『オズのムシノスケ』
第一幕 ムシノスケ先生のお考え
恵梨香達はこの時もオズの国に来ていました、そのうえでエメラルドの都の宮殿の一室でドロシー達と楽しくお茶を飲んでいました。そこで、です。
ふとです、神宝がこうドロシーに尋ねました。
「あの、ドロシーさん達学校は」
「学校?」
「はい、僕達より年上ですけれど」
「学校に行く年齢だっていうのね」
「そうです、そのことは」
「私ずっとね」
ドロシーはにこりと笑ってです、神宝に答えました。ドロシーの前にも皆の前にも紅茶、カドリング産のそれと緑のエメラルドの国のクッキーがあります。
「学校に行ってないのよ」
「あっ、そういえば」
「そう、カンサスにいた時からね」
「ドロシーさん学校には行ってないですね」
「お勉強はしてたわ」
学校に行ってなくてもです。
「お家にあった本でね」
「そうでしたね」
「そう、それでオズの国に来てからはね」
「ここで、ですね」
「王女をしながらね」
そうしてだというのです。
「お勉強をしてるのよ」
「学校に行かなくてもですね」
「お勉強は出来るからね」
「そうだったんですね」
「そうよ、それでお勉強もね」
ドロシーが言うオズの国のお勉強はといいますと。
「そちらの世界みたいに本を読むよりも」
「ベンキョー錠ですね」
ジョージがクッキーを食べながら言ってきました。
「それを飲んで」
「そうして勉強してるのよ」
「本を読むよりもいいんですね」
「ずっといいのよ」
実際にそうだというのです。
「本を読むよりも時間がかからなくてね」
「飲むだけですしね」
「それで飲むでしょ」
「身体の中に直接入れるからですね」
「頭の中にも完全に入るのよ」
「そうなんですね」
「そう、だからよ」
そうしてお勉強しているというのです。
「オズの国ではね」
「子供達はですね」
ジョージはまた言いました。
「そうしてお勉強してるんですね」
「そう、そしてその分のお勉強の時間はね」
座学の時間の分です、五人の世界でのそれは。
「体育をするのよ」
「身体を動かすんですね」
「そうしてるのよ、畑仕事をしたり遊んだりもね」
「何か座って勉強をする時間がないと」
「その分そうしたことに時間を使えるからね」
だからだとです、ドロシーはにこにことしながらお茶を飲みます。そのお茶はかなり美味しくてドロシーは何杯も飲んでいます。
「私もその間の時間をね」
「オズの国のあちこちを巡ってるんですね」
「旅行を楽しんでるの」
ドロシーの大好きなそれを、というのです。
「ベンキョー錠は旅行にも持って行けるしね」
「そういうことなんですね」
「そう、だからベンキョー錠は有り難いのよ」
「飲むだけでお勉強が出来るのなら」
カルロスも言います、実はこの子は五人の中で一番勉強が好きではありません。成績は決して悪くないのですが。
「楽ですね」
「そうでしょ、飲むだけだからね」
「お薬を飲むだけで何でも頭に入るのなら」
カルロスは腕を組んで言うのでした。
「最高ですね」
「カルロス勉強好きじゃないからね」
「あまりね」
神宝とジョージが笑って彼に言います。
「だから余計にだよね」
「そうしたお薬があると有り難いよね」
「こっちの世界でもないから」
かなり切実に言うカルロスでした。
「そうしたものがあればね、僕も」
「勉強せずに済む」
「そういうことだね」
「特に算数がね」
この科目がというのです。
「すぐに済むからね」
「あはは、算数だね」
「カルロスはそれが一番嫌いなんだ」
「嫌いも嫌いね」
何よりも、という口調のカルロスでした。
「本当にね」
「好きじゃないんだ」
「そこまで」
「僕達も飲んだら勉強になるのかな」
そのベンキョー錠をです。
「どうなのかな」
「なるんじゃないの?実際に」
「そうじゃないの?」
二人は笑いながらカルロスに言います。
「そこも」
「ちゃんとね」
「ううん、どうかしらね」
ドロシーは三人のお話を聞いてそれで言って来ました。
「それはムシノスケ教授に聞いてみて」
「ああ、あの人に」
「お聞きすればいいんですね」
「うん、そうすればね」
それでだというのです。
「いいわよ」
「じゃあお聞きしてみます」
実際にとです、カルロスはドロシーのお話を聞いて言いました。
そのうえで、です。ドロシーにそのムシノスケのことをあらためて聞きました。
「あの、それでなんですけれど」
「ムシノスケさんのことね」
「あの人今は何処におられるんですか?」
「王立大学よ」
そこにいるというのです、教授は。
「今はそこにいるわ」
「エメラルドの都じゃないんですね」
「そう、今はね」
エメラルドの都にいる時もありますが今は、というのです。
「あちらにおられるわ」
「そうですか」
「あそこですか」
「そう、だからね」
「ベンキョー錠のことを聞くのなら」
「王立大学に行きましょう」
そこにだというのです。
「是非ね」
「あれっ、ドロシーさん今」
恵梨香はドロシーの今の言葉を聞いてふと気付いて言いました。
「行きましょうって仰いましたけれど」
「ええ、そうよ」
ドロシーもにこりとしてそうだと答えます。
「そう言ったわよ」
「じゃあ今回も」
「貴方達が行くのならね」
その時はというのです。
「私も行きたいわ」
「それが旅行になるからですね」
「そう、私はやっぱりね」
「宮殿にいるよりもですね」
「旅行が好きだから」
生粋の旅人だからです、ドロシーは。
「だから一緒にね」
「私達とですね」
「王立大学まで行きましょう」
「それじゃあ」
「行くのなら声をかけてね」
その時はというのです。
「出発する用意をするから」
「わかりました、それじゃあ」
「そういうことでね。そういえば最近ね」
ドロシーは五人をお話しながら気付きました、その気付いたことは一体何かといいますと。
「大学には行ってなかったわ」
「そうだったんですか」
「ええ、どうもね」
そうだったというのです。
「だから丁渡いい機会ね」
「じゃあ行きましょう、大学に」
カルロスはドロシーに陽気な笑顔で応えました。
「お茶が終わったら」
「あら、早速ね」
「はい、思い立ったらっていうじゃないですか」
それでだというのです。
「ですから」
「そうなのね、それじゃあね」
ドロシーも乗り気です、そして。
ナターシャもです、こう言うのでした。
「都から大学までは結構近いですよね」
「そうね、これまでの旅行と比べたらね」
「歩く距離は少ないですね」
「ええ、そうよ」
その通りとです、ドロシーも答えるのでした。
「今回はね」
「そうですね、これまでの旅行とは違いますか」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「私が旅に出るとね」
その時はというのです。
「いつも凄いことになるのよね」
「ああ、そういえばそうですね」
「ドロシーさんの旅って」
「何かといいますと」
「凄いことになりますね」
五人もです、ドロシーのこれまでの旅のことを思い出して言うのでした。自分達が参加していない旅のこともです。
「まさに山あり谷ありの」
「スリルに満ちた」
「そうしたことばかりですね」
「次から次に置きますね」
「そう、だからね」
大学に行くにしてもというのです。
「絶対に何か起こるわよ」
「そのことはですね」
「絶対なんですね」
「まずね」
そうなるというのです。
「だからこのことはね」
「ただの旅行になるんじゃなくて」
「大きな冒険になるんですね」
「今回も」
「多分それが私の巡り合わせなのよ」
だからといって困る訳でも嫌に思う訳でもありません、ドロシー五人に対してにこにことしたままお話をしていきます。
「いいも悪いもなく、いいえ」
「むしろ楽しいですよね」
「スリルのある」
「そう、だからね」
それでだというのです。
「私はそのめぐり合わせを楽しいと思ってるの」
「オズの国にも入ることが出来ましたし」
「だからですね」
「運命とも言うわね」
「ドロシーさんのですね」
「そう、私は何かあるとね」
竜巻に遭ってもです、それこそ。
「そこから新しいことに、そして色々な人とね」
「巡り合う」
「それがドロシーさんなんですね」
「そうなの、だから今度もね」
大学に行く時もというのです。
「何かあるわよ」
「その何かが、ですね」
「気になりますね」
「大冒険になるのかどうか」
「それが」
「このことはね」
ドロシーはこうも言いました、五人に。
「私だけじゃなくてオズマもだし」
「オズマ姫もですか」
「旅行に出られたら」
「絶対に何かあるわ。ベッツイもトロットもね」
二人もだというのです。
「二人も運命的にね」
「常にですね」
「何かが起こるんですね」
「オズの国にいるとそうなるのかもね」
若しくはオズの国に入る人達はです。
「自然とそうなるのよ」
「運命として」
「そうなりますか」
「かもね。ではね」
「はい、それじゃあ」
「今度の旅も」
「何があるのか期待しながらね」
そのうえで、というのです。
「行きましょう」
「はい、じゃあ」
「今回も」
五人は笑顔で応えてでした、そうして。
ドロシーはお茶の後でトトも連れてそのうえで五人と一緒に王立大学に向かうのでした、ムシノスケが今いるそこにです。
皆そのままの服です、ドロシーもいつものラフな姿です。カルロスはそのドロシーを見てこう言うのでした。
「じゃあ今からですね」
「ええ、ムシノスケさんのところに行くわ」
「そうですよね。けれど」
「けれど?」
「いえ、ドロシーさんそのままの服ですけれど」
さっきまで皆と一緒に飲んでいた、というのです。
「もう何時でもなんですね」
「そう、旅に行ける様にね」
ドロシーもにこりとしてそうしてカルロスに答えるのでした。
「この服を着ていたのよ」
「そうだったのね」
「そうよ、じゃあね」
「今からですね」
「行こう。私はやっぱりドレスよりもね」
そのラフな服での言葉です。
「こうした服の方がいいわ」
「何時でも動けるからですね」
「カンサスでもそうだったから」
かつてドロシーがいたあの懐かしい場所でもそうだったというのです。
「いつも農作業をしてたから」
「けれどドロシーさんはもう」
にこにことしてお話するドロシーにです、ナターシャが尋ねます。五人は宮殿の衛兵さんに挨拶をしてから宮殿の外に出ました。
そうして歩きながらです、こう言うのでした。
「王女様ですよね」
「オズの国の、っていうのね」
「それでもなんですね」
「そう、動くことが大好きで」
「旅もですね」
「大好きよ」
これまで通りだというのです。
「私は私だからね」
「ドロシーさんだから」
「そうなの、少しした旅行でもね」
王立大学までの少しでも、というのです。
「楽しみよ。ただね」
「ただ?」
「この旅も絶対に何かあるから」
それは間違いないというのです、ドロシーはこのことを予感として感じながらそのうえでナターシャ達に言うのでした。
「何が起こってもね」
「それでもですね」
「楽しんでいきましょう」
「けれどあれですよね」
ジョージがここでそのドロシーに言うことはといいますと。
「大学まですぐで」
「ええ、そうよ」
「その間特におかしな部族も生きものも」
「いないわよ」
「それでも何かあるんですか?」
「何かあるのがね」
それがと返すドロシーでした
「オズの国でしょ」
「だからですか」
「オズの国はいつも何かが起こるのよ」
そうした国だというのです。
「だからなのよ」
「絶対に、ですか」
「そう、何かがあるから」
「旅の間に」
「旅の間に何もなくてもね」
それでもだというのです。
「大学で何かあるかもね」
「あっ、そう言われると何か」
神宝がドロシーの言葉にはっとなって言いました。五人は今はエメラルドの都の緑がとても綺麗な街の中を歩いています。
皆が笑顔でドロシーと五人に手を振ってくれます、ドロシー達も皆に笑顔で手を振って応えながらお話をするのでした。
「ありそうですね」
「そうでしょ」
「本当にいつも何処かで何かが起こるのが」
「そう、オズの国だからね」
だからだと言うドロシーでした。
「そのことを楽しみにしながらね」
「はい、オズの国に行きましょう」
「テントと御飯はもう用意しているから」
ドロシーのポケットの中にあるというのです。
「そのことは安心してね」
「はい、わかりました」
神宝はドロシーの言葉に笑顔で応えました、そのうえで。
一行はエメラルドの都を出ました、ですが。
ここでなのでした、恵梨香はドロシーにこう言いました。
「今回の旅はドロシーさんだけですね」
「貴方達と一緒に旅をする人はね」
「はい、そうですよね」
「私だけなのは珍しいわね」
「そうですよね」
「そうね。けれどね」
「けれど、ですか」
「私も旅のことはわかっているつもりだから」
だからだというのです。
「安心してね。貴方達を危険な目には遭わせないわ」
「はい、お願いしますね」
「旅は楽しく」
このことは絶対だというのです。
「そうしていくものだからね」
「だからですね」
「そのことは心掛けていから」
ドロシーだけでも、というのです。こう言ってでした。
エメラルドの都からの道を少し歩いてです、ドロシーはお空を見て太陽が上に上がっているのを見てこう言うのでした。
「もういい時間だからね」
「お昼ですね」
「お昼御飯の時間ですね」
「そうよ、だから」
ドロシーは周りを見回しました、そうしてです。
自分から黄色い煉瓦の道から少し離れたところにある緑の草原の中に入ってです、そうしてなのでした。
五人に一緒にと言ってでした、六人でその場に車座になって座りました。それから皆の前にあのテーブル掛けを出しました。
そのうえでなのでした、ドロシーは皆ににこりと笑って言いました。
「じゃあ皆でね」
「はい、今らですね」
「お昼御飯をですね」
「食べましょう、何でも好きなお料理の名前言って」
そして、というのです。
「皆で食べましょう」
「はい、それじゃあ」
「皆で」
こうしてなのでした、一行はそれぞれ自分が今食べたいお料理を言いました。するとテーブル掛けにです。
するとすぐにでした、それぞれのお料理が出て来ました。ドロシーは五人のお料理を見てくすりと笑って言いました。
「あら、五人共和食じゃない」
「はい、そうですね」
「一緒になりましたね」
「偶然ですけれど」
「それでも」
「私もだしね」
ドロシーもにこりと笑って言いました、見ればです。五人共和食でした、しかもその和食の内容はといいますと。
「私が親子丼でね」
「私が木の葉丼で」
「私は天丼でした」
ドロシーに続いて恵梨香とナターシャが言います。
「きつねうどんね、麺類は」
「若布うどんで」
「月見うどんです」
「僕はカツ丼に鴨なんばうどんだね」
「僕が牛丼で山菜うどんだよ」
「僕のは玉子丼で肉うどん」
ジョージ、神宝、カルロスはそれぞれこの組み合わせでした。
「ドロシーさんも含めて皆丼と御飯って」
「何か偶然にしてもね」
「面白い偶然ですね」
「そうね、けれどこうしたこともね」
ドロシーは一緒に出したお箸を手に取りながらそのうえで三人の男達に応えました。
「あることよね」
「私達は日本にいますので」
ナターシャが言います、確かに恵梨香以外の子は日本生まれではありません。ですがそれでもというのです。
「日本のお料理とその組み合わせが好きになっていますけれど」
「ドロシーさんもなんですね」
「そうなの、実はね」
頂きますをしてから答えるドロシーでした、勿論五人もそうします。そのうえでその丼とおうどんを食べはじめるのでした。
「私も最近ね」
「和食がお好きなんですか」
「気に入ってきているの」
そうだというのです。
「日本のおうどんもね」
「そうですか」
「勿論丼もね。オズの国でも和食の人気は高いし」
「そのこともあってですか」
「私もよく食べる様になっているの」
こうナターシャと四人にお話するのでした。
「それでね」
「それで、ですか」
「この組み合わせもね」
親子丼ときつねうどんというそれもです。
「よく食べるわ」
「美味しいですよね」
「ええ、とてもね」
「それで今も」
「食べるの。おうどんもね」
「おうどんもいいですよね」
「お蕎麦もね」
こちらもでした。
「いいけれどね」
「どっちがいいかっていいますと」
「それはね」
おうどんとお蕎麦、どっちがよりいいかといいますと。
ドロシーも六人も答えはありません、出せないのではなくないのです。日本人の恵梨香もこう言うのでした。
「ええと、おうどんとお蕎麦は」
「どっちがいいかはね」
「その時の気分で」
「どっちかを食べるわよね」
「はい、私もそうですし」
恵梨香はそのおうどんを食べながらドロシーにお話します、とてもコシが強くしかも風味がある美味しいおうどんを。
「他の人達も」
「そうよね、オズの国でもね」
この国でもというのです。
「皆好きになってるけれど、どっちもね」
「どっちが好きかは」
「その時次第ね」
どちらも食べる人はです。
「どちらにもいいものがあるから」
「そうですよね」
「お蕎麦もね」
こちらもと言うドロシーでした。
「美味しいのよね」
「そうですね」
「そう、それじゃあね」
「今からですね」
「一緒に食べてね」
そうしてというのです。
「また歩きましょう」
「大学に向けて、ですね」
「そうしましょう」
こう五人に言うのでした、そうしてです。
ドロシーは親子丼もおうどんも食べていきます、勿論五人もです。そうしながらドロシーにカルロスがこんなことを言いました。
「あの、大学では」
「大学のこと?」
「サッカーはしていますか?」
「あっ、あのスポーツね」
「はい、していますか?」
「勿論よ。ただね」
それでもと言うのです、ドロシーは。
「オズの国はアメリカの影響がそのまま出る国だから」
「スポーツもですか」
「サッカーよりも野球やバスケの方が盛んね」
「王立大学でもですね」
「そうだ、だからね」
それでだというのです。
「サッカーはしていてもね」
「する人もですか」
「カルロスの国よりは少ないと思うわ」
ブラジルよりも、というのです。
「多分だけれどね」
「そうですか、僕としては」
「カルロスはサッカーが好きなのね」
「はい、大好きです」
その通りだというのです。
「御飯の次に好きです」
「そうなのね」
「サッカーのグラウンドは」
「どうなのかしらね」
ここで首を傾げさせても言ったドロシーでした。
「実は私サッカーはしないから」
「あっ、そうなんですか」
「そうなの、旅行をしたり散歩はするけれど」
それでもなのでした、ドロシーは。
「けれどね」
「サッカーはされないんですね」
「他のスポーツもね」
ドロシーは昔からです、いつも色々とある旅行はします。けれどスポーツ自体はといいますと。
「しないの」
「そうですか」
「いつも歩いて身体を動かしているせいかしら」
スポーツはしなくても活発です、このことはドロシーだけでなくベッツイやトロットもそうです。オズの国に来た娘達は。
「だからね」
「スポーツはですか」
「しないわ」
「サッカーも」
「そうなの、けれどカルロスは」
「はい、サッカー大好きです」
自分のおうどんを食べながらにこにことして言うカルロスでした。
「他のスポーツも、ですけれど」
「他にはどんなスポーツが好きなの?」
「野球もバスケも好きですし」
まずは球技から答えたカルロスでした。
「テニスも」
「あっ、テニスも好きなのね」
「はい、あと水泳に陸上競技も」
「結構色々好きなのね」
「そうなんです」
「カルロスはスポーツ万能なんです」
ナターシャがこうドロシーにお話します。
「本当に何でも出来ます」
「だからなのね」
「私達の中で、いえ学年でも」
五人の中に限らず、というのです。
「一番なんですよ」
「スポーツだとなのね」
「それに身体も頑丈で」
「怪我には強いですね」
カルロスから笑って言った言葉でした。
「鉄人って言われたこともあります」
「あら、それは何よりね」
「そうですよね。やっぱり身体は頑丈な方がいいですよね」
「怪我が多いとね」
それだけで、と言うドロシーでした。
「大変だからね」
「そうですよね、とても」
「そう、だからね」
それでと言うのです。
「カルロスはそのことも感謝するべきね」
「神様にですね」
「ええカルロスの信じる神様にね」
「そうしないと駄目ですね」
「そう思うわ、人は一人じゃないから」
誰も一人ではありません、ドロシーにしてもです。
トト、自分の横でドロシーが分けてくれた御飯を食べている彼を見てです。そのうえでカルロスにお話するのでした。
「トトもいてヘンジーおじさんとエムおばさんがいてくれて」
「オズの国の人達もですね」
「そう、皆がいてくれているから」
だからだというのです。
「私は皆に助けてもらってね」
「ドロシーさんもそうなんですね」
「一人で生きている人はいないわよ」
例えどんな人でも、というのです。
「だからカルロスもね」
「スポーツが出来ることも頑丈なことも」
「そのことは神様からの頂きものだから」
「神様に感謝をして」
「そう、そしてね」
そうしてだというのです。
「これからもね」
「感謝していかないと駄目ですね」
「そうよ、神様に」
そしてなのでした。
「皆にもね」
「他の人達にもですね」
「感謝していかないとね」
「そうですね、そのことは」
「ええ、感謝を忘れたら」
それで、というのでした。
「人は駄目だからね」
「それだけで、ですね」
「そうなの。それを忘れたら悪い人になるわよ」
「そこからですね」
「感謝は大事なの」
その気持ちを持つことがというのです。
「いつも何かに、誰かに感謝する」
「その気持ちがですね」
「大事だから。カルロスも皆も忘れないでね」
「はい、わかりました」
「そうさせてもらいます」
カルロス以外の皆もでした、ここで。
皆で一緒に感謝をしながら食べました、そうして。
丼とおうどんを食べ終わってからでした、今度は。
ドロシーは五人にです、微笑んでこう尋ねました。
「御飯の後はね」
「はい、デザートですね」
「それですね」
「丼とおうどんだったから」
和食です、それだったからというのです。
「だからね」
「日本ですね」
「日本のデザートですね」
「甘味っていうのよね」
ドロシーは恵梨香を見て尋ねました。
「そうよね」
「はい、そうです」
「それじゃあね」
「その甘味をですね」
「皆で食べましょう。何がいいかしら」
「そうですね、今回も」
「それぞれなのね」
ドロシーは恵梨香が言葉と言葉の間に入れていたその言葉を読みました、そのうえでこう自分から言ったのです。
「ここは」
「はい、そうしましょう」
「それじゃあね、皆ね」
今回もというのでした。
「好きなもの言いましょう」
「わかりました」
「それじゃあ」
こうしてでした、六人共です。
それぞれ食べたいものと飲みたいものを言いました、すると。
羊羹やきな粉もち、それに白玉あんみつにです、他にもです。
善哉や和風のゼリーもあります。他には柿もです。
柿を見てです、カルロスは笑ってこう言いました。
「何か日本っていうとね」
「柿っていうのね」
「はい、そう思いまして」
「そうね、日本の果物はね」
「柿ですよね」
「そうね、それじゃあね」
こうお話してなのでした、カルロスはその柿を手に取りました。柿のその色が見ているだけでとても美味しそうです。
お茶もそれぞれです、日本のお茶ですが。
お抹茶や梅茶、麦茶と色々です。そうしたお茶もです。
それぞれ手に取って日本のお菓子と共に飲みます、ドロシーはお抹茶をきな粉もちと一緒に食べながら言うのでした。
「このお茶を飲むと」
「気持ちよくなりますよね」
「ええ、すっきりするわ」
こう恵梨香に答えるのでした。
「胸も頭の中もね」
「そしてお口の中も」
「とてもね。ただね」
「ただ?」
「ここはオズの国だから」
それで、というのです。ここで。
「お抹茶もね」
「国によって色が違うんですね」
「そうなるの、エメラルドの都では緑だけれど」
「マンチキンだと青になって」
「ウィンキーでは黄色でね」
カドリングでは赤、ギリキンでは紫です。
「そうなるの」
「オズの国らしくですね」
「そう、そうなるのよ」
「青や赤のお抹茶ですね」
「面白いわよね」
「とても、けれど味は」
「それは変わらないわ」
抹茶のままだというのです。
「そこはね」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「ここではね」
「エメラルドの都のお抹茶をですね」
「楽しみませてもらうわ」
「じゃあ私も」
恵梨香が飲んでいるのはよく冷えている麦茶です、この麦茶も恵梨香達の世界の茶色ではなくエメラルドを溶かした様な綺麗な緑色です。
その緑色の麦茶を飲んで、です。こう言うのでした。
「麦茶ですね」
「そうよね」
「とてもよく冷えていて美味しいです」
その麦茶だというのです。
「色は違いますけれど」
「そうね、それじゃあね」
「この麦茶も飲んで」
そうしてというのです。
「王立大学に行きます」
「皆でね」
「そしてムシノスケ先生にもお会いして」
「お話しましょう」
「スポーツのことも」
「恵梨香はどんなスポーツが好きなの?」
ドロシーは恵梨香にそのことも尋ねました。
「具体的には」
「テニスですね」
「それが好きなのね」
「はい、オズの国でもテニスは」
「してる人が多いわよ」
こう答えたドロシーでした。
「男の子も女の子もね」
「そうなんですね」
「ええ、私はあまりしないけれどね」
ドロシーはテニスについてもこうでした。
「オズマ達とすることがあっても」
「それでもですか」
「やっぱり私のスポーツはね」
「旅行なんですね」
「そうなるわね」
「ドロシーさんは本当に旅行がお好きなんですね」
「冒険にもなるけれどね」
ドロシーだけでなくオズの国にいるとです、只の旅行が物凄い大冒険になることは往々にしてあることなのです。
「旅行は好きよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
「今回の旅行もですね」
「冒険になるかもね」
「けれどそれでもですね」
「その冒険をね」
例えです、普通の旅行がそうなってもです。
「皆で楽しみましょう」
「テニスみたいにですね」
「そういうことよ。それにしても恵梨香はテニスが好きなのね」
「そうです」
「日本人というと」
「空手や合気道と思ってたけれど」
武道です。
「そうじゃない娘もいるのね」
「そうなんです、日本人でもです」
「テニスをする子も多いのね」
「そうなんです、ただ」
「そうしたものをする娘もなのね」
「多いんです」
武道もだというのです。
「そうした娘も」
「そうなのね」
「私武道も苦手じゃないですけれど」
そちらは、でした。恵梨香は。
「やっぱりテニスが一番ですね」
「そういうことね。じゃあ今度オズマとしてみたらいいわ」
そのテニスをというのです。
「他の皆ともね」
「はい、じゃあその機会があれば」
そうしたこともお話しながらデザートも食べてでした、そのうえで。
一行は王立大学に向かいます、その行き先はといいますと。
東の方です、カルロスは皆と一緒に歩きながら案内をしてくれるドロシーに尋ねました。
「東の方ですから」
「そう、王立大学はね」
「マンチキンにあるんですね」
「そうよ」
その通りというのです。
「あそこにあるわよ」
「そうですか、マンチキンですから」
「青よね」
「はい、青ですね」
まさにそうだとです、カルロスは言いました。
「あの国ですから」
「そうよ、じゃあ青いマンチキンの国にね」
「行きましょう」
こうお話してでした、皆で。
エメラルドの都からマンチキンの国に向かうのでした。一行の今回の行く先は青いその国なのでした。
今度はドロシーと王立大学を目指して旅をする事に。
美姫 「ドロシーの言葉通りなら、今回は何かあるかもしれないわね」
一体、何があるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。