『オズのモジャボロ』
第九幕 ミュージッカー
ドロシーは煉瓦の道を歩きながら楽しく歌を歌っていました、その歌はどういった歌かとです、トトが五人にお話しました。
「これがオズの国の国歌だよ」
「この歌がなの」
「そうなのね」
「うん、他にもドロシーの歌もね」
彼女自身を歌った歌もというのです。
「沢山あるんだ」
「へえ、そうなんだ」
「ドロシーさんを歌った歌もオズの国にはあるんだ」
「それも沢山」
「ドロシーはオズの国でも有名人だからね」
本当にです、ドロシーを知らない人はオズの国にはいないと言ってもいい位です。オズマやかかし、木樵達と同じくオズの国でも有名人なのです。
それで、です。今もなのです。
「歌った歌も多いんだ」
「そうですか」
「ドロシーさんの歌も」
「そうだよ、かかしさんや木樵さんの歌も多いから」
「ううん、ドロシーさんって凄い人なんですね」
「あらためてお話を聞いたら」
それこそだと言う五人でした、ドロシーを見ながら。
「そもそもオズの国の王女様で」
「数多くの冒険をしてきたし」
「オズの国の全ての人とお友達で」
「本当に凄い人ね」
「私が?凄い?」
当のドロシーはです、五人のその言葉を聞いてでした。
きょとんとしたお顔になってです、こう言うのでした。
「全然凄くないわよ」
「オズの国の王女様なのにですか」
「生まれはカンサスの農家よ」
恵梨香に対して答えます。
「生まれなんて関係ないわ」
「数多くの冒険をしてきたのに」
「オズの国では誰でもよく旅をするわ」
ジョージに答えました。
「そして冒険になるわ」
「誰ともお友達で」
「このこともオズの国では誰でもじゃない」
今度は神宝に答えました。
「この国では誰もが友達同士よ」
「オズの国の問題を幾つも解決してきて」
「私一人でのことじゃないわ」
カルロスにも答えます。
「かかしさんも木樵さんもライオンさんもいて。他の人達もね」
「オズの国のことなら何でも知っていて」
「最初は誰でも知らないでしょ」
最後にナターシャに答えました。
「私も知っていったのよ」
「じゃあドロシーさんはですか」
「凄くないんですか」
「そうなんですか」
「全然、ですか」
「そうなんですね」
「そうよ、私は全然凄くないのよ」
こう自分から言うドロシーでした。
「ありのままのドロシー=ゲイルよ」
「カンサス生まれの女の子」
「それだけですか」
「そう、、私はずっとドロシーよ」
それに過ぎないというのです。
「だから全然ね」
「そうですか、凄くなくて」
「ありのままのドロシーさんなんですね」
「というか凄いって言われるとね」
これが、というのです。
「恥ずかしくて仕方ないのよ」
「そうですか」
「全く、ですか」
「私はただのドロシー、他の誰でもないから」
「オズの国の王様でもですか」
「全くですね」
「だから貴方達も特別扱いしないでね」
その喋り方はまさにでした、王女様ではなく。
最初にこの国に来た時と変わっていません、カンサスの娘のままです。飾らず明るく朗らかな女の子のままです。
そしてそのドロシーにです、モジャボロも言いました。
「僕達飾ったドロシーなんて想像も出来ないよ」
「そうよね」
「だって。飾らないのがドロシーじゃない」
だからこそだというのです。
「オズマやベッツイ、トロットもだけれどね」
「私達も飾らなくてね」
「女の子だね」
「そう、普通にね」
まさにというのです。
「恵梨香達と変わらない」
「私達とですか」
「全然変わらないですか」
「そう、変わらないわ」
何もかもが、というのです。
「旅行も歌も食事も大好きなね」
「女の子ですか」
「普通に」
「そう、だから気にしないでね」
本当にというのです。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「これまで通りですね」
「お友達としてですね」
「仲良くですね」
「そうして過ごしましょう」
一緒にというのです。
「オズの国ではね」
「はい、わかりました」
「じゃあ凄くないドロシーさんとです」
「一緒にいさせてもらいます」
「お友達として」
「オズの国では飾ることはないんだ」
モジャボロも飾らず言います。
「そうする必要はないんだ」
「そういうことですね」
「それなら」
「僕も飾っていないよ」
モジャボロ自身もだというのです。
「そうだよね」
「はい、そうですね」
「モジャボロさんも」
「僕飾るものもないしね」
それもだというのです。
「最初からね」
「モジャボロはモジャボロよ」
ドロシーもこう言ってきます。
「飾っても飾らなくてもね」
「そう、僕は僕だから」
それでだというのです。
「飾ることもないよ」
「そうなんですね」
「モジャボロさんも」
「飾っても自分を変えることは出来ないよ」
モジャボロは五人にこうも言いました。
「それで自分が変わったら苦労しないかもね」
「私はそもそも王宮にいても楽しいけれど」
ドロシーがここで五人に言うことはといいますと。
「こうして皆と旅や冒険をする方が肌に合ってると思うわ」
「確かにそうですね」
「そういえば」
五人もわかりました、ドロシーの今の言葉は。
「ドロシーさんって最初から冒険でしたし」
「かかしさんや木樵さん、ライオンさんと」
「だからですね」
「ドロシーさんには冒険ですね」
「その時に沢山の人とも出会えたしね」
ドロシーの旅ではよくあることです。
「それでなのよ」
「それで楽しみなのよ」
旅、そして冒険がだというのです。
「今回もこうして貴方達とはじめての旅だけれど」
「そういえばそうですね」
「僕達ドロシーさんとは」
五人もドロシーに言われてそのことに気付きました、かかし達とは最初にエメラルドの都に向かう旅をしました。ですが。
ドロシー達とはです、今がなのでした。
「はじめてですね」
「はじめての旅ですね」
「だから楽しいわ」
とても、というお顔での言葉です。
「今もね」
「そうですか。楽しんで頂いてるのでしたら」
「僕達も嬉しいです」
「ドロシーさんもそうなら」
「そうよね。それじゃあね」
笑顔のままです、ドロシーは五人に言いました。
「この旅をもっともっと続けましょう」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
こうしたことをお話してでした、一行は先に先にと進んでいきます。カドリングの国も南の端の方に行くとです。
家が少なくなってきました、田畑も。そして人の数もです。
少なくなってきました、神宝はその景色を見ながら言いました。
「何かこの辺りはまだ」
「うん、開けていないね」
カルロスも神宝に応えて言います。
「端っこの方だし」
「そうだね、この辺りは」
「これまでは結構人も多かったけれど」
「人が少ないね」
「どうにもね」
「確かこの辺りはオズの国に入ってまだ日が浅いから」
だからだと言うジョージでした。
「人もまだ少ないんだね」
「そうなるんだね、ここは」
「人が入って来ていないんだ」
神宝とカルロスも二人に応えます。
「じゃあこれからだね」
「この辺りはこれから人が入るんだね」
「そうなるんだね」
「これからだね」
「そうだね、オズの国も人が増えてきているからね」
モジャボロも三人にお話します、男の子達に。
「少しずつでも増えていくよ」
「やっぱりそうですね」
「そうなりますね」
「これからなんですね」
「そうなるわ、カドリングやウィンキーは最初はね」
ドロシーは彼女が最初に来た時のことをお話しました。
「今より全然拓けていなかったけれど」
「今みたいに拓けてきた」
「だからこの辺りもですね」
「拓けますね」
「そうよ、そうなっていくわ」
次第にだというのです、ドロシーはこうしたことはよくわかっています。
そうしてです、ドロシーはにこにことして辺りを見回しました、彼女も。
「だってここも最初は誰もいなかったのよ」
「全然ね」
「それがですか」
「今はなんですね」
「そうよ、それが今ではね」
少しずつでもだというのです。
「拓けてきているから」
「何時かはですか」
「この辺りも」
「ええ、人が増えていくわよ」
お家も田畑もだというのです。
「だから今度来る時が楽しみだわ」
「人が増えることがですね」
「お家や田畑が」
「そうなの、それじゃあいよいよね」
「はい、これからですね」
「ミュージッカーさんのところに着きますね」
「ミュージッカーさんはね」
その人のこともここでお話するドロシーでした。
「面白い人よ」
「確かあの人は」
ミュージッカーについてです、恵梨香は知っている限りのことをお話しました。
「騒がしいんですよね」
「最初はそうだったわ」
「あの人もですか」
「そう、最初はね」
そうだというのです。
「そうした音楽ばかり出していたけれど」
「今はですか」
「色々な音楽を出せる様になったのよ」
「じゃあどんな感じの音楽を」
「ポップスも出せれば」
恵梨香が最初に出した音楽はこれでした。
「ロックもクラシックもね」
「その他にもですね」
「ジャズもゴスベルもラップもよ」
「本当に色々なんですね」
「アニメや映画の音楽もね」
そうした音楽も出せるというのです。
「だから恵梨香の国は日本よね」
「はい、そうです」
「日本はアニメも有名よね」
「じゃあアニメの音楽も」
「ええ、何時でもね」
聴けるというのです、ミュージッカーから。
「だから楽しみにしていてね」
「そうなんですね」
「そうよ、オズの国にも今はテレビがあって」
「文明が反映しますからね、私達の世界の」
「そう、だからテレビもあるから」
そして電波は届くのです、オズの国にも。
「だからね」
「ドロシーさん達も日本のアニメを観てるんですね」
「いいアニメが多いわね」
「ううん、何かオズの国も私達の世界のことを知ってるんですね」
「行き来もしてるしね」
ドロシー達だけが知っている方法で、です。
「私も時々行ってるから、あっちの世界に」
「そこにですか」
「あちらの世界に」
「そう、行ってるからね」
かかし達と同じくです、ドロシーもそうしているというのです。
「あの学校にね」
「八条学園ですね」
「あの学校はいい学校よね」
「そういえばあの学園は」
八条学園についてです、ナターシャはここで言いました。
「色々なお話がありますね」
「妖怪のお話が多いわね」
「それもやたらとね」
ナターシャはこう恵梨香に答えました。
「七不思議よね、日本では」
「あの学園は全体でどれだけあるかわからないわ」
「二十や三十ではきかないわよね」
「絶対にもっと多いわ」
「学園のあちこちにそうしたお話があって」
「どれだけあるかわからないわ」
恵梨香にしてもです。
「日本の妖怪の話だけじゃないから」
「色々な妖怪の話があるわね」
「しかもオズの国の人達まで出入りしてるなんて」
「凄い学園ね」
「あの学園はちょっと特別な場所みたいだね」
モジャボロも出入りしているみたいです、それが感じられる今の言葉です。
「結界か何かがあるよ」
「結界ですか」
「それもありますか」
「そう、あるね」
こう五人にもお話します。
「あそこは」
「ううん、どういう学園か」
「謎が多いんですね」
「そうした場所だね」
それが八条学園だというのです。
「あそこは」
「だからオズの国の人達も出入り出来るんですね」
「本来は出来ない筈なのに」
「僕達は本来君達の世界には行けないよ」
これは絶対のことです、オズの国と恵梨香達の世界は本来は絶対にお互いに行き来出来ません。見ることも出来ません。
ですが、です。八条学園からだけはなのです。
「行き来出来るんだよね、あそこだけは」
「謎の多い場所なのね、考えてみたら」
「そうよね」
恵梨香とナターシャがここでお話しました、女の子達で。
「妖怪のお話も多くて」
「しかもオズの国の人達が出入り出来て」
「私達そうした学園に通っているのね」
「とても不思議な場所に」
「不思議なことは何処にもあるわよ」
ドロシーは考えている二人に言いました。
「何にでもあるし」
「不思議はですか」
「何処にも何にでもあるんですね」
「そうだったんですか」
「不思議はあちこちに備わってますか」
「そうよ、だからね」
それでだというのです。
「あの学園にもなのよ。ただね」
「あの学園はとりわけ不思議が多いね」
モジャボロも言ってきます。
「オズの国と同じだけね」
「じゃあ八条学園もですね」
「回ってみたら」
「色々面白いと思うよ」
不思議をです、楽しめるというのです。
「世の中自体がそうだけれどね」
「あちこちに不思議があるからですね」
「だからですね」
「そうだよ、今もね」
モジャボロは明るく笑って皆に言いました、今度は恵梨香とナターシャにだけ言ったのではありません。男の子達にもドロシー達にもです。
「ミュージッカーに会いに行くんだし」
「あの人も不思議ですね」
「あの人にしても」
「いつも音楽が出ている人だから」
「不思議ですね」
「そうだよ、あの人にも不思議があるから」
だからだというのです。
「楽しもうね」
「はい、あの人とも」
「そうさせてもらいます」
五人は笑顔で応えてでした、そのうえで。
一行はさらに進んでいって遂にでした、一軒のお家がある離れの場所のお庭に置かれているベンチに一人の髪の毛が殆どない丸い頭の太った小柄な男の人がいました。口髭が丁寧に切り揃えられています。
とても派手な軍服を着ています。
金モールの付いた赤いチョッキに青いベスト、それに白いズボンという格好で杖を持っています。
その人を見てです、ドロシーが笑顔で挨拶をしました。
「お久しぶり」
「おお、ドロシーさん」
ミュージッカーが声を出すと、です。その声がです。
音楽になっています、その音楽はバラードでした。
そしてそのバラードに従ってです、こう言うのでした。
「お久しぶりでね」
「バラードね」
「はい、私の今の気分は」
バラードを歌いたいというのです。
「それでなのですか」
「ううん、久しぶりの再会だから」
ドロシーはそのバラードを聴きながらミュージッカーにお話します。
「明るい音楽がいいけれど」
「明るいですか」
「ポップスとか駄目かしら」
「わかりました、それじゃあ」
ドロシーの言葉を受けてでした、そうして。
その人ミュージッカーは音楽を変えてきました、明るい音楽にです。
そのポップスの調子で、です。ミュージッカーは歌いながらドロシーに尋ねました。
「してドロシーさん、今回は一体どうして」
「ここに来たかよね」
「はい、何か御用があってでしょうか」
「あのね、今度オズマがエメラルドの都でパーティーを開くけれど」
「まさか」
「そう、それでね」
それでだというのです。
「ミュージッカーさんもお誘いしたいけれど」
「わかりました、それならです」
「それならですか」
「喜んで」
これがミュージッカーの返事でした。
「その招待お受けします」
「そうですか」
「はい、そうです」
是非にというのです、ミュージッカーも。
「楽しみにさせて頂きます」
「それならね」
「私もエメラルドの都に行かせてもらいます」
「その音楽楽しみにしているわね」
「そうですね、では」
「ええ、色々な人が招待されてるから」
ここでこう言ったドロシーでした。
「楽しみにしていてね」
「わかりました、それでは」
「それにしてもミュージッカーさんの音楽も」
ミュージッカーの今のポップスを聴きつつです、ここで。
ドロシーはしみじみとなってこう言うのでした。
「それにしてもミュージッカーさんの音楽もね」
「変わりましたか」
「最初に会った時と全く違うわ」
それこそだというのです。
「色々な音楽も聴ける様になって」
「そうですね、私も変わりました」
ミュージッカー自身も認めることでした、このことは。
「今思うと騒がしい音楽ばかり出していました」
「それが今はね」
「はい、色々な音楽を出せて歌える様になって」
「しかも自然にね」
「話せる様にもなりました」
ミュージッカーは歌いながらお話します。
「こうして」
「そうよね、やっぱりミュージッカーさんも変わるのね」
「オズの国に入って色々な音楽を知って」
「そしてよね」
「私の音楽も変わりました」
そうなったというのです。
「この通り」
「知ることによって」
「そうです」
「音楽も知ることからなのね」
「そうですね、本当に」
「それじゃあその今のミュージッカーさんの音楽をね」
「是非お聴き下さい」
ドロシーがミュージッカーさんとお話してでした、そうしてです。
一行は次の場所に向かいました、次に向かう場所はといいますと。
「次はガーゴイルのところに行こう」
「あそこですね」
「次はあの人達のところですね」
「そこに行こう、そして最後は」
その最後に向かう場所はといいますと。
「スクードラー族のところだよ」
「ううん、あの人達は最後ですか」
「最後に行くんですか」
「最後ですか」
「あそこですか」
「うん、距離の関係でね」
皆が位まいる場所の関係で、というのです。
「あそこに行こう」
「わかりました、それじゃあ」
「今から」
「そう、行こうね」
こうお話してでした、そのうえで。
一行はガーゴイルの国に行くことになりました、今度は。
その途中で夜になりました、それでなのでした。
またテントを開いて休むことになりました。モジャボロがテーブルかけを開くとそこに出て来たものはといいますと。
スポゲティです、そのスパゲティを見てカルロスが首を傾げさせました。
「トマト?」
「そうね」
ナターシャがカルロスの言葉に応えます。白いパスタの上にトマトのソースがたっぷりとかけられています。
そのトマトの他にです、ソースの中に入っているものは。
「マッシュルーム、ソーセージに」
「大蒜よね」
「これって確か」
「日本のスパゲティね」
「ナポリタンだよ」
ここでモジャボロが皆に言います。
「これはどうやら日本人がアメリカに持ち込んだスパゲティみたいだね」
「えっ、そうなんですか!?」
ここで驚きの声をあげたのは恵梨香です、彼女が言うには。
「これは確かにナポリタンですけれど」
「うん、そうだね」
「けれどナポリタンって」
恵梨香はそのナポリタンを見ます、オリーブオイルで綺麗に輝いていてしかもソースの上にチーズがかけられていて溶けてきています。
その美味しそうなナポリタンを見ながらです、恵梨香は言うのでした。
「イタリアのスパゲティなんじゃ」
「多分違うよ」
「うん、イタリアのじゃないと思うよ」
ジョージと神宝がここで恵梨香に言います。
「アメリカにもイタリア系の人いるけれど」
「こうしたスパゲティは作らないの」
「そう、作らないから」
ジョージが恵梨香にお話します。
「このスパゲティはね」
「そうだったの」
「これ日本だけだと思うよ」
神宝も言います。
「ナポリタンはね」
「ナポリ、イタリアじゃないのね」
「だから日本人が作ったんだよ」
「そうしたスパゲティなんだよ」
二人は恵梨香にさらに言います。
「他にもそうしたお料理あるけれど」
「このスパゲティもなんだよ」
「ううん、そのことはじめて知ったわ」
恵梨香は驚くことしきりでした、それで言うのでした。
「ナポリタンは日本人が作ったの」
「そうよ。けれどね」
ドロシーがにこりと笑ってです、ここで恵梨香に言うことは。
「美味しいわよ、ナポリタン」
「はい、とても」
「だからね」
それでだというのです。
「食べましょう」
「何はともあれですね」
「イタリアか日本かはいいとして」
「食べることですね」
「そうしましょう、じゃあ今晩はね」
「スパゲティですね」
「そうしましょう」
こうしたことをお話してでした、そのうえで。
皆でスパゲティを食べます、ナポリタンは確かにです。
美味しいです、恵梨香は自分のお皿に取ったナポリタンをフォークで食べながら満面の笑顔で言いました。
「本当に美味しいです」
「それでしょ、それじゃあね」
「はい、楽しんでですね」
「食べましょう」
勿論ドロシーもナポリタンを食べています、そうしての言葉です。
スパゲティは本当に美味しかったです、ですが。
その中でなのでした。恵梨香はこうも言いました。
「スパゲティに大蒜とチーズは欠かせないですね」
「その二つを入れると味が違うのよね」
「はい、それで全く」
「だからなのよ」
このナポリタンにもだというのです。
「入れているのよ」
「そうですね、だから」
「たっぷりと食べましょう」
「何か量が減らないですね」
「食べたいだけ出て来るから」
そうだというのです。
「だから」
「それではですね」
「お腹一杯食べましょう」
「ジュースもあるよ」
モジャボロはこれも出してきました。
「蒲萄ジュースがね」
「ワインじゃないんですね」
「それとは」
「ははは、子供は飲めないよ」
お酒はというのです。
「だからだよ」
「やっぱりですか」
「僕達はですね」
「そう、飲めないからね」
だからだというのです。
「だからジュースだよ」
「わかりました、それじゃあ」
「蒲萄ジュース頂きます」
五人もこう応えます、そしてです。
ドロシーもです、その蒲萄のジュースをモジャボロから貰ってそのうえで楽しく飲みながらこう言うのでした。
「オズの国にもお酒はあるけれど」
「ドロシーさん達はですね」
「飲まないですね」
「子供だからね」
それでだというのです。
「飲まないわ」
「そうですよね、やっぱり」
「お酒は」
「そう、子供は飲まないわ」
こう言うのです。
「あとかかしさん達もね」
「ですよね、元々飲む必要のない人もいますし」
「ですから」
「そう、オズの国ではお酒を飲む人は少ないかもね」
「それは信じられないことですね」
ナターシャがこう言う理由はといいますと。
「ロシアですとそれこそ皆飲みますから」
「皆なのね」
「子供はともかくとしまして」
「大人は皆飲むの」
「飲まないとやっていけないです」
それがロシアだというのです。
「寒くて」
「ああ、アラスカも昔はロシアだったけれどね」
モジャボロがここでこう言いました。
「寒いからね」
「ロシアはとにかく寒くて」
「それでだね」
「はい、お酒を飲んで温まらないと」
「とてもだよね」
「やっていけないです」
ロシアの寒さはそこまで凄いというのです。
「何しろ吐いた息が凍りますから」
「そうそう、アラスカでもだよ」
「ウォッカは欠かせません」
「ロシアだとそうだね」
「けれどオズの国ですと」
「いつも暖かいからね」
それがオズの国です、いつも春なので。
「お酒を温まる為に飲む必要はないね」
「だからですね」
「楽しみとして飲んでるんだ」
飲む人はというのです。
「飲む人はね」
「ロシアでもお酒を飲むことは楽しんでます」
ナターシャはそれはと言いました。
「ちゃんと」
「つまり必要である以上に」
「はい、楽しみです」
「成程、ロシアでは飲むことが第一の楽しみなんだ」
「本当に皆いつも飲んでます」
「寒さに向かう為以上に」
「飲むことを楽しんでいます」
それがロシアだというのです、そうしたことをお話してなのでした。
そうしたことをお話してです、ナターシャも蒲萄の赤いジュースを飲んでにこりとして言いました。
「とても美味しいですね」
「そうよね。じゃあパスタとね」
「ジュースも楽しませてもらいます」
こうお話してでした、皆はこの夜も楽しく一緒に飲んで食べました。そうして次はガーゴイルの国に向かうのでした。
朝になってです、起きたトトが言いました。
「いい朝だよね」
「そうね、この日もね」
テントから出たドロシーがトトに応えます。
「とてもいい朝ね」
「そうだよね」
「ええ、それじゃあね」
「今日もだね」
「皆で歩いてね」
そうしてだというのです。
「ガーゴイルの国に向かいましょう」
「そうしようね、皆で」
「今回の旅も色々なところを巡ってるね」
「そうね、私達の旅はいつもそうだけれど」
「こうして色々な場所を巡って」
「楽しんでるわね」
「楽しんでこそよ」
それでこそだというのでした。
「旅なのよ」
「そうだね、じゃあこの旅も」
「行こうね」
「それじゃあね」
こう話してでした、ドロシーはそれぞれのテントから出てきた五人にも声をかけました。勿論モジャボロにもです。
皆で今度はガーゴイルの国に向かうのでした、気持ちよい朝の日差しの中を歩きながら。
ミュージッカーを誘うからか、今回は音楽の話が出てきたな。
美姫 「みたいね。オズの国も色々と変わってきているみたいね」
だな。良い変化みたいだから良かった。
美姫 「テントでお休みして、また旅の再開ね」
次はガーゴイルの国か。
美姫 「ここはどんな国なのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」