『オズのムシノスケ』




               第六幕  象と猪

 一行は朝御飯を食べてから大学を出ることにしました。その時にです。教授は五人にこんなことを言いました。
「一ついいかな」
「はい、何ですか?」
「うん、将軍のお家までは近いけれど」
「それでもですか」
「旅だからね」
 それでだというのです。
「決して一人にならないでね」
「危ないからですね」
「旅先で一人になること程危ないことはないよ」
「そうですね、オズの国にしても」
「色々ありますからね」
「そうだよ、カリダだっているし」
 あの猛獣もです。
「他にも危険があるからね」
「死なないにしても」
「それでも」
「危険はあるんだよ」
 死にはしなくともです。
「だから決して一人にならないこと、いいね」
「わかりました、じゃあ」
「将軍のお家に着くまでも」
 五人は教授の言葉に頷きました、そうしてです。
 皆で将軍のお家に向かいます、青い世界の中を。
 その中で、です。トトが皆に言いました。
「将軍のお家に着いたらね」
「うん、そこでだよね」
「将軍に事情をお話して」
「それからお菓子を貰おうね」
 そうしようというのです。
「ボタン=ブライトの大好きなそれを」
「お菓子はクッキーとかキャラメルだよね」
 カルロスが尋ねます。
「そうしたものだよね」
「そうだよ、将軍のお家にあるのはね」
「そうしたものを貰って」
「将軍のお家にはお菓子が一杯あるんだ」
「栽培しているからだね」
「クッキーやキャラメルの木があってね」
 オズの国ではお菓子は木に実ります、果物と同じく。
「それを貰ってね」
「ボタン=ブライトの枕元に置けば」
「あの子も絶対に起きるよ」
「それじゃあ早く行こう」
「そうしようね」 
 トトは尻尾を横にぱたぱたと振りつつ言います、その中で。
 教授もです、皆と一緒に歩きつつ言いました。
「何かあればね」
「トラブルがですね」
「そう、それがあればね」
 ジョージに答えます。
「どうするかが問題だけれど」
「教授とドロシーさんがおられますから」
 ジョージは安心している笑顔で教授のその言葉に返しました。
「大丈夫ですよ、トトもいるし」
「いやいや、この国のトラブルは凄いじゃないか」
「ううん、そういえば」
「ドロシー嬢も私もこれまで数多くのトラブルに遭ってきたけれどね」
「そのどれもがですね」
「強烈なものばかりだったからね」
「今回の旅もですか」
「何かあるかも知れないからね」 
 だからだというのです。
「その時はね」
「オズマがいてくれているから」
 ドロシーが笑顔で皆に言います。
「オズマの助けを借りることになるわ」
「オズマ姫ですね、そういえば」
 神宝がドロシーに応えて言うのでした。
「オズマ姫は毎日三時に鏡でオズの国のあらゆることを見ているんでしたね」
「勿論私のこともね」
「だから僕達で手に負えない事態があると」
「オズマが助けてくれるからね」
「そしてオズの国の人達が来てくれるんですね」
「私達や教授だけでは貴方達をどうにか出来ない場合はね」 
 ドロシーはトトも見ながら五人にお話します。
「その時はオズマが助けてくれるわ」
「そうしてくれますね」
「必ずね。いざという時はね」
 だからだというのです。
「安心してね」
「一人か二人で駄目なら」
 ナターシャも言います。
「皆で、ですね」
「三人寄ればともいうわね」
「はい」
 このこともその通りでした。
「そうですね」
「そう、だからね」
「いざという時は」
「皆がいるから安心してね。ただね」
 ここでドロシーはこうも言いました、五人に。
「私達が必死にやれば出来る場合はね」
「そうした時はですね」
「私はオズマの助けを借りないわよ」
「私もだよ」
 教授も微笑んで言います。
「まずは自分で出来る限りすることだよ」
「人を頼らないということですね」
 恵梨香はそのドロシーと教授を見てこの言葉を出しました。
「そういうことですね」
「そうよ、人を頼ってばかりだとね」
「駄目だからね」
 それでだというのです。
「私達は出来る限りはね」
「自分達で物事を解決していくよ」
「いいわね、そのことは」
「しっかりとね」
 こうお話してでした、皆でドロシーのところに向かいます、そうして歩いているうちに黄色い煉瓦の道に出ました。ですが。
 その煉瓦のところにです、一匹の大きな青い像が寝ていました。カルロスはその象を見て首を傾げさせたうえで教授に尋ねました。
「あの、象は」
「オズの国にもいるよ」
「そうなんですね」
「他にも動物は色々いるよ」
「オズの国には象もいたんですか」
「君達の世界にいる大抵の動物がいるよ」
「そうなんですね」
 カルロスは教授の説明を聞いて納得しました。
「だから象がいても」
「オズの国では普通だよ」
「そうなんですね」
「この象は君達の世界で言うアフリカゾウだね」
 教授は象の種類についてもお話します。
「マンチキンにいるから青いんだ」
「じゃあギリキンにいれば」
「うん、紫になるよ」
「紫の象ですか」
「フラミンゴもいるがね」
 例えとして鳥も出すのでした、あのピンク色の鳥です。
「その鳥もね」
「マンチキンだと青ですね」
「その通りだよ」
「動物も全部青なのは知っていましたけれど」
「青い象を実際にその目で見てだね」
「少し驚きました」
 そうだというのです。
「どうにも」
「そうなんだね。しかし」
「どうしてこの象さんがここにいるかですね」
「そのことだよ。おおい象君」
 教授は今も道の上に寝ている象に声をかけました。
「何故そこで寝ているんだい?」
「誰かな」
「私はムシノスケというのだがね」
「ああ、王立大学の学長さんの」
「ほう、私のことを知っているのだね」
「オズの国で貴方を知らない人はいないよ」
 こう言いながらです、象はゆっくりと目を開けてです。そのうえで教授達に顔を向けて言葉を返してきました。
「ドロシーさんもいるね」
「私のことも知ってるの」
「だから。オズの国ではね」
「私達のことをなの」
「知らない人はいないよ」
 だから象も知っているというのです。
「僕にしてもね」
「そうなのね」
「そうだよ。あと僕がどうしてここにいるかだね」
「そう、それはどうしてだい?」
「さっき草をお腹一杯食べたんだ」
 象の食べものをというのです。
「他にも野生の果物を一杯ね」
「それでお腹一杯になってなのね」
「眠くなってね」
 それで、というのです。
「ここで横になって寝ているんだ」
「そうなのね」
「邪魔になるかな」
 象はこうも言いました。
「ここで寝ていたら」
「うん、そうなるね」
 その通りだとです、教授は象に答えました。
「君は今道の上に寝ているからね」
「それもそうだね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「寝るのはいいけれど」
「道をどいて」
「そうして寝るといいね」
「わかったよ。それじゃあね」
 象も教授の言葉に頷いてでした、そのうえで。
 のっそりと起き上がって道からどきました、そしてその横にまた寝転がってそこでなのでした。
 寝ようとします、そうしながら教授達に言いました。
「ここでならいいよね」
「うん、道でないとね」
「草原で寝てもね」
「そう、道でないからね」
 人の往来する場所でないからだというのです。
「寝ても構わないよ」
「それじゃあね」
「うん。ただ君は」
「僕は?」
「お腹一杯食べたというけれど」
「かなり食べたよ」
 象は満足している声で答えました。
「草も果物もね」
「野生の果物をだね」
「この近くに林檎や梨の森があってね」
「そこで食べたのだね」
「お腹一杯ね」
 またこう言う象でした。
「満足してるよ、とてもね」
「そうか、それじゃあ」
 教授はここまで聞いて言いました。
「我々もそこに行って」
「そうしてですね」
 カルロスが教授に応えます。
「僕達も林檎や梨を食べるんですね」
「そうしよう、果物をお昼御飯のデザートにしよう」
「テーブル掛けは今も持って来てるわよ」
 ドロシーはこれを忘れていませんでした。
「だからこれでお昼御飯を出してね」
「デザートをですね」
「そう、林檎や梨にしましょう」
「わかりました、それじゃあ」
 カルロスも他の子達も教授達の言葉に頷いてでした、そうして教授は象にあらためてその森の場所を尋ねました。
「その森は何処かな」
「あっちに少し行ってね」
「おや、その方角は」
 教授は象が鼻で指し示した方を見て言いました。
「丁渡私達が行く方だよ」
「じゃあ余計に都合がいいね」
「貴方達にとってそうみたいだね」
「そうだね、ではね」
「そちらに向かうついでにだね」
「森に寄らせてもらうよ」
「そっちに行ってね」
 さらにお話する象でした。
「右手にあるから」
「森の特徴はあるかな」
「近くに行けば凄く美味そうな匂いがするからすぐにわかるよ」
「林檎や梨のだね」
「そう、それですぐにわかるからね」
 林檎や梨の香りでだというのです。
「そこに行けばいいよ」
「それではそうさせてもらうよ」
「さて、僕はね」
 象は教授に説明を終えてから大きく欠伸をして言いました。とても大きなお口です。
「たっぷりと寝てね」
「それからどうするんだい?」
「森に戻ってね」
「そうしてだね」
「そこでまた美味しいものを食べて寝るよ」
 そうするというのです。
「そうするよ」
「左様ですか」
「そうだよ、それじゃあね」
「また機会があれば会おうね」
「それではね」
 こうお話をしてでした、そうして。
 皆でなのでした、象とお別れの挨拶をしてまずはその森に向かいました。その途中でカルロスはしみじみとして言いました。
「ちょっとものぐさでしたけれどいい象さんでしたね」
「そうよね」
 恵梨香がカルロスに応えます。
「道の上で寝ていたのは非常識かもって思ったけれど」
「それでもね」
「いい象さんだったね」
「親切に教えてくれたから」
「森にも行けて」
 そして、というのです。
「林檎や梨も食べられるね」
「そうなるわね」
「林檎はね」
 ここでこうも言ったカルロスでした。
「僕の大好物の一つだからね」
「カルロスって果物だと何でも好きよね」
「うん、そしてその中でもね」
「林檎はね」
 とりわけというのです。
「好きなものの一つだよ」
「他に好きな果物は?」
「バナナだね」
 これも大好きなのです、カルロスは。
「あれも好きだよ」
「バナナね」
「オズの国のバナナって黄色だけとは限らないけれど」 
 ウィンキーでは黄色です、ですが他の国では違います。
「それでもね」
「オズの国のバナナも好きなのね」
「大好きだよ、バナナもいいよね」
「私もバナナは好きよ。けれどね」
「けれど?」
「多分カルロス程好きじゃないわ」
 バナナもというのです。
「他の果物についてもね」
「それだけ僕が果物好きだってことかな」
「ええ」
 その通りだというのです。
「カルロスって本当に果物好きだから」
「朝昼晩いつも食べたい位だよ」
「おやつにもよね」
「果物は甘くてね」
 しかもというのです。
「栄養もあるから」
「だから大好きなのね」
「果物を食べていたら幸せになれるよ」
「カルロスが?」
「いや、皆がだよ」
 それこそ誰もがというのです。
「幸せになれるよ」
「果物を食べれば」
「そう、沢山食べればね」
「美味しいものをたっぷり食べるということだから」
「そう、それでね」
 だからだというのです。
「果物を沢山食べれば幸せになれるんだよ」
「カルロスって好きな食べものが多いのね」
 少しくすりと笑ってです、ドロシーは彼と恵梨香のやり取りを聞いてこうしたことを言いました。
「シェラスコも好きで」
「カレーも好きで」
「果物も好きなのね」
「本当に僕食べることが好きで」
「だからなのね」
「果物も大好きなんです」
「嫌いなものはないのかしら」
「特にないです」
 ドロシーに笑顔で答えました。
「何でも好きです」
「それはいいことね」
「ただ、味は美味しいものに限りますけれど」
「オズの国で美味しくないものはあったの?」
「なかったです」 
 これまでの旅の中で、です。
「一度も」
「それは何よりね」
「はい。ですが」
「ですが?」
「イギリスは違いまして」
 ここでカルロスは少し苦笑いになりました、そのうえでの言葉でした。
「あそこは美味しくないです」
「イギリスはなの」
「そうなんです、殆どの食べものが」
「美味しくないのね」
「少なくとも僕の口には合いませんでした」
 そのイギリスの料理はというのです。
「ティーセットについても」
「イギリスの定番よね」
「はい、紅茶と」
「紅茶もなの」
「日本やオズの国の方が」
 オズの国では紅茶も青や黄色だったりします、お国によって。
「美味しいんです」
「そうなのね」
「何かイギリスのお水がよくなくて」
「それでお茶もなの」
「日本やオズの国で飲む方が」
 美味しいことをです、カルロスは強くお話します。
「このこと前にもお話したと思いますけれど」
「そういえばそうだったかしら」
「ミルクティーにしましても」 
 イギリスではこちらの紅茶です、ですがオズの国はアメリカの影響を受けますので紅茶はレモンティーです。
「こっちの方がいいですね」
「ミルクティーね」
「ドロシーさんはレモンティー派ですよね」
「コーヒーでないとね」
 紅茶を飲む時は、というのです。
「そちらよ」
「そうですよね」
「最近ミルクティーも時々飲むけれど」
「そのミルクティーもなんです」
 日本やオズの国のものの方が美味しいというのです。
「僕にしましたら」
「だからイギリスのお料理なのね」
「あまり食べたくありません」
「そうなのね」
「オズの国は何でも美味しいですけれど」
「前よりも美味しくなったのよ」
 オズの国の食べものはというのです。
「遥かにね」
「オズの国の味も変わるんですね」
「かなり変わったわ」
 ドロシーが最初に来た時よりもです。
「料理のメニューも増えたし」
「相当にですね」
「ええ、和食も中華もなくて」
 それにです。
「パスタもなかったわ、ボルシチもね」
「本当に何もなかったんですね」
「そうだったのよ、それが変わったのよ」
「ドロシーさんが最初に来られた時よりも」
「お陰で私も食べる楽しみが増えたわ」
「ただ食べるだけじゃなくなったんですね」
「ええ、多くの種類の美味しいものをね」
 食べられる様になって楽しめる様になったというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「日本のお料理なんてね」
 それこそ、というのです。
「なかったら、カンサスには」
「アメリカにも最近まではね」
 今のアメリカ人のジョージの言葉です。
「和食はなかったんだ」
「最近食べられる様になったの」
「僕のお父さんとお母さんが若い頃からだね」
 大体それ位からだというのです、アメリカで和食が食べられる様になったのは。
「中華料理は昔からあったけれど」
「チャイナタウンがあったからね」
 今度は中国人の神宝が言います、チャイナタウンといえば中華街だからです。
「それでだね」
「うん、けれど中華料理も昔はね」
「ええ、カンサスにはなかったから」
 少なくともドロシーが行ける範囲にはです。
「それに中華街では食べられても」
「アメリカ全体ではだったんですね」
 カルロスがドロシーに尋ねました。
「食べられていなくて。オズの国でも」
「アメリカ全体で和食や中華料理を食べられる様になったのは案外新しいみたいね」
 ドロシーも言います。
「本当にアメリカの食文化も変わったわ」
「二十世紀と二十一世紀でも」 
 また言うジョージでした。
「一世紀の違いがあれば」
「随分変わるわね」
「本当にそうですね」
「オズの国のお料理は本当に変わったわ」
「色々なお料理を食べられる様になって」
「ええ、バーベキューだって食べるし」
 これもアメリカ料理です。
「スペアリブもマッシュポテトもあって」
「ハンバーガーにホットドッグも」
「それも最近よ」
 オズの国で食べられる様になったのは、です。
「そうなったのよ」
「そういえばハンバーガーも」
「比較的新しい食べものよね」
「そうでしたね」
 ジョージはドロシーの言葉に頷きました。
「そうした食べものも」
「それが本当に変わったの」
「中華料理も沢山食べられる様になったんですね」
 神宝も言いました、しみじみと。
「アメリカでも」
「それがそのままオズの国に出て」
「色々食べられる様になったんですね」
「そうなのよ、チャイナタウンだけでなく中国系の人もアメリカ全体に広まって」
「それで中華料理も一杯食べられる様になって」
「オズの国でもなのよ」
「そしてね」
 教授もお話します。
「オズの国の人も変わったよ」
「オズの国の人も?」
 ナターシャが目を瞬かせてそれで教授に尋ねました。
「っていいますと」
「オズの国では色々な人がいるね」
「はい」
「そしてそれぞれの人の目の色や肌の色の人がいるね」
「白人だけじゃないですね」
 ナターシャは具体敵な人種のこともお話に出しました。
「アジア系や黒人の人も多いですね」
「うん、そうだね」
「そこもですか」
「昔のオズの国は白人が殆どだったんだ」
「そこも変わったんですね」
「私の様なバッタもいたりかかしさんや木樵さんがいたけれどね」 
 人間という種族に当てはまる人達はといいますと。
「人間は白人が殆どだったんだ」
「そこも変わって」
「アジア系や黒人の人も増えたよ」
「そこもアメリカの影響を受けているんですね」
「そうだよ」
 まさにその通りだというのです。
「だからそうなったんだよ」
「オズの国の人口も増えて」
「色々な人種の人がいるんだよ」
「ううん、オズの国も変わるんですね」
「何事も変わっていくものだよ」
 教授はそうしたことを見ているお顔でこうナターシャに言うのでした、皆で黄色い煉瓦の道からその森のところに向かいつつ。
「オズの国もね」
「そうなんですね」
「広くもなったしね」
「大陸全体がですね」
「そう、死の砂漠が大陸の岸辺まで至ってね」
 それで狐の国やスクーグラーの国までオズの国まで入ったのです。
「そうなったんだよ」
「そうですね」
「ただ。海水浴を出来る場所もあるからね」
 死の砂漠に覆われていてもです。
「そこは楽しめるよ」
「海水浴ですか」
「君達もよかったら楽しめるよ」
「水泳もスポーツですしね」
「水泳は最も身体を動かすスポーツの一つだよ」
 教授はこう言って水泳というスポーツも肯定します。
「あれはいいものだよ」
「確かに。機会があれば」
「一緒に泳ごうね」
「はい、その時は」
「リンキティンク王の国にもね」
 あの国にもなのでした。
「あの王様にもお会いしてね」
「リンキティンク王ですね」
「あの人も面白い人だしね」
「そして大陸の周りには」
 オズの大陸だけではないのです、その周りも色々とあるのです。
「色々な島がありますね」
「そういえばそうだったね」
 カルロスはナターシャの言葉に応えます。
「そしてその島達にもね」
「沢山の人達がいるのよ」
 ドロシーがカルロスに答えます。
「そうですよね」
「ええ、そうよ」
「じゃあそうした国にも」
「機会があれば一緒に行きましょう」
「そうしましょう。さて」
 ここまでお話してなのでした、一行はその林檎や梨の森に来ました。見ればコバルトブルーの綺麗な林檎や梨が一杯あります。
 その果物達を見てです、カルロスは喉をごくりと鳴らして言いました。
「美味しそうですね」
「もう青い林檎でも驚かないね」
「はい、慣れてきますと」
 どうかとです、カルロスは目を輝かせて果物達を見つつ教授に答えます。
「美味しく思えてきます」
「それはこの果物達が美味しいと知っているからだよ」
「実際に食べてですね」
「そうだよ、私もね」
 教授もでした、その果物達を見ています。
「これからが楽しみだよ」
「この林檎や梨達を食べることが」
「美味しいからね」
「青い林檎や梨達を」
「実はどの色でも美味しいのだよ」
「オズの国にある果物は」
「うん、そうなんだよ」
 その通りだというのです。
「色は違えどね」
「味はですね」
「そう、最高にね」
 美味しいというのです。
「ではこれからね」
「はい、お昼を食べましょう」
「そうしよう」
 こうお話してでした、皆でお昼を食べてです。
 それからです、その林檎や梨達を食べます。一個一個果物からもいでそのうえで。
 カルロスはまずは林檎を食べました、そして言うことは。
「思った通り」
「美味しいね」
「はい、とても」
 こう言うのでした、教授に。
「幾らでも食べられます」
「そうだね、美味しくてね」
「本当にオズの国は何でも美味しいですね」
「しかも何処にも豊富にあってね」
「食べることには困らないです」
「だから旅に出てもね」
 今の一行の様にです。
「食べることには困らないよ」
「そうなんですね」
「そうだよ、飲むことについてもね」
「そういえばこれまでの旅も」
 カルロスもしみじみとして言います、林檎の味を楽しみながら。
「食べることには困らなかったです」
「そうだね」
「それも全く」
「この国は本当にいい国だよ」 
 教授は梨から食べています、そうしながら言うのでした。
「食べることにも飲むことにも困らないし素晴らしい人達ばかりで」
「何にも困らないですね」
「うん、そうだよ」
「危険があっても」
「死ぬこともないしね」
 この心配もないのです、オズの国は。
「そうした国だからね」
「楽しめるんですね」
「そうだよ、ではこれを食べたら」
「次はですね」
「ジンジャー将軍のお家に行こう」
 そこにというのです。
「そしてね」
「将軍とお話をして」
「お菓子をもらってね」
「そのお菓子で、ですね」
「ボタン=ブライトを起こそう」
 そうしようというのです。
「是非ね」
「予定通り」
「うん、予定通りね」
「何かすぐにお話が終わりそうですね」
「いやいや、それがね」
「そうはいかないですか」
「物事は予定通りに進むとは限らないからね」
 このことはオズの国でも同じです、予定通りに何もかもが進むということはないのです。
「それでだよ」
「将軍のお家に着くまでに」
「何かがあることはね」
「そのことはですね」
「頭に入れておこう」
「私の旅はね」
 ドロシーも言います、林檎を食べながら。
「本当にいつもね」
「トラブルが起こるんですね」
「予定通りにいったことはないわ」
「そういえば前のモジャボロさんとカドリングに行った時も」
 カルロスはその時のことを思い出しました、オズマのパーティーに色々な人達を招待する為に招待状を届けるあの旅のことです。
「結構色々ありましたね」
「予定通りにいかなかったわね」
「そうえばそうですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「今回もね」
「何かあることはですね」
「頭の中に入れておきましょう」
「そうですね、それじゃあ」
「さて、ではね」
 それではと言う教授でした、今度は林檎を食べつつ。
「そうしたことも頭に入れて」
「トラブルがあっても戸惑わないことですね」
「それで我を失ったら駄目だよ」
 それで終わるからというのです。
「何があっても惑わない、いいね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 カルロスだけでなく他の子達もです、そうしてです。
 皆で果物も楽しんで、です。皆で一緒になのでした。
 将軍のお家に向かいます、すると教授の言葉通りです。物事は予定通りにはいきませんでした。
 煉瓦の道の上にです、今度は。
 猪が寝ていました、青い猪がです。教授はその猪を見てからそのうえで五人の子供達に顔を向けてこう言いました。
「ほらね」
「象さんみたいですね」
「また道の上で寝ているんですね」
「そうだね、このまま素通りしてもいいけれど」
 それでもというのです。
「このまま放っておくのもよくないよ」
「道ですからね」
 それでとです、カルロスは教授に答えました。
「誰かが通りますから」
「この猪君は象君よりも小さいけれど」
「それでもですね」
「往来の邪魔にはなるよ」
 それで問題だというのです。
「どうしてもね」
「そうですね。ですから」
「何とかしないと駄目ですね」
「うん、そうだよ」
 その通りだというのです。
「今回もね」
「さっきはですね」
 カロロスは象のことも思い出しつつ言いました。
「声をかけて起きてもらってでしたね」
「そうだったね」
「はい、ですから」
「そうだね、まずはね」
「声をかけてですね」
「起きてもらってね、寝ている理由を聞こう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 教授は猪にも声をかけました。
「おい猪君」
「・・・・・・・・・」
 返事はありません。目を閉じて寝息を立てて寝ています。教授はその猪に対して再び声をかけました。一度で駄目ならと。
「起きてくれるかな」
「・・・・・・・・・」
 やはり起きません、三度目もかけましたが。
 それでもでした、やはり猪は起きません。それで教授はこう言いました。
「ふむ。ボタン=ブライトと同じだね」
「起きないですね」
「眠り草の影響でもない様だし」
「じゃあ象さんと一緒で」
「満腹になったのか何かでね」
 それで、というのです。
「寝ているみたいだね」
「そうですね」
「それではね」
「無理に起こすよりも」
「やり方を考えよう、北風と太陽のね」
「太陽ですね」
「それでいこう。だからね」
 それでだというのです、そして。
 教授はドロシーにお顔を向けてです、こう言いました。
「美味しいものを沢山出してくれるかな」
「ご馳走をなの」
「そう、それをこの猪君の顔の前に持って来てね」
「そうしてなのね」
「起きてもらおう」
 そうしようというのです。
「ここはね」
「わかったわ、じゃあ猪の好きなものをね」
「猪の好きなものは芋だよ」
 それだというのです。
「それを出そう」
「うん、それじゃあね」
 こうしてでした、ドロシーはテーブル掛けを懐から出して地面に置いて拡げてです、そこに沢山のお芋を出しました。
 それを寝ている猪の顔のすぐ傍に置くとでした。
 猪はゆっくりと目を開けました、そうしてこう言いました。
「美味しい匂いがするね」
「ああ、起きたね」
「あれっ、教授?」
 猪は教授のお顔を見て言いました。
「お会いしたのははじめてだったかな」
「うむ、その様だね」
「またこんな場所で会うなんてね」
 奇遇だというのです。
「いや、思いも寄らないよ」
「私もだよ。ところで君は何故ここで寝ているんだい?」
「ああ、僕寝ていたんだ」
「ここは道だからね」
 教授は象に言ったことを猪にも言います。
「寝るのなら道以外の場所で寝てくれるかな」
「そうだね、その方がいいね」
「その通りだよ。芋は君にあげるとして」
 その山の様にあるジャガイモのことも言うのでした。
「とにかくね」
「まずはここからどいて」
「そうしてくれるかな」
「わかったよ。 僕もここで寝るよりもね」
 道の上で寝るよりもというのです。
「草の上で寝る方がいいからね」
「ではね」
「そっちに移って」
 こう言ってでした、実際にです。
 猪はのっそりと起き上がってでした、そのうえで。
 まずは道からどきました、芋は皆が持ってです。猪がまた寝そべったその顔の近くに置きました、そうしてです。
 教授は猪にです、あらためて尋ねました。
「君は何故道の上で寝ていたのかな」
「うん、実はね」
「実は?」
「最近あまり寝ていなくて」
 それでだというのです。
「というか寝ていなかったんだ」
「どうして寝ていなかったんだい?」
「遊びに熱中していたんだ」
「それでだったのかい」
「うん、ずっと寝ていなくて遊んでいる最中に」
「寝てしまったんだね」
「道の上でね」
 それで道の上に寝ていたというのです。
「お散歩をして遊んでいる最中にね」
「そうだったのか」
「そうなんだ、最近色々な遊びを楽しんでいて」
「寝ていなかったのか」
「夜も昼も。それこそ食べるか飲む時以外は全部遊んでいたから」
 だからだというのです。
「寝ていなかったからね」
「やれやれだ。それはよくないよ」
「遊んでばかりだと?」
「そう、遊ぶこともいいけれど」
 それでもだというのです。
「寝ることも忘れたら駄目だよ」
「そのこともだね」
「さもないとね」
「僕みたいにだね」
「そう、何時か急に寝てしまってね」
 そしてとです、教授はその猪にお話します。
「皆に迷惑をかけてしまうからね」
「寝るべき場所で寝てしまって」
「そうなってしまうからだよ」
「だからだね」
「遊ぶことに熱中するのと一緒に」
 それと共にというのです。
「寝ないとね」
「そのこともだね」
「気を使わないといけないんだ」
「ううん、そうなんだ」
「そう、君は猪だから」
 このことも重要でした。
「寝ないといけないからね」
「かかしさんや木樵さんと違ってだね」
「あの人達は別なんだ」
 寝なくてもいいというのです。
「身体の仕組みが違うからね」
「そういうことなんだ。それじゃあ」
「これからは寝ることだよ」
「ちゃんと」
「よく遊んでよく寝る」
 この二つがあってこそ、教授は猪にこうも言いました。
「この二つのことはね」
「両立してこそだね」
「いいんだ、ではいいね」
「わかったよ、僕これからは寝るよ」
 ちゃんと、というのです。
「寝てそしてね」
「遊ぶのだよ」
「わかったよ、それではね」
 猪は教授に答えてでした、そうして。
 ドロシー達から貰ったジャガイモを全部食べてです、再びのっそりと起き上がってから皆に対して言いました。
「じゃあこれから僕の休むところに行って」
「そしてだね」
「寝るよ」
 教授にも答えます。
「そうするよ」
「それじゃあね」
「うん、じゃあね」
 こうして猪は一行の前から去りました、その猪を見送ってからです。教授は子供達に対してあらためてお話しました。
「この通りね」
「何があるかわからない」
「そういうことですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「今回は小さなことだったけれどね」
「本当に何があるかわからないから」
「それで、ですね」
「何があっても戸惑わない」
 絶対にというのです。
「それが大事なんだよ」
「そうですね、じゃあ」
「これからも」
「オズの国は何かがいつも起こる国だからね」
 余計にというのです。
「おそらく君達の世界よりもね」
「ですね。僕達の世界と本当に違います」
「何もかもが」
「そのことを頭に入れて」
 そしてなのでした。
「いよいよだよ」
「将軍のお家に」
「今から」
「あと少しよ」
 ドロシーも皆に言います。
「あと少しで将軍のお家でだからね」
「前に進もうね」
 トトも五人に声をかけます、そうしてなのでした。
 一行はまた歩きはじめました、将軍のお家はすぐそこに迫っていました。



今回の旅はちょっとしたトラブルにあったけれど。
美姫 「まあ、トラブルというか、寝ている動物たちね」
まあな。すぐに起きてくれたしな。
美姫 「ええ、特に大きなトラブルでもなかったわね」
将軍に家ももうすぐみたいだし。
美姫 「後はすんなりとお菓子が貰えるのかという事と、帰り道よね」
だな。教授やドロシーが口にしたように何かが起こるかもしれないしな。
美姫 「どうなるのか気になる所ね」
ああ。次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る