『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』
第九十二話 劉備、于吉を欺くのこと
袁術も戦場にいる。そうしてだ。
ゲーニッツと草薙達の戦いを見てだ。こう叫ぶのだった。
「な、何じゃあ奴は!」
「はい、ゲーニッツというそうです」
彼女の傍らにいる張勲が袁術に答える。
「何でもオロチ一族でも最強だとか」
「最強とかいう域ではないぞあれは!」
その暴れ回る様を見ての言葉だ。
「滅茶苦茶強いではないか!あれでは三人といえどもたんぞ!」
「そ、そうですよね」
さしもの張勲も青い顔になって応える。
「草薙さん達も頑張ってますけれど」
「ゆ、弓じゃ弓」
袁術が今言うのはこれだった。
「弓であのゲーニッツを撃て。弓なら何とかなるじゃろ」
「それ、無駄みたいですよ」
しかしだった。張勲はすぐにこう主に話した。
「どうやら」
「何故じゃ、それは」
「だって。あの人風使いますから」
今もだ。空中から襲い掛かる八神に無数の鎌ィ足を浴びせていた。八神は空中でそれを防いだ。傷は負わなかったが攻撃はできなかった。
その鎌ィ足も見てだ。張勲は言うのである。
「多分。弓矢も」
「それではあの三人に任せるしかないのか」
「そうなるかと」
「しかしあのままではまずいぞ!?」
袁術も本気で心配している。
「しかもあ奴だけではないではないか!」
「あそこの金髪の大きな人って」
その金髪をセンターで分け口髭を生やしている。右目は義眼だ。そしてその服は赤いタキシードだ。その姿の男がなのだった。
「何なんですかね」
「な、何じゃあ奴も!」
袁術はその赤いタキシードの男を見ても泣きそうになる。
「無茶苦茶に暴れ回っているではないか!」
「烈風けーーーーーん!烈風けーーーーーん!」
男がだ。叫びながら右手を下から上に大きくスイングさせてだ。
そのうえで地面に衝撃波を出し走らせて。兵達を吹き飛ばしている。
「な、何だこいつは!」
「こいつもかなり強いぞ!」
「どうなっているんだ!」
兵達もその強さに唖然となる。しかし彼等は。
何とか男に迫る。だが今度は。
男は足を大きく、回転させてきた。それは。
「ジェノサイドカッターーーーーー!!」
「う、うわああああっ!」
「だ、駄目だ!」
その蹴りでだ。接近した兵達が吹き飛ばされてしまった。
しかもだ。男はさらにだった。
今度は両手に気を込め。思いきり放ってきたのだった。
「カイザーウェイブ!」
それでだ。また吹き飛ばすのだった。その暴れる姿を見てだ。
袁術はだ。今度は顔面蒼白になった。その顔で張勲に言うのである。
「あ奴、ゲーニッツとやらとどちらが強いのじゃ」
「さ、さあどちらでしょうか」
無論張勲も真っ青になっている。そのあまりもの強さを見てだ。
「けれどどちらにしてもです」
「強過ぎるのじゃ!」
「ですよね。化け物ですよあれは」
「何者じゃ、あれは」
「ルガールという」
ハイデルンがだ。袁術達の横に来て話してきた。
「ルガール=バーンシュタインというのだ」
「ルガール?」
「それがあの男の名前ですか」
「趣味は倒した格闘家をそのまま像にすることだ」
ハイデルンはそのルガールの趣味から話す。
「それを集めることを生きがいとしている」
「な、何じゃそれは!?」
その趣味を聞いてだ。さらに驚く袁術だった。
「無茶苦茶ではないか!」
「あの、それって人間のすることですか!?」
張勲ですらだ。考えられない域の話でだ。やはり驚いている。
「生きている人間をって」
「そんなとんでもない奴があちらの世界におるのか!」
「しかもだ」
尚且つだとだ。ハイデルンは続ける。
「人を殺そうともだ」
「そんなのは平気か」
「そういう人間なんですね」
「そういうことだ。そしてだ」
「まだ何かあるのか」
「私の片目と」
その眼帯を押さえての言葉だった。
「家族、そして部下達を殺した男だ」
「で、ではじゃ」
「ハイデルンさんにとっては」
「必ず倒さなければならない相手だ」
まさにだ。そうした男だというのだ。そのルガールは。
「今から戦わせてもらう」
「うむ、それではな」
「わし等も共に行こう」
柴舟とタクマもいた。
「三人でかかればじゃ」
「あの男といえど倒せる筈だ」
「そ、そうじゃ。頼んだぞ」
袁術もだ。今はこう言うしかなかった。
「そんなとんでもない奴をこの世界でのさばらせておけるか!」
「そうですよ。そんな人まで来てたんですか」
「残念だがな」
来ていると。ハイデルンは二人に答える。
「それではだ。今からだ」
「う、うむ。頼んだぞ」
「御願いしますね。絶対に」
袁術達は三人を送り出すしかなかった。そして戦場では。
李典はドリルの槍を振り回しつつだ。于禁に言う。于禁は両手の刀を振り回している。
「そっちはどないや!」
「かなりやばいの!」
戦いながら答える于禁だった。
「こいつ等次から次に出て来るの」
「ほんまやな。こりゃ洒落にならんで」
「全くなの。辛い戦いになるっていうのはわかっていたけれど」
「予想超えてるわ」
言いながらもだ。于禁も槍を振るう。
「けれど。今我慢したらや」
「別働隊が来るの」
「そうだ、それまでの辛抱だ」
楽進は気を放ちながら二人に言う。
「堪えるぞ」
「ああ、絶対に持ち堪えるで」
「何があってもなの!」
「そうだ。間も無くだ」
楽進はさらに言う。
「劉備殿達が来てくれる」
「うち等が連中を正面に張り付けさせてや」
「そこになの」
「そうだ、我等は勝てる」
楽進は勝利を信じている。だからこそ戦うのだった。
「この戦いにもだ」
「この戦いが終わったらや」
李典はあえて気持ちをほぐす為に二人に話す。
「三人でお茶でも飲もか」
「お茶?」
「お茶なの?」
「そや。とびきり美味い茶をや」
それをだ。三人で飲むというのだ。
「張三姉妹の舞台を見ながらな」
「そうだな。それはいいな」
「最高の組み合わせなの」
「お茶と歌を楽しむ為にもや」
どうかとだ。李典はあえて楽しげな笑みを浮かべて話す。
「ここは踏ん張ろか」
「そうだな。絶対にな」
「舞台を観るの!」
「ただしや」
ここでだ。李典はこんなことも言った。
「袁紹さんの鰻は勘弁やな」
「あれはな。どうもな」
「やらされたくないの」
そのだ。胸なり何なりで鰻を掴むという袁家伝統の競技についてはこう言うのだった。
「袁紹殿はかなりお好きなようだが」
「あんなの絶対にしたくないの」
「うちは掴めるけれどな」
胸でだ。その鰻をだというのだ。
「けれどあれはな」
「うむ、例え掴めてもだ」
「いやらし過ぎるの」
「っていうか袁紹さんってほんまああいうの好きやな」
袁紹のそうした好みはだ。実によく知られているのだった。
「おかしな趣味の人やな」
「ああしたところさえなければな」
「何の問題もない人なのに残念なの」
「ほんまや。何とかならんのかいな」
「全くだな。困ったお人だ」
「仕えると大変そうなの」
そのこともよくわかることだった。そうした話をしながらだ。
彼女達も戦い続ける。その戦局を見てだ。
孔明と鳳統がだ。遂に言った。
「では皆さん」
「行きましょう」
「わかった」
「それじゃあ行こう!」
まずはだ魏延と馬岱が応える。
「先陣は我等だな!」
「やらせてもらうわね!」
「はい、まずは焔耶さんと蒲公英ちゃん!」
「御願いします!」
軍師二人も彼女達に話す。
「第一陣の左右!」
「それでは!」
「ではな!」
「行くよ!」
こう話してだ。そのうえでだった。
まずは二人が出陣する。続いては。
「第二陣左右!」
「御願いします!」
「よし、わかったで!」
「行く」
張遼と呂布だった。青い旗と紅い旗がたなびく。
その旗と共にだ。二人も出た。
「ほな、今までの鬱憤な!」
「晴らさせてもらう」
「それじゃあ御願いします」
「出陣して下さい」
「ああ、わかってるで!」
「やらせてもらうから」
最強の二人が出た。続いては。
「第三陣の左右!」
「紫苑さんと桔梗さん!」
この二人だった。
「それじゃあ!」
「出て下さい」
「久し振りね。戦うのも」
「そうじゃな。二人一緒にはじゃな」
笑顔でだ。こう言い合う二人だった。
「だから余計に」
「楽しみになってきたわ」
「では第三陣も」
「出陣して下さい!」
二人も出る。これで三陣まで出た。続いては。
「では第四陣はです」
「次は」
「行くぞ!」
「それじゃあな!」
趙雲と馬超だった。この二人が第四陣だった。
「では共にだ」
「ああ、やらせてもらおうぜ」
「では星さん、碧さん」
「御願いします」
「わかっている」
「暴れさせてもらうさ!」
この二人も出た。そして最後は。
「ではですね」
「最後は」
「行くぞ!」
「わかっているのだ!」
関羽と張飛だった。最後はこの二人だった。張飛の背には籠がある。
「それではだ!」
「暴れるのだ!」
こうしてだ。十人の豪の者達が切り込む。これを受けてだ。
戦局は一変した。その突撃によってだ。
それを見てだ。左慈が横にいる于吉に問うた。
「まずいと思うか」
「いえ、全く」
その左慈に落ち着いた声でだ。于吉は答えた。
「むしろ楽しいではありませんか」
「楽しいというのか」
「戦いにより起こる念。それもまたです」
「それもだな」
「はい、書の糧になるのですから」
だからだというのである。
「一向に構いません」
「しかしだ。奴等も気付いているぞ」
「書のことにですね」
「それでだ。書を封印しようとするのではないのか」
「そうですね。間違いなくそうしてくるでしょう」
于吉の口調は変わらない。全くである。
その変わらない口調でだ。彼はまた左慈に言う。
「しかし書だけではありません」
「そうだな。山もある」
「そして。山で駄目だったとしても」
「手は幾らでもあるな」
「要はこの世界を破壊と混沌に世界を変えることです」
彼等の共通している目的をだ。ここで話すのだった。
「ですから。あの書はです」
「道具に一つだな」
「代わりは幾らでもあります」
「人とは違うからな」
「書が封印されても。それだけです」
「そうか。ではだ」
ここまで話を聞いてだ。左慈も納得した顔になった。そうしてだ。
彼は前に出てだ。それから于吉に述べた。
「では俺もだ」
「戦いに行かれますか」
「そうしてくる。楽しんでくる」
彼にとってはだ。戦いはそうしたものだった。
その楽しみを堪能する為にだ。前に出てだった。
「一人でいけるな」
「全く問題はありません」
「ならだ。ここで勝てはよし」
それで目的が達成される。しかし若し失敗したとしてもだとだ。
左慈は于吉に顔を向けて。言うことを忘れなかった。
「しかしそうでなくともだ」
「その場合は定軍山に向かいましょう」
「落ち合い。そこでな」
「また動きましょう」
こうしたやり取りを経てだ。彼等はこの場では別れた。そうしてだった。
左慈も戦場に出た。彼と対峙したのは甘寧だった。
彼女は左慈を見てだ。そうして彼に問うた。
「貴様、まさか」
「何かに気付いたか?」
「以前雪蓮様に刺客を送って来たか」
「どうしてそう思える」
「勘だ」
それによってだとだ。甘寧は構えを取りながら彼に返した。
「私の勘だ。貴様はそうしたことを好むな」
「俺より于吉だがな」
「于吉?その者が雪蓮様に刺客を」
「俺もあいつもだ」
一人ではないというのだ。それは。
「そうしたことは得意だ」
「刺客を送ることもか」
「他にもあるがな。そして確かにだ」
「やはりそうか」
「それだけではない」
左慈の言葉に邪な笑みが宿った。その口の端にもだ。
その笑みでだ。甘寧に言うのだった。
「これでわかるか」
「まさか。貴様が大殿を」
「さてな。しかしそれに関係なくだな」
「どちらにしろ貴様は敵だ」
甘寧は身構えたまま左慈に言った。
「ここで倒す」
「あちらの世界では暗殺で死んだのだがな」
「雪蓮様がか」
「そうだ。もっともあの世界の貴様達は貴様達であって貴様達ではない」
「そのことは聞いた」
彼女達の世界とあちらの世界の違いはだ。既にあかり達から聞いている。それで知っているのだ。
「既にな」
「そうか。では話が早いな」
「そして貴様等のこともだ」
そのだ。左慈達のこともだというのだ。
「この世界をか。壊すつもりだな」
「如何にも。破壊と混沌が我等の目的だ」
「それでこの世界を。そして雪蓮様を狙い大殿を」
「ではそれを止めるか」
「止める!」
甘寧は言い切った。怒りの気が全身を包む。
その気をみなぎらせたまま。彼女はさらに言った。
「貴様をここで倒す!」
「ならば来い。相手をしてやろう」
「言われずともだ!」
「俺は陰謀だけではないということを教えてやろう」
言いながらだ。左慈も構えた。彼の気もその全身を包んだ。
甘寧は黄色、左慈は青色のだ。それぞれの気をみなぎらせてだった。
そのうえでだ。彼等は互いの拳を交えるのだった。
刀馬はだ。今は一人ではなかった。
戦場を駆け巡りながらだ。己の隣にいる男に声をかけた。
「因果なものだな」
「全くだな」
その男もだ。彼に言い返すのだった。
「貴様と共に戦うとはな」
「一つ言っておこう」
刀馬は男に言った。
「これは本意ではない」
「俺もだ」
「だが。今はだ」
「共に戦うか」
「わかっているな」
刀馬は横目で男を見て問うた。
「ここにいる」
「ああ。この戦場にな」
「思えば最初から胡散臭い男だった」
そうだったとだ。刀馬は過去を振り返りながら言うのだった。
「得体の知れぬものを漂わせていた」
「では何故だ」
男は刀馬に問うのだった。
「何故あいつ共にいた」
「知れたこと。貴様を斬る為だ」
「俺をか」
「その絶対の零によってな」
「御前が今まで目指していたものでだな」
「命に言ったそうだな」
刀馬の紅い剣が煌く。そうしてだった。
白装束の男達を斬り伏せる。剣の動きが実に速い。
そしてそれはだ。男もだった。
蒼い剣が唸りだ。やはり周りの敵を斬り倒すのだった。
そうしてて進みながらだ。刀馬はその男蒼志狼に言うのだった。
「俺の零の氷河が溶けた時にだ」
「そのことか」
「俺の大河は動きだすと」
「そうだ。確かに言った」
その通りだとだ。蒼志狼も話す。
「そしてそれはだ」
「今か」
「貴様は今零を目指すか」
「笑止。俺は最早零を見てはおらん」
「では何を見ている」
「絶対だ」
それだというのだ。
「絶対だが零ではない」
「そうか。それを目指しているのだな」
「貴様は無限だな」
「如何にも。その通りだ」
蒼志狼は己の剣を振るいつつ刀馬に答えた。
「俺が目指すものはそれだ」
「では無限が正しいか絶対が正しいか」
「それを確めるか」
「そうだな。その為にもな」
「今はあの男を見つけ出し」
「斬るとするか」
ここでだ。刀馬はこうも言った。
「あいつは俺を利用した」
「そうだな。最初からそれが目的だったな」
「そして命もだ」
彼女の名前もだ。ここで出すのだった。
「命も利用した。だからこそ余計にだ」
「許せぬか」
「断じてだ。では斬る」
「見つけ出してな」
「あいつを斬るのは俺だ」
その鋭い紅い目を光らせての言葉である。
「そして貴様を斬るのもだ」
「御前だっていうんだな」
「ここで死ぬことは許さん」
「言われなくても死ぬつもりはないがな」
「だが言っておく。絶対にだ」
ここでもだ。絶対だというのだった。
「死ぬな。わかったな」
「ああ、よくな」
こうした話をしながらだった。二人はその男を捜していた。戦場で敵達を斬りながらだ。彼等はひたすら前に突き進むのだった。
戦場を駆けているのは彼等だけではなかった。幻十郎もだ。
その左利きで持つ刃を振り花札を出しながらだ。覇王丸に言うのだった。
「貴様がいると聞いてだ」
「どう思ったっていうんだ?」
「貴様を斬らせぬとな」
そう思ったとだ。背中合わせになっている覇王丸に言うのである。
「そう思った」
「俺を斬る為にか」
「そうだ。貴様を斬るのは俺だ」
「そして手前を斬るのもな」
「貴様だ。俺は貴様以外に斬られはしない」
「それは絶対にだな」
「あの男。九鬼刀馬か」
ふとだ。彼の名前も出すのだった。
「あの男、俺に似ているな」
「ああ、確かにな」
その通りだとだ。覇王丸も答えた。
「あいつは御前に似ているな」
「あいつもある男を斬りたい様だが」
「その辺りも似ているな、御前と」
「そうだな。俺は斬る」
今切り捨てた白装束の者のことではなかった。
「貴様をだ。必ずな」
「相変わらずだな。それに加えてだ」
「それにか」
「いいものも身に着けたじゃねえのか?」
覇王丸は旋風烈斬を出しそれで敵を薙ぎ倒す。剣を下から上に振るい竜巻を出してだ。そのうえで吹き飛ばしているのである。
そうしながらだ。また言う覇王丸だった。
「この世界に来てな」
「あの連中と同行していた」
こう言う幻十郎だった。
「そして色々と語った」
「へえ、御前が誰かと一緒にいたのか」
「気が向いた」
それでだというのだ。
「それでそうした」
「成程な。気が向いたか」
「それで共にいた。それだけだ」
「だがそれがよかったと思うがどうだ?」
「少なくともあの連中の考えはわかった」
華陀達のだ。それはだというのだ。
そのことを話してからだ。幻十郎はさらに述べた。
「ああした考えもあるのだな」
「人間色々な考えがあるさ」
「俺は。長い間一人だった」
孤独と酔狂、それが幻十郎の生き方だった。
己の手で母を斬りそれからは一人で生き剣を振りだ。酒を飲み薬を吸い女も男も抱いてきた。その彼の生き方も語られる。
「あの寺にいた時もだ」
「懐かしいな。あの時か」
「そうだ。貴様と会ったその時だ」
まだだ。彼等が剣を持ちようやくその道を歩みはじめた時のことである。彼等はその時に会いだ。それから因縁が続いているのだ。
その因縁も思い出してだ。それで話されるのだった。
「俺は一人だった」
「そうだったな。御前は一人で酒を飲んでいたな」
「覚えている。貴様と共に飲んだことはないがな」
「誰かと一緒に飲んだことはあるのかい?」
「ない」
断言だった。それはなかったというのだ。
「興味もなかった」
「そうだな。これまでの手前はな」
「だが。あの連中とは共に飲んだ」
「そうしたんだな」
「美味いものだった。一人で飲むのもいいがな」
「大勢で飲む酒もいいだろ」
「いいものだ。それでだ」
話がだ。ここで動いた。
「この戦いが終わればだ」
「飲むか?」
「美味い酒がある」
誰と飲むかはだ。あえて言わない。お互いにだ。
だがそれでもわかったうえでだ。彼等はやり取りをするのだった。
「それを飲む」
「そうか。俺もあるぜ」
「相変わらず飲んでいるのだな」
「好きだぜ。どの世界の酒もな」
覇王丸は楽しげに笑って幻十郎に述べた。
「じゃあ。この戦いが終わればな」
「飲む」
こうしたやり取りをしてからだ。そのうえでだ。
彼等は背中合わせになったまま戦う。それが今の二人だった。
戦局は別働隊の切り込みで連合軍に傾いた。そしてだ。
それに加えてだ。新たな軍が戦場に姿を現したのだった。
「黒梅、間に合ったわね」
「間に合うようにしたのよ」
?義だった。彼女はこう審配に告げたのである。
「ちゃんとね」
「成程、そうなのね」
「そうよ。それじゃあね」
「ええ、それじゃあ」
「全軍に告ぐ!」
今度は己の率いる軍に告げる?義だった。
「このまま突撃するわよ!」
「はい!」
「それでは!」
兵達も頷きだった。こうしてだ。
二人が共に率い突き進みだ。戦場に切り込むのだった。
それを受けてだ。戦局は決定的になった。
横と後ろからも攻めはじめた連合軍は白装束の者達を圧倒しだした。それを見てだ。
袁紹も剣を手にだ。こう叫ぶのだった。
「よし、今こそですわ!」
「全軍総攻撃ね」
「ここで一気に流れを掴みますわ!」
曹操にもこう言うのである。
「いいですわね!」
「ええ、それが妥当よ」
曹操もだ。それでいいとした。そしてだ。
彼女も鎌を手にしてだ。袁紹に話す。
「ずっと我慢してもらっていたけれどね」
「それでも。今度こそは」
「ええ、前線に出ましょう」
曹操も微笑み袁紹に話す。
「そうしましょう」
「わかりましたわ。それでは」
「じゃあ麗羽」
曹操はあらためて袁紹の真名を呼んだ。そうしてだった。
「全軍に命じて」
「ええ、では」
一旦咳払いをしてからだ。袁紹は言った。
「全軍総攻撃でしてよ!」
「今こそ国を救う時よ!」
曹操も共に叫ぶ。
「今ここで!」
「勝利を手に!」
こうしてだ。袁紹は待ちに待った前線への突撃を行うのだった。これによってだ。
戦局は決まった。白装束の者達は次々に薙ぎ倒されていく。しかしであった。
于吉はだ。その中でもだ。冷静なままでいた。
そしてその冷静な顔でだ。己が持っている書を手にして微笑み言うのだった。
「さて、もう充分に蓄積されましたね」
書から起こる邪な気配を察しながらの言葉だった。
「では。いよいよ」
「させません!」
その彼にだ。少女の声が浴びせられた。
「そんなことは!」
「おや、やはり来られましたか」
「貴女のその邪な願いは」
「もうわかってるわ!」
少女は二人だった。そこにいたのは。
孔明とだ。そして。
「貴女ですか」
「何があっても!」
緑の仮面を着けた劉備だった。彼女がいたのだ。
巨大な剣を重そうに持っている。その劉備がだ。于吉に対して言う。
「ここでやっつけるんだから!」
「面白い。それではです」
どうかとだ。于吉はその劉備を見ながら言うのだった。
「貴女を退け。世界をです」
「破壊と混沌に陥れるというのですね」
「はい」
まさにだ。その通りだというのだ。
「そうさせてもらいます」
「何度も言うわよ!」
よく聞けばだ。微妙にだった。
声も喋り方も何かが違う。そうしての言葉だった。
「そんなことさせないから」
「確かに貴女はです」
于吉は悠然としている。しかしその余裕故にだ。
気が緩みだ。劉備の声にも喋り方にも気付かなかった。そうして彼女に言った。
「その剣で私の書を封じることができます」
「その為の剣なのね」
「はい、そうです」
その通りだというのだ。
「その剣は特別なもので。龍の鱗から造っています」
「龍の鱗から」
「それも龍達の王である四海龍王達の鱗をそれぞれ合わせ」
「四海龍王、あの」
孔明もその龍達のことは知っていた。龍達の王にして四つの海をそれぞれ治め神々だ。神としても相当な力を持っている存在だ。
「あの龍達の力をですか」
「それだけに相当な力があります。ただしです」
その剣のことをだ。左慈はさらに話した。
「その剣は誰もが使えるという訳ではなくです」
「劉家の者だけが」
「しかその中でも。とりわけ龍の血が強い者だけがです」
使えるというのである。
「龍の血を引く劉家の中でもです」
「えっ、そうだったの」
「はい、そうなんです」
孔明はようやく気付いたといった感じの劉備にすぐに話した。
「高祖様は赤龍の血を引いておられますから」
「あれ、龍の息子さんだったの!?」
この劉備も知らないことだった。
「じゃあお父さんって」
「御母上が夢の中で赤龍を宿らせたのです」
そうだと話す孔明だった。
「御母上が妊娠中に夢の中でお腹の中に赤龍が宿られるのを見られて」
「それで高祖様が生まれたんだ」
「はい、そうだったんですよ」
こう話す孔明だった。
「ですから。劉家は龍の血を引いてるんです」
「そうよね。幾ら何でもね」
「龍から人は生まれませんから」
生物学的な話も為される。
「そういうことなんです」
「そうだったのね。じゃあこの剣って」
「その通りです」
于吉もまた劉備に話す。
「貴女しか扱えないものです」
「だから私今ここにいるんだ」
「今気付かれたのですか」
「そうよ。気付いたのよ」
「鈍いことです」
余裕の笑みのままだ。于吉は告げる。
「その貴女が私をですか」
「あんたと、その書をよ」
「太平要術の書もまた」
「封じるから!」
「では。今から」
于吉は構えない。それでもだった。
その両手にだ。黒いものを宿らせてだ。
両手を前に突き出す。そこからだった。
黒い球を放った。それで劉備を撃とうとする。
劉備はその球をだ。左右に舞う様にしてかわす。その動きを見て于吉は言った。
「ほほう、これは」
「どう?上手でしょ」
「舞の様ですね」
彼もそのことを指摘するのだった。
「思ったよりも軽やかです」
「だっていつも踊ってるから」
こう返す劉備だった。失言であるが于吉は気付かない。
「こんなの当然よ」
「当然ですか」
「そうよ。お姉ちゃんもちょっとはやらないと」
また言ってしまう。しかし于吉はその余裕故に気が緩みだ。やはり気付かないのだった。
「だからね」
「無駄だと思いますが」
「無駄じゃないよ。ほら」
于吉の傍にもだ。連合軍が来た。
その先頭に関羽と張飛がいる。二人はそれぞれの得物を手に于吉のところに来た。
「于吉、最早だ!」
「逃げられないのだ!」
「おやおや、三姉妹揃い踏みですか」
その二人にも余裕を見せる于吉だった。
「これは贅沢ですね」
「そうよ、贅沢よ」
劉備がまた于吉に言い返す。関羽と張飛はそれぞれ彼の斜め後ろに位置した。張飛はその時籠を置いた。
そのうえで于吉を取り囲みだ。そうして関羽が言う。
「于吉、ここでだ!」
「終わりだというのですか」
「貴様のその邪な企み!ここで潰える!」
「仰るものですね。しかし私もです」
「やられないというのだ?」
「そう簡単には」
「そう言うんだな」
今度は華陀が来た。そのうえで于吉に言うのだった。
「御前はあくまで」
「そういうことです。それが私達の目的ですから」
「そう言うとは思っていた」
華陀は劉備の左隣に来た。そのうえで言うのである。
「やはり。その書は」
「では。四人ですね」
「やらせてもらう!」
「行くよ!」
劉備も言ってだ。そのうえでだ。
四人で一斉に攻める。だがその四人に。
于吉は再び黒い気を両手に込めてだ。そのうえでだ。
両手の平を地面に叩きつけてだ。気を蜘蛛の巣の如く地面に這わせたのだ。
それを見てだ。四人は一斉に飛んだ。それでかわしたつもりだった。
だがそこでだ。今度はだ。
黒い気が上にあがった。蜘蛛の巣の形をしたまま地面からだ。
「何っ、気が!」
「来たのだ!」
「私の気は自由自在です」
そうだとだ。于吉は勝利を確信した笑みで言う。
「こうしたこともできるのですよ」
「くっ、このままでは!」
「まずいのだ!」
「さて、どうされますか?」
于吉は上に飛んだままの四人に問う。
「これはどうして防がれますか」
「それはだ!」
「こうするのだ!」
関羽と張飛が言ってだ。
二人は得物から白い気を放ってだ。それで于吉の黒い気を打ち消したのだ。そうして于吉の攻撃をすんでのところで防いだのである。
「ほほう、そうきましたか」
「気には気だ!」
「それが一番なのだ!」
「確かに。それはその通りです」
于吉もそのことは認めた。
「やはり。尋常な強さではありませんね」
「そしてだ!」
今度は華陀だった。彼は。
両手のそれぞれの指と指の間に黄金の針を挟んでだ。それを。
于吉が持っている書にだ。投げたのだ。その針を見てだ。
彼は一旦姿を消した。そして四人が着地した時にだ。
離れた場所に移っていた。瞬間移動だった。
「縮地法ですか」
「それですね」
戦いを見守る軍師二人が言う。
「それも使って」
「かわすなんて」
「縮地法って何なのだ?」
張飛は二人にその縮地法について尋ねた。
「聞いたことがないのだ」
「ある場所からある場所に瞬時に移動する術です」
「歩いたり走ったりすることなくです」
「何っ、それでは妖術なのだ」
「はい、仙術でもありますが」
「この方の場合はそれだと思います」
「確かに。これは妖術の一つです」
于吉もそのことは否定しなかった。
「私の術はそれになりますから」
「そうですね。妖術ですね」
「明らかに」
孔明と鳳統もそうだと言う。
「そこまでの妖術を使えるなんて」
「やっぱり貴女は」
「そう簡単には倒せませんよ」
軍師二人にもだ。于吉は余裕を見せる。
「さて、今度はどうされるのですか?」
「こうします!」
「これで決まりです!」
孔明と鳳統は強い声で于吉の問いに答えた。するとだ。
彼が左手に持っている書にだ。急にだった。
何かが突き刺さった。それは。
「なっ、これは」
「やったわね」
于吉の前に劉備がいた。彼女が両手に持っているその剣がだ。書を貫いていたのだ。
だが于吉本人までは至っていない。書の力によりそこまで通していないようだ。
だがそれでもだ。書を貫かれた于吉は驚愕の顔でその劉備に問うのだった。
「馬鹿な、何故貴女がここに」
「どうしてだと思う?」
「縮地法を使える筈がない」
それはもう確信していることだった。
「妖術を」
「私妖術なんて使えないから」
「では何故だ」
その驚愕の顔で劉備に問う。
「何故。ここに」
「二人いたから」
「二人?」
「そう、二人よ」
劉備は書から剣を抜いてだ。後ろに下がり間合いを開けた。その隣にだ。
緑の仮面の劉備が来た。先程まで彼と戦っていた劉備だ。
「劉備玄徳が二人だと」
「こういうことなの」
仮面の、蝶の様な仮面を外した劉備を見る。そこにいたのは。
「何っ、あの三姉妹」
「そうだよ。天和ちゃんだよ」
張角は劉備と並んで言う。
「だって私達そっくりだから」
「こうして二人になっていたのよ」
「どうしてここに」
「あれなのだ!」
張飛は己の左斜め後ろにある籠を指差した。彼女が運んできたその籠だ。
見ればだ。その籠は蓋が開いていた。于吉はそれも見て悟ったのだった。
「そうか、あの籠で」
「籠は蒲公英ちゃんが入るだけではありません」
「桃香さんも入るものです」
孔明と鳳統がここでまた言う。
「貴方はこのことは御存知ありませんでしたね」
「そしてこうした策があることも」
「確かに。迂闊でした」
于吉の余裕は消え去っていた。歯噛みしての言葉だった。
「こうなっては」
「止めだ!」
華陀はその書に針を投げた。それは劉備が貫いたその太平要術の書に突き刺さった。そのうえで彼は高らかに叫ぶのだった。
「光になれーーーーーーーーーっ!!」
「くっ、これでは!」
突き刺さった針から黄金の光が起こりだ。それが書全体を包み。
矢となって起こり消え去った時には。
書は消え去ってしまっていた。于吉の左手にはもう何もない。
その空になった己の手を見つつ。彼は忌々しげに言った。
「失敗ですか」
「そうだ、貴様の野望は潰えた!」
「ここで完全になのだ!」
「確かに。今はです」
歯噛みしつつだ。関羽と張飛の言葉に応える。
「こうなっては仕方がありませんね」
「後は貴様だけだ」
「覚悟するのだ」
「いえいえ、確かに書はなくなりました」
それでもだとだ。于吉は務めて余裕を取り戻して言うのだった。
「ですがまだ諦めてはいません」
「ではどうするのだ」
「まさかとは思うが今もなのだ?」
「そうです。退散させてもらいます」
そうさせてもらうと言ってだ。姿をゆっくりと消していくのだった。
足下から消えていきながらだ。彼は劉備達に言う。
「今回は私の負けです」
「だからだ。ここでだ!」
「鈴々達にやっつけられるのだ!」
「そうはいきません」
余裕は取り戻している。そのうえでの言葉だった。
「今は退散させてもらいましょう」
「くっ!」
「逃がさないのだ!」
関羽と張飛は最後の手段としてそれぞの得物を振るい衝撃波を飛ばしだ。消えようとする于吉を撃とうとした。
だがその二つの衝撃波は半透明になってしまっていた于吉の身体を空しく通り過ぎた。それで終わりだった。
「駄目か、最早」
「逃げられるのだ」
「また御会いしましょう」
于吉の姿は完全に消えようとしていた。
「その時まで。ご機嫌よう」
「おのれ、ここでか」
「逃げられるとは最低なのだ!」
関羽と張飛が怒りに満ちて言う。しかしその怒りも今は空しいものでしかなかった。
太平要術の書は封印され消え去った。それを見てだ。
左慈がだ。同志達に言うのだった。
「こうなってはだ」
「撤退ね」
「ここから」
「そうだ。次だ」
その次の場所に向かうというのだ。こうバイスとマチュアに話すのだ。
「次の戦いの場に移ろう」
「わかったわ。それじゃあね」
「今からね」
「さがるぞ。いいな」
「了解」
「では」
左慈達も于吉と同じ様に消えていく。それはオロチや刹那達。そして白装束の者達も同じでだ。彼等は煙の様に消えていった。
戦場に残ったのは連合軍だった。彼等は勝った。
だが、だ劉備はその戦場に立ったままで言うのだった。
「勝ったし。書は封印したけれど」
「ああ、まだだ」
華陀がその劉備に険しい顔で話す。
「まだ戦いは終わっちゃいない」
「そうよね。まだよね」
「月並みな台詞だがな」
こう前置きしてからの言葉だった。
「俺達の戦いはこれからだ」
「あの、その言い方はです」
「止めておいた方がいいです」
孔明と鳳統が華陀のその言葉を止めた。
「それを言ったら。その」
「終わっちゃいますから」
「そうなのか?言ったらいけない言葉だったのか」
「はい、ですから」
「止めておいた方がいいです」
「そうか、わかった」
それがどうしてなのかはわからないが頷きはする華陀だった。
そのうえでだ。彼はまた劉備達に話す。
「とにかくだ。奴等が逃げた場所だが」
「もうそこはわかってるんですか?」
「おそらく。定軍山だ」
そこだというのだ。
「そこに向かった筈だ」
「定軍山、あの場所ですか」
「益州の」
孔明と鳳統がすぐにその場所について言った。
「あの山に潜んで」
「そうして」
「また。あの場所で同じことをする」
そうするとだ。華陀は言い切るのだった。
「そう考えている」
「そうよ。ダーリンの言う通りよ」
「あの山に行って同じことを企んでいるのよ」
ここで怪物達が来た。そのうえで劉備達に話すのだった。
「だからね。今度はね」
「あの山での戦いになるわよ」
「そうか。わかった」
「次はその何とか山に行くのだ」
関羽と張飛は強い顔で応えた。
「それではな」
「そうするのだ」
「はい、しかしまずはです」
「色々とやらないといけないことがあります」
孔明と鳳統は焦っていない。冷静な言葉だった。
「兵隊さん達は疲れていますし」
「それに都を解放しないといけません」
「帝もお救いして」
「そうしたことをしていかないと」
「そうだな。定軍山に向かうのは後だ」
華陀もそうするべきだというのだった。
「今は戦の後始末や山に向かう前にしないといけないことをしないとな」
「しないといけないことって?」
「はい、政です」
「それをしないといけないです」
孔明と鳳統がきょとんとした顔になった張角に話した。
「あと張角さんもです」
「舞台を御願いしますね」
「そうそう。私達その為に呼ばれたんだし」
政のことはわからないがそちらはよくわかっている張角だった。
にこやかな笑顔になってだ。そうして話すのだった。
「じゃあ早速ね」
「舞台の用意もして」
「何かと忙しくなりますから」
「そうそう。最初の戦が終わっただけよ」
「まだまだこれからなんだから」
妖怪達も華陀と同じことを言う。
「けれど今はね」
「あたし達も歌うわよ」
「何っ、御主達もか」
「歌えるのだ!?」
「そうよ。漢女の歌」
「あたし達の歌なのよ」
二人は関羽と張飛の驚きの言葉にウィンクで応える。そのウィンクでだ。
戦場だった場所がだ。派手に吹き飛んだ。ここでも爆発を起こす彼等だった。
「もう最高の歌だから」
「期待していてね」
「それは楽しみだな」
華陀だけが微笑んで二人に応える。
「二人の歌がどうしたものか楽しみだ」
「ダーリンに言われるのなら余計にね」
「あたし達頑張れるわ」
二人も華陀の言葉に乗り気になる。
「それじゃあね」
「皆楽しみにしておいてね」
「大変なことになったな」
「そうなのだ」
爆発から何とか立ち上がった関羽と張飛が話す。爆発によりあちこち黒焦げになってしまい服も髪もぼろぼろになっている。
「あの二人も歌うのか」
「どうなるのだ」
「とにかくです。まずはです」
「戦いの後です」
孔明と鳳統も何とか立ち上がりながら話す。
「それを進めていきましょう」
「暫くの間は」
戦いは終わった。だがそれはだ。次の戦いの為の備えの為の時を与えられたに過ぎなかった。戦いはまだ続くのだった。
第九十二話 完
2011・6・20