『オズのモジャボロ』




                第十幕  ガーゴイルの国

 一行は岩山と岩山の中に入りました、モジャボロはその中に入ってから五人にこうしたことを言いました。
「ここがなんだ」
「ガーゴイルの国ですよね」
「うん、そうだよ」
「じゃあそろそろ」
「ガーゴイルの人達が来るからね」
 こう五人に言うのでした。
「そのことはわかっていてね」
「わかりました」
「じゃあ何時出て来てもいい様に」
「心構えしておきます」
「驚かないです」
「あの人達は飛べるからね」
 このことがガーゴイルの特徴です。
「空から来ても驚かないでね」
「わかりました、じゃあ」
「何処から出て来ても」
 驚かないとです、五人もモジャボロに答えました。
 そのうえで谷間を少しさらに進むとでした、モジャボロの言った通り谷間の上にある青いお空から来ました。
 丸々とした身体で小さな手足があって背中には羽根があります、身体は全て硬い木で出来ています。その人達が来てでした。
 まずはドロシー達を見てです、こう言いました。
「ああ、ドロシー王女」
「それにモジャボロさんもトト君も」
「ようこそ」
 こう挨拶をするのでした。
「今日も元気そうで何より」
「そしてこの子達は」
 ここで五人を見て言うのでした。
「はじめて見る顔だけれど」
「服はカドリングの服じゃないね」
「かといって他の国でもない」
「この子達はどの国から来たのかな」
「地下の国からかな」
 ガーゴイルの一人がここでこんなことを言いました。
「あそこからかな」
「じゃあこの子達はノームかい?」
 別のガーゴイルがこんなことを言いました。
「それなら」
「いや、それは違うだろう」
「違うかな」
「ノームは髭があってもっと丸々としているよ」
 そのノームの身体の特徴を言うのでした。
「この子達は太ってないじゃないか」
「ああ、そういえばそうだね」
「そうだよ、じゃあこの子達はノームじゃないよ」
「じゃあ何なのかな」
「さて、足に車もないし」
 今度はこんなことを言ったガーゴイルがいました。
「クルマーでもない」
「じゃあ何処から来たのかな」
「一体」
「私と同じよ」
 ドロシーがいぶかしむガーゴイル達にお話しました。
「私と同じで別の世界から来たのよ」
「へえ、そうだったんだ」
「別の世界から来た子達だったんだ」
「ドロシーさんと同じで」
「そうだったんだね」
「そうよ、それでね」
 ここでなのでした、ドロシーはガーゴイル達に五人のことをお話しました。そうしてそのうえでなのでした。
 ガーゴイル達はです、納得したお顔になってこう言いました。
「成程ね、オズマ姫のお友達で」
「オズの国の名誉市民だね」
「それで時々オズの国に来てなんだ」
「ドロシーさん達と一緒にいるんだ」
「ええ、そうなの」
 ドロシーは明るい笑顔でガーゴイル達にお話しました。
「だからね」
「この子達は悪い子達じゃない」
「そうだね」
「ええ、そうよ」
 ガーゴイル達にこのことも言いました。
「だから安心してね」
「まあわし等もな」
「そうそう、最初は悪い連中だったし
「排他的で凶暴で」
「いい連中じゃなかったよな」
 ガーゴイル達は自分達のことも振り返りました。かつてはこの人達はお世辞にもいい人達と言えなかったのです。
「ノーム王に利用されかねない位に」
「悪い連中だったよ」
「そこまではいかなかったけれど」
 このことはドロシーが見たところです。
「けれど怖かった」
「御免ね、あの時は」
「反省しているよ」
「いいわ、もう終わったことだから」
 過去のことを気にするドロシーではありません、ましてやガーゴイルの人達も今では彼女のお友達なのですから。
「だからね」
「それでよね」
「これからは」
「そう、いいわ」
 こう言うのでした、とても広い心で。
「それでだけれど」
「それで?」
「それでとは?」
「今日私達が貴方達のところに来た理由はね」
 ドロシーはガーゴイルの人達にこの理由をお話しました。
「いいかしら」
「うん、何かな」
「ここに来た理由は」
「そう、オズマがエメラルドの都でパーティーを開くから」
 このことをお話するのでした。
「だからね」
「わし等をなんだ」
「招いてくれるんだ」
「ガーゴイルさん達の王様はいるかしら」
 その人はというのです。
「ここに」
「ああ、いるよ」
「ちゃんとね」
「そう、いるよ」
 ガーゴイル達はすぐに答えました。
「じゃあ今から呼ぶよ」
「そうさせてもらうよ」
「ええ、お願いするわ」
 こう言ってでした、ガーゴイル達はといいますと。
 すぐにガーゴイルの王様が呼ばれました、王様はこう言ってきました。
「私をオズマ姫のパーティーに呼んでくれるって?」
「ええ、そうよ」
 ドロシーはにこりと笑ってガーゴイルの王様に答えました。
「招待状も持っているわ」
「じゃあその招待状を受け取れば」
「オズマのパーティーに行けるわ」
「夢みたいな話だな」
「夢じゃないわよ」
 ドロシーはにこりと笑って王様にまた答えました。
 そうしてです、懐から招待状を出して王様にそれを差し出したのでした。
「ほら、これね」
「これがパーティーへの招待状だね」
「ええ、そうよ」
「ううん、まだ信じられないけれど」
「それじゃあ頬っぺた抓ってみる?」
「ははは、私達の頬っぺたを抓ってもね」
 そうしてもだとです、王様はドロシーの今の言葉には笑ってこう返しました。
「硬いだけだよ」
「木だからよね」
「そうだよ、だからね」 
 それでだというのです。
「抓っても何にもならないよ」
「うふふ、それはそうね」
「とにかくね、まだ信じられないよ」
「そうなのね。けれどね」
「このことは夢じゃないんだね」
「そうよ。じゃあ招待状は」
「喜んで受け取らせてもらうよ」
 慎んで、です。王様はドロシーに答えました。
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね」
「うん、エメラルドの都だね」
「王様ははじめてよね」
「はじめてもはじめてだよ」
 エメラルドの都に行くことはというのです。
「道は地図を見ればわかるにしても」
「そうよね」
「それだけに余計に楽しみだよ」
 尚更というのです。
「あの都に行くことが」
「緑が本当に綺麗だから」
「そうそう、あの国は緑だったんだ」
 それがエメラルドの都の色です。王様もこのことは知っています。
「その緑も楽しみにしているよ」
「そうしてくれたら有り難いわ」
「是非ね。それだけれど」
「それで?」
「皆はこれからどうするのかな」
 ドロシー達にこれからの旅路を聞くのでした。
「まだ旅を続けるのかな」
「ええ、後はスクーグラー族のところに行くわ」
「あそこにだね」
「それであの国の女王様にも招待状を渡すわ」
「そうするんだね」
「ええ、これからね」
「それじゃあだけれど」
 一行が今度はスクーグラーの国に行くと聞いてです、王様はドロシー達にある提案をしました。その提案はといいますと。
「よかったら私達が送ろうか」
「スクーグラー族のところまでかしら」
「うん、そうしようか」
「私達を持ってくれてなのね」
「そうしてね。どうかな」
 こうドロシー達に申し出るのでした。
「それならすぐに行けるよ」
「そうなのね。それじゃあ」
 王様の提案を聞いてでした、ドロシーはといいますと。
 皆に顔を向けてです、どうしようかと尋ねるのでした。
「皆はどう思うかしら」
「ガーゴイルの人達にスクーグラーの国まで運んでもらうんだね」
「ええ、そう言ってきてくれてるけれど」
 こうモジャボロにお話しまし。
「どうかしら」
「そうだね、確かにそれなら僕達は楽だけれど」
 それでもだとです、モジャボロはそれはというお顔で言うのでした。
「ガーゴイルの人達に手間をかけるし」
「それによね」
「歩いていけばいいから」
 自分達で、というのです。
「だからね」
「ガーゴイルさん達のお世話になるから」
「別にいいんじゃないかな」
 運んでもらわなくとも、というのです。
「特にね」
「モジャボロさんはそう思うのね」
「うん、僕はね」
「じゃあトトは」
「モジャボロさんと同じだよ」
 トトはこうドロシーに答えました。
「やっぱりね」
「ガーゴイルさん達のお世話になるのは」
「悪いよ」
 こう言うのでした。
「歩いていけばいいじゃない」
「じゃあ貴方達は」
 今度は五人に尋ねたドロシーでした。
「どう思うかしら」
「ううん、もっとオズの国を見ていたいですし」
「スクーグラー族の国までの道中も」
「どうした場所か見て回りたいです」
「それにやっぱりガーゴイルさん達に迷惑かけますから」
「別にいいです」
「そうしたことはしてもらわなくても」
「そうなのね、じゃあね」
 皆歩いていくと言うのでした、その皆の意見を聞いてからえです。
 ドロシーは王様に向きなおってです、こう答えました。
「折角の申し出だけれど」
「そうか、歩いていくか」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「ならいい」
 それならと答えた王様でした。
「私は後でエメラルドの都に向かおう」
「そうしてね。じゃあ私達はね」
「歩いてスクーグラーの国に行くか」
「そうさせてもらうわ」
「道中楽しまんことを」
 王様は一行にこう言いました。
「それでは」
「ええ、今度はエメラルドの都でね」
「再会を」
 こうしてでした、ガーゴイルの王様にも招待状を渡した一行はガーゴイル達とも一時の別れの言葉を交えてでした。
 そうしてです、今度はスクーグラーの国に向かうのでした。
 その道中です、神宝はしみじみとした口調でこんなことを言いました。
「最初は怖かったけれど」
「ガーゴイルの人達がだね」
「うん、平和だったね」
 こうトトに答えます。
「そうだったね」
「だからあの人達もね」
「変わったんだね」
「平和になったんだ」
「あれだけ怖かったのに」
 それが、というのです。
「変わったね」
「本当にね、ドロシーさん達に聞いても」
 今度はジョージが言いました。
「出て来た時はびくってしたよ」
「怖かったんだ」
 トトはジョージにも応えました。
「そうだったんだ」
「そうだよ、ドロシーさん達がいたから頼りにしてたけれど」
 ドロシー達が嘘を言わないからです。
「それでも怖かったよ」
「まあ初対面だったしね」
「怖い話だけしか聞いてなくてね」
「そうそう、実際に静かになったガーゴイル達を見ていなかったし」
 こうも言う神宝でした。
「怖かったね」
「無意識のうちにね」
 身構えてしまうとです、また言った神宝でした。
「そうなったよ」
「正直スクーグラーはもっと怖いかな」
 カルロスはこれから会う彼等のことを言いました。
「あの人達は」
「スクーグラーね」
「顔が二つあるんだよね」
「そうそう、はっきり二色に分かれてるよ」 
 カルロスにもお話するトトでした。
「それぞれのお顔でね」
「しかも昔は」
「ドロシー達を食べようとしたよ」
「それが怖いんだよ」
 食べられると思うとでした。
「今は違うって言われてても」
「だから今はスクーグラー族も静かになったから」
「オズの国の住人になったからだね」
「安心していいよ」
 別に食べられたりしないというのです。
「安心していいよ」
「それなら」
「そう、安心してね」
 まさにというのでした。
「このことは」
「それならね」
「まあ顔は今でも怖いかな」
 トトはこのことも言いました。
「あの人達は」
「けれど怖いのは顔だけなんだ」
「今はね」
 それ以外はというのです。
「至って静かになったから」
「それなら」
「そう、楽しんでいこう」
 スクーグラーの国に行ってもというのです。
「少なくともジンクスランドみたいなことにはならないよ」
「ああ、レイコク王ね」
 恵梨香はジンクスランドと聞いてこの王様の名前を出しました。
「あの王様は酷かったわね」
「私あの人とは直接会っていないけれど」
 それでもだと言うドロシーでした。
「とんでもない人だったわね」
「今はもう何の力もないんですよね」
「ええ、ないわ」
 王様でなくなってからというのです。
「もうね」
「そうなってよかったですね」
「本当にね」
 ドロシーはしみじみとして恵梨香達に話しました。
「悪い魔女達のことも」
「カツタメですね」
「オズの国といっても色々な国があってね」
「ごくごく稀に悪い人もいますか」
「ええ、いい人達が殆どだけれど」 
 それでもだというのです。
「中にはそうした人もいるから」
「何とかしないといけないんですね」
「そのことがわかればね」
 すぐにというのです。
「実際にそうしているわ」
「オズマ姫がですね」
「そう、グリンダもいるから」
 オズの国はこの人達がいつもオズの国で何が起こっているのかオズの国のあらゆることが映し出される鏡や自然に記録される本で確かめています、だからよからぬ人達のこともわかるのです。このことは実際にです。
「そしてその揉めごとを解決する為にね
「その為にですね」
「そう、私達がそこにいって物事を解決するのよ」
「ジンクスランドではかかしさんが行かれて」
「そうよ、トロット達を助けたのよ」
 これがかつてのかかしの冒険の一つでした。
「危ないところもあったけれど」
「助かりましたね」
「そうなってよかったわ」
 ドロシーは微笑んで恵梨香と他の子供達にお話します。
「私後で聞いてかかしさんも皆も無事でよかったって思ってるから」
「そうですね、レイコク王なんかにやられないで」
「よかったわ」
「そういえばそのジンクスランドも」
 カルロスがここで言うことはといいますと。
「今は普通に行き来できますよね」
「うん、確かにあの国は高い山脈に面しているけれどね」
 モジャボロがカルロスの問いに答えます。
「それでも今は砂漠、あの国のすぐ前のね」
「それがずっと向こうにいったから」
「そう、山脈を回ってね」
 そうしてというのです。
「前から入ることが出来るよ」
「そうですよね」
「そうだよ。そうそう、あの国の王様と女王様だけれど」
 ボン王、そしてグロリア女王です。
「あの国にも招待状がいっているよ」
「あの国には誰が行ったんですか?」
「ボン王とグロリア女王のところには」
「かかしさんと木樵さんが行ったよ、臆病ライオン君と一緒にね」
 こうジョージと神宝にお話します。
「あの人達がね」
「ああ、オズの国の名士の人達が」
「行かれたんですか」
「かかしさんはあの国と縁があるからね」
 このことからというのです。
「あの人が行ったんだよ」
「そうですか、じゃああの国にはですね」
「僕達は行かないんですね」
「次の機会にね」
 モジャボロは笑顔で五人に言いました。
「行こうね」
「あの国に行くのも楽しみですね」
「どんな国なのか」
「そうね」
 ナターシャもジョージと神宝の言葉に応えます。
「この目で見てみたいわね」
「本で読んでいることはあくまで本で読んだだけだよ」
 モジャボロはここでこうしたことをです、五人に言いました。
「その目で見ることは読むことよりも大きいんだよ」
「そうですね、一見は大きいですね」
「ええと、日本の諺だったかな」
 モジャボロは恵梨香も見て言いました。
「百聞は一見に然ず」
「はい、日本の諺です」
 その通りだとです、恵梨香もモジャボロに答えます。
「やっぱり見ることは大きいです」
「そうだね」
「ですから」
 それでだというのです、恵梨香も。
「ジンクスランドも」
「次の機会にだね」
「行きたいです」
「是非」
 五人は笑顔で答えました。
「あの国に」
「そうしたいです」
「君達は何時でもオズの国に来られるからね」
 モジャボロは五人にこのことを保障しました、五人は学園の時計塔のところからオズの国に自由に行き来できます。
「だからジンクスランドにもね」
「行ってですね」
「そしてあの国でも」
「楽しんでくれると嬉しいよ」
 ジンクスランドもまたオズの国だからです、そのことは是非にというのです。
 そうしたことをお話してでした、モジャボロはこうしたことも言いました。
「ところで君達に聞きたいけれど」
「私達にですか?」
「一体何を」
「夏はどうしているのかな」
 オズの国にはないこの季節のことを尋ねるのでした。
「冬は」
「夏は涼しく冬は暖かく」
「そうしています」
「そうだね、オズの国には季節がないからね」
 ずっと春です、オズの国は常春の国なのです。だからモジャボロは五人にそれぞれ夏や冬はどうしているのかを聞いたのです。
「僕もね、アメリカにいた時は季節を感じていたけれど」
「オズの国ではですか」
「そうしたことは」
「うん、ないよ」
 暑さ寒さに備えることはというのです。
「一年中この服だしね」
「夏も冬もないから」
「だからですね」
「涼しい格好も厚い格好もですか」
「どっちも」
「ないよ」
「私もね。ずっと同じ様な服よ」
 このことはドロシーもでした。
「春の服よ」
「ドロシーさんはドレスですよね、王宮では」
「そして旅の時は今みたいな格好で」
 五人はドロシーの服も見てお話しました。
「そうですね」
「ドロシーさんも」
「ええ、そうよ」
 ドロシーは自分の服をひらひらとさせながら笑顔で五人に答えます。
「私も衣替えとかはしないわ」
「オズの国ではですね」
「着替えることはあっても」
「衣替えはないわ」
 する必要がないからです、だからしないのです。
「私もね」
「とはいってもスキーとかを出来る場所はあるよ」
 モジャボロはそうした場所はあると言うのでした。
「ウィンタースポーツを楽しめる場所はね」
「あっ、そうした場所もあるんですね」
「スキーとかが出来る場所も」
「そう、あるよ」
 ちゃんとです、あるというのです。
「そうした場所もね」
「やっぱり山ですよね」
 ナターシャがその場所のことを尋ねます。
「そうですよね」
「そうだよ、山とその麓の凍っている湖だよ」
「そうした場所で」
「うん、冬のスポーツも楽しめるよ」
 ちゃんと、というのです。
「オズの国でもね」
「そうなんですね」
「ナターシャはひょっとしてスケートは」
「遊ぶことは遊びますけれど」
 それでもだとです、ナターシャはドロシーに答えました。
「それでも」
「選手ではないんだね」
「そこまではいかないです」 
 そうだというのです。
「私は」
「そうなんだね、けれどスケートは好きだね」
「はい、好きです」
「それなら楽しむといいよ」
 オズの国でスケートも、というのです。
「スキーとかもね」
「スキーですねえ」
 カルロスはスキーと聞いてでした、そして言うことはといいますと。
「僕はどうしてもね」
「カルロスはブラジル人だからね」
「これまでは」
「うん、雪も見たことがなかったよ」
 こうジョージと神宝に答えるのでした。
「だからスキーもね」
「日本だと楽しめるよね、スキーも」
「そうしたスポーツも」
「そうそう、だから嬉しいよ」
 日本に留学出来てというのです。
「しかもオズの国でも出来るなんてね」
「嬉しいんだね」
「この国でもスキーを楽しめることが」
「面白いよね、雪って」
 雪にもこう言うのでした。
「白くて冷たくて触ったら消えて」
「しかも積もる」
「そのことがだね」
「街を白く化粧してね」
「ブラジルではないから」
「余計になんだ」
「そうなんだ、ブラジルは暑い国だからね」
 雪は降らないのです、だからこそカルロスは雪を見てとても嬉しくなるのです。
「それでこの国でも見られるんだね」
「しかもスキーも出来る」
「面白いよね」
「全くだよ、今度来た時はね」
 その時はだと言ったカルロスでした。
「スキーも楽しみたいね」
「その時は山に案内するわ」
 ドロシーがカルロスににこりと笑ってお話しました。
「湖にもね」
「はい、楽しみにしています」
「オズの国は楽しいところばかりだから」
「そうした場所もあるんですね」
「そうよ。とても一回では全部回りきれないわよ」
 オズの国を楽しもうと思えばです、一度や二度来る位ではないのです。
「私もまだ行っていないところがあるから」
「僕もだよ」
 モジャボロもです、まだオズの国の全てを回ってはいないのです。オズの国のあちこちを旅している彼にしても。
「まだ全部回っていないよ」
「そうですか、モジャボロさんも」
「まだなんですね」
「まだだよ」
 こう五人に言うのでした。
「この国は広くて色々な場所があるからね」
「だからですね」
「モジャボロさんも」
「そうだよ」
 それでだとです、モジャボロは歩きながら五人にお話します。
「まだまだ何度も旅をしないといけないんだ」
「ううん、じゃあ私達も」
「何度も」
「そうだよ。旅をしないと駄目だからね」
 オズの国の全部の場所を巡ろうと思えばだというのです、五人にしても。
「何度もね」
「じゃあ何度も旅をさせてもらいます」
 是非にと言う五人でした。
「そしてオズの国の全ての場所を見て」
「楽しませてもらいます」
「そうしようね、さて」
 こうしたことを話しながらでした、一行は。
 スクーグラーの国に向かうのでした、そして一日歩いてです。一行が着いた場所はといいますと。
 岩山でした、そしてそこにです。
  足はつま先が鳥の足の様に下向きに曲がっていて細い身体の人達が大勢いました、顔と身体は一報が黒くもう一方が白いです、前と後ろにそれぞれお顔が一つずつあります。
 黒い方の髪は黄色く白い方は紫で。とても不思議な感じです。そしてイタチみたいな細い目と道化師みたいな顔立ちです。
 この人達がなのでした。
「スクーグラーの人達ですよね」
「この人達が」
「ええ、そうよ」
 ドロシーはにこりと笑って五人に答えました。
「この人達がね」
「そうですね、いやこの人達も」
「はじめてお会いしました」
「それはこっちもだよ」
 そのスクーグラー達の方からも五人に言ってきました。
「ドロシー王女とモジャボロさんは知ってるけれどね」
「あんた達はね」
 はじめて見る顔だというのです。
「何処の誰か」
「知らないんだけれどね」
「王女さんのお友達かな」
 ここでスクーグラーの一人がこう言いました。
「ひょっとして」
「ええ、そうよ」
 ドロシーがそうだとです、スクーグラー達に答えました。
「この子達は私のお友達よ」
「そうですか、やっぱり」
「この子達は王女さん達のお友達ですか」
「そうなの、それでだけれど」
 今度はドロシーからスクーグラー達にお話しました。
「貴方達の女王様はおられるかしら」
「はい、お元気ですよ」
「今も」
「そう、それならね」
 ドロシーはスクーグラー達の返事に笑顔になって今度はこう言いました。
「女王様のところに行かせてもらうわ」
「わかりました、それでは」
「案内させて頂きます」
 こうしてでした、一行はすぐにスクーグラー達の女王のところに案内してもらいました。岩山の中をくり抜いたスクーグラー達の世界はといいますと。
 かなり独特でした、恵梨香は岩山の中のアパートの様なお家や道の中を行き来して生活しているスクーグラー達を見てこう言うのでした。
「ううん、遺跡みたいね」
「確かあれよね」
 ナターシャがその恵梨香に応えます。
「トルコにある」
「昔あそこで実際に人が暮らしていたのよね」
「そう言われてるわね」
「あそこみたいね」
「そうね、何かね」
「これまでも色々な国を見たけれど」
 それでもだというのです、スクーグラーの国もまた。
「この国も面白いわね」
「そうよね」
「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ」
 案内役のスクーグラーの兵隊さんが今は後ろつまり五人の方を向いている白いお顔からこう言ってきました。
「僕達としてもね」
「この岩山での生活が面白いとですか」
「そうしたことが」
「僕達にとっては岩山での生活が最高だからね」
 それでだというのです。
「そう言ってくれるとね」
「そうですか」
「嬉しいんですか」
「ここの生活もいいものだよ」
 岩山でのこれもというのです。
「とてもね」
「そうなんですね」
「スクーグラーさん達にしても」
「僕達にはここでの生活が一番合ってるよ」
 こうも言うのでした、五人に。
「中々快適だよ」
「快適ですか」
「ここでの生活が」
「うん、そうだよ」
 その通りだというのです。
「これがね」
「そうですか」
「ここでの生活もいいものなんですね」
「そうだよ、だからね」
 それでだというのです。
「君達もよかったらね」
「そうですね、それじゃあ」
「機会があれば」
 五人もこう応えてでした、そのうえで。
 スクーグラーの女王様のところに案内されます、その女王はといいますと。
 一方のお顔と身体は赤で髪は黒、目は緑です。もう一方は黄色くて髪は赤く目は黒です。女王の頭には冠があります。
 その女王がです、ドロシーとモジャボロを見て笑顔で言ってきました。
「ああ、よく来たね」
「お久しぶり、女王様」
 ドロシーがにこりと笑って女王に応えました。
「お元気そうね」
「見ての通りだよ」
 女王は赤いお顔でドロシーに答えます。
「あたしはいつも元気だよ」
「そう、じゃあエメラルドの都まで来られるかしら」
「それはまた随分と長旅だね」
 ドロシーの今の言葉にはです、女王は黄色のお顔で答えました。
「けれど平気で行けるよ」
「それじゃあね」
「おや、何かいいお話みたいだね」
「今度エメラルドの都でオズマがパーティーを開くの」
 ドロシーはスクーグラーの女王にもこのことをお話するのでした。
「だからね」
「あたしをそのパーティーに招待してくれるんだね」
「ええ、そうなの」
 まさにその通りだというのです。
「だからよかったらね」
「いいねえ、最高のお誘いだよ」
 女王は二つのお顔を交互にドロシーに向けてにこにことして言います。その歯がきらきらとしているのも見えます。
「オズマ姫からの招待なんて」
「じゃあ招待状渡すけれど」
「有り難く頂くよ」
 是非にという返事でした。
「あたしとしてもね」
「そう、それじゃあね」
「受け取らせてもらうよ」
 こう答えてなのでした。
「最高のプレゼントだよ」
「それじゃあ」
 こうしてでした、にこにことして。
 ドロシーは女王にも招待状を渡しました、その招待状を受け取ってからでした。
 ドロシーにです、女王はこう言いました。
「さて、お礼にね」
「お礼に?」
「ご馳走させてもらっていいかい?」
 ドロシー達にというのです。
「あたし達のご馳走をね」
「えっ、スクーグラーさん達のご馳走って」
「まさか」
 女王の今の言葉を聞いてでした、五人の子供達はといいますと。
 顔を曇らせてです、こう言うのでした。
「人とか?」
「何処かで捕まえた人とか」
「ちょっとね、それはね」
「勘弁して欲しいけれど」
「流石に」
「ははは、あたし達も改心したんだよ」
 わらってです、女王は五人にこう返しました。
「最初に王女さん達と会った時のあたし達じゃないよ」
「じゃあ今はですか」
「人を捕まえてスープにしたりはしないですか」
「そうしたことは」
「そう、しないよ」
 絶対にというのです。
「だから安心してね」
「だといいですけれど」
「人じゃなかったら」
「山羊だよ」
 この動物だというのです。
「山羊のスープだよ」
「山羊、ですか」
「あの動物ですか」
「それと麓に畑を持っているからね」
 そしてそこからもだというのです。
「そこで摂れた野菜も入れたね」
「そうしたスープですか」
「山羊とお野菜の」
「そうさ、あたし達も放牧や農業をはじめたんだよ」
 ドロシー達と最初に会った頃と違ってというのです。
「だからね」
「それじゃあ」
「今から」
「あんた達山羊は大丈夫かい?」
「山羊って美味しいんですか?」
 恵梨香は真剣なお顔で女王に尋ねました。
「あの生きものは」
「これがね」
 女王は恵梨香の問いに明るい笑顔で答えます、怖いお顔ですがそれでも笑顔になってそうしてこう言うのでした。
「美味いんだよ」
「そうなんですか」
「というかあんた山羊は」
「食べたことないです」
「あれっ、日本でも山羊食べない?」
「そうだよね」
 今の恵梨香の言葉にです、ジョージと神宝が驚いたお顔になって言いました。
「確かね」
「食べてたんじゃ」
「それは沖縄でしょ?」
「ああ、沖縄」
「沖縄だからなんだ」
「私神戸だから」
 八条学園は神戸にあります、だからだというのです。
「沖縄料理はね」
「沖縄料理も確かね」
「そうそう、八条町にお店があったよね」
「寮でも沖縄料理出るし」
「美味しいよね」
 二人は恵梨香の言葉を聞いたうえでこう言うのでした。
「そーきそばとか足てびちとか」
「ゴーヤチャンプルとかね」
「どれも美味しいよね」
「そうだよね」
「私もそーきそばやゴーヤチャンプルは食べたことがあるわ」
 恵梨香は少し弱い感じになって言うのでした。
「けれどね」
「山羊はなんだ」
「まだなんだ」
「美味しかったらいいけれど」
「味は安心していいよ」
 ここでまた女王が恵梨香に言いました。
「煮ても焼いても美味いよ」
「そうですか」
「お乳もチーズとかもね」
 乳製品等も美味しいというのです。
「だから楽しみにしておきなよ」
「そうですか」
「じゃあ今からだよ」
 ここでなのでした、その山羊料理を食べる為にです。
 女王は皆を女王の食堂に案内しました、見ればスクードラー達もちゃんと赤い服を着ています。カドリングの服を。
 勿論女王もです、そしてなのでした。
 皆で食堂に入るとです、お野菜のお料理に山羊のミルクやチーズにヨーグルトにです。
 山羊のお肉を焼いたもの、煮たものがテーブルの上に次々と置かれます、恵梨香はまずは八木肉のステーキを食べました。
 そのお味はです、どうかといいますと。
「あっ、本当に」
「ああ、美味いね」
「はい、とても」
 恵梨香はステーキを一口食べてからです、目を丸くさせてこう女王に言いました。
「美味しいです」
「そうだね、あたしは嘘を言わないからね」
「山羊も美味しいんですね」
「そうだよ、しかもお乳もね」
「こちらも」
 その山羊のお乳を飲んでみてです、また驚いて言う恵梨香でした。
「とても美味しいです」
「山羊はね、こうした高い山のところでも育ってね」
「お乳にヨーグルトにですか」
「チーズとかもね」
 そうしたものもあってというのです。
「美味しいんだよ」
「そうですね、いい生きものですね」
「牛や羊とはまたね」
 いいというのです。
「違うんだよ」
「こうした場所はですか」
「そう、山羊なんだよ」
 高い山の場所はといいうのです。
「いいんだよ」
「そうですか、じゃあ」
「どんどん食べるといいよ」
「わかりました、それじゃあ」
 こうしてでした、皆で。
 山羊やお野菜、乳製品のスクードラーのご馳走を皆で食べていきました、そうして全部食べたその時にはです。
 皆お腹一杯になりました、そして言うのでした。
「いや、ここでもですね」
「ご馳走になりました」
「こんな美味しいもの頂いて」
「本当に有り難いです」
「お礼はいいよ」
 女王は笑って言うのでした。
「そんなことは」
「いいんですか」
「そのことは」
「あたしもエメラルドの都でご馳走になるからね」
 だからだというのです。
「だからね」
「お互い様ですか」
「そうなりますか」
「ああ、そうだよ」
 こうお話してなのでした。
「じゃあいいね」
「はい、今度はエメラルドの都で」
「そこでお会いしましょう」
「それじゃあね」
 こうお話してなのでした、一行はスクードラーの女王と別れてなのでした。スクードラーの国を後にしたところで。
 ここで、です。ドロシーが皆に言いました。
「さて、それじゃあね」
「招待状は全部渡しましたよね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「都に戻るまでに寄っていくところがあるから」
 五人にです、ドロシーは微笑んでこう答えます。
「そこに行くわよ」
「何処ですか、そこ」
「寄る場所って」
「ええ、ウィンキーの国に行ってね」
 そこにだというのです。
「行ってね」
「あっ、ブリキの木樵さんとですね」
「かかしさんにもお会いして」
「そう、あの人達とね」
 一緒にだというのです。
「エメラルドの都に行きましょう」
「うわっ、何か凄いですね」
「またかかしさん、木樵さんと一緒にいられるって」
「あの人達と一緒にいられるんですね」
「そうよ、やっぱりあの人達と一緒だとね」
 オズの国でも特に有名な人達であるだけではありません、五人にとってはとても素晴らしいお友達だからです。
 その人達とまた一緒にいられる、五人はこのことだけで笑顔になり言うのでした。
「じゃあ行きましょう、今度はウィンキーに」
「そしてあの人達と一緒に」
「エメラルドの都に行きましょう」
「そうしましょう」
「よし、では行こう」
 モジャボロもです、五人ににこにことして言いました。
「今からね」
「はい、ウィンキーの国に」
「行きましょう」
 こうy応えてでした、そのうえで。
 一行はエメラルドの都に行く前にウィンキーの国に寄ることにしました、そしてそこで再びオズの素晴らしい住人達と会うのでした。



ガーゴイルは木だったな。
美姫 「何故か銅像をイメージしてしまっていたわね」
ともあれ、無事にガーゴイルの王様にも招待状を渡せたな。
美姫 「次の国まで運んでくれるという提案を辞退したけれど」
まあ、ゆっくりと道中を楽しみたいという気持ちも分からなくはないしな。
美姫 「でも、空を飛ぶというのも気持ち良さそうだったけれどね」
で、スクーグラの女王にも無事に渡し終えたな。
美姫 「これで招待状は全て渡せたのね」
とは言え、流石に全ての国を回るのは無理だったがな。
美姫 「それらはまた今度って所かしらね」
だな。後は帰るだけと。
美姫 「その前にちょっと寄り道してね」
かかしや木樵に会うために。
美姫 「次回はその辺りのお話なのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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