『恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS』




                           第二十七話  神楽、あらたな巫女を見るのこと 

 袁紹達と劉備一行の戦いはだ。今はじまろうとしていた。
「何かな」
「どうしたのだ?」
「いや、悪ノリに過ぎないか?」
 関羽は溜息と共に張飛に話すのだった。
「この大会は」
「そうですよね。袁紹さんらしいですけれど」
 孔明も難しい顔をしている。
「けれど。それでも」
「それでもなのだ?」
「お米や麦を送るのなら別のことをしていいと思うんですけれど」
「そこがわからないんだよな」
 馬超もここで話す。
「あの人ってよ。何かあると大会開くんだよな」
「おかしな趣味ね」
 黄忠もこのことに言及する。
「何を考えてのことかしら」
「だが。面白くはあるな」
 趙雲は微笑んでいた。
「こうした大会も」
「そうね。悪くはないわね」
 神楽も微笑んでいる。
「楽しみましょう、折角だし」
「そうよね。楽しまないと損よね」
 劉備も趙雲や神楽と同じ考えだった。
「折角なんだし」
「そうそう。それじゃあね」
 馬岱も乗り気であった。
「皆で明るく楽しくね」
「八人でね」
「九人だ」 
 公孫賛が劉備に突っ込みを入れた。
「全く。私を忘れるな」
「そういえば公孫賛殿は元々袁紹殿と知り合いなのか?」
「向こうが全く覚えていないだけだ」
 公孫賛は難しい顔で関羽の言葉に応えた。
「全くだ」
「そうなのか」
「そうだ。これは曹操も同じだがな」
「誰が覚えてくれているのだ?それでは」
「正直いない」
 公孫賛の顔は困り果てているものになっていた。
「殆どな」
「それは困ったことだな」
「大体だ。幾ら何でもこれはないだろう」
 袁紹側と向かい合った形になっている劉備側の席はだ。何と八つしかないのだった。その一つがどうしてないのかはもう言うまでもなかった。
「何故だ、何故一つない!」
「えっ、八人じゃねえのかよ」
「そう聞いていますが」
 火月と蒼月がその公孫賛に言ってきた。
「それで席は八つだったんだけれどよ」
「そちらの方は」
「公孫賛だ」
 公孫賛はその二人に話した。
「知らないのか、私よ」
「いや、知らねえな」
「何処のどなたですか?」
「貴殿等確か日本の忍者だった筈だな」
 公孫賛はいぶかしむ顔で二人に言い返した。
「それでどうして知らないのだ」
「確かに忍ってのは情報収集が仕事さ」
「それは事実です」
 二人もこのことは話した。
「しかし。あんたのことは本当に知らないぜ」
「袁紹殿のところにいる者は誰もです」
「隣の州なのにか」
 余計に困った顔になる公孫賛だった。
「どういうことなのだ、全く」
「まあそれならだ」
 ケビンがここで出て来た。
「あれだろ。椅子をもう一個出せばいいじゃないか」
「ああ、そうだな」
「どなたかまだわかりませんが」
 二人はケビンのその言葉に頷いた。
「それじゃあ席をもう一つだな」
「用意しましょう」
「釈然としないのだがな」
 まだ難しい顔の公孫賛であった。
「何故私はいつもこうなのだ」
「皆さん」
 しかもここでやたら目立つ袁紹が観客達と参加者達に対して告げる。
「これより大会をはじめます」
「おおーーーーーーーーーーっ」
「どんな大会なんだ?」
「知力、美しさ、服装、武力、そういったものを競います」
 こう高らかに言うのであった。
「我が袁紹陣営が勝つか、それとも劉備さん達が勝つか」
「それを決めるんだな?」
「今度の大会は」
「そういうやつか」
「その通りですわ。それでは」
 また言う袁紹であった。
「今よりはじめさせてもらいますわよ」
「おおーーーーーーーーーっ!!」
「はじめろはじめろ!」
 観客席から拍手が起こる。ニコルとミハルが看板を持って観客席の前にいる。その看板には拍手をするよう書かれているのであった。
 そしてだ。その二人もここで話をしていた。
「わざわざこんなこと書かなくても皆拍手するけれど」
「お笑いだしね」
「そうだよね」
「何でだろうね」
 二人にはこのことが理解不能だった。
「前から袁紹さんっておかしなところあるけれど」
「おかしなところやたら多いけれどね」
 こんなことも言う彼等だった。
「それでもこれはねえ」
「やり過ぎだよね」
「注意し過ぎ」
「そうそう」
 こんなことを話しながらもだ。彼等は己の仕事を果たしていた。そうしてであった。 
 最初の対決がだ。ここで話された。
「では最初は」
「はい、これです」
「この競技です」
「あら、藍玉に黒檀」
 袁紹は二人の姿を見て満足した顔になった。
「お疲れ様」
「まあ政の合間の息抜きってことで」
「楽しんでいて下さい」
 二人の姫はこう話をしてだった。彼女達も雑用にあたる。そうしてだった。
「知力勝負です」
「それです」
 二人がこう話す。
「頑張って下さい」
「どちらも」
「それじゃあだけれど」 
 劉備はまずは自分の家臣達を見て話した、
「こっちで出てもらう娘は」
「一人しかいないのだ」
 こう言う張飛だった。
「ここはやっぱり」
「そうよね、朱里ちゃんよね」
 劉備も笑顔で言う。
「御願いできるかしら」
「わかりました」 
 孔明もその劉備に笑顔で応えた。
「それじゃあ任せて下さい」
「それではですわね」
 袁紹もここで配下の者を見回した。
「こちらは」
「やっぱり水華か恋花じゃないんですか?」
 文醜が袁紹に言ってきた。
「どっちかですよね、やっぱり」
「ええ、そうですわ」
 袁紹にしてもそのつもりだった。文醜のその言葉に頷いて答えた。
「問題はどちらかですけれど」
「二人共同じ位のレベルですけれど」
 顔良もここで言う。
「それでどっちかをですよね」
「さて、どちらにしたものかしら」
 袁紹はいささか難しい顔になっていた。
「相手はあの諸葛孔明ですけれど」
「それなら」
 ここで凛花が言ってきた。
「私にいい考えがあるけれど」
「あら、凛花さん」
 袁紹はその凛花を見てふと述べた。
「若しかして貴女が出ますの?」
「それは違うわ」
 凛花はそれは否定したのだった。
「だって。私じゃあの娘の相手はできないわよね」
「それはね」
「やっぱり無理だよな」
 顔良と文醜もそれは言った。
「だって。天下一の軍師だし」
「あんた刀使うのが仕事だからな。軍師と知力勝負はな」
「だから。私は出ないわ」
 また言う凛花だった。
「けれど決める方法があるわ」
「それはなのですね」
「ええ。鉄ノ介」
 いつも連れている親友に声をかけた。
「選んで」
「ヂッ」
 その鉄ノ介が応えてだ。二人の軍師の方に向かって歩いていく。袁紹はそれを見ながらだ。凛花に対して言うのであった。
「あの鼠さんがどうかしましたの?」
「鉄ノ介が選んでくれる」
 こう袁紹に話すのだった。
「これでどうかしら」
「あっ、それだったら」
「恨みっこなしでいいよな」
 顔良と文醜も凛花のその行動に笑顔で頷いた。
「それじゃあどっちになるのかしら」
「今度は」
「決まったわ」
 そしてであった。決まったのは。
 何とだ。意外な人物であった。
「ええと、これは」
「どういったらいいのかしら」
 袁紹配下のその看板軍師二人も鉄ノ介のその決定には首を捻ってしまった。
「斗詩になるなんて」
「これは一体」
「何でなんだよ、これって」
 文醜も首を捻っていた。
「斗詩って知力三四なんだけれどよ」
「三六よ」
 その文醜からの言葉である。
「覚えておいてよ、このことは」
「あっ、悪い悪い」
「それで麗羽様」
 顔良も袁紹に申し出る。かなり困った顔である。
「あの、今回は」
「辞退したいのですね」
「はい、これはちょっと」
 その子待った顔でまた主に話す。
「私じゃ。諸葛孔明の相手は」
「構いませんわ」 
 しかしであった。何と袁紹はこんなことを言うのであった。
「これが凛花さんのお友達の決定ならです」」
「そんな、本気ですか!?」
「勿論。本気ですわ」
 袁紹は胸を張って答えた。
「そうでなければこんなこと言いませんわ」
「負けるけれどいいんですか?」
 顔良はさらに言うのだった。
「絶対に相手になりませんよ」
「負けてもそれでいいのでしてよ」
 また言う袁紹だった。
「既に手配するものはしていますし」
「はい、それはですね」
「そのことは」
 田豊達もこのことはすぐに答えた。
「もうそろそろお米や麦が集まりますから」
「安心して下さい」
「ここは楽しむべきですわ」
 また言う袁紹であった。
「ですから斗詩さん。ここは鉄ノ介さんの決定に従いなさい」
「ヂッ」
 その鉄ノ介も応えてきたのだった。
「わかりましたわね」
「鉄ノ介は意地悪で決めたりしないから」 
 凛花がここでまた話す。
「そう、絶対に」
「そうなの」
「だから安心して」
 こう顔良に告げる凛花だった。
「ここは」
「わかったわ」
 顔良も遂に頷いたのだった。
「それなら」
「さて、こちらは決まりましたわ」 
 袁紹が劉備達に対して告げた。
「こちらは顔良さんでしてよ」
「嘘でしょ」
 馬岱が最初に驚いた。
「だって。そっちにはしっかりとした軍師が二人もいるじゃない」
「智の二枚看板じゃなかったのか?」
 馬超も驚きを隠せない。
「その二枚看板を出さないのかよ」
「顔良殿では。こう言っては何だが」
 関羽も困惑を隠せない。
「その。無理ではないのか」
「いいのでしてよ」
 だが袁紹の決定は変わらない。
「ここはこうしますわ」
「何か最初から物凄い展開なのだ」
 張飛も今回ばかりは驚きを隠せない。
「どうなるのだ?」
「まあいいではないか」
 趙雲はここでも冷静だった。
「さて、楽しむとしよう」
「まずはそれなのね」
「我々は我々でやることがある」
 趙雲は黄忠にも述べた。
「それに備えよう」
「そうね。そういうことね」
 黄忠も笑顔で頷いた。そうしてであった。
 最初の勝負である知力対決がはじまった。それはだ。
 その問題を聞いてだ。孔明は唖然となった。
「えっ、何ですかこれ」
「何ですの、これは」
 袁紹も憮然とした顔になっていた。
「この問題は」
「何でこの問題なんですか?」
「あれっ、入れる問題間違えたか?」
「何をやっとるのじゃ」
 凱に坂田が言う。
「どうして袁紹殿に関する問題なのじゃ」
「まあいいや。入れたものは仕方ないな」
 凱はしれっとしていた。
「じゃあこれでいくか」
「全く。まあいいわ」
 坂田も適当なものであった。
「それでな」
「よし、決まりだな」
 こう話してだった。その問題はそのまま通されたのだ。そしてであった。
「第一問は」
「言いますね」
 ドンファンとジェイフンが司会進行であった。
「袁紹様はお風呂で最初に何処を洗うか」
「それです」
「えっ、そんなのわかりません」
 孔明は驚いた顔で叫ぶようにして言った。
「だって私袁紹さんじゃないですし」
「当たり前ですわ」
 袁紹も憮然となっている。
「わたくしでも意識していませんのに」
「この問題を答えられる者がいるのか?」
「いないと思うのだ」
 関羽と張飛も自分の席で言った。
「この問題はかなり」
「無茶もいいところなのだ」
 しかしである。顔良が自分の席のボタンを押して名乗り出る。
「はい」
「おう、顔良ちゃん」
「どうぞ」
「頭からです」
 こう答えるのだった。
「そこからです」
「おう、正解!」
「その通りです」
 ドンファンとジェイフンは回答を見ながら答えた。
「こんなのよくわかったよな」
「そうだよね。何で顔良さん知ってるのかな」
 二人はこのことに首を捻った。
「その理由を知りたいな」
「そうだよね」
「全くですわ」
 袁紹も憮然としたままである。
「斗詩さんがどうして知ってますの?」
「まあ第二問な」
「今度は」
 キム兄弟はさらに司会進行を続けていく。
「袁紹さんの今日の下着の色は」
「何色でしょうか」
「はわわ、私のならわかりますけれど」
 孔明は完全に困惑しきっていた。
「白ですけれど」
「自分で言ってどうするんだよ」
 馬超がその孔明に呆れていた。
「そんなのよ」
「はわわ、言っちゃいました」
「見ろよ。観客の人達興奮してるぜ」
 当然その孔明を見てである。
「全くよ」
「失敗しました・・・・・・」
「まあ白はいいけれどな」
 何気にこんなことを言う馬超だった。
「あたしは最近着けないけれどな」
「翠さんはエメラルドグリーンですよね」
「ああ」
 ついついこの問いに答えてしまった。
「そうだよ」
「それで桃香さんはピンクですし」
「私ピンク好きなの」
 にこりと笑って答える劉備だった。
「何か女の子らしい色で」
「似合ってますよ、とても」
 孔明もその劉備ににこりと笑って述べる。
「関羽さんも白がお好きですよね」
「清潔な感じが好きだからな」
 関羽はいささか真面目な顔で答えた。
「だからな」
「清潔ですよね」
「うむ、それがいい」
 また答える関羽だった。
「星は薄いピンクの時もあるな」
「白も好きだがな」
 こんな話をする面々だった。そしてである。
 クイズに戻る。袁紹はさらに憮然となっていた。
「だからどうしてわたくしの下着の色の話に」
「まあまあ」
「気にしない方がいいですよ」
 田豊と沮授がその袁紹を宥める。
「何かの手違いでそうした問題になったみたいですし」
「仕方ないかと」
「全く。凱さんは今日は晩御飯抜きですわ」
 誰が選んだのかはもうわかっていた。
「御自身のお金で食べなさい」
「何かそれって処罰になってないですけれど」
「それでいいんですか」
「宜しいですわ。確かに気に入らないですけれど」
 それは事実であった。
「けれどそこまではいきませんし」
「だからですか」
「それで宜しいのですね」
「ええ、それでいいですわ」
 またいいと言う袁紹だった。
「それでなのですけれど」
「はい、クイズですね」
「そちらは」
「さて、斗詩さんが御存知とは思えませんけれど」 
 流石に自分の今日の下着まではと思ったのである。
「答えられるかしら」
「はい」
 ところがだ。ここで顔良はまたボタンを押したのだった。そして答えると。
「黒です」
「ええと」
「正解です」
 ドンファンとジェイフンは回答を見てから答えた。
「何でわかったんだ?」
「顔良さんも問題作った人も」
 二人にはこのことが不思議だった。
「よくこんなのわかったよな」
「よりによって今日限定だしね」
「ああ、それな」
 ここで凱が言うのだった。
「俺が作った問題でな」
「えっ、そうなのか」
「そうだったんですか」
 二人は今の凱の言葉に顔を向けた。
「あんたが作ったのかよ」
「この問題集は」
「そうなんだよ。まあ興味半分でな」
 そうだというのである。
「作ったんだよ。今日の下着は袁紹さんが着替えてるところをたまたま見てな」
「成程な」
「それでなんですか」
「それでわかったんだよ」
 こう二人に話すのだった。
「袁紹さんって元々下着は黒が多いしな。他には紫もあるな」
「派手な下着が多いんだな」
「何かいつも見ている感じの話ですけれど」
「洗濯で干すだろ」
 それを見てだというのである。
「それでわかるんだよ」
「ああ、そういえばそうだよな」
「洗濯ものはやっぱり干しますしね」
 三人はこんな話をしていた。しかしである。当の袁紹はというと。今度は明らかに怒った顔になってだ。田豊と沮授に言うのであった。
「凱さん、御飯抜きで入牢一週間ですわ」
「それが妥当ですね」
「あそこまでやると」
「そういうことですわ」
 何気に処罰が重くなった。だがその間にもクイズは続く。
「袁紹さんの嫌いな食べ物は?」
「はい、ざざ虫です」
「正解」
 また正解だった。
「袁紹さんのカップは?」
「はい、Fです」
「正解!」
 顔良ばかりが答える。孔明は何も答えられない。終わってみれば顔良の圧勝だった。孔明は結局一問も答えられなかったのだった。
 それを見てだ。ビリーが思わず唸った。
「おいおい、顔良ちゃんが勝ったぜ」
「まさか孔明が負けるとはな」
「そうだな。予想外だ」
 アクセルとローレンスも言う。
「まああの問題じゃな」
「それも当然か」
「全くだぜ。おかしな流れだ」
 ビリー達から見てもだ。そう言うしかなかった。
 そしてである。次はだ。武力対決だった。
 だが今度はだ。出て来たのは殆ど鍋の大きさの丼に入れられたラーメンだった。当然その麺の量はとんでもないものであった。
「あれを食べろというのかしら」
「そうみたいね」
 神楽が黄忠の言葉に応える。
「それが武力なのね」
「だったらこっちは」
「よし、鈴々が出るのだ!」
「あたしも!」 
 張飛と馬超が名乗りを挙げる。
「二人でいいのだ?」
「それはどうなんだ?」
「ああ、いいぜ」
「そう書いてますし」
 ドンファンとジェイフンが二人の問いに答えた。
「じゃあ劉備さんのところはあんた達だな」
「袁紹さんのところは」
「まずはあたいだな」
 顔良がにやりと笑って出て来た。
「あたいは食べるのと賭けにはちょっと五月蝿いぜ」
「いつも負けてるじゃない、賭けには」
 顔良はここで文醜を横目でじっと見て述べた。
「勝てないんだから止めたらいいのに」
「いいんだよ、人生は一か八かなんだよ」
 こんな言葉で返す始末だった。
「だからな」
「全く。また痛い目に遭うわよ」
 だがこの話を聞く文醜ではない。何はともあれ袁紹の方から出る人間は一人決まった。そしてその次の人間も選ばれることになった。
「ええと、残る二人は」
「一体誰にしましょうか」
 田豊と沮授が袁紹に問う。
「張飛さんと馬超さんはかなりの大食ですし」
「こちらも猪々子と同じだけの娘を出さないと」
「そうですわね」
 袁紹もこのことはわかっていた。見れば考える顔になっている。
「ここは誰を出すべきか」
「どうされますか?」
「貴女達は大食ではないですし」
 袁紹はまずはその軍師二人を見た。
「それに斗詩さんもそこまでは食べませんし」
「麗羽様もですし」
「となると」
「それならですけれど」
 ここで名乗り出たのは。
「私でいいでしょうか」
「あら、貴女ですの」
 袁紹はその鈴姫を見て声をあげた。
「貴女が出られますの?」
「はい、やらせて下さい」
 こう静かな声で話すのだった。
「私も食べることには自信がありますし」
「あれっ、鈴姫ってそこまで食べるのか?」
 文醜はそれを聞いてまずは目をしばたかせた。
「そんなに大飯喰らいなのかよ」
「食べようと思えば食べられます」
 また答える鈴姫だった。
「ですからお任せ下さい」
「よし、それではでしてよ」
 袁紹は鈴姫のその志願を受けて頷いた。
「貴女が出なさい、宜しいですわね」
「はい、わかりました」
 こうしてであった。袁紹からはこの二人が出ることになった。かくしてそのうえでラーメンを食べ合う。四人共凄まじい勢いで食べていく。
「どちらが勝つかしら」
「ちょっとわからないわね」
 馬岱に黄忠が話す。
「四人共凄い食欲だし」
「鈴々ちゃんと翠お姉ちゃんは知っていたけれど」
 馬岱は仲間である二人のことはわかっていた。二人共まさに電光石火の勢いで丼の中の麺を消していく。やはりそれは物凄い食欲だ。
「けれど文醜さんと鈴姫さんも」
「そうね。食べるわね」
 黄忠も二人を見ていた。
「あの鈴姫って娘も」
「食べるのもあれですけれど」
 ここで馬岱は言うのだった。
「あの娘強いですよ」
「ええ、そうね」
 黄忠は馬岱のその言葉に目を鋭くさせて頷いた。
「それもかなりね」
「私達と同じ位ね」
「あのキャロルって娘もそうですよね」
「強いわね。戦ったらどちらも無事では済まないわよ」
「はい、間違いなく」
「どんどん強い人材が集まってきているわね」
 黄忠はこうも話した。
「戦乱が戦乱を呼んでいるのかしら」
「そうなんですか」
「私の気のせいだったらいいけれど」
 黄忠はここでだ。眉をさらに顰めさせた。
「それには何かあるのかしら」
「何かですか」
「戦乱よりもよからぬものがあるのかしら」
 こう言うのだった。
「若しかして」
「ううん、戦乱よりもって」
 こう言われるとだ。馬岱には想像がつかないことだった。
「それよりもよくないことって」
「何か。この国自体を滅ぼすような」
 孔明が話に加わってきた。
「そういう存在でしょうか」
「それってまずいよね」 
 馬岱は孔明のその言葉に難しい顔になった。
「国を滅ぼす様な奴がいたとしたら」
「流石にそうした存在はいないと思いますけれど」
 孔明も今はこう考えていた。
「やっぱり」
「そうよね。とにかく戦乱は終わらせないとね」
「皆の為にもね」
 馬岱と黄忠はこう話していた。そしてである。
 四人はラーメンを食べ続けている。二杯、三杯、そしてだ。全員遂に四杯目までいった。
 ここでドンファンが呆れながら言った。
「俺並に食うな」
「そうだね。四人共かなり食べてるよ」
 ジェイフンも言う。
「それで全然衰えないし」
「あの許緒って娘も俺と同じ位食ったけれどな」
「あの娘も驚いてたよ、自分と同じだけ食べるってね」
「俺も驚いてるんだけれどな」 
 ドンファンもであるというのだ。
「あの娘の食う量にはな」
「お互い様ってことかな。それでだけれど」
「ああ」
「そろそろ時間だよ」
 こう言うのであった。
「終わらせようか」
「ああ、じゃあな」
 こうしてだった。終了を知らせる鐘のことが鳴った。そうしてそれが終わった時にである。四人共五杯目も奇麗に食べ終えていた。
「引き分けだよな」
「そうだね」
 ドンファンとジェイフンはその空の四つの丼を見て述べた。
「武力対決は引き分けか」
「四人共凄く食べたし」
 見ればスープすら残っていなかった。今回の勝負は完全に引き分けだった。
 そしてだ。次の勝負はだ。
「ええと、美?」
「美しさっていうと」
「何をするのかな」
「決まっていますわ」
 袁紹がここで高らかに言う。
「それぞれ着飾って美を競い合うのですわ」
「美をですか」
「その通りですわ」
 劉備にも言葉を返した。
「それぞれ服を選んで着飾りなさい。いいですわね」
「ああ、あれか」
「あれなのだ」
 馬超と張飛はこれでわかった。
「何かまたって感じだな」
「そうなのだ。とにかく着るのだ」
「何かわからないが服を着ればいいのか」
 関羽は二人の話を聞きながら述べた。
「それでは服を選ぶとするか」
「うむ、そうしよう」
 こうして劉備陣営は着替えに入った。袁紹陣営もである。
 だがここで顔良と文醜はだ。困った顔になっていた。
「この前惨敗したし」
「あれにはへこんだよな」
 二人は前回馬超一人に惨敗したことをまだ覚えていたのだ。
「今回もまずいかしら」
「何か向こう人材が多いしな」
「何を言っていますの」
 だが主の袁紹は強気だった。
「こちらにも人はいますわ。大丈夫でしてよ」
「だといいんですけれど」
「向こうはもう破壊力抜群の人間が多いみたいですけれど」
 何はともあれだった。袁紹陣営も着替えに入る。まず凛花はセーラー服、そしてキャロルがブレザーにプリーツスカートだった。
「おっ、これはかなり」
「いいよな」
「ああ、いけてるな」
「平均点かなり高いぜ」
 観客達はその二人を見て口々に言う。
「今回は袁紹様のところも勝てるか?」
「この調子でいけばな」
「そうなるかもな」
「出足は順調ですわね」
 ここで満足した顔で言う袁紹だった。だが彼女はまだ舞台裏にいる。着替えはしたがまだ出番は来てはいなかったのである。
「今回は勝てますわね」
「次はアンジェリカさんと鈴姫さんです」
「次もいけますね」
 田豊と沮授がここで言う。当然二人も着替えている。
「アンジェリカさんの服も鈴姫さんの服も」
「平均点高いですし」
「素材もいいですわね」
 袁紹は中身もしっかりと見ていた。
「それじゃあ次はその二人ですわね」
「はい、それじゃあ」
「二人共どうぞ」
 アンジェリカは白衣の下に黒いボンテージ、そして鈴姫はくノ一の格好だった。向こうの世界から人材に教えられた服である。
 それを見てだ。また言う観客達だった。
「おおっ、いいねえ」
「やっぱりこういう服だよな」
「そうそう」
「露出してナンボだよ」
「全く」
「今気付いたのですけれど」
 ここで言う袁紹だった。
「この国の男連中はドスケベですの?」
「男は皆そうですよ」
「そんなものですよ」
 主に話したのは田豊と沮授だった。
「ですからこうしたことも気にしないで下さい」
「別に」
「わかりましたわ」
 袁紹は眉を顰めさせて述べた。
「それじゃあこのことは気にしませんわ」
「そういうことで御願いします」
「それでは次は私達が」
 こうしてだった。その二人も出た。二人の服は。
「いいねえ、メイド」
「うんうん、手堅いね」
「よくわかってるじゃないか」
「流石袁紹様の知の二枚看板」
 二人の評判もよかった。そして問題の二人は。
「今回は大丈夫よね」
「だといいよな」
 随分と弱気である。
「とりあえず着てみたけれど」
「どうなんだろうな、これで」
「出るのが怖いわよね」
「また白けさせないよな」
「早く行きなさい」
 その二人の後ろから袁紹が言ってきた。
「出番ですわよ」
「それはわかってますけれど」
「けれど」
「けれどもそれでももありませんわ」
 明らかに急かす声だった。
「今回はああした美少女戦士とかではないですわね」
「流石にあれはしてませんし」
「外しましたから」
 さしもの文醜もこのことばかりは反省していた。
「けれど大丈夫ですか?」
「この服で」
「少なくとも前よりはいいでしてよ」
 袁紹はこう二人に話した。
「だから胸を張って出なさい。宜しいですわね」
「はい、じゃあ」
「行かせてもらいます」
 こうして二人も出た。その服は。
「へえ、そう来たか」
「成程な」
「露出は少ないけれどな」
「いいんじゃないのか?」
 観客達の評価は上々だった。顔良は縦縞の野球のユニフォームである。勿論帽子も同じだ。白地に黒が実にいい感じである。
 そして文醜は迷彩服だ。こちらも似合っている。
「可愛いよな」
「ああ、愛想のない服でも女の子が着たらな」
「よくなるな」
「可愛い女の子だとな」
「あれっ、いい感じ?」
「そうみたいだな」
 顔良と文醜も評価に胸を撫で下ろした。
「よかった、成功ね」
「ああ、よかったよかった」
「さて、問題の二人はこれでよしですわ」
 袁紹は満足した顔で述べた。
「わたくしも出ますわ」
 こうして袁紹が最後に出た。その服は。
 何と絹の金色のドレスである。手袋までしている。そのまま舞踏会に出そうな勢いだ。袁紹のその髪型と恐ろしいまでにマッチしている。
 それを見てだ。まずは顔良と文醜が言った。
「何か麗羽様って」
「ああいう派手派手な格好じゃないと駄目なんだな」
「そうね。別の世界の人みたいだけれど」
「ベルサイユだったか?キャロルが言っていた」
「さて、これでどうでして?」
 袁紹はかなり自信満々である。
「わたくしの美は」
「・・・・・・とりあえずいいよな」
「一瞬何かって思ったけれどな」
「そうだよな」
 これが観客席の反応である。
「奇麗なことは奇麗だよな」
「派手もいいところだけれどな」
「まあ袁紹様らしいよな」
「合ってる合ってる」
「じゃあいいか」
 とりあえず及第点だった。しかし袁紹はここで言うのであった。
「如何でして?わたくしのこの美は」
「まあいいんじゃないですか?」
「とりあえずは」 
 顔良と文醜がまた話す。
「とりあえず私達は出し終わりましたし」
「後は向こうですね」
「けれど」
「そうだよなあ」
 ここでまた顔を曇らせる二人だった。
「向こう、こういうことには強いですよ」
「勝てるんですかね、あたい達」
「勝てると思わなければ勝てませんわよ」
 一応正論を言う袁紹であった。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事もでしてよ」
「それはそうなんですけれど」
「敵は強大ですよ」
「ふん、質では負けていませんわよ」
 袁紹だけはあくまで強気である。
「例え相手が誰であろうとも」
「そうだったらいいんですけれど」
「麗羽様がそう思っておられるなら」
 そしてだった。ここで田豊と沮授も言う。
「今は何を言ってもはじまりませんし」
「見ているだけしか」
「そうですわね。じたばたしてもはじまりませんわ」
 袁紹も二人のその言葉に頷いた。
「それなら。今は」
「はい、席に着いてそれで」
「お茶でも飲んでいましょう」
 こうしてだった。袁紹陣営は落ち着いて自分の席でお茶を飲むことにした。その中でふとだ。アンジェリカが言ったのである。
「一人いるわね」
「一人とは?」
「誰かいるの?」
 彼女のその言葉に鈴姫と凛花が問うた。
「まさかまた私達と同じ世界の人が来たとか」
「そうなの?」
「多分」
 こう答えるアンジェリカだった。
「来ているわ」
「だとしたら一体誰が」
「誰なのかしら」
「それはね」
 また話すアンジェリカだった。
「多分。巫女だわ」
「巫女?」
「巫女っていったら」
 二人は今のアンジェリカの言葉に劉備陣営が入っている着替え室を見た。そこには既に一人の巫女がいるのはわかっていることだった。
 そしてだ。二人はその巫女のことを話した。
「神楽さんかしら」
「やっぱり私達と同じ世界から来ている人だし」
「そうね。時は後だけれど」
 彼女達が生きていた時代からかなり後である。神楽がいる時代はだ。
「それでも違う」
「違う」
「神楽さんとは」
「そう。また別の巫女だから」
 その巫女が来たというのである。
「また一人」
「それじゃあその巫女は」
「何の目的で」
「そこまではわからない」
 アンジェリカにはわかる筈もないことだった。それでこう答えたのであった。
「ただ。来た」
「それは確かですか」
「そうなんですか」
「私達がここに来た理由もまだわからない」
 アンジェリカは言う。
「けれど必ず意味はあるから」
「そうじゃないと。この世界に来ませんし」
「そうよね。この世界は」
 二人もこのことは頷けた。何の理由もなく別の世界に入ることはだ。決して有り得ないことだった。このことはすぐに察することができた。
「一体何がいるのでしょうか」
「いるとすれば何が」
 彼女達も心に謎を感じていた。そしてだ。
 キャロルもニコラとミハルの兄弟と話していた。その話すことは。
「獅子王だけれど」
「来ているのかもね」
「獅子王もなのね」
 キャロルは二人のその言葉を聞いてまずは顔を曇らせた。
「この世界に」
「それも真獅子王がね」
「来ているのかもね」
「考えてみたら有り得るわね」
 それにキャロルも頷くのだった。
「私達もこの世界に来ているし」
「そうだよね。やっぱり」
「それじゃあその時は」
「ええ。真獅子王と戦いましょう」
 キャロルはまた言った。
「この世界でも絶対に何かをする筈だから」
「うん、その時はね」
「皆で」
「あと。獅子王も来ているわね」
 キャロルはもう一人の獅子王についても話した。
「絶対に」
「やっぱりそうなんだろうね、真獅子王もいたら」
「そうなるよね」
「この世界って物凄く複雑じゃないかしら」
 キャロルは腕を組んでその首を左に捻った。
「私達以外にも沢山の人達が来ているし」
「何が起ころうとしているのかな」
「本当にね」
 ニコラとマルコもそれはわからなかった。だが彼等もまた何かが起ころうとしていることは察していた。そうしてであった。劉備陣営ではだ。
 劉備は丁度着替えている最中だ。ピンクの見事なブラとショーツの姿が映える。その姿で今は自分が着るべき服を探しているのであった。
 その中でだ。劉備は関羽に対して問うた。
「あの、関羽さん」
「どうしたのだ、劉備殿」
「何の服がいいかな」
 こう関羽に問うのである。
「一体どの服が似合うかしら」
「難しいな」
 見れば関羽も下着姿である。劉備に負けない豊かで張りのある胸と見事なプロポーションを包んでいるのは白のブラとショーツだけである。
「それは」
「難しいの?」
「劉備殿のスタイルは見事過ぎる」
 これは関羽の素直な感想である。
「そのスタイルではだ」
「どうなの?」
「多少の服ではかえって服が負けてしまうのではないか?」
 こう言うのである。
「だからな」
「そうなんですか」
「さて、どの服がいいか」
 関羽はその下着姿の劉備を見ながら言った。
「劉備殿には」
「まずは下着の色に合わせたらどうでしょうか」
 ここで孔明が提案してきた。彼女は可愛らしいフリルのある白のブラとショーツだ。そこには黄色い花の模様も入っている。
「そうすればいいですよ」
「下着の色に?」
「はい、まずは下着の色が透けません」
 孔明が言うのはここからだった。
「それに下着の感じはそのまま着ている服にも出ますし」
「だからなのね」
「劉備さんは今ピンクの下着ですよね」
「うん」
「じゃあピンクか赤の系統の下着を選ばれるといいです」
「わかったわ。それじゃあ」
 劉備は孔明のその言葉に頷いた。そのうえで服を選ぶのだった。
 そしてだ。他の面々も服を選んでいた。その中でだ。
 馬岱は馬超にある服を勧めていた。馬超はやはりエメラルドグリーンのブラとショーツである。馬岱のは薄めのライトグリーンである。
「だから翠お姉ちゃんはこれだって」
「おい、これかよ」
「お姉ちゃんは何着ても似合うけれど」
 その馬超の抜群の顔立ちとスタイルを見ての言葉である。
「それでなんだけれど」
「それでこれか」
「これ来たらお姉ちゃんだけで圧勝できるわよ」
「けれどこれは」
「蒲公英も着るし」
 馬岱もにこにことして話す。
「だからね」
「御前はそれか」
 見れば馬岱は白い服をその手に持っている。
「それを着るのか」
「そうよ、じゃあお姉ちゃんはこれね」
「これか」
「だから絶対にいいから」
 従姉には黒い服を勧めていた。右手で指差してだ。
「この服はね」
「ううん、それでもな」
「いいではないか。蒲公英の言う通りだ」
 ここで趙雲が馬岱の助っ人に来た。彼女も下着姿のままだ。見れば今日の彼女の下着はライトブルーである。その服も似合っている。
「貴殿はその服が似合う」
「星まで言うのかよ」
「私は思ったことを言っているだけだ」
 口元を微笑まさせての言葉である。
「それだけだ」
「じゃああたしはやっぱりこの服なのか?」
「ならこれはどうだ?」
 趙雲が笑いながら勧めてきた服は白い体操服に緑のブルマーであった。馬超はその服を見てだ。これまで以上に狼狽した。
「おい、それは幾ら何でも」
「嫌か?」
「その服は恥ずかし過ぎるだろ」
 顔を真っ赤にして趙雲に言うのだった。
「露出が凄過ぎるだろうが」
「そうだな。ある意味裸より刺激的だな」
「何でそんな服があるんだ」
「どうも聖フランチェスカ学園ではこの服を着ているらしい」
「どんな時にだよ」
「身体を動かす時にらしい」
 そうだというのである。
「その時に着るらしい」
「こんな服を着て身体を動かすのかよ」
「女はそうらしいな」
「一体どんな世界なんだ?」
 馬超もついつい首を捻る。
「その世界ってのは」
「聖フランチェスカ学園という名前は聞いたことがあるか」
「ないけれど何かそこにいるような気がするな」
 馬超は自分でも不思議に思うがこう言ったのである。
「ちょっとな」
「そうだな。それは私もだ」
「星もかよ」
「不思議と愛着のある世界だ」
 こう言うのである。
「その学園の世界はな」
「そうだよな。しかし星よ」
 馬超はあらためて趙雲を見る。後ろ姿からは彼女の見事な背中から腰のラインが丸見えだ。とりわけ下着に包まれた尻のラインがいい。
「あんたってな」
「どうしたのだ?」
「あんたって髪短いんじゃなかったんだな」
「その話か」
「少しだけ延ばしている場所があったんだな」
 見ればそうなっていた。趙雲はその翡翠色の髪を殆どボブにしているがそれでもだ。後ろの僅かな部分をかなり延ばしているのだ。
「そうしていたんだな」
「こういう髪型が好きなのだ」
「それでか」
「ああ、それでだ」
 それでこの髪型にしているというのである。
「それでこうしている」
「成程な、それでか」
「さて、それでだが」
「それで?」
「貴殿はその服だな」
 話が服のことに戻った。
「その黒い服だな」
「それしかないか」
「うむ、それしかない」
 趙雲はまた言ってみせた。
「貴殿はだ」
「わかったよ。じゃあそれだな」
「私はこれにしよう」
 趙雲もここで言うのだった。
「面白い服だ」
「ううん、何にするのだ」
 張飛も黄色のブラとショーツのまま悩んでいた。ブラはスポーツブラである。
「正直迷うのだ」
「鈴々ちゃんはこれでいいかしら」
 ここで黄忠が彼女に言ってきた。彼女は豊満な肢体をベージュのブラとショーツに包んでいる。その姿で張飛に言ってきたのだ。
「これでね」
「何っ、これなのだ?」
「そうよ。絶対に似合うから」
「似合うのだ」
「そうよ。だからこれにしたらどうかしら」
「ううん、正直迷うのだ」
 張飛は馬超と同じ顔になっていた。
「この服よりもあの虎の着ぐるみの方が」
「それは止めた方がいいわね」
「私もそう思います」
 孔明も参戦してきた。彼女は下着姿のままだ。
「その服だけは止めた方がいいです」
「しかしこうした服は着たことがないのだ」
「それでも着るべきよ」
「そうですよ。絶対に似合いますよ」
 黄忠と孔明はあくまでその服を勧める。
「それじゃあ私も」
「紫苑さんはこれなんかどうですか?」
 孔明は彼女にもアドバイスをした。
「絶対に似合いますよ」
「そうね。それじゃあね」
「はい、それで」
 こんな話をしていた。神楽は既に着替えて部屋の隅で座っていた。しかしここでだ。ある声を聞いたのである。
「神楽ちずるさんね」
「誰かしら」
「ここに来た者だけれど」
 こう言ってきたのである。
「いいかしら」
「私になのね」
「ええ、貴女に」
 声は楽屋の向こうから聞こえてくる。神楽はそれを聞いているのだ。
「いいわね」
「是非にというのね」
「そうよ」
 まさにその通りというのだった。
「だからね」
「わかったわ。それじゃあ」
 神楽はその言葉に頷いたのであった。
 そして席を立ってだ。壁の方に顔を向けるのだった。
「いいわね」
「これから」
 そうしてだった。神楽はここで話すのだった。また何かが起ころうとしていた。


第二十七話   完


                       2010・8・18



あの問題はどうなんだろう。
美姫 「流石に知を競うと言っても、さしもの孔明も分が悪すぎたわね」
だな。一進一退で袁紹がやや有利の状態で勝負が続くな。
美姫 「次はどちらが勝つのか」
次回が気になる所。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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