『オズのムシノスケ』




                 第四幕  大学の中を

 一行は教授の学長室にも入りました、そのうえでこの立派なお部屋も隅から隅まで探しました。ですが。
 ここに彼はいませんでした、手掛かりもありません、それでカルロスが自分達と一緒に探している教授にこう言いました。
「とりあえずお部屋の中にはですね」
「うん、いないね」
 教授もこカルロスにこう答えます。
「どうやら」
「そうみたいですね」
「それではね」
 教授は天井を見上げて言いました。
「今から」
「天井裏に入って」
「そこを探そう」
「天井裏ですから」
 カルロスは天井裏ということから考えられることを言いました。
「やっぱり」
「埃だらけで汚れているというのだね」
「それに鼠やゴキブリがいて」
「いやいや、天井裏は綺麗だよ」
 そのカルロスにです、教授は答えました。
「大学の他の場所と一緒でね」
「お掃除してるんですか」
「そうだよ、天井裏もね」
「そうなんですか」
「月に一度程度だけれどね」
 他の場所よりも掃除をする頻度は少ないけれど、というのです。
「ちゃんと掃除してるからね」
「綺麗なんですね」
「つい三日前にもお掃除したばかりだよ」
「じゃあ大丈夫ですね」
「うん、だからね」
 それでだというのです。
「中に入っても汚くはないよ」
「わかりました、それじゃあ」
 カルロスは教授の言葉に頷いてでした、そうして。
 お部屋の中を見回してです、こうしたことを言いました。
「じゃあ今から脚立を出して」
「その脚立を使ってだね」
「はい、天井の隅を開けて」
 そうして、というのです。
「中に入ります」
「そうするといいよ、ではね」
「はい、それじゃあ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 カルロスは脚立を探しました、するとドロシーがすぐにその脚立を持って来ました。結構高くしっかりとした造りの青い脚立です。
 その脚立を持って来て、です。ドロシーはカルロスに言いました。
「お部屋の隅にあったわよ」
「有り難うございます、じゃあこれを使って」
「ええ、天井の隅を開けてね」
「今から天井裏に入ります」
「貴方だけで行くのかしら」
 ここで、です。ドロシーはカルロスにこのことを尋ねました。
「そうするのかしら」
「あっ、それは」
 そう尋ねられるとです、カルロスはそこまで考えてはいませんでした。それでドロシーにどう答えようか困っていますと。
 教授がです、こう言いました。
「ここは皆で行こう」
「皆で、ですか」
「実は天井裏は広いんだ」
 その天井を今も見上げて言う教授でした。
「だから一人か二人で探してもですね」
「彼は見つけにくいですか」
「そう、それに私達は友達で今回の搜索のパーティーだから」
 パーティー故にとも言うのです。
「あまり別れたらよくないよ」
「パーティーは別れたら駄目なんですね」
「必要に応じて別行動を取ることはあってもね」
 基本は、というのです。
「そうあるべきだからね」
「だからですね」
「ここもね」
 天井裏を探すこともだというのです。
「一緒に行こう」
「わかりました、それじゃあ」
「さて、それではね」
 皆で行くことを決めるとです、教授は。
 その手に懐中電灯を幾つも出してです、皆にそれぞfれ手渡してそのうえであらためて言いました。
「これを持って行こう」
「天井裏は暗いですからね」
「暗いより明るい方が見つけやすいからね」
 だからだというのです。
「ここはね」
「これで照らしながら」
「ボタン=ブライトを探そう」
「わかりました、それじゃあ」
「さて、ここにいればいいがね」
 教授は皆と一緒に脚立を天井の隅に持って行きながら言いました。
「いなければまた別の場所に行こう」
「そうですね、それじゃあ」
「まずはここを」
 皆でお話しながらでした、そのうえで。
 天井の隅を開けてまずは教授と男の子達が天井裏に入りました。次にドロシーと女の子がです。トトはドロシーがまず両手に掴んで持ち上げて天井裏に入れました。
 そうして皆で天井裏の捜索に入りました。懐中電灯を点けたところでトトが皆にこんなことを言ってきました。
「ボタン=ブライトの匂いが結構するよ、ここは」
「じゃあここにいるのかな」
「ボタン=ブライトが」
 ジョージと神宝はトトのその言葉を聞いて言いました。
「この天井裏に」
「果たして」
「ううん、そこまではわからないけれど」
 それでもと言うトトでした。
「匂いが強いことはね」
「確かなんだ」
「そうなんだ」
「うん、決行するよ」
「それならまずは懐中電灯を点けたし」
 それでだというのでした、教授は。
「皆で探そう」
「わかりました、じゃあ」
「今から」
 ジョージと神宝が応えてでした、皆で。 
 天井裏の隅から隅まで照らしながらです、ボタン=ブライトを探しました。トトもドロシーの足元でお鼻をくんくんとさせながら捜します。
 ですが。七人とトトはです。
 天井裏にボタン=ブライトを見付けられまんでした、そこの隅から隅まで丁寧に探しましたがそれでもです。
 彼は起きても寝てもどっちでもその場にいませんでした。それでナターシャがこう皆に言いました。
「ここにはいないみたいね」
「そうね、かなり捜したけれど」
 恵梨香がナターシャに答えます。
「残念だけれど」
「他の場所に行きましょう」
「ええ、それじゃあね」
「あっ、待って」
 ですがここで、です。不意に。
 カルロスが片隅を懐中電灯で照らしながらです、こう言いました。
「ここに何かあるよ」
「あれっ、これは」
 カルロスの懐中電灯が照らす先を見てです、ドロシーは思わず声をあげてしまいました。
「スカーフだわ」
「そうですね、これは」
 見れば赤いスカーフです、カルロスも言います。
 そしてカルロスがそのスカーフのところに行って手に取ってそのうえで皆のところに戻るとです、教授が言いました。
「それはセーラー服のスカーフだね」
「セーラー服の、っていいますと」
「うん、トト君いいかな」
「匂いを嗅いでだね」
「それで確かめてくれるかな」
 トトにも言うのでした。
「そうしてくれるかな」
「うん、いいよ」
「それではね」
 こうお話してでした、トトはその赤いスカーフの匂いを嗅ぎました。そのうえで皆に対してはっきりとした声で答えました。
「間違いないよ」
「ボタン=ブライトのものだね」
「彼の匂いが凄くするよ」
「そう、それではね」
「うん、彼のね」
 まさにというのです。
「スカーフだよ」
「では彼はここに来ていたんだ」
 そのことは間違いないとです、教授は言いました。
「こんなところによく入っていたものだと思うけれど」
「寝るのにいい場所だからですか?」
 ジョージが首を傾げさせつつ教授に尋ねました。
「彼がここにいたのは」
「確かに静かで涼しいからね」
「だからいたんですね」
「うん、ただ」
「ただ?」
「何時どうして忍び込んだのかな」
 教授はこのことを不思議に思うのでした。
「一体」
「確かに。そのことがですね」
 どうもとです、神宝も言います。
「気になりますね」
「全くだよ、ただ」
「ただ?」
「彼がここにいたことは間違いないよ」
 そのことはというのです。
「この天井裏にね」
「そうですね、そのことは」
「そしてね」
 そうしてだというのです。
「彼は今はいない」
「他の場所にいますね」
「では次の場所に行こう」
「はい、わかりました」
 こうお話してした、そのうえで。
 一行はスカーフを持ってそのうえで天井裏を出ました、それからです。
 校舎の中を隅から隅まで捜しました、ですが校舎の中には誰もいませんでした。それでなのでした。
 教授はです、皆に考えるお顔で言いました。
「さて、ではね」
「次はですね」
「何処を捜すかですね」
「皆がよく行く場所にはね」
 そうした場所にはというのです。
「彼がいたら」
「すぐに見つかりますね」
 ナターシャが教授に答えます。
「そうですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「学生の人達がよくいる様な場所はね」
「捜さなくていいですね」
「人があまり入らない場所を捜そう」
 大学のそうした場所をです。
「ここはね」
「じゃあ何処か」
「グラウンドやプール、講堂や教室はね」
 そうした場所はというのです。
「特にいいよ」
「人が多いから」
「若し部外者である彼がいればね」
「見付けてですね」
「そして話は終わるよ」
「では」
「そう、それではね」
 教授は皆に何処を捜すかということをお話するのでした、そうして。
 実際にそうした場所を捜していくのでした、その中で。
 一行は大学の中の皆がいる場所は避けるのでした、その人気がない場所は何処になるかろいいますと。
 教授はです、こうした場所もないと言いました。
「シャワールームやお風呂場、寮の大抵の場所やおトイレ、更衣室はね」
「人が出入りしますから」
「見付かるからですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「そうした場所には行かないでね」
「行くとすれば」
 カルロスが教授に尋ねます。
「どうした場所がいいでしょうか」
「そうだね、倉庫とかね」
「倉庫ですか」
「倉庫はそうそう人が入らないからね」
「ボタン=ブライトがいても」
「見つかりにくいからね」
 だからだというのです。
「そうした場所を捜そう」
「わかりました、それじゃあ」
「倉庫といっても多いけれど」
 この大学の倉庫はです。
「そうした場所も捜そう」
「倉庫もですね」
「そこも」
「そう、それにね」
 それに加えてだというのです。
「倉庫といっても鍵をかけていてもね、彼は」
「ボタン=ブライトは鍵をかけている場所でもね」
 そうした場所でもだというのです、ドロシーが言うには。
「入られるのよ」
「それはどうしてなんですか?」
 恵梨香がそのドロシーに尋ねます。
「鍵をかけていない場所にも入られるのは」
「あの娘は手に触れただけで鍵を開けられてね」
「それは凄いですね」
「そして中に入ってね」 
 そうしてだというのです。
「閉められるのよ」
「だからどんな倉庫にも」
「そう、入られるのよ」
 そぷだというのです。
「だからどの倉庫にもいてもおかしくないわ」
「ううん、凄いですね」
「しかも天井裏のことだけれどね」
 教授も言います。
「彼は何時どうしてそこに入ったのかね」
「わからないということもですね」
「そう、あるからね」
「何かと色々あるんですね」
「彼はね、まあ何故天井裏に行ったかは」 
 教授はそのことについては真剣に考える顔で述べました。
「彼に会ったら詳しく聞くよ」
「その時にですね」
「うん、そうするよ」
 こう言うのでした。
「その時にね」
「そうですか、そのことは」
「とにかくね」
 教授は言葉を続けます。
「まずは彼を捜そう」
「この大学の人気のない場所を」
「そう、捜していこう」
 こうお話してなのでした、教授は皆をそうした場所に案内しました。そうしてまずは倉庫の一つを捜しましたが。
 そこには彼はいませんでした、そして。
 今回はボタンもスカーフもありませんでした、彼の匂いもです。
「しないよ」
「ここには最初からいなかったね」
 教授はトトの言葉を聞いて言いました。
「残念だけれど」
「そうみたいだね」
「わかった、それではね」
 教授は皆に言います。
「別の場所に行こう」
「すぐにですね」
 カルロスが教授に尋ねます。
「そうするんですね」
「うん、いないのなら仕方がないよ」
 今ここにこれ以上いてもというのです。
「別の場所に行こう」
「それじゃあ」
 こうして別の場所に行こう一行でした、そして。
 そのうえで、です。皆で。
 今度は酒倉に入りました、ワインが一杯置かれていますがそこにもでした。
 何の手掛かりも匂いもありません、ワインの匂いがするだけでトトは教授に対してこんなことを言うのでした。
「ボタン=ブライトの匂いがしなくてもね」
「ワインの匂いだね」
「それが強いから」
 だからだというのです。
「僕は苦手だよ」
「匂いで酔うからだね」
「僕お酒には弱いんだ」
 トトだけでなく犬自体がです。
「だからね」
「それではね」
「うん、ここはね」
「すぐに出よう」
 こうお話してでした、一行も酒倉はすぐに出ました。そしてその出る中で、です。教授は皆にトトとお話したことについて言いました。
「犬にはお酒は駄目なんだよ」
「弱いんですか」
「そうなんですか」
「そう、君達もだけれど」
 子供である五人もというのです。
「お酒は駄目だよ」
「お酒を飲むのは日本では二十歳からですね」
 恵梨香が言います。
「大人になってから」
「そうだよ」
「ロシアは皆結構飲んでますけれど」
 ナターシャは自分のお国のことをお話しました。
「それは」
「あまりよくないよ」
「そうなんですね、やっぱり」
「そう、お酒はね」
 それはというのです。
「子供にもよくないよ」
「そうなんですね」
「そう、それにね」
 教授はナターシャにもお話します。
「大人でも飲み過ぎたらね」
「よくないんですね」
「そう、よくないから」
 だからだというのです。
「君達も大人になったら注意してね」
「私はお酒を飲んだことがないの」
 ドロシーはにこりと笑ってこう皆に言いました。
「オズマも他の娘達もね」
「それはボタン=ブライトもですね」
 カルロスは今彼等が捜しているその子の名前を出しました。
「ずっと子供だから」
「そう、だからジュースは飲むけれどね」
 それでもだというのです。
「お酒は飲まないの」
「そうなんですね」
「飲めないと言ってもいいけれど」
 それでもというのです。
「どちらにしてもね」
「お酒はですね」
「私には関係ないわ」
「そうなんですね」
「どんな味かも知らないの」 
 そうしたこともというのです。
「だからトトにもあげたことはないのよ」
「僕っも飲んだことはないよ」
 トトも言います。
「だから匂いにもね」
「弱いんだね」
「そうなんだ」
 トトはカルロスの問いに答えました。
「犬自体がね」
「成程、じゃあ僕も犬を飼うと」
「お酒はあげないでね」
 それは絶対にというのです。
「そのことは注意してね」
「うん、わかったよ」
「そのことはお願いするよ」
 カルロスに強くお願いするのでした。
「さもないと大変なことにもなるから」
「君達にとって」
「だからね。とにかく彼は酒倉にもいなかったから」
 だからだというのです。
「別の場所に行こう」
「そう、次に行く場所は」
 何処かとです、教授が言う場所は。
「森かな」
「大学の森ですね」
「その茂みとかにね」
 そうした場所がです、次に行く場所だというのです。
「行こう、そしてね」
「そこで、ですね」
「彼がいれば渡そう」
 ボタンと、です。スカーフも出して言う教授でした。
「この二つを」
「彼もなくして困っているでしょうし」
「そうしよう、では次は森に行こう」
「わかりました、ただ」
「ただ?」
「今日は天気がいいですから」
 ふとです、カルロスは閃いて言うのでした。
「明るい場所で日向ぼっこをしながとか」
「うん、言われてみればね」
 教授もカルロスのその言葉に応えます。
「ありますね」
「うん、だからね」
 それでだというのです。
「森に行く前に日当たりがよくて」 
「そのうえで人があまり来ない場所にですね」
「行こう」
 そうしようというのです。
「例えば校舎の貯水タンクの上とかね」
「そうした場所はね」
 そうした場所はとです、ドロシーも言います。
「あの子がいそうな場所の一つね」
「それじゃあ」
「ちょっと行ってみましょう」
「そこで見付かればいいですね」
 カルロスがドロシーに応えます。
「それで」
「そうね、そうなればね」
「じゃあまずは」
「後はね」
 ここで、です。ドロシーはここもと言いました。
「もう一つ行きたいところがあるわ」
「それは何処ですか?」
「塔よ」
 そこだというのです。
「あの子のことだから塔にいるかも知れないわ」
「その一番上にですね」
「そう、いるかも知れないから」
 その可能性もあるからというのです。
「あそこにも行ってみましょう」
「それがいいね」
 教授もドロシーのその言葉に頷いて同意を示します。
「では貯水タンクのところも捜して」
「そして次にね」
「塔に登ろう。それに塔だと」
 教授は皆に言いました。
「そこから大学中が見渡せるからね」
「だからですね」
「そう、それでね」
 こうお話するのでした。
「彼を捜そう」
「ボタン=ブライトを」
「一つ一つの場所を見て回るよりもね」
「上から見渡せばですね」
「見付けやすいからね」
 それでだというのです。
「ではいいね」
「はい、わかりました」
 五人が教授に答えてでした、まずは。
 貯水タンクのところを捜しましたがです、それでも。
 彼はいませんでした、それで。
 教授はあらためてです、皆に言いました。
「では今から行こう」
「はい、塔に」
「あそこに」
「そしてね」
「あそこからですね」
「ボタン=ブライトを捜しましょう」
「より早く気付くべきだったね」
 教授はここで後悔も感じました。
「まずは塔に登ってね」
「そうして捜すことですね」
「最初にすべきだったっていうんですね」
「うん、まあ塔は大学中を見渡せるが」
 それでもというのでした。
「校舎の中は見られないからね」
「だからそれは仕方ないんじゃないかしら」
 ドロシーが教授に言います。
「それは」
「最初に塔に登らなかったことが」
「そう、今気付いてもね」
 それもというのです。
「遅くないし」
「いいのかね」
「人はすぐに気付かなくてもね」
 それでもというのです。
「気付くべき時に気付けばいいじゃない」
「最初でなくてもいいと」
「私はそう思うけれどどうかしら」
「ドロシー嬢らしい考えだね」
「そう言ってくれるのね」
「そう、そしてその通りかも知れないね」
 こうも言うのでした。
「気付くべき時に気付けば」
「それでいいわね」
「そういうことだね。ではね」
「皆で塔に行きましょう」
 ドロシーは教授とトト、それにカルロス達に言いました。そうして皆で。
 一緒に塔大学で一番高いその塔に登りました、その途中の階段にも一番上のお部屋にもボタン=bルアイトはいませんでした。
 ですがそこからです、大学中を見回しますと。
 カルロスがです、森のある場所を指差して皆に言いました。
「あれっ、あそこに」
「彼がいたのかい?」
「あれじゃないんですか?」
 こう教授にも答えます。
「白い服で」
「むっ、確かに」
 教授もです、上から森のカルロスが指差す場所を見て気付きました、そこにです。
 森の木々の間にです、白いものが見えます。青い木々の中ですので白い色がとりわけ目立っています。
 それで、です。教授も言いました。
「あれはね」
「若しかしますね」
「うん、若しかするよ」
 実際にというのです。
「あれが彼かも知れないよ」
「ボタン=ブライトですね」
「そうか、あそこなら」
「すぐにあそこに行きますか?」
「うん、行こう」
 是非にというのです。
「すぐにね」
「それでは」
「ただ」
「ただ?」
「あそこに行く前にお昼を食べよう」
 ここでこう提案するのでした。
「ここはね」
「あっ、そういえば」
 カルロスも気付きました、教授の今の言葉で。
「もういい時間ですね」
「そうだね、お昼は出来るだけね」
「その時間にですね」
「決まった時間に食べるべきものだからね」
 それでだというのです。
「今から食べよう」
「わかりました」
 カルロスも他の皆もです、教授のその言葉に頷きました。そしてドロシーがトトを腕の中に抱きながら言いました。
「今日のお昼は何を食べようかしら」
「学生諸君と一緒に食べないかい?」
 教授はドロシーに提案しました。
「ここは」
「学生の人達となの」
「そう、大食堂に行って」
 そのうえでだというのです。
「そうしてね」
「あそこで、ですね」
「皆で食べよう、そして」
「そして?」
「お腹を満腹にさせよう」
 こう言うのでした。
「皆でね」
「そうね、皆でね」
「今日の大学の食堂ではね」 
 そこではといいますと。
「今日はカレーフェスタをやるんだ」
「あっ、カレーですか」
「カレーライスですか」
「そう、それをするからね」
 だからだとです、教授は五人に笑顔でお話します、
「カレーを楽しんでね」
「わかりました」
「それじゃあカレーを」
「カレーはいい料理だよ」
 何故いいかといいますと。
「美味しくてあらゆる栄養を補給出来るからね」
「お肉にお野菜が一杯入っているから」
「だからですね」
「そう、だからいいんだよ」
 それが教授がカレーがいいお料理だと言う理由でした。
「私も野菜カレーを食べるよ」
「夏野菜カレーとかどうですか?」
 恵梨香はその教授に言いました。
「茄子やトマトが入った」
「むっ、それはいい提案だね」
「そうですよね、夏野菜カレーも」
「あれもまた美味しいからね」
「そして栄養があるから」
「そうしよう」
 こうお話してでした、皆で大学の食堂に行ってカレーを食べるのでした。教授達は一緒のテーブルに着いて学生の人達と気さくに挨拶をしながらカレーを食べます。その夏野菜カレーを食べる教授を見てでした。
 カルロスは少し不思議そうなお顔になりました、そのうえで教授に尋ねました。
「あの、いいですか?」
「何かな」
「はい、教授はこの大学の学長さんですね」
「その通りだよ、オズマ姫に直々に任命されたね」
「そうですよね、けれど」
「専用の席がなく、というんだね」
「それに専用のお料理とかも」
 ないというのです。
「ありませんね」
「そういうことは好きじゃないのだよ」
 教授はこうカルロスに答えました。
「だからだよ」
「それでなんですね」
「うん、学長だからといってもね」
「特別な席やお料理はですか」
「私は学者でしかないんだよ」
 教授はこのことには誇りを以て言いました。
「博学にしてもね」
「それでもですね」
「君達とも学生の諸君ともどう違うのかな」
「バッタですよね」
「そう、学者であるバッタだよ」
 それが教授だというのです。
「そうでしかないからね」
「皆と同じだから」
「そう、何も変わらないから」
 それ故にというのです。
「こうしてね」
「皆と一緒にですね」
「座って食べてるんだよ」
「毎日ですか」
「その通り、もしも」
「もしも?」
「一人で食べるとするよ」
 それならばとです、教授は仮定してお話します。
「学長だから特別な席で特別なものを」
「はい」
「そうして美味しいのかは」
「そのことはですね」
「私は美味しいとは思わないのだよ」
「皆と一緒に食べてこそですね」
「そう、同じ場所で同じものをね」
 そうしてこそというのです。
「私は肉や魚を食べられないがね」
「お野菜や草でもですね」
「そう、飲むものもね」
 こちらもでした。
「皆と同じものでないと」
「成程、だからですか」
「そういうことだよ。この夏野菜カレーにしても」
 恵梨香のアドバイスで食べているこれもだというのです。
「美味しいよ、皆と一緒だから余計にね」
「一人で食べるより」
「ずっとですね」
「うん、最高だよ」
 こうも言うのでした。
「楽しく食べているよ」
「だからですか」
「お昼はこうして食べているんだ」
 食堂で、というのです。
「それではね」
「はい、それじゃあ」
「食べ終わってから」
「森に行こう」
 白いものが見えたそこにというのです。
「そうしよう」
「まずは食べて」
「それから」
「そう、そうしてね」
 そのうえでだというのです。
「彼を見付けたら」
「ボタンとスカーフをですね」
「返すんですね」
「そうしよう」 
 こうお話をしながら皆でカレーを食べてでした、そのうえで森に向かいます。ただ恵梨香は自分達が食べたカレーについてくすりと言いました。
「マンチキンだからですね」
「青かったっていうのね」
「はい、カレーも」
「そう、青なのよ」
 何もかもが青のマンチキンだからです。
「カレーも他のものもね」
「人参もですし」
「そう、マンチキンだと青よ」
 赤い筈の人参もです、そうなるのです。
「トマトもね」
「前に青いプティングをご馳走になりました」
「青くても美味しかったでしょ」
「はい、とても」
「そうでしょ、だからね」
 それでだというのです。
「カレーも青いのよ」
「何もかもが」
「お米も青いしね」
 カレールーだけではありません、青いものは。
「それもよ」
「全部青ですね」
「そういうことよ。それぞれのお国の色になるのよ」
 そういうことだと言うのです。
「ここはオズの国だからね」
「そうですね」
「そこが面白いでしょ」
「何でもその国の色になることが」
「勿論他の色も入れられるわよ」
 マンチキンの国でも、というのです。
「赤や黄色もね」
「そうした色もですね」
「そう、なるから」
 それも可能だというのです。
「普通の色のカレーもあるわよ」
「それも面白いですね」
 恵梨香はドロシー のことばに笑顔で応えました、そしてなのでした。
 皆で森に入りました、森の中はとても広いです。
 ですがその場所はもうわかっています、教授はそこに皆を案内します。
「こっちだよ」
「あっ、そういえば」
 ここでトトも言います。
「ボタン=ブライトの匂いもするよ」
「強まってきてるね」
「教授が案内する方に行くとね」
「では間違いないね」
 トトも言うからには、というのです。
「それではね」
「ここに行って間違いないね」
「うん、確実にね」
 ボタン=ブライトがいるというのです。
「では行こう」
「それじゃあね」
「それにしてもボタン=ブライトって子は」
 ナターシャが首を傾げさせて言うことは。
「本当に何時何処にいるかわからない子ね」
「それが彼なんだよ」
 教授もナターシャに答えます。
「何時何処にいるかわからない」
「何処で会えるかもですね」
「わからないんだよ」
「けれどオズの国にいることは間違いないんですね」
「そのことだけはね」
 ボタン=ブライトもオズの国の国の住人です、それならオズの国にいるのは当然です。
「確かだよ」
「オズの国から出ることはないですね」
「オズの国から他の国に行き来出来る場所は一つだけだよ」
「私達の学園の塔ですね」
「そう、都の宮殿とつながっているね」
「あそこだけですね」
「あそこを使うにはオズマ姫の許可が必要だから」 
 それでだというのです。
「ボタン= ブライトにしても」
「出入りすることは」
「出来ないよ」
「じゃあボタン=ブライトは」
「オズの国にはいるよ」
 このことは間違いないというのです。
「それだけはね」
「そうなんですね」
「だからオズの国を捜せば」
 それで、というのです。
「必ず見付かるんだよ」
「例えあの子でも」
「そうだよ、あの子でもね」
「そうなんですね」
「見付けることは確かに大変だけれどね」
 それでもというのです。
「見付けることは出来るよ」
「そういうことですね」
「そうだよ、広場で針を見付ける様なものだけれど」
 このことは否定しないのでした。
「それは出来るよ、そして今から」
「彼を」
「そう、見付けよう」
 こうお話してでした。
「おそらくここにいるから」
「まだ寝てますよね」
 若しいればとです、ジョージは彼がいると仮定したうえで言います。
「ボタン=ブライトは」
「そのことが気になるよね」 
 神宝も言います。
「まだ寝ていたらいいけれど」
「そうだね、いればね」
「うん、どうなのかな」
 そこが気になるというのです。
「起きて別の場所に行ったりしないかな」
「それはまず大丈夫だよ」
 教授は二人にも言いました。
「彼は一度寝るとね」
「中々起きないからですね」
「だからですね」
「それで彼はまだ」
「あそこにいるとすれば」
「うん、寝ているよ」
 そうしているというのです。
「半日は普通に寝る子だからね」
「半日ですね」
 カルロスはそれだけ寝ると聞いて言いました。
「それも凄いですね」
「彼にとっては普通だよ」
 半日寝ることがというのです。
「至ってね」
「だからですね」
「まずまだ寝てますか」
「いるのなら」
「そうだよ。そしていたら」
 その時はでした。
「ボタンとスカーフを返さないとね」
「間違いないよ」 
 トトが教授に言ってきました。
「匂いがさらに強くなってるよ」
「うん、それでは」
「ボタン=ブライトはこっちにいるよ」
「我々が向かう先に」
「いるよ」
 間違いなく、というのです。
「もうこれ以上はない位に匂いを感じるからね」
「こうした時犬って頼りになるね」
 カルロスはトトを見て言いました。
「本当にね」
「鼻が効くからだね」
「うん、トトもね」
「僕も犬だからね」
 トトは前を進みながら胸を張ってカルロスに答えました。
「匂いのことならね」
「人間よりも遥かにだったね」
「そう、わかるからね」
「だから頼りになるよ」
「それは嬉しいね。けれどね」
「けれど?」
「僕は戦うことは出来ないし」
 小さいからです、だからそれは出来ないのです。
「それにね」
「それに?」
「そう、目はあまりよくないから」
 目は、というのです。
「暗いところでも見えるけれどね」
「トトは目が悪いんだ」
「犬はね」
 トトだけでなく、というのです。
「そうなんだ」
「へえ、犬って目はよくないんだ」
「そうだよ。目がいいのはね」
「猫かな」
「そう、目は猫の方がずっといいんだよ」
 そうだというのです。
「そのことはわかっていてね」
「じゃあダラスの猫も」
 カルロスは彼女のことを思い出しました。あのガラスの身体にピンク色の脳と心臓がある彼女のことをです。
「目はいいんだね」
「かなりね」
「そうなんだね」106
「それぞれの動物で得手不得手があるんだ」
「犬には犬に」
「そして猫には猫のね」
 この辺りは本当にそれぞれだというのです。
「得手不得手があるよ」
「そういうものなんだね」
「人間だってそうじゃない」
「僕達も?」
「それぞれ得手不得手があるよね」
 トトはカルロスに顔を向けて言います。
「君達にも」
「確かに、言われてみれば」
「だからだよ」
「犬にも猫にもそれぞれ」
「得手不得手があるんだよ」
「私にしてもだよ」
 教授も言います。
「確かに知識学識では自信があるがね」
「それでもですか」
「頭の回転ではかかしさん、優しさでは木樵さんには遠く及ばないよ」
「あの人達にはですか」
「そう、私は万能ではないよ」
 到底、というのです。
「知識学識では自信があるがね」
「そういうものなんですね」
「そうだよ、人間には得手不得手があって」
 そして、というのです。
「それぞれの個性を活かして」
「助け合うものですね」
「オズの国でもそうしているよ」
 教授は穏やかな声でカルロス達にお話するのでした、そのうえでボタン=ブライトを目指してそうして進むのでした。



天井裏も探すのか、と思ってしまったんだが。
美姫 「スカーフが見つかったわね」
いやいや、そんな所も探さないとなるとかなり難しいじゃないかと思ったんだけれどな。
美姫 「以外に外にいたみたいね」
折角、らしいのを見つけたけれど。
美姫 「まずは昼食なのね」
いやー、本当にほのぼのとしているな。
美姫 「ともあれ、食事も終えて再び再開したけれど」
果たしてまだ居るのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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