『オズのモジャボロ』




             第四幕  パズルになってしまって

 一行はコンガラパズルの国に入りました、そこに入ってです。
 モジャボロは小声でこう皆に囁きました。
「わかってるよね」
「はい、ここはですね」
「絶対に大きな音を立てない」
「そうしないとですね」
「大変なことになりますから」
「うん、だからね」
 それでだというのです。
「注意してね」
「わかりました、じゃあ」
「何としてもですね」
「ここはそっと進んで」
「音を立てない」
「それに限りますね」
「若し音を出したら」
 その時はというのです。
「皆がばらばらになってね」
「それで組み立てないといけないからね」
 ドロシーも皆に言ってきます。
「だからね」
「はい、気をつけます」
「パズルは好きですけれど」
「この国は特別ですから」
「人間のパズルですから」
「それはちょっと」
「そうよ、人間の身体のパズルは大変なのよ」
 ドロシーもこのことを言います、何しろ彼女が以前にそのパズルをすることになってしまった他ならない人ですから。
 それでなのです、今も小声でトトに囁きます。
「トトもね」
「僕の吠え声一つで、だからね」
「そう、皆がばらばらになるから」
 それ故にというのです。
「注意しないと」
「何か爆弾の山の中にいるみたいだよ」
 ジョージは頭を掻いて苦笑いを浮かべてこう言いました。
「ここにいると」
「まあそれはね」
「仕方がないから」
 モジャボロとドロシーがジョージに苦笑いで答えます。
「この国はそうした国だから」
「それでなのよ」
「そうだよね、じゃあ」
「まずはこの国の人達に挨拶をしてですよね」
 神宝が二人に尋ねます。
「そうしてですね」
「そう、その為に来たから」
「そうしましょう」
「わかりました、じゃあ」
 神宝は二人の言葉に頷きました、そしてでした。
 一行は国といいますか町の長の人のところに行きました、そのうえでお家の中に入るとそこでなのでした。
 扉を開けた拍子にです、不意に。
 扉の傍にあった何かが転げ落ちました、それは鉄の何かでした。
 それが落ちるとです、そのカランという音が凄くて。
 皆がうわ、といった感じになって身体を屈めた瞬間にもうでした。
 町のあちこちでどさどさと音が鳴りました、それで身体を起こしたドロシーがしまったといったお顔で皆に言いました。
「じゃあ皆ね」
「はい、やっちゃいましたね」
「恐れていた事態になりましたね」
「組立開始よ」
 それがはじまるというのです。
「頑張るわよ」
「わかりました、それじゃあ」
「今から」
「まずはお家の中でね」
 今入った長の人のお家の中で、です。
「ちゃんと組み立てましょう」
「お邪魔します」
 ナターシャがお家の中に対して言いました。
「どなたかおられますか?」
「いるよ」
 返事が返ってきました、すぐに。
「とはいってもね」
「はい、今はですね」
「ばらばらだよ。だからね」
「組み立てていいですか?」
「是非そうしてくれないかな」
 こうナターシャに応えてきます。
「さもないと何も出来ないからね」
「わかりました、じゃああがりますね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「そこに間違えてね」
「あっ、これですか」
 ここでナターシャは自分の足元を見ました、するとそこにです。
 鉄ではありませんでした、よく見ると。
 銀の灰皿でした、それが落ちてしまったのです。
「灰皿ですね、銀の」
「それを置いてしまってね」
「その音でなんですね」
「うん、こんなことになってしまったよ」
「じゃあ今から」
「お願いするよ、組み立ててね」
「わかりました」
 こうしてです、皆はお家の中に入りました、ですが。
 ドロシーとモジャボロはです、こう五人に言ってきました。
「私達はお外に出てね」
「まずはお外の人達を組み立てるわね」
「じゃあお家の中の人はですね」
「私達が」
「ええ、お願いするわ」
 ドロシーが五人に言います。
「私達は人の身体のパズルに慣れてるから二人でも大丈夫だから」
「一人ならすぐに組み立てられるよ」
「一人組み立てたらその人がまた別の人を組み立ててね」
「その繰り返しになるからね」
「後は凄く楽になるから」
「お外のことは任せてね」
「わかりました」
 恵梨香が二人に答えました。
「それなら」
「貴方達はお家の中の人をお願いするわね」
 まだ人の身体のパズルに慣れていない五人はというのです。
「それではね」
「行って来るね、外に」
「はい」 
 恵梨香が五人を代表して応えてでした、そのうえで。
 五人はお家の中に入っていきました、するとリビングのところにでした。
 パズルのパーツが一杯落ちていました、それを見てです。まずは神宝が言いました。
「じゃあまずはパーツを一つ見付けて」
「それからよね」
「組み立てるのね」
「目立つパーツを見付けよう」
 こう恵梨香とナターシャに言うのです。
「目なり耳をね」
「お顔のところからなんだ」
 ジョージが言いました。
「そこからなんだ」
「うん、まずは目立つ場所を見付けることからなんだ」
 パズルは、というのです。
「人間の身体は目立つところがあるから」
「まずはそこからかあ」
 ジョージはパーツ達を見つつ神宝に応えます。
「じゃあまずはね」
「目のところを見付けたよ」
 早速です、カルロスがパーツの一つを放って言いました。
「これとね、近くには」
「お鼻見付けたわ」
「眉のところもね」
 恵梨香とナターシャがそれぞれカルロスに続きます。
「目の近くに置いて」
「それでよね」
「眉も置いて」
「こうしていって」
「一つずつね」 
 神宝がまた言います。
「置いていこうね」
「これは親指かな」
 ジョージがパーツの一つを拾って言いました。
「右の」
「そうだね、そこはね」
 神宝が答えます、ジョージが持っているパーツを見て。
「右の親指だね」
「そうだね、じゃあ何処に置こうかな」
「身体をイメージして置こう」
「身体を?」
「今お顔をそうして置いていっているからね」
 だからだというのです。
「身体の他の部分もね」
「そうして置いていって」
「そう、組み立てていこう」
 こう言うのです。
「そうしていくといいよ」
「どうやら君はパズルに慣れているみたいだね」
 パーツのお口のところから声がしてきました。
「趣味なのかな」
「はい、パズルとか迷路でしたら」
 そういうものならとです、神宝が答えてきます。
「好きでして」
「それでなんだね」
「人の身体のパズルははじめてですけれど」
 それでもだというのです。
「こうしたことは」
「やり方がわかってるね」
「一応は」
「では頼むよ」
「はい、やらせてもらいます」
 神宝が応えてです、そのうえで。
 五人はパズルを進めていきます、そして。
 暫くして身体を作りました、するとです。
 その人は男の人でした、シャツもズボンも綺麗にアイロンがかけられた赤いカドリングの服です。その人が五人で笑顔で言ってきました。
「いやあ、助かったよ」
「すいません、本当に」
「灰皿を落としてしまって」
「それでこんなことになって」
「申し訳ないです」
「いや、あの灰皿は私が誤って置いてしまったからね」
 玄関にだというのです。
「君達の責任じゃないよ」
「そうですか」
「そう言ってくれるんですか」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「気にしないでね」
「そうですか」
「じゃあ」
「僕が組み立ててもらったから」 
 早速といった口調で言ってきた長の人でした。
「後は家内も子供達もね」
「一緒にですね」
「その人達も」
「うん、組み立てよう」
 こう五人に言うのでした。
「そうしようね」
「わかりました、じゃあ」
「次はお家の人達も」
「そうしよう、けれどね」
「けれど?」
「けれどっていいますと」
「君達はオズの人達じゃないね」
 五人を見ての言葉です。
「そうだね」
「はい、他の国から来ました」
「ドロシーさんがおられた国から」
「ああ、あっちの世界から来たんだね」
 五人の返事を聞いてです、長の人も納得したお顔で頷いて言いました。
「ドロシー王女とモジャボロさんの声もしたけれど」
「はい、一緒に旅をしています」
「オズマ姫のパーティーへの招待状を持って」
「オズマ姫はパーティーを開くことが大好きなんだ」
 長の人もこのことは知っていました。
「それで時々ね」
「エメラルドの都に皆を呼んでですね」
「そのうえで」
「そうだよ、とはいっても僕達はね」
「ちょっとした音で崩れるからですか」
「この世界以外には」
「あまり行きたくないんだ」
 だからだというのです。
「僕にしてもね」
「じゃあ招待状は」
「それは」
「遠慮させてもらうよ」
 若しドロシー達が渡してくれてもだというのです。
「ちょっとね」
「そうですか、じゃあ」
「貴方も」
「うん、この世界にいるよ」
 そうするというのです。
「僕はね」
「わかりました、ドロシーさんもですね」
「そのことはわかっておられますね」
「多分ね、ではね」
 こうしたお話をしてからです、皆で。
 お家の人達も組み立てました、長の人の助けも借りて他の人達の組み立てはすぐに済みました。そしてでした。
 お家の外に出て他の人達も組み立てていきます、とはいってもお外は既にドロシー達が組み立てていまして。
 五人が出た頃にはかなり進んでいて五人と長の人も加わるとすぐに終わりました。そして皆を組み立ててからです。
 長の人がドロシーと皆に笑顔で言いました。
「久しぶりだね」
「はい、お元気そうですね」
「皆元気だよ」
 こう笑顔で答える長の人でした。
「この通りね」
「そうですね、何よりです」
「うん、それでドロシーさん達は」
「オズマからのパーティーへの招待状を届けています」
「そう聞いたよ、この子達からね」
 長の人は五人の方を見てドロシーに答えました。
「そのことは」
「そうですか」
「うん、それでだけれど」
「はい、貴方達はですね」
「ここにいるよ」
 このコンガラパズルの国にというのです。
「そうさせてもらうよ」
「わかりました」
「僕達はすぐにバラバラになるからね」
「仕方ないですね」
「うん。けれどここに来てくれたことはね」
 そのことはというのです。
「有り難う」
「いえ、それは」
「これでもお客さんが来てくれると嬉しいからね」
「崩れてもなんですね」
 カルロスが微妙に首を傾げさせて長の人に尋ねました。
「その人が音を立てても」
「それでもだよ。僕達もお客さんが来てくれると嬉しいよ」
「そうですか」
「そうだよ、ではね」
「はい、それではですね」
「君達はこれからどうするのかな」 
 カルロス達にこのことを尋ねるのでした。
「招待状を持って回っているそうだけれど」
「今度はパンの国かキッチンランドに行くつもりだよ」
 モジャボロが笑顔で長の人にお話しました。
「両方の国にも行くつもりだよ」
「ああ、そうなんだね」
「うん、けれどどっちの国もちょっと難しいからね」
「パンの国の人は食べたら駄目だよ」
 長の人は一行がパンの国に行くと聞いて五人にこのことを注意しました。
「絶対にね」
「はい、そのことはもうドロシーさん達に教えてもらいました」
「それだけは気をつけてくれって」
「あの国のものは食べてはいけないんですよね」
「人達も」
「気持ちはわかるけれどね」
 とても美味しそうなパンだからです、パンは食べるものです。それで食べるなと言われるとどうしても辛いものがあります。
 長の人もそのことはわかっています、けれどそれでもだというのでs。
「そのことはね」
「わかりました」
「絶対に食べません」
「うん、それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 一行はコンガラパズルの人達とお別れをして一度来た道を戻りました。そのうえで黄色い煉瓦の道を進んででした。
 パンの国の近くに来ました、そしてその前で。
 モジャボロは皆にです、こう言いました。
「ではね」
「はい、今からですね」
「食べるんですね」
「テーブル掛けがあるから」
 そこから食べものを出せるからというのです。
「たっぷり出してたっぷり食べよう」
「そうしてお腹一杯になって」
「それからですね」
「うん、中に入ろう」
 パンの国の中にというのです。
「そうしようね」
「わかりました、じゃあとにかくですね」
「何も入らない位お腹一杯にして」
「それからですね」
「パンの国に入るんですね」
「そうするんですよね」
「そうしようね、では食べよう」
 五人に言ってでした、早速。
 モジャボロはテーブル掛けを出して拡げてきました、五人はそこにです。
 めいめい好きな食べものを出そうとしました、ですがここで。
 ドロシーがです、こう言ってきました。
「ちょっと待って」
「ちょっと?」
「ちょっとっていいますと」
「ええ、それぞれが好きなものを頼むより」
 それよりもというのです。
「ここは皆が好きなものをお腹一杯食べない?」
「皆がですか」
「好きなものをですか」
「しかもお腹一杯食べられるものをね」
 こう皆に提案するのでした。
「例えばお鍋とかね」
「お鍋ですか」
「そうしたものをですか」
「そう、それでどうかしら」
「それはいいですけれど」
 ナターシャがドロシーに尋ねます。
「具体的にはどんなお鍋ですか?」
「そうね、シチューでもいいし」
 これもお鍋に入れて言うドロシーでした。
「お肉もお野菜も一杯入っていて」
「それで、ですね」
「皆が美味しくこれでもかと食べられるものですね」
「そうしたお鍋ですね」
 ナターシャの他の子も言ってきました。
「それをですか」
「今ここで」
「そう思うけれど。さてそのお鍋は」
「フォンデュ?」
「火鍋?」
 ジョージと神宝はこういったものを挙げました。
「そういうのかな」
「どうかな」
「ボルシチはいつも食べてるわね」
 ナターシャが出したのはこれでした。
「だから今はね」
「とにかくお鍋でしたら」
 どうかとです、カルロスが言うことは。
「お肉にお野菜が一杯入っていて」
「そういうのね」
「ううん、お肉とお野菜が一杯入っているのでしたら」 
 ここで恵梨香がお話に出したお鍋はといいますと。
「すき焼きなんかどうですか?」
「日本のお鍋ね」
「はい、牛肉やお葱やお豆腐、それに茸も糸蒟蒻も入れた」
 これをお話に出すのでした。
「あのお鍋ですけれど」
「すき焼き、いいわね」
「そうだね」
 トトがドロシーに尻尾を振りつつ応えます。
「僕も大好きだよ」
「トトも好きだしね」
 それならとです、ドロシーも応えて言います。
「私もそれでいいわ」
「皆はどうかな」
 モジャボロはナターシャ達に尋ねました。
「すき焼きでいいかな」
「はい、大好きです」
「僕も好きです、すき焼き」
「僕もです」
「私も」 
 ジョージも神宝もカルロスもナターシャも答えます、こうしてでした。
 皆ですき焼きを食べることになりました、お醤油とお砂糖で味付けされたお鍋の中のお肉や他の具を食べてです。
 まずはです、ドロシーが笑顔でこう言いました。
「こうしたお肉の食べ方もいいわよね」
「ステーキとはまた違ってですね」
「ええ、それでね」
 まさにそれでだとです、ドロシーは恵梨香に答えました。
「他のものも食べられるでしょ」
「茸もお葱も」
「やっぱりお野菜も食べないとね」
「それもたっぷりとですね」
「身体によくないからね」
「そういえばドロシーさんがおられた頃のアメリカって」
 あのカンサスの大草原の中にヘンリー叔父さん、エム叔母さん達と一緒に住んでいた頃のことです。トトはその時から一緒でした。
「今よりも太っている人少なかったですよね」
「確か今のアメリカって凄く太ってる人が多いのよね」
「はい、実は」
 このことはジョージが答えます、彼のスタイルは普通ですが。
「それで困ったことになっています」
「どれだけ太ってるの?」
「それこそお腹が膝のところまでくる位です」
「それだけ太ってたら動けないでしょ」
「実際にそうなってる人がいます」
「でしょうね。それは太り過ぎなんてものじゃないわよ」
 見ればドロシーは恵梨香と同じ位のスタイルです、太っていません。
「それで身体にもよくないわよ」
「そうですよね」
「食べるものが問題だと思うわ」
「よくそう言われています」
 ジョージは困った顔でドロシーに答えました。
「ハンバーガーやフライドチキンを食べ過ぎるとよくないんですよね」
「食べ過ぎじゃないかしら」
 ドロシーは首を傾げさせつつ言います。
「そうしたものを」
「そうですね、それで運動をしていないから」
「よくないわよ」
「ドロシーさんもハンバーガーとか嫌いじゃないですよね」
「好きよ、それも大好きよ」
 ドロシーもそうした食べものは大好きだというのです、ですがそれでもでした。
「けれど私よくこうして旅に出たりエメラルドの都を歩き回っているから」
「太っていないんですね」
「そう思うわ、自分でもね」
「そうなんですね」
「そうよ。私もそこまで太る気はないわ」
 ドロシーにしてもというのです。
「そうしたら旅に出ることも難しくなるから」
「ですよね。そういえばオズの国って食べる必要がない人も多いですね」
 今度は神宝が言ってきました。
「かかしさんや木樵さんも」
「ええ、そうした人達は勿論太らないわよ」
 ドロシーはすき焼きのお豆腐を自分のお椀に入れています。そのお椀の中にはといだ卵が中にあります。
「食べないからね」
「そうですよね」
「食べないでいいから」
 だからだとです、さらにお話するドロシーでした。
「餓えることもないわよ」
「それは凄いですね」
「いいことでしょ」
「はい、お腹が空かないことは」 
 神宝はこのこと自体に素晴らしいものを見ています。
「いいことですね」
「本当にね」
「ううん、食べることは楽しいですけれど」
 神宝もまたすき焼きを食べつつ言います。
「太らなくてお腹が空かないこともいいことですね」
「それはそれでね」
「喉が渇くこともないですね」
 かかしや木樵は食べないで済むだけでなく何かを飲む必要もありません、だから喉が渇くこともありません。
「そのこともいいですね」
「そうでしょ、かかしさん達はずっとあのスタイルよ」
 そのままだというのです。
「素晴らしいことでしょ」
「確かにそうですね」
「太らないことはいいことですか」
 今度言ってきたのはナターシャでした。糸蒟蒻を食べながら。
「そうなんですね」
「あら、ナターシャはどう思ってるのかしら」
「ロシアじゃ太ってる方がいいんです」
 そうした考えだというのです、ナターシャのお国では。
「寒いですから」
「寒いと太っている方が温かいからよね」
「女の人は皆太ります」
 それがロシアだというのです。
「歳を取ると」
「皆そうよね」
 恵梨香もそのことは知っているのでナターシャに応えました。
「ロシアでは」
「ええ、そうなのよ」
 まさにとです、ナターシャは恵梨香にも答えました。
「さもないと大変なのよ」
「痩せているとなの」
「寒くてね」
「じゃあナターシャも?」
「そうなると思うわ」
 歳を取るとだというのです、ナターシャも。
「太るわ」
「寒いから」
「ロシアの寒さは本当に凄いから」
「北海道よりもね」
「アラスカみたいなものよ」
 ドロシーとジョージを見つつの言葉です、そのアラスカを領土に持っているアメリカの人達を。
「物凄い寒さなのよ、特に冬は」
「だから太らないと大変なの」
「太らないとかえってなのね」
「そうよ、ロシアではね」
「その国それぞれなんだね」 
 カルロスはすき焼きの麸を食べています、お醤油とお砂糖をたっぷりと吸ったそれをです。
「太らないと駄目だったりするんだね」
「そうよ。ただやっぱりロシアでも太り過ぎはね」
「駄目なんだ」
「身体によくないから」
 このことはアメリカと同じです、ロシアもまた。
「だからね」
「そうなんだね」
「お腹が膝まである位太ってたら」
 それこそだというのです。
「よくないわよ」
「太っている方が寒くなくても」
「そう、大変だから」
 だからだというのです。
「よくないわよ」
「何でも過ぎるとよくないよ」
 ここでモジャボロが皆にこうお話しました。
「身体にもね」
「太り過ぎもですね」
「よくないんですね」
「そうだよ、皆も気をつけてね」
 太り過ぎることだけでなくその他のこともだというのです。
「皆もね」
「はい、わかりました」
「食べてよく運動することですね」
「そうだよ、オズの国では食べても皆身体を動かすからね」
 だからだというのです。
「そこまで太らないよ」
「お腹が膝まである位には」
「太らないんですね」
「そうだよ、食べてよく動く」
 モジャボロはにこにことした笑顔で五人にお話します。
「このことが大事だよ」
「ですね、じゃあ」
「僕達は今は」
「そう、よく歩くんだよ」
 この旅においてだというのです。
「そうしようね」
「わかりました、それじゃあ」
「今も」
「うん、たっぷり食べたら歩こうね」
 こう言います、モジャボロはすき焼きを食べつつ言うのでした。
 そしてそのすき焼きを食べてです、こうも言いました。
「いやあ、それにしても何時食べても美味しいね」
「そうですよね、すき焼きは」
 日本人の恵梨香が笑顔でモジャボロの言葉に応えます。
「凄くいい食べものです」
「全くだよ、僕は糸蒟蒻も好きだよ」
「それもですか」
「お肉だけでなくてね」
 それもだというのです。
「好きだよ」
「そうなんですね」
「うん、卵と一緒に食べるのがいいね」
「蒟蒻はカロリーがないんですよ」
「つまり幾ら食べても太らないんだね」
「はい、全く」
「それはいいね、美味しくて幾ら食べても太らないことは」
 モジャボロは恵梨香のお話を聞いてさらに笑顔になりました。
「最高のことだよ」
「それと茸もです」
「カロリーが低かったね」
「はい、とても」
「そう思うと太り過ぎにならない様に美味しく食べることもね」
 それもだというのです。
「出来るんだね」
「そうよね。けれど私達もアメリカから出てかなり経つから」
 もうドロシー達がアメリカからオズの国に入って結構経ちます、それもかなりです。
「アメリカも変わったわね」
「相当変わったと思います」
 実際にそうだとです、ジョージはお肉とお豆腐を食べつつドロシーにまた答えました。
「テレビもインターネットもありますから」
「そうよね、オズの国にもあるけれど」
「何かオズの国ってどんどん新しいものが入ってきますよね」
「この国はそうした国なのよ」
 それがオズの国だというのです。
「次から次に新しいものが生まれ出て来るのよ」
「そうした国なんですね」
「潜水艦もあるわよ」
「それもですか」
「魔法と科学が一緒になっているところがあるね」
 こう言ったのはモジャボロです、それがオズの国なのです。
「オズの国はね」
「そうですよね、オズの国は」
 神宝がモジャボロに応えます。茸達を食べつつ。
「魔法と科学の区別はあまり、ですね」
「そもそも魔法と科学は一緒だったんだよ」
 このこともお話するモジャボロでした。
「錬金術の中にあってね」
「錬金術ですか」
「オズの国にもあってね、そこから魔法が生まれたからね」
 それで科学もだというのです。
「オズの国には科学めいたものもあるんだよ」
「それもオズマやグリンダが使っているのよ」
 ドロシーはこのこともお話しました。
「ただ、魔法と違って簡単な科学は誰もが使っていいけれど」
「魔法とは違ってですか」
「科学はそうなんですね」
「潜水艦位はね」
 誰でも使っていいというのです。
「いいのよ」
「何時か潜水艦に乗ってみたいですね」
 カルロスは目を輝かせてこう言いました。
「それでお水の中を見てみたいですね」
「ええ、じゃあ今度一緒に乗りましょう」
「それでお水の中を見ようね」
 モジャボロも言ってきます。
「潜水艦からね」
「はい、楽しみにしています」
「科学も魔法もいいことに使ってこそだよ」
「役に立ちますね」
「そうだよ、だからね」
 それでだというのです。
「潜水艦でお池や河の中を見ようね」
「今度にでも」
「そうしよう、機会があれば」
「思えばオズの国も私が最初に来た時と比べて変わったわ」
 ドロシーの口調がしみじみとしたものになっています。
「カドリングだってね」
「カドリングは最初拓けていなかったんだよ」
 トトがここで五人にこのことをお話してきました。
「このことは皆も知ってるよね」
「そうそう、今よりもね」
「ずっと拓けていなくてね」
「色々な種族がオズマ姫のことを知らないで暮らしていて」
「人も少なくて」
「そうだよ、けれどカドリングもかなり変わったよ」
 凄くだというのです、トトは自分のお椀にドロシーに入れてもらったお肉等を食べつつお話します。
「最初に来た時と比べたら」
「オズの国も常に変わっていくのよ」
 ドロシーは笑顔でこのことを五人に言いました。
「だからテレビもインターネットもあるのよ」
「オズの国の外には情報は出ないですよね」
「それはないわ」
 インターネットでもだというのです、オズの国にあるものはあくまでオズの国だけのことです。それがこの国なのです。
「テレビもね」
「そうなんですね」
「オズはオズよ」
 恵梨香達の世界とは違うのです。
「世界の何処かにあるけれど普通のやり方では辿り着けない世界よ」
「それがオズですね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「私達も普通のやり方ではオズの国から出られないから」
「ああして特別な方法でないと」
「そう、出られないから」
「本当に別の国ですね」
「そうなのよ」
 ドロシーは恵梨香達五人にこのこともお話するのでした。
「ここは不思議な国なのよ」
「だから普通のやり方では出入り出来ない」
「そういうことですね」
「そうよ、私もそうなのよ」
 かつてはアメリカにいたドロシーもだというのです、今は。
「あの方法でしか出入り出来ないよ」
「あの時計塔からしか出入り出来ない」
「そうなんですね」
「あの時計塔は特別な場所よ」
 まさにというのです。
「オズの国とつながっている今のところただ一つの場所よ」
「そうした場所は他にもあるかも知れないけれど」
 モジャボロもこう言います。
「今のところわかっているオズの世界と君達の世界をつなげている場所はあそこだけだね」
「そうですか、じゃあ私達があそこに気付けたのは」
「奇跡みたいですね」
「奇跡は運命だよ」
「運命?奇跡が」
「運命なんですか」
「偶然と言うべきかな」
 こうも言うモジャボロでした。
「誰もがその偶然に出会って動くことになるんだよ」
「それが奇跡で」
「運命になるんですか」
「僕もオズの国に来たのは偶然だったんだよ」
「私もよ」
 モジャボロとドロシーは五人に自分達のそのそれぞれの『偶然)についてお話しました。それはどういったものかというのです。
「たまただドロシーと会って。それで辿り着いて」
「竜巻に運ばれてね」
「それからこの国に住んでいるから」
「偶然は凄いものなのよ」
「人間の力だけではどうにもならないんですね」 
 偶然が持っている力のことを聞いてです、恵梨香はしみじみとした口調で言いました。
「そうなんですね」
「うん、そうなるよ」
「結局のところはね」
「そういうことですね。それにしても」
 また言う恵梨香でした。
「私達も偶然かかしさん達を見てオズの国に出入り出来る様になっていますから」
「そして今私達と一緒にいられるわね」
「偶然に感謝します」
 微笑んでこう言った恵梨香でした、他の四人もそうしたお顔になっています。
「心から」
「いい偶然に巡り会えたわね」
「はい、とても」
「ではその偶然に感謝してね」
 そのうえでだというのです。
「これからもオズの国で楽しみましょう」
「そうさせてもらいます」
「さて、それではね」
 さらに言うドロシーでした。
「次はパンの国だから」
「今はたっぷり食べないと」
「お腹一杯にならないと駄目ですよね」
 ジョージと神宝が笑顔で応えます。
「そうして食欲をなくして」
「そのうえでパンの国にですね」
「入るんですね」
「美味しいと思ったら駄目よ」
 パンの国の中に入ってもです、ドロシーはこのことを強調します。
「決してね」
「食べものを見ても美味しいと思わない為にはお腹一杯になることですね」
「食べものを見ても何とも思わない位にまで」
「そうよ」
 まさにその通りだというのです。
「だからこそ今食べてるから」
「お腹に入れられるものは限りがあるんだよ」
 モジャボロにしてもです、人間の食べられる量には限りがあります。
「だからね。いいね」
「はい、気合入れて食べます」
「しっかりと」
「そうしよう、お鍋は空にするよ」 
 すっかりだというのです。
「全部食べるんだよ」
「うわ、これ全部ですか」
「食べないと駄目ですか」
「食べ過ぎはよくないけれど後で身体を動かせばいいし」
 それにだというのです。
「誰かに迷惑をかける位ならね」
「食べることですね」
 カルロスはそのお鍋の中にお箸を入れつつ言います。
「こうして」
「そうだよ、食べるんだよ」
「わかりました、そうします」
「食べて食べて」
 そしてだというのです。
「パンの国に入っても何とも思わない様にしよう」
「このお鍋を空に出来たらね」
 それこそだとです、トトはそのお鍋を見上げながらお話をします。見ればお鍋はコンロの上に置かれて火を点けられています。
「皆満腹だよね」
「満腹だとそれだけで最高の幸せになれるわよ」
 ドロシーが言います。
「それが幸せの第一歩だから」
「今もですね」
「幸せになれますね」
「そうよ。色々お話しながら食べてるけれど」
 ドロシーは恵梨香とナターシャにもお話します。
「幸せでしょ、皆今は」
「はい、本当に」
「幸せです」
 実際にです、五人共でした。美味しいものをお腹一杯食べられて幸せな気分です。
 それで食べて食べてです、遂にでした。
 お鍋が空になりました、カルロスが満足したお顔で言いました。
「もう何処にも入らないよ」
「僕もね」
「僕もだよ」
 ジョージと神宝も言います。
「いやあ、食べたね」
「お腹がはちきれそうだよ」
「だからね」
「もう充分だよ」
「ええ、これでパンの国に行けるわね」
 ドロシーもにこりと笑って言いました。
「食べるものを一杯食べたから」
「もうパンも何も入りません」 
 ナターシャも笑顔で言いました。
「満足です」
「じゃあ行こう」
 トトが尻尾を振って皆に子えをかけます。
「パンの国にね」
「例えどんな美味しいパンでもね」
「これならね」
「もう大丈夫」
「入るところがないから」
「安心して行けるわ」
「そういうことでね、じゃあ行こうね」
 トトは五人に行ってでした、そして。
 一行はとても満ち足りた気持ちでパンの国に入りました、もう何を見てもどんな美味しそうなパンを見ても何とも思わない位にまでなって。



今回はコンガラパズルという国に。
美姫 「その名の通りに住人がパズルみたいね」
しかも、大きな音に驚いてバラバラに。
美姫 「とりあえず、無事に戻せて良かったわね」
だよな。まあ、でもその特徴から、国からは中々出にくいみたいだが。
美姫 「仕方ないわよね」
まあ、そんな訳で招待も断るしかなかったみただが。
美姫 「とりあえず、一行は次の目的地へ向かうみたいね」
次はパンの国みたいだが。
美姫 「さて、どうなるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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