならというのです。
「大きなハンカチでいいわね」
「それ位のものでだね」
「そう、それで充分だから」
「それでなの」
「そう、オズの国に戻ったらね」
 その時にというのです。
「トトに風呂敷作ってあげるわね」
「うん、お願いするよ」
「私も風呂敷はいいと思うわ」
 ドロシーも言うのでした、恵梨香はもうその風呂敷を畳みなおして収めてです、そうしてもう表に出してはいませんが。
「お洒落よ」
「ドロシーさんもそう思いますか」
「ええ、風呂敷はね」
「そうですか、それじゃあ」
「私も欲しくなったわ」
「風呂敷を」
「とてもね」
 ドロシーもこう思うのでした、、トトと一緒に。
 そうしてなのでした、この風呂敷のことをお話してからです。
 そうしてでした、一行はです。
 皆になのでした、将軍にお別れを告げるのでした。飲みものもお菓子も全部ドロシーの水筒とバスケットボックスに入れてです。
 ドロしーがです、将軍に言いました。
「それじゃあね」
「ええ、またね」
「またここに来た時はね」
「楽しもうね」
 将軍もドロシーに応えて笑顔で挨拶をします、お隣には旦那さんがいます。
「その時も」
「ええ、その時もね」
「その時にはまたご馳走するから」
「私もよ。エメラルドの都に来てくれた時はね」
「その時はね」
「ご馳走させてもらうから」
 美味しい食べものに飲みもので、です。
「楽しみにしていてね」
「そうさせてもらうわね、私も」
「じゃあまた」
「ええ、会いましょう」
 二人でお話してでした、そのうえで。
 一行は将軍と旦那さんの二人と別れました、そしてなのでした。
 大学に戻ります、カルロスはそのドロシーを見て言いました。
「あの、水筒はバスケットボックスの中ですよね」
「そうよ」
 ドロシーはカルロスに笑顔で答えました。
「この中に全部入ってるのよ」
「お菓子もですね」
「だから安心してね」
「いえ、持ってることじゃなくて」
 カルロスがここで言うことはといいますと。
「重くないですか?」
「このバスケットボックスが?」
「はい、お菓子が沢山入っていて」
「ジュースも入ってて」
「それで重くないですか?」
「いえ、全然よ」
 重くないというのです。
「心配しなくていいわ」
「そうなんですか」
「このバスケットボックスは何でも沢山入ってね」
 そしてというのです。
「それでなのよ」
「重さもですか」
「感じさせてくれないの」
「魔法のバスケットボックスなんですね」
「魔法使いさんが私に作ってくれたの」
 あのオズの魔法使いです、かつてオズの国の主であり今はオズの国の素晴らしい魔法使いになっています。
 その人がです、古い友人であるドロシーに作ってくれたのが彼女が今左手に持っているそのバスケットボックスだというのです。
「だからね」
「重くなくて」
「そう、簡単に運べるからね」
「よくこうした時は」
「こうした時?」
「女の人がものを持つよりも」
 それよりもというのです。
「男の人が持つべきだって言いますから」
「レディーファーストね」
「よかったら僕が」
「あの、僕も」
「宜しければ」
 ジョージと神宝も言います。
「かさばる様でしたら」
「持ちますけれど」
「僕達が順番で」
「いいわよ」
 ドロシーは三人にです、笑顔でこう返しました。
「だって全然重くないから」
「だからですか」
「いいんですか」
「ええ、それにかさばる様でしたら」
 それならというのでした。
「小さくしてポケットにも入れられるし」
「それで、なんですか」
「そう、気にしなくていいわ」
 レディーファーストでなくともというのです。
「それに私そうした気を気を使ってもらうことはね」
「そうしたことはなんですね」
「私の場合はいいから」
「自分のものはですか」
「そう、自分で持つから」 
 だからだというのです。
「気にしなくていいわ」
「ドロシーさんがそう仰るのなら」
「ええ、そういうことでね」
「わかりました」
 カルロス達は納得しました、それならとです。
 こうしてドロシーがバスケットボックスを持つことになりました、、ボタン=ブライトの枕元に置くべきお菓子やジュースを入れたそれを。
 そうしてでした、一行は大学へ戻る道を進みます。その道中です。
 教授は大学の方を見てです、こんなことも言いました。
「あと少しだけれど」
「何かがですね」
「ここはオズの国だからね」 
 だからだとカルロスに答えるのでした。
「何かがあることもね」
「頭の中に入れておいてですね」
「そうして帰ろう」
「例え何があっても驚かない」
「そう、それが大事だからね」
 それ故にというのです。
「若し想定していないと」
「その何かが起こった時に慌ててですね」
「解決出来ることも解決出来ないからね」
「だからこそですね」
「用心してね」
 そうしてというのでした。
「帰ろう」
「そういうことですね」
「さて、大学に帰ったら」 
 そうしたことも頭の中に入れたうえで、です。
「ボタン=ブライトを起こそう」
「ええ、その為に将軍のところに行ったしね」
 だからこそとドロシーが応えます。
「そうして起きて」
「皆でお菓子を食べるんですね」
「そのつもりよ」
 まさにとです、ドロシーはカルロスに笑顔で答えました。
「そうしましょう、皆でね」
「わかりました」
 カルロスは大学に戻って皆でお菓子を食べることを楽しみにするのでした、それは他の四人もドロシー達も同じでした。
 そうして皆で将軍のお家から大学まで戻るのでした。



将軍からのお誘いでドロシーたちもお菓子を食べれる事に。
美姫 「それにしても、畑や木にお菓子がなるなんてね」
おやつまで自給自足が可能とは。
美姫 「それでも育て方で味が変わるってのは面白いわね」
確かにな。ともあれ、お菓子を貰う事も出来たし。
美姫 「後は大学へと戻って起こすだけね」
さて、どうなるのかな。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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