『オズのモジャボロ』




              第八幕  狐の国

 一行はまずです、狐の国に来ました。狐の顔に後ろ足で立って服を着ている狐達が一行を迎えてこう言ってくれました。
「ようこそ、狐の国に」
「ドロシーさんお元気そうで何よりです」
「モジャボロさんお久しぶりですね」
「トトも相変わらず可愛いね」
「それにこの子達は」
 ここで、です。狐達はモジャボロ達の後ろにいるドロシー達を見ました。そうしてそのうえでこう言ったのでした。
「ドロシーさんのお友達ですか?」
「何か我々とは違う感じの服ですね」
「五人共それぞれの服を着てますし」
「オズの国の子供達とは少し違う様な」
「どういった子達でしょうか」
「私やベッツイと同じなの」
 ドロシーはにこりと笑って狐達に説明しました。見れば狐達の服は赤いです、そしてお椀を伏せたみたいな形のお家もです。 
 どれも赤いです、狐達も完全にカドリングの即ちオズの国の住人になっていることがわかります。その国の中でお話するのでした。
「他の世界から来たの」
「カンサスからですか?」
「この子達も」
「いえ、それぞれ国が違うわ」
 ここでドロシーは狐達に五人がそれぞれどの国の生まれかをお話しました。狐達はそのことを聞いてからこう言いました。
「へえ、日本から」
「カンサスってアメリカの中にあることは知ってたけれど」
「中国、あの国からなんだ」
「ブラジルからようこそ」
「ロシアから来てくれるなんてね」
 こうそれぞれ言って五人も歓迎したのでした、そしてです。
 赤い綺麗な軍服と銃を持った狐の兵隊さんのうちの一人が一行のところに来てなのでいsた。そのうえでこう言ってきました。
「それでは今から」
「はい、王様のところにですね」
「狐の王様のところに」
「ご案内します」
 今からというのです。
「私の後について来て下さい」
「わかりました。それでなのですが」
「それとは」
 カルロスが興味深いお顔で狐の兵隊さんを見ています。そのうえで言うことはといいますと。
「兵隊さんは黒ですよね」
「私の毛の色がですね」
「はい、ですが」
 カルロスは自分の周りの狐達を見てこう言うのでした。
「狐さんっていってもそれぞれの狐さんで毛の色が違うんですね」
「そうです、狐といっても種類が多くて」
「だからですね」
「普通の狐色の毛の狐もいれば」
 その狐もいます、ですが。
 兵隊さんみたいに黒い毛の狐もいればです、赤い毛の狐もいます。銀狐に白い狐もです。本当にそれぞれです。
 その狐達を見てです。カルロスは言うのでした。
「いや、色々なんですね」
「そうです、一口に言いましても」
「それは僕達と同じですね」
「ははは、ヒトとですね」
「はい、同じですね」
「そうですね」
「はい、そこは」
 全くだというのです。
「一緒ですから」
「そうですね、色々な毛の色の狐がいて普通ですね」
「そういうことです、では」
「案内をですね」
「させて頂きます」
 こうしたお話もしてでした、そのうえで。
 一行は兵隊さんに狐の王様がいる宮殿に案内されました。王宮の中には見事な服と王冠を被った立派な狐が玉座にいました。
 その狐の王様がです、皆に言ってきました。
「ようこそ、我が国に」
「お久しぶり、元気そうね」
「見ての通りだよ」
 とても気さくにです、王様は玉座からドロシーに答えます、そしてです。
 王様は一行にです、続いてこう言うのでした。
「それでだけれど」
「うん、今からだね」
「玉座に座って話すとどうにも堅苦しいからね」
 だからだというのです。
「テーブルを囲んで話そう、我々は友達同士だからね」
「だからこそだね」
「うん、一緒にね」
 同じテーブルに座ってというのでした。
「一緒に話そう」
「うん、それじゃあね」
「それと君達のお話も聞かせてもらおうかな」
 王様も五人に顔を向けてこう言うのでした。
「是非ね」
「はい、それじゃあですね」
「今から」
「円卓の部屋に行こう」
 そしてそこで、というのです。
「そこでお茶を飲みながらお話しよう」
「それでは」
 五人も王様のお誘いに笑顔で応えてです、そのうえで。
 一緒に玉座の間から出てでした、円卓の間に入ってそこでお話します。そしてここで五人は王様に自分達のことをお話しました。
 王様は全部聞いてからです、目を輝かせて言うのでした。
「ううん、ドロシー嬢といいベッツイ嬢といい」
「あの人達と同じでして」
「僕達もあちらの世界から来まして」
「とはいってもあちらの世界にはすぐに戻れます」
「あの世界に住んでいる場所がありまして」
「オズの国には遊びに来ているんです」
「何ならずっとここにいてもいいんだよ」
 王様は笑って五人にこう言いました。
「君達が望むならね」
「それも楽しそうですけれど」
 それでもだと言う五人でした。
「やっぱりお家はあちらの世界ですから」
「ですから」
「今はやっぱり」
「あちらの世界に」
 いたいというのです。
「そう考えています」
「とりあえずは」
「そうなんだね。まあとにかくね」
「はい、今はですね」
「これからですね」
「君達をもてなさせてもらおう」
 是非にという言葉でした。
「我々の一流のね」
「あとだけれど」
 ドロシーも王様に言ってきます。
「一ついいかしら」
「うん、何かな」
「実は今回私達が狐の国にお邪魔した理由は」
「何かいい知らせだね」
「そう、オズマがエメラルドの都でパーティーを開くから」
「若しかしてそのパーティーに私を」
「招待状を持って来たわ」
 こう言って実際にでした、ドロシーは王様にその招待状を出しました。そのうえでこう王様に言うのでした。
「これ、受け取ってくれるかしら」
「喜んで」
 王様は狐のお顔を綻ばせてドロシーに答えました。
「そうさせてもらうよ」
「有り難う、それじゃあね」
「次に会うのはエメラルドの都だね」
「そこになるわね」
「そうだね、それじゃあね」
「ええ、次はあの場所で会いましょう」
「そのことも楽しみだよ」
 こうお顔を綻ばせて言う王様でした、そしてです。
 今度はです、皆にこう言うのでした。
「それでは今からね」
「おもてなしね」
「それをさせてもらうよ」 
 是非にというのでした。
「我々のご馳走でね。実はね」
「実は?」
「実はっていいますと」
「うん、最近我々も新しいご馳走を知ったんだ」 
 そうなったというのです。
「とっておきのものをね」
「というとまさか」
 恵梨香が王様の言葉に目を輝かせて言ってきました。
「揚げですか」
「そう、揚げだよ」
「やっぱりそれですか」
「いや、最近あれを知ったんだけれどね」
 その揚げをだというのです。
「あれはいいね」
「狐の国もオズの国だからですね」
「オズの国の料理はアメリカの料理が反映されるからね」
「アメリカにも日系人の人がいて」
「あの人達が揚げを食べるからね」
 狐さん達もだというのです。
「私達も揚げを食べるんだよ」
「そうですね」
「いや、揚げは最高だよ」
 そこまで凄いというのです。
「美味しいね、本当に」
「そうですか」
「うん、ただ」
 ここで、です。王様は恵梨香を見て言うのでした。
「君は我々が揚げを好きなのを知っているね」
「はい、よく」
「それはまたどうしてだい?」
「日本では狐さんは揚げが大好きですから」
「君の国ではだね」
「はい、そうなんです」
 このことから知っているというのです。
「揚げは日本のお料理で日本の狐さんが揚げが好きですから」
「そう、オズの国で日系人が揚げを作ってからね」
「この国でもですね」
「うん、揚げが入ってきてね」
 王様はとても上機嫌で恵梨香にお話します。
「我々も食べる様になったんだよ」
「それで今もですね」
「きつねうどんに揚げを焼いたものに」
 その他にもでした。
「煮たもの、おでんに入れてもいいね」
「おでんも召し上がられるんですね」
「揚げをたっぷりと入れたね。薄揚げをお鍋に入れることもあるよ」
「とにかく揚げですね」
「私達はね」
「それで今もですね」
「遠慮はいらないよ」
 全く、というのです。
「どんどん食べてもらいたい」
「それでは今から」
「うん、料理を出させてもらおう」
 王様はこう言ってでした、自分の手元にあった鐘を鳴らしました。するとです。
 様々な鳥料理と一緒にです、揚げ料理も出てきました。きつねうどんに揚げを焼いたもの、おでんに薄揚げにです。
 様々な揚げ料理が出て来ました、王様はその沢山の揚げ料理を前にしてにこにことして一行に言いました。
「では今から食べよう」
「はい、鳥に揚げをですね」
「ご馳走よ」
「我が宮廷のシェフが腕によりをかけて作ったものだよ」
 どのお料理もだというのです。
「皆で食べよう」
「わかりました、それじゃあ」
「今から」
 皆も笑顔で応えてでした、そのうえで。
 食べる前の挨拶をしてです、ご馳走を食べました。恵梨香はきつねうどんを一口食べてから目を丸くさせて言いました。
「うわっ、とても美味しいですね」
「ははは、気に入ってもらえたようだね」
「完全に日本の味ですね」
「そうだよ、揚げ料理はね」
「揚げが日本のお料理だからですね」
「そうなるね、揚げ料理だけは味付けが違うね」
 王様は焼いた揚げをにこにことして食べながら言います。
「これだけは」
「アメリカの味付けじゃないわね」
 ドロシーはいなり寿司を食べています、揚げで包んだお寿司を。
「揚げだけは」
「そうですね」
 恵梨香はドロシーにも答えました。
「これは」
「ええ、薄味でお醤油をきかせてるわね」
「だしも日本のもので」
「これが日本の味付けなのね」
「そうなんです、だしは鰹節やにぼしですね」
 恵梨香はこのこともお話しました。
「日本ではそれを使うんです」
「それはオズの国の和食も同じだけれど」
「何か日本の味付けではないですね」
「そうね、それはね」
「やっぱり日本とアメリカではそうしたところが違うんですね」
 同じ食材でもです、何処か違うというのです。
「そうなんですね」
「そうね、面白いわね」
「ですね、それでなんですけれど」
「揚げ料理ね」
「ドロシーさんはどうですか?」
「とても美味しいわ。確かに薄味だけれど」
 ドロシーからしてみればです、ですがそれでもだというのです。
「美味しいわ」
「それは何よりです」
 恵梨香は日本の味がドロシーにも好評で笑顔になりました、そのうえでの言葉です。
「それでは」
「ええ、このお料理もね」
「楽しんでくれ給え」
 王様が言ってきました、そしてでした。
 皆でご馳走を食べ終えるとです、次は。
「デザートはね」
「はい、何ですか?」
「それは」
「果物だよ、蒲萄とかをね」
 蒲萄と聞いてです、今度はナターシャが王様に言いました。
「狐と蒲萄ですね」
「あのお話だね」
「はい、それを思い出しましたけれど」
「ははは、食べられないからといって我々はすねたりはしないよ」
「オズの国の狐さん達はですね」
「そう、そんなことはしないよ」
 笑ってこう言うのでした。
「だって別の蒲萄があるじゃないか」
「だからですね」
「そうだよ、その蒲萄もまた食べる機会があるかも知れないし」
「それですねることはないですね」
「すねる必要がないじゃないか」
 全く、というのが王様の首長でした。
「だからしないよ」
「そうですか、それでは」
「うん、蒲萄も他の果物も食べよう」  
 デザートもだというのです。
「そうしよう」
「はい、それでは」
「デザートも」
 こうしてでした。皆はデザートも食べました。そうしてです。
 デザートも食べ終えてからでした、モジャボロは王様にこう言いました。
「では悪いけれど」
「お暇だね」
「そうさせてもらいたいけれどいいかな」
「まだ行くところがあったね」
「うん、今度は驢馬の国に行くよ」
 そこにだというのです。
「それであの国の王様にも招待状を届けるよ」
「わかった、では次は」
「エメラルドの都で会おうね」
「あの都で」
 王様は笑ってでした、今は一行とお別れするのでした。そうしてその話をしてからでした。
 一行は狐さん達に別れを告げて今度は驢馬の国に向かいました。その道中においてです。
 カルロスは陽気に歩きながらモジャボロに尋ねました。その尋ねることはといいますと。
「次に行く国ですけれど」
「驢馬の国だね」
「はい、狐の国と仲が悪かったですよね」
「今は仲直りしているよ」
 このことも安心していいというのです。
「それでお互いに仲良く付き合ってもいるよ」
「そうなんですね」
「うん、それとだけれどね」
「それと?」
「あの国の食べものだけどね」
「草、ですか?」
「ははは、それもあるけれどね」
 それでもだとです、モジャボロは笑ってカルロスにお話しました。
「他にも沢山の食べものがあるから」
「僕達は草は食べないんですね」
「食べなくていいよ、人参や他のお野菜とね」
「その他にもですか」
「オートミールもあるよ」
 このお料理もあるというのです。
「だから楽しみにしていてね」
「驢馬の国のお料理もですね」
「そう、お野菜もいいものだね」
 食べるにあたって、とです。モジャボロはこうカルロスにお話します。
「だから今度はね」
「菜食ですね」
「それを楽しもう」
「わかりました、それじゃあ」
「お野菜も沢山食べないとね」
 ここでこう言ったのは神宝でした。
「よくないからね」
「お野菜ねえ」
 ジョージが神宝に応えます。
「僕日本に来て相当食べるようになったよ」
「というかアメリカではだよね」
「ファーストフードが多いね」
「お野菜はレタスとかフライドポテトばかりだね」
「だから日本に来てからなんだ」 
 アメリカにいた時より遥かに、というのです。
「お野菜をかなり食べるようになったよ」
「そうなんだね」
「いや、お野菜もいいね」
 しみじみとして言ったジョージでした、この言葉を。
「美味しいよ」
「しかも身体にいいよ」
「君の国の八宝菜なんかいいね」
「ああ、あれだね」
「うん、あのお料理はお野菜もたっぷり入っていてね」
 それでだというのです。
「いいね」
「他にも中国にはお野菜を使ったお料理が沢山あるよね」
「どれも美味しいね」
「中華料理はね」
 それこそ、というのです。神宝にしてみても。
「美味しいものばかりでね」
「そうだよね。あとお野菜を食べるには」
 さらに言うジョージでした。
「お鍋なんかもいいんだよね」
「この前すき焼き食べたね」
 神宝はすき焼きのことを思い出してにこにことしました。
「あれはよかったね」
「うん、お葱がよかったね」
「他にも水炊きとかね。河豚とか鮟鱇とか」
「そうそう、どっちも外見はまずそうだけれど」
「実際に食べるとね」
「凄く美味しいんだよね」
「あれでね」
 お鍋に入れるお魚のお話もするのでした。
「いいんだよね」
「そうだよね」
「あとお野菜を食べるにはシチューもいいね」
「スープはいいよ」
 実際にお野菜を食べるにはというのです、神宝も。
「お野菜をたっぷり入れると美味しいしね」
「余計にだね」
「そう、いいからね」
 だからだというのです。
「食べるといいよ、ジョージもね」
「そういうことだね」
「うん、それで今度の驢馬さん達の国では」
「そのお野菜をだね」
「たっぷり食べることになるかもね」
「何かご馳走ばかりになって悪いね」
「全くだね」 
 あまりにもそうしてもらってばかりで申し訳なくも思う五人でした、ジョージと神宝だけでなく。ですがその五人にです。 
 ドロシーがです、笑顔でこう言ってきました。
「いいのよ、貴方達だってエメラルドの都ではお料理を作るわよね」
「はい、それぞれの」
「そうさせてもらいます」
「貴方達は今はご馳走になっているけれどね」
 エメラルドの都では、というのです。
「パーティーの時にはご馳走するのよ」
「私達がですね」
「そうする番なんですね」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「楽しく食べてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあエメラルドの都では」
「そうさせてもらいます」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 五人はエメラルドの都では自分達がご馳走することを楽しみにすることにしました。そのエメラルドの都でのパーティーの時に何を作るか。
 恵梨香はです、こう皆に言いました。
「お寿司はね」
「あれは難しいわよ」
 ナターシャが恵梨香に返しました。
「物凄くね」
「そう、握るだけじゃないから」
「そうよね、お寿司はね」
「お握りは作ることが出来るけれど」
 これはというのです。
「けれどお寿司はね」
「あれは無理よね」
「お寿司は本当に難しいって言われてるの」
「お茶で三年かかるのよね」
「美味しいお茶を淹れることだけでもね」
 まずはお茶からだと言われているのがお寿司です、ですがそのはじまりのお茶ですら、というのです。お寿司は。
「難しいのよ」
「三年ね」
「それで御飯、お寿司のじゃりを作ることも」
「難しいのよね」
「それも三年かかるって言われてるの」
 これもだというのです。
「それで最後の握ることも」
「三年?」
「そう、三年なの」
 こちらもそれだけかかると言われているというのです。
「最後もね」
「合わせて九年ね」
「私達今十一歳だから」
「上手に出来る時には二十歳よ」
「物凄く先よね」
 子供達からするとです、本当に九年は長いです。だから恵梨香もナターシャも九年という歳月に途方もないものを感じたのです。
 それで、です。ナターシャは恵梨香に言いました。
「お寿司は無理よ」
「それはよね」
「ええ、残念だけれど」
「回転寿司でもないと」
「回転寿司ねえ。あれね」
「あれだと出来るけれど」
 例えです、恵梨香達でもだというのです。
「機械もすぐには出来ないから」
「だからよね」
「そう、今回はね」
「諦めるしかないわね」
 こうしてお寿司は無理だろうということになりました、そうしたお話をしつつです。
 一行は驢馬の国に向かいます、そして二日程歩いてでした。
 その驢馬の国に来ました、するとこの国でもでした。
 驢馬さん達も赤い服を着ています、カルロスはその赤い服の驢馬さん達を見てしみじみとしてこう言うのでした。
「この人達もカドリングなんだね」
「そうだね、この国の人達なんだね」
「今ではね」
 ジョージと神宝がカルロスのその言葉に応えます。
「そうなったんだね」
「オズの国に入って」
「いや、本当にオズの国は色によって分かれているんだね」
 しみじみとして言ったカルロスでした。
「それぞれの色に」
「どの色が一番いいとかはないけれど」
 それでもだと言ったのは恵梨香でした。
「本当にそれぞれの国の色に分かれているわね」
「ただ、色が面白いよね」
 神宝がここで言うことはといいますと。
「紫、青、赤、黄色、緑ってね」
「その色が面白いの?」
「中国じゃ五色は黒、青、赤、白、黄色なんだ」
「それ何の色なの?」
 恵梨香は首を傾げさせて神宝に中国の色について尋ねました。
「一体」
「五行っていう考えからくるものなんだ」
「五行?」
「そう、北が黒、東が青、南が赤、西が白、真ん中が黄色なんだ」
「東と南はオズの国と一緒だね」
 ジョージは神宝の説明を聞いてこう言いました。
「後は違うけれど」
「うん、黒と白はないね」
「その代わりに紫と緑があるね」
「そこが違うね、方角の色も」
「そうだね」
 こうお話するのでした。
「国によってそういうの違うんだね」
「中国は中国で」
「オズの国はオズの国で」
「そうだね」
「そうね、私も今気付いたわ」 
 ドロシーもでした、五人に応えて言います。
「中国の方角のそれぞれの色のことははじめて聞いたけれど」
「違うことにですけ」
「ええ、国によってそれぞれ方角の色とかが違うのね」
「そうですね」
「本当にね、このことも面白いわね」
 ドロシーは神宝とお話しながらしみじみと思ったのでした。
「オズの国はオズの国ね」
「中国は中国ですね」
「それぞれの違いね」
「ええ、そこは」
「文化の違いだね」
 それは何かということをです、モジャボロが言いました。
「それは」
「文化の違いなのね」
「これこそがね。それぞれの国に文化があってそれぞれ違うんだ」
「そうなんですね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「どの文化にも違いがあるだけでどの文化が一番いいとかはね」
 そうしたことはというのです。
「ないんだよ」
「オズの五つの国に優劣がないことと一緒ね」
「そうだよ、カドリングとマンチキンどっちが立派かな」
「どっちも立派な国よ」
 ドロシーはモジャボロにすぐにこう答えました。
「優劣なんかないわ」
「そうだね、だからね」
「それぞれの国の文化もなのね」
「優劣はないんだよ」
「どの国が優れているとかは」
「うん、ないんだ」 
 そうだというのです。
「そういうことはね」
「それで狐の国も驢馬の国もなのね」
「そう、優劣はね」
 それはというのです。
「ないよ」
「そうなのね」
「だってドロシーはどっちの国も好きだね」
「どちらの国の人達も私の大切なお友達よ」
「そういうことだよ。文化もまたそうだから」
「そういうことね」
 ドロシーも納得しました、そうしてでした。
 皆で驢馬の国に入ります、そしてこの国でもでした。
 兵隊さんが出てきました、驢馬の兵隊さんがそうしてドロシー達に恭しく敬礼をしてからこう言ってきました。
「それでは今から」
「はい、王宮にですね」
「そちらにですね」
「案内させて頂きます」
 こう皆に言うのでした。
「どうぞこちらね」
「お願いします」
 五人が応えてでした、かくして。
 一行は今度は驢馬の王様のところに案内してもらいました。驢馬さんの王様もとても立派な服と冠を着ています、まさに王様です。
 その驢馬さん達の王様がです、モジャボロとドロシー、それにトトを見て笑顔で声をかけてきました。その言葉はといいますと。
「お久しぶり、元気そうだね」
「うん、王様もね」
「お元気そうね」
「私も元気だよ、ではね」
 王様から一行に言うのでした。
「はじめて見る子達もいるから」
「ええ、この子達のことね」
「今日ここに来てくれた理由も聞きたいしね」
「わかったわ、それじゃあね」
 ドロシーが玉座の王様に笑顔で応えてでした。そのうえで。
 一行は驢馬の王様ともお話をすることになりました。そうして今度は驢馬の国の王宮の円卓に皆で座ってでした。お互いのことをお話しました。
 そしてでした、王様は五人のことを全て聞き終えてからしみじみとしたお顔になってこんなことを言いました。
「いや、それはまた面白いね」
「面白いですか?」
「というと何が面白いんでしょうか」
「いや、ドロシー嬢やベッツイ嬢、トロット嬢にこのモジャボロさんに」
 ドロシー達を見つつ五人にお話するのでした。
「君達もこの国に来たね」
「はい、学校の時計塔の最上階から」
「来させてもらっています」
「オズの国は本来は無線以外の手段では外の世界と遮断されているんだ」
 見えもしません、魔法でそうなっているのです。
「それで来るということも運命だね」
「私達がオズの国に来たこと」
「そのことが」
「うん、運命だよ」 
 まさにです、それだというのです。
「面白い運命だね」
「言われてみればそうですね」
「確かにそうですね」
「人には運命があるんだよ」
 王様は哲学者の様にお話するのでした。
「君達にもね」
「だからですか」
「僕達がオズの国に来たこともですか」
「運命ですか」
「そう、ドロシー王女がオズの国に来たこともそうだよ」
 ドロシーもだというのです。
「この人についてもね」
「そうね、私オズの国の王女になるまでも何度もオズの国に来てるから」
 そうしてその都度オズマやモジャボロと会い魔法使いと再会しました。その中でボタン=ブライトとも会っています。
「運命よね」
「私は運命を信じているよ」
 王様はとても嬉しそうな声でこう言いました。
「本当にね」
「私達と出会えたことも」
「モジャボロさんともね」
「会えたことは嬉しかったよ」
 モジャボロはにこにことしていますがその中に微妙なものを入れてそうしてこうしたことを言ったのでした。
「けれどね」
「最初に会った時のことだね」
「いや、驢馬の頭になったことにはびっくりしたよ」
 その時のことをお話するのでした。
「本当にね」
「あの時は済まなかったね」
「今ではいい思い出だけrどね」
「私はまだ驢馬の頭以外に最高なものはないと思っていたよ」
「けれど最高というものはね」
「うん、一杯あるね」
「そのことがわかったよ、あれから」
 王様も変わったのです、このことは狐の王様も同じです。
「本当にね」
「それに魔法もオズマ姫に返上したしね」
「私は今は魔法は使わないよ」
 オズの国で魔法を使えるのはオズマとグリンダ、そして魔法使いだけだと定められています。だから驢馬の王様は魔法を使う力をオズマに返上したのです。ですからもう誰も驢馬の頭に変えることは出来ないのです。
 そしてそれ以前になのです。
「どの頭も最高だよ」
「驢馬の頭以外にもね」
「そのことがよくわかったよ」
 モジャボロに話すのでした。
「今はね」
「それではね」
「うん、それでだね」
「招待状だけれど」
 ドロシーが王様に言ってきます、驢馬の王様にも。
「受け取ってくれるかしら」
「喜んで」
 笑顔で答えた王様でした。
「願ってもない申し出だよ」
「それではね」
 ドロシーも王様の返事を受けてです、そのうえで。
 王様に招待状を差し出しました、王様もその招待状を受けました。
 こうして驢馬の王様もパーティーに参加することになりました、そして招待状のことが終わってからでした。
 ここで、です。王様はこう皆に言いました。
「それではね」
「ええ、今からよね」
「皆にご馳走を振舞わせてもらうよ」
「それじゃあ」
「さて、皆遠慮なく食べてくれ」
 王様が鐘を鳴らすとでした、早速。
 人参や青菜類、その他にも様々なお野菜から作られたご馳走が運ばれてきました。サラダもあれば焼いたものや煮たものもあります。
 そのお野菜達を見てです、恵梨香は言いました。
「美味しそうね」
「そうだね、というかね」
「うん、意外と種類が多いね」
 ジョージと神宝はその沢山の数と種類のお野菜から作られたご馳走達を見て言いました。
「お野菜っていってもね」
「色々な国の色々なお料理があるね」
「野菜を入れたシチューもあって」
「中々以上に豪勢だね」
「このシチューはお肉だけ入っていないわね」
 ナターシャはそのトマトと玉葱、ジャガイモが入っているシチューを見て言います。
「そうなのね」
「そう、驢馬は肉や魚は食べないからだよ」
「だからですね」
「その代わり野菜はね」
「ふんだんにありますね」
「オートミールもあるよ」
 見ればそれもあります、とても美味しそうなオートミールも。
「だからね」
「はい、これもですね」
「食べていいんですね」
「遠慮はいらないと言ったよ」
 王様は笑って五人に述べます。
「ではいいね」
「はい、それじゃあ」
「いただきます」
「御飯もパンもあるからね」
 そうしたものもありました、見れば。
 恵梨香はです、お握りもあることに驚いて言いました。
「お握りもあるんですか」
「これもお肉やお魚じゃないからね」
 だからあるとです、王様は恵梨香に笑って答えました。
「だからだよ」
「お肉やお魚じゃないといいんですね」
「今の我々はそうだよ」
「草だけじゃなくて」
「そう、野菜や穀物なら何でもいいんだよ」
 そうなったというのです。
「我々の食生活も変わったんだよ」
「煮豆も凄く美味しそうですね
 カルロスはこのご馳走に注目しています。
「食べることが楽しみです」
「それではね」
「はい、いただきます」
 こうしてでした、一行は驢馬の国でもご馳走を頂くのでした。どのお野菜も素晴らしい素材でしかもシェフの腕もよくて。
 楽しめました、ドロシーは野菜ジュースを飲んで言いました。
「お肉もいいけれどね」
「お野菜もですね」
「とても美味しいですね」
「そう、どの食べものもバランスよく食べてこそよ」 
 身体にいいとです、五人にお話するのです。
「そうしたら健康になれるのよ」
「オズの国でも健康ってあるんですね」
「病気にはならないけれど」 
 老いることも死ぬこともありません、そして病気になることもです。
 しかしです、それでもなのです。
「身体の調子が悪くなるから」
「だからですね」
「バランスのいい食事はオズの国でも大事なんですね」
「この国でも」
「そう、だから私もね」
 ドロシーにしてもだというのです。
「ちゃんといつも気をつけてるの」
「そうなんですね」
「バランスよく食べてこそですね」
「オズの国でも楽しく生きられる」
「そういうことですね」
「お野菜美味しいでしょ」
 ドロシーは野菜ジュースを飲みながらにこにことして皆にお話します。
「だからお野菜も食べるべきなのよ」
「ですね、じゃあ驢馬の国の他の場所でも」
「お野菜頂きますね」
「これまでもお野菜は食べているけれどね」
 実はそうだったりします、ドロシーも五人もこれまでオズの国のお野菜もかなり食べています。けれどこれからもだというのです。
「食べるのよ」
「はい、それじゃあ」
「これからも」
「うん、野菜はいいものだよ」
 王様もここで五人に言いました。
「楽しく食べるに値するものだよ
「そうですね、本当に」
「楽しく食べましょう」
「この時だけでなく」
 五人は王様のお言葉に笑顔で応えてなのでした、野菜のご馳走達を堪能しました。そうしてその楽しい宴の後で。
 驢馬の国を後にして次の場所に向かうことにしました、王様は一行を国の門のところまで送ってからこう言いました。
「では都で」
「はい、お会いしましょう」
「次はあそこで」
「別れは次に会うまでのお別れだよ」
 こうも言った王様でした、この場で。
「だから明るくね」
「笑顔で、ですね」
「別れないと駄目ですね」
「そうだよ、ではまた会おう」
「エメラルドの都で」
「楽しく」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行と王様は仲良く別れの挨拶をしました、そうしてでした。
 一行は今度はミュージッカーのところに向かいました。その途中にトトが皆にこうしたことを言ったのでした。
「一つ気になることがあるけれど」
「どうしたの、トト」
「うん、ミュジッカーさんのことを考えて思い出したんだ」
 その思い出したことは何かといいますと。
「ほら、つぎはぎ娘さんと一緒に蓄音機がいたじゃない」
「あの考えを持っている蓄音機ね」
「あの蓄音機さんどうなったのかな」
「確か今もマンチキンの国にいるわよ」
「生きているんだ」
「ええ、オズの国では誰も死なないからね」
 だからだというのです。
「オズの国は心を持ったら誰も死なないから」
「だからなんだね」
「そうよ、あの蓄音機も今も生きていてね」
「マンチキンの国にいるんだ」
「オジョとは一緒にいないけれど」
 あのつぎはぎ娘と一緒にいた少年と今は一緒にいないというのです。
「あの国にいるわよ」
「そうなんだね」
「そういえばマンチキンの国だけれど」
 ドロシーはトトとお話をしてマンチキンの国のことを言いました。
「あの国に最近行ってないわね」
「そういえばそうだね、僕達は」
「この子達は最初はマンチキンに来たけれど」
 恵梨香達も見るのでした、ここで。
「それでもね」
「そうだね、僕達は行ってないね」
「また行きたいわね、マンチキンの国にも」
「何といっても僕達が最初に来たオズの国だからね」
「思い出の国だから」
「そうだよね」
 こうお話するドロシーとトトでした、そして。
 ドロシー達の今のお話を聞いてです、ここでこうしたことを言った恵梨香でした。一行は南にさらに続く黄色い煉瓦の道を進んでいっています。
「マンチキンもまたね」
「ええ、行きたいわね」
「今私達はカドリングの国にいるけれど」
 こうナターシャに応えます。
「マンチキンにもウィンキーにも行きたいわね」
「ええ、ギリキンにもね」
「どの国にもね」
「オズの国のあちこちにね」
 思うのはこのことでした、そしてその恵梨香達にモジャボロが言ってきました。
「オズの国は一杯楽しい場所があるからね」
「はい、何処も行きたいです」
「オズの国のあらゆる場所に」
「いいことだよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「オズの国は死なないけれど危険も多いからね」
 だからだというのです、実際にモジャボロもドロシーも何かと間一髪といった状況に見舞われています。それこそ数えきれない位。
「変な人もたまにいたりして」
「レイコク王とか」
「あとノーム王ですね」
「そうそう、あのノーム王今度こそ改心したかな」
 モジャボロはラゲドーのことも思い出しました。
「今度こそ」
「だといいですね」
「あの人についても」
「ある意味ね」
 lモジャボロはノーム王についてさらに言いました。
「あの人も凄い人だよ」
「改心しても心が真っ白になってもまた悪いことをするから」
「だからですね」
「うん、凄いよ」
 何度も何度も悪くなることがというのです。
「今度はどうかな」
「また悪くなってるんじゃないですか?」
 カルロスはこれまでのノーム王のことから言いました。
「あの人ですから」
「否定出来ないことがね」
「どうしてもですね」
「うん、僕としてもね」
 モジャボロとしてもだというのです。
「悲しいっていうかね」
「残念ですか」
「うん、そうなんだ」
 こう言うのでした、そして。
 そうしたお話をしながらさらに南に進んでいってなのでした、一行はオズの国のかなり南のところに来ました。
 その先を見てです、ジョージは目に見えないそこを見ました。
「砂漠はまだですか」
「死の砂漠ね」
「はい、それはまだ先ですね」
「そう、これまではとっくに砂漠を越えていたけれど」
 それでもだというのです、今は。
「今は死の砂漠はまだまだ先よ」
「今では大陸の岸辺のところにあるんですね」
「だからまだ先よ」
「見えないですね」
「ええ、まだ目に入ることはないから」
 絶対にというのでした。
「本当に先の先よ」
「死の砂漠には入りたくないですね」
 少し怖がっている顔で言ったのは神宝でした。
「あそこには」
「足を踏み入れたら死んじゃうからよね」
「はい、ですから」 
 だからだとです、神宝はドロシーに自分の考えをお話しました。
「入りたくないですね」
「まあ今はね」
「死の砂漠のことは考えなくていいんですね」
「行くこともないわ」
「今回の旅では」
「そう、だから気にしないでね」
 こう五人に言うのでした、今回の旅においてはと。
「確かにあの砂漠のことはオズの国にいたらどうしても考えることだけれど」
「今の旅ではそこまで行かないから」
「だからですね」
「怖がらなくてもいいから」
 その死の砂漠を、というのです。
「安心してね」
「今は招待状のことを考えよう」
 モジャボロが言ってきました。
「あと三つ行く場所があるからね」
「あっ、じゃあスクードラー族やガーゴイル族のところにもですか」
「行くんですね」
「そうしよう、今のあの人達はパーティーに出ても問題はないよ」 
 だからだというのです。
「僕はそう思うよ」
「私もよ。確かに最初の出会いはとんでもなかったけれど」
 何事も最初だけでは決まらないというのです。
「今は違うから」
「あの人達も改心したから」
「だから」
「そう、行きましょう」 
 ドロシーも言うのでした。
「あの人達のところにも」
「そうですね、じゃあ」
「行きましょう、あの人達のところにも」
 五人はドロシー達に笑顔で応えました、そしてでした。
 さらに南に進みます、一行の旅はまだ続きます。



狐と驢馬の国に。
美姫 「行く先々でご馳走を振舞われて良いわね」
狐に揚げというのはやっぱり付き物だな。
美姫 「最近になって入って来たみたいだけれどね」
気に入っているようだったな。
美姫 「驢馬の国では野菜を使った料理だったわね」
それぞれの国らしい料理の数々だったな。
美姫 「恵梨香たちも食べれる料理だったしね」
他にも色々と行ってみたいとの事だけれど。
美姫 「まだ旅は続くみたいだし、どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る