『オズのモジャボロ』
第三幕 ミス=チョッキンペット
一行は一日歩きました、そしてその次の日です。
カルロスはいよいよというお顔でモジャボロにこう尋ねました。
「そろそろですね」
「うん、もう少ししたらね」
モジャボロもカルロスに笑顔で応えます。
「着くよ」
「チョッキンペットの村にですね」
「そうだよ、だからね」
それでだというのです。
「あと少しだけ歩こうね」
「はい、わかりました」
「昨日はかなり歩いたけれど」
本当によく歩きました、皆で。
「皆足は大丈夫かな」
「靴擦れはありません」
「豆も出来ていません」
五人はモジャボロに笑顔で答えます。
「私達足は結構丈夫なんで」
「歩き慣れていますから」
だから大丈夫だというのです。
「これ位でしたら」
「豆とか出来ません」
「それはいいね、やっぱり足が丈夫だとね」
それならというのです。
「安心していいね」
「幾らでも歩けるからですね」
「安心していいですね」
「そうだよ、けれど皆沢山歩いたから」
このことは確かです、だからだとも言うモジャボロでした。
「よく休むことも忘れないでね」
「沢山動いたら沢山休むですね」
恵梨香がモジャボロに応えました。
「だからですね」
「そうだよ、沢山歩いたらね」
それならとです、モジャボロは恵梨香にも答えます。
「沢山休むんだよ」
「夜はですね」
「ずっと動いているとよくないんだよ」
「足にですか」
「身体にも心にもだよ」
足だけに限らないというのです。
「よくないからね」
「だから夜はですね」
「そう、休んでいるんだ」
昨日も夜はじっくり休みました、そのうえでなのでした。
暫く歩いているとです、その前に。
町が見えてきました、とても小さな町です。ジョージはその町古風な十九世紀のヨーロッパのそれに似た町を見ながら言うのでした。
「あの村がだね」
「ええ、チョッキンペットの村ね」
ナターシャがジョージに応えます。
「あの村が」
「そうだね、遂に来たね」
「さて、あの村に入ったらね」
その時はとです、神宝が言うことは。
「気をつけないとね」
「あの村の人達は紙だから」
ドロシーがその神宝に答えます。
「そのことは知ってるわね」
「切り抜きで何人も横につながってますね」
「ミス=チョッキンペットが作った人なのよ」
皆そうだというのです。
「どの人もね」
「そうですね、火の気に風は」
「禁物よ」
このことはドロシーが一番よく知っています、何しろ前に来たことがあって迷惑もかけてしまったからです。
「このことは覚えておいてね」
「わかりました、そのことは」
「よく」
五人もドロシーの言葉に応えます、そしてトトもです。
チョッキンペットの村を見つつです、ドロシーに言いました。
「あの村のことは注意しないとね」
「そうよ、トトもね」
「僕が少し駆けただけでね」
「風が起こってね」
「それで村の人達に迷惑をかけるから」
だからだというのです。
「トトも注意してね」
「わかってるよ、ドロシー」
トトはドロシーの方を見上げて尻尾を振りながら応えました。そうして一行はチョッキンペットの村に入りました。すると。
赤い軍服の小さな、それこそ皆の足首よりも少し高い位の軍服の人達が出てきました。軍服もズボンも赤で銃を右肩に持っています。
その身体は横一列に何十人もつながっています、その人達が皆を観てこう言ってきました。
「ようこそドロシー王女」
「モジャボロさんお久しぶりです」
「トトさんもお元気そうですね」
「今日はようこそおいで下さいました」
「皆元気だったかしら」
ドロシーは膝を屈めてです、そのうえでその小さな紙の兵隊さん達に対して笑顔で応えたのでした。もうすっかり馴染みといった感じです。
「貴方達も」
「はい、いつも通りです」
「楽しく暮らしています」
「ミス=チョッキンペットと共に」
「そうしています」
「そうなのね、ならいいわ」
笑顔で応えたドロシーでした、そのドロシーにです。
兵隊さん達は恵梨香達を見たうえでこう言ったのです。
「この子達はどういった子達でしょうか」
「はじめて見る子達ですが」
「ドロシーさんより少し年下ですね」
「ベッツイさんと同じか一歳位下ですね」
「この子達は私達の新しいお友達よ」
ドロシーは笑顔で五人を手で指し示しながら兵隊さん達に紹介しました。
「オズの世界以外の世界から来たね」
「ではドロシーさん達と同じですか」
「そうなんですね」
「別の国、世界から来られた」
「そうした人達ですか」
「そうなの、とてもいい子達だからね」
だからだというのです。
「心配しないでね」
「わかりました、では」
「これから宜しくお願いします」
「ようこそチョッキンペットの村に」
「歓迎いたします」
兵隊さん達は五人にあらためて言ってきました、そうして。
一行をミス=チョッキンペットのところに案内していきます。その中で村の人達が皆を歓迎して出てきました。
「ようこそ」
「はじめまして」
「これからですね」
「仲良くして下さいね」
「ええと、歓迎してくれるのは有り難いけれど」
「そうよね」
五人共たどたどしい足取りです、その足取りで村の中を進んでいます。その中でナターシャは恵梨香に応えるのでした。
「ちょっとでも早く動いたら」
「それで風が出来てね」
「この村の人達をこかせてしまうから」
「注意しないと」
「うん、注意してね」
二人の女の子にです、トトも言ってきました。
「そのことは」
「そうよね、トトもね」
「ドロシーさんに言われた通り」
「そうだよ、注意してね」
モジャボロも言ってきます、見ればモジャボロもそろそろと歩いています。
そのうえで村の中を進んでいます、その中でカルロスは慎重なお顔でこうしたことを言いました。
「ううん、僕としてはね」
「カルロスはせっかちだからね」
「だからだね」
「もどかしいよ」
こうして慎重に進むことはです、ジョージと神宝に言うのでした。
「こうした状況はね」
「けれど我慢だよ」
モジャボロは自分もそろそろと歩きながらそのカルロスに言います。
「わかっているよね、このことは」
「はい、気をつけています」
「ならいいよ」
こうしたやりとりもしました、ここで。
皆は村の小さな人達を見てです、今度はジョージが言いました。
「そうそう、兵隊さん達はつながっているけれど」
「他の人達はね」
神宝がジョージに応えます。
「つながっている人達もいればね」
「そうじゃない人達もいるね」
「この辺りはそれぞれだね」
「そうだよね」
「そうなの、皆ミス=チョッキンペットが作っているけれどね」
ドロシーがジョージと神宝にお話します、このことについて。
「人によるのよ」
「つながっていたりそうでないかは」
「それにその人達の外見もですね」
「それぞれですね」
「ミス=チョッキンペット次第ですね」
「そうなの、この村はチョッキンペットの村だから」
だからだというのです。
「チョッキンペットがどうした人達を作るかなのよ」
「あの人次第ですね」
「どういった人達になるのかは」
「そう、けれどあの娘はとてもいい娘だから」
ミス=チョッキンペットはというのです。
「作る人は皆丁寧に作っていて公平に愛情を注いでいるのよ」
「それ凄いことですよ」
恵梨香はミス=チョッキンペットの公平さを聞いてこうドロシーに言いました。
「これだけ多くの人を丁寧に作って公平に愛せるなんて」
「恵梨香もそう思うでしょ」
「はい、普通は出来ません」
誰もに公平に、とはです。
「贔屓ってありますから」
「そこがあの娘の凄いところなのよ」
ミス=チョッキンペットのです。
「だからこの村も栄えているのよ」
「ミス=チョッキンペットだからですね」
「ええ、そうよ」
「そうなんですね、そして今から」
「ええ、あの娘に会うわよ」
こうしたお話をしてでした、一行は木造の洒落たお家の前に来ました。玄関の表札にはミス=チョッキンペットと書かれています。
その表札を見てです、ナターシャがモジャボロとドロシーに尋ねました。
「このお家がですね」
「うん、そうだよ」
「ミス=チョッキンペットのお家だよ」
まさにこのお家こそがだとです、二人もナターシャに答えます。
「では今からね」
「チャイムを鳴らすからね」
「はい、お願いします」
こうしてお家のチャイムを鳴らすとです、お家の中から。
飾り気のない赤い木綿のドレスの上に紅のエプロンを着けたドロシーと同じ位の年齢の女の子が出てきました、目はトルコ石の様な綺麗な青で見事な金髪です。頬は薔薇色で歯は象牙の様に白いです。その娘がでした。
ミス=チョッキンペットです、チョッキンペットは恵梨香達を見てからドロシーに尋ねました。
「この子達がなのね」
「そう、手紙で知らせた通りね」
「貴女の世界から来た子達ね」
「そうなの、ただこの子達はオズの国の名誉市民でね」
「定住はしていないのよね」
「ええ、そうよ」
このこともお手紙に書いた通りだというのです。
「この子達はね」
「そうなのね」
「ところで貴女に渡したいものがあって」
「ええ、中に入って」
お家の中にというのです。
「詳しいお話をしましょう」
「それじゃあね」
「モジャボロさんとトトもね」
チョッキンペットは二人にも声をかけました、そしてです。
五人にもです、優しい声で言ってきました。
「勿論貴方達もね」
「私達もですね」
「お邪魔していいんですね」
「ええ、だって貴方達はドロシーのお友達よね」
だからだというのです。
「ドロシーのお友達なら私のお友達だから」
「それじゃあですね」
「私達も」
「中に入って」
チョッキンペットのお家の中にというのです。
「そうしてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあお言葉に甘えまして」
五人はチョッキンペットのお誘いに笑顔で応えました、そのうえでなのでした。
一行はお家の中に入りました、お家の中も木造で静かなものでした。あちこちにハサミや紙、絵の具、そうしたものが一杯置いてあります。
そのお家の中を見回してです、ジョージがこんなことを言いました。
「このお家ってね」
「どうしたの?」
「うん、ログハウスに似てるね」
こう恵梨香に答えます。
「何かね」
「そういえばそうね」
「何かカナダにいるみたいだね」
この国の名前を出したのでした。
「どうもね」
「カナダなのね」
「そんな気がするね、ただね」
「木が赤いわね」
「カドリングだね」
カドリングの赤でした、まさに。
「ここも」
「そうよ、私もね」
チョッキンペットも言ってきます、皆はお家の中のリビングの木のテーブルを囲んで座りました。チョッキンペットは赤いお茶に赤いレモンを添えて出してきました。テーブルの真ん中には赤いチョコレートクッキーがあります。
その赤いお茶とレモン、クッキーを見つつです。チョッキンペットは微笑んでジョージ達にこう答えたのでした。
「カドリングの市民だから」
「だからですか」
「赤なんですね」
「そうよ、私も服もね」
その赤い服もだというのです。
「カドリングの服よ」
「確か白い服も持ってましたよね」
神宝がチョッキンペットにこのことを尋ねました。
「そうですよね」
「ドロシーとはじめて会った時ね」
「はい、その時は」
「エプロンも赤と白だったわ」
「そうでしたよね」
「今もあの服持ってるわよ、けれど今はね」
今この時はというのです。
「こうしてね」
「赤い服なんですね」
「そう、カドリングのね」
その赤い服を着ているというのです。
「こうしてね」
「そうなんですね」
神宝はチョッキンペットの言葉に頷きました、そのうえで赤いお茶を飲みました、赤いレモンを中に入れてから。そのレモンティーのお味はといいますと。
「とても美味しいです」
「そうでしょ、このお茶もね」
「赤いですが」
「その味はですね」
「そちらの世界のレモンティーと変わらないわよ」
「むしろ僕達の世界のより美味しいです」
カドリングの赤いレモンティーの方がというのです。
「こちらの方が」
「そうなのね」
「はい、カドリングの赤ですね」
「赤いけれど中身は同じよ」
そのお味もというのです。
「色が違うだけよ」
「色だけで判断出来ないんですね」
「そうよ、何でもね」
チョッキンペットは笑顔で神宝にお話します。
「色は外見だけだから」
「中とは関係ないですか」
「そうなのよ。オズの国でもそれ以外の場所でもね」
「そうですか」
こうしたことを話してでした、そのうえで。
ドロシーは笑顔でこう直近ペットに言いました。その赤いレモンティーとチョコレートクッキーを食べながら。
「それでだけれど」
「ええ、今日ここに来てくれた理由ね」
「今度エメラルドの都でパーティーを開くから」
「私をそのパーティーに呼んでくれるのね」
「そうなの、それで招待状を持ってきたのだけれど」
「有り難う、それじゃあね」
「受け取ってくれるかしら」
ドロシーは微笑みながらチョッキンペットに尋ねました。
「招待状を」
「ええ、嬉しいわ」
これがチョッキンペットの返事でした、とても明るいお顔での返事でした。
「それじゃあ有り難くね」
「はい、これね」
ドロシーは懐からそのオズマからの招待状を出してきました。チョッキンペットもそれを受け取りました。こうしてでした。
まずはチョッキンペットがパーティーに参加することになりました。チョッキンペットはにこにことしてこう言いました。
「今から楽しみよ」
「それは何よりね。では私達もね」
「ええ、エメラルドの都でね」
「またお会いしましょう」
ドロシーとチョッキンペットは笑顔でお話します、そして。
ここでなのでした、チョッキンペットは一行にこう言ってきました。
「それだけれど」
「それで?」
「ええ、貴方達今日はまだ時間があるかしら」
「少しならあるよ」
モジャボロが笑顔で答えます、見ればトトは彼トドロシーの間の足元にいてそこでお茶とクッキーを楽しんでいます。
「あと数時間はね」
「じゃあお昼を一緒に食べない?」
チョッキンペットはこう皆に言ってきました。
「これからね」
「お昼御飯をだね」
「ええ、皆でね」
「いいね、それでメニューは何かな」
「ベーコンエッグとね」
まずはこれです。
「シチュー、それとハムとパンにね」
「それと何かな」
「アップルパイよ」
それもあるというのです。
「どうかしら」
「いいね、じゃあね」
「ええ、皆で食べましょう」
「ミス=チョッキンペットは紙の人形を作るだけじゃないんだよ」
モジャボロは五人に笑顔でお話します、このことも。
「お料理もね」
「上手なんですか」
「そちらも」
「うん、そうだよ」
だからだというのです。
「そちらも楽しみにしてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「それではね」
モジャボロが五人に笑顔でお話してです、そしてなのでした。
五人もチョッキンペットのお料理をご馳走になりました。赤いベーッコンエッグに赤いパン、そして赤いシチューです。そのシチューを食べてです。
ナターシャは頷いてこう言いました。
「トマトと鶏肉、人参と玉葱、ジャガイモにエリンギの」
「そうしたものを入れてみたのよ」
「美味しいですね」
スプーンで食べつつ言うのでした。
「このシチューは」
「そうでしょ、赤いのはね」
「カドリングの赤ですね」
「そうなのよ」
「トマトは元々赤いですけれど」
「トマトも色が変わるのよ、オズの国ではね」
ドロシーもシチューを食べています、そうしながらナターシャにこのことをお話しました。
「青かったり黄色だったりするから」
「紫のトマトも緑のトマトも」
「あるのよ」
「そこがオズの国ですね」
「そう、けれど味はね」
色は違ってもだというのです。
「同じだからね」
「人間と同じですね」
「貴方達もお肌や髪の毛、、目の色は違うわよね」
「はい」
「けれど同じ人間よね」
「そういうことですね」
「違うのは色だけよ」
けれど中身はというのです。
「そこは同じだからね」
「そういうことですね」
「そうなの、赤いトマトも青いトマトも美味しいわよ」
「そういうことですね」
「そうよ」
「この赤いパンも」
恵梨香はパンを食べています、赤いですがとても柔らかくて甘くて美味しいです。そのパンを食べてこう言うのです。
「美味しいです」
「そうでしょ、パンも私が焼いたのよ」
チョッキンペットは笑顔でこう言いました。
「美味しいって言ってくれて何よりだわ」
「本当に美味しいです」
「一杯あるからどんどん食べてね」
遠慮することはないというのです。
「アップルパイもね」
「はい、それじゃあ」
ナターシャはクールな顔立ちに微笑みを浮かべて応えます、そうしてでした。
その赤いアップルパイも食べてみました、そのうえで言うことは。
「紅茶が欲しくなるわ」
「そう言うと思ってね」
にこりとしてです、チョッキンペットが出してきたものは。
紅茶でした、しかもその紅茶は五人の世界の紅茶よりもずっと濃い赤です。まるでルビーを溶かした様に。
「用意していたわ」
「あっ、有り難うございます」
「カドリングのお茶の紅茶よ」
「そうですか」
「赤いでしょ」
「はい、とても」
「コーヒーもよ」
そちらの飲みものもだというのです。
「赤いから」
「そうなんですね」
「そう、赤いから」
実際にです、モジャボロに出してきたものは。
赤いコーヒーです、ジョージはその赤いコーヒーを見て目を丸くさせて言いました。
「コーヒーまで赤いなんて」
「驚いたかしら」
「はい、とても」
「そちらの世界ではコーヒーは黒いのよね」
「そうです」
ジョージは自分達の世界のことをここでお話しました。
「コーヒーは黒いものです」
「けれどここはオズの国でしかもカドリングだからね」
「コーヒーも赤いんですね」
「ええ、そうよ」
そうなっているというのです。
「赤いコーヒーなのよ」
「そうなんですね。よかったから」
「貴方もコーヒーを飲むのね」
「そうしていいですか?」
「勿論よ」
にこりと笑ってです、チョッキンペットはジョージにも答えました。
「それでは貴方もね」
「はい、それじゃあ」
こうしてです、ジョージも赤いコーヒーを出してもらいました。そうして赤いコーヒーをそのお口で飲んでみますと。
「味は同じですね」
「他のものと同じでしょ」
「はい、アップルパイとかと同じで」
「そういうものよ。コーヒーもね」
「赤くてもですね」
「中身は同じなのよ」
コーヒーはコーヒーだというのです。
「本当に人間と同じよ」
「アメリカには色々な人がいるんですよね」
ジョージはその赤いコーヒーを飲みつつチョッキンペットに自分のお国ドロシー達の祖国でもあるこの国のことをお話しました。
「白人も黒人もアジア系も」
「そしてどの人達もよね」
「同じ人間ですよね」
「そうよ。見れば貴方達はね」
チョッキンペットはジョージだけでなく他の子達も見ました、彼等はといいますと。
「色々なお肌と髪の毛、目の色ね」
「はい、そうなんです」
神宝が答えました。
「僕と恵梨香ちゃんがアジア系で」
「私とジョージが白人ですね。ジョージは幾分かアジア系の血が入っているみたいですが」
「僕は黒人です」
最後にカルロスが言います。
「ラテン系の血も入っています」
「皆それぞれよね。けれど同じね」
「人間ですね」
「そうなりますね」
「もっと言えば私とドロシーが女の子で」
チョッキンペットは今度は恵梨香とナターシャをよく見て言いました。
「貴女達も女の子、モジャボロさんと三人それにトトがね」
「男の子ですね」
「そうなりますね」
「性別の違いは確かにあるけれど」
それでもとです、ジョージと神宝にお話するのでした。
「同じ人間だからね」
「外見の違いには惑わされてはいけないですね」
「そうですね」
「そう思うわ。姿形が違ってもね」
それでもだというのです。
「心が人間なら人間なのよ」
「だからかかしやブリキの木樵もね」
ここでドロシーは自分の古い古い親友の名前を出しました。
「人間なのよ」
「それもとても立派な、ですね」
恵梨香もあの人達のことを言いました。
「あの人達は」
「そう、オズの国だけにいるね」
まさにというのです。
「そうした人達よ」
「そうなりますね」
「そう、私もオズの国に来てよくわかったわ」
「ドロシーさんもですか」
「人もものも姿形じゃないの」
大切なことは、というのです。
「中身、心なのよ」
「そうですよね」
「このことは恵梨香達もよくわかっていてね」
「はい、わかりました」
「さて、これを食べたら」
モジャボロもアップルパイ、その赤いアップルパイを食べています。そうしながら皆に言った言葉でした。
「今度はね」
「はい、兎の国ですね」
「そこにですね」
「行くよ、いいね」
「わかりました」
「それじゃあ」
五人も応えてでした、そのうえで。
皆でチョッキンペットにお別れを告げて村を後にしました。紙の小さな人達がくるくると踊って皆を送ってくれました。
そうしてです、チョッキンペットも言うのでした。見送りの場で。
「じゃあエメラルドの都でね」
「また会いましょう」
ドロシーが笑顔で応えます、お互いに手を振ってなのでした。
一行はまた旅に入りました。その道中で、です。
ふとです、恵梨香は右手の方を見てモジャボロに尋ねました。
「あの、赤くて大きな草が見えますけれど」
「ああ、あの草だね」
「あの草は何ですか?」
「あれは匂い草だよ」
「匂い草?」
「人食い草の亜種でね」
こうした草の名前も出てきました。
「マンチキンの国にあった」
「あのオジョさんやつぎはぎ娘さん達が捕まった」
「あの草ですか」
「そう、あの草の亜種なんだ」
それが匂い草だというのです。
「オズの国のあちこちに生えているんだよ」
「あの、人食い草の亜種って」
どうかとです、恵梨香はモジャボロの話を聞いて顔を曇らせて言いました、。
「大変ですよね、捕まったら」
「あの草は捕まえないよ」
「そうなんですか」
「ただ匂いがするだけで動かなくて」
それでだというのです。
「安心していいよ」
「そうですか」
「ただ匂いがね」
それがというのです。
「凄いんだよ」
「そうなんですか」
「だからあまり近寄らない方がいいよ」
それはというのです。
「もうとんでもない匂いだから」
「具体的にどんな匂いですか?」
「くさやってあるね」
モジャボロは恵梨香に言いました。
「あの日本の」
「ああ、あれですか」
「それと臭い豆腐とウォッシュチーズの強烈なものを一緒に入れた」
「そうしたものをですか」
「しかもそこにね」
さらにだというのです。
「あのスウェーデンの缶詰も入れた感じだよ」
「ああ、あの」
「あのとんでもなく臭いあれですか」
「僕達それ知ってます」
「あれは酷いですよ」
「とんでもないですよ」
五人共です、ここでこう言い合いました。
「うちの学園スウェーデンからの留学生もいますけれど」
「その子がわざわざスウェーデンから持って来たんですけれど」
「一回学園で開けたんです、その缶詰」
「するともう酷い匂いで」
「クラスの中が大変なことになったんです」
「というかあんなのをお部屋の中で開けたんだ」
モジャボロの方がです、びっくりして五人に尋ね返しました。
「それはね」
「はい、後で知りました」
「あの缶詰はお外で開けるものなんですね」
「あまりにも臭いから」
「とんでもない臭いだから」
「それで」
「いや、そんなことをしてはいけないよ」
とてもだというのです。
「二度としてはいけないよ」
「反省してます」
「本当に」
五人もでした、その時のことを思い出して言います。
「あんなことをしてはいけませんね」
「絶対にしません」
「そういうことでね。とにかくね」
お話を元に戻します、モジャボロは匂い草を見つつ五人に言います。
「あの草には近寄らない方がいいよ」
「はい、そうします」
「物凄い臭いだからですね」
「そうだよ、気をつけてね」
こうしてです、皆匂い草には近寄りませんでした。距離はあるので匂いはしません。こうした草は近寄らないに限ります。
それで、です。一行は兎の国に向かうのでした。それでまたテントの中で一泊しました。
次の日朝暫く歩いてです、一行の左手にお池が見えてきました。ドロシーがそのお池を見て笑顔で言います。
「よし、それじゃあね」
「今からですね」
「お池で、ですね」
「身体を綺麗にしよう」
そうしようというのです、皆に。
「まずは女の子、続いてね」
「僕達が入って」
「身体を綺麗にするんですね」
「毎日身体を綺麗にしないとね」
駄目だというのです。
「ではいいね」
「はい、わかりました」
「じゃあお池で」
五人の子供達が応えます、ですが。
モジャボロはカルロス達にです、こう言うことも忘れませんでした。
「わかっていると思うけれど」
「はい、女の子がお池に入っている間はですね」
「何があってもですね」
「覗いてはいけないよ」
そうしたことは絶対にしないようにというのです。
「ではね」
「じゃあまずはですね」
「女の子が」
「じゃあ入りましょう」
ドロシーが笑顔で恵梨香とナターシャに言ってきました。
「今からね」
「はい、それじゃあ」
「お池に」
「あのお池はね」
お池も見てです、ドロシーは二人に言いました。
「温かいわよ」
「じゃあお風呂みたいですか」
「そうした感じなんですね」
「ええ、だからね」
それでだというのです。
「寒くないからね」
「そもそもですね」
ナターシャがここでドロシーにこう言いました。
「オズの国って寒くないですよ」
「そうでしょ、この国はね」
「かといって暑くもないです」
「この国は常春なのよ」
いつもだというのです。
「適度に暖かいのよ」
「いい国ですね」
「だから普通の川やお池にも入られるの」
「それでもですね」
「そう、それでも入るのならね」
温かい方がいいというのです。
「だからなのよ」
「そういうことですね」
「そうよ。ではいいわね」
「はい、今から入りますよう」
「さて、それではね」
ここでモジャボロが男の子三人とトトに言ってきました。
「女の子達がお風呂に入っている間はね」
「その間はですね」
「僕達は」
「御飯を食べよう」
丁度朝です、一行は日の出と共に歩きはじめて丁度朝御飯の時を迎えていたのです。だからだというのです。
「そして女の子達はね」
「僕達がお風呂に入っている間にですね」
「温かいお池で身体を綺麗にしている間に」
「そう、食べるんだ」
かわりばんこで朝御飯を食べるというのです。
「そうしようね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
男の子三人はモジャボロの言葉に応えました、そしてです。
一行はかわりばんこで朝御飯を食べてお風呂に入りました。そうして気持ちよい朝を迎えてからでした。
また歩きはじめました、一行は分かれ道に入りましたが道標にはちゃんと書いてありました。
「こっちが兎の国ですね」
「コンガラパズルの国に」
「キッチンランドですか」
「パンの国の方もありますね」
「何処にでも行けるんですね」
「今回行くのは兎の国だからね」
モジャボロはこのことを五人に強く言いました。
「他の国には行く予定はないよ」
「私はどの国にも行ったことがあるけれど」
ドロシーが五人にお話します。
「若しパンの国に行ってもね」
「その時はですよね」
「パンをですね」
「食べたら駄目よ」
つまりパンの国の住人の人達をだというのです。
「いいわね」
「はい、そのことは気をつけます」
「パンだからっていっても食べたら駄目ですね」
「幾ら何でも」
「それだけは」
「僕とビリーナが食べてしまったんだよね」
トトもドロシーと一緒にパンの国に行ったことがあります、それでその時のことを反省して五人に言うのでした。
「悪いことをしたよ」
「私もお家の壁やピアノを食べたのよね」
ドロシーもでした。
「どうしてもお腹が空いていたからお願いしてね」
「僕は勝手に食べたんだよね」
「そうしたことはよくないから」
「気をつけようね」
ドロシーとトトはそれぞれ五人に言います、そしてモジャボロも言いました。
「お腹一杯だと食べたいと思わないね」
「はい、もうお腹に入らないと」
「それで」
五人もこうモジャボロに答えます、幾ら何でもお腹が一杯ですとそれ以上食べることが出来ないものです。入らないですから。
「だからですね」
「若しパンの国に行くのなら」
「国に入る前にお腹一杯食べよう」
もう入らない位にです。
「そうしようね」
「わかりました、その時は」
「そうします」
間違って食べない為にはまずお腹一杯食べること、食べたいと思わない為には食べるということでした。
そうしたことをお話してでした。皆で、です。
分かれ道から兎の国の方に向かおうとします、ですが。
カルロスがです、モジャボロに尋ねるのでした。
「時間あります?」
「時間だね」
「はい、兎の国に行くまでに」
「わかったよ、その間にだね」
「そうです、他の国に行きたいなって思ったんですけれど」
こうモジャボロに言うのでした。
「駄目ですか?」
「一体どの国に行きたいのかな」
「パンの国とコンガラパズルの国です」
カルロスはこの二国だというのでした。
「両方に行きたいんですけれど」
「よし、じゃあ行こうか」
モジャボロはにこりとしてカルロスに答えました。
「どっちにもね。実はね」
「実は?」
「君達がそう言うと思ってね」
実は先読みしていたのでした、五人が他の国に行きたいと言うとです。
「時間はたっぷり用意しておいたんだ」
「そうだったんですか」
「既にですか」
「うん、そうだったんだ」
にこりとして五人に言うのでした。
「内緒だったけれどね」
「そうですか、じゃあ」
「今からですね」
「その二国にですね」
「行くんですね」
「うん、そうしよう」
こうお話してでした、そのうえで。
一行はパンの国とコンガラパズルjの国にも行くことにもなりました、ここでドロシーが皆に自分の考えを言いました。
「ついでだからキッチンランドにも行きましょう」
「あの国にもですか」
「行くんですね」
「そう、そうしてね」
そのうえでだというのです。
「どの国の人達もオズマのパーティーに招待しましょう」
「パンの国の人もコンガラパズルの国の人もですか」
「キッチンランドの人達も」
「そう、皆ね」
呼んでだというのです。
「そうしてね」
「より楽しくですね」
「楽しく過ごしてですね」
「そう、そのうえでね」
こう言ってなのでした、そのうえで。
一行はキッチンランドの国にも行くことになりました。では最初に行く国はといいますと。ドロシーがまた言いました。
「最初はコンガラパズルの国に行きましょう」
「あの国ですか、最初は」
「あの国に行くんですね」
「そうしましょう、ただあの国の人達はね」
「パズルですよね」
「だからですよね」
「注意してね」
このことを五人にお話するドロシーでした。
「さもないとね」
「はい、ちょっとでも音を立てたら」
「その時は、ですよね」
「あの国の人達が崩れて」
「それで」
「パズルをしないといけないからね」
コンガラパズルの国の人達の身体のパズルをです。
「だからね」
「わかっています、注意します」
「さもないと大変なことになりますから」
「だからですね」
「何としてもですね」
「音は立てないで、ですね」
「そういうことでね」
こうお話してでした、そのうえで。
皆はまずはコンガラパズルの国に向かいました、その道中は平和でしたが。
神宝はそろりそろりとした足の調子になっていました、その彼を見てジョージは笑ってこう彼に言いました。
「いや、今はまだいいと思うよ」
「コンガラパズルの国に入ってないからだね」
「うん、だからね」
それでだというのです。
「今はね」
「普通に歩いていいね」
「そうだよ。幾ら何でも心配性だよ」
「ついついそうなったね」
「気持ちはわかるけれどね」
ジョージにしてもだというのです。
「今はまだいいよ」
「そうだね、それじゃあ」
こうして普通の歩き方に戻った神宝でした、そうして。
コンガラパズルの国に向かいながらです、トトに尋ねました。
「ねえ、君はね」
「何かな」
「うん、オズの国に最初に来た時はね」
「その時だね」
「そう、喋っていなかったね」
「長い間そうだったね」
自分でも言うトトでした。
「僕はね」
「そうだったね」
「けれど今はね」
こうしてだというのです。
「喋られるよ」
「そうなったんだね」
「うん、ドロシーともお話出来るから」
だからだともお話するトトでした。
「僕はとても幸せだよ」
「私もよ。トトとお話出来てね」
ドロシーもにこりとして言ってきます。
「とても幸せよ」
「動物が喋ることが出来るっていうことも」
恵梨香はトトだけでなくオズの他の動物達のことからも言いました。
「いいことよね」
「お互いに心が通じ合うからね」
「とてもいいことだよ」
ドロシーとトトが恵梨香に答えます、それだけでもオズの国はとても素晴らしい国です。
チョッキンペットへと招待状は無事に渡せたな。
美姫 「そうね。昼食も頂いたみたいね」
ここまでは特に何事もなくて良かったな。
美姫 「次は兎の国に行くみたいだけれど」
途中でテントで一泊して、いよいよかと思ったけれど。
美姫 「どうやら寄り道をするみたいね」
だな。次に向かう先ではどんな珍しい物が出てくるのかな。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。